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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168598
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】車体の衝撃緩和構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20241128BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B62D21/15 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085419
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 剛毅
(72)【発明者】
【氏名】龍瀧 浩三
(72)【発明者】
【氏名】田垣内 崇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓介
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB12
3D203CA23
3D203CA40
3D203CA43
3D203CB09
3D203DA15
(57)【要約】
【課題】衝突時に車両の前輪を介して車体に伝達される衝撃を緩和する構造において、前輪を介して衝突荷重を受けて変形することにより前輪を車幅方向外側へ誘導する誘導面を形成する。それにより、衝突荷重を受けた前輪の移動方向が車幅方向にばらついても、衝突荷重を受けて変形して形成される誘導面により前輪を車幅方向外側へ誘導して、衝突時に必要な衝撃緩和性能を確保する。
【解決手段】車体側部の下端部に車両前後方向を長手方向として配置され、前輪の車両後方側に配置されたロッカ31と、ロッカ31の車両前方側に配置され、車両前方から入力される衝突荷重を受けて車両後方へ移動される前輪に押圧されて変形し、前輪の移動方向を車幅方向外側へ誘導する誘導面14aを形成される誘導装置10と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四輪車の車体の衝撃緩和構造であって、
車体側部の下端部に車両前後方向を長手方向として配置され、前輪の車両後方側に配置されたロッカと、
該ロッカの車両前方側に配置され、車両前方から入力される衝突荷重を受けて車両後方へ移動される前輪に押圧されて変形し、前輪の移動方向を車幅方向外側へ誘導する誘導面を形成される誘導装置と、
を備える車体の衝撃緩和構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記誘導装置は、
衝突荷重を受けて車両前後方向に圧壊されることにより衝突エネルギを吸収するクラッシュボックスを備え、
該クラッシュボックスは、車幅方向内側部分に対して車幅方向外側部分の車両前後方向の圧壊強度が小さくされており、
前記クラッシュボックスの車両前側端面が前記誘導面とされている
車体の衝撃緩和構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記クラッシュボックスは、車幅方向内側と車幅方向外側にそれぞれ独立したエネルギ吸収部材を備え、車幅方向内側のエネルギ吸収部材に対して車幅方向外側のエネルギ吸収部材の車両前後方向の圧壊強度が小さくされている
車体の衝撃緩和構造。
【請求項4】
請求項3において、
前記クラッシュボックスの車両前側端部を車体に支持する前側支持部材と、
前記クラッシュボックスの車両後側端部を車体に支持する後側支持部材と、
を備え、
前記前側支持部材及び前記後側支持部材は、車幅方向内側に向けて延長された延長部をそれぞれ備え、
前記前側支持部材の前記延長部は、車幅方向内側に向かうに従って前記後側支持部材の前記延長部に漸次接近するように直線的に傾斜されており、前記前側支持部材の前記延長部の車幅方向内側端部は前記後側支持部材の前記延長部に結合され、前記前側支持部材の前記延長部は、前記クラッシュボックスが車幅方向内側へ倒れないように支える構成を成しており、
前記前側支持部材の車両前側面が前記誘導面とされている
車体の衝撃緩和構造。
【請求項5】
請求項3において、
前記車幅方向内側のエネルギ吸収部材に対して前記車幅方向外側のエネルギ吸収部材の車両前後方向の圧壊に伴う最大変形量が大きくされている
車体の衝撃緩和構造。
【請求項6】
請求項3~5のいずれかにおいて、
