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特開2024-168628鋼橋補修用足場装置および鋼橋の補修工法
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  • 特開-鋼橋補修用足場装置および鋼橋の補修工法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168628
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】鋼橋補修用足場装置および鋼橋の補修工法
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20241128BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085467
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】503055554
【氏名又は名称】ヤマダインフラテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】山田 博文
(72)【発明者】
【氏名】山田 翔平
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA05
2D059AA15
2D059BB37
2D059DD14
2D059EE10
2D059GG22
2D059GG39
2D059GG53
(57)【要約】
【課題】補修工事の作業内容に適した環境に比較的容易に変換し得る鋼橋補修用足場装置および鋼橋の補修工法を提案する。
【解決手段】鋼橋補修用足場装置1は、主桁部102に吊持された吊足場部2の左右両側縁に、上方開口部11を介して作業領域9を開放する開放位置と該上方開口部11を閉鎖する閉鎖位置とに回動可能に変換される可動パネル部3,3が配設され、可動パネル部3,3を閉鎖位置として、作業領域9をブラスト作業領域19に変換するものである。かかる構成によれば、作業領域9を、補修作業に適した環境とブラスト作業に適した環境とに比較的容易に変換でき、該変換に要する手間と時間とを軽減できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼橋の橋桁部の下方に吊持され、該鋼橋の底版部との間に補修作業用の作業領域を形成する吊足場部と、
前記吊足場部の左右両側縁の少なくとも一方に設けられた、前記橋桁部の長手方向に沿う回動軸を中心として、左右方向へ回動可能に配設され、前記作業領域を開放する上方開口部を前記底版部との間に形成する開放位置と、該上方開口部を閉鎖する閉鎖位置とに位置変換される可動パネル部と
を備え、
前記可動パネルを前記閉鎖位置として、前記作業領域を、当該橋桁部をブラスト処理するブラスト作業領域に変換するものであることを特徴とする鋼橋補修用足場装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼橋補修用足場装置を用いて行う鋼橋の補修工法であって、
前記鋼橋補修用足場装置を鋼橋に設置する足場設置工程と、
前記鋼橋補修用足場装置の可動パネル部を開放位置に保持して、所定の補修作業を行う補修工程と、
前記補修工程の後に、前記可動パネル部を開放位置から閉鎖位置へ変換すると共に前記作業領域を負圧状態とすることによって、該作業領域をブラスト作業領域とする領域閉鎖工程と、
前記ブラスト作業領域でブラスト処理を実行するブラスト工程と
を含むことを特徴とする鋼橋の補修工法。
【請求項3】
前記ブラスト工程の後に、ブラスト作業領域の負圧を解除すると共に前記可動パネル部を閉鎖位置から開放位置へ変換する領域開放工程と、
前記領域開放工程で開放された作業領域で、所定の塗装作業を実行する塗装工程と
