(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168641
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置及び乗り物
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20241128BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20241128BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20241128BHJP
G09G 3/36 20060101ALI20241128BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20241128BHJP
G09G 3/34 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G02B27/01
G02F1/13 505
G09G3/20 680B
G09G3/36
B60K35/00 A
G09G3/34 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085487
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 智貴
【テーマコード(参考)】
2H088
2H199
3D344
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
2H088EA23
2H088EA32
2H088HA18
2H088HA21
2H088HA24
2H088HA28
2H088MA20
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA15
2H199DA19
2H199DA28
2H199DA29
2H199DA33
2H199DA34
2H199DA36
2H199DA44
2H199DA48
3D344AA08
3D344AA26
3D344AA27
3D344AA30
3D344AC25
3D344AD13
5C006AF62
5C006AF63
5C006BF39
5C006EA01
5C006EC09
5C080AA10
5C080AA17
5C080BB05
5C080DD20
5C080DD29
5C080JJ01
5C080JJ02
5C080JJ06
5C080KK20
(57)【要約】
【課題】
発熱による表示パネルの寿命低下を抑制するヘッドアップディスプレイ装置を提供すること。本発明によれば、持続可能な開発目標の「3すべての人に健康と福祉を」に貢献する。
【解決手段】
ヘッドアップディスプレイ装置は、表示パネルと、光源部と、照射範囲調整部と、を備えている。光源部は、表示パネルへ出力する光を発光する構成である。照射範囲調整部は、表示パネルへの光の照射範囲を調整する構成である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、
前記表示パネルへ光を出射する光源部と、
前記表示パネルから出射された映像光を反射して、反射された映像光を表示領域へ投射する映像光投射部と、を有し、
前記表示パネルへ入射する光の照射範囲を調整する照射範囲調整部と、を備える、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記照射範囲調整部は、
前記照射範囲調整部に入射した光のうち、前記照射範囲を形成するための光を透過し、前記照射範囲を形成しない光を吸収、または、反射する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記照射範囲調整部は、
前記照射範囲調整部に入射した光のうち、前記照射範囲を形成するための光を反射し、前記照射範囲を形成しない光を吸収、または、透過する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記照射範囲調整部は、
前記照射範囲調整部へ入射した光のうち、前記照射範囲を形成するための光を変調して出射する液晶素子と、
前記液晶素子の出射側に、前記液晶素子で変調された光を透過する偏光素子と、を備える、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記偏光素子は、反射型偏光素子である、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
請求項3に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記照射範囲調整部は、
MEMSシャッター、または、DLPによって構成されている、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記光源部は、それぞれON/OFF切り替え可能な複数の光源からなる、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項8】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記表示パネルは、
前記照射範囲内の画素を用いて映像を描画する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項9】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
制御部を備え、
前記制御部は、
前記表示パネルで描画する映像に応じて、前記照射範囲を調整する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項10】
請求項3に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記照射範囲調整部は、前記表示パネルに対して、傾いて配置される、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項11】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記表示パネル上での描画位置の使用頻度および/または今までの使用時間に基づいて、前記照射範囲調整部により描画位置を調整する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項12】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
