(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168615
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ロボットシステム、その制御方法、及びその制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241128BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085450
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】315014671
【氏名又は名称】東京ロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】松尾 雄希
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡易な構成により移動ロボットとステーションとの間の高精度な位置決めを行うことにある。
【解決手段】床面上を移動する移動機構を備えた、移動ロボットと、いずれかの側面に前記移動ロボットと接触する接触部と、前記接触部に接触した前記移動ロボットの位置を変える変位機構と、を備え、前記移動ロボットと所定の結合姿勢で結合される、ステーションと、前記移動ロボットを制御する、移動ロボット制御部と、前記ステーションを制御する、ステーション制御部と、を備えたロボットシステムであって、前記ステーション制御部は、前記移動ロボットの移動により前記移動ロボットが前記ステーションの前記接触部と接触した場合、前記変位機構を動作させることにより、前記移動ロボットを前記移動機構が動作した状態で変位させ、それにより、前記移動ロボットと前記ステーションとを前記結合姿勢とする、ロボットシステムが提供される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上を移動する移動機構を備えた、移動ロボットと、
いずれかの側面に前記移動ロボットと接触する接触部と、前記接触部に接触した前記移動ロボットの位置を変える変位機構と、を備え、前記移動ロボットと所定の結合姿勢で結合される、ステーションと、
前記移動ロボットを制御する、移動ロボット制御部と、
前記ステーションを制御する、ステーション制御部と、を備えたロボットシステムであって、
前記ステーション制御部は、前記移動ロボットの移動により前記移動ロボットが前記ステーションの前記接触部と接触した場合、前記変位機構を動作させることにより、記移動ロボットを前記移動機構が動作した状態で変位させ、それにより、前記移動ロボットと前記ステーションとを前記結合姿勢とする、ロボットシステム。
【請求項2】
前記変位機構は、前記接触部を挟むように前記側面に配置された挟持機構である、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記挟持機構は、グリッパである、請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記グリッパは直動機構により開閉する、請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記グリッパは2つの爪を有し、各前記爪は連動して開閉する、請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記グリッパは、2つの爪を有し、一方の前記爪は固定され他方の前記爪のみ動作する、請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記移動機構は差動二輪である、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記移動ロボットの角にはローラが配置されている、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記移動機構は、バネにより前記床面に押し当てられた1又は複数の駆動輪と、前記駆動輪への荷重を減らす支持機構と、を備えるものである、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項10】
前記支持機構は、1又は複数のキャスタである、請求項9に記載のロボットシステム。
【請求項11】
前記床面は、低摩擦素材で構成されている、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項12】
