(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168638
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】オイルの診断方法およびオイルの診断システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/59 20060101AFI20241128BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G01N21/27 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085480
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小島 恭子
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059CC14
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE11
2G059HH02
2G059JJ02
2G059JJ13
2G059LL01
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は,光センサによって,オイル(計測対象)の色変化を測定してオイルの性質変化を検出する際に,非常に薄い色のオイル,あるいは,非常に濃い色のオイルであっても,オイルの状態を正確に判定することである。
【解決手段】
本発明の一側面は,白色光源とRGBセンサが配置された光学式センサを用い,前記白色光源から出た光を被測定油に透過させた後,反射板で反射し,前記反射板で反射した反射光を再度前記被測定油に透過させた後,前記反射光を前記RGBセンサで検出し,前記RGBセンサの検出信号に基づいて,前記被測定油の特性評価を行う際に,前記白色光源から出た光が前記RGBセンサに戻るまでの光路長を,波長Bおよび波長Gのうち少なくとも一つの吸光度が0.05以上1.5以下になるように設定する,オイルの診断方法である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光源とRGBセンサが配置された光学式センサを用い,
前記白色光源から出た光を被測定油に透過させた後,反射板で反射し,
前記反射板で反射した反射光を再度前記被測定油に透過させた後,前記反射光を前記RGBセンサで検出し,
前記RGBセンサの検出信号に基づいて,前記被測定油の特性評価を行う際に,
前記白色光源から出た光が前記RGBセンサに戻るまでの光路長を,波長Bおよび波長Gのうち少なくとも一つの吸光度が0.05以上1.5以下になるように設定する,
オイルの診断方法。
【請求項2】
前記被測定油の特性評価を行うために用いる波長を,波長Bおよび波長Gのうち吸光度が0.05以上1.5以下になるものから選択する,
請求項1記載のオイルの診断方法。
【請求項3】
前記光学式センサは,前記白色光源と前記RGBセンサが同一平面上に配置され,前記白色光源と前記RGBセンサの間隔が固定されている,
請求項1記載のオイルの診断方法。
【請求項4】
前記光学式センサは,前記白色光源と前記RGBセンサが透明壁に対向するように配置されて,前記被測定油から隔離され,
前記白色光源から出た光は,前記透明壁を介して前記被測定油に入射し,
前記反射光は,前記透明壁を介して前記RGBセンサに入射する,
請求項3記載のオイルの診断方法。
【請求項5】
前記被測定油の流路または容器を構成する壁のうち、前記光学式センサに対向する少なくとも一部が前記透明壁であり,前記透明壁に対向する前記壁の少なくとも一部が前記反射板であり,
前記白色光源から出た光が前記RGBセンサに戻るまでの光路長が,波長Bおよび波長Gのうち少なくとも一つの吸光度が0.05以上1.5以下になるように,前記流路または容器の寸法を設定する,
請求項4記載のオイルの診断方法。
【請求項6】
波長Bにおける吸光度が0.05以上1.5以下のときは,波長Bと波長Rの,前記RGBセンサの出力値の比率に基づいて前記被測定油の特性評価を行い,
波長Bにおける吸光度が1.5以下のときは,波長Gと波長Rの,前記RGBセンサの出力値の比率に基づいて前記被測定油の特性評価を行う,
請求項1記載のオイルの診断方法。
【請求項7】
前記白色光源から出た光が前記RGBセンサに戻るまでの光路長を2mm以上とする,
請求項1記載のオイルの診断方法。
【請求項8】
入力装置と出力装置と処理装置と記憶装置を備える情報処理装置を用い,
予め測定した前記被測定油の粘度,全酸価,水分,添加剤濃度の少なくとも一つの変化と,前記RGBセンサの出力値との相関により、検量線および閾値を求めて前記記憶装置に格納し,
前記入力装置から入力した前記RGBセンサの出力値と前記検量線に基づいて前記被測定油の特性評価を行い,前記閾値に基づいて前記被測定油を診断する,
