(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168627
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】作業機械を制御するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20241128BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E02F9/22 A
E02F9/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085466
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 圭
(72)【発明者】
【氏名】津村 総一
(72)【発明者】
【氏名】守 翔太
(72)【発明者】
【氏名】小山 陽哉
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA02
2D003AB01
2D003AC01
2D003BA03
2D003BA04
2D003BA07
2D003DB05
2D003DB07
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】自律的、半自律的、または遠隔地から操作可能な作業機械を適切に動作させることができる作業機械を制御するためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】本開示のシステムは、作業機と走行装置とを備える作業機械を制御するためのシステムであって、前記作業機械を制御するためのコントローラと、前記作業機械を操作するための作業機械操作部と、を備え、前記コントローラは、前記作業機械の累積走行距離を算出し、前記累積走行距離が所定の距離閾値以上となった場合に前記作業機械の所定の動作を停止させるための停止指令を出力し、前記作業機械操作部に対して所定の操作が行われた場合に前記累積走行距離を初期化する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機と走行装置とを備える作業機械を制御するためのシステムであって、
前記作業機械を制御するためのコントローラと、
前記作業機械を操作するための作業機械操作部と、
を備え、
前記コントローラは、
前記作業機械の累積走行距離を算出し、
前記累積走行距離が所定の距離閾値以上となった場合に前記作業機械の所定の動作を停止させるための停止指令を出力し、
前記作業機械操作部に対して所定の操作が行われた場合に前記累積走行距離を初期化する、
システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記距離閾値を所定の上下限値の範囲内で調整する
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記所定の動作は、前記走行装置の走行動作を少なくとも含む
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記作業機械操作部は、前記走行装置の走行動作の状態を、前進状態、後進状態、または動力切り離し状態のいずれかの状態に切り換える走行操作部を含み、
前記所定の操作は、前記走行操作部に対する前記走行装置の走行動作の状態の切換操作を含む
請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記作業機械操作部は、前記作業機械の進行方向を操向操作の割合に応じて変化させる操向操作部を含み、
前記所定の操作は、前記操向操作の割合を所定の操向閾値以上に変化させる操作を含む
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記作業機械操作部は、前記走行装置の速度を減速操作の割合に応じて変化させる減速操作部を含み、
前記所定の操作は、前記減速操作の割合を所定の減速閾値以上に変化させる操作を含む
請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記作業機械操作部は、前記作業機械を遠隔操作するために、作業現場から離れた管理センタに配置される
請求項1から6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
作業機と走行装置とを備える作業機械を制御するための方法であって、
前記作業機械の累積走行距離を算出するステップと、
前記累積走行距離が所定の距離閾値以上となった場合に前記作業機械の所定の動作を停止するステップと、
前記作業機械を操作するための作業機械操作部に対して所定の操作が行われた場合に前記累積走行距離を初期化するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械を制御するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自律的、半自律的、または遠隔地から操作可能な作業機械が知られている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載されているシステムでは、作業現場から離れた管理センタに配置されている遠隔操作装置をオペレータが操作することで遠隔から作業機械が操作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自律、半自律あるいは遠隔操作によって作業機械を運転するシステムでは、例えば通常想定されない動作が発生した場合に、その動作を停止させるための機能を持たせるということが考えられる。しかしながら、このような機能では、通常想定されない動作なのか否かの判定の仕方によっては、正常な動作にもかかわらず当該動作が停止してしまうということが起こり得るという課題がある。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、自律的、半自律的、または遠隔地から操作可能な作業機械を適切に動作させることができる作業機械を制御するためのシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るシステムは、作業機と走行装置とを備える作業機械を制御するためのシステムであって、前記作業機械を制御するためのコントローラと、前記作業機械を操作するための作業機械操作部と、を備え、前記コントローラは、前記作業機械の累積走行距離を算出し、前記累積走行距離が所定の距離閾値以上となった場合に前記作業機械の所定の動作を停止させるための停止指令を出力し、前記作業機械操作部に対して所定の操作が行われた場合に前記累積走行距離を初期化する。