前記移動ロボット及び/又は前記ステーションには、前記移動ロボットが前記ステーションの接触部に接触したか否かを検出するセンサが設けられている、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項13】
床面上を移動する移動機構を備えた、移動ロボットと、
いずれかの側面に前記移動ロボットと接触する接触部と、前記接触部に接触した前記移動ロボットの位置を変える変位機構と、を備え、前記移動ロボットと所定の結合姿勢で結合される、ステーションと、
前記移動ロボットを制御する、移動ロボット制御部と、
前記ステーションを制御する、ステーション制御部と、を備えたロボットシステムの制御方法であって、
前記ステーション制御部は、
前記移動ロボットの移動により前記移動ロボットが前記ステーションの前記接触部と接触した場合、前記変位機構を動作させることにより、記移動ロボットを前記移動機構が動作した状態で変位させ、それにより、前記移動ロボットと前記ステーションとを前記結合姿勢とするステップ、を実行する、ロボットシステムの制御方法。
【請求項14】
床面上を移動する移動機構を備えた、移動ロボットと、
いずれかの側面に前記移動ロボットと接触する接触部と、前記接触部に接触した前記移動ロボットの位置を変える変位機構と、を備え、前記移動ロボットと所定の結合姿勢で結合される、ステーションと、
前記移動ロボットを制御する、移動ロボット制御部と、
前記ステーションを制御する、ステーション制御部と、を備えたロボットシステムの制御プログラムであって、
前記ステーション制御部において、
前記移動ロボットの移動により前記移動ロボットが前記ステーションの前記接触部と接触した場合、前記変位機構を動作させることにより、記移動ロボットを前記移動機構が動作した状態で変位させ、それにより、前記移動ロボットと前記ステーションとを前記結合姿勢とするステップ、を実行する、ロボットシステムの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動ロボット、特に、ステーションへとドッキングされる移動ロボット等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、倉庫内、工場内、家庭内等において自律移動ロボットが活用されている(例えば、特許文献1)。自律移動ロボットは、その機能を発揮するため、定期的にステーションを利用することがある。例えば、自律移動ロボットは、バッテリの充電等のために、定期的にステーション(充電ステーション)を利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、移動ロボットがステーションへとドッキング(結合)するためには、移動ロボットとステーションの間の位置決めが必要となる。従前、この種の位置決めには、様々な手法が用いられていた。例えば、LiDAR等のセンサを用いて自己位置推定を行い環境地図から位置決めを行う手法、ステーションに付されたマーカをカメラで撮影して位置の推定を行う手法等、各種のセンサを用いた高度な位置決め手法が利用されていた。
【0005】
しかしながら、従前の位置決め手法を利用しても、移動ロボットとステーションとの間の位置ずれ誤差をある一定以上減らすことは困難であった。例えば、LiDARを用いた手法では、様々な要因からセンサ検出誤差は避けられない。また、マーカをカメラ撮影する場合には、センサ検出誤差に加えてカメラ画角やピント等を調整しなければならずこれらも誤差の原因となる。
【0006】
本発明は上述の技術的背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成により移動ロボットとステーションとの間の高精度な位置決めを行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の技術的課題は、以下の構成を有するロボットシステム、その制御方法、プログラム等により解決することができる。
【0008】
すなわち、本発明に係るロボットシステムは、床面上を移動する移動機構を備えた、移動ロボットと、いずれかの側面に前記移動ロボットと接触する接触部と、前記接触部に接触した前記移動ロボットの位置を変える変位機構と、を備え、前記移動ロボットと所定の結合姿勢で結合される、ステーションと、前記移動ロボットを制御する、移動ロボット制御部と、前記ステーションを制御する、ステーション制御部と、を備えたロボットシステムであって、前記ステーション制御部は、前記移動ロボットの移動により前記移動ロボットが前記ステーションの前記接触部と接触した場合、前記変位機構を動作させることにより、記移動ロボットを前記移動機構が動作した状態で変位させ、それにより、前記移動ロボットと前記ステーションとを前記結合姿勢とする。