請求項1に記載のオイルの診断方法。
【請求項9】
前記被測定油は,波長400nmから800nmの範囲の光に吸収を示す,
請求項1に記載のオイルの診断方法。
【請求項10】
前記RGBセンサの検出信号に基づいて,前記被測定油の特性評価を行う際に,
評価対象とする前記被測定油の全てに対して,吸光度が0.05以上1.5以下になる波長を用いる,
請求項1に記載のオイルの診断方法。
【請求項11】
白色光源とRGBセンサが同一平面上に配置され,前記白色光源と前記RGBセンサの間隔が固定されている,光学式センサと,
被測定油を前記光学式センサと隔離して保持する保持部と,
前記保持部の少なくとも一部を構成し,前記被測定油と前記光学式センサを隔離する壁と,
前記白色光源から出た光を,前記被測定油に透過させるため前記壁に設けられた第1の透明部分と,
前記被測定油に透過させた光を反射させるため前記壁に設けられた反射部と,
前記反射部で反射された光を,前記RGBセンサで受光させるため前記壁に設けられた第2の透明部分と,
を備え,
前記白色光源から出た光が,前記第1の透明部分,前記被測定油、前記反射部,前記被測定油,前記第2の透明部分を,この順番で経由して前記RGBセンサに至るまでの光路長を,波長Bおよび波長Gのうち少なくとも一つの吸光度が0.05以上1.5以下になるように設定した,
オイルの診断システム。
【請求項12】
前記保持部が前記被測定油を流す流路である,
請求項11記載のオイルの診断システム。
【請求項13】
入力装置と出力装置と処理装置と記憶装置を備える情報処理装置を備え,
前記記憶装置に,前記被測定油の特性と色情報の関係を示す検量線を格納し,
前記入力装置で,前記RGBセンサで得た前記被測定油の色情報を受信し,
前記処理装置で,前記色情報と検量線を用いて前記被測定油の特性を推定する際に,前記色情報として,前記波長Bおよび波長Gのうち吸光度が0.05以上1.5以下であるものを選択する,
請求項11記載のオイルの診断システム。
【請求項14】
前記処理装置は,
波長Bにおける吸光度が0.05以上1.5以下のときは,波長Bと波長Rの,前記RGBセンサの出力値の比率に基づいて前記被測定油の特性評価を行い,
波長Bにおける吸光度が1.5を超えたときは,波長Gと波長Rの,前記RGBセンサの出力値の比率に基づいて前記被測定油の特性評価を行う,
請求項13記載のオイルの診断システム。
【請求項15】
前記白色光源から出た光が前記RGBセンサに戻るまでの光路長を2mm以上とする,
請求項11記載のオイルの診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,オイルの診断技術に係る。特に,潤滑油,絶縁油,加工油などの産業用油を使用する大型機械の保守に関し,潤滑油などのオイル中の使用に伴う色変化を計測することにより,オイルの余寿命診断を行うことにより,機械の監視を行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大型回転機械の保全・保守を行う上で,軸受,歯車などの回転部品で使用される潤滑油の性状診断は重要な技術である。大型回転機械の例として,例えば,風力発電機の増速機,空気圧縮機,船舶,発電タービン,建設機械,農業機械,切削機,ポンプ,鉄道車両の減速機などがある。
【0003】
潤滑油以外では,変圧器などでは電気絶縁のための絶縁油が使用されており,絶縁油の性状診断も重要である。また,機械加工の際に加工油等も用いられる。加工油として切削加工油,プレス加工油,熱処理油,防錆油,洗浄油など,様々な用途に合わせた加工油がある。本明細書等では,潤滑油,絶縁油,加工油などの産業用油を総称してオイルということがある。
【0004】
潤滑油には,使用目的によりいろいろな種類がある。各種潤滑油が要求性能を満たすよう,基油(基材となる油)にいろいろな添加剤が配合される。他のオイルでもそれぞれに要求される性質を得るために,添加剤が配合されることがある。
【0005】
近年の機械の状態監視は,機械のライフサイクルコストが最小になるような戦略を取ることが多い。発電タービンなどの大型機械は潤滑油を大量に使用し,潤滑油交換は,機械を停止して行うために,発電ロス,製造停止などの負の側面がある上に,新油購入・配送費用,オイル交換作業費用,廃油処理費用などが必要となるため,潤滑油をできるだけ長く使用することが望まれる。電気自動車やデータセンタの冷媒液なども,オイル診断を実施し,交換やハードの修理を実施している。変圧器の絶縁油も同様に,色などを監視している。
【0006】
また,最近では,カーボンニュートラルの観点から,石油由来の燃料を大量に使用する,自動車などが電動化され,今後,燃料需要は減っていくが,産業用油は代替法が無い場合が多く,オイル交換周期を長くするなどにより,使用量を最小にすることが要求される。これは,オイル消費量を減らすことで,二酸化炭素排出量が減るからである。しかし,オイルの劣化と汚染を見逃すと,機械の故障につながる。