【0007】
本開示の一態様に係る方法は、作業機と走行装置とを備える作業機械を制御するための方法であって、前記作業機械の累積走行距離を算出するステップと、前記累積走行距離が所定の距離閾値以上となった場合に前記作業機械の所定の動作を停止するステップと、前記作業機械を操作するための作業機械操作部に対して所定の操作が行われた場合に前記累積走行距離を初期化するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の作業機械を制御するためのシステムおよび方法では、作業機械の累積走行距離(連続走行距離)が所定の距離閾値以上となる動作を通常想定されない動作として、累積走行距離が距離閾値以上となる前に作業機械操作部に対して所定の操作が行われたときには累積走行距離を初期化するようした。この構成によれば、作業機械操作部が正常に操作されている状態で作業機械の動作が停止されるということを防止することができ、自律的、半自律的、または遠隔地から操作可能な作業機械を適切に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態に係る作業機械を制御するためのシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】遠隔操作システムの構成例を示すブロック図である。
【
図4】遠隔操作装置および表示装置の構成例を示す斜視図である。
【
図5】操向前後進変速レバーの動作例を示す斜視図である。
【
図6】操向レバー、走行レバーおよびデセルペダルの動作例を説明するための模式図である。
【
図7】車載コントローラの機能的構成例を示すブロック図である。
【
図8】走行装置の停止動作の例を示すタイミングチャートである。
【
図9】距離閾値調整部の動作例を説明するための模式図である。
【
図10】連続走行制限部の動作例を示すフローチャートである。
【
図11】操作状態が所定の状態であるか否かの判定処理の例を示すフローチャートである。
【
図13】作業機械の動作例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の作業機械を制御するためのシステムおよび方法の実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0011】
図1は、作業機械2を示す斜視図である。作業機械2は、例えばブルドーザである。
図1に示すように、作業機械2は、車体10と作業機13とを備えている。車体10は、運転室14と、動力室15と、走行装置12とを含む。運転室14には、図示しない運転席が配置されている。動力室15は、運転室14の前方に配置されている。動力室15には、作業機械2を駆動させるための動力を発生させるための動力源21と、後述する動力伝達装置とが配置されている。走行装置12は、左右一対の履帯16とブレーキ等を有している。作業機械2は、履帯16が回転することによって走行する。
【0012】
作業機13は、車体10に取り付けられている。作業機13は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトシリンダ19と、リッパ131と、リフトシリンダ132とを含む。リフトフレーム17は、上下に動作可能に車体10に取付けられている。リフトフレーム17は、ブレード18を支持している。ブレード18は、車体10の前方に配置されている。リフトシリンダ19は、車体10に連結されている。リフトシリンダ19の前端は、ブレード18の背面に回転可能に取り付けられている。リフトシリンダ19が伸縮することによって、ブレード18は、上下に動作する。リッパ131は、車体10の後方に配置されている。リフトシリンダ132は、車体10に連結されている。リフトシリンダ132の前端は、リッパ131に回転可能に取り付けられている。リフトシリンダ132が伸縮することによって、リッパ131は、上下に動作する。
【0013】
図2は、実施形態に係るシステム1の構成例を示すブロック図である。本実施形態に係るシステム1は、作業機械2と、遠隔操作システム3と、移動通信機4とを備えている。作業機械2は、鉱山、整地現場等の作業現場に配置される。
【0014】
本実施形態のシステム1は、作業機械2の累積走行距離(連続走行距離)が所定の距離閾値以上となる場合には、作業機械2の所定の動作を停止する。ただし、本実施形態では、累積走行距離が距離閾値以上となる前に作業機械2の操作部に対して所定の操作が行われたときには累積走行距離を初期化する。なお、本実施形態では、この作業機械2の累積走行距離が所定の距離閾値以上となる場合に作業機械2の所定の動作を停止する機能を、連続走行制限機能という。
【0015】
図2に示すように、作業機械2は、動力源21と、油圧ポンプ22と、動力伝達装置23と、PTO(Power Take Off)206と、制御弁207と、シャフト208と、出力軸センサ209と、制御弁210と、ブレーキ211とを備えている。本実施形態において、動力源21は、内燃機関である。動力源21は、出力を制御するための燃料噴射制御装置24を備える。油圧ポンプ22は、PTO206を介して動力源21によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ22から吐出された作動油は、リフトシリンダ19、132等に供給される。なお、
図2では、1つの油圧ポンプが図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0016】