各エネルギ吸収部材は、車幅方向の断面形状がU字形状の部材により形成され、各U字形状の開放側が互いに向かい合わせに組み合わされて接合されている
車体の衝撃緩和構造。
【請求項7】
請求項1において、
前記誘導装置は、
車幅方向の大きさに対して車両前後方向の大きさを大きくされ、車両衝突時に前輪を介して車両前後方向に入力される衝突荷重に相当する所定の大きさの衝突荷重を受けても圧壊されない強度を備えた柱体と、
該柱体の車両前側端部を車体に支持する前側支持部材と、
前記柱体の車両後側端部を車体に支持する後側支持部材と、
を備え、
前記前側支持部材及び前記後側支持部材は、車幅方向内側に向けて延長された延長部をそれぞれ備え、
前記前側支持部材の前記延長部は、車幅方向内側に向かうに従って前記後側支持部材の前記延長部に漸次接近するように直線的に傾斜されており、前記前側支持部材の前記延長部の車幅方向内側端部は前記後側支持部材の前記延長部に結合され、前記前側支持部材の前記延長部は、前記柱体が車幅方向内側へ倒れないように支える構成を成しており、
前記前側支持部材の車両前側面が前記誘導面とされている
車体の衝撃緩和構造。
【請求項8】
請求項7において、
前記柱体の車両後側端部及び前記後側支持部材は、車幅方向内側に対して車幅方向外側が車両後方側へ傾斜して形成されている
車体の衝撃緩和構造。
【請求項9】
請求項4又は7において、
前記誘導装置は、車体に対して前記前側支持部材及び前記後側支持部材の前記延長部で片持ち支持されており、
前記後側支持部材は、前記ロッカとの間に車両前後方向で隙間を持って前記ロッカの車両前方に配置されている
車体の衝撃緩和構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四輪車の車体の衝撃緩和構造に関する。
【背景技術】
【0002】
四輪車の車体両側部のロッカ(サイドシルともいう)の前方にクラッシュボックスを設けて、衝突により前輪を介して車体に入力される荷重をクラッシュボックスにより吸収する衝撃緩和構造が知られている(特許文献1参照)。図9は、かかる衝撃緩和構造の作動説明図である。図9において(A)は、衝突により前輪Wが車両後方へ押されてロッカR前方のクラッシュボックスCに当接した状態を示す。その後、時間経過と共に、(B)~(D)のように、クラッシュボックスCは漸次圧壊が進行して衝突エネルギを吸収する。
【0003】
しかし、前輪Wの外径が大きい車両の場合、前輪WとロッカRとの隙間が小さくなり、ロッカRの前方に従来と同様のクラッシュボックスCを設置することができない。小さな隙間に設置可能なクラッシュボックスCでは、衝突時に必要なエネルギ吸収量を確保することができない。
【0004】
一方、衝突時の前輪による車体の衝撃を緩和するため、ロッカの前方に板状部材を設けた車体側部構造が知られている(特許文献2参照)。その場合の板状部材は、車幅方向内側から外側に向けて漸次車両後方側に傾斜した傾斜部を備えて形成されている。衝突荷重を受けて前輪が板状部材の傾斜部に当接すると、前輪を傾斜部により車幅方向外側へ移動させ、車幅方向内側へ侵入しないようにされている。
【0005】
また、衝突時の前輪による車体の衝撃を緩和するため、ロッカの前方に車両前方に突出した突出部材を設けた車体側部構造が知られている(特許文献3参照)。突出部材は、車幅方向外側に偏倚して突出されている。衝突荷重を受けて前輪が突出部材に当接すると、前輪に突出部材からの反力が作用して前輪を車幅方向外側へ誘導し、車幅方向内側へ侵入しないようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3912422号公報
【特許文献2】特開2014-118009号公報
【特許文献3】特開2019-199134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2及び3の発明の場合、衝突荷重を受けて車両後方へ移動される前輪が、予定どおり板状部材及び突出部材に当接すれば、初期の目的を達成することができる。しかし、前輪が板状部材及び突出部材に対して予定位置より車幅方向内側に当接した場合は、初期の目的を達成することができない。
【0008】