太陽光の強度を測定するセンサを、前記ヘッドアップディスプレイ装置を搭載する車両または前記ヘッドアップディスプレイ装置に備え、
前記センサの検出結果に基づいて、前記照射範囲調整部により前記照射範囲を調整する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項13】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記表示パネルの温度に基づいて、前記照射範囲調整部により前記照射範囲を調整する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項14】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記表示パネルの周囲温度に基づいて、前記照射範囲調整部により前記照射範囲を調整する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項15】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
位置情報と日時から算出される太陽の仰角に基づいて、前記照射範囲調整部により前記照射範囲を調整する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項16】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
外光の照度に基づいて、前記照射範囲調整部により前記照射範囲を調整する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項17】
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置であって、
映像描画に使用する前記表示パネルの画素数に基づいて、前記照射範囲調整部により前記照射範囲を調整する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項18】
請求項1から請求項17までのいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置を搭載した乗り物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置及び当該ヘッドアップディスプレイを搭載した乗り物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のフロントガラスに映像光を投写して虚像を形成し、例えば、ルート情報や渋滞情報などの交通情報、燃料残量や冷却水温度等の自動車情報を表示するヘッドアップディスプレイ(HUD:Head Up Display)装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HUD装置内には、光源と、映像光を出射する表示パネルと、が設けられる。ここで、表示パネルに光が入射することで、表示パネルが発熱し、表示パネルの寿命が縮まることが考えられる。そのため、発熱による表示パネルの寿命低下を抑制する技術を提供することに課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、下記の態様のヘッドアップディスプレイ装置が提供される。このヘッドアップディスプレイ装置は、表示パネルと、光源部と、照射範囲調整部と、を備える。光源部は、表示パネルへ出力する光源光を発光する。照射範囲調整部は、表示パネルへの光の照射範囲を調整する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、表示パネルへの光源からの光の照射範囲を制御し、映像の投射にあたって光源からの不要な光の入射を抑制し、表示パネルの寿命低下を抑制することができる。なお、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】HUD装置による映像光の投射の一例を示す図。
【
図3A】表示パネルの温度上昇原因の一例を説明するための図である。
【
図3B】表示パネルの温度上昇原因の一例を説明するための図である。
【
図4】太陽光を原因とする表示パネルの温度上昇を抑制する方法の一例を説明するための図である。
【
図5】日照センサの取り込み角の一例を示す図である。
【
図6】車両情報の取得に用いる装置の一例を示す図である。
【
図7A】HUD装置における制御系の主要部の構成例を示す機能ブロック図である。
【
図7B】車両のコントローラにより制御するHUD装置の主要部の構成例を示す機能ブロック図である。
【
図8A】映像表示部の構造例を部分的に示した図である。
【
図8B】映像表示部の構造例を部分的に示した図である。
【
図9】照射範囲調整部による照射範囲の制限の一例を示す図である。
【
図10】照射範囲調整部および表示パネルの具体的な構造の一例を示す図である。
【
図11】照射範囲調整部の制御の一例を示す図である。
【
図13】角度α、β、γについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0009】
先ず、
図1-
図5を参照しながら、HUD装置等の概要について説明する。
【0010】
図1は、ヘッドアップディスプレイ装置(HUD装置)1を搭載した車両2の構成例を示す概略図である。車両2および運転者に対して、水平方向Xは、左右方向、車両の横方向または車両の幅方向であり、鉛直方向Zは、車両の上下方向、縦方向であり、車両の横方向に対し直交する水平方向Yは、車両の前後方向または車両の進行方向である。
【0011】
HUD装置1は、車両2の各部に設置されたカメラ及び各種センサなどから車両情報4を取得する。各種センサは、例えば、車両2で生じた各種イベントを検出したり、走行状況に係る各種パラメータの値を定期的に検出したり、ナビゲーション装置からの道路等の情報を取得したりする。車両情報4には、例えば、車両2の速度情報やギア情報、ハンドル操舵角情報、ランプ点灯情報、外光情報、距離情報、赤外線情報、エンジンON/OFF情報、カメラ映像情報、加速度ジャイロ情報、GPS(Global Positioning System)情報、ナビゲーション情報、車車間通信情報、および路車間通信情報などが含まれる。カメラ映像情報は、車内カメラ映像情報や車外カメラ映像情報がある。GPS情報の中には緯度および経度の他に現在時刻情報なども含まれる。