【0007】
潤滑油の性状診断について,「劣化」と「汚染」をそれぞれ定義し,区別する。大別すると,(1)潤滑油の経時的な酸化劣化と,(2)水,塵埃や摩耗粉などの外部混入物による汚染の2種類を診断する必要がある。
【0008】
(1)の潤滑油の酸化劣化としては,基油の酸化による劣化,添加剤の消耗による劣化などがある。潤滑油の酸化劣化により,耐摩耗性の低下,粘度および粘度指数の変化,防錆性の低下,防食性の低下などが起こる。結果として,増速機の摩耗や材料疲労が促進されることがある。オイルをできるだけ長く使用したい一方で,異常な劣化や汚染がある場合には速やかにオイル交換と機器の点検を行う必要がある。
【0009】
可視光のうち,RGB(赤緑青)の3波長における透過率変化について,特許文献1に記載のように,新油の透過率からの相対変化から,潤滑油の交換時期や機械異常の予兆を診断する方法がある。RGB値のうち,オイルの劣化による透過率変化が最も大きい,B値の変化に基づき,診断を行うことが記載されている。
【0010】
特許文献2に記載のような光学式センサを用いてオイルの劣化を診断する方法がある。このセンサでは,透過光計測の光路長が固定されていた。。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2019-078718号公報
【特許文献2】WO2012/074109 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
透過光計測の場合,オイルの劣化が進むと,RGBのうち,主にG値およびB値の顕著な減少として観測される。オイルの汚染の場合は,水が入って濁ったり,煤や微粒子が大量にオイルに入ったりすることにより,光源の光が波長に依存せずに散乱されるので,RGB値すべてが低下する。
【0013】
透過光を計測するセンサでは,光源の光がオイルを通過し,対向位置にあるRGBセンサに届いた光の強度を計測し,電圧,電流などで出力する。RGBセンサの信号出力を評価することにより,間接的にオイルの性質を測定することができる。
【0014】
しかし,被測定油の色が薄い場合,すなわち被測定油による吸光の度合いが小さい場合には,被測定油による光吸収以外の影響が相対的に大きくなり,測定精度が低下する。光吸収以外の影響とは,具体的には,電気的なノイズ,光源強度の変動,窓材料(ガラスなど)の汚れ付着,などである。
【0015】
被測定油の色が濃い場合,すなわち被測定油による吸光の度合いが大きい場合には,被測定油で,ほぼ全ての光が吸収され,センサ信号強度が低下して測定精度が低下する。
【0016】
従来の技術でオイルの性質を測定しようとした場合には,色が非常に薄いオイルや,色が非常に濃いオイルでは,特性を正確に計測できないという課題があった。
【0017】
本発明の課題は,光センサによって,オイル(計測対象)の色変化を測定してオイルの性質変化を検出する際に,非常に薄い色のオイル,あるいは,非常に濃い色のオイルであっても,オイルの状態を正確に判定することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一側面は,白色光源とRGBセンサが配置された光学式センサを用い,前記白色光源から出た光を被測定油に透過させた後,反射板で反射し,前記反射板で反射した反射光を再度前記被測定油に透過させた後,前記反射光を前記RGBセンサで検出し,前記RGBセンサの検出信号に基づいて,前記被測定油の特性評価を行う際に,前記白色光源から出た光が前記RGBセンサに戻るまでの光路長を,波長Bおよび波長Gのうち少なくとも一つの吸光度が0.05以上1.5以下になるように設定する,オイルの診断方法である。
【0019】
本発明の他の一側面は,白色光源とRGBセンサが同一平面上に配置され,前記白色光源と前記RGBセンサの間隔が固定されている,光学式センサと,被測定油を前記光学式センサと隔離して保持する保持部と,前記保持部の少なくとも一部を構成し,前記被測定油と前記光学式センサを隔離する壁と,前記白色光源から出た光を,前記被測定油に透過させるため前記壁に設けられた第1の透明部分と,前記被測定油に透過させた光を反射させるため前記壁に設けられた反射部と,前記反射部で反射された光を,前記RGBセンサで受光させるため前記壁に設けられた第2の透明部分と,を備え,前記白色光源から出た光が,前記第1の透明部分,前記被測定油、前記反射部,前記被測定油,前記第2の透明部分を,この順番で経由して前記RGBセンサに至るまでの光路長を,波長Bおよび波長Gのうち少なくとも一つの吸光度が0.05以上1.5以下になるように設定した,オイルの診断システムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば,光センサによって,オイル(計測対象)の色変化を測定してオイルの性質変化を検出する際に,非常に薄い色のオイル,あるいは,非常に濃い色のオイルであっても,オイルの状態を正確に判定することができる。
