IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホヤ レンズ タイランド リミテッドの特許一覧

特開2024-16860眼鏡レンズの製造方法、眼鏡レンズの製造システム、眼鏡レンズ
<>
  • 特開-眼鏡レンズの製造方法、眼鏡レンズの製造システム、眼鏡レンズ 図1
  • 特開-眼鏡レンズの製造方法、眼鏡レンズの製造システム、眼鏡レンズ 図2
  • 特開-眼鏡レンズの製造方法、眼鏡レンズの製造システム、眼鏡レンズ 図3
  • 特開-眼鏡レンズの製造方法、眼鏡レンズの製造システム、眼鏡レンズ 図4
  • 特開-眼鏡レンズの製造方法、眼鏡レンズの製造システム、眼鏡レンズ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016860
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】眼鏡レンズの製造方法、眼鏡レンズの製造システム、眼鏡レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 13/00 20060101AFI20240131BHJP
   G02C 7/06 20060101ALI20240131BHJP
   B24B 13/06 20060101ALN20240131BHJP
   B24B 9/14 20060101ALN20240131BHJP
【FI】
G02C13/00
G02C7/06
B24B13/06
B24B9/14 A
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190494
(22)【出願日】2023-11-08
(62)【分割の表示】P 2021133490の分割
【原出願日】2017-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】509333807
【氏名又は名称】ホヤ レンズ タイランド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】大久保 繁樹
(57)【要約】
【課題】製造に手間やコストがかからないレーザによるマーキング技術を用いたレンズブランクスから眼鏡レンズを製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、レンズ材料から眼鏡レンズを製造する方法であって、眼鏡レンズを識別するための識別マーク35と、レンズブランクスを加工する際に用いられるトレイ識別用2Dコード33a、トレイ識別コード33b、形状ライン3、及び、ポジションマーク34を含む加工情報マークとを、レンズ材料の凸面にレーザにより孔又は溝を形成してマーキングするマーキング工程(ステップS10)と、加工情報マークを読み取り、読み取った加工情報マークに基づきレンズブランクスの凹面を切削する凹面切削加工工程(ステップS13)と、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製の眼鏡レンズであって、
前記眼鏡レンズを識別するための識別情報マークであって各眼鏡レンズに対して付与される固有の番号を含む識別情報マークを有し、
前記識別情報マークは、前記眼鏡レンズとして使用される領域内に形成された、直径が5~30μmであって、かつ、深さが0.1~3μmであって、かつ、所定の間隔で形成されたドットのみにより形成されたレーザマーキングからなり、かつ、
ハードコート処理することにより形成された硬質膜を更に有する、眼鏡レンズ。
【請求項2】
前記レーザマーキングは、レンズ材料の凸面に形成された、請求項1に記載の眼鏡レンズ。
【請求項3】
前記識別情報マークは、OCRによる認証が可能である、請求項1又は2に記載の眼鏡レンズ。
【請求項4】
累進屈折力レンズであって、前記眼鏡レンズとして使用される領域内に、前記レーザマーキングによる累進屈折力情報マークが形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項5】
表面に、更にARコートを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項6】
前記眼鏡レンズはアンカットレンズであって、 眼鏡フレームに枠入れされるときのレンズ形状を大きくした形状領域を示す形状ラインをレーザマーキングとして含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項7】
前記眼鏡レンズはアンカットレンズであって、 レンズ材料と対応付けられた識別コードを、前記眼鏡レンズとして使用される領域の外側にレーザマーキングとして含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項8】
前記識別情報マークは一本の線を含み、該一本の線は拡大することにより前記固有の番号の読み取りが行える、請求項1~7のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項9】
前記眼鏡レンズは、前記ドットからなるレーザマーキングが施されたレンズ材料表面上に、硬質膜が形成されてなり、かつ、
前記硬質膜が形成されたレンズ表面から、前記ドットにより形成されてなる識別情報マークが視認可能である、請求項1~8のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項10】
プラスチック製の眼鏡レンズの製造方法であって、
レンズ材料の表面に、前記眼鏡レンズを識別するための識別情報マークであって各眼鏡レンズに対して付与される固有の番号を含む識別情報マークを、レーザ照射によりマーキングするレーザマーキング工程と、
前記レーザマーキングを施したレンズ材料にハードコート処理することにより、表面に硬質膜を形成する工程と、
を有し、
前記識別情報マークは、前記眼鏡レンズとして使用される領域内に形成された、直径が5~30μmであって、かつ、深さが0.1~3μmであり、かつ、所定の間隔で形成されたドットのみにより形成されたレーザマーキングからなる、眼鏡レンズの製造方法。
【請求項11】
前記レーザマーキング工程は、前記レンズ材料からなるレンズブランクスの、研磨された凸面に対して行う、請求項10に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項12】
前記レーザマーキング工程は、レーザ照射装置によりレーザをパルス照射することにより前記ドットを形成することにより行う、請求項10又は11に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項13】
前記レーザマーキング工程は、前記硬質膜を形成する工程後において、形成された前記識別情報マークが視認可能となるように行う、請求項10~12のいずれか一項に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項14】