【0012】
HUD装置1は、このような車両情報4に基づいて、ウィンドシールド3の表示領域5へ映像光を投射する。これによって、HUD装置1は、投射映像に対応する虚像を、風景に重畳させて車両2の運転者(運転者の視点)に視認させる。本実施形態では、ウィンドシールド3の表示領域5へ映像光を投射することを説明するが、映像光を投射する投射部はコンバイナなどの投射部材でもよい。
【0013】
HUD装置1は、車両2の制御ユニット100と接続されており、HUD装置1と制御ユニット100は通信可能である。制御ユニット100は、ECU(Electronic Control Unit)とされ、例えば、CAN(Controller Area Network)による通信を行う。
【0014】
コントローラ100又は制御ユニット100は、データの入出力に基づいて車両2の制御を行い、HUD装置1に接続される構成により、車載システムSが構成される。すなわち、車載システムSは、車両情報4を用いてコントローラ100が車両2を制御可能なシステムである。
【0015】
図2は、
図1の車両2の一部、HUD装置1の構成例を示す概略図である。
図2のHUD装置1は、照明光学系63と、表示パネル64と、光源65と、ミラーM1と、反射ミラーM2と、を備える。HUD装置1は、光源65から出射される光(言い換えると、光源光)を用いて、反射ミラーM2を介してミラーM1に映像光を出射し、ミラーM1で反射された映像光をウィンドシールド3またはコンバイナのような投射部または投射部材に投射する装置である。光源65は、代表的には、LED(Light Emitting Diode)光源を含んで構成され、複数個の光源を配列して用いてもよい。表示パネル64は、代表的には、液晶パネル(Liquid Crystal Display:LCD)である。表示パネル64は、制御部101から指示され入力された映像データに基づいて、映像を作成し、当該表示パネル64の表示素子の表示面に表示する。本発明の実施の形態では、HUD装置1は、制御部101を備える装置となる。また、後述する
図7Bに示すように、制御部101を有さない場合には、車両2のコントローラ100を制御部101として機能することも可能となる。コントローラ100により制御する場合、HUD装置1の制御部101の制御とほぼ同じとなり、以下の実施の形態はHUD装置1の制御部101を用いて説明する。表示パネル64は、映像データに応じて、光源65からの光の透過率を画素毎に変調することで、表示領域5へ投射するための映像を形成し、映像光7(言い換えると投射光)として投射する。
【0016】
また、表示パネル64は液晶パネルに限らず拡散機能を有するスクリーン板としてもよい。拡散機能を有するスクリーン板に映像を投写する手段として、DMD(Digital Micromirror Device)または液晶パネルの像を投写レンズと組み合わせて投写する手段や、微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems)を用いる手段でもよい。
【0017】
照明光学系63は、光源65と表示パネル64の間に配置される。照明光学系63は、光源光を調整する構成であり、例えば、光源光を略平行光に収束するレンズ等を用いて適宜に構成される。
【0018】
ミラーM1は光路上で後段に配置されたミラーである。ミラーM1は、反射ミラーM2からの映像光を、設定された角度の方向または所定方向へ向けて拡大して反射する映像投射部として機能する。ミラーM1は、例えば、凹面鏡(拡大鏡)であり、反射ミラーM2と表示領域5の間の映像光7の光路上に設けられる。ミラーM1は、表示パネル64から出射された映像光7を表示領域5に投射することで、投射された映像光7を虚像9として運転者6等の利用者に視認させる映像光投射部として機能する。本実施形態のミラーM1は、凹面の反射面を有するミラーにより構成されている。
【0019】
反射ミラーM2は光路上で前段に配置されたミラーである。反射ミラーM2は、例えば、平面鏡であり、表示パネル64とミラーM1との間の映像光7の光路上に設けられる。反射ミラーM2は、表示パネル64からの映像光7をミラーM1に反射する映像光反射部として機能する。また、反射ミラーM2は、例えば、ガラス基材に、可視光を反射し、赤外光を透過する誘電体多層膜が形成されたコールドミラーとしてもよい。詳細は後述するが、HUD装置1に入射した太陽光は、ミラーM1で反射した後、反射ミラーM2を経由して表示パネル64へ集光し、表示パネル64を焼損させる。反射ミラーM2をコールドミラーとした場合、太陽光に含まれる赤外光は、反射ミラーM2を透過するため、表示パネル64へ到達せず、表示パネル64の焼損を防止することができる。また、映像光7の光路を短くする場合、ミラーM1のみが配置されてもよく、反射ミラーM2が配置されなくてもよい。すなわち、この場合、表示パネル64からの映像光7が、ミラーM1に直接的に入射し、ミラーM1は、入射した映像光7を表示領域5に投射する。一方、映像光7の光路を長くする場合、反射ミラーM2が複数配置されてよいし、レンズユニットと組み合わせて配置されてもよい。
【0020】
また、HUD装置1は、光源65と表示パネル64の間に、照射範囲調整部81を備える。この照射範囲調整部81は、表示パネル64に入射する光の照射範囲を調整するものである。照射範囲調整部81は、照射範囲調整部81に入射した光のうち、表示パネル64に入射する光の照射範囲を形成するための光を透過し、表示パネル64に入射する光の照射範囲を形成しない光を吸収、または、反射する。また、照射範囲調整部81は、照射範囲調整部81に入射した光のうち、表示パネル64に入射する光の照射範囲を形成するための光を反射し、表示パネル64に入射する光の照射範囲を形成しない光を吸収、または、透過する。その詳細の実施例については後述する。
【0021】
HUD装置1は、例えば、映像光7が通過する開口部が形成されたダッシュボード内に配置される。なお、この開口部には、例えば、透光性のカバーが設けられてもよい。
【0022】
また、表示パネル64と、反射ミラーM2との間には、レンズが設置されてもよい。このレンズは、虚像9の形成のために必要な光学距離を調整する、または、光学的な収差や歪を補正するためのレンズであり、表示パネル64からの投射光を拡大して反射ミラーM2に入射させる機能を有する。
【0023】
次に、
