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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168610
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】下肢用衣類
(51)【国際特許分類】
   A41B 11/00 20060101AFI20241128BHJP
   A41B 11/14 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A41B11/00 B
A41B11/14 E
A41B11/00 D
A41B11/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085436
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000112299
【氏名又は名称】ピップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王子 裕基
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 恒陽
(72)【発明者】
【氏名】根上 麻耶
【テーマコード(参考)】
3B018
【Fターム(参考)】
3B018AA01
3B018AB02
3B018AC01
3B018AD02
3B018AD07
(57)【要約】
【課題】所望の着圧を得つつ、着脱が容易であり、肌へのフィット感が良好な下肢用衣類を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る下肢用衣類1は、レッグ部2を備え、レッグ部2が、足首部21、脹脛部22、大腿部23の順に、着圧が段階的に低くなるように設計されている。レッグ部2は、弾性糸を含んで編成されており、レッグ部2の長手方向Lにおいて隣接する2つのコースのうちの一方のコースが2目以上の周期でフロートして編成されている。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レッグ部を備え、前記レッグ部が、足首部、脹脛部、大腿部の順に、着圧が段階的に低くなるように設計された下肢用衣類であって、
前記レッグ部は、弾性糸を含んで編成されており、前記レッグ部の長手方向において隣接する2つのコースのうちの一方のコースが2目以上の周期でフロートして編成されている、下肢用衣類。
【請求項2】
前記レッグ部は、前記一方のコースが2目以上、6目以下の周期でフロートして編成されている、
請求項1記載の下肢用衣類。
【請求項3】
前記レッグ部は、表地および裏地を有し、前記レッグ部の長手方向に沿う複数条のリブが前記表地に表出するように編成されており、
前記隣接する2つのコースのうちの他方のコースは、前記表地となる非弾性糸による非弾性コースであり、
前記一方のコースは、前記裏地となる弾性糸による弾性コースであり、
前記レッグ部の前記長手方向において、前記非弾性コースおよび前記弾性コースが交互に編成されている、
請求項1または2記載の下肢用衣類。
【請求項4】
前記弾性糸は、互いに異なる特性の糸である第1の弾性糸および第2の弾性糸を含み、
前記編地の前記弾性コースでは、前記レッグ部の前記長手方向において、前記第1の弾性糸による第1の弾性コース、および、前記第2の弾性糸による第2の弾性コースが交互に編成されている、
請求項3記載の下肢用衣類。
【請求項5】
前記非弾性糸は、ウーリーナイロン糸であり、
前記第1の弾性糸は、ポリウレタン糸にナイロン糸を1重に巻き付けたシングルカバリング糸であり、
前記第2の弾性糸は、ポリウレタン糸にナイロン糸を2重に巻き付けたダブルカバリング糸である、
請求項4記載の下肢用衣類。
【請求項6】
前記下肢用衣類が人体の下肢に装着されたときに、前記レッグ部の長手方向において、前記足首部の伸長応力が1N~3Nであり、前記大腿部の伸長応力が1N~3Nであり、前記レッグ部の幅方向において、前記足首部の伸長応力が2N~5Nであり、前記大腿部の伸長応力が2N~5Nである、
請求項5記載の下肢用衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下肢用衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、足首、脹脛、大腿へと上に行くに従って皮膚に対する着圧を段階的に低くなるように段階着圧設計とした下肢用衣類(たとえば、特許文献1)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-115571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような段階着圧設計の下肢用衣類では、高い着圧値が求められる場合がある。通常、上述の弾性糸による編地を用いる場合、使用する弾性糸を低弾性のものに変更したり、編目の密度を大きくしたりして、編地が全体として低い弾性を有するように調整することで、高い着圧値を達成する場合がある。しかし、低い弾性の編地は伸長し難いので、低弾性の編地を用いた下肢用衣類では、着脱し難くなり、人体の肌に沿い難くなるので、肌へのフィット感も損なわれる。