前記識別情報マークは一本の線を含み、該一本の線は拡大することにより、前記識別情報マークに含まれる前記固有の番号の読み取りが行える、請求項10~13のいずれか一項に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項15】
表面に、更にARコートを有する、請求項10~14のいずれか一項に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項16】
前記識別情報マークは、OCRによる認証が可能である、請求項10~15のいずれか一項に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項17】
前記レーザマーキング工程の後、かつ、前記硬質膜を形成する工程の前に、前記レンズ材料からなるレンズブランクスに切削加工を施す切削加工工程を有し、
前記切削加工工程において、前記レンズブランクスに所定の凹面形状を形成する、請求項10~16のいずれか一項に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項18】
前記硬質膜を形成する工程の後に、ARコート処理を行う工程を有する、請求項10~17のいずれか一項に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項19】
前記レーザマーキング工程では、パルスレーザを用い、
前記パルスレーザのパルス幅が10-9秒以上、10-6秒未満のナノ秒であって、且つその波長は355nmであるか、又は、
前記パルスレーザのパルス幅が10-12秒以上、10-9秒未満のピコ秒であって、且つその波長は532nm又は355nmであるか、又は、
前記パルスレーザのパルス幅が10-15秒以上、10-12秒未満のフェムト秒レーザであって、且つその波長は532nm又は355nmである、請求項10~18のいずれか一項に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項20】
眼鏡フレームに枠入れされるときのレンズ形状を大きくした形状領域を示す形状ラインをレンズ材料の表面にレーザマーキングする、請求項10~19のいずれか一項に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項21】
前記レンズ材料と対応付けられた識別コードを、前記レンズ材料の表面であって、前記眼鏡レンズとして使用される領域の外側にレーザマーキングする、請求項10~20のいずれか一項に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項22】
前記レーザマーキングは、レンズ材料の凸面に形成され、
前記識別情報マークは、OCRによる認証が可能であり、
累進屈折力レンズであって、前記眼鏡レンズとして使用される領域内に、前記レーザマーキングによる累進屈折力情報マークが形成され、
表面に、更にARコートを有し、
前記眼鏡レンズはアンカットレンズであって、
眼鏡フレームに枠入れされるときのレンズ形状を大きくした形状領域を示す形状ラインをレーザマーキングとして含み、
前記レンズ材料と対応付けられた識別コードを、前記眼鏡レンズとして使用される領域の外側にレーザマーキングとして含み、
前記識別情報マークは一本の線を含み、該一本の線は拡大することにより、前記識別情報マークに含まれる前記固有の番号の読み取りが行えるものであり、
前記眼鏡レンズは、前記ドットからなるレーザマーキングが施されたレンズ材料表面上に、硬質膜が形成されてなり、かつ、
前記硬質膜が形成されたレンズ表面から、前記ドットにより形成されてなる識別情報マークが視認可能である、請求項1に記載の眼鏡レンズ。
【請求項23】
前記レーザマーキング工程は、前記レンズ材料からなるレンズブランクスの、研磨された凸面に対して行い、
前記レーザマーキング工程は、レーザ照射装置によりレーザをパルス照射することにより前記ドットを形成することにより行い、
前記レーザマーキング工程は、前記硬質膜を形成する工程後において、形成された前記識別情報マークが視認可能となるように行い、
前記識別情報マークは一本の線を含み、該一本の線は拡大することにより、前記識別情報マークに含まれる前記固有の番号の読み取りが行えるものであり、
表面に、更にARコートを有し、
前記識別情報マークは、OCRによる認証が可能であり、
前記レーザマーキング工程の後、かつ、前記硬質膜を形成する工程の前に、前記レンズ材料からなるレンズブランクスに切削加工を施す切削加工工程を有し、
前記切削加工工程において、前記レンズブランクスに所定の凹面形状を形成し、
前記硬質膜を形成する工程の後に、ARコート処理を行う工程を有し、
前記レーザマーキング工程では、パルスレーザを用い、
前記パルスレーザのパルス幅が10-9秒以上、10-6秒未満のナノ秒であって、且つその波長は355nmであるか、又は、
前記パルスレーザのパルス幅が10-12秒以上、10-9秒未満のピコ秒であって、且つその波長は532nm又は355nmであるか、又は、
前記パルスレーザのパルス幅が10-15秒以上、10-12秒未満のフェムト秒レーザであって、且つその波長は532nm又は355nmであり、
眼鏡フレームに枠入れされるときのレンズ形状を大きくした形状領域を示す形状ラインをレンズ材料の表面にレーザマーキングし、
前記レンズ材料と対応付けられた識別コードを、前記レンズ材料の表面であって、前記眼鏡レンズとして使用される領域の外側にレーザマーキングする、請求項10に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レンズ材料を研磨して眼鏡レンズを製造する眼鏡レンズの製造方法及び眼鏡レンズの製造システム、並びに、眼鏡レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2006-53227号公報)には、レーザによるマーキング技術を用いたレンズブランクスから眼鏡レンズを製造する方法が開示されている。この方法では、まず、レンズブランクスの凸面を切削及び研磨し、切削及び研磨加工した凸面に、後の加工工程で位置合わせの基準となる基準マークをレーザマーキングする。そして、この基準マークに基づき位置合わせ等を行って凹面に切削及び研磨加工を行う。両面の切削及び研磨が完了したら、レンズブランクスに染色、ハードコート、及び反射防止膜等を施す。
【0003】
そして、このように製造した眼鏡レンズに対して、隠しマーク(hidden mark又はengraving mark)と呼ばれるマークをマーキングする。隠しマークとしては、例えば、累進屈折力眼鏡レンズには、レンズ面上のフィッティングポイント位置を特定するための基準マーク及び加入屈折力を示す略号や、例えば、特許文献2(特開2000-284234号公報)に記載されているような、眼鏡レンズを識別するための管理コードが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-53227号公報