【0009】
このような構成によれば、移動ロボットの移動機構と床面の間の動摩擦と、ステーションの変位機構により小さな力で移動ロボットを変位させて所定の結合姿勢とすることができる。これにより、簡易な構成により移動ロボットとステーションとの間の高精度な位置決めを行うことができる。
【0010】
前記変位機構は、前記接触部を挟むように前記側面に配置された挟持機構であってもよい。
【0011】
このような構成によれば、接触部へと接触した移動ロボットを外側から内側へと変位させることができ、簡易な構成で高精度な位置決めを行うことができる。
【0012】
前記挟持機構は、グリッパであってもよい。
【0013】
このような構成によれば、グリッパにより移動ロボットを変位させることができ、簡易な構成で高精度な位置決めを行うことができる。
【0014】
前記グリッパは直動機構により開閉する、ものであってもよい。
【0015】
このような構成によれば、直動機構により効率的に高精度な位置決めを行うことができる。
【0016】
前記グリッパは2つの爪を有し、各前記爪は連動して開閉する、ものであってもよい。
【0017】
このような構成によれば、簡易な構成で2つの爪の間の所定位置に移動ロボットを移動させて位置決めを行うことができる。
【0018】
前記グリッパは、2つの爪を有し、一方の前記爪は固定され他方の前記爪のみ動作する、ものであってもよい。
【0019】
このような構成によれば、動力伝達機構を簡素化できると共に、一方の固定爪に寄せるようにして移動ロボットを移動させて位置決めを行うことができる。
【0020】
前記移動機構は差動二輪であってもよい。
【0021】
このような構成によれば、比較的簡易な移動機構である差動二輪を用いつつ高精度にステーションと移動ロボットとの間の位置決めを行うことができる。
【0022】
前記移動ロボットの角にはローラが配置されている、ものであってもよい。
【0023】
このような構成によれば、接触部に倣いやすくなると共に、移動ロボット又はステーションの破損を防止することができる。
【0024】
前記移動機構は、バネにより前記床面に押し当てられた1又は複数の駆動輪と、前記駆動輪への荷重を減らす支持機構と、を備えるものであってもよい。
【0025】
このような構成によれば、より滑りが生じやすくなり移動ロボットの変位が容易となる。
【0026】
前記支持機構は、1又は複数のキャスタであってもよい。
【0027】
このような構成によれば、キャスタにより荷重を担うことができる。
【0028】
前記床面は、低摩擦素材で構成されている、ものであってもよい。
【0029】
このような構成によれば、より滑りが生じやすくなり移動ロボットの変位が容易となる。
【0030】
前記移動ロボット及び/又は前記ステーションには、前記移動ロボットが前記ステーションの接触部に接触したか否かを検出するセンサが設けられている、ものであってもよい。
【0031】
このような構成によれば、移動ロボットがステーションに結合したか否かをセンサを介して検出することができる。
【0032】
別の角度から見た本発明は、方法であって、床面上を移動する移動機構を備えた、移動ロボットと、いずれかの側面に前記移動ロボットと接触する接触部と、前記接触部に接触した前記移動ロボットの位置を変える変位機構と、を備え、前記移動ロボットと所定の結合姿勢で結合される、ステーションと、前記移動ロボットを制御する、移動ロボット制御部と、前記ステーションを制御する、ステーション制御部と、を備えたロボットシステムの制御方法であって、前記ステーション制御部は、前記移動ロボットの移動により前記移動ロボットが前記ステーションの前記接触部と接触した場合、前記変位機構を動作させることにより、記移動ロボットを前記移動機構が動作した状態で変位させ、それにより、前記移動ロボットと前記ステーションとを前記結合姿勢とするステップ、を実行する。
【0033】