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、所望の着圧を得つつ、着脱が容易であり、肌へのフィット感が良好な下肢用衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る下肢用衣類は、レッグ部を備え、前記レッグ部が、足首部、脹脛部、大腿部の順に、着圧が段階的に低くなるように設計された下肢用衣類であって、前記レッグ部は、弾性糸を含んで編成されており、前記レッグ部の長手方向において隣接する2つのコースのうちの一方のコースが2目以上の周期でフロートして編成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態に係る下肢用衣類によれば、所望の着圧を得つつ、着脱が容易であり、肌へのフィット感が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本発明の一実施形態に係る下肢用衣類を示す模式的な正面図である。
図1B】本発明の一実施形態に係る下肢用衣類を示す模式的な背面図である。
図2A図1Aおよび図1Bの下肢用衣類のレッグ部の編み組織の繰返し単位を示す断面の概略図である。
図2B図1Aおよび図1Bの下肢用衣類のレッグ部の編み組織の繰返し単位を示す模式的な正面図である。
図3】下肢用衣類のレッグ部の伸長特性を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る下肢用衣類を説明する。ただし、以下の実施形態は一例であり、本発明の下肢用衣類は、以下の例に限定されるものではない。なお、本明細書において、特に断らない限り、「A形状」およびこれに類する表現は、完全なA形状のみを指すのではなく、見た目にA形状を連想させる形状(略A形状)を含んで指すものとする。本明細書において、特に断らない限り、「上」およびこれに類する表現は、人体において、足から頭に向かう側を指し、「下」およびこれに類する表現は、「上」と反対側であって、人体において、頭から足に向かう側を指すものとする。また、本明細書において、特に断らない限り、「右」およびこれに類する表現は、腹側から背中側を見たときに、左側を指し、「左」およびこれに類する表現は、「右」と反対側であって、腹側から背中側を見たときに、右側を指すものとする。
【0010】
本実施形態の下肢用衣類1は、図1Aおよび図1Bに示されるように、人体Bの下肢を覆うように装着される。下肢用衣類1は、レッグ部2を備えている。本実施形態では、レッグ部2に加え、レッグ部2に連続して形成されるパンティ部3を備えている。ただし、下肢用衣類1は、パンティ部3を備えていなくてもよく、たとえば片足用のレッグ部2のみを備える構成であっても構わない。下肢用衣類1は、特に限定されることはなく、たとえば、ストッキング、パンティストッキング、タイツ、スパッツ、レギンス、トレンカなどとして具現化される。
【0011】
下肢用衣類1は、全体を一体的に形成することもできるし、複数の部位を別々に形成して、縫着などの公知の接合方法で複数の部位を一体化して全体を形成することもできる。本実施形態では、図1Aおよび図1Bに示されるように、下肢用衣類1は、パンティ部3で互いに縫着された左身頃11および右見頃12を備えている。具体的には、左身頃11および右見頃12は、一対のレッグ部2のそれぞれに対応するように、筒状の丸編地から所定の形状に裁断されて、下肢用衣類1を構成する。左身頃11および右見頃12が丸編地から構成されることで、レッグ部2が縫目のない状態で形成されるので、縫目の近傍部分の編地でレッグ部2の伸縮性が安定せず、脚への着圧が不安定になることが抑制される。さらに、下肢用衣類1が人体Bの下肢に装着されたときに、縫目と肌との接触などによって、装着者が、肌に違和感を覚えることが抑制される。
【0012】
レッグ部2は、図1Aおよび図1Bに示されるように、足首部21、脹脛部22、大腿部23を備えており、人体Bの下肢の足首から大腿に至る股下の長手方向Lの略全体を覆う部位である。レッグ部2は、下肢用衣類1が人体Bの下肢に装着されたときに、足首部21、脹脛部22、大腿部23の順に、人体Bの皮膚への着圧が段階的に低くなるように設計されている。そうすることで、下肢用衣類1は、人体Bの下肢に装着された状態で、筋肉を圧迫し血液を上方に押し上げ、下肢の疲れやむくみの軽減を期待することができる。
【0013】
上述のように、レッグ部2の着圧が足首部21から大腿部23に向けて段階的に低くなるように設計される場合のレッグ部2の各部位の着圧は、特に限定されることはない。下肢の疲れやむくみの軽減の効果をより期待することができるようにするために、足首部21の着圧が13hPa~30hPaであり、脹脛部22の着圧が8hPa~25hPaであり、大腿部23の着圧が4hPa~21hPaであることが好ましい。同様の観点から、足首部21の着圧が16hPa~26hPaであり、脹脛部22の着圧が11hPa~21hPaであり、大腿部23の着圧が6hPa~16hPaであることがより好ましい。
【0014】