【特許文献2】特開2000-284234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載された方法では、凸面を切削研磨した後に行うマーキングと、染色、ハードコート、及び反射防止膜を施した後に行うマーキングの2回のマーキングを行っている。このため、製造に手間がかかるとともに、レーザ照射装置の維持にコストがかかるという問題があった。
【0006】
本発明の一実施例は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、製造に手間やコストがかからないレーザによるマーキング技術を用いたレンズブランクスから眼鏡レンズを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例の眼鏡レンズの製造方法は、レンズ材料から眼鏡レンズを製造する方法であって、眼鏡レンズを識別するための識別情報マーク、及び、レンズ材料を加工する際に用いられる加工情報マークを、レンズ材料の凸面にレーザにより孔又は溝を形成してマーキングするマーキング工程と、加工情報マークを読み取り、読み取った加工情報マークに基づきレンズ材料の凹面を切削する凹面切削工程と、を含む。
【0008】
本発明の一実施例の眼鏡レンズの製造システムは、レンズ材料から眼鏡レンズを製造するシステムであって、眼鏡レンズを識別するための識別情報マークと、眼鏡レンズの処方情報とが対応づけられて記録された設計情報データベースと、眼鏡レンズを識別するための識別情報マーク、及び、レンズ材料を加工する際に用いられる加工情報マークを、レンズ材料の凸面にレーザにより孔又は溝を形成してマーキングするマーキング装置と、加工情報マークを読み取り、読み取った加工情報マークに基づきレンズ材料の凹面を切削する凹面切削装置と、を含む。
【0009】
上記構成によれば、凹面切削工程の前に一工程により識別情報マークと加工情報マークとをマーキングするため、レーザマーキングの手間を削減することができる。また、加工情報マークのマーキングと、識別情報マークのマーキングとを一緒に行うことができるため、一台のレーザ照射装置で行うことができるため、レーザ照射装置の維持費用を削減することができる。
【0010】
また、本発明の一実施例の眼鏡レンズは、レンズ材料の凹面に切削が施されてなる眼鏡レンズであって、眼鏡レンズを識別するための識別情報マーク、及び、レンズ材料を加工する際に用いられる加工情報マークが、凸面に孔又は溝によりマーキングされており、孔の直径、又は、溝の幅は、70μm未満であり、孔又は溝の深さは、0.1μm以上、かつ、3μm以下である。
【発明の効果】
【0011】
上述した一実施例によれば、製造に手間やコストがかからないレーザによるマーキング技術を用いたレンズブランクスから眼鏡レンズを製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の眼鏡レンズ製造システムの一実施形態を示す概略図である。
図2】レンズブランクスに施されたマーキングを示す図である。
図3図2における識別マークを拡大して示す図である。
図4】製品の受注から納品までの流れを示すフローチャートである。
図5】レンズブランクスの凸面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のレンズ材料を研磨して眼鏡レンズを製造する方法及びシステムの一実施形態について図面を参照しながら、詳細に説明する。本実施形態では、プラスチック製の累進屈折力眼鏡レンズを製造する場合を例として説明する。
【0014】
図1は、本発明の眼鏡レンズ製造システムの一実施形態を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態の眼鏡レンズ製造システム1は、例えば、インターネットなどのネットワーク300を介して通信可能に接続された、発注端末101と、眼鏡レンズ設計装置201と、設計情報データベース202と、各加工装置に接続された制御端末210、220、230、240、250、270と、表示端末260と、各制御端末210、220、230、240、250、270及び表示端末260に接続された読取装置213、223、233、243、253、263、273と、ユーザ端末301と、支援端末302と、を備える。
【0015】
発注端末101は、例えば、眼鏡店100に設置されたパーソナルコンピュータである。発注端末101は、表示部、入力部、通信制御部等を備えている。表示部は、眼鏡レンズを発注する際に必要となる被検眼の処方情報(眼鏡レンズの処方情報)の入力を支援する案内画面を表示する。入力部は、案内画面にしたがって被検眼の処方情報及び眼鏡フレームの仕様情報を含む眼鏡処方データを入力するためのものである。通信制御部は、ネットワーク300を介して眼鏡レンズ設計装置201との間におけるデータ通信を制御する。通信制御部は、眼鏡レンズ固有のレンズ識別情報に対応づけて、例えば、顧客の識別情報、店舗識情報等のユーザ情報と、入力を受け付けた眼鏡処方データとを眼鏡レンズ設計装置201に送信する。発注端末101には、フレーム形状測定器102が接続されている。
【0016】
眼鏡レンズ設計装置201は、工場200に設置され、記憶部、演算制御部、および通信部等を備える。記憶部には、設計プログラムや加工データ生成プログラム等が格納されている。設計プログラムは、演算制御部に、左右一対の被検眼の処方情報の取得を実行させるとともに、取得した処方情報に基づき、各眼鏡レンズの設計データの作成(設計処理)を実行させるプログラムである。加工データ生成プログラムは、演算制御部に、設計プログラムによって作成された設計データに基づいて、レンズ加工装置が実際のレンズ加工を行う際に必要となる加工データの生成を実行させるプログラムである。
【0017】
演算制御部は、設計プログラムを実行することにより、上記の設計処理を実行し、設計データを作成する。また、演算制御部は、加工データ生成プログラムを実行することにより、レンズ加工装置の制御情報としての加工データを生成する。
通信部は、ユーザ情報と、眼鏡処方データ、設計データ及び加工データを含む眼鏡レンズ処方情報とを、レンズ識別情報に対応づけて設計情報データベース202に格納する。
【0018】
制御端末210、220、230、240、250、270は、工場200に設置され、設計情報データベース202を参照してトレイ識別コード又はレンズ識別情報に対応する加工データを取得することができる。各制御端末210、220、230、240、250、270は、記憶部、装置制御部、及び、通信部等を備える。記憶部には、識別情報読み取りプログラムと、装置制御プログラムが記憶されている。識別情報読み取りプログラムは、読取装置213、223、233、243、253、273により、レンズブランクス又はトレイ(作業指図書)に表示されたトレイ識別用コード又は識別情報マークからトレイ識別コード又はレンズ識別情報の読み取りを実行するプログラムである。装置制御プログラムは、読み取ったトレイ識別コード又はレンズ識別情報に基づき、通信部を介して接続された加工装置に対応する加工データを取得し、加工装置を加工データに基づき制御するためのプログラムである。装置制御部は、識別情報読み取りプログラムを実行することにより、トレイ識別コード又はレンズ識別情報の読み取りを行う。また、装置制御部は、装置制御プログラムを実行することにより、通信部を介してトレイ識別コード又はレンズ識別情報に対応する加工データを取得し、加工データに基づく加工装置の制御を行う。