を含むことを特徴とする請求項2に記載の鋼橋の補修工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼橋の補修に用いられる鋼橋補修用足場装置と、該鋼橋補修用足場装置を用いて行う鋼橋の補修工法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼橋には、サビなどによる腐食を防止するために、あるいは疲労などによる亀裂や破断などの損傷を補修するために、補修工事が行われている。補修工事は、鋼橋の橋桁部の直下に仮設された吊足場で行われる。さらに、補修工事では、サビや古い塗膜などを除去するためにブラスト処理が一般的に行われることから、該ブラスト処理で発生する粉塵が飛散することを防止するために、前記足場と橋桁部との間の作業領域をシート等により密閉状に閉鎖している。
【0003】
一方、前記補修工事では、腐食の予防などのために防錆用の塗装を行うことがあり、この塗装を行う際には、前記作業領域を換気することが求められる。例えば特許文献1には、開閉可能な換気口を設けた改修工事用シートが提案されている。かかる従来の改修工事用シートにより前記作業領域を密閉状に閉鎖すれば、該改修工事用シートの換気口を閉鎖することによって、粉塵の飛散を防止することができる一方、該換気口を開放することによって、作業領域を換気できる。このように作業に合わせて作業領域の環境を変更することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-213934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した特許文献1に記載の改修工事用シートにあっては、鋼橋の補修工事に用いられる場合、前記作業領域を十分に換気するために、該鋼橋の長手方向に沿って複数の換気口が設けられる。こうした構成では、各換気口を閉鎖または開放するために、多くの手間と時間とがかかることから、作業が繁雑化するという問題があった。
【0006】
本発明は、補修工事の作業内容に応じて、各作業内容に適した環境に比較的容易に変換し得る鋼橋補修用足場装置および鋼橋の補修工法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一は、鋼橋の橋桁部の下方に吊持され、該橋桁部との間に補修作業用の作業領域を形成する吊足場部と、前記吊足場部の左右両側縁の少なくとも一方に設けられた、前記橋桁部の長手方向に沿う回動軸を中心として、左右方向へ回動可能に配設され、前記作業領域を開放する上方開口部を該橋桁部との間に形成する開放位置と、該上方開口部を閉鎖する閉鎖位置とに位置変換される可動パネル部とを備え、前記可動パネルを前記閉鎖位置として、前記作業領域を、当該橋桁部をブラスト処理するブラスト作業領域に変換するものであることを特徴とする鋼橋補修用足場装置である。
【0008】
かかる構成にあっては、吊足場部の側縁に設けられた回動軸を中心として可動パネル部が開閉作動されることにより、上方開口部を開閉するものであり、該上方開口部を開放すれば、作業領域を換気できる一方、該上方開口部を閉鎖すれば、該作業領域から変換したブラスト作業領域で発生する粉塵等の飛散を抑制できる。このように本構成は、可動パネル部の開閉により、補修作業に適した環境とブラスト作業に適した環境とに比較的容易に変換でき、該変換に要する手間と時間とを軽減できる。
【0009】
本発明の第二は、前述した本発明の第一の鋼橋補修用足場装置を用いて行う鋼橋の補修工法であって、前記鋼橋補修用足場装置を鋼橋に設置する足場設置工程と、前記鋼橋補修用足場装置の可動パネル部を開放位置に保持して、所定の補修作業を行う補修工程と、前記補修工程の後に、前記可動パネル部を開放位置から閉鎖位置へ変換すると共に前記作業領域を負圧状態とすることによって、該作業領域をブラスト作業領域とする領域閉鎖工程と、前記ブラスト作業領域でブラスト処理を実行するブラスト工程とを含むことを特徴とする鋼橋の補修工法である。
【0010】
かかる工法にあっては、上方開口部の開放により換気された作業領域で補修作業を行うと共に、上方開口部の閉鎖と負圧状態とにより変換されたブラスト作業領域でブラスト処理を実行できる。これにより、補修作業とブラスト処理とをそれぞれに適した作業環境で行うことができる。さらに、領域閉鎖工程によって、補修作業に適した環境からブラスト作業に適した環境へ比較的容易に変換でき、こうした環境変換に要する手間と時間とを軽減できる。