【0021】
上記以外の課題,構成,効果などについては,以下の実施形態の説明により明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】透過率と吸光度の関係を示すグラフ図である。
【
図2】エンジン油の使用に伴う色変化を示すグラフ図である。
【
図3】RGBカラーセンサの分光感度特性を示すグラフ図である。
【
図4】エンジン油の使用に伴う色変化を示すグラフ図である。
【
図5】エンジン油の使用に伴う色変化を示すグラフ図である。
【
図6】エンジン油の使用に伴う色変化を示すグラフ図である。
【
図7】エンジン油の使用に伴う色変化を示すグラフ図である。
【
図8】オイルの診断システムの構成を示す概念図である。
【
図9】光路長とオイルの吸光度の関係を示す表図である。
【
図10】オイルの吸光度と粘度の関係を示すグラフ図である。
【
図11】オイルの吸光度と粘度の関係を示すグラフ図である。
【
図12】オイルの劣化に伴う各種の指標の変化を示すグラフ図である。
【
図13】オイルの劣化に伴う各種の指標の変化を示すグラフ図である。
【
図14】風力発電機の潤滑油の監視システムの概略図である。
【
図15】潤滑油用光学式センサを備えた回転部品の概念図である。
【
図17】時系列的に保存された潤滑油の色度データ(B/R値)取得結果の概念を示すグラフ図である。
【
図18】粘度と経過時間の関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施の形態について,図面を用いて詳細に説明する。ただし,本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で,その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0024】
以下に説明する実施例の構成において,同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い,重複する説明は省略することがある。
【0025】
同一あるいは同様な機能を有する要素が複数ある場合には,同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし,複数の要素を区別する必要がない場合には,添字を省略して説明する場合がある。
【0026】
本明細書等における「第1」,「第2」,「第3」などの表記は,構成要素を識別するために付するものであり,必ずしも,数,順序,もしくはその内容を限定するものではない。また,構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ,一つの文脈で用いた番号が,他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また,ある番号で識別された構成要素が,他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0027】
図面等において示す各構成の位置,大きさ,形状,範囲などは,発明の理解を容易にするため,実際の位置,大きさ,形状,範囲などを表していない場合がある。このため,本発明は,必ずしも,図面等に開示された位置,大きさ,形状,範囲などに限定されない。
【0028】
本明細書で引用した刊行物,特許および特許出願は,そのまま本明細書の説明の一部を構成する。
【0029】
本明細書において単数形で表される構成要素は,特段文脈で明らかに示されない限り,複数形を含むものとする。
【0030】
光路長が固定されたセンサまたは装置の場合,色が非常に薄いオイルの色,色が非常に濃いオイルの色を正確に計測できない。以下で説明する実施例では,光センサによって,オイル(計測対象)の色変化を測定してオイルの性質変化を検出する際に,最適な光路長を選択し,あるいは,RGB値のうち,色の濃さに応じて,G値またはB値を選択し,R値と組み合わせることで,オイルの状態を正確に判定する。これにより,色が非常に薄いオイル,色が非常に濃いオイルであっても,非接触の光学的センサを用いた特性評価を正確に行うことができる。
【0031】
<オイルの色変化を用いた監視>
実施例に係る,潤滑油などのオイルの色変化を用いた機械の監視方法は,可視域の光学式センサによるオイルの劣化および汚染の診断において,任意の異なる2波長における透過率を示す値の比を指標とすることにより,正しいオイル劣化の観測を実現することを特徴とする。なお原理的に(透過率=1-吸収率)であるとすれば,実施例では透過率と吸収率は同じ意義を持つ。
【0032】