【0019】
制御端末210には、加工装置として、カーブジェネレータ211と、砂掛け研磨機212とが接続されている。制御端末220には、加工装置として、レンズメータ221と、肉厚計222等の検査装置が接続されている。制御端末230には、加工装置として、レーザマーキング装置231と、画像処理装置232とが接続されている。制御端末240には、加工装置として、マシニングセンタからなるNC(Numerical Control)制御のレンズ研削装置241と、チャックインタロック242とが接続されている。制御端末250には、加工装置として、ヤゲン頂点の形状測定器251が接続されている。制御端末270には加工装置としてプリンタ271が接続されている。
【0020】
表示端末260は、工場200に設置され、設計情報データベース202を参照してトレイ識別コード又はレンズ識別情報に対応する加工データを取得することができる。各表示端末260は、記憶部、表示制御部、及び、通信部等を備える。記憶部には、識別情報読み取りプログラムと、表示制御プログラムが記憶されている。識別情報読み取りプログラムは、読取装置263により、レンズブランクス又はトレイ(トレイとともに搬送される作業指図書)に表示されたトレイ識別用コード又は識別情報マークから、トレイ識別用コード又はレンズ識別情報の読み取りを実行するプログラムである。表示制御プログラムは、読み取ったトレイ識別コード又はレンズ識別情報に基づき、通信部を介してトレイ識別コード又はレンズ識別情報に対応する加工データを取得し、加工データを表示するためのプログラムである。表示制御部は、識別情報読み取りプログラムを実行することにより、トレイ識別コード又はレンズ識別情報の読み取りを行う。また、装置制御部は、表示制御プログラムを実行することにより、通信部を介してトレイ識別コード又はレンズ識別情報に対応する加工データを取得し、加工データを表示する。
【0021】
ユーザ端末301は、入力部と、表示部と、通信部とを有する。入力部は、例えば、キーボードであり、レンズ識別情報の入力を受け付ける。通信部は、ネットワーク300を介して設計情報データベース202を参照し、レンズ識別情報に対応する眼鏡レンズの処方情報を取得する。表示部は、受信した眼鏡レンズ処方情報等を表示することができる。
【0022】
支援端末302は、入力部と、表示部と、通信部とを有する。入力部は、例えば、キーボードであり、レンズ識別情報の入力を受け付ける。通信部は、ネットワーク300を介して設計情報データベース202を参照し、レンズ識別情報に対応する眼鏡レンズ処方情報を取得する。表示部は、受信した眼鏡レンズ処方情報等を表示することができる。
【0023】
次に、本実施形態で、レンズブランクスに施されるマーキングについて説明する。
レンズブランクス10には、後述するマーキング工程(ステップS10)において、レーザマーキングが施される。図2は、レンズブランクスに施されたマーキングを示す図である。同図に示すように、レンズブランクス10には、レンズ加工時に用いられる加工情報マークと、累進屈折力レンズに関する累進屈折力情報マークと、眼鏡レンズを識別するための識別情報マークとが、マーキングされる。
【0024】
加工情報マークとしては、トレイ識別用2Dコード33a及びトレイ識別コード33bと、形状ライン3と、ポジションマーク34と、を含む。
【0025】
後述する眼鏡レンズの製造工程では、レンズブランクス10は、トレイに入れられて搬送される。トレイ識別コード33bは、このトレイを識別するための、識別番号である。また、トレイ識別用2Dコード33aは、トレイ識別コードを示す、例えば、データマトリックスやQRコード(登録商標)などの二次元コードである。
【0026】
形状ライン3は、眼鏡フレームに枠入れされるときのレンズ形状を5~10%程度大きくした形状領域を示すラインである。後述する各種検査において、仮に不良があった場合であっても、不良がこの形状ライン3の外側である場合には、眼鏡レンズの性能には影響を及ぼさないと判定することができる。
【0027】
ポジションマーク34は、眼鏡フレームに枠入れされたときの眼鏡レンズの中心(フレームセンタ、ボクシングセンター)を示すマークである。上下のポジションマーク34は逆丁字形状となっており、左右のポジションマーク34は矢印となっている。これにより、眼鏡レンズが左右いずれのものか、及び、レンズの上下を判別できる。
【0028】
累進屈折力情報マークは、累進屈折力レンズのアライメント基準マーク31a、32aと、加力屈折力又はその略号である加力屈折力表示マーク31b、32bと、を含む。これらアライメント基準マーク31a、32a及び加力屈折力表示マーク31b、32bは、例えば、JIS7315等により累進屈折力眼鏡レンズに表示することが規定されている。
【0029】
識別情報マークは、レンズ識別情報を示す識別マーク35を含む。図3は、図2における識別マークを拡大して示す図である。同図に示すように、識別マーク35は、水平方向に記載された識別番号35Aと、その両部に表示された一対の円弧部35Bとを有する。識別番号35Aは、各眼鏡レンズに対して付与された固有の番号であり、レンズ識別情報に対応する。なお、OCRによる自動認証を行う場合には、識別番号35AをOCRBフォントで記載することが望ましい。
【0030】
累進屈折力情報マーク及び識別情報マークは形状ライン3の内側にマーキングされており、加工情報マークのトレイ識別用2Dコード33a及びトレイ識別コード33bと、ポジションマーク34とは形状ライン3の外側にマーキングされている。
【0031】
これらのレンズブランクスに表示されたマーキングは、レーザマーキングにより行われている。レーザマーキングでは、レーザ照射装置によりレーザをパルス照射することによりドット(孔)を連続的に形成することによりマーキングを行う。レーザ照射装置によるマーキングは、ドットを所定の間隔で形成してもよいし、パルス照射する間隔を狭めることによりドットを連続的に形成して溝として形成してもよい。
【0032】
ここで、ドット径が大きい場合には、各マークが大きくなって目立ってしまい、眼鏡レンズの審美性や使いやすさを損ねてしまう。そこで、レーザにより形成されるドットの直径、又は溝の幅は70μm未満であることが望ましく、5~30μmであることがより望ましい。また、レーザにより形成される孔又は溝の深さは、0.1μm~3μmであることが望ましい。このようなドット又は溝の寸法によれば、染色、ハードコート、ARコート等を行っても各マークを視認可能である。