【0011】
前述した本発明にかかる鋼橋の補修工法にあって、前記ブラスト工程の後に、ブラスト作業領域の負圧を解除すると共に前記可動パネル部を閉鎖位置から開放位置へ変換する領域開放工程と、前記領域開放工程で開放された作業領域で、所定の塗装作業を実行する塗装工程とを含む工法が提案される。
【0012】
かかる工法にあっては、上方開口部の開放により換気された作業領域で塗装作業を行うことができ、該塗装作業に適した作業環境で塗装を行うことができる。さらに、領域開放工程により、塗装作業に適した環境に比較的容易に変換できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる鋼橋補修用足場装置および鋼橋の補修工法によれば、作業領域を、補修作業に適した環境とブラスト作業に適した環境とに比較的容易に変換でき、該変換にかかる手間と時間とを軽減できるため、総じて鋼橋補修の作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】鋼橋補修用足場装置1の、(A)可動パネル部3,3を開放した状態と、(B)可動パネル部3,3を閉鎖した状態を示す断面図である。
図2】前記した可動パネル部3,3の開放状態を示す斜視図である。
図3】前記した可動パネル部3,3の閉鎖状態を示す斜視図である。
図4】鋼橋の補修工法を示すフロー図である。
図5】別例の鋼橋補修用足場装置51を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にかかる鋼橋補修用足場装置1と鋼橋101の補修工法とを具体化した実施例を、以下に説明する。
鋼橋101は、図1~3に示すように、幅方向に所定間隔をおいて並設された複数の主桁部102と、長手方向に複数立設されて該主桁部102を支持する橋脚(図示せず)と、該主桁部102上に設置された底版部103とを備え、該底版部103の左右両側縁に地覆部104,104が設けられている。尚、本実施例にあって、主桁部102と図示しない横桁部とにより、本発明にかかる橋桁部が構成されている。
【0016】
鋼橋補修用足場装置1は、複数の吊下チェーン5により前記主桁部102に吊り下げられた吊足場部2と、該吊足場部2の左右両側縁に回動可能に配設された左右の可動パネル部3と、該吊足場部2の長手方向両端に夫々張設された防塵シート部(図示せず)とを備える。尚、防塵シート部は、従来から公知のものを適用できることから、その詳細を省略する。
【0017】
吊足場部2は、前記吊下チェーン5に吊り下げられた足場フレーム部(図示せず)と、該足場フレーム部に支持固定された複数の足場板部(図示せず)とを備え、該足場板部上には防炎シートと難燃性の養生シートとが積層されて敷き詰められている(図示せず)。こうした吊足場部2は、前記主桁部102の下方に、前記底版部103と略平行に配設されており、該底版部103との間に、作業者が補修作業を行い得る作業領域9を形成する。この作業領域9で、作業者により補修作業やブラスト処理などが行われる。
【0018】
吊足場部2の左右両側縁には、ヒンジ部材6を介して前記可動パネル部3が左右方向へ回動可能に設けられている。可動パネル部3は、略矩形状のフレーム(図示せず)と該フレームに取り付けられた樹脂製の平板状パネルとを備える。そして、可動パネル部3は、長手方向に略直交する縦方向の長さ寸法が、吊足場部2と底版部103との高さ間隔よりも長い所定寸法に設定されている。これにより、後述するように、可動パネル部3を閉鎖位置とした状態で、該可動パネル部3の上部が前記地覆部104の側縁に当接する(図1(B)、図3参照)。ヒンジ部材6は、吊足場部2の側縁に配設されると共に可動パネル部3の下部に連結されており、長手方向に沿う回動軸(図示せず)を中心として、該可動パネル部3を回動できる。このヒンジ部材6の回動軸が、本発明にかかる回動軸に相当する。尚、本実施例にあって、前記した左右方向は、鋼橋101の幅方向と同じである。
【0019】