PTO206は、動力源21の動力の少なくとも一部を油圧ポンプ22に伝達する。PTO206は、動力源21の動力を動力伝達装置23と油圧ポンプ22とに分配する。
【0017】
動力伝達装置23は、動力源21の駆動力を走行装置12に伝達する。動力伝達装置23は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。あるいは、動力伝達装置23は、例えば、トルクコンバータ、あるいは複数のギアを有するトランスミッションであってもよい。動力伝達装置23の動作は制御弁207によって制御される。動力伝達装置23は、走行装置12への動力の伝達を接続状態または動力切り離し状態に制御したり、変速比および前後進を制御したりする。
【0018】
動力伝達装置23が出力した駆動力は、シャフト208、図示していないベベルギア等を介して履帯16に伝達される。
図2では、一方の履帯16のみが図示されている。出力軸センサ209は、例えば、シャフト208の回転数(回転速度)(以下、出力回転数という)を検知して出力する。制御弁210は、ブレーキ211の動作を制御する。ブレーキ211は、作動油が供給された場合にシャフト208に対する制動力を緩め、作動油の供給が停止された場合に係合し、シャフト208に最大の制動力を掛けて履帯16の回転を停止させる。
【0019】
また、作業機械2は、車載コントローラ25と制御弁26とを備える。車載コントローラ25は、作業機械2を制御する。車載コントローラ25は、作業機械2に搭載されている。車載コントローラ25は、プロセッサとメモリとを含むコンピュータによって実現される。車載コントローラ25は、互いに別体の複数のコントローラによって構成されてもよい。車載コントローラ25は、取得したデータに基づいて作業機械2を制御するようにプログラムされている。なお、車載コントローラ25は、本開示に係る「コントローラ」の一構成例である。
【0020】
車載コントローラ25は、後述する遠隔コントローラ37からの遠隔制御信号に応じて、動力源21と動力伝達装置23とを制御することで、作業機械2を走行させる。車載コントローラ25は、遠隔コントローラ37からの遠隔制御信号に応じて、油圧ポンプ22と制御弁26とを制御することで、作業機13を動作させる。
【0021】
また、車載コントローラ25は、カメラ27からの画像信号を遠隔コントローラ37に送信する。遠隔コントローラ37は、画像信号に基づいて、作業機械2の周囲を示す画像を表示装置36に表示する。オペレータは、作業機械2の周囲を示す画像を表示装置36上で見ながら遠隔操作装置34を操作することで、作業機械2を制御することができる。なお、遠隔操作装置34は、本開示に係る「作業機械操作部」の一構成例である。
【0022】
制御弁26は、比例制御弁であり、車載コントローラ25からの指令信号によって制御される。制御弁26は、リフトシリンダ19等の油圧アクチュエータと、油圧ポンプ22との間に配置される。制御弁26は、油圧ポンプ22からリフトシリンダ19等に供給される作動油の流量を制御する。車載コントローラ25は、作業機13が上昇、あるいは下降するように、制御弁26を制御する。なお、制御弁26は、圧力比例制御弁であってもよい。あるいは、制御弁26は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0023】
作業機械2は、カメラ27と、車載操作装置28と、車載入力装置201と、車載表示装置202と、GNSS(Global Navigation Satellite System)203と、3次元センサ204と、IMU(Inertial Measurement Unit;慣性計測装置)205とを備えている。
【0024】
カメラ27は、1または複数の撮影部を含み、例えば、車体10に取り付けられている。カメラ27は、作業機械2の周囲の画像を取得する。カメラ27は、作業機械2の周囲の画像を示す画像信号を車載コントローラ25に送信する。
【0025】
車載操作装置28は、運転室14内に配置されている。車載操作装置28は、作業機械2を走行させるためにオペレータによって操作可能である。また、車載操作装置28は、作業機13を動作させるためにオペレータによって操作可能である。車載操作装置28は、例えば操作レバーを含む。車載操作装置28は、ペダル、スイッチ、あるいはタッチパネル等の他の操作部を含んでもよい。
【0026】
車載操作装置28は、オペレータによる操作を示す操作信号を、車載コントローラ25へ送信する。車載コントローラ25は、操作信号に応じて、動力源21と動力伝達装置23とを制御することで、作業機械2を走行させる。車載コントローラ25は、操作信号に応じて、油圧ポンプ22と制御弁26とを制御することで、作業機13を動作させる。
【0027】
車載入力装置201は、オペレータの入力操作を受け付ける装置であり、スイッチ、ダイヤル、タッチパネル等の入力装置を含む。車載表示装置202は、オペレータに情報を出力(提供)するための装置であり、ディスプレイ、表示灯等を含む。なお、車載入力装置201と車載表示装置202は、表示画面と表示画面に対するタッチ操作を検知するセンサとを組み合わせた装置として一体的に構成された装置を含んでいてもよい。また、車載表示装置202は、例えば合成音声、警報音等を出力する装置を含んでいてもよい。
【0028】
GNSS203は、車体10の位置および車体10が向く方位を演算する。GNSS203は、例えば、GNSSを構成する人工衛星から測位信号を受信する2つの受信器を備える。2つの受信器は、それぞれ車体10の異なる位置に設置される。GNSS203は、受信器が受信した測位信号に基づいて、現場座標系における車体10の代表点(作業機械座標系の原点)の位置を検出する。GNSS203は、2つの受信器が受信した各測位信号を用いて、一方の受信器の設置位置に対する他方の受信器の設置位置の関係として、車体10の向く方位角を演算する。
【0029】
3次元センサ204は、作業機械2の周辺の対象物の3次元位置を3次元センサ204の位置を基準とした座標系で特定する。3次元センサ204は、例えば、ステレオカメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging)、レーザスキャナ、それらの組み合わせ等からなるセンサである。3次元センサ204は、例えば検出方向が作業機械2の運転室14の前方を向くように設けられる。なお、3次元センサ204は、作業機械2の側方を向くように作業機械2の左側方あるいは右側方のいずれか一方、または両側方に設けられていてもよい。