別の角度から見た本発明は、プログラムであって、床面上を移動する移動機構を備えた、移動ロボットと、いずれかの側面に前記移動ロボットと接触する接触部と、前記接触部に接触した前記移動ロボットの位置を変える変位機構と、を備え、前記移動ロボットと所定の結合姿勢で結合される、ステーションと、前記移動ロボットを制御する、移動ロボット制御部と、前記ステーションを制御する、ステーション制御部と、を備えたロボットシステムの制御プログラムであって、前記ステーション制御部において、前記移動ロボットの移動により前記移動ロボットが前記ステーションの前記接触部と接触した場合、前記変位機構を動作させることにより、記移動ロボットを前記移動機構が動作した状態で変位させ、それにより、前記移動ロボットと前記ステーションとを前記結合姿勢とするステップ、を実行する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、簡易な構成により移動ロボットとステーションとの間の高精度な位置決めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、移動ロボットシステムの全体構成図である。
【
図4】
図4は、ステーションと移動ロボットが結合(ドッキング)した状態を示す説明図である。
【
図5】
図5は、ステーションのハードウェア構成に関する説明図である。
【
図6】
図6は、移動ロボットのハードウェア構成に関する説明図である。
【
図7】
図7は、移動ロボットがステーションに結合するまでの動作フローチャートである。
【
図8】
図8は、ステーションの動作フローチャートである。
【
図9】
図9は、ステーションへと向けて移動中の移動ロボットを平面視した模式図である。
【
図10】
図10は、1つのローラがステーションの接触部と接触した場合の移動ロボットを平面視した模式図である。
【
図11】
図11は、移動ロボットの移動方向前面の一対のローラが一対の接触部にそれぞれ接触した場合を平面視した模式図である。
【
図12】
図12は、移動ロボットのステーションへの接触角度に関して説明する模式図(その1)である。
【
図13】
図13は、移動ロボットのステーションへの接触角度に関して説明する模式図(その2)である。
【
図14】
図14は、移動ロボットとステーションとの間の位置合わせが完了した状態を示す模式図である。
【
図15】
図15は、移動ロボットの移動機構の変形例に関する説明図である。
【
図16】
図16は、床面を低摩擦床とする変形例に関する説明図である。
【
図17】
図17は、ローラを角に設けない構成の変形例に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の好適な実施の形態について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0037】
(1.第1の実施形態)
第1の実施形態として、本発明を倉庫等で使用されて所定の作業を行う移動ロボットシステム100に対して適用した例について説明する。なお、適用対象は倉庫内のシステム等に限定されず、様々に変更することができる。
【0038】
(1.1 システムの構成)
図1は、本実施形態に係る移動ロボットシステム100の全体構成図である。同図から明らかな通り、移動ロボットシステム100は、サーバ10と、ステーション30と、移動ロボット50とを含み、それらはネットワークを介して接続されている。なお、本実施形態においては、移動ロボットシステム100をサーバを含むネットワークシステムとして構成するものの、その構成は自在に変更可能である。
【0039】
サーバ10は、PC(パーソナルコンピュータ)等の情報処理装置で構成され、移動経路の生成等の後述の種々の情報処理を行う。ステーション30は、移動ロボット50による移動により移動ロボット50と結合(ドッキング)し、移動ロボット50に対して所定の作業又は処理を行う。所定の作業又は処理とは、例えば、バッテリ交換作業や充電処理である。移動ロボット50は、サーバ10から取得した移動経路に基づいて所定の領域内を移動して作業を行うと共に、適時にステーション30へと移動してステーション30と結合し、ステーション30による所定の作業又は処理を受ける。
【0040】
図2は、本実施形態に係るステーション30の外観斜視図である。同図から明らかな通り、ステーション30は、略直方体形状であり、移動ロボット50と結合される側面の下端には開口部が設けられている。この開口部の内部には移動ロボット50に対する作業又は処理を行うための機構又は装置等が備えられている。
【0041】
開口部の下端の左右の端には、移動ロボット50と接触するための一対の薄板状の接触部31(31a、31b)が設けられている。この一対の接触部31に移動ロボットの一対の接触部51がそれぞれ接触することで、ステーション30と移動ロボット50の位置合わせが行われる。