左右の可動パネル部3,3は、前記ヒンジ部材6の回動軸を中心して回動することにより、略鉛直方向に沿って起立して上部が前記地覆部104,104の外側部に当接する閉鎖位置(図1(B)、図3)と、該閉鎖位置から左右外方へ傾斜して該地覆部104,104から離間する開放位置(図1(A)、図2)とに位置変換される。左右の可動パネル部3,3が閉鎖位置となると、作業領域9が、左右の可動パネル部3,3と前記した防塵シート部とにより囲まれることによって、密閉状に閉鎖された空間となる。一方、左右の可動パネル部3,3が開放位置となると、該可動パネル部3,3と地覆部104,104との間に上方へ開放する上方開口部11,11が左右両側に形成される。この状態では、作業領域9が左右の上方開口部11,11を介して外部に開放された空間となる。
【0020】
また、本実施例の鋼橋補修用足場装置1には、可動パネル部3,3を前記閉鎖位置と前記開放位置とに位置変換させるパネル開閉手段(図示せず)を備える。このパネル開閉手段は、可動パネル部3,3を閉鎖位置と開放位置とに回動させる油圧シリンダや、該可動パネル部3,3を閉鎖位置と開放位置とで保持する保持チェーン等を備える。
【0021】
さらに、本実施例の鋼橋101の補修工法では、前述した鋼橋補修用足場装置1を設置すると共に、図示しない負圧装置を設置して用いる。この負圧装置は、前記作業領域9を減圧して負圧状態にする装置であり、前記した可動パネル部3,3を閉鎖位置として作動されることによって、該作業領域9を、負圧状態のブラスト作業領域19に変換する。これにより、ブラスト作業領域19で発生した粉塵等が外部へ飛散することを防止できる。
【0022】
こうした本実施例の鋼橋補修用足場装置1を設置して実施される鋼橋101の補修工法について説明する。
本実施例の補修工法では、図4に示すように、先ず補修の対象である鋼橋101に仮設養生設備を設置する(S101)。具体的には、鋼橋101に前述の鋼橋補修用足場装置1を設置すると共に、補修用の装置、負圧装置、ブラスト処理とショットピーニング処理とを行う装置などを設置する。ここで、鋼橋補修用足場装置1は、左右の可動パネル部3,3を開放位置で保持した状態として設置される。
【0023】
この後に、前記鋼橋101に塗布されている旧塗装膜の種類や厚さ、および該鋼橋101の状況などを調査して、補修を要する対象部位を特定する(S102)。そして、この調査結果に基づいて、補修作業の手順や補修に要する部材の準備などを行うと共に、ブラスト処理で使用するグリットおよびショットピーニング処理で使用するショットの種類や噴射速度等を決定する。尚、このS102の工程は、S101の前に行っても良い。
【0024】
次に、前記S102で特定した補修対象部位に対して補修作業を行う補修工程を、前記可動パネル部3,3を開放位置で保持した状態で実施する(S103)。補修工程では、床板の取り替え作業、コンクリートの補修作業、および支承の交換作業などを行う。こうした補修工程は、前述したように作業領域9が上方開口部11,11により開放された環境(すなわち、換気された環境)で行われる。
【0025】
前記第一補修工程の後に、左右の可動パネル部3,3を開放位置から閉鎖位置へ回動させて該閉鎖位置で保持する領域閉鎖工程を行う(S104)。この領域閉鎖工程は、次のブラスト処理の前に実施され、前記可動パネル部3,3の閉鎖位置に位置変換すると共に、前記負圧装置を作動させて作業領域9を負圧状態にする。これにより、作業領域9をブラスト作業領域19に変換する。尚、本実施例では、次のブラスト工程(S105)から後述の素地確認の工程(S108)まで、ブラスト作業領域19を維持する。
【0026】
前記領域閉鎖工程の後に、ブラスト工程を行う(S105)。ブラスト工程では、前記S102で決定したグリットや噴射速度等の条件に従ってブラスト処理を実行して、主桁部102の表面に付着する旧塗装膜や錆等を取り除く。ここで、ブラスト処理は、旧塗装膜、錆、および使用済みグリットが粉塵として発生するが、前記可動パネル部3,3を閉鎖位置に保持し且つ負圧状態とするブラスト作業領域19で実施されることから、これら粉塵が外部に飛散することを防止できる。そして、これら粉塵は、後述のように順次回収される。
