(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168636
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】低温地上式タンク、低温地上式タンクの構築方法
(51)【国際特許分類】
F17C 3/04 20060101AFI20241128BHJP
B65D 88/04 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F17C3/04 B
B65D88/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085478
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】株式会社IHIプラント
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】田附 英幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 英晃
(72)【発明者】
【氏名】山田 寿一郎
【テーマコード(参考)】
3E170
3E172
【Fターム(参考)】
3E170AA03
3E170AB01
3E170DA02
3E170DA05
3E170JA07
3E170LA06
3E170NA05
3E170VA07
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB20
3E172BA06
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD05
3E172CA03
3E172DA03
3E172DA13
3E172EA03
(57)【要約】
【課題】屋根の保冷を容易に行え、低温ガスパージを容易に行える低温地上式タンク、低温地上式タンクの構築方法を提供する。
【解決手段】低温地上式タンク1は、円筒状に形成されたコンクリート製の側壁と、側壁の径方向内側に設けられ、低温液の貯蔵空間を形成する金属製のメンブレンと、側壁に固定され、貯蔵空間の上方を覆う屋根40と、を備え、屋根40の外面40aに、保冷構造体50が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成されたコンクリート製の側壁と、
前記側壁の径方向内側に設けられ、低温液の貯蔵空間を形成する金属製のメンブレンと、
前記側壁に固定され、前記貯蔵空間の上方を覆う屋根と、を備え、
前記屋根の外面に、保冷構造体が設けられている、
低温地上式タンク。
【請求項2】
前記保冷構造体は、
前記屋根の外面に固定された複数の成形断熱材と、
前記複数の成形断熱材の間に充填された発泡材と、を備える、
請求項1に記載の低温地上式タンク。
【請求項3】
前記保冷構造体は、
前記複数の成形断熱材を覆う防湿シートと、
前記防湿シートと共に前記複数の成形断熱材を前記屋根の外面に固定する鋼帯と、を備える、
請求項2に記載の低温地上式タンク。
【請求項4】
前記保冷構造体は、
前記鋼帯と共に前記防湿シートの外面を覆う複数のメッキ鉄板を備える、
請求項3に記載の低温地上式タンク。
【請求項5】
前記保冷構造体は、
前記屋根の外面に立設する複数のサポート材と、
前記複数のサポート材に支持され、前記屋根の周方向に延びる多重環状に配置された複数のパイプ材と、を備え、
前記鋼帯は、前記屋根の径方向において隣り合う前記パイプ材の間に架設されている、
請求項3または4に記載の低温地上式タンク。
【請求項6】
前記低温液は、液体アンモニアである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の低温地上式タンク。
【請求項7】
コンクリート製の側壁を円筒状に形成し、
前記側壁の径方向内側に、低温液の貯蔵空間を形成する金属製のメンブレンを形成し、
前記貯蔵空間の上方を覆う屋根を前記側壁に固定し、
前記屋根の外面に、保冷構造体を設ける、
低温地上式タンクの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温地上式タンク、低温地上式タンクの構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、LNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)、液体窒素などの低温液を貯蔵する低温地上式タンクが開示されている。この低温タンクは、金属製の球面屋根付きで平底円筒形の内槽と、コンクリート製の側壁及び当該側壁に固定された金属製球面屋根からなる外槽との二重殻構造となっており、内槽と外槽の間に粒状パーライト等の保冷材や、冷熱抵抗緩和材を充填して構成されている。