【0042】
各接触部31の近傍、本実施形態においては接触部31の左右の端には、接触部31を挟むように挟持機構であるグリッパを構成する一対の爪32(32a、32b)がそれぞれ配置される。後述するように、このグリッパの爪32が連動して互いに平行に開閉することによって、移動ロボット50がステーション30側面に平行な方向に変位させられて位置決めされる。
【0043】
このような構成によれば、接触部31へと接触した移動ロボット50を外側から内側へと変位させることができ、簡易な構成で高精度な位置決めを行うことができる。特に、グリッパを採用していることで、簡易な構成で2つの爪32の間の所定位置に移動ロボットを移動させて位置決めを行うことができる。また、連動していることで効率的に変位させることができる。
【0044】
なお、本実施形態においては、2つの爪32は連動して動作するものの、本発明はそのような構成に限定されない。従って、例えば、他の個数の爪32を採用してもよい。また、一方の爪を固定とし、他方の爪のみを開閉させる構成としてもよい。
【0045】
一方の爪のみを動作させる構成によれば、動力伝達機構を簡素化できると共に、一方の固定爪に寄せるようにして移動ロボットを移動させて位置決めを行うことができる。
【0046】
また、変位機構の例として、本実施形態においては挟持機構、特に一対の爪から成るグリッパを示すものの、このような構成に限定されない。従って、移動ロボット50を変位させる他の機構を採用してもよい。
【0047】
各接触部31の移動ロボット50との接触面には接触検出センサ(不図示)が備えられている。これにより、ステーション30は移動ロボット50との接触を検出することができる。接触検出センサは、本実施形態においては、圧力検出センサであるが、このような構成に限定されず他の種々のセンサを採用することもできる。また、ステーション30と移動ロボット50との間の接触を検出できる構成であればどのような構成を採用してもよい。
【0048】
各爪32の内側には、爪と物体との接触を検出する爪接触検出センサ(不図示)が備えらえている。これにより、各爪32に対して移動ロボット50が接触したか否かを検出することができる。接触検出センサは、本実施形態においては、圧力検出センサであるが、このような構成に限定されず他の種々のセンサを採用することもできる。また、ステーション30の爪32と移動ロボット50との接触を検出できる構成であればどのような構成を採用してもよい。
【0049】
図3は、本実施形態に係る移動ロボット50の外観斜視図である。同図から明らかな通り、移動ロボット50は、直方体形状の筐体を有し、各角には回転自在なローラ51が設けられている。ステーション30との位置合わせの際、このローラ51のうちの一対がステーション30の接触部31へと接触することとなる。
【0050】
このようなローラ51を備えた構成によれば、接触面に対して倣いやすくなると共に、移動ロボット50又はステーション30の筐体等の破損を防止することができる。
【0051】
移動ロボット50の底面には移動機構52が設けられいる。移動機構52は、少なくとも移動ロボット50に対して直進移動をもたらすことが可能であり、本実施形態において、移動機構52は差動二輪である。なお、移動機構52はこのような構成に限定されず、他の公知の移動機構を採用してもよい。例えば、オムニホイール等の全方位移動機構等を備えてもよい。
【0052】
また、同図には示されていないものの、移動ロボット50には、LiDAR、カメラ等の自己位置推定を用いた移動に必要な種々のセンサを備えている。
【0053】
なお、移動ロボット50は、実行する作業に応じて他の構成をさらに備えてもよく、例えば、荷物を搬送するための装置や機構等を備えてもよい。
【0054】
図4は、ステーション30と移動ロボット50が結合(ドッキング)した状態を示す説明図である。同図から明らかな通り、ステーション30の一側面に備えられた一対の接触部31に対して移動ロボット50の前面の一対のローラ51が接触し、かつ、グリッパの爪32が閉じることにより定義される位置に移動ロボット50が配置されることで、ステーション30と移動ロボット50との間の位置合わせが行われる。すなわち、移動ロボット50がステーション30に対してこの位置・姿勢となることで、ステーション30は移動ロボット50に対して所定の作業又は処理を精度良く行うことができる。
【0055】