【0030】
IMU205は、車体10の加速度および角速度を計測し、計測結果に基づいて車体10の姿勢(例えば、ロール角およびピッチ角)を検出する。
【0031】
なお、作業機械2では、車載入力装置201が含む所定のスイッチ等を操作することで、制御モードが設定される。制御モードは、直接操作モードと、遠隔操作モードとを含む。直接操作モードでは、車載コントローラ25は、車載操作装置28からの操作信号に応じて、作業機械2を制御する。従って、直接操作モードでは、オペレータは、車載操作装置28を操作することで、作業機械2を動作させる。遠隔操作モードでは、遠隔操作システム3からの遠隔制御信号に応じて、作業機械2を制御する。従って、遠隔操作モードでは、オペレータは、遠隔操作システム3を操作することで、作業機械2を動作させる。制御モードは、例えば車載入力装置201に対する入力操作に応じて設定される。
【0032】
また、作業機械2は、第1通信装置31と第2通信装置32とを備えている。第1通信装置31と第2通信装置32とは、作業機械2に搭載されている。第1通信装置31は、遠隔操作システム3と無線により通信を行う。第2通信装置32は、移動通信機4と無線により通信を行う。第1通信装置31と第2通信装置32との通信方式は、異なっていてもよく、あるいは同じであってもよい。作業機械2と遠隔操作システム3とは、直接的に通信してもよく、あるいは、管制システム等を介して互いに通信してもよい。
【0033】
遠隔操作システム3は、作業現場から離れた管理センタ30に配置される。管理センタ30内のオペレータは、遠隔操作システム3を操作することで、遠隔から作業機械2を操作可能である。
【0034】
移動通信機4は、遠隔操作システム3と別体に設けられる。移動通信機4は、オペレータによって操作可能である。移動通信機4は、遠隔操作システム3と同様に、通信機能を有している。移動通信機4は、車載コントローラ25と無線により通信する。詳細には、移動通信機4は、作業機械2の第2通信装置32と無線により通信する。あるいは、移動通信機4は、作業機械2の第1通信装置31と無線により通信してもよい。
【0035】
移動通信機4は、作業機械2を始動禁止状態から始動許可状態に切り換えるために操作可能である。移動通信機4は、オペレータによる操作に応じて、始動許可信号を車載コントローラ25に送信する。始動許可信号は、作業機械2を始動禁止状態から始動許可状態に切り換えるための信号である。
【0036】
車載コントローラ25は、移動通信機4からの始動許可信号を受信したときに、作業機械2の始動禁止状態を解除する。そして、車載コントローラ25は、作業機械2が始動許可状態で、遠隔操作システム3から始動指令信号を受信した場合には、作業機械2を始動させる。しかし、車載コントローラ25は、作業機械2が始動禁止状態では、遠隔操作システム3から始動指令信号を受信しても、作業機械2の始動を禁止する。
【0037】
図3は、遠隔操作システム3の構成例を示すブロック図である。
図4は、遠隔操作装置34および表示装置36の構成例を示す斜視図である。
図5は、操向前後進変速レバー342の動作例を示す斜視図である。
図6は、操向前後進変速レバー342(操向レバーおよび走行レバー)ならびにデセルペダル344の動作例を説明するための模式図である。
【0038】
図3に示すように、遠隔操作システム3は、通信装置33と、遠隔操作装置34と、遠隔入力装置35と、表示装置36と、遠隔コントローラ37とを含む。通信装置33は、作業機械2の第1通信装置31と無線により通信を行う。
【0039】
遠隔入力装置35は、作業機械2の設定を入力するためにオペレータによって操作可能である。遠隔入力装置35は、例えばタッチパネル式の入力装置である。ただし、遠隔入力装置35は、スイッチ等の他の入力装置であってもよい。遠隔入力装置35は、オペレータによる操作を示す入力信号を、遠隔コントローラ37に送信する。
【0040】
遠隔コントローラ37は、プロセッサとメモリとを含むコンピュータによって実現される。遠隔コントローラ37は、互いに別体の複数のコントローラによって構成されてもよい。遠隔コントローラ37は、通信装置33を介して、遠隔制御信号を車載コントローラ25に送信する。遠隔コントローラ37は、遠隔操作装置34からの操作信号、あるいは、遠隔入力装置35からの入力信号に基づいて、遠隔制御信号を生成する。
【0041】
遠隔コントローラ37は、例えば、所定周期で遠隔操作装置34から操作信号を取得するとともに、遠隔入力装置35から操作信号を取得し、所定形式の遠隔制御信号に変換する。遠隔コントローラ37は、変換した遠隔制御信号を無線伝送に適した形式に変換して通信装置33へ出力する。また、遠隔コントローラ37は、例えば、通信装置33を介して取得したカメラ27からの画像信号を変換して表示装置36に出力する。
【0042】
図4に示す例では、表示装置36は、5枚のディスプレイ361、362、363、364および365を備え、カメラ27が撮影した映像をほぼリアルタイムで表示するとともに、作業機械2で計測されたデータ等を映像に重畳して表示する。
【0043】
遠隔操作装置34は、車載操作装置28と同様に、作業機械2を走行させるためにオペレータによって操作可能である。また、遠隔操作装置34は、車載操作装置28と同様に、作業機13を動作させるためにオペレータによって操作可能である。遠隔操作装置34は、例えば操作レバーを含む。遠隔操作装置34は、ペダル、スイッチ、あるいはタッチパネル等の他の操作部を含んでもよい。遠隔操作装置34は、例えば、作業機械2の始動を指示する指令信号を発生させるためのスイッチ等を含んでもよい。遠隔操作装置34は、オペレータによる操作を示す操作信号を、遠隔コントローラ37へ送信する。
図3に示す例では、遠隔操作装置34は、燃料調整ダイヤル341と、操向前後進変速レバー342と、ブレーキペダル343と、デセルペダル344と、ブレード操作レバー345と、リッパ操作レバー346とを含む。