図2Aに示されるように、レッグ部2は、弾性糸Y21、Y22を含んで編成されており、図2Bに示されるように、レッグ部2の長手方向Lにおいて隣接する2つのコースのうちの一方のコースC21、C22が2目以上の周期でフロートして編成されている(図2Aおよび図2Bの例では、一方のコースC21、C22が3目フロートしている)。換言すれば、一方のコースC21、C22の編目(ループ)が、他方のコースC1の編目(ループ)を2目以上の周期でフロートして編成されている。一方のコースC21、C22が2目以上の周期でフロートすることで、他方のコースC1と絡まずに、他方のコースC1の編目に拘束され難くなって幅方向Wに伸長し易くなるので、高い弾性を有する編地Kが得られ易くなる。なお、図2Aおよび図2Bの例では、レッグ部2の編み組織の繰返し単位を示している。すなわち、図2Aおよび図2Bの例では、レッグ部2の編み組織は、幅方向Wにおいて、領域A2、領域A1、および領域A2を1単位として、この単位を繰り返すことで(A2、A1、A2、A2、A1、A2、・・・)編成されている。より具体的には、編目を「1」、フロートを「0」で表すと、図2Aおよび図2Bの例では、レッグ部2の編み組織は、幅方向Wにおいて、「1、1、0、0、0」を1単位として繰り返して、「1、1、0、0、0、1、1、0、0、0、・・・」となるように編成されている(以下、「2:3のフロート」という)。しかし、レッグ部2の編み組織は、フロートする一方のコースC21、C22の編目の周期が2目以上の周期であればよく、たとえば、「1、0、0、0」を1単位として繰り返して、「1、0、0、0、1、0、0、0、・・・」となるように編成されてもよい(1:3のフロート)。
【0015】
なお、リブR(領域A1で示されるフロート部分)において、一方のコースC21、C22が2目以上の周期でフロートしていれば、他方のコースC1の編み組織は、特に限定されることはない。リブRのフロート編み組織において、他方のコースC1は、タック編みで編成されてもよく、プレーン編みとタック編みとを組み合わせて編成されてもよい。
【0016】
図3を参照して、下肢用衣類の着脱時の挙動について説明する。図3は、下肢用衣類のレッグ部の伸長率と伸長応力との相関関係を模式的に示すグラフである(以下、伸長率と伸長応力との相関関係を「伸長特性」と呼ぶ)。伸長特性F1は、上述のように、編目を2目以上の周期でフロートしている下肢用衣類1のレッグ部2(図1Aおよび図1B参照)の伸長特性を示し、伸長特性F2は、一般的な、編目をフロートしていない下肢用衣類のレッグ部の伸長特性を模式的に示している。なお、伸長率は、所定の方向(たとえば、長手方向Lまたは幅方向W(図1Aおよび図1B参照))において、レッグ部のある部位の元の長さをL0とし、伸長させたときの長さをL1としたとき、(L1-L0)/L0×100(%)で表される。また、伸長応力は、所定の方向において、レッグ部のある部位をその伸長率で伸長させるのに必要な応力である。グラフの縦軸に示される伸長応力Sは、下肢用衣類に要求される着圧値を得るための伸長応力を示している。ある着圧値を達成するための伸長応力Sは、編地の編成の相違や使用される糸の相違などによって、必ずしも異なる編地で同じになるものではないが、ここでは、説明の簡略化のため、同じ伸長応力Sで要求される着圧値が得られるものとしている。
【0017】
たとえば、段階着圧設計の下肢用衣類などで、レッグ部に高い着圧値が要求される場合、一般的な、編目をフロートしていない下肢用衣類のレッグ部では、高い着圧値を達成するために、編目の密度を大きくしたりして、編地が全体として低い弾性を有するように調整する。したがって、そのような下肢用衣類では、伸長特性F2に見られるように、伸長率の増加に対する伸長応力の増加の割合が比較的大きくなる(以下では、伸長特性F2の「傾きが大きい」ともいう)。換言すれば、レッグ部の編地は、比較的大きい伸長応力を加えなければ伸長しない、弾性変形し難い編地となるため、レッグ部は、人体の肌に沿い難くなる。人体の肌に沿い難くなることで、レッグ部の肌へのフィット感はあまり良好ではなくなる。このような下肢用衣類では、図3に示されるように、要求される着圧値を達成するための伸長応力Sにおいて、レッグ部の伸長率は比較的小さく、レッグ部があまり伸長していない状態(伸張率E2)で、人体の脚に装着される。
【0018】
これに対して、本実施形態のように、編目を2目以上の周期でフロートしている下肢用衣類1(図1Aおよび図1B参照)では、レッグ部2の編地K(図2Aおよび図2B参照)が高い弾性を有しているため、伸長特性F1に見られるように、伸長率の増加に対する伸長応力の増加の割合が比較的小さくなる(以下では、伸長特性F1の「傾きが小さい」ともいう)。換言すれば、レッグ部2の編地Kは、比較的小さい伸長応力で伸長する、弾性変形し易い編地となるため、レッグ部2は、人体B(図1Aおよび図1B参照)の肌に沿い易くなる。人体Bの肌に沿い易くなることで、レッグ部2の肌へのフィット感が良好となる。このような本実施形態の下肢用衣類1では、図3に示されるように、要求される着圧値を達成するための伸長応力Sにおいて、レッグ部2の伸長率は比較的大きく、レッグ部2がかなり伸長した状態(伸張率E1)で、人体Bの脚に装着される。
【0019】
下肢用衣類は、装着時よりも大きくレッグ部を伸長させて、人体の下肢に対して着脱される。たとえば、図3に示されるように、下肢用衣類の着脱の際に、人体への装着時より、さらに伸長率を増加させる場合(図3中の伸長率の増分ΔE参照)、一般的な伸長特性F2を有する下肢用衣類では、加えるべき伸長応力(図3中の伸長応力の増分ΔS2参照)は、比較的大きくなる。換言すれば、比較的大きな伸長応力をレッグ部に加えなければ、下肢用衣類を着脱することができないので、着脱性はあまり良好ではなくなる。これに対して、本実施形態のように、伸長特性F1を有する下肢用衣類1(図1Aおよび図1B参照)では、さらに伸長率を増加させる場合(図3中の伸長率の増分ΔE参照)、加えるべき伸長応力(図3中の伸長応力の増分ΔS1参照)は、比較的小さくなる。換言すれば、比較的小さい伸長応力をレッグ部2に加えることで、下肢用衣類1を着脱することができるので、着脱性が良好になる。なお、本発明者は、一方のコースが1目の周期でフロートして編成されているレッグ部について、その伸長特性を確認したところ、2目の周期でフロートして編成されているレッグ部と比較して、下肢用衣類の装着時からさらにレッグ部を伸長させたとき必要な伸長応力の増分が大きく、着脱性があまり良好ではなかった。