本発明の課題は、車両衝突時に前輪を介して車体に伝達される衝撃を緩和する構造において、前輪を介して衝突荷重を受けて変形することにより前輪を車幅方向外側へ誘導する誘導面を形成することにある。それにより、衝突荷重を受けた前輪の移動方向が車幅方向にばらついても、衝突荷重を受けて変形して形成される誘導面により前輪を車幅方向外側へ誘導して、車両衝突時に必要な衝撃緩和性能を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1発明は、四輪車の車体の衝撃緩和構造であって、車体側部の下端部に車両前後方向を長手方向として配置され、前輪の車両後方側に配置されたロッカと、該ロッカの車両前方側に配置され、車両前方から入力される衝突荷重を受けて車両後方へ移動される前輪に押圧されて変形し、前輪の移動方向を車幅方向外側へ誘導する誘導面を形成される誘導装置と、を備える。
【0010】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記誘導装置は、衝突荷重を受けて車両前後方向に圧壊されることにより衝突エネルギを吸収するクラッシュボックスを備え、該クラッシュボックスは、車幅方向内側部分に対して車幅方向外側部分の車両前後方向の圧壊強度が小さくされており、前記クラッシュボックスの車両前側端面が前記誘導面とされている。
【0011】
本発明の第3発明は、上記第2発明において、前記クラッシュボックスは、車幅方向内側と車幅方向外側にそれぞれ独立したエネルギ吸収部材を備え、車幅方向内側のエネルギ吸収部材に対して車幅方向外側のエネルギ吸収部材の車両前後方向の圧壊強度が小さくされている。
【0012】
本発明の第4発明は、上記第3発明において、前記クラッシュボックスの車両前側端部を車体に支持する前側支持部材と、前記クラッシュボックスの車両後側端部を車体に支持する後側支持部材と、を備え、前記前側支持部材及び前記後側支持部材は、車幅方向内側に向けて延長された延長部をそれぞれ備え、前記前側支持部材の前記延長部は、車幅方向内側に向かうに従って前記後側支持部材の前記延長部に漸次接近するように直線的に傾斜されており、前記前側支持部材の前記延長部の車幅方向内側端部は前記後側支持部材の前記延長部に結合され、前記前側支持部材の前記延長部は、前記クラッシュボックスが車幅方向内側へ倒れないように支える構成を成しており、前記前側支持部材の車両前側面が前記誘導面とされている。
【0013】
本発明の第5発明は、上記第3発明において、前記車幅方向内側のエネルギ吸収部材に対して前記車幅方向外側のエネルギ吸収部材の車両前後方向の圧壊に伴う最大変形量が大きくされている。
【0014】
本発明の第6発明は、上記第3~第5発明のいずれかにおいて、各エネルギ吸収部材は、車幅方向の断面形状がU字形状の部材により形成され、各U字形状の開放側が互いに向かい合わせに組み合わされて接合されている。
【0015】
本発明の第7発明は、上記第1発明において、前記誘導装置は、車幅方向の大きさに対して車両前後方向の大きさを大きくされ、車両衝突時に前輪を介して車両前後方向に入力される衝突荷重に相当する所定の大きさの衝突荷重を受けても圧壊されない強度を備えた柱体と、該柱体の車両前側端部を車体に支持する前側支持部材と、前記柱体の車両後側端部を車体に支持する後側支持部材と、を備え、前記前側支持部材及び前記後側支持部材は、車幅方向内側に向けて延長された延長部をそれぞれ備え、前記前側支持部材の前記延長部は、車幅方向内側に向かうに従って前記後側支持部材の前記延長部に漸次接近するように直線的に傾斜されており、前記前側支持部材の前記延長部の車幅方向内側端部は前記後側支持部材の前記延長部に結合され、前記前側支持部材の前記延長部は、前記柱体が車幅方向内側へ倒れないように支える構成を成しており、前記前側支持部材の車両前側面が前記誘導面とされている。
【0016】
本発明の第8発明は、上記第7発明において、前記柱体の車両後側端部及び前記後側支持部材は、車幅方向内側に対して車幅方向外側が車両後方側へ傾斜して形成されている。
【0017】
本発明の第9発明は、上記第4又は第7発明において、前記誘導装置は、車体に対して前記前側支持部材及び前記後側支持部材の前記延長部で片持ち支持されており、前記後側支持部材は、前記ロッカとの間に車両前後方向で隙間を持って前記ロッカの車両前方に配置されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、誘導装置が前輪を介して衝突荷重を受けて変形することにより前輪を車幅方向外側へ誘導する誘導面を形成する。そのため、衝突荷重を受けた前輪の移動方向が車幅方向にばらついても、車両衝突時に必要な衝撃緩和性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態を示す平面図である。
図2】第1実施形態における誘導装置の斜視図である。
図3】上記誘導装置の分解斜視図である。
図4】第1実施形態の作動説明図である。
図5】本発明の第2実施形態を示す平面図である。