【0044】
燃料調整ダイヤル341は、動力源21に供給される燃料を調整するための操作部であり、
図4に示す例では、管理センタ30内の操作室301に設置された運転席302の左側に配置されている。オペレータは、燃料調整ダイヤル341を所定の回転位置に設定することで、燃料の量を所定の一定量に調整することができる。燃料調整ダイヤル341は、例えば、回転位置に応じた0~100%の操作信号を出力する。
【0045】
ブレーキペダル343は、運転席302の前方足元に配置され、踏み込みの割合に応じて0(踏んでいない状態)~100%(最も踏み込んだ状態)の操作信号を出力する。ブレーキ211は、ブレーキペダル343の操作に応じて制御される。
【0046】
デセルペダル344は、運転席302の右前方足元に配置され、踏み込みの割合に応じて0(踏んでいない状態)~100%(最も踏み込んだ状態)の操作割合を示す操作信号を出力する(
図6)。デセルペダル344は、減速ペダル等とも呼ばれ、アクセルペダルと逆の作用を発生させる操作部である。デセルペダル344を操作する(踏み込む)ことによって、燃料調整ダイヤル341で設定された燃料噴射量を減少させ、エンジン出力を小さくするための操作信号が出力される。なお、デセルペダル344は、本開示に係る「減速操作部」の一構成例である。また、以下では、デセルペダル344の操作を「減速操作」ともいう。
【0047】
操向前後進変速レバー342は、作業機械2の操向操作、前後進切換操作および変速操作を行うための操作部である。操向前後進変速レバー342は、
図4に示す例では、運転席302の左側に配置されている。
図5に示すように、操向前後進変速レバー342は、オペレータによって操作されていない場合には中立位置(N)に自動的に保持され、オペレータの操作に応じて運転席302の左右方向((L)および(R)方向)ならび前後方向((a)および(b)方向)に所定の範囲で傾倒する。操向前後進変速レバー342は、左右に操作することで操向レバーとして機能するとともに、前後に操作することで前後進または中立を切り替える走行レバーとして機能する。なお、操向前後進変速レバー342の走行レバーとして機能する部分(以下、「走行レバー」ともいう)が、本開示に係る「走行操作部」の一構成例である。また、操向前後進変速レバー342の操向レバーとして機能する部分(以下、「操向レバー」ともいう)が、本開示に係る「操向操作部」の一構成例である。操向前後進変速レバー342は、
図5に示す(N)((N)の位置は含まない)から(L)の位置では左旋回を指示する傾倒量に応じた操作信号を出力し、(N)((N)の位置は含まない)から(R)の位置では右旋回を指示する傾倒量に応じた操作信号を出力する。また、操向前後進変速レバー342は、
図5に示す(a)の位置では前進を指示する傾倒量に応じた操作信号を出力し、(b)の位置では後進を指示する傾倒量に応じた操作信号を出力する。また、操向前後進変速レバー342は、
図5に示す(N)の位置では中立(走行装置12の動力伝達装置23による動力切り離し状態)あるいは操向操作なしを指示する操作信号を出力する。また、操向前後進変速レバー342は、スイッチ342cとスイッチ342dとを有する。操向前後進変速レバー342は、スイッチ342cが押されると動力伝達装置23の変速比を大きくし、スイッチ342dが押されると動力伝達装置23の変速比を小さくするための操作信号を出力する。操向前後進変速レバー342は、
図6に示すように、操向レバーとしての-100%~+100%の操作割合を示す操作信号と、操向レバーとしての-100%~+100%の操作割合を示す操作信号とを独立して出力する。
【0048】
ブレード操作レバー345は、運転席302の右側に配置され、ブレード18を操作するための操作信号を出力する。リッパ操作レバー346は、運転席302の右側に配置され、リッパ131を操作するための操作信号を出力する。
【0049】
次に、
図7~
図13を参照して、車載コントローラ25が有する連続走行制限機能について説明する。
図7は、車載コントローラ25の機能的構成例を示すブロック図である。
図8は、走行装置12の停止動作の例を示すタイミングチャートである。
図9は、距離閾値調整部241の動作例を説明するための模式図である。
図10は、連続走行制限部232の動作例を示すフローチャートである。
図11は、操作状態が所定の状態であるか否かの判定処理の例を示すフローチャートである。
図12は、システム1の動作例を示す模式図である。
図13は、作業機械2の動作例を模式的に示す平面図である。
【0050】
図7に示す例では、車載コントローラ25は、車載コントローラ25を構成する1または複数のコンピュータと、コンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせ等から構成される機能的構成として、操作検出部251と、データ変換部221と、走行装置制御部222と、遠隔操作モード設定部231と、連続走行制限部232とを備える。また、連続走行制限部232は、距離閾値調整部241と、情報取得部242と、累積走行距離算出部243と、停止部244と、初期化部245と、記憶部246とを備える。記憶部246は、累積走行距離247、距離閾値248等を表すデータを記憶する。
【0051】
図7に示すように、車載コントローラ25は、第1通信装置31を介して遠隔制御信号を取得する。また、車載コントローラ25は、出力軸センサ209が出力した出力回転数を表す信号を取得する。
【0052】
操作検出部251は、第1通信装置31を介して取得した遠隔制御信号に基づいて、操向前後進変速レバー342の走行レバーとしての操作割合である走行レバー操作割合[%]と、操向前後進変速レバー342の操向レバーとしての操作割合である操向レバー操作割合[%]と、デセルペダル344の操作割合であるデセルペダル操作割合[%]とを検出する。
【0053】
データ変換部221は、走行レバー操作割合[%]を、
図6に示すように、前進(F)、中立(N)または後進(R)の3つの状態(走行レバー操作状態)のいずれかを示すデータに変換する。また、データ変換部221は、出力回転数に基づいて作業機械2の車速を算出する。
【0054】