【0020】
下肢用衣類の人体の下肢への装着時には、歩行動作などによって人体の筋肉が伸縮することに伴い、人体の脚の周長が変化する。一般的な伸長特性F2を有する下肢用衣類では、脚の周長の変化に追従して、レッグ部が伸縮する場合に、伸長特性F2の傾きが大きいため、レッグ部の伸長応力の変化、ひいては、肌への着圧値の変化が大きく、着圧の安定性があまり良好ではなくなる。これに対して、本実施形態のように、伸長特性F1を有する下肢用衣類1(図1Aおよび図1B参照)では、脚の周長の変化に追従して、レッグ部が伸縮する場合に、伸長特性F1の傾きが小さいため、レッグ部の伸長応力の変化、ひいては、肌への着圧値の変化は小さく、着圧の安定性が良好になる。
【0021】
下肢用衣類1の人体Bの下肢への装着時(図1Aおよび図1B参照)において、レッグ部2の伸長応力は、下肢用衣類1の着脱を容易にする観点からは、小さいことが好ましい。また、レッグ部2の伸長応力は、脚をサポートするためには、大きいことが好ましく、肌への締付感を与えないためには、小さいことが好ましい。ここで、「下肢用衣類1が人体Bの下肢に装着されたときのレッグ部2の伸長応力」は、下肢用衣類1が人体Bの下肢に伸長された状態で装着されたときに、その伸長状態での伸長率とするために必要な応力を指す。レッグ部2の各部位の伸長応力の調整は、後述するように、レッグ部2の編地K(図2Aおよび図2B参照)において、一方のコースC21、C22がフロートする編目の数の変更や、レッグ部2の編地Kに使用する糸の変更などによって行うことができる。
【0022】
下肢用衣類1の装着時に肌への締付感を抑制する観点から、下肢用衣類1の人体Bの下肢への装着時(図1Aおよび図1B参照)に、レッグ部2の長手方向Lにおいて、足首部21の伸長応力が3N以下であることが好ましく、2.5N以下であることがより好ましい。また、レッグ部2の長手方向Lにおいて、大腿部23の伸長応力が3N以下であることが好ましく、2.5N以下であることがより好ましい。また、レッグ部2の幅方向Wにおいて、足首部21の伸長応力が5N以下であることが好ましく、4.5N以下であることがより好ましい。また、レッグ部2の幅方向Wにおいて、大腿部23の伸長応力が5N以下であることが好ましく、4.5N以下であることがより好ましい。下肢用衣類1の装着時に脚を適度にサポートする観点から、下肢用衣類1の人体Bの下肢への装着時に、レッグ部2の長手方向Lにおいて、足首部21の伸長応力が1N以上であることが好ましく、1.5N以上であることがより好ましい。また、レッグ部2の長手方向Lにおいて、大腿部23の伸長応力が1N以上であることが好ましく、1.5N以上であることがより好ましい。また、レッグ部2の幅方向Wにおいて、足首部21の伸長応力が2N以上であることが好ましく、2.5N以上であることがより好ましい。また、レッグ部2の幅方向Wにおいて、大腿部23の伸長応力が2N以上であることが好ましく、2.5N以上であることがより好ましい。
【0023】
一方のコースC21、C22がフロートする編目の数(図2Aおよび図2B参照)は、2目以上の周期であれば、特に限定されることはない。このように、一方のコースC21、C22が2目以上の周期でフロートすると、レッグ部2の編地Kが有する高い弾性によって、着脱性が良好になる。ただし、下肢用衣類1の人体Bの下肢への装着時(図1Aおよび図1B参照)に、人体Bの脚に所望の着圧をより与え易くする観点から、レッグ部2の幅方向Wにおいて、一方のコースC21、C22が6目以下の周期でフロートして編成されることが好ましく、4目以下の周期でフロートして編成されることがより好ましい。
【0024】
レッグ部2は、弾性糸を含んで編成されていれば、特に限定されることはない。本実施形態では、図2Aおよび図2Bに示されるように、レッグ部2の編地Kは、非弾性糸Y1および弾性糸Y21、Y22を含んで編成されている。非弾性糸Y1として、綿糸、ポリエステル糸、ナイロン糸などが例示される。弾性糸Y21、Y22として、ポリウレタン糸、アクリル糸、ポリウレタン糸をナイロン糸でカバリングしたカバリング糸などが例示される。なお、カバリング糸は、ポリウレタン糸にナイロン糸を1重に巻き付けたシングルカバリング糸であってもよく、ポリウレタン糸にナイロン糸を2重に巻き付けたダブルカバリング糸であってもよい。
【0025】
レッグ部2の編地Kの編成方法は、一方のコースC21、C22が2目以上の周期でフロートして編成されていれば、特に限定されることはない。本実施形態では、図2Aに示されるように、レッグ部2は、表地Kaおよび裏地Kbを有し、レッグ部2の長手方向L(図1Aおよび図1B参照)に沿う複数条のリブRが表地Kaに表出するように編成されている(図2Aでは、1つのリブRのみが示されているが、実際には、紙面の左方向および右方向それぞれにリブRが連続して形成されている)。レッグ部2の長手方向Lに沿うリブRが表地Kaに表出するように編成されることで、レッグ部2の意匠性が向上する。