【0033】
従来は、レンズに対するマーキングは、CO2レーザにより行っていた。しかしながら、CO2レーザでは、上記のような寸法のドット又は溝を形成することができなかった。そこで、発明者らはこのような寸法を有するドット又は溝を形成することができるようなレーザの条件を選定するべく、パルスレーザのパルス幅をナノ秒オーダー、ピコ秒オーダー、フェムト秒オーダーとし、レーザの波長を1064nm、532nm、355nm、266nm、193nmとしてレンズへのレーザマーキングを行った。この結果、以下の条件でレーザマーキングを行うことが望ましいことがわかった。
【0034】
パルス幅がナノオーダーの場合(10-9秒以上、10-6秒未満)の場合には、波長を1064nm、532nmとすると、レーザがレンズを透過してしまう。これに対して、波長を355nmとすると若干の熱影響はでるがマーキングが可能であった。波長を266nm、193nmとすると、良好なマーキングが可能であった。したがって、パルス幅がナノオーダーの場合(10-9秒以上、10-6秒未満)の場合には、波長は355nm以下が好ましく、266nm以下がより好ましいといえる。
【0035】
パルス幅がピコオーダーの場合(10-12秒以上、10-9秒未満)の場合には、波長を1064nmとすると、クラック等の熱影響が大きいもののマーキング可能であった。ただし、波長を1064nmであっても、パルス幅を10-12秒以上、10-10秒未満とすれば良好なマーキングが可能であった。また、波長を532nm、355nmとすると、良好なマーキングが可能であった。したがって、パルス幅がピコオーダーの場合(10-12秒以上、10-9秒未満)の場合には、波長は1064nm以下が好ましく、532nm以下がより好ましいといえる。
【0036】
パルス幅がフェムトオーダーの場合(10-15秒以上、10-12秒未満)の場合には、波長を1064nmとすると、熱影響があるもののマーキング可能であった。また、波長を532nm、355nmとすると、良好なマーキングが可能であった。したがって、パルス幅がフェムトオーダーの場合(10-15秒以上、10-12秒未満)の場合には、波長は1064nm以下が好ましく、532nm以下がより好ましいといえる。
【0037】
次に、製品の受注から納品までの流れを説明する。図4は、製品の受注から納品までの流れを示すフローチャートである。
先ず、眼鏡店100において発注端末101の表示部には入力画面が表示される。販売員等は、その入力画面の案内にしたがって、顧客の被検眼の処方情報と、フレーム形状測定器102等で測定した眼鏡フレームの形状データ等の眼鏡フレームの仕様情報とを含む眼鏡処方データを入力し、発注する(ステップS1)。
【0038】
眼鏡フレームの仕様情報には、ヤゲン種、ヤゲン位置、3次元フレーム形状情報、反射防止膜の種類、レンズカラーの種類、眼鏡レンズの種類を特定する商品コード等が含まれる。また、被検眼の処方情報には、顧客の左右眼の球面屈折力、円柱屈折力、乱視軸、加入度、瞳孔間距離、裸眼視力等が含まれる。入力された眼鏡フレームの仕様情報、及び被検眼の処方情報は、顧客の識別情報、店舗識情報等のレンズ識別情報とともに、ネットワーク300を介して工場200の眼鏡レンズ設計装置201にオンラインで転送される(ステップS2)。
【0039】
眼鏡レンズ設計装置201は、眼鏡フレームの仕様情報、及び被検眼の処方情報に基づき、各眼鏡レンズの設計データ及びレンズ加工装置で使用する加工データを演算する(ステップS3)。眼鏡レンズの設計データには、眼鏡レンズの凹面形状、凸面形状や、眼鏡フレームの形状等の形状に関する情報が含まれる。
【0040】
加工データは、以下の情報を少なくとも含んでいる。
・レンズブランクスに取り付けられるレンズ保持体の種類及び取付角度(レンズブロッキング用加工データ)
・レンズを研削、研磨加工するためのカーブや厚みに関する加工機へのデータ(研削研磨加工データ)
・研磨加工後の光学検査(収差、度数や厚み)で測定値に対して比較する処方値や規格値情報(検査用加工データ)
・加工情報マーク、累進屈折力情報マーク、及び識別情報マークを含むレンズブランクスにレーザマーキングするマーキング情報(レーザマーキング用加工データ)
・染色時のカラータイプ
・濃度情報、及び染色時間に関する情報(染色用加工データ)
・ハードコート種の情報(ハードコート用加工データ)
・ARコート種の情報(ARコート用加工データ)
・最終製品の光学検査(度数・厚み)で測定値に対して比較する処方値や規格値情報、及び、染色カラーや反射防止膜種を検査するための情報(最終検査用加工データ)
・フレームの形状及びヤゲン種に関する加工情報(縁摺り及びヤゲン加工用加工データ)
・レンズの周長及び角度の規格値と、ヤゲン周長及び角度の規格値情報(縁刷り、ヤゲン加工検査用加工データ)
・納品書を発行するためのお客様名や送り先などの印刷情報(発送用加工データ)
【0041】
眼鏡処方データと、作成された設計データ及び加工データを含む眼鏡レンズ処方情報は、レンズ識別情報と対応付けられて設計情報データベース202に記録される(ステップS4)。
【0042】
次に、設計データに基づきレンズブランクスを選択する(ステップS5)。レンズブランクスは、円形のブランクス上でフレームシェープにおけるフィッティング中心とブランクスの幾何学中心を一致させた場合に、フレーム枠形状が収まり、かつブランクスの外径が最小になるブランクス外径を有するブランクスが選定される。このようにして選定されたレンズブランクスはトレイに収容されて搬送され、後の工程が行われる。各トレイにはトレイ識別コードが付与されており、レンズブランクスが収容されると、トレイ識別コードが設計情報データベース202の対応するレンズ識別情報に対応付けられて記録される。トレイ識別コードは、トレイ又はトレイとともに搬送される作業指図書にも記載されている。
【0043】
次に、レンズブランクスの凹面をレンズ保持体によってブロックする(ステップS6)。すなわち、まず、読取装置263によりトレイ識別コードを読み取り、設計情報データベース202を参照してトレイ識別コードに対応するレンズブロッキング用加工データを取得する。そして、取得した加工データに基づき、レンズ保持体を選択し、加工データに指定された角度でレンズブランクスをレンズ保持体に取り付ける。レンズブランクスのレンズ保持体への取付けは、予めブランクスの凹面に傷防止用の保護フィルムをテーピングしておき、レンズ保持体とレンズブランクスとの間に低融点の合金(以下、アロイという)を流し込み、アロイが固まることにより行われる。なお、アロイとしては、凸面を加工する際には、インジウムを主成分とする合金で固定し、凹面を加工する際には、ワックスを仕様するとよい。レンズ保持体が取り付けられたレンズブランクスは、再びトレイに収容される。
【0044】