走行装置制御部222は、操作検出部251から、走行レバー操作割合[%]、操向レバー操作割合[%]、およびデセルペダル操作割合[%]を示す信号を取得する。走行装置制御部222は、走行レバー操作割合[%]、操向レバー操作割合[%]、デセルペダル操作割合[%]等に基づいて、走行装置12を制御する。また、走行装置制御部222は、連続走行制限部232から、停止指令を示す信号を取得する。走行装置制御部222は、連続走行制限部232からの停止指令を取得した場合、走行装置12を停止させる。走行装置制御部222は、例えば、動力伝達装置23を中立にし、また、操向レバー操作割合[%]が「0%」である場合の制御を行う。また、
図8に示すように、走行装置制御部222は、ブレーキ211の動作を制御することで、停止指令に基づき走行装置12を停止させる。
【0055】
図8は、横軸にブレーキ制御開始からの経過時間をとり、縦軸をブレーキ指令油圧として、ブレーキ211に供給する作動油の油圧の変化を示す。ブレーキ制御開始時には一定値の油圧を保持して油圧を低下させる。そして、所定の時間T1が経過するまで油圧を徐々に低下させる。そして、時間T1が経過したところで油圧をゼロにしてブレーキを係合させる。このような制御を行うことで、作業機械2が急停止することで発生する振動を低減することができる。
【0056】
遠隔操作モード設定部231は、例えば車載入力装置201への入力操作に応じて、制御モードを、直接操作モードと遠隔操作モードのいずれかに設定する。
【0057】
連続走行制限部232において、距離閾値調整部241は、例えば車載入力装置201への入力操作に応じて距離閾値を調整する。その際、距離閾値調整部241は、距離閾値を所定の上下限値の範囲内で調整する。なお、距離閾値調整部241には、距離閾値等の調整項目の変更を許可するか、あるいは、許可しないかを、予め設定しておくことができるようにすることができる。距離閾値調整部241は、まず、例えば、車載入力装置201に対する所定の入力操作に応じて、
図9に示すように車載表示装置202に調整ID(認証符号)入力画面202aを表示させる。なお、
図9に示す例では、車載入力装置201と車載表示装置202がタッチパネルとして一体的に構成されているものとする。調整ID入力画面202aは、メッセージ2021と、IDの入力ボックス2022と、1階層前の画面に戻るためのリターンボタン2023と、入力を確定させるための決定ボタン2024とを含む。
【0058】
調整ID入力画面202aにて予め決められた正しいIDが入力され、かつ、距離閾値が変更可能である場合、距離閾値調整部241は車載表示装置202に調整画面202bを表示させる。なお、距離閾値が変更可能でない場合、距離閾値調整部241は、調整ID入力画面202a上にその旨を示すメッセージを表示する。調整画面202bは、距離閾値(画面上は「遠隔連続距離」)入力するための入力ボックス2025と、メッセージ2026と、1階層前の画面に戻るためのリターンボタン2023と、入力を確定させるための決定ボタン2024と、入力ボックス2025内の値を所定の値刻みで減少させるボタン2027と増加させるボタン2028とを含む。調整画面202bで、調整完了(決定ボタン2024が押された場合)または閾値距離を変更しない場合(リターンボタン2023が押された場合)、距離閾値調整部241は車載表示装置202に調整ID入力画面202aを表示させる。
【0059】
なお、距離閾値には、所定の上下限値を定めておくことが望ましい。例えば、作業現場の広さや状況に対して距離閾値が小さすぎると頻繁に作業機械2が停止することになりえる。また、例えば作業現場の広さや状況に対して距離閾値が大きすぎると作業機械2が安全な距離で停止することが難しくなる可能性がある。このため、距離閾値調整部241は、例えば、ボタン2027とボタン2028で変更可能な値に下限値と上限値を設定できるようにする。一例を示せば、距離閾値の下限値を25m、上限値を500m、また変更の刻みを25mとすることができる。
【0060】
距離閾値調整部241は、変更された値で記憶部246内の距離閾値248の値を上書きする。
【0061】
情報取得部242は、所定の周期で、操作検出部251から操向レバー操作割合[%]を表すデータとデセルペダル操作割合[%]を表すデータを取得するとともに、データ変換部221から走行レバー操作状態(F、NまたはR)を表すデータと車速を表すデータを取得する。なお、情報取得部242は、作業機械2の制御モードが遠隔操作モードに設定されているか否かを判定する機能を備えていてもよい。
【0062】
累積走行距離算出部243は、車速に基づいて作業機械2の所定の周期における累積走行距離を算出し、算出した値を累積走行距離247に加算して、累積走行距離247の値を更新する。累積走行距離は、走行レバー操作状態が「F」または「R」の場合の走行距離を車速から演算して累積した値である。
【0063】
停止部244は、累積走行距離247が距離閾値248以上となった場合に、作業機械2の所定の動作を停止させるための停止指令を出力する。ここで所定の動作とは、例えば走行装置12の走行動作である。ただし、所定の動作は、走行装置12の動作に限定されず、例えば、動力源21の動作を含めたり、作業機13の所定の動作を含めたりしてもよい。
【0064】
初期化部245は、遠隔操作装置34に対して所定の操作が行われた場合に累積走行距離247をゼロに初期化する。所定の操作は、例えば、操向前後進変速レバー342によって、走行装置12の走行動作の状態を、前進状態(F)、後進状態(R)、または動力切り離し状態(N)のいずれかの状態に切り換える切換操作とすることができる。あるいは(またはそれに加えて)、所定の操作は、例えば、操向前後進変速レバー342によって、作業機械2の進行方向を操向操作の割合に応じて変化させる場合に、操向操作の割合を所定の操向閾値(操向操作割合閾値ともいう)以上に変化させる操作とすることができる。あるいは(またはそれらに加えて)、作業機械2の速度を減速操作の割合に応じて変化させるデセルペダル344によって、減速操作の割合を所定の減速閾値(デセルペダル操作割合閾値ともいう)以上に変化させる操作とすることができる。なお、操向操作の割合を所定の操向閾値以上に変化させる場合とは、例えば、累積走行距離247が初期化された後、操向操作の割合の最大値と最小値の差分が操向閾値以上となった場合とすることができる。また、減速操作の割合を所定の減速閾値以上に変化させる場合とは、例えば、累積走行距離247が初期化された後、減速操作の割合の最大値と最小値の差分が減速閾値以上である場合とすることができる。