潤滑油には,エンジン油,タービン油,油圧作動油,軸受油,摺動面油,ギヤ油,圧縮機油,切削油などの種類がある。潤滑油は,基油と添加剤から構成される。添加剤には,酸化防止剤,錆止め剤,消泡剤,粘度指数向上剤,油性向上剤,極圧添加剤,清浄分散剤,流動点降下剤,乳化剤などがある。潤滑以外の目的で使われるオイルとして,変圧器油,洗浄油,切削油などがある。多くのオイルは,使用による色変化が,交換時期の判定や機械の異常の指標となる。
【0033】
潤滑油は,基油と添加剤から構成され,基油には,石油から作られる鉱油,高性能な合成油,植物から作られるバイオ油などがある。合成油は,高純度で,化学的に非常に安定であり,劣化しにくい。したがって,合成油を使用した潤滑油の色変化は,添加剤の消耗によって起こることが多い。一方で,鉱油やバイオ油は,純度が低かったり,化学的にやや不安定なエステル構造を有したりするため,使用によって基油が着色することがある。添加剤の消耗によっても着色が起こる。
【0034】
オイルの色変化は,具体例として,新油は無色あるいは淡い黄色であり,使用日数経過により,黄色,オレンジ,赤褐色を経て黒褐色になる。オイルの種類によっては,新油が濃い色に着色している場合があり,使用により,さらに濃い色に変化する。また,新油が無色あるいは淡い黄色であり,長期間使用しても,色の変化が僅かである場合がある。
【0035】
<吸光度の条件>
透過光計測で被測定油の色座標を求める際には,被測定油の吸光度に応じた光路長の選択が必要となる。なお、本明細書等において、光路長とは物理的な光路の長さ(物理的な寸法)をいうものとする。
【0036】
ランベールの法則によれば,吸光度は光路長に比例し,ベールの法則によれば,吸光度は濃度に比例する。潤滑油などの被測定物の吸光度をA,透過光計測光源の光の被測定物への入射強度をI0,光が被測定物を透過して出射し,RGBセンサが検出するときの強度をIxとすると,吸光度Aは,ランベール=ベールの法則により,以下の式で表される。
【0037】
A = -log10(Ix/I0) …(1)
A = k*c*L …(2)
ここで,kは比例定数,cは濃度,Lは光路長である。
【0038】
被測定油の色が薄い場合(例えば吸光度0.05未満)は,被測定油による光吸収以外の影響が相対的に大きくなり,測定精度が低下する。光吸収以外の影響とは,具体的には,電気的なノイズ,光源強度の変動,窓材料(ガラスなど)の汚れ付着,などがある。例えば、被測定油の吸光度Aが0.022(透過率95%)の時,透過率が1%減少するような汚れが流路壁に付くと,吸光度が0.027となり,23%変化する。被測定油による吸収に対して,汚れによる吸収が大きく影響し色測定の精度が低下する。
【0039】
被測定油の色が濃い場合(例えば吸光度1.5超)は,被測定油で,ほぼ全ての光が吸収され,測定精度が低下する。また、汚れ付着による影響が大きくなる。例えば、被測定油の吸光度が1.500(透過率3.16%)の時,透過率が1%減少するような汚れが流路壁に付くと,吸光度が1.666となり,吸光度が12%変化し,汚れによる吸収が大きく影響し、色測定の精度が低下する。よって、例えば吸光度1.5を許容限度とする。
【0040】
測定精度を考慮すると、吸光度Aが0.02以上2.00以下の範囲で被測定油を光学測定することが望ましい。さらに好ましくは、吸光度Aが0.05以上1.50以下の範囲で被測定油を光学測定することが望ましい。
【0041】
<吸光度と透過率>
図1は吸光度と透過率の関係を示すグラフである。上記ランベール=ベールの法則の式(1)により,吸光度と透過率は相互に変換可能で,
図1のような関係にある。光学式センサの出力は,透過率と比例している。
【0042】
<RGB色診断>
RGB3波長,たとえば,460nm,540nm,620nmにおける吸光度または透過率を光学式センサで計測し,潤滑油の劣化度を診断する。被測定油の多くは,波長400nmから800nmの範囲の光に吸収を示す。計測されるRGBの波長はセンサの特性によっても異なるが、おおむねプラスマイナス10%程度の誤差を許容する。RGBセンサは,潤滑油を通過した光源の光を計測し,電圧値や電流値として出力する。この出力値は,各波長に対する光の透過率に対応した値である。
【0043】
<比率とΔE>
RGB値による潤滑油の劣化診断は,新油を測定した時のRGB値を,(255,255,255)または(100,100,100)と規格化して,
ΔE=√(R2+G2+B2)
MCD=(RGBのうち最大値と最小値の差)
の2つの指標による診断法がある。
【0044】
また,RGB値の変化による診断法がある。また、たとえば、B/R,G/Rのような,RGBから選んだ2値の比率による診断法がある。
【0045】
これらは被測定油の色変化に基づいて被測定油の特性変化を推定する。典型的な診断法によれば、予め被測定油と等価なサンプルについて,経時的に色変化を反映したデータと特性変化のデータを取得し、色変化と特性変化の相関から検量線を得,好ましい特性の境界を示す閾値を設定することで,被測定油の診断を可能とする。
【0046】
<BとGの切り替え>