図3を参照しながら、表示パネル64の温度上昇原因の一例を説明する。表示パネル64の温度上昇の原因は、主として、周囲温度Taの上昇と、表示パネル64への太陽光入射による温度上昇と、表示パネル64への映像光入射による温度上昇と、の3種類が考えられる。
【0024】
すなわち、
図3Aに示すように、太陽60からの太陽光60aが、HUD装置1内に入り込み、HUD装置1内のミラー(この例では、ミラーM1および反射ミラーM2)で反射される。そして、この太陽光60aが表示パネル64に入射し、表示パネル64が太陽光を吸収することで、表示パネル64の温度が上昇する。また、光源65からの光においても同様に、表示パネル64が光源65からの光を吸収することで、表示パネル64の温度が上昇する。
【0025】
次に、表示パネル64周辺を拡大したものを
図3Bに示す。周囲温度Taは、表示パネル64の周囲の温度であり、車外の天候や気温に左右される。表示パネル64の温度は、周囲温度Taに、HUD装置1内に入射した太陽光による温度上昇ΔT(I)と、光源65からの光による温度上昇ΔT(L)を加えたものである。従って、表示パネル64の温度上昇を抑制するためには、液晶パネル64へ入射する太陽光、または、光源からの光を低減する必要がある。なお、周囲温度Taは、HUD装置1内部の空間温度としてもよいし、または、本実施の形態のようなHUD装置1はダッシュボード内に収納されているので、ダッシュボード内の温度としてもよい。一方、ダッシュボード上などに配置されている場合、車内の空間温度としてもよい。
【0026】
表示パネル64へ入射する太陽光を低減する手段として、例えば、HUD装置1は、日照センサ66と、遮断機構67と、を備える。日照センサ66は、上方から入射する太陽光を検知する。本実施の形態における日照センサ66は、ウィンドシールド3またはコンバイナなどへの映像光7が通過する開口部の周辺に設けられているが、これに限らず、太陽光を検知できる場所であればよい。また、車両の温度センサは日照センサ66として機能することも可能となる。遮断機構67は、ミラーM1と、このミラーM1を駆動させる駆動機構62と、を含む機構である。一例として、表示パネル64の温度上昇は、日照センサ66からの検知結果に基づき遮断機構67を用いてミラーM1の角度を調整して抑制することができる。
【0027】
すなわち、
図4に示すように、日照センサ66が太陽光60aを検知した場合、HUD装置1の制御部101またはコントローラ100は、駆動機構62を制御し、太陽光60aが表示パネル64に入射しない光路となるように、ミラーM1の角度を調整させる。この状態では、表示パネル64を保護することができる。従って、HUD装置1を使用しない場合などでは、この状態にすることで、表示パネル64の温度上昇を抑制することができる。
【0028】
次に、
図5を参照しながら、日照センサ66の取り込み角について説明する。同図におけるX軸、Y軸、Z軸の向きは、
図1の場合と同様である。日照センサ66の取り込み角は、表示パネル64に集光する太陽光60aの光路に検知範囲66aが重なるように、設定される。なお、本実施形態のHUD装置1には、映像光を外部に出射する開口部71が形成されてもよい。また、この開口部71には、例えば、透光性のカバーが設けられてもよい。
【0029】
次に、
図6を参照しながら、車両情報の取得に用いる装置の一例について説明する。また、
図7を参照しながら、HUD装置の制御系について説明する。
図6は、車両情報の取得に用いる装置の一例を示す。
図7は、HUD装置における制御系の主要部の構成例を示す機能ブロック図である。
【0030】
HUD装置1の車両情報取得部1015は、例えば、CAN(Controller Area Network)インタフェースやLIN(Local Interconnect Network)インタフェースなどに対応した通信プロトコルに基づいて、データを取得することができる。なお、コントローラ100も同様にしてデータを取得することができる。
【0031】
図6に示すように、車両情報4は、車両情報取得部1015に接続されるカメラ及び各種センサなどのデバイスを用いて取得される。なお、
図6の各種デバイスに関しては、適宜、削除や、他の種類のデバイスの追加や、他の種類のデバイスへの置換が可能である。また、車両情報取得部1015を備えなくてもよい。このような場合、車両2のコントローラ100は、制御と情報取得との機能を両方とも有している。
【0032】
車速センサ901は、車両2の速度を検出し、検出結果である速度情報の生成に用いられる。シフトポジションセンサ902は、現在のギアを検出し、検出結果となるギア情報の生成に用いられる。ハンドル操舵角センサ903は、現在のハンドル操舵角を検出し、検出結果となるハンドル操舵角情報の生成に用いられる。ヘッドライトセンサ904は、ヘッドライトのON/OFFを検出し、検出結果となるランプ点灯情報の生成に用いられる。
【0033】
照度センサ905および色度センサ906は、車両2の外光を検出し、検出結果となる外光情報の生成に用いられる。測距センサ907は、車両2と外部の物体との間の距離または外部の物体と物体との間の距離などを検出し、検出結果となる距離情報の生成に用いられる。赤外線センサ908は、車両2の近距離における物体の有無や距離などを検出し、検出結果となる赤外線情報の生成に用いられる。エンジン始動センサ909は、エンジンのON/OFFを検出し、検出結果となるON/OFF情報の生成に用いられる。
【0034】
加速度センサ910およびジャイロセンサ911は、車両2の加速度および角速度を検出し、車両2の姿勢や挙動を表す加速度ジャイロ情報の生成に用いられる。温度センサ912は、車内外の温度を検出し、検出結果となる温度情報の生成に用いられる。
【0035】
路車間通信用無線送受信機913は、車両2と、道路、標識、信号等との間の路車間通信によって、路車間通信情報を生成する。車車間通信用無線送受信機914は、車両2と周辺の他の車両との間の車車間通信によって、車車間通信情報を生成する。車内用カメラ915および車外用カメラ916は、車内および車外を撮影し、車内のカメラ映像情報および車外のカメラ映像情報の生成に用いられる。具体的には、車内用カメラ915は、例えば、運転者6の姿勢や、眼の位置、動きなどを撮影するDMS(Driver Monitoring System)用のカメラなどである。この場合、撮像された映像を解析することで、運転者6の疲労状況や視線の位置などが把握できる。
【0036】