【0065】
次に、
図10を参照して、連続走行制限部232の動作例について説明する。
図10に示す処理は、作業機械2が起動された後、所定の周期で繰り返し実行される。
【0066】
図10に示す処理が開始されると、例えば情報取得部242が、制御モードが遠隔操作モードに設定されているか否かを判定する(ステップS11)。制御モードが遠隔操作モードでない場合(ステップS11:No)、例えば情報取得部242が
図10に示す処理を終了する。
【0067】
制御モードが遠隔操作モードである場合(ステップS11:Yes)、例えば停止部244が記憶部246から距離閾値248を取得する(ステップS12)。次に、情報取得部242が、遠隔操作装置34の操作状態と車速とを取得する(ステップS13)。本実施形態では、遠隔操作装置34の操作状態は、操向レバー操作割合と、デセルペダル操作割合と、走行レバー操作状態とを含む。
【0068】
次に、累積走行距離算出部243が、累積走行距離247を更新する(ステップS14)。次に初期化部245が、操作状態が所定の状態であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0069】
図11は、
図10に示すステップS15の判定処理の内容の例を示す。
図11に示す処理では、まず、初期化部245が、走行レバー操作状態が「N」であるか否かを判定する(ステップS21)。走行レバー操作状態が「N」である場合(ステップS21:Yes)、初期化部245は、操作状態が所定の状態であると判定し(ステップS28)、
図11に示す処理を終了する。
【0070】
走行レバー操作状態が「N」でない場合(ステップS21:No)、初期化部245は、走行レバー操作状態が、前回の周期における走行レバー操作状態との比較で、「F」から「R」または「R」から「F」へ変化したか否かを判定する(ステップS22)。走行レバー操作状態が「F」または「R」から変化した場合(ステップS22:Yes)、初期化部245は、操作状態が所定の状態であると判定し(ステップS28)、
図11に示す処理を終了する。
【0071】
一方、走行レバー操作状態が「F」または「R」から変化していない場合(ステップS22:No)、初期化部245は、操向レバー操作割合の最大値と最小値を更新する(ステップS23)。次に、初期化部245は、操向レバー操作割合の最大値と最小値の差分が、操向操作割合閾値以上であるか否かを判定する(ステップS24)。操向レバー操作割合の最大値と最小値の差分が、操向操作割合閾値以上である場合(ステップS24:Yes)、初期化部245は、操作状態が所定の状態であると判定し(ステップS28)、
図11に示す処理を終了する。
【0072】
一方、操向レバー操作割合の最大値と最小値の差分が、操向操作割合閾値以上でない場合(ステップS24:No)、初期化部245は、デセルペダル操作割合の最大値と最小値を更新する(ステップS25)。次に、初期化部245は、デセルペダル操作割合の最大値と最小値の差分が、デセルペダル操作割合閾値以上であるか否かを判定する(ステップS26)。デセルペダル操作割合の最大値と最小値の差分が、デセルペダル操作割合閾値以上である場合(ステップS26:Yes)、初期化部245は、操作状態が所定の状態であると判定し(ステップS28)、
図11に示す処理を終了する。
【0073】
一方、デセルペダル操作割合の最大値と最小値の差分が、デセルペダル操作割合閾値以上でない場合(ステップS26:No)、初期化部245は、操作状態が所定の状態ではないと判定し(ステップS27)、
図11に示す処理を終了する。
【0074】
図10に戻り、
図11に示す処理によってステップS15で操作状態が所定の状態であると判定された場合(ステップS15:Yes)、初期化部245は、累積走行距離247を初期化するとともに(ステップS16)、各操作割合の最大値と最小値を現在の値で初期化して(ステップS17)、所定周期後に再度、情報取得部242が、遠隔操作装置34の操作状態と車速とを取得する(ステップS13)。
【0075】
一方、
図11に示す処理によってステップS15で操作状態が所定の状態ではないと判定された場合(ステップS15:No)、初期化部245は、累積走行距離247が距離閾値248以上であるか否かを判定する(ステップS18)。累積走行距離247が距離閾値248以上である場合(ステップS18:Yes)、停止部244が、停止指令を走行装置制御部222へ出力し、作業機械2の動作を停止させ(ステップS19)、
図10に示す処理を終了する。
【0076】
一方、累積走行距離247が距離閾値248以上でない場合(ステップS18:No)、所定周期後に再度、情報取得部242が、遠隔操作装置34の操作状態と車速とを取得する(ステップS13)。
【0077】
以上の処理によって、連続走行制限部232は、所定の操作が行われることなく、累積走行距離247が距離閾値248以上となった場合に、作業機械2の所定の動作を停止させる。したがって、例えばなんらかの不具合によって意図せず連続して作業機械2が走行してしまった場合であっても、累積走行距離247が距離閾値248以上となったときに作業機械2の所定の動作を停止させることができる。また、累積走行距離247は、所定の操作が行われた場合は初期化されるので、所定の操作を行いながらであれば距離閾値248を超えた距離でも連続走行を継続させることができる。
【0078】
図12は、横軸を走行距離として、縦軸に走行レバー操作状態と、操向レバー操作割合と、デセルペダル操作割合との各値をとり、作業機械2の動作例における各値の変化の例を示す。また、
図13は、
図12に示す動作例を模式的に示す。
図12および
図13に示す例では、位置P0で作業機械2が発進し、位置P1で操向操作が開始し、位置P2で操向操作が終了し、位置P3で累積走行距離が距離閾値以上となって作業機械2が停止される。