また、低温地下式タンクでは、側部及び底部に関しては低温地上式タンクと同様に二重構造となっているため、同様に内槽と外槽の間に保冷材を充填している。しかし屋根は一重となっているため、球面状の屋根の内面に保冷材を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような低温地下式タンクでは、内槽と外槽との間だけでなく、屋根も保冷する必要がある。
図6は、従来の低温地下式タンク100の屋根140の保冷構造を示す図である。
図6に示すように、従来では、屋根140の内面140bに保冷構造体150を固定していた。しかしながら、屋根140の内面140bには、屋根140を支える鉄骨部材142(凸部)があり、その鉄骨部材142を含めて保冷を行わなければならなかった。また、屋根140の内面140bの保冷は、施工時に作業員が上向きになるので、施工が難しい、という問題がある。
また、これらの保冷材は、工場にて直方体に成形されたものを、現場で屋根の内面に固定する構造となっているが、この成形保冷材の相互の目地部には、柔軟性のある別の保冷材を充填している。この充填された保冷材は、密なものとなっていないので、低温ガスを貯蔵する間にこの充填された保冷材の中に低温ガスが入り込んでしまう。一方、低温地下式タンクの開放検査時には、低温ガスをパージする必要があるが、この目地部に入り込んだ低温ガスを完全にパージするのは非常に困難である。
このような低温地下式タンクの屋根構造を、低温地上式タンクの屋根構造に適用する場合、同様の問題が生じ得る。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、屋根の保冷を容易に行え、低温ガスパージを容易に行える低温地上式タンク、低温地上式タンクの構築方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る低温地上式タンクは、円筒状に形成されたコンクリート製の側壁と、前記側壁の径方向内側に設けられ、低温液の貯蔵空間を形成する金属製のメンブレンと、前記側壁に固定され、前記貯蔵空間の上方を覆う屋根と、を備え、前記屋根の外面に、保冷構造体が設けられている。
【0007】
また、本発明の第2の態様では、第1の態様の低温地上式タンクにおいて、前記保冷構造体は、前記屋根の外面に固定された複数の成形断熱材と、前記複数の成形断熱材の間に充填された発泡材と、を備えてもよい。
【0008】
また、本発明の第3の態様では、第2の態様の低温地上式タンクにおいて、前記保冷構造体は、前記複数の成形断熱材を覆う防湿シートと、前記防湿シートと共に前記複数の成形断熱材を前記屋根の外面に固定する鋼帯と、を備えてもよい。
【0009】
また、本発明の第4の態様では、第3の態様の低温地上式タンクにおいて、前記保冷構造体は、前記鋼帯と共に前記防湿シートの外面を覆う複数のメッキ鉄板を備えてもよい。
【0010】
また、本発明の第5の態様では、第3または第4の態様の低温地上式タンクにおいて、前記保冷構造体は、前記屋根の外面に立設する複数のサポート材と、前記複数のサポート材に支持され、前記屋根の周方向に延びる多重環状に配置された複数のパイプ材と、を備え、前記鋼帯は、前記屋根の径方向において隣り合う前記パイプ材の間に架設されていてもよい。
【0011】
また、本発明の第6の態様では、第1から第5の態様のいずれかの低温地上式タンクにおいて、前記低温液は、液体アンモニアであってもよい。
【0012】
本発明の第7の態様に係る低温地上式タンクの構築方法は、コンクリート製の側壁を円筒状に形成し、前記側壁の径方向内側に、低温液の貯蔵空間を形成する金属製のメンブレンを形成し、前記貯蔵空間の上方を覆う屋根を前記側壁に固定し、前記屋根の外面に、保冷構造体を設ける。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明の一態様によれば、屋根の保冷を容易に行え、低温ガスパージを容易に行える低温地上式タンク、低温地上式タンクの構築方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る低温地上式タンクの構成図である。
【
図2】一実施形態に係る屋根の保冷構造体を示す分解斜視図である。
【
図3】一実施形態に係る屋根の一般部の保冷構造体の断面構成図である。