一方、車外用カメラ916は、例えば、車両2の前方や後方などの周囲の状況を撮影する。この場合、撮像された映像を解析することで、周辺に存在する他の車両や人などの障害物の有無、建物や地形、雨や積雪、凍結、凹凸などといった路面状況、および道路標識などを把握可能になる。また、車外用カメラ916には、例えば、走行中の状況を映像で記録するドライブレコーダなども含まれる。
【0037】
GPS受信機917は、GPS衛星からGPS信号を受信することで得られるGPS情報を生成する。例えば、GPS受信機917によって、現在時刻、緯度および経度を取得可能である。VICS(Vehicle Information and Communication System、登録商標)受信機918は、VICS信号を受信することで得られるVICS情報を生成する。GPS受信機917やVICS受信機918は、ナビゲーションシステムの一部として設けられてもよい。
【0038】
また、HUD装置1は、表示パネル64の周囲温度Taを検出可能である温度センサ(不図示)を備える。この温度センサは、HUD装置1内に搭載される。HUD装置1は、この温度センサから表示パネル64の周囲温度Taのデータを取得してもよい。また、コントローラ100も同様にして、この温度センサから表示パネル64の周囲温度Taのデータを取得してもよい。
【0039】
次に、HUD装置1の制御系について説明する。制御部101は、HUD装置1の全体および各部を制御するコントローラに相当し、主に、HUD装置1における投射映像(虚像)の表示の制御や、音声出力の制御などを行う。制御部101は、例えば、配線基板などを用いて構成されている。
図7Aに示すように、制御部101は、この配線基板上に実装されている、車両情報取得部1015、マイクロコントローラ(MCU)1010、不揮発性メモリ1011、揮発性メモリ1012、音声用ドライバ1025、表示用ドライバ1021、および通信部1016等を備える。
【0040】
図7Bは、車両のコントローラにより制御するHUD装置の主要部の構成例を示す機能ブロック図である。車両のコントローラ100は、
図7Aの制御部101として機能する。
図7Bの基本制御は
図7Aと同じであるが、ここで差異点を説明する。
図7Bに示すように、HUD装置1は制御部を有さない。すべての情報は車両情報取得部1015及び送信部1016により受信し、受信した信号に基づき投射映像(虚像)を表示し、音声の出力などを行う。また、映像処理部1013は、
図7Aの映像処理部の機能と異なり、映像を作成しないので、車両から受け取った映像を処理(例えばデコード)して表示する。一方、
図7Bの映像処理部1013を有さない場合、MCU1010内で処理してもよい。車両情報取得部1015及び送信部1016は一つにまとめてもよい。
【0041】
MCU1010は、広く知られているように、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサや、メモリに加え、各種周辺機能を備えている。したがって、この制御部101内のMCU1010を除く各ブロックは、適宜、MCU1010内に搭載されてもよい。
図7Bの場合についても同様に、適宜のブロックが、MCU1010内に搭載されてもよい。また、制御部101は、MCU1010を用いた実装に限定されず、ECUで実装してもよいし、他の半導体デバイスを用いた実装でもよい。制御部101は、HUD装置1の筐体内に実装されたコントローラであってもよいし、筐体外に実装されたコントローラであってもよい。
【0042】
図7において、MCU1010は、車両情報4を、車両情報取得部1015を介して受信する。MCU1010は、車両情報4などに基づいて、音声出力装置1041に向けた音声データや、映像表示部200に向けた映像データなどを生成する。制御部101は、音声処理部1014と、映像処理部1013と、保護処理部1060と、を備える。これらの各部は、主に、不揮発性メモリ1011または揮発性メモリ1012に格納されるプログラムをMCU1010のCPUが読み出して実行することで実現される。
【0043】
音声処理部1014は、必要に応じて、車両情報4などに基づいた音声データを処理する。音声データは、例えば、ナビゲーションシステムの音声案内を行う場合や、AR機能によって運転者6に警告を発する場合などに生成される。音声用ドライバ1025は、音声データに基づいて音声出力装置1041を駆動し、音声出力装置1041に音声を出力させる。
【0044】
映像処理部1013は、車両情報4などに基づいて、
図1等の表示領域5に投射される投射映像の表示内容を定める映像データを処理する。表示用ドライバ1021は、映像データに基づいて、表示パネル64に含まれる各表示素子(画素)を駆動する。これによって、映像表示部200または映像表示ユニット200は、映像データに基づいて、表示領域5へ投射するための映像を作成、表示する。
【0045】
なお、制御部101は、歪み補正部と、光源調整部と、ミラー調整部と、を備えてもよい。歪み補正部は、映像データに対して歪み補正を加えた補正後の映像データを生成する。具体的には、歪み補正部は、
図1に示したように、HUD装置1からの映像を表示領域5に投射した場合にウィンドシールド3の曲率によって生じる映像の歪みを補正する。そして、表示用ドライバ1021は、歪み補正部からの補正後の映像データに基づいて、表示パネル64に含まれる各表示素子(画素)を駆動する。これによって、映像表示部200は、補正後の映像データに基づいて、表示領域5へ投射するための映像を作成、表示する。
【0046】
光源調整部は、画像形成部PGU1または画像形成ユニットPGU1内の光源の輝度などを調整する。制御部101は、光源の駆動に用いるドライバである光源駆動部1022を用いて光源65を制御する。ミラー調整部は、ウィンドシールド3における表示領域5の位置を調整する必要がある場合に、駆動機構62の駆動を介してミラーM1の設置角度を調整または変更する。制御部101は、駆動機構62の駆動に用いるドライバであるミラー駆動部を用いて駆動機構62を制御する。
【0047】
保護処理部1060は、日照センサ66からの検知結果に基づいて、表示パネル64を保護する。制御部101は、日照センサ66からの検知結果に基づいて、照射範囲調整部用ドライバ1026を用いて、照射範囲調整部81を制御する。照射範囲調整部81の制御の例、および、照射範囲調整部81の構造については、後で詳しく説明する。
【0048】
不揮発性メモリ1011は、主に、MCU1010内のCPUで実行されるプログラムや、MCU1010内の各部の処理で使用する設定パラメータや、規定の音声データおよび映像データなどを予め記憶する。