良好な定量性を得るための吸光度の好ましい条件は,例えば0.05以上1.5以下である。潤滑油の劣化診断用の検量線をあらかじめ作成するとよい。例えば,粘度について閾値を設定して監視する場合は,粘度が閾値に到達するときのRGB値を,劣化油を用いて,あらかじめ計測しておく。新油から閾値に到達するまでの,潤滑油の吸光度推移から,光路長と,BとGのどちらの値を用いて監視するかを決めることができる。
【0047】
多くの場合,RGBのうち,Rの変化は最も小さく,Bの変化が最も大きく,GはRとBの間の値を示すことが多い。RGBから選んだ2値の比率による診断を行う場合,Rはベースラインのような位置づけであるため,Rの吸光度は0.05未満でもよく,GとBについて,0.05以上1.5以下であることが望ましい。
【0048】
<劣化による色変化>
図2は,エンジン油の使用に伴う色変化(吸光度)を示した図である。横軸に示す波長に対するオイルの吸光度を縦軸に示す。Aは新油,Bは2か月使用,Cは6か月使用,Dは1年使用したオイルの可視域の吸光度である。
【0049】
新油Aの見た目の色は淡い褐色,Bは褐色,Cはやや濃い褐色,Dは濃い褐色であった。ギヤ油,タービン油,油圧作動油,軸受油,摺動面油,圧縮機油,切削油,圧延油,絶縁油でも同様の色変化が起こる。RGBの各波長において、油の使用に伴う吸光度の変化の度合いが異なることがわかる。
【0050】
図3は,Siフォトダイオードアレイから構成されたRGBカラーセンサの分光感度特性である。Blue(波長460nm),Green(波長540nm),Red(波長620nm)にそれぞれ感度をもつ3ch(RGB)フォトダイオードを使用している。このカラーセンサは,視感度に近い分光感度特性を持ち,このカラーセンサを用いてオイルの色を,色座標として表現することができる。
【0051】
吸光度と透過率は,以下のように定義される。一定の光路長のサンプルを光が透過する時に,
吸光度= -log(Ii/I0)
透過率(%)= (I0/Ii)×100
ここで,Iiは入射光強度,I0は透過光強度である。式から明らかなように,吸光度と透過率は相互に変換可能である。
【0052】
図2は、
図3の特性を持つRGBカラーセンサで計測したエンジン油の色変化(吸光度)である。R(Red)値は変化量が小さく,B(Blue)値はR,Gよりも変化量が大きく,G(Green)値の変化量はRとBの中間となる。
【0053】
ここで,エンジン油の新油の色をRGBカラーセンサで計測し,新油の色座標を(255,255,255)とする。この新油の色座標については,例えば,(100,100,100)とすることでも可能で,あるいは,(100,97,80)のような値としてもよい。使用油,劣化油の色は,新油と同じ計測方法で計測すればよい。また,RGBの3つの値の中から2値を選び,例えば,B/R,G/R,R/B,R/Gのように,2値の比率で評価する方法がある。この場合,新油の色座標を(255,255,255)または(100,100,100)のように規格化した上で比率を求めても良いし,センサの電圧出力値や電流出力値を用いてもよい。たとえば,RGBセンサの電圧出力値で,最大のものを100とし,他の2値は,最大値を100としたときの相対値としてもよい。
【0054】
<光路長>
図2に示した結果は,光路長(ここでは2d)が10mmの時の結果である。光源から射出した光が距離d(ここでは5mm)の位置にある反射面で反射し、往復で10mmの光路を経て戻ってきた光を検出する場合を想定する。波長B(460nm)における吸光度は0.05より大きく1.5を超えていないので,BとR(620nm)の吸光度をエンジン油の劣化診断に用いることができる。波長G(540nm)の吸光度も0.05より大きく1.5より小さいので,エンジン油の劣化診断に波長Gの値を用いることができる。波長Bのほうが波長Gより被測定油に対する吸収変化が大きいので、経年変化に対する感度はよいといえる。
【0055】
図4は、光路長を40mmとして、
図3の特性を持つRGBカラーセンサで計測したエンジン油の色変化(吸光度)を示すグラフである。
【0056】
図5は、光路長を20mmとして、
図3の特性を持つRGBカラーセンサで計測したエンジン油の色変化(吸光度)を示すグラフである。
【0057】
図6は、光路長を2.0mmとして、
図3の特性を持つRGBカラーセンサで計測したエンジン油の色変化(吸光度)を示すグラフである。
【0058】
図7は、光路長を1.0mmとして、
図3の特性を持つRGBカラーセンサで計測したエンジン油の色変化(吸光度)を示すグラフである。
【0059】
吸光度は,光路長に比例することから,例えば,光路長が40mmの時は,
図4のようになる。ここで,波長B(460nm)と波長R(620nm)における吸光度を用いてエンジン油の劣化診断を行うと,新油Aは波長Bにおける吸光度が1.5以下であるが,サンプルB,C,Dは,吸光度が1.5を大きく超えたので,波長Bを用いるのは適していない。一方で,波長G(540nm)における吸光度は,いすれのサンプルでも吸光度が1.5を超えていないので,GとRの値を用いるのがよい。