図6】第2実施形態における誘導装置の斜視図である。
図7図6と同様の斜視図であり、図6に対し別角度からの斜視図である。
図8】第2実施形態の作動説明図である。
図9】従来例の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態の全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態を示す。第1実施形態は、四輪車の車体両側部の下端部に車両前後方向を長手方向として配設されたロッカ31の前方に誘導装置10が配設されている。図1では、車両の両側のうち片側の誘導装置10のみを図示したが、車幅方向の反対側にも線対称で同様の誘導装置10が設けられている。図1において、交差する矢印で示す方向表示は、車両の進行方向を「前」としたときの各方向を示している。図2以降の図においても同様に図示している。
【0021】
ロッカ31は、公知のように、長手方向に直交する方向の断面形状がハット形のハット断面部材を2つ組み合わせて閉断面構造を構成されている。詳細には、ロッカ31は、ハット断面部材の鍔部に相当するフランジ部を車幅方向で互いに重ね合わせて接合されて成る。誘導装置10は、車両の進行方向を横断するように車室前部に配設された車体のブラケット32に固定されている。図示を省略したが、誘導装置10の前方には、左側前輪が配置されている。図1に示されるように、誘導装置10とロッカ31との間には車両前後方向に僅かな隙間が形成されている。
【0022】
<第1実施形態の誘導装置>
図2は、誘導装置10を拡大して示す。図3は、誘導装置10を分解した状態を示す。誘導装置10は、2つのエネルギ吸収部材12、13を組み合わせて構成されたクラッシュボックス11を備えている。クラッシュボックス11は、エネルギ吸収部材12、13が衝突荷重を受けて圧壊されることにより衝突エネルギを吸収するものである。誘導装置10は、クラッシュボックス11の前後端面に共に板状の前側支持部材14及び後側支持部材15を接合して構成されている。前側支持部材14の車両前側面14aが誘導装置10の誘導面とされている。
【0023】
エネルギ吸収部材12、13は、共に車幅方向の断面形状がU字形状に形成されている。エネルギ吸収部材12は、エネルギ吸収部材13に対して全体形状が大きく構成されている。且つ、エネルギ吸収部材12は、車両前後方向の圧壊強度がエネルギ吸収部材13に対して小さくされている。そのため、エネルギ吸収部材12は、エネルギ吸収部材13に対して衝突荷重を受けることによる圧壊時の最大変形量が大きくされている。エネルギ吸収部材12、13は、U字形状の開放側同士が車幅方向で互いに対向するように組み合わされて接合されている。各エネルギ吸収部材12、13の圧壊強度は、各U字形状の開放側に対向する閉鎖側壁面の強度により設定される。
【0024】
各エネルギ吸収部材12、13のU字形状の閉鎖側壁面は車幅方向で互いに離間して配置される。そのため、一つのクラッシュボックス11として車幅方向内側と外側とで圧壊強度に差を持たせることが容易にできる。また、単純に各エネルギ吸収部材12、13を組み合わせるのみでクラッシュボックス11を構成することができるため、部品点数を削減することができる。
【0025】
クラッシュボックス11の前後端面に前側支持部材14及び後側支持部材15を接合する作業は、各エネルギ吸収部材12、13の接合を行った後に行う。このとき厳密には、図1、2のように、エネルギ吸収部材12の前側端面に対してエネルギ吸収部材13の前側端面を僅かに後側にずらして接合している。また、後述の後側支持部材15の突出部15aに対してもエネルギ吸収部材13の後側端面を僅かに前側となるように寸法設定している。そのため、クラッシュボックス11の前後端面に前側支持部材14及び後側支持部材15を接合する作業は、エネルギ吸収部材12、13の両方に対して行われず、エネルギ吸収部材12に対してのみ行われる。この結果、エネルギ吸収部材12、13の接合時に製造ばらつきによってエネルギ吸収部材12に対するエネルギ吸収部材13の接合位置が前後方向に若干ずれても、その影響を受けることなくクラッシュボックス11に対する前側支持部材14及び後側支持部材15の接合作業を行うことができる。
【0026】