【0026】
本実施形態では、さらに、図2Bに示されるように、他方のコースC1は、表地Ka(図2A参照)となる非弾性糸Y1による非弾性コース(以下、非弾性コースC1ともいう)であり、一方のコースC21、C22は、裏地Kb(図2A参照)となる弾性糸Y21、Y22による弾性コース(以下、弾性コースC21、C22ともいう)であり、レッグ部2の長手方向Lにおいて、非弾性コースC1および弾性コースC21、C22が交互に編成されている。そして、上述のように、弾性コースC21、C22が2目以上の周期でフロートすることで、フロートされた部分(図2B中の領域A1参照)で、非弾性コースC1が、リブRを有する表地Ka(図2A参照)となり、弾性コースC21、C22が、裏地Kb(図2A参照)となる。
【0027】
なお、レッグ部2の編地Kは、交編編み、ゾッキ編みなどの他の編成方法において、一方のコースC21、C22が2目以上の周期でフロートするように編成されていてもよい。
【0028】
図2Bを参照し、本実施形態の下肢用衣類1のレッグ部2の編地Kをより詳細に説明する。本実施形態において、弾性コースC21、C22がフロートしない部分(図2B中のリブRが形成されていない領域A2に対応)では、弾性コースC21、C22の編目が、長手方向Lで隣接する非弾性コースC1の編目と絡むように編まれる。一方、弾性コースC21、C22がフロートする部分(図2B中のリブRが形成されている領域A1を参照)では、弾性コースC21、C22は、編目を形成せず、非弾性コースC1の編目が、長手方向Lで隣接する弾性コースC21、C22を跨いで、長手方向Lで最近接する別の非弾性コースC1の編目と絡むように編まれる(図2B中のリブRが形成されている領域A1を参照)。非弾性コースC1が弾性コースC21、C22を跨ぐことで、弾性コースC21、C22を跨いだ非弾性コースC1が、表地Ka(図2A参照)として表出し、非弾性コースC1に跨れた弾性コースC21、C22が、裏地Kb(図2A参照)として表出する。
【0029】
このように、本実施形態では、図2Aに示されるように、レッグ部2において、表地Kaとなる非弾性コースC1は、リブRを形成するように編成され、裏地Kbとなる弾性コースC21、C22の編目は、非弾性コースC1の編目と絡まずに、2目以上の周期でフロートして編成されている。そうすると、下肢用衣類1(図1Aおよび図1B参照)を伸長させるときに、レッグ部2の表地Kaは、裏地Kbの弾性コースC21、C22の弾性糸Y21、Y22の伸長を妨げることなく、幅方向Wにおいて、撓んだリブRが撓みを減ずるように伸長する。しかし、表地Kaは、非弾性糸Y1から構成されるので、リブRの撓みがなくなると伸長しなくなる。
【0030】
図3も参照して、下肢用衣類の着脱時の挙動について、さらに説明する。上述のように、本実施形態では、図2Aに示されるように、レッグ部2の表地Kaは、非弾性糸Y1から構成されているが、表地KaのリブRが撓みを減ずることで、裏地Kbよりも容易に伸長することができるので、図3中において、リブRの撓みを減ずる伸長率の領域(伸張率Et1以下の領域)では、レッグ部2の伸長特性F1は、主に、レッグ部2の裏地Kb(弾性コースC21、C22)の伸長特性F11となり、編地K全体が伸長する。一方、表地KaのリブRの撓みがなくなる伸長率の領域(伸張率Et1を超えた領域)では、裏地Kbが伸張しようとしても、表地Kaが伸張することができないので、レッグ部2の伸長特性F1は、主に、レッグ部2の表地Ka(非弾性コースC1)の伸長特性F12となり、編地K全体が伸長しなくなる。そうすると、図1Aおよび図1Bに示されるように、足首から太腿に向かって概略的に拡径する人体Bの脚に対して、下肢用衣類1のレッグ部2が装着されるときに、脚の上下方向の対応する位置から外れて、レッグ部2をより上方に装着しようとすると、図3に示されるように、表地Kaの伸長特性F12が発現して伸長しなくなる。レッグ部2が伸長しなくなると、それ以上、脚の上方にレッグ部2を位置付けられなくなるので、レッグ部2の各部位が、対応する人体Bの脚の部位から外れて位置付けられることが抑制される。このように、レッグ部2が、対応する人体Bの脚の部位に位置付けられると、その脚の部位に応じた設計通りの着圧を人体Bの脚に加え易くなる。
【0031】
図2Aおよび図2Bに示される編地Kを編成する弾性糸Y21、Y22は、1種類の糸であってもよく、互いに異なる特性の2種類以上の糸であっても構わない。弾性糸Y21、Y22が2種類以上である場合、レッグ部2に弾性糸Y21、Y22それぞれが有する有利な特性が発現することがある。互いに異なる特性として、弾性率、糸の太さ、耐摩耗性、耐湿性などが例示される。
【0032】