【0027】
次に塩分除去工程(S106)を実行し、主桁部102等に付着している塩分を精緻に除去する。この塩分除去工程には、レーザー光を用いることができる。
【0028】
次に、ショットピーニング工程を行う(S107)。前記ブラスト作業領域19を保持した状態で、本実施例では、ショットピーニング工程の前に、グリットを噴射したブラスト装置に対して、グリットに変えて前記S102で決定したショットを装填して噴出可能とする入れ替え工程を行う。ショットピーニング工程では、ショットピーニング処理を行うことにより、主桁部102の素材表面の疲労強度と対応力腐食割れ性とが向上する。尚、ショットピーニング工程は、前記ブラスト作業領域19で実施されることから、ショットが外部へ飛散することを防止できる。そして、ショットピーニング処理で発生した使用済みショットは、後述するように順次回収される。
【0029】
ショットピーニング工程の後に、当該処理を行った素材表面5の確認を行う(S108)。この確認処理は目視のみならず、例えばISO8501ブラスト写真帳による比較、あるいは表面粗さ測定器による粗さ確認等も含まれる。これによって未剥離の塗膜が残っていないか、あるいは素材表面の粗さが規格内であるか、等の確認を行い、不十分な箇所に対して的確な処理を行う。
【0030】
次に、領域開放工程を行う(S109)。この領域開放工程は、前記負圧装置を作動停止させると共に、左右の可動パネル部3,3を閉鎖位置から開放位置へ回動させて該開放位置で保持する。これにより、ブラスト作業領域19から作業領域9に変換され、該作業領域9が左右の上方開口部11,11を介して外部に開放される。
【0031】
この後に、塗装工程を行う(S110)。本実施例では、S105でブラスト処理を実行した範囲に、重防食塗装を行う。この重防食塗装は、例えば、エポキシ樹脂塗料で防錆塗装を行って下塗りし、その上にフッ素樹脂塗料を中塗りして該防錆塗装を保護し、さらにこの上にフッ素樹脂塗料で上塗りする。これにより、主桁部102の素材表面を被覆する新たな塗装膜が形成される。この塗装工程は、作業領域9が上方開口部11,11によって開放された環境(すなわち、換気された環境)で行われる。
【0032】
前記塗装工程を終了すると、その確認を行う(S111)。この確認は塗装が乾燥した後の膜厚確認だけでなく、例えば塗装作業中にウェットネスゲージを用いてウェット膜厚の確認等も含まれる。また、このような確認は前記上塗り塗装後のみならず、前記下塗り塗装、及び中塗り塗装時にも行われる。この塗装確認の終了によって塗装作業が完了する。
【0033】
こうした確認により塗装に関する全ての作業が完了すると、現場の片付けを行う(S112)。具体的には、鋼橋補修用足場装置1の撤去と回収、及びブラスト装置等の撤収を行う。こうした片付けの終了によって、鋼橋101の補修工法による全工程の完了となる。
【0034】
また、前記したS101~S112の工程と共に、粉塵の回収工程を実行する(S120)。具体的には、前記ブラスト工程(S105)で発生した使用済みグリット、前記ショットピーニング工程(S107)で発生した使用済みショット、及び、各工程で生じた旧塗装膜やサビ等を含む粉塵を分別しつつ回収していく。
【0035】
尚、本実施例の補修工法にあって、仮設養生設備を設置するS101が、本発明にかかる足場設置工程に相当する。S103の補修工程が、本発明にかかる補修工程に相当し、S104の領域閉鎖工程が、本発明にかかる補修工程に相当する。S109の領域開放工程が、本発明にかかる領域開放工程に相当する。
【0036】