前側支持部材14及び後側支持部材15は、車幅方向内側に向けて延長された延長部14b、15bをそれぞれ備える。前側支持部材14の延長部14bは、車幅方向内側に向かうに従って後側支持部材15の延長部15bに漸次接近するように直線的に傾斜して形成されている。延長部14b、15bの車幅方向内側端部14c、15cは、互いに車両前後方向で重ね合わされてボルト16a、17a及びナット16b、17bの締結により結合されている。この結果、延長部14bが成すトラス構造により、クラッシュボックス11が車幅方向内側へ倒れないように支えている。なお、このボルト16a、17a及びナット16b、17bの締結は、図1のようにブラケット32への結合も同時に行っている。従って、誘導装置10は、車体に対して前側支持部材14及び後側支持部材15の延長部14b、15bにより片持ち支持されている。
【0027】
後側支持部材15の延長部15bは、エネルギ吸収部材12、13の大きさの違いにより形成される段形状に沿うように車幅方向内側への延長の途中で車両前方に突出して突出部15aが形成されている。図1のように、突出部15aを形成する屈曲スペース内には、ブラケット32の車幅方向外側端に形成された屈曲突部32aが受け入れられている。前側支持部材14及び後側支持部材15の延長部14b、15bには、自らの延長方向の変形に対する補強のための補強リブ14d、15dが延長方向に沿って延びて形成されている。なお、図1、2からわかるように、後側支持部材15は、その車幅方向内側端部15cがエネルギ吸収部材12を接合している車幅方向内側部分よりも車両前後方向で僅かに後側に位置する構成とされている。
【0028】
<第1実施形態の作用効果>
図4は、衝突により前輪Wが車両後方へ移動し、前輪Wを介して誘導装置10に衝突荷重が加えられたときの誘導装置10の変形の様子、並びに前輪Wの移動の様子を、衝突後の時間経過毎に(A)~(D)に分解して示している。この間、共に圧壊される前輪Wと誘導装置10とを図面上で識別し易くするため、図4では前輪Wは変形しない状態で記載している。
【0029】
(A)では、前輪Wが誘導装置10に当たった当初の誘導装置10の変形の状態を示す。このとき、前側支持部材14、エネルギ吸収部材12、及び後側支持部材15が前輪Wからの衝突荷重を受けて、後側支持部材15のロッカ31側の隙間を埋めるように後方に移動し、エネルギ吸収部材12の前側が車幅方向外側へ移動されて傾く。そのため、前輪Wが前側支持部材14に当たる位置が多少車幅方向にばらついても、後側支持部材15の後方のロッカ31との間に隙間があること、並びに前側支持部材14の延長部14bが衝突荷重を支えて、前側支持部材14が車幅方向内側に移動するのを阻止することにより、(A)に示すように誘導装置10は変形する。
【0030】
(B)では、(A)よりも前輪Wが後方に移動した状態を示す。このとき、エネルギ吸収部材12の前側が圧壊を始める。そのため、前側支持部材14は、エネルギ吸収部材12に対応する車幅方向外側が後方へ押され、前側支持部材14は、車幅方向内側に対して車幅方向外側が後方へ更に傾いた状態となる。従って、前側支持部材14の車両前側面14aが誘導装置10の誘導面となって、前輪Wを車幅方向外側へ誘導する。
【0031】
以後、(C)、(D)と進むに従って、エネルギ吸収部材12の圧壊が進捗して前側支持部材14の車両前側面14aの車幅方向外側が後方へ傾いた状態がより顕著となる。そのため、前輪Wは更に車幅方向外側へ誘導される。
【0032】
第1実施形態によれば、誘導装置10が前輪Wを介して衝突荷重を受けて変形することにより前輪Wを車幅方向外側へ誘導する誘導面を形成する。そのため、衝突荷重を受けた前輪Wの移動方向が車幅方向にばらついても、衝突時に必要な衝撃緩和性能を確保することができる。
【0033】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態を示す。第2実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、誘導装置10を誘導装置20に変更した点にある。誘導装置10は、クラッシュボックス11の圧壊により誘導面を形成するのに対し、誘導装置20は、柱体21が倒れることにより誘導面を形成する点を特徴とする。その他の構成は、第2実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0034】
図5~7のように、誘導装置20は、中空形状の柱体21を備えている。柱体21は、2つのU字体22、23を接合して形成されている。具体的には、U字体22、23は、車幅方向の断面形状がU字形状とされており、互いの開放側を車幅方向で向かい合わせに組み合わせて接合されている。従って、柱体21の中空形状は車両前後方向に延びている。U字体22、23は、共に高強度部材により構成され、柱体21は、衝突時に前輪を介して伝達される衝突荷重(所定の大きさの衝突荷重に相当)では、圧壊されない強度を備えている。