本実施形態では、図2Bに示されるように、弾性糸Y21、Y22は、互いに異なる特性の糸である第1の弾性糸Y21および第2の弾性糸Y22を含んでおり、弾性コースC21、C22では、レッグ部2の長手方向Lにおいて、第1の弾性糸Y21による第1の弾性コースC21、および、第2の弾性糸Y22による第2の弾性コースC22が交互に編成されている。異なる弾性糸Y21、Y22による弾性コースC21、C22が交互に編成される場合、弾性糸Y21、Y22それぞれが有する有利な特性を発現させ易くなる。たとえば、第1の弾性糸Y21および第2の弾性糸Y22はそれぞれ、ポリウレタン糸にナイロン糸を1重に巻き付けたシングルカバリング糸およびポリウレタン糸にナイロン糸を2重に巻き付けたダブルカバリング糸とすることができる。第1の弾性糸Y21として、上述のシングルカバリング糸を採用し、第2の弾性糸Y22として、上述のダブルカバリング糸を採用する場合、第1の弾性コースC21は、非弾性糸であるナイロン糸の割合が比較的小さい第1の弾性糸Y21によって比較的高い弾性を示し、第2の弾性コースC22は、ナイロン糸の割合が比較的大きい第2の弾性糸Y22によって比較的低い弾性を示す。このような弾性の異なる2種類の弾性糸を用いることで、第1の弾性コースC21が、肌へのフィット感をさらに向上させるとともに、第2の弾性コースC22が、人体Bの脚に所望の着圧をさらに与え易くすることができる。
【0033】
また、第1の弾性糸Y21として、上述のシングルカバリング糸を採用し、第2の弾性糸Y22として、上述のダブルカバリング糸を採用すると、第2の弾性糸Y22は、ナイロン糸の巻き付け回数が多いので、第1の弾性糸Y21よりも太くなる。このような太さの異なる2種類の弾性糸を用いることで、比較的太い第2の弾性糸Y22の間に、比較的細い第1の弾性糸Y21が入り込んで、裏地Kbの編目が細かく見えるので、裏地Kbが透けるように見えることが抑制される。裏地Kbが透けるように見えることをさらに抑制するために、第2の弾性糸Y22が第1の弾性糸Y21の太さよりも太く、かつ、第1の弾性糸Y21および第2の弾性糸Y22の太さは、ともに、40デニール以上であって、110デニール以下であることが好ましい。
【0034】
編地Kを編成する非弾性糸Y1もまた、1種類であってもよく、2種類以上であっても構わない。本実施形態では、非弾性糸Y1として、1種類の非弾性糸のみが用いられている。具体的には、非弾性糸Y1は、ウーリーナイロン糸である。ここで、ウーリーナイロン糸は、羊毛状の加工を施したナイロン糸である。非弾性糸Y1をウーリーナイロン糸とすることで、表地Kaとして表出したリブRに羊毛地のような外観および触感を与えることができる。リブRに羊毛地のような外観および触感をさらに与えるために、非弾性糸Y1の太さは、50デニール~200デニールであることが好ましい。
【0035】
なお、図2Bでは、1本の非弾性コースC1に対して、1本の弾性コースC21(または1本の弾性コースC22)が編成されているが、1本の非弾性コースC1に対して、複数本の弾性コースC21(または複数本の弾性コースC22)が編成されていてもよい。レッグ部2の編地Kが有する高い弾性をより際立たせる観点から、1本の非弾性コースC1に対して、2本以下の弾性コースC21(または2本以下の弾性コースC22)が編成されることが好ましい。また、1本の弾性コースC21(または1本の弾性コースC22)に対して、複数本の非弾性コースC1が編成されていてもよい。人体Bの脚に所望の着圧をより与え易くする観点から、1本の弾性コースC21(または1本の弾性コースC22)に対して、2本以下の非弾性コースC1が編成されることが好ましい。
【0036】
図1Aおよび図1Bの例では、レッグ部2の下端部(袖口部)2aは、レッグ部2の径方向外側に向かってカールしている。レッグ部2の下端部(袖口部)2aが径方向外側に向かってカールする場合、レッグ部2のかわいらしさが引き立ち、意匠性が向上する。レッグ部2の下端部(袖口部)2aには、たとえば、口ゴムが形成されており、口ゴムが上方に折り返されている。口ゴムを折り返した設計よりなる下端部(袖口部)では、足首が過度に締め付けられ着用感が必ずしも良好ではないが、レッグ部2の下端部(袖口部)2aが径方向外側に向かってカールする場合、そのような締め付けが解消し、着用感が向上する。
【0037】
パンティ部3は、人体Bの下腹部から腰部および臀部を覆う部位である。パンティ部3は、図1Aおよび図1Bに示されるように、レッグ部2と縫着されることなく、レッグ部2の上部にレッグ部2と一体的に形成されている。パンティ部3は、上方に人体Bの腰部に位置付けられる1つの開口を有し、下方にレッグ部2と連通する2つの開口を有する。パンティ部3の上端には、パンティ部3を形成する編地が上下方向で折り返されて端部が縫着されて、腰部ベルト31が形成されている。パンティ部3は、腰部ベルト31により人体Bの腰部を締め付けることで、下肢用衣類1が下方にずり落ちることを抑制する。
【0038】
パンティ部3の編成は、特に限定されることはないが、本実施形態では、パンティ部3は、レッグ部2と同じ非弾性糸Y1および第1の弾性糸Y21によって編成されている。パンティ部3をレッグ部2と同じ糸によって編成することで、丸編機などの編機において、下肢用衣類1の足首部21からパンティ部3(またはパンティ部3の左身頃11および右見頃12)を連続的で一体的に編み上げることができる。パンティ部3の編地は、レッグ部2と同じ編地であってもよく、異なる編地であってもよい。レッグ部2の編地として、平編地、フロート編地、タック編地などが例示される。
【0039】
以上のように構成される本実施形態に係る下肢用衣類1は、レッグ部2を備え、レッグ部2が、足首部21、脹脛部22、大腿部23の順に、着圧が段階的に低くなるように設計されており下肢用衣類であって、レッグ部2は、弾性糸Y21、Y22を含んで編成されており、レッグ部2の長手方向Lにおいて隣接する2つのコースのうちの一方のコースC21、C22が2目以上の周期でフロートして編成されている。
【0040】