【0049】
揮発性メモリ1012は、主に、取得された車両情報4や、MCU1010内の各部の処理過程で使用される各種データを適宜記憶する。通信部1016は、通信インタフェースが実装された装置であり、HUD装置1の外部との間で、CANやLINなどに従った通信プロトコルに基づいて通信を行う。通信部1016は、車両情報取得部1015と一体であってもよい。操作入力部1017は、運転者6等の操作内容を受け付ける。なお、
図7Aの制御部101内の各部は、適宜、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの専用回路によって実装されてもよい。
図7Bにおいても同様に、適宜、各構成が専用回路によって実装されてもよい。また、HUD装置1は、音声入力装置1042を備えてもよく、例えば、運転者6等が、音声により操作内容を入力してもよい。本実施の形態では、不揮発性メモリ1011と揮発性メモリ1012をそれぞれ有する構成となっているが、上記の処理を一つのメモリによって機能させてもよい。
【0050】
次に、映像表示部200について具体的に説明する。映像表示部または映像表示ユニット200は、映像光を投射する画像形成部PGU1を備える。画像形成部PGU1は、映像データに基づいて映像を表示し、表示した映像の映像光を投射する。画像形成部PGU1は、光源65と、映像表示素子を有する液晶パネルLCD(Liquid Crystal Display)等の表示パネル64と、を備える。
【0051】
画像形成部PGU1は、光源65から出射される光(言い換えると、光源光)を用いて、表示パネル64に形成された映像の映像光を投射する、プロジェクタ(投射型映像表示装置)である。光源65は、代表的には、LED(Light Emitting Diode)を含んで構成される。
【0052】
表示パネル64は、映像データに基づいて、映像を作成し、当該表示パネル64の表示画面に表示する。本実施の形態の映像データは、制御部101からの指示に基づき入力された映像データを例として説明する。表示パネル64は、映像データに応じて、光源65からの光の透過率を画素毎に変調することで、表示領域5へ投射するための映像を形成し、映像光(言い換えると投射光)として投射する。
【0053】
また、表示パネル64は液晶パネルに限らず拡散機能を有するスクリーン板としてもよい。拡散機能を有するスクリーン板に映像を投写する手段として、DMD(Digital Micromirror Device)または液晶パネルの像を投写レンズと組み合わせて投写する手段や、微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems)を用いる手段でもよい。
【0054】
光源65は、例えば半導体光源素子を用いて構成され、所定の光源光を生成して表示パネル64に供給する。光源65は、表示パネル64のバックライト光源として機能する。半導体光源素子は、代表的にはLED(Light Emitting Diode)素子が用いられる。光源65は、複数個の光源を配列したものでもよい。
【0055】
一例では、光源65(LED基板)、コリメータ、導光体、偏光変換素子、および拡散板等によって光源装置が構成される。コリメータ、導光体、偏光変換素子、および拡散板等は、適宜に配置することができる。なお、光源装置はほかの構成でもよい。
【0056】
光源装置は、偏光変換素子によって、ランダム偏光の光を、直線偏光の光に変換する。よって、導光体において、残留応力が内在していたとしても、その残留応力の影響、すなわち偏光状態の変化は、偏光変換素子での直線偏光への変換によって対処される。例えば、表示パネル64への入射光は、残留応力の影響、すなわち偏光状態の変化が解消された光となる。
【0057】
また、偏光変換素子と表示パネル64との間には、光学素子として、凹レンズまたはフレネルレンズが配置されてもよい。この光学素子(凹レンズまたはフレネルレンズ)の機能は、表示パネル64の後段のレンズへの配光制御(光線入射角度・領域の制御)である。この光学素子は、拡散板に対し前後のいずれに配置されてもよい。この光学素子と拡散板とが一体化された部材でもよい。
【0058】
なお、前記レンズは、表示パネル64とミラーM1との間に設けてもよい。この場合、レンズは、補正レンズでもよいし、他のレンズでもよく、当該レンズによって、後述するミラーM1への光線の出射方向を調整することで、ミラーM1の形状と合わせて歪曲収差などの調整を行うことができる。さらに、当該レンズの光軸方向における厚みを、表示パネル64の上下方向(虚像9の上下方向に相当)において変化させることで、表示パネル64とミラーM1の光学的な距離を変え、車両の前後方向または進行方向における虚像9の虚像距離を、上下方向で連続的に変化させることができる。すなわち、虚像9は、上方から下方にかけて連続的に虚像距離が短くなっていく。これによって、運転者が見る風景と重畳した虚像を表示することができる。なお、表示パネル64を光軸に対して傾けて虚像の上下方向の倍率を変えることでも、同様に、虚像9の上下方向における虚像距離を連続的に変化させることができる。
【0059】
また、映像表示部200は、ミラーM1を有する。ミラーM1は、例えば、凹面鏡(拡大鏡)であり、光路上で後段に配置される。ミラーM1は、表示パネル64から出射された映像光を表示領域5に投射することで、投射された映像光を虚像として運転者等の利用者(ユーザー)に視認させる映像光投射部として機能する。表示パネル64から出射された映像光(言い換えると投射光)は、ミラーM1で反射されて、ウィンドシールド3の表示領域5へ向かう。従って、HUD装置1のユーザーは、その映像光を虚像として視認できる。
【0060】
これにより、運転者は、表示領域5に投射された映像光を、透明のウィンドシールド3の先の虚像9として、車外の風景(例えば道路や建物、人など)に重畳される形で視認することができる。投射映像である虚像は、例えば、道路標識や、自車の現速度や、風景上の対象物に付加される各種情報など、様々なものがある。これにより、風景上の対象物に各種情報を付加して表示するような拡張現実(AR)機能などが実現される。
【0061】