なお、ステーション30と移動ロボット50の結合のための位置合わせにあたり、ステーション30側の移動ロボット50との接触が想定される部分(本実施形態の接触部31)をステーション側接触部、移動ロボット50側のステーション30との接触が想定される部分(本実施形態のローラ51(接触部51))を移動ロボット側接触部、と称呼してもよい。
【0056】
図5は、ステーション30のハードウェア構成に関する説明図である。同図から明らかな通り、ステーション30は、制御部301、記憶部302、通信部303、グリッパ制御部305、センサ入力部306、及びI/O部307を備え、それらは互いにバスを介して接続されている。
【0057】
制御部301は、CPU等の演算装置で成りプログラム等を実行して後述の種々の制御処理を行う。記憶部302は、ROM/RAM、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記憶装置で成り、各種のデータやプログラムを記憶する。通信部303は、ネットワークを介して外部装置との間で通信を行う通信ユニットであり、外部装置との間で情報の授受を行う。
【0058】
グリッパ制御部305は、ステーション30のグリッパの爪32を制御する処理を行う。センサ入力部306は、ステーション30に備えられた接触検出センサ、爪接触検出センサ等の各種のセンサからの情報を受け付けて制御部301等に提供する処理を行う。I/O部307は、外部装置が取り付けられたときに入出力処理を行う。
【0059】
図6は、移動ロボット50のハードウェア構成に関する説明図である。同図から明らかな通り、移動ロボット50は、制御部501、記憶部502、通信部503、移動制御部505、センサ入力部506、及びI/O部507を備え、それらは互いにバスを介して接続されている。
【0060】
制御部501は、CPU等の演算装置で成りプログラム等を実行して後述の種々の制御処理を行う。記憶部502は、ROM/RAM、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記憶装置で成り、各種のデータやプログラムを記憶する。通信部503は、ネットワークを介して外部装置との間で通信を行う通信ユニットであり、外部装置との間で情報の授受を行う。
【0061】
移動制御部505は、移動ロボット50の移動機構52を制御する処理を行う。センサ入力部506は、移動ロボット50に備えられたLiDARやカメラ等の各種のセンサからの情報を受け付けて制御部501等に提供する処理を行う。I/O部507は、外部装置が取り付けられたときに入出力処理を行う。
【0062】
サーバ10は、PC等の情報処理装置で成り、同様に、制御部、記憶部、通信部、入力処理部、画像出力部、音声出力部、I/O部等を備え、これらは互いにバスを介して接続されている。
【0063】
以上、本システムの構成について述べたが、本発明の構成は本実施形態に係るものに限定されない。従って、種々の変形が可能である。
【0064】
(1.2 システムの動作)
図7は、移動ロボット50がステーション30に結合するまでの動作フローチャートである。同図から明らかな通り、移動ロボット50は、サーバ10からステーション30までの経路情報を取得する処理を行う(S10)。
【0065】
経路情報の取得の後、移動ロボット50の移動制御部505は、移動経路に沿って移動ロボット50をステーション30へと移動させる移動制御処理を実行する(S11)。この移動制御処理は、サーバ10から所定の終了信号を受信するまで継続され(S12NO)、所定の終了信号を受信した場合(S12YES)、処理は終了する。
【0066】
後述するように、ステーション30は、ステーション30と移動ロボット50の結合完了を示す信号をサーバ10へと送信する(S27)。サーバ10は、この結合完了信号を受けて、移動ロボット50へと終了信号を送信する。移動ロボット50は、ステーション30の接触部31に接触してから結合完了信号を受信するまで、直進動作を行うよう制御される。
【0067】
なお、移動ロボット50の移動手法、移動の終了条件等はこのような構成に限定されず、他の種々の態様が可能である。例えば、移動ロボット50に備えられた所定のセンサにより移動終了を判定してもよいし、所定の装置により結合を監視して移動終了を判定してもよい。
【0068】
図8は、ステーション30の動作フローチャートである。処理が開始すると、ステーション30のセンサ入力部306は、接触部31に備えられた各接触検出センサからセンサ情報を取得し(S21)、所定の接触条件を満たすか判定する(S22)。所定の接触条件とは、本実施形態においては、ステーション30の一対の接触部31が移動ロボット50の一対の接触部51と接触することである。ステーション30と移動ロボット50とが所定の接触条件で接触していないと判定される場合(S22NO)、ステーション30は、センサ情報取得処理(S21)を繰り返す。