次に、凸面の切削加工を行う(ステップS7)。すなわち、まず、制御端末210が、読取装置213により、トレイに表示されたトレイ識別コードを読み込む。制御端末210は、トレイ識別コードを読み込むと、設計情報データベース202から、トレイ識別コードに対応する切削研磨加工データを取得する。そして、レンズブランクスが、3次元NC制御を行うカーブジェネレータ211にレンズ保持体を介して取付けられ、制御端末210は加工データに基づきカーブジェネレータ211を制御して、凸面側の面を所定の凸面形状に切削加工する。
【0045】
次に、凸面が切削加工されたブランクスは砂掛け研磨機212に取り付けられ、制御端末210が切削研磨加工データに基づき砂掛け研磨機212を制御して、所望の球面または自由曲面に仕上げる(ステップS8)。
【0046】
次に、レンズブランクスの研磨が完了した凸面にターゲットマークを印字する(ステップS9)。図5は、レンズブランクスの凸面を示す図である。同図に示すように、ターゲットマーク40は、レンズブランクスの中心から上方、及び、横方向両側に所定距離の位置に印字する。なお、レンズブランクスの中心からターゲットマーク40までの距離は、レンズブランクスの中心から、アライメント基準マーク31a、32aまでの距離よりも小さくするのが好ましい。なお、ターゲットマーク40の印字は、例えば、インジェットやスタンプ・ペンなどにより行う。
【0047】
次に、レーザマーキングを行う(ステップS10)。すなわち、まず、制御端末230が、読取装置233により、トレイに表示されたトレイ識別コードを読み込む。制御端末230は、トレイ識別コードを読み込むと、設計情報データベース202から、トレイ識別コードに対応するレーザマーキング用加工データを取得する。そして、制御端末230は、画像処理装置232によりレンズブランクスのターゲットマーク40の位置に基づき、レンズの位置及び角度を検出する。そして、制御端末230は加工データに基づき、レーザマーキング装置231を制御し、図3を参照して説明した加工情報マーク、累進屈折力情報マーク、及び識別情報マークを、レンズブランクスの凸面にレーザマーキングする。
【0048】
次に、レーザマーキングが施されたレンズブランクス(セミフィニッシュドレンズブランクス)を70℃程度の温水に浸し、アロイを溶融させてレンズ保持体をセミフィニッシュドレンズブランクスから除去する(ステップS11)。
【0049】
次に、セミフィニッシュドレンズブランクスのブロックを行う(ステップS12)。すなわち、まず、読取装置263によりセミフィニッシュドレンズブランクスの凸面にマーキングされたトレイ識別コードを読み取り、設計情報データベース202を参照してトレイ識別コードに対応するレンズブロッキング用加工データを取得する。そして、取得した加工データに基づき、レンズ保持体を選択し、加工データに指定された角度でセミブランクスをレンズ保持体に取り付ける。セミフィニッシュドレンズブランクスを取り付ける際には、画像処理装置232によりセミフィニッシュドレンズブランクスのターゲットマーク40の位置を検出し、基準マークをレンズ保持体の基準線に合わせて位置決めし、凹面の切削、研磨のため凸面をレンズ保持体に取り付ける。
【0050】
次に、凹面の切削加工を行う(ステップS13)。すなわち、まず、制御端末210が、読取装置213により、セミフィニッシュドレンズブロンクスの凸面にマーキングされたトレイ識別コードを読み込む。制御端末210は、トレイ識別コードを読み込むと、設計情報データベース202から、トレイ識別コードに対応する切削研磨加工データを取得する。そして、レンズブランクスが、3次元NC制御を行うカーブジェネレータ211にレンズ保持体を介して取付けられ、制御端末210は加工データに基づきカーブジェネレータ211を制御して、凹面側の面を所定の凹面形状に切削加工する。
【0051】
次に、凹面研磨工程が行われる(ステップS14)。すなわち、凹面が切削加工されたブランクスは砂掛け研磨機212に取り付けられ、制御端末210が切削研磨加工データに基づき砂掛け研磨機212を制御して、所望の球面または自由曲面に仕上げる。これにより、アンカットレンズが製作される。
【0052】
次に、アンカットレンズを70℃程度の温水に浸し、アロイを溶融させてレンズ保持体をアンカットレンズから除去する(ステップS15)。
次に、アンカットレンズを、レンズ表面に付着している異物を取り除くために洗浄する(ステップS16)。
【0053】
次に、アンカットレンズの光学、表面検査を行う(ステップS17)。具体的には、まず制御端末220が読取装置223により、アンカットレンズの凸面にマーキングされたトレイ識別コードを読み取る。制御端末220は、トレイ識別コードを読み込むと、設計情報データベース202から、トレイ識別コードに対応する検査用加工データを取得する。次に、アンカットレンズをレンズメータ221に取り付ける。制御端末220は、レンズメータ221により測定された収差や度数を加工データの規格値と比較し、所定の光学性能が得られているかどうかを判定する。次に、アンカットレンズを肉厚計222に取り付ける。制御端末220は、肉厚計222により測定されたアンカットレンズの厚みを加工データの規格値と比較して、所定のレンズ形状に成形されているかどうかを判定する。また、目視によるアンカットレンズの外観検査を行う。この際、仮にアンカットレンズに不良があっても、マーキングされた形状ライン3の外側である場合には、眼鏡レンズの性能には影響を及ぼさないと判定することができる。
【0054】
次に、染色工程を行う(ステップS18)。すなわち、まず、表示端末260が、読取装置263により、アンカットレンズの凸面にマーキングされたトレイ識別コードを読み込む。表示端末260は、トレイ識別コードを読み込むと、設計情報データベース202から、トレイ識別コードに対応する染色用加工データを取得し、表示する。作業員はこの表示された染色用加工データに基づき、指定されたカラータイプ及び濃度の染料に、指定された染色時間にわたってアンカットレンズを浸漬させる。なお、この際、ポジションマーク34により眼鏡レンズの上下を判別できるため、上下が正しい状態でアンカットレンズを占領に浸漬できる。
【0055】
次に、ハードコート工程を行う(ステップS19)。すなわち、まず、表示端末260が、読取装置263により、アンカットレンズの凸面にマーキングされたトレイ識別コードを読み込む。表示端末260は、トレイ識別コードを読み込むと、設計情報データベース202から、トレイ識別コードに対応するハードコート用加工データを取得し、表示する。作業員はこの表示されたハードコート用加工データに基づき、指定された種類のハードコートにアンカットレンズを浸漬させ、アンカットレンズを焼成し、レンズ表面に硬質膜を形成する。なお、ハードコート工程では多数の眼鏡レンズを一度にハードコート処理することがある。このような場合には、読取装置263により、アンカットレンズの凸面にマーキングされたトレイ識別コードを読み込むことにより、取違えを防止できる。
【0056】