本実施形態に係る下肢用衣類1によれば、レッグ部2において、一方のコースC21、C22が2目以上の周期でフロートして編成されている。このように、一方のコースC21、C22が2目以上の周期でフロートすることで、一方のコースC21、C22が、他方のコースC1と絡まずに、他方のコースC1の編目に拘束され難くなって幅方向Wに伸長し易くなるので、レッグ部2の編地Kが、弾性変形し易い編地となる。その結果として、レッグ部2は、人体Bの肌に沿い易くなるので、レッグ部2の肌へのフィット感が良好になる。また、比較的小さい伸長応力をレッグ部2に加えることで、下肢用衣類1を着脱することができるため、着脱性が良好になる。さらに、歩行動作などによって人体Bの筋肉が伸縮することに伴い、人体Bの脚の周長が変化したときに、レッグ部2における肌への着圧値の変化が小さいため、着圧の安定性が良好になる。さらに、レッグ部2は、足首部21から大腿部23に向かって、着圧が段階的に低くなるように設計されることで、下肢用衣類1が人体Bの下肢に装着されたときに、レッグ部2が筋肉を圧迫し血液を上方に押し上げるので、下肢の疲れやむくみの軽減の効果を期待することができる。
【0041】
レッグ部2は、一方のコースC21、C22が、2目以上、6目以下の周期でフロートして編成されていてもよい。この場合、レッグ部2の編地Kが有する高い弾性をより際立たせるとともに、人体Bの脚に所望の着圧をより与え易くなる。
【0042】
レッグ部2は、表地Kaおよび裏地Kbを有し、レッグ部2の長手方向Lに沿う複数条のリブRが表地Kaに表出するように編成されており、他方のコースC1は、表地Kaとなる非弾性糸Y1による非弾性コースであり、一方のコースC21、C22は、裏地Kbとなる弾性糸Y21、Y22による弾性コースであり、レッグ部2の長手方向Lにおいて、非弾性コースおよび弾性コースが交互に編成されていてもよい。この場合、レッグ部2の表地Kaは、裏地Kbの弾性コースC21、C22の弾性糸Y21、Y22の伸長を妨げることなく、幅方向Wにおいて、撓んだリブRが撓みを減ずるように伸長する。しかし、表地Kaは、非弾性糸Y1から構成されるので、リブRの撓みがなくなると伸長しなくなるので、レッグ部2の各部位が、対応する人体Bの脚の部位から外れて位置付けられることが抑制される。このように、レッグ部2が、対応する人体Bの脚の部位に位置付けられると、その脚の部位に応じた設計通りの着圧を人体Bの脚に加え易くなる。
【0043】
弾性糸Y21、Y22は、互いに異なる特性の糸である第1の弾性糸Y21および第2の弾性糸Y22を含み、弾性コースC21、C22では、レッグ部2の長手方向Lにおいて、第1の弾性糸Y21による第1の弾性コースC21、および、第2の弾性糸Y22による第2の弾性コースC22が交互に編成されていてもよい。この場合、弾性糸Y21、Y22それぞれが有する有利な特性を発現させ易くなる。
【0044】
非弾性糸Y1は、ウーリーナイロン糸であり、第1の弾性糸Y21は、ポリウレタン糸にナイロン糸を1重に巻き付けたシングルカバリング糸であり、第2の弾性糸Y22は、ポリウレタン糸にナイロン糸を2重に巻き付けたダブルカバリング糸であってもよい。この場合、比較的高い弾性を有する傾向にあるシングルカバリング糸によって、肌へのフィット感をさらに向上させるとともに、比較的低い弾性を有する傾向にあるダブルカバリング糸によって、人体Bの脚に所望の着圧をさらに与え易くなる。また、比較的太いダブルカバリング糸の間に、比較的細いシングルカバリング糸が入り込んで、裏地Kbの編目が細かく見えるので、裏地Kbが透けるように見えることが抑制される。さらに、非弾性糸Y1をウーリーナイロン糸とすることで、表地Kaに羊毛地のような外観および触感を与えることができる。
【0045】
下肢用衣類1が人体Bの下肢に装着されたときに、レッグ部2の長手方向Lにおいて、足首部21の伸長応力が1N~3Nであり、大腿部23の伸長応力が1N~3Nであり、レッグ部2の幅方向Wにおいて、足首部21の伸長応力が2N~5Nであり、大腿部23の伸長応力が2N~5Nであってもよい。この場合、下肢用衣類1が人体Bの下肢に装着されたときに、肌への締付感を与えずに、脚を適度にサポートすることができる。
【実施例0046】
以下、実施例をもとに本発明の下肢用衣類の優れた効果を説明する。ただし、本発明の下肢用衣類は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例)
実施例に係る下肢用衣類として、以下のように、長手方向Lに沿って、複数条のリブRが表地Kaに表出するレッグ部2と、パンティ部3とを有する、図1Aおよび図1Bに示されるような下肢用衣類1を作製した。レッグ部2のサイズを選定することで、大腿部23の着圧が所定の着圧(具体的には、4hPa~21hPaの範囲内の着圧)となるように、レッグ部2を着圧設計した。選定したサイズに基づいて、所定の形状に編成した丸編地から左身頃11および右見頃12を裁断し、左身頃11および右見頃12を互いに縫着して下肢用衣類1を作製した。左身頃11および右見頃12の編成では、非弾性糸Y1として、ウーリーナイロン糸を用い、第1の弾性糸Y21として、ポリウレタン糸にナイロン糸を1重に巻き付けたシングルカバリング糸を用い、第2の弾性糸Y22として、ポリウレタン糸にナイロン糸を2重に巻き付けたダブルカバリング糸を用いた。左身頃11および右見頃12のレッグ部2において、非弾性糸Y1による非弾性コースC1、第1の弾性糸Y21による第1の弾性コースC21、および第2の弾性糸Y22による第2の弾性コースC22を、レッグ部2の長手方向Lにおいて、非弾性コースC1、第1の弾性コースC21、非弾性コースC1、第2の弾性コースC22の順に交互に編成した。第1の弾性コースC21および第2の弾性コースC22が3目の周期でフロートするように編成した。下肢用衣類1の作製後に、着圧測定機で設計通りの着圧が得られることを確認した。