【0035】
柱体21の前側端部及び後側端部には、第1実施形態における前側支持部材14及び後側支持部材15と同様の前側支持部材24及び後側支持部材25が柱体21の中空部に蓋をするように被せられ、接合されている。前側支持部材24及び後側支持部材25は、第1実施形態における前側支持部材14及び後側支持部材15と同様に、車幅方向内側に向けて延長された延長部24b、25bを備える。前側支持部材24の延長部24bは、車幅方向内側に向かうに従って後側支持部材25の延長部25bに漸次接近するように直線的に傾斜して形成されている。延長部24b、25bの車幅方向内側端部24c、25cは、互いに車両前後方向で重ね合わされて、第1実施形態と同様のボルト16a、17a及びナット16b、17bの締結により結合されている。従って、延長部24bはトラス構造を成している。なお、このボルト16a、17a及びナット16b、17bの締結は、図5のようにブラケット32への結合も同時に行っている。従って、誘導装置20は、車体に対して前側支持部材24及び後側支持部材25の延長部24b、25bにより片持ち支持されている。
【0036】
後側支持部材25の延長部25bは、車幅方向内側への延長の途中で、しかも柱体21に隣接する位置で、柱体21の延びる方向に沿って前方に突出して突出部25aが形成されている。図5のように、突出部25aを形成する屈曲スペース内には、ブラケット32の車幅方向外側端に形成された屈曲突部32aが受け入れられている。前側支持部材24及び後側支持部材25の延長部24b、25bには、自らの延長方向の変形に対する補強のための補強リブ24d、25dが延長方向に沿って延びて形成されている。
【0037】
柱体21の後側端部及び後側支持部材25は、車幅方向内側より車幅方向外側が車両後方となるように傾斜して形成されている。この傾斜構造によって、柱体21は、前輪を介して衝突荷重を受けたとき、柱体21の前方が車幅方向外側に倒れ易くされている。
【0038】
<第2実施形態の作用効果>
図8は、衝突により前輪Wが車両後方へ移動し、前輪Wを介して誘導装置20に衝突荷重が加えられたときの誘導装置20の変形の様子、並びに前輪Wの移動の様子を、衝突後の時間経過毎に(A)~(D)に分解して示している。この間、共に圧壊される前輪Wと誘導装置20とを図面上で識別し易くするため、図8では前輪Wは変形しない状態で記載している。
【0039】
(A)では、前輪Wが誘導装置20に当たった当初の誘導装置20の変形の状態を示す。このとき、前側支持部材24、柱体21、及び後側支持部材25が前輪Wからの衝突荷重を受けて、後側支持部材25のロッカ31側の隙間を埋めるように後方に移動し、柱体21の前側が車幅方向外側へ傾く。そのため、前輪Wが前側支持部材24に当たる位置が多少車幅方向にばらついても、後側支持部材25の後方のロッカ31との間に隙間があること、並びに前側支持部材24の延長部24bが衝突荷重を支えて、前側支持部材24が車幅方向内側に移動するのを阻止することにより、(A)に示すように誘導装置20は変形する。
【0040】
(B)では、(A)よりも前輪Wが後方に移動した状態を示す。このとき、柱体21の前側の車幅方向外側への傾斜は更に傾斜角度が大きくなる。そのため、前側支持部材24は、車幅方向外側が後方へ押され、前側支持部材24は、車幅方向内側に対して車幅方向外側が後方へ更に傾いた状態となる。従って、前側支持部材24の車両前側面24aが誘導装置20の誘導面となって、前輪Wを車幅方向外側へ誘導する。
【0041】
以後、(C)、(D)と進むに従って、柱体21の車幅方向外側への傾斜角度が大きくなって前側支持部材24の車両前側面24aの車幅方向外側が後方へ傾いた状態がより顕著となる。そのため、前輪Wは更に車幅方向外側へ誘導される。
【0042】
第2実施形態によれば、誘導装置20が前輪Wを介して衝突荷重を受けて変形することにより前輪Wを車幅方向外側へ誘導する誘導面を形成する。そのため、衝突荷重を受けた前輪Wの移動方向が車幅方向にばらついても、衝突時に必要な衝撃緩和性能を確保することができる。
【0043】
<その他の実施形態>
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、第1実施形態では、クラッシュボックス11を2つのエネルギ吸収部材12、13により構成したが、一つのエネルギ吸収部材でクラッシュボックスを構成し、一つのエネルギ吸収部材の車幅方向内側部分と外側部分とで圧壊強度に差を持たせる構成としてもよい。また、第2実施形態では、柱体21を中空形状としたが、柱体21は中実形状としてもよい。