なお、ミラーM1には、駆動機構62が取り付けられており、駆動機構62にてミラーM1の角度調整が可能である。駆動機構62によりミラーM1の設置角度を調整することで、ウィンドシールド3上の表示領域5および虚像の位置を調整可能となっている。駆動機構62は、ステッピングモータ等を含む機構である。駆動機構62は、制御部101からの制御に基づいて、ミラーM1の設置角度を調整または変更する。また、ユーザーの手動操作に基づいて、ミラーM1の設置角度を調整可能とされてもよい。これにより、運転者6が表示領域5に視認する虚像の位置を例えば上下方向に調整可能となっている。また、例えば、ミラーM1の有効な面積を調整すること等により、表示領域5の面積または表示領域5の表示領域の位置が調整され、適切な量の情報を表示領域5へ投射可能になる。
【0062】
本実施形態では、映像表示部200は、日照センサ66と、照射範囲調整部81と、を含む。次に、
図8-
図14を用いて、照射範囲調整部の機能、制御部101または車両2のコントローラ100による制御の例などを、具体的に説明する。なお、図において、z’軸は、照射範囲調整部81から表示パネル64への光の光路に沿った方向を示しており、あるいは、照射範囲調整部81から出射された光を表示パネル64へ入射する方向を示す。x’軸は、表示パネル64の左右方向、または横方向に対応する。y’軸は、表示パネル64の左右方向または横方向に対し直交する方向に対応する。
【0063】
上述したように、表示パネル64には、太陽光のみならず、光源65からの光によっても温度上昇が生じ得る。そこで、HUD装置1は、表示パネル64に光が照射される範囲を調整する照射範囲調整部81を用いて、照射範囲を調整することで、光源65からの光の入射に基づく表示パネル64の温度上昇を抑制する。
【0064】
図8Aは、映像表示部の構造例を部分的に示した図である。この例では、光源65からの光路65p上に、コリメータレンズなどの光学素子63、照射範囲調整部81、表示パネル64が配置されている。照射範囲調整部81は、光学素子63で所定の配光特性に調整された光が表示パネル64へ入射するとき、表示パネル64上における光の入射範囲を任意に調整する。
図8Aでは、照射範囲調整部81により範囲A1が遮光されている。従って、表示パネル64への光の不要な入射が抑制され、表示パネル64の発熱を抑制し、寿命の低下を抑制することができる。なお、表示パネル64と照射範囲調整部81が干渉してモアレが発生する可能性があるため、拡散板82は表示パネル64と照射範囲調整部81との間に設置するのが望ましい。
【0065】
図8Bは、映像表示部の構造例を部分的に示した図である。
図8Bに示す構造は
図8Aの構造とは異なり、複数の光源65を配列し、各光源のON/OFFを個別制御するローカルディミング方式を採用している。ローカルディミングとの組み合わせにより、不要な光源をOFFすることで、光源からの発熱も抑えられ、消費電力も低減でき、また、照射範囲調整部の劣化も抑制できる。すなわち、この構造では、光源ON/OFFによる表示パネル64へ入射する光の照射範囲の調整が実現されている。
図8B(3つの光源を備える例)では、3つの光源65のうち真ん中の1つの光源がOFFとなっており、これにより、同図における表示パネル64の範囲A2への光の入射が制限されている。
【0066】
これに加えて、この構造では、照射範囲調整部81による照射範囲の調整が実現されている。
図8Bでは、2つの光源65がONとなっており、これらの光源65からの光の一部が照射範囲調整部81によって制限され、同図における範囲A3の表示パネル64への光の入射が制限されている。従って、単純なローカルディミングのみでは、繊細な照射範囲の調整はできないが、ローカルディミングと照射範囲調整部81を組み合わせる構造により、繊細な照射範囲制御が実現される。また、ローカルディミング方式とし、複数の光源65のうちの不要な光源をOFFとすることで、照射範囲調整部81の劣化も抑制することができる。
【0067】
次に、
図9を参照しながら、照射範囲の調整/制御の一例を説明する。
図9の例では、照射範囲調整部81は、表示パネル64の描画に合わせて、照射範囲を調整している。すなわち、照射範囲調整部81は、表示パネル64で描画する文字(映像I2)や図形(映像I1)などの輪郭を囲うように照射範囲を合わせる。また、文字を描画する場合、照射範囲調整部81は、連続した文字(映像I2)の全体を囲うように照射範囲を設定している。すなわち、
図9の例では、照射範囲調整部81は、ハッチングで示す範囲S1に入射する光源光65bを透過させ、それ以外の範囲S2に入射する光源光65bを遮光する。また、描画する文字や映像などの全体輪郭を囲うように照射範囲を合わせてもよいし。描画する文字や映像などの輪郭をそれぞれ囲うように照射範囲を合わせてもよい。
【0068】
なお、映像描画する画素と照射範囲を正確に合わせることは容易ではないので、照射範囲調整部81は、表示パネル64に描画する対象が良好に含まれるように、表示パネル64に描画された画像より広い範囲を照射範囲に設定してもよい。また、照射範囲調整部81から表示パネル64に入射する映像光に角度があっても、映像描画への影響が低い。
【0069】
照射範囲調整部81が遮光する範囲S2により、映像を描画しない領域に光が照射されないので、表示パネル64の温度が低減され、例えば、パネル信頼性の向上が図られる。なお、照射範囲調整部81の階調を調整することで、画像の色の濃淡を表すグラデーション、明るさの調節も可能である。通常、映像の明るさは、光源に印加する電圧のPWM(Pulse Width Modulation、パルス幅変調)制御によって明るさを調整するが、デューティー比が小さすぎるとフリッカーが発生する。ここで、照射範囲調整部81とLEDのPWM制御を合わせることで、例えば、フリッカーを抑制しながら暗くすることができる。
【0070】
次に、
図10を参照しながら、照射範囲調整部81および表示パネル64の具体的な構造例について説明する。照射範囲調整部81は、照射範囲調整部81へ入射した光のうち、照射範囲を形成するための光を変調して出射する液晶素子81aと、液晶素子81aの出射側に、液晶素子81aで変調された光を透過する偏光素子と、を備える。偏光素子は、反射型偏光素子と吸収型偏光素子のいずれでもよい。
図10に示すように、照射範囲調整部81は、液晶素子81aの両側に、偏光素子を有する構造である。