次に、ARコート工程を行う(ステップS20)。すなわち、まず、表示端末260が、読取装置263により、アンカットレンズの凸面にマーキングされたトレイ識別コードを読み込む。表示端末260は、トレイ識別コードを読み込むと、設計情報データベース202から、トレイ識別コードに対応するARコート用加工データを取得し、表示する。作業員はこの表示されたARコート用加工データに基づき、指定された種類の成膜材料を真空蒸着法によりアンカットレンズの表面に成膜させる。なお、ARコート工程では多数の眼鏡レンズを一度にARコート処理することがある。このような場合には、読取装置263により、アンカットレンズの凸面にマーキングされたトレイ識別コードを読み込むことにより、取違えを防止できる。
【0057】
次に、アンカットレンズの最終検査を行う(ステップS21)。具体的には、まず制御端末220が読取装置223により、アンカットレンズの凸面にマーキングされたトレイ識別コードを読み取る。制御端末220は、トレイ識別コードを読み込むと、設計情報データベース202から、トレイ識別コードに対応する最終検査用加工データを取得する。次に、アンカットレンズをレンズメータ221に取り付ける。制御端末220は、レンズメータ221により測定された収差や度数を加工データの規格値と比較し、所定の光学性能が得られているかどうかを判定する。次に、アンカットレンズを肉厚計222に取り付ける。制御端末220は、肉厚計222により測定されたアンカットレンズの厚みを加工データの規格値と比較して、所定のレンズ形状に成形されているかどうかを判定する。さらに、染色カラーや反射防止膜が指定通り形成されているかどうかを加工データに基づき検査する。また、目視によるアンカットレンズの外観検査を行う。この際、仮にアンカットレンズに不良があっても、マーキングされた形状ライン3の外側である場合には、眼鏡レンズの性能には影響を及ぼさないと判定することができる。
【0058】
次に、アンカットレンズのブロックを行う(ステップS22)。すなわち、まず、読取装置263によりアンカットレンズの凸面にマーキングされたトレイ識別コードを読み取り、設計情報データベース202を参照してトレイ識別コードに対応するレンズブロッキング用加工データを取得する。そして、取得した加工データに基づき、レンズ保持体を選択し、加工データに指定された角度でアンカットレンズをレンズ保持体に取り付ける。アンカットレンズを取り付ける際には、画像処理装置232によりアンカットレンズのターゲットマーク40の位置を検出し、基準マークをレンズ保持体の基準線に合わせて位置決めし、凹面の切削、研磨のため凸面をレンズ保持体に取り付ける。
【0059】
次に、制御端末240が、読取装置243により、アンカットレンズの凸面にマーキングされたトレイ識別コードを読み込む。そして、レンズブロック治工具に固定されたアンカットレンズを、チャックインタロック242に装着する。そして、チャックインタロック242に装着された状態でのアンカットレンズの位置(傾斜)を把握するために、予め指定された、レンズ表面(または裏面)の少なくとも3点の位置を測定する(ステップS23)。ここで得られた測定値は、ステップS24で演算データとして使用されるためにトレイ識別コードとともに設計情報データベース202に記録される。
【0060】
次に、眼鏡レンズ設計装置201がヤゲン加工設計演算を行う。ただし、実際の加工では、計算上で把握したアンカットレンズの位置と実際のアンカットレンズの位置とに誤差が生じる場合があるので、加工座標への座標変換が終了した時点で、この誤差の補正を行う。すなわち、眼鏡レンズ設計装置201は、ステップS23で測定された3点の位置測定値に基づき、計算上で把握されたアンカットレンズの位置と実際のアンカットレンズの位置との誤差を補正し、最終的な3次元ヤゲン先端形状を算出し、設計情報データベース202に記録されたトレイ識別コードに対応する縁摺り及びヤゲン加工用加工データを更新する(ステップS24)。
【0061】
次に、レンズ研削装置241が、設計情報データベース202を参照してトレイ識別コードに対応する縁摺り及びヤゲン加工用加工データを取得する。そして、レンズ研削装置241は、受信した縁摺り及びヤゲン加工用加工データにしたがってアンカットレンズの縁摺り加工およびヤゲン加工を行う(ステップS25)。
【0062】
次に、制御端末250が、読取装置253により、アンカットレンズの凸面にマーキングされたトレイ識別コードを読み込む。そして、制御端末250が設計情報データベース202を参照してトレイ識別コードに対応する縁刷り、ヤゲン加工検査用加工データを取得する。次に、制御端末250が形状測定器251により、縁摺り加工及びヤゲン加工が完了したレンズ(眼鏡レンズ)の周長及び角度と、ヤゲン頂点の周長及び形状を測定する(ステップS26)。
【0063】
そして、制御端末250は、取得した縁刷り、ヤゲン加工検査用加工データに基づき、ステップS26において測定したレンズ(眼鏡レンズ)の周長及び角度と、ヤゲン頂点の周長及び形状規格値内であるかどうかを判定する。そして、規格値以内である場合には、縁摺り加工及びヤゲン加工が十分な精度で行われた合格品と判定する(ステップS27)。また、あわせて、縁摺り加工によって眼鏡レンズに傷、バリ、欠け等が発生しているか否かの外観検査を行う
【0064】
次に、制御端末270が、読取装置273により、アンカットレンズの凸面にマーキングされたトレイ識別コードを読み込む。そして、制御端末270が設計情報データベース202を参照してトレイ識別コードに対応する発送用加工データを取得する。そして、制御端末270が、プリンタ271により納付書及び発送先(眼鏡店)に関する情報を印刷する。そして、レンズを納付書とともに包装するとともに、発送先に関する情報を包装に貼り付け発送する(ステップS28)。
【0065】
なお、アンカットレンズを眼鏡フレームの形状に加工せずに出荷する場合には、ステップS22~S27を省略することができる。また、上記実施形態では、レンズブランクスから眼鏡レンズを製造する場合ついて説明したが、セミフィニッシュドレンズブランクスから眼鏡レンズを製造する場合についても適用できる。この場合には、ステップS5~8を省略すればよい。また、上記の各ステップでは、トレイ識別コードを読み取っていたが、これに限らずレンズ識別情報を読み取ってもよい。
【0066】
もし、眼鏡レンズを破損してしまった場合には、例えば、拡大鏡等を用いて眼鏡レンズに記載された識別番号35Aを読み取る。そして、ユーザ端末から眼鏡店100の発注端末301、又は、製造業者の支援端末302に識別番号を送信する。眼鏡店100の店員又は製造業者は、設計情報データベース201を参照して識別番号に対応するレンズ識別情報のユーザ情報により、ユーザを確認する。そして、上記説明したステップS5~S28を実行することにより、破損した眼鏡レンズと同形状の眼鏡レンズがユーザ又は眼鏡店に発送される。なお、識別番号35Aの読み取り方法としては、拡大鏡により読み取る方法に限られない。例えば、カメラで取得した画像をPCに取り込んでデコードする方法や、スマホにルーペ等を取り付けて読み取る方法等を用いることができる。