【0060】
光路長が20mmの時のエンジン油A,B,C,Dの吸光度は,
図5のようになった。この場合は,波長Bをエンジン油劣化診断に用いるには,サンプルDの吸光度が大きすぎるため,波長Gを用いる方が良い。
【0061】
このように,オイルの劣化診断には,波長Bと波長Gのうち,吸光度が0.05から1.5の間になる波長を選択するのがよい。
【0062】
図6は,光路長が2mmの時の吸光度である。このオイルの劣化度を正確に診断するには,光路長が不足していることを示している。同様に,
図7は,光路長が1mmの時の吸光度であるが,このオイルの劣化診断には,光路長が不足している。
【0063】
このように,オイルの色の濃さによって,光路長を変えることで,正確な劣化診断を行うことが可能である。
【0064】
<診断システムの形態>
図8は、オイルの色測定を行うシステム構成の一例を示す断面図である。オイルの診断システム800は,オイルの流路810と光学式センサ820と情報処理装置830を備える。流路810を例えば図中左から右へ流れる被測定油812の特性を,光学式センサ820によって測定し、情報処理装置830で測定したデータを処理する。このシステムでは,オイルの劣化診断に用いる波長(BとG)の選定、および光路長の設定の少なくとも一つを可能とするものとする。
【0065】
情報処理装置830は、入力装置831、出力装置832、処理装置833、記憶装置834を備える。情報処理装置830は、例えば一般的なサーバやパーソナルコンピュータを想定すればよい。記憶装置834には、後に説明する検量線データ8341が格納される。また、診断用ソフトウェア8342が格納される。光学式センサ820からの測定データは、入力装置831に入力され、処理装置833で処理される。処理結果は、出力装置832で出力される。診断のための処理は、処理装置833が診断用ソフトウェア8342を読み出して、実行するものとする。
【0066】
光学式センサ820は,白色光源821とRGBセンサ822が筐体823に実装されている。白色光源821とRGBセンサ822は筐体823に固定され,間隔(2×d2)は固定されている。白色光源821とRGBセンサ822を一体構成にすることで,オイルの診断システム800への実装が容易となる。
【0067】
流路810を構成する壁面のうち、光学式センサ820に近い壁面は透明流路壁811であり,白色光源821からの光およびRGBセンサ822への入射光に対して,例えば90%以上の十分な透過率を持つ。流路810を構成する壁面のうち、光学式センサ820に遠い壁面は可視光反射板813であり,白色光源821からの光に対して例えば90%以上の十分な反射率を持つ。流路810の断面形状は円形で四角形でもよく任意である。
【0068】
同一平面上に配置された白色光源821とRGBセンサ822は,透明流路壁811と接している。白色光源821から出た光は,透明流路壁811と被測定油812を透過した後,入射角θで可視光反射板813に入射する。可視光反射板813を反射角θで反射した反射光を,RGBセンサ822で検出する。このように、透明流路壁811を介して白色光源821とRGBセンサ822を配置することで、被測定油812と白色光源821とRGBセンサ822を隔離することができ、システムの保守管理が容易になる。なお、透明流路壁811全体を透明にする代わりに、白色光源821とRGBセンサ822に接する部分を透明窓にしてもよい。
【0069】
被測定油812で満たされた流路810の流路幅をd1とし,被測定油812を透過する光路長を2Lとし,白色光源821とRGBセンサ822との距離をd2の2倍とするとき,以下のような関係がある。
L=d1/cosθ
L = √((d1)2 + (d2)2)
【0070】
この時,被測定油の色座標を正確に測定するには,光路長2Lが,波長GまたはBの吸光度が0.05以上1.5以下であるように調整されていることが望ましい。上に述べたような,白色光源821とRGBセンサ822の位置関係が固定されているRGBセンサ822を用いるシステム(すなわちd2が不変なシステム)においては,好ましい光路長2Lを得るために以下のように流路幅を調整したり,これに代えまたはこれに加えて、診断用ソフトウェア8342が好ましい吸光度となる波長を選択したりすることが好ましい。
【0071】
図8に示すシステムにおいてd2が不変とすると、光路長2Lを調整するためには、白色光源821と可視光反射板813の間の光路長、および、RGBセンサ822と可視光反射板813の間の光路長の少なくとも一つを調整する必要がある。典型的な例では、流路幅d1を適切に調整することで,光路長2Lを調整して吸光度を適切に調整することができる。流路幅d1の具体例は,オイルの流路810を構成するパイプの直径である。