【0069】
図9は、ステーション30へと向けて移動中の移動ロボット50を平面視した模式図である。同図の状態にあっては、ステーション30の接触部31において接触が検出されないため、センサ情報の取得処理(S21)が繰り返される(S22NO)。
【0070】
図10は、1つのローラ51がステーション30の接触部31と接触した場合の移動ロボット50を平面視した模式図である。同図の状態にあっては、一方の接触部31においてローラ51との接触が検出されるものの、未だ両方の接触部31における接触は検出されていない。従って、やはりこの場合もセンサ情報の取得処理(S21)が繰り返される(S22NO)。
【0071】
一方、判定の結果、ステーション30と移動ロボット50とが所定の接触条件で接触していると判定される場合(S22YES)、ステーション30は、グリッパ制御処理を実行する(S23)。グリッパ制御処理とは、本実施形態においては、グリッパの各爪32を連動させて所定量閉じる処理である。
【0072】
図11は、移動ロボット50の移動方向前面の一対のローラ51が一対の接触部31にそれぞれ接触した場合を平面視した模式図である。同図の状態にあっては、両方の接触部31におけるローラ51との接触が検出されるため(S22YES)、ステーション30は、グリッパ制御処理を開始する(S23)。
【0073】
なお、このとき、移動ロボット50は、所定の角度条件でステーション30へと接触するよう制御される。
【0074】
図12は、移動ロボット50のステーション30への接触角度に関して説明する模式図である。同図の例にあっては、移動ロボット50の1つの角がステーション30の接触部31に接触した瞬間が描かれている。
【0075】
同図において、移動機構52である差動二輪を用いて直線的にステーション30へと向かって来た移動ロボット50は、ステーションの接触部31のうちの1つに対して、その角のローラ51を接触させる。移動ロボット50は、この接触の後も終了信号を受信するまで両輪を稼働させて直進動作を継続するよう制御される。
【0076】
ここで、移動ロボット50の中心から進行方向に向けられた仮想直線と、移動ロボット50の中心と移動ロボット50のステーション30と接触するローラ51の中心とを通る仮想直線とがなす角度をθとする。また、移動ロボット50の中心から進行方向に向けられた仮想直線と、ステーション30の接触部31を備える側面の法線とがなす角度をφとする。なお、移動ロボット50の中心とは、本実施形態においては、2つの車輪の車軸中心である。
【0077】
このとき、移動ロボット50は、φ<θを満たすようにステーション30へと接触する。
【0078】
図13は、移動ロボット50のステーション30への接触角度について説明する模式図である。同図(A)は、φ<θの条件を満たす場合を示しており、同図(B)は、φ<θの条件を満たさない場合(特に、φ>θの場合)を示している。
【0079】
同図(A)から明らかな通り、φ<θの条件を満たし、かつ、移動ロボット50が直進を継続する場合、移動ロボット50は、ステーション30の接触部31との接触部を中心として図中において時計回りに旋回し、最終的に移動ロボット50の進行方向前面の両角のローラ51がステーション30の接触部31へと接触することとなる(
図11参照)。この旋回の際、移動機構52の車輪は床面に対して滑ることとなる。
【0080】
このような構成によれば、ステーション30との接触後は直進制御のみにより移動ロボット50においてステーション30への倣い動作が生じるので、簡単な制御で移動ロボット50とステーション30との間の高精度な位置決めを行うことができる。
【0081】
一方、
図13(B)から明らかな通り、φ<θの条件を満たさない場合であって、かつ、移動ロボット50が直進を継続する場合、移動ロボット50は図中において反時計回りに旋回してしまい、移動ロボット50の前面の両角をステーション30へと結合させることが困難となる。
【0082】
すなわち、移動ロボット50がφ<θの条件を満たすようにステーション30へと接触することで、移動ロボット50を確実にステーション30に対して旋回させることができる。
【0083】