【0067】
また、眼鏡店又は製造業者は、支援端末302から設計情報データベース201を参照することにより、顧客管理やクレーム対応を行うことができる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態によれば、凹面切削加工工程(ステップS13)の前に、眼鏡レンズを識別するための識別マーク35と、レンズブランクスを加工する際に用いられるトレイ識別用2Dコード33a、トレイ識別コード33b、形状ライン3、及び、ポジションマーク34を含む加工情報マークとを、レーザによりマーキングするため、一工程により識別マーク35と加工情報マークとをマーキングすることができ、レーザマーキングの手間を削減することができる。また、加工情報マークのマーキングと、識別マーク35のマーキングとを一緒に行うことができるため、一台のレーザ照射装置で行うことができるため、レーザ照射装置の維持費用を削減することができる。
【0069】
また、本実施形態では、識別マーク35は、レンズ材料の眼鏡レンズとして使用される領域内にマーキングされる。このため、識別マーク35は完成品の眼鏡レンズにも残ることになり、例えば、眼鏡レンズを破損したような場合であっても、識別マーク35からレンズ識別情報を読み取ることにより、眼鏡レンズの再製造等を容易に行うことができる。
【0070】
また、本実施形態では、加工情報マークは、レンズ材料と対応付けられたトレイ識別コード33bを含み、設計情報データベース202に、トレイ識別コード33bに対応づけて眼鏡レンズ処方情報が記録されており、トレイ識別コード33bはレンズ材料の眼鏡レンズとして使用される領域の外側にマーキングされ、凹面切削加工工程では、トレイ識別コード33bを読み取り、設計情報データベース202を参照してトレイ識別コード33bに対応する眼鏡レンズ処方情報(加工データ)を取得し、この眼鏡レンズ処方情報に基づき凹面を切削する。このように、本実施形態では、各工程において、レンズブランクスにマーキングされたトレイ識別コード33bを読み取り、トレイ識別コード33bに対応する眼鏡レンズ処方情報(加工データ)を取得して加工を行うため、指示書を最低限にすることができる。
【0071】
また、本実施形態では、設計情報データベース202に、識別マーク35に対応するレンズ識別情報に対応づけて眼鏡レンズ処方情報が記録されており、眼鏡レンズにマーキングされた識別マーク35を読み取る工程と、読み取った識別マーク35に対応する眼鏡レンズ処方情報に基づき、眼鏡レンズを再製造する工程(S5~S28)とを含む。これにより、眼鏡レンズの再製造を容易に行うことができる。
【0072】
なお、本実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本開示の技術的思想の範囲において適宜変更してもよい。例えば、本実施形態では、凸面研磨(S8)と凹面研磨(S14)を行われる例を挙げたが、これら研磨工程を行わず、凸面切削加工(S7)・凹面切削加工(S13)で面を仕上げてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、レンズブランクスの凸面と凹面の両方を切削・研磨する例を挙げたがこれに限定されない。製品に応じて、キャスト成型によりレンズブランクスの凸面を完成させ、凸面は切削研磨せずに凹面のみ切削・研磨するとしてもよい。この場合、本実施形態の凸面を加工する工程(S6~S8)は行われない。また、キャスト成型によりレンズブランクスの凹面を完成させ、凹面は切削研磨せずに凸面のみ切削・研磨するとしてもよい。この場合、本実施形態の凹面を加工する工程(S12~S15)は行われない。また、キャスト成型によりレンズブランクスの凸面と凹面の両方を完成させ、凸面・凹面を切削・研磨せずに、染色やコーティングの加工を行ってもよい。この場合、本実施形態の凸面を加工する工程(S6~S8)と凹面を加工する工程(S12~S15)は行われない。
【0074】
また、本実施形態では、レーザにより形成されるドットの直径は、70μm未満である。このため、眼鏡レンズに残存する識別情報が非常に小さくなり、審美性を損なうこともなく、眼鏡の使用者が違和感を持つこともない。
【0075】
また、本実施形態では、レーザにより形成されるドットの深さは、0.1μm以上、かつ、3μm以下である。このようなドットの寸法によれば、レンズに染色、ハードコート、ARコート等を施しても、各マークを視認可能である。
【0076】
以下、本開示の眼鏡レンズを製造する方法を総括する。
本発明の一実施例は、レンズ材料から眼鏡レンズを製造する方法であって、眼鏡レンズを識別するための識別マーク35と、レンズブランクスを加工する際に用いられるトレイ識別用2Dコード33a、トレイ識別コード33b、形状ライン3、及び、ポジションマーク34を含む加工情報マークとを、レンズ材料の凸面にレーザにより孔又は溝を形成してマーキングするマーキング工程(ステップS10)と、加工情報マークを読み取り、読み取った加工情報マークに基づきレンズブランクスの凹面を切削する凹面切削加工工程(ステップS13)と、を含む。
【0077】
また、本発明の一実施例は、レンズ材料から眼鏡レンズを製造するシステム1であって、眼鏡レンズを識別するための識別情報マーク35と、眼鏡レンズの処方とが対応づけられて記録された設計情報データベース202と、眼鏡レンズを識別するための識別マーク35、及び、レンズ材料を加工する際に用いられるトレイ識別用2Dコード33a、トレイ識別コード33b、形状ライン3、及び、ポジションマーク34を含む加工情報マークを、レンズ材料の凸面にレーザにより孔又は溝を形成してマーキングするレーザマーキング装置231と、加工情報マークを読み取り、読み取った加工情報マークに基づきレンズ材料の凹面を切削するカーブジェネレータ211と、を含む。
【符号の説明】
【0078】
1 眼鏡レンズ製造システム
3 形状ライン
10 レンズブランクス
31a アライメント基準マーク
31b 加力屈折力表示マーク
33a トレイ識別用2Dコード
33b トレイ識別コード
34 ポジションマーク
35 識別マーク
35A 識別番号
35B 円弧部
40 ターゲットマーク
100 眼鏡店
101 発注端末
102 フレーム形状測定器
200 工場
201 眼鏡レンズ設計装置
202 設計情報データベース
210 制御端末
211 カーブジェネレータ
212 研磨機
213 読取装置
220 制御端末
221 レンズメータ
222 肉厚計
230 制御端末
231 レーザマーキング装置
232 画像処理装置
233 読取装置
240 制御端末
241 レンズ研削装置
242 チャックインタロック
243 読取装置
250 制御端末
251 形状測定器
253 読取装置
260 表示端末
263 読取装置
270 制御端末
271 プリンタ
273 読取装置
300 ネットワーク
301 ユーザ端末
302 支援端末
図1
図2
図3
図4
図5