【
図4】一実施形態に係る屋根の外周縁部の保冷構造体の断面構成図である。
【
図5】一実施形態に係る保冷構造体の鋼帯の配置を示す平面図である。
【
図6】従来の低温地下式タンクの屋根の保冷構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、一実施形態に係る低温地上式タンク1の構成図である。
低温地上式タンク1は、
図1に示すように、基礎版10と、側壁20と、メンブレン30と、屋根40と、を概略備えている。
【0017】
低温地上式タンク1の内部の貯蔵空間Aには、低温液2として、液体アンモニアが貯蔵されている。なお、低温液2としては、LNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)、液体窒素などであってもよい。
【0018】
基礎版10は、コンクリート製であり、円板状に形成されている。基礎版10の上面には、図示しない底部ライナーや、保冷構造体(保冷材、冷熱抵抗緩和材など)が設けられている。
【0019】
側壁20は、基礎版10の外周縁に、円筒状に形成されている。側壁20は、コンクリート製であり、例えば、PC(プレストレストコンクリート)壁から形成されている。側壁20の内壁には、図示しない側ライナーや、保冷構造体が設けられている。側壁20の外壁には、外部階段21が設けられている。
【0020】
メンブレン30は、側壁20の径方向内側に設けられ、低温液2の貯蔵空間Aを形成している。メンブレン30は、側壁20の内壁及び基礎版10の上面を覆う有底筒状に形成されている。メンブレン30は、金属製の複数のメンブレンから形成され、当該メンブレンには格子状のコルゲーション(ひだ)が設けられている。
【0021】
屋根40は、上方に凸のドーム状に形成され、貯蔵空間Aの上方を覆っている。屋根40には、屋根階段41が設けられている。屋根40には、
図2~
図5に示すように、その外面40aに保冷構造体50が設けられている。
【0022】
図2は、一実施形態に係る屋根40の保冷構造体50を示す分解斜視図である。
図3は、一実施形態に係る屋根40の一般部の保冷構造体50の断面構成図である。
図4は、一実施形態に係る屋根40の外周縁部の保冷構造体50の断面構成図である。
図5は、一実施形態に係る保冷構造体50の鋼帯56の配置を示す平面図である。なお、一般部とは、屋根40の外周縁部以外の部分をいう。
【0023】
屋根40は、
図4に示すように、側壁20の上端部20aに固定されている。側壁20の上端部20aには、径方向内側に突出した肩部22が設けられている。屋根40は、肩部22の下面側に固定されている。肩部22の下面側には、図示しないスタッドボルト付きの厚板が設けられ、当該厚板を介して屋根40の外周縁が固定されている。
【0024】
側壁20の上端部20aには、屋根歩廊板23が敷設されている。屋根歩廊板23と屋根40との継ぎ目には、当該継ぎ目を跨ぐように、傾斜した水切り板43が固定されている。
【0025】
図2に示すように、屋根40の外面40aには、保冷構造体50が設けられている。保冷構造体50は、成形断熱材51と、発泡材52と、防湿テープ53と、ステンレス鋼線54と、防湿シート55と、鋼帯56と、メッキ鉄板57と、を備えている。
【0026】
成形断熱材51は、ブロック状に成形された断熱材である。成形断熱材51は、例えば、ポリウレタンフォームの成形体である。成形断熱材51は、屋根40の外面40aに接着剤などで固定されている。
発泡材52は、
図3及び
図4に示すように、隣り合う成形断熱材51の隙間に充填(注入)されている。発泡材52は、例えば、発泡ポリウレタンフォーンである。
【0027】
防湿テープ53は、
図2に示すように、発泡材52が充填された成形断熱材51の隙間を覆うように貼り付けられている。
ステンレス鋼線54は、成形断熱材51、発泡材52、及び防湿テープ53を含む構造体を屋根40の外面40aに拘束している。
【0028】
防湿シート55は、上記構造体の外面を覆っている。防湿シート55は、必要に応じて複数枚重ねられている。
鋼帯56は、防湿シート55の外側から上記構造体を屋根40の外面40aに固定している。鋼帯56は、例えば、ステンレス鋼帯である。
【0029】
メッキ鉄板57は、保冷構造体50の外面を形成している。メッキ鉄板57は、鋼帯56に対してリベットなどで固定されている。メッキ鉄板57は、うろこ状に重ねていき、重ね部は折り返し加工により固定及び防水する。これにより、保冷構造体50を雨養生できる。
【0030】