【0079】
図12に示すように、位置P0で走行レバーの状態が「N」から「F」となり、作業機械2が発進すると、累積走行距離の計測が開始される。ここでは、操向レバー操作割合の最大値と最小値は同一の値である。発進後、操向レバー操作割合が変化すると最小値と最大値が更新され、位置P1で最小値と最大値の差分が操向操作割合閾値以上となると、累積走行距離が初期化され、再度、累積走行距離の計測が開始される。位置P1では、操向レバー操作割合の最大値と最小値は同一の値に初期化される。位置P1通過後、操向レバー操作割合が変化すると最小値と最大値が更新され、位置P2で最小値と最大値の差分が操向操作割合閾値以上となると、累積走行距離が初期化され、累積走行距離の計測が開始される。
【0080】
位置P2通過後、操向レバー操作割合の最小値と最大値の差分が操向操作割合閾値以上となることなく、位置P3で累積走行距離が距離閾値以上となると、作業機械2の動作が停止される。
【0081】
以上のように本実施形態によれば、システム1は、作業機13と走行装置12とを備える作業機械2を制御するためのシステムであって、作業機械2を制御するためのコントローラ(車載コントローラ25)と、作業機械2を操作するための作業機械操作部(遠隔操作装置34)と、を備え、コントローラは、作業機械2の累積走行距離を算出し、累積走行距離が所定の距離閾値以上となった場合に作業機械2の所定の動作を停止させるための停止指令を出力し、作業機械操作部に対して所定の操作が行われた場合に累積走行距離を初期化する。この構成によれば、作業機械2の累積走行距離(連続走行距離)が所定の距離閾値以上となった場合に作業機械2の所定の動作を停止させる場合において、累積走行距離が距離閾値以上となる前に遠隔操作装置34に対して所定の操作が行われたときには累積走行距離が初期化される。この構成によれば、遠隔操作装置34が正常に操作されている状態で作業機械2の動作が停止されるということを防止することができ、自律的、半自律的、または遠隔地から操作可能な作業機械を適切に動作させることができる。
【0082】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上記実施形態でコンピュータが実行するプログラムの一部または全部は、コンピュータ読取可能な記録媒体や通信回線を介して頒布することができる。
【0083】
例えば、作業機械2は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ、モータグレーダ、あるいはダンプトラック等の他の車両であってもよい。システム1によって制御される作業機械の数は1台に限らず、2台以上であってもよい。動力源21は、電動機であってもよい。その場合、作業機械2を始動することは、作業機械2の走行、あるいは作業機13の動作等を開始させることであってもよい。あるいは、動力源21は、内燃機関と電動機とのハイブリッドであってもよい。
【0084】
また、本実施形態の構成は、遠隔操作に限定されず、自律運転や半自律運転に適用してもよい。この場合、本開示に係る「作業機械操作部」は、車載操作装置28としたり、自律運転や半自律運転で操作信号を生成する例えば車載コントローラ25内の機能的構成としたりすることができる。
【0085】
また、距離閾値の調整は、作業機械2内で行う場合に限定されず、遠隔操作システム3を用いて行ってもよい。
【0086】
[付記]
実施形態に記載のシステム1は、次のように把握することができる。
【0087】
(1)本開示の第1の態様に係るシステム1は、作業機13と走行装置12とを備える作業機械2を制御するためのシステムであって、作業機械2を制御するためのコントローラ(車載コントローラ25)と、前記作業機械2を操作するための作業機械操作部(遠隔操作装置34)と、を備え、前記コントローラは、前記作業機械2の累積走行距離を算出し、前記累積走行距離が所定の距離閾値以上となった場合に前記作業機械2の所定の動作を停止させるための停止指令を出力し、前記作業機械操作部に対して所定の操作が行われた場合に前記累積走行距離を初期化する。
【0088】
(2)本開示の第2の態様に係るシステム1は、(1)のシステム1であって、前記コントローラは、前記距離閾値を所定の上下限値の範囲内で調整する。
【0089】
(3)本開示の第3の態様に係るシステム1は、(1)または(2)のシステム1であって、前記所定の動作は、前記走行装置12の走行動作を少なくとも含む。
【0090】
(4)本開示の第4の態様に係るシステム1は、(1)~(3)のシステム1であって、前記作業機械操作部は、前記走行装置12の走行動作の状態を、前進状態(F)、後進状態(R)、または動力切り離し状態(N)のいずれかの状態に切り換える走行操作部(操向前後進変速レバー342)を含み、前記所定の操作は、前記走行操作部に対する前記走行装置の走行動作の状態の切換操作を含む。
【0091】
(5)本開示の第5の態様に係るシステム1は、(1)~(4)のシステム1であって、前記作業機械操作部は、前記作業機械の進行方向を操向操作の割合に応じて変化させる操向操作部(操向前後進変速レバー342)を含み、前記所定の操作は、前記操向操作の割合を所定の操向閾値以上に変化させる操作を含む。
【0092】
(6)本開示の第6の態様に係るシステム1は、(1)~(5)のシステム1であって、前記作業機械操作部は、前記走行装置の速度を減速操作の割合に応じて変化させる減速操作部(デセルペダル344)を含み、前記所定の操作は、前記減速操作の割合を所定の減速閾値以上に変化させる操作を含む。
【0093】
(7)本開示の第7の態様に係るシステム1は、(1)~(6)のシステム1であって、前記作業機械操作部(遠隔操作装置34)は、前記作業機械を遠隔操作するために、作業現場から離れた管理センタ30に配置される。
【符号の説明】
【0094】
1…システム、2…作業機械、3…遠隔操作システム、4…移動通信機、25…車載コントローラ、34…遠隔操作装置、37…遠隔コントローラ、241…距離閾値調整部、243…累積走行距離算出部、244…停止部、245…初期化部、342…操向前後進変速レバー(操向レバー、走行レバー)、344…デセルペダル