このように本実施例の鋼橋補修用足場装置1にあっては、左右の可動パネル部3,3を開閉することによって、作業領域9を開放する開放位置と閉鎖する閉鎖位置とに変換するものであり、該開放位置とすれば、作業領域9が換気された環境となるため、当該環境で補修作業や塗装作業を行うことができる。一方、可動パネル部3,3を閉鎖位置として作業領域9を閉鎖すると共に当該作業領域9を負圧状態とすれば、粉塵等の外部への飛散を防止できる環境(ブラスト作業領域19)となる。この環境では、ブラスト処理やショットピーニング処理で生ずる粉塵や研削材(ショット、グリット)などが外部へ飛散することを防止できる。このように本実施例の構成は、左右の可動パネル部3,3を開閉することによって、作業領域9を、補修工法で実施する各作業に適した環境に変換できる。そして、こうした環境の変換を比較的容易に行うことができるため、補修に要する手間と時間とを軽減でき、作業効率を著しく向上できる。
【0037】
また、本実施例の鋼橋の補修工法は、前記鋼橋補修用足場装置1を用いたものであることから、該鋼橋補修用足場装置1と同様の作用効果を奏する。
【0038】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、実施例における各部の寸法形状は適宜変更することができる。
【0039】
前述の実施例では、左右にそれぞれ一枚の可動パネルを設けた構成であるが、これに限らず、左右それぞれに、複数枚の可動パネルを列設した構成であっても良い。こうした構成では、各可動パネルを独立して開閉できる構成であっても良いし、全ての可動パネルを一体的に開閉する構成であっても良い。
【0040】
前述の実施例では、左右にそれぞれ可動パネルを設けた構成であるが、これに限らず、左右一方に可動パネルを設けた構成であっても良い。この場合には、左右他方には、例えば防塵シート部を設けることができる。
【0041】
前述の実施例では、吊足場部の長手方向両端に防塵シート部を設けて、両防塵シート部と左右の可動パネル部とにより一の作業領域を設けた構成としたが、これに限らず、吊足場の長手方向に所定間隔をおいて複数の防塵シート部を設けて複数の作業領域を区画形成して、各作業領域を夫々開閉する左右一対の可動パネル部を複数列設する構成とすることもできる。かかる構成では、各作業領域の環境を独立して変換できる。
【0042】
前述した実施例にあって、左右の可動パネル部の開放位置と閉鎖位置とは適宜変更して設定することが可能である。具体的に述べると、前述した実施例では、左右の可動パネル部が地覆部に当接した位置を、該可動パネル部の閉鎖位置として定めた構成であるが、これに限らず、可動パネル部が地覆部に密接した位置を閉鎖位置として定めても良いし、可動パネル部が地覆部に近接する位置を閉鎖位置として定めても良い。後者の場合にあっても、作業領域を負圧状態とすることで、前述した実施例と同様の作用効果を奏し得る。
【0043】
前述した実施例では、平板状の吊足場部の左右両側縁にヒンジ部材を介して可動パネル部を回動可能に配設した構成としたが、これに限らず、吊足場部の構造は適宜変更可能である。別例の鋼橋補修用足場装置51を図5に示す。かかる構成にあっては、平板状足場部52aと該平板状足場部52aの左右両側縁に立設された側足場部52b,52bとから構成された吊足場部52を備え、各側足場部52b,52bの上縁にヒンジ部材56,56を介して可動パネル部53,53が設けられている。ここで、左右の可動パネル部53,53は、地覆部104,104に当接する閉鎖位置(図5(B))と離間する開放位置(図5(A))とに位置変換でき、該開放位置にある状態で、該地覆部104,104との間に上方開口部61,61を形成する。そして、前述した実施例と同様に、可動パネル部53,53を開放位置と閉鎖位置とに位置変換すると共に各位置で保持するパネル開閉手段(図示せず)を備えている。また、平板状足場部52aは、前述の実施例の吊足場部と同様の構造であると共に、側足場部52bは、該平板状足場部52aと同様に、フレーム部に支持固定された足場板部の内面に防災シートと難燃性の養生シートとが貼り付けられたものである。こうした別例の構成にあっても、左右の可動パネル部53,53を開閉することにより、前述した実施例の補修工法を実施でき、該実施例と同様の作用効果を奏し得る。
【符号の説明】
【0044】
1,51 鋼橋補修用足場装置
2,52 吊足場部
3,53 可動パネル部
9 作業領域
11,61 上方開口部
19 ブラスト作業領域
101 鋼橋
102 主桁部(橋桁部)
103 底版部
図1
図2
図3
図4
図5