図3に示すように、屋根40の外面40aには、複数のサポート材58が立設している。複数のサポート材58は、柱状に形成され、屋根40の周方向に沿って多重環状に配置されている。サポート材58には、屋根40の周方向に延びる環状のパイプ材59が固定されている。
【0031】
パイプ材59は、
図5に示すように、屋根40の周方向に延びる多重環状に配置されている。鋼帯56は、屋根40の径方向において隣り合うパイプ材59の間に架設され、成形断熱材51の中心位置を屋根40の外面40aに拘束している。なお、サポート材58及びパイプ材59は、
図4に示すように、屋根歩廊板23上にも設けられ、屋根40の外周縁において成形断熱材51を固定している。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る低温地上式タンク1は、円筒状に形成されたコンクリート製の側壁20と、側壁20の径方向内側に設けられ、低温液2の貯蔵空間Aを形成する金属製のメンブレン30と、側壁20に固定され、貯蔵空間Aの上方を覆う屋根40と、を備え、屋根40の外面40aに、保冷構造体50が設けられている。
図3に示すように、屋根40の外面40aには、屋根40を内側から支える鉄骨部材42(凸部)が無いため、保冷を容易に行える。また、屋根40の外面40aの保冷は、施工時に作業員が下向きになるので、施工が容易になる。さらに、屋根40の内面には、保冷構造体50が設けられていないため、低温地上式タンク1の開放検査時の低温ガスパージを容易に行える。
【0033】
また、本実施形態では、保冷構造体50は、屋根40の外面40aに固定された複数の成形断熱材51と、複数の成形断熱材51の間に充填された発泡材52と、を備える。この構成によれば、屋根40の外面40aの全面を保冷できる。
【0034】
また、本実施形態では、保冷構造体50は、複数の成形断熱材51を覆う防湿シート55と、防湿シート55と共に複数の成形断熱材51を屋根40の外面40aに固定する鋼帯56と、を備える。この構成によれば、屋根40の外面40aに固定した成形断熱材51や防湿シート55が風などで飛ばされないようにすることができる。
【0035】
また、本実施形態では、保冷構造体50は、鋼帯56と共に防湿シート55の外面を覆う複数のメッキ鉄板57を備える。この構成によれば、保冷構造体50の外面を雨養生できる。
【0036】
また、本実施形態では、保冷構造体50は、屋根40の外面40aに立設する複数のサポート材58と、複数のサポート材58に支持され、屋根40の周方向に延びる多重環状に配置された複数のパイプ材59と、を備え、鋼帯56は、屋根40の径方向において隣り合うパイプ材59の間に架設されている。屋根40の外面40aは、曲率が大きく、部分球殻なので、全周に鋼帯56を回すことができない。この構成によれば、多重環状にパイプ材59を設けて、その間で鋼帯56を各部で個別に固定できるようにすることができる。
【0037】
また、本実施形態では、低温液2は、液体アンモニアである。アンモニアは、毒性があり、内面保冷にした場合、保冷中や目地部などにアンモニアが浸透した場合、開放検査時に完全にパージするのは困難である。このため、液体アンモニアを貯蔵する場合、本実施形態の外面保冷が有利になる。また、アンモニアは強アルカリ性である。多くの断熱材は有機化合物であり、アンモニアガスにさらされると劣化や変性してしまうものがある。この点からも、本実施形態の外面保冷が有利になる。
【0038】
また、本実施形態に係る低温地上式タンク1の構築方法は、コンクリート製の側壁20を円筒状に形成し、側壁20の径方向内側に、低温液2の貯蔵空間Aを形成する金属製のメンブレン30を形成し、貯蔵空間Aの上方を覆う屋根40を側壁20に固定し、屋根40の外面40aに、保冷構造体50を設ける。この手法によれば、屋根40の保冷を容易に行え、低温ガスパージを容易に行える低温地上式タンク1を構築できる。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【符号の説明】
【0040】
1…低温地上式タンク、2…低温液、10…基礎版、20…側壁、20a…上端部、21…外部階段、22…肩部、23…屋根歩廊板、30…メンブレン、40…屋根、40a…外面、41…屋根階段、42…鉄骨部材、43…水切り板、50…保冷構造体、51…成形断熱材、52…発泡材、53…防湿テープ、54…ステンレス鋼線、55…防湿シート、56…鋼帯、57…メッキ鉄板、58…サポート材、59…パイプ材、100…低温地下式タンク、140…屋根、140b…内面、142…鉄骨部材、150…保冷構造体、A…貯蔵空間