【0044】
<各発明に対応する上記実施形態の作用効果>
最後に上述の「課題を解決するための手段」における第2発明以降の各発明に対応する上記実施形態の作用効果を付記しておく。
【0045】
第2発明によれば、誘導装置のクラッシュボックスは、車幅方向内側部分に対して車幅方向外側部分の車両前後方向の圧壊強度が小さくされている。そのため、誘導装置が前輪を介して衝突荷重を受けると、クラッシュボックスは、車幅方向内側部分に比べて車幅方向外側部分が大きく変形し、誘導面は車幅方向内側に比べて車幅方向外側が車両後方となるように傾斜する。この傾斜した誘導面により、衝突荷重を受けて車両後方へ移動する前輪を車幅方向外側へ誘導することができる。
【0046】
第3発明によれば、クラッシュボックスは、車幅方向内側と車幅方向外側にそれぞれ独立したエネルギ吸収部材を備える。そのため、独立したエネルギ吸収部材の組合せにより、車幅方向内側に対して車幅方向外側の車両前後方向の圧壊強度が小さいクラッシュボックスを容易に製作することができる。
【0047】
第4発明によれば、クラッシュボックスの前側支持部材と後側支持部材の車幅方向内側への各延長部を互いに結合することによりクラッシュボックスが車幅方向内側に倒れないように支持している。そのため、誘導装置が前輪を介して衝突荷重を受けたとき、クラッシュボックスは車幅方向内側へ倒れることなく、車幅方向外側が車幅方向内側より大きく圧壊され、前側支持部材の車両前側面による誘導面を車幅方向外側へ向けて傾斜することができる。
【0048】
第5発明によれば、車幅方向内側のエネルギ吸収部材に対して車幅方向外側のエネルギ吸収部材の車両前後方向の圧壊に伴う最大変形量が大きくされている。そのため、誘導装置が前輪を介して衝突荷重を受けたとき、クラッシュボックスは車幅方向外側が車幅方向内側より大きく変形され、誘導面を車幅方向外側へ向けてより大きく傾斜することができる。
【0049】
第6発明によれば、各U字形状部材の開放側同士を向かい合わせに組み合わせてクラッシュボックスを構成している。そのため、各U字形状部材の閉鎖側壁面の強度設定により各エネルギ吸収部材の圧壊強度を設定することができる。しかも、各U字形状部材の閉鎖側壁面は車幅方向で互いに離間して配置される。そのため、一つのクラッシュボックスとして車幅方向内側と外側とで圧壊強度に差を持たせることが容易にできる。更に、単純に各U字形状部材を組み合わせるのみでクラッシュボックスを構成することができるため、部品点数を削減することができる。
【0050】
第7発明によれば、誘導装置に所定の大きさの衝突荷重を受けても圧壊されない強度を備えた柱体を持って構成し、柱体の前側支持部材と後側支持部材の車幅方向内側への各延長部を互いに結合することにより柱体が車幅方向内側に倒れないように支持している。そのため、誘導装置が前輪を介して衝突荷重を受けたとき、柱体は車幅方向内側へ倒れることなく車幅方向外側へ倒れ、前側支持部材の車両前側面による誘導面を車幅方向外側へ向けて傾斜することができる。
【0051】
第8発明によれば、柱体の車両後側端部及び後側支持部材は、車幅方向内側に対して車幅方向外側が車両後方側へ傾斜して形成されている。そのため、誘導装置が前輪を介して衝突荷重を受けたとき、車幅方向外側へ倒れ易く、前側支持部材の車両前側面による誘導面を車幅方向外側へ向けて傾斜することができる。
【0052】
第9発明によれば、誘導装置は車体に対して片持ち支持され、後側支持部材はロッカとの間に隙間を持って配置されている。そのため、誘導装置は衝突荷重を受けると、後側支持部材がロッカとの隙間の存在により車両方向へ移動し易く、その影響で、誘導装置の誘導面を成す前側支持部材は、車幅方向外側が車両後方へ傾斜し易くなる。よって、衝突の初期段階から前輪を車幅方向外側へ誘導することができる。
【符号の説明】
【0053】
10、20 誘導装置
11 クラッシュボックス
12、13 エネルギ吸収部材
21 柱体
22、23 U字体
14、24 前側支持部材
14a、24a 車両前側面(誘導面)
14b、24b 延長部
14c、24c 車幅方向内側端部
14d、24d 補強リブ
15、25 後側支持部材
15a、25a 突出部
15b、25b 延長部
15c、25c 車幅方向内側端部
15d、25d 補強リブ
16a、17a ボルト
16b、17b ナット
31 ロッカ
32 ブラケット(車体)
32a 屈曲突部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9