【0072】
図8では,白色光源821とRGBセンサ822は透明流路壁811と接触しているが,たとえば,白色光源821の光をミラーで反射させてから被測定油812に入射させたり,RGBセンサ822の直前で,ミラーで光を反射させたりしてからRGBセンサ822で受光する構造を用いることもできる。さらには,プリズムやレンズを介在させた構造を用いることもできる。これらの構成を採用することで,白色光源821からRGBセンサ822への光路長を調整することができる。
【0073】
<センサの設置>
光学式センサ820は,被測定油812に直接接触させずにオイルの色を計測することが可能である。設置場所としては,油面位置を確認するための,レベルゲージのような場所に設置できる。その他,オイルタンク,バイパスラインなどに,光学式センサ820,オイルの流路810,可視光反射板813を設置するとよい。もっとも、被測定油は流れている必要はなく、タンクのように滞留している部分で測定してもよい。
【0074】
<適用範囲>
光学式センサ820を用いた色計測によって診断を行うオイルの種類は,エンジン油,タービン油,油圧作動油,軸受油,摺動面油,ギヤ油,圧縮機油,切削油,絶縁油,切削加工油,プレス加工油,熱処理油,防錆油,洗浄油などがある。オイルを使用する装置も特に制限はない。
【実施例0075】
ギヤ油の診断例を示す。新油(サンプル1)と,劣化度が異なる,1か月使用したギヤ油(サンプル2),3か月使用したギヤ油(サンプル3),6か月使用したギヤ油(サンプル4)を採取した。このオイルは,粘度の閾値(200cP)を用いて交換の判断を行っており,新油の粘度が160cPであり,使用に伴い粘度が上昇し,サンプル4の粘度は200cPであったため,交換することになった。
【0076】
図9は,これら4個のサンプル(ASTM1~ASTM4)を,
図8のオイルの診断システム800で測定した結果を示す表図である。
図8のシステムでは,白色光源821の光は,θ=60°で入射する。RGB3波長における吸光度を4種の異なる光路長(d1=2mm,5mm,6.8mm,10mm)に設定した流路にギヤ油サンプルを満たして測定した。光学式センサ820の出力値は,吸光度に変換した。
【0077】
図9の表図には、各光路長において、波長B(460nm)、波長G(540nm)、波長R(620nm)における吸光度を示している。このギヤ油は,劣化に伴い,RGBのうち,波長Bの吸光度が最も上昇し,波長Rにおける吸光度は最も変化が小さかったので,BとRの比率をもちいて診断することが望ましい。
【0078】
図10は,
図8の流路幅d1=2mmの時のBの吸光度と粘度の関係である。本実施例では,このように光学センサで得た色情報と被測定油の特性の関係を示す検量線を用いることで,非接触で被測定油の特性を推定することが可能となる。
図10のような検量線のデータは,
図8に示した記憶装置834に検量線データ8341として格納しておき、入力装置831から光学式センサ820で得た色情報を入力し、処理装置833で診断用ソフトウェア8342を用いて検量線と色情報の比較および必要な計算を行って、出力装置832から推定した被測定油の特性を出力することが可能である。このとき、診断用ソフトウェア8342は、例えば以下のように、予め
図9に示したデータに基づいて、診断に使用する波長を定めておくものとする。
【0079】
図11は,
図8の流路幅d1=2mmの時のB/Rと粘度の関係である。ここで,B/Rを求める際には,透過率に対応する,センサの出力値を用いた。
【0080】
吸光度が,0.05以上1.5以下であるか,という条件に基づき,各サンプルに適した光路長を求めた。
【0081】
図9を参照し、流路幅d1=2mmの時,波長B(460nm)の吸光度は0.06~1.50でありおおよそ条件を満たしたため,BとRの比率を用いて診断を行うことができた。
【0082】
図9を参照し、流路幅d1=5mmの時,波長Bの吸光度は,サンプル3とサンプル4では1.5を超えた。一方,新油の波長G(540nm)の吸光度は0.041であり0.05を下回ったが,使用開始後間もなく0.05を超えたため,波長Gの値を用いて診断を行った。
【0083】
図9を参照し、流路幅d1=6.8mmの時は,波長Gの吸光度は,0.05から1.5の間であったため,波長Gの値を用いて診断を行った。
【0084】
図9を参照し、流路幅d1=10mmの時は,波長B,Gともに,粘度の閾値に到達する前に,吸光度が1.5を超えた。
【0085】
流路幅d1を,1mmに設定したところ,流路幅が狭すぎて,オイルが流れず,測定を行わなかった。
【0086】
これらの結果,流路幅d1は,2mmから6.8mmの間に設定すればよいことが明らかになった。
光路長は,d1=3mmとした。理由は,この作動油では,新油から全酸価の閾値に到達するまで,波長Bの吸光度が0.05~1.5の範囲に収まるようにするためである。