図8に戻り、グリッパ制御処理の後、ステーション30は、爪接触検出センサからセンサ情報を取得する処理を行う(S25)。その後、ステーション30は、取得したセンサ情報が所定のグリッパ停止条件を満たすか否かを判定する(S26)。所定のグリッパ停止条件とは、本実施形態においては、両方の爪32が移動ロボット50と接触したか否か、すなわち、2つの爪32で移動ロボット50を挟持した状態となっているか否かである。
【0084】
判定の結果、グリッパ停止条件を満たさない場合(S26NO)、再度一連の処理を実行する(S23~S26)。一方、判定の結果、グリッパ停止条件を満たす場合(S26YES)、すなわち、ステーション30のグリッパの両爪32が移動ロボット50と接触したと判定された場合、ステーション30は、グリッパ停止処理を行う(S27)。これにより、移動ロボット50とステーション30との間の位置合わせが完了する。
【0085】
図14は、移動ロボット50とステーション30との間の位置合わせが完了した状態(結合姿勢)を示す模式図である。同図から明らかな通り、移動ロボット50の進行方向前面の両角のローラ51がステーション30の接触部31へと接触した後、移動ロボット50は、その側面から爪32に押されてステーション30側面に平行な方向に平行移動する。前述の通り、このとき、移動ロボット50の車輪は常に直進動作を行っている。
【0086】
グリッパ停止処理の後、ステーション30は、移動ロボット50とステーション30との間の位置合わせ又は結合が完了したことを示す信号を通信によりサーバ10へと送信する(S28)。この結合完了信号を受信すると、サーバ10は、移動ロボット50へと結合完了信号を送信する。この結合完了信号を受信して、移動ロボット50は、移動制御処理を終了する。
【0087】
このような構成によれば、移動ロボット50の移動機構52と床面との間に動摩擦が生じるため、ステーションの変位機構(グリッパ)により小さな力で移動ロボット50を変位させることができる。これにより、簡易な構成により移動ロボット50とステーション30との間の高精度な位置決めを行うことができる。
【0088】
(2.変形例)
本発明は、様々に変形して実施することができる。
【0089】
上述の実施形態においては、移動ロボットの移動機構に係る車輪が床面との間で滑っている。そのため、移動ロボットが床面に対してさらに滑りやすくなる工夫を加えてもよい。
【0090】
図15は、移動ロボットの移動機構の変形例に関する説明図である。同図から明らかな通り、移動ロボット500の移動機構は、支持機構と駆動機構を備えている。より詳細には、支持機構として、それぞれ支柱と受動回転する車輪とから成る4つのキャスタ511と、駆動機構として、バネ513により床面へと押し当てられている2つの駆動輪512を有している。
【0091】
このような構成によれば、キャスタ511が荷重を担うことができるので、より滑りが生じやすくなり移動ロボット500において旋回が生じやすくなる。
【0092】
なお、滑りを支援する機構はこのような構成に限定されるものでなく、他の公知の滑り支援機構を採用してもよい。また、床面に対して滑りを生じやすくする工夫を行ってもよい。
【0093】
図16は、床面を低摩擦床とする変形例に関する説明図である。同図において、床面600には低摩擦素材の床が敷設されている。このとき、低摩擦床の摩擦係数は、移動機構による移動を可能としつつも滑りが生じやすい程度に調整されている。
【0094】
このような構成によっても、より滑りが生じやすくなり移動ロボット50において旋回が生じやすくなる。
【0095】
上述の実施形態においては、移動ロボットのステーションとの接触部及びローラは、移動ロボットの角に配置されていた。しかしながら、本発明はこのような構成に限定されない。
【0096】
図17は、ローラ81を角に設けない構成の変形例に関する説明図である。同図においては、移動ロボット80の接触部たる一対のローラ81は、その角ではなく、辺の途中に配置されている。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記の実施形態は、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、ロボット等を製造する産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0099】
10 サーバ
30 ステーション
31 ステーション側接触部
32 爪
50 移動ロボット
51 移動ロボット側接触部(ローラ)
52 移動機構
100 移動ロボットシステム