【0048】
(比較例)
比較例に係る下肢用衣類として、以下のように、レッグ部およびパンティ部を有する下肢用衣類を作製した。レッグ部のサイズを選定することで、実施例に係る下肢用衣類と同様の着圧となるように、レッグ部を着圧設計した。選定したサイズに基づいて、所定の形状に編成した丸編地から左身頃および右見頃を裁断し、左身頃および右見頃を互いに縫着して下肢用衣類を作製した。左身頃および右見頃の編成では、非弾性糸を用いずに、実施例に係る下肢用衣類と同じ第1の弾性糸および第2の弾性糸を用いた。左身頃および右見頃のレッグ部の大腿部では、第1の弾性糸による第1の弾性コースおよび第2の弾性糸による第2の弾性コースをプレーン編みで編成した。下肢用衣類の作製後に、着圧測定機で設計通りの着圧が得られることを確認した。
【0049】
(伸長率に対する伸長応力の測定)
実施例および比較例に係る下肢用衣類の大腿部から、横長に編地片をそれぞれ裁断した。裁断した編地片それぞれについて、JIS規格L1096:2010に準拠する方法で伸長率を測定し、その伸長率での伸長応力を測定した。編地片のそれぞれに対して、定速伸長型引張試験器を用いて、つかみ間隔を50mmとして、編地片を長手方向に50mm/分の引張速度で引っ張りながら、伸長率および伸長応力を測定した。伸長率は、編地片の元の長さをL0とし、伸長させたときの長さをL1としたとき、(L1-L0)/L0×100(%)から算出した。実施例および比較例に係る下肢用衣類の大腿部の幅方向における伸長率および伸長応力の測定結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
(対象ユーザ層の平均体型に対する下肢用衣類の伸長率)
30歳代の女性の平均体型を有する人体ダミーを用意し、実施例および比較例に係る下肢用衣類を人体ダミーに装着させることで、大腿部の伸長率を測定した。伸長率は、下肢用衣類の太腿部の長手方向または幅方向の元の長さをL0とし、下肢用衣類を人体ダミーに装着させたときの太腿部の長手方向または幅方向の長さをLAとしたとき、(LA-L0)/L0×100(%)から算出した。人体ダミーに対する実施例および比較例に係る下肢用衣類の大腿部の伸長率の測定結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
(測定結果)
表1を見ると、実施例に係る下肢用衣類は、比較例に係る下肢用衣類よりも小さい伸長応力で同じ伸長率に伸長している。この結果から、実施例に係る下肢用衣類は、編地が非弾性糸を含んで編成されていても、比較例に係る下肢用衣類よりも、伸長し易く、伸長特性の傾きが小さいことが分かる。実施例に係る下肢用衣類は、比較例に係る下肢用衣類よりも伸長し易いことから、人体の下肢に装着されたときに、肌に沿い易く、レッグ部の肌へのフィット感が良好であると考えられる。また、実施例に係る下肢用衣類は、比較例に係る下肢用衣類よりも伸長特性の傾きが小さいことから、歩行動作などによる人体の脚の周長の変化に伴い、レッグ部が伸縮する場合に、肌への着圧値の変化が小さく、着圧の安定性が良好であると考えられる。このように、編地が非弾性糸を含んで編成されていても伸長し易いのは、上述のように、非弾性糸による表地のリブが、弾性糸による裏地の弾性変形を妨げずに、撓みを減ずるように伸長しているためと推測される。
【0054】
次に、表2を見ると、実施例に係る下肢用衣類は、比較例に係る下肢用衣類よりも伸長率が大きい状態で、人体ダミーに装着されている。この結果から、実施例に係る下肢用衣類は、設定された着圧を得るために、比較例に係る下肢用衣類よりも伸長させた状態で装着されていることが分かる。また、表2の伸長率に対応する伸長応力を表1で見ると、幅方向において、人体ダミーに装着された状態での伸長応力は、実施例に係る下肢用衣類(伸張率:150%)では、前後の伸長率(140%および160%)での伸長応力から類推すると、約3.3Nであり、比較例に係る下肢用衣類(伸張率:100%)では、5.9Nである。たとえば、下肢用衣類を着脱するときに、装着時よりも伸長率を20%増加させると仮定すると、着脱時の伸長応力は、実施例に係る下肢用衣類(伸張率:170%)では、前後の伸長率(160%および180%)での伸長応力から類推すると、約3.8Nであり、比較例に係る下肢用衣類では、7.0Nである。このことから、実施例に係る下肢用衣類は、比較例に係る下肢用衣類よりも小さい伸長応力で着脱可能であると考えられる。
【符号の説明】
【0055】
1 下肢用衣類
11 左身頃
12 右見頃
2 レッグ部
21 足首部
22 脹脛部
23 大腿部
2a 下端部(袖口部)
3 パンティ部
31 腰部ベルト
B 人体
A1 リブが形成されている領域
A2 リブが形成されていない領域
C1 他方のコース(非弾性コース)
C21 一方のコース(第1の弾性コース)
C22 一方のコース(第2の弾性コース)
K 編地
Ka 表地
Kb 裏地
L 長手方向
R リブ
W 幅方向
Y1 非弾性糸
Y21 第1の弾性糸
Y22 第2の弾性糸
図1A
図1B
図2A
図2B
図3