図10の偏光素子は、反射型偏光素子Aである第1偏光素子と、反射型偏光素子Bである第2偏光素子と、を有する。反射型偏光素子Aと反射型偏光素子Bは、図示しないが、液晶素子81aへ、OCA(Optical Clear Adhesive)を用いて直接貼合してもよいし、ガラス基材に反射型偏光素子Aまたは反射型偏光素子BがOCAを用いて貼合されたものを、液晶素子81aの入射側と出射側にそれぞれ設けてもよい。なお、反射型偏光素子Aと反射型偏光素子Bは、どちらも吸収型偏光素子で代替してもよいが、吸収型偏光素子の光吸収によって照射範囲調整部81が高温となり、熱によって劣化してしまうため、反射型偏光素子を用いるのが望ましい。また、表示パネル64は、液晶素子64aの両側に、吸収型偏光素子A(64b)と、吸収型偏光素子B(64c)と、を有する構造である。なお、表示パネル64では、映像のコントラストを得るために、消光比が大きい吸収型偏光素子を用いる。
【0071】
ここで、偏光素子の透過軸角度に関して、反射型偏光素子B(81c)と吸収型偏光素子A(64b)は、透過軸が平行となるように設定されている。反射型偏光素子A(81b)と反射型偏光素子B(81c)は、透過軸が直交となるように設定されており、吸収型偏光素子A(64b)と吸収型偏光素子B(64c)は、透過軸が直交となるように設定されている。言い換えると、反射型偏光素子B(81c)と吸収型偏光素子A(64b)は、反射軸と吸収軸が平行となるように設定されている。反射型偏光素子A(81b)と反射型偏光素子B(81c)は反射軸が直交となるように設定されており、吸収型偏光素子A(64b)と吸収型偏光素子B(64c)は吸収軸が直交となるように設定されている。
【0072】
この例では、光源65から出射された映像光(ランダム偏光)が反射型偏光素子A(81b)に入射し、入射した映像光のうち、P偏光成分は反射型偏光素子A(81b)で反射し、S偏光成分は反射型偏光素子A(81b)を透過して液晶素子81aへ入射する。そして、液晶素子81aに入射したS偏光のうち、液晶素子81aによってP偏光へと変調された光は、反射型偏光素子B(81c)を透過し、表示パネル64へ入射する。一方、液晶素子81aによって変調されなかった光は、反射型偏光素子B(81c)で反射され、表示パネル64に入射しない。ここで、液晶素子81aは、画素毎に階調を調整することができるので、液晶素子81aに入射した光が、反射型偏光素子B(81c)を透過するか、または、反射型偏光素子(81c)で反射するかを、画素毎に調整できる。すなわち、照射範囲調整部81を用いることで、表示パネル64へ光が入射する範囲を、任意に調整することができる。また、表示パネル64において、液晶素子64aは、偏光変換する性質を有する構造であり、吸収型偏光素子A(64b)はS偏光を吸収し、吸収型偏光素子B(64c)はP偏光を吸収する。
【0073】
この例では、照射範囲調整部81はP偏光を出射し、表示パネル64はS偏光を出射する構成であるが、例えばそれぞれの偏光素子の特性を逆として、照射範囲調整部81はS偏光を出射し、表示パネル64はP偏光を出射する構成であってもよい。ただし、ウィンドシールド3に対してS偏光での入射の方が望ましい。
【0074】
照射範囲調整部81は、表示映像を描画しないため、カラーフィルタは不要であり、液晶素子81aは低画素数でもよい。カラーフィルタは、その特性上、可視光の一部を光吸収する。そのため、照射範囲調整部81の透過率が低下する問題が生じる。また、当該液晶素子81aは、透過率の高い素子、すなわち、開口率の大きい液晶素子が望ましい。通常、液晶素子は、低画素数の方が、画素サイズが大きく、光を遮る電極や配線部分が有効領域に占める面積の割合も小さいため、開口率が大きい。また、一例として、照射範囲調整部81はMEMSシャッター方式の構造が採用されてもよい。
【0075】
次に、
図11-
図13を参照しながら、HUD装置1の制御部101による照射範囲調整部81の調整例について説明する。
図11に示すように、先ず、制御部101またはコントローラ100は、
図12に示す判定項目Aに対する判定を行う(S100)。そして、判定結果[1]である場合、照射範囲調整部81により表示パネル64の照射範囲を調整せず、照射範囲調整部81からすべての光を透過させる(S101)。判定結果[2]である場合、表示パネル64で描画する映像に応じて、照射範囲調整部81により表示パネル64の照射範囲を調整する(S102)。判定結果[3]である場合、、照射範囲調整部81により表示パネル64の照射範囲を調整せず、光源65からのすべての光を遮光する(S103)。照射範囲調整部81により調整する表示パネル64の照射範囲とは、照射範囲調整部81により出射された光を表示パネル64へ入射する光の範囲と称する。
【0076】
図12を参照しながら、上記の判定項目Aの一例を説明する。例1では、日照センサ66による太陽光60aの検出が判定項目であり、制御部101またはコントローラ100は、日照センサ66による太陽光60aが検出されない場合に判定結果[1]を判定し、日照センサ66による太陽光60aが検出された場合に判定結果[2]を判定する。例2では、日照センサ66で検出した太陽光60aの強度が判定項目であり、制御部101またはコントローラ100は、日照センサ66で検出した太陽光60aの強度が所定閾値又は予め設定された閾値を超えない場合に判定結果[1]を判定し、日照センサ66で検出した太陽光60aの強度が所定閾値又は予め設定された閾値を超えた場合に判定結果[2]を判定する。
【0077】
例3では、周囲温度Ta、映像輝度、太陽光強度から推定される表示パネル64の温度が判定項目であり、制御部101またはコントローラ100は、周囲温度Ta、映像輝度、太陽光強度から推定される表示パネル64の温度が所定閾値又は予め設定された閾値を超えない場合に判定結果[1]を判定し、周囲温度Ta、映像輝度、太陽光強度から推定される表示パネル64の温度が所定閾値又は予め設定された閾値を超えた場合に判定結果[2]を判定する。なお、表示パネル64の温度推定には、映像輝度の代わりに光源のPWM制御で設定されるデューティー比と光源に流れる電流値を用いてもよい。例4では、周囲温度Ta、映像輝度、太陽光強度から推定される一定時間後の表示パネル64の温度が判定項目であり、制御部101またはコントローラ100は、周囲温度Ta、映像輝度、太陽光強度から推定される一定時間後の表示パネル64の温度が所定閾値又は予め設定された閾値を超えない場合に判定結果[1]を判定し、周囲温度Ta、映像輝度、太陽光強度から推定される一定時間後の表示パネル64の温度が所定閾値又は予め設定された閾値を超えた場合に判定結果[2]を判定する。
【0078】
例5では、ミラーM1を用いた遮断機構67の動作における異常検知が判定項目であり、制御部101またはコントローラ100は、ミラーM1に関する動作の異常が検知された場合に判定結果[3]を判定する。ミラーM1に関する動作が異常となる場合、表示パネル64の保護動作が働かなくなる。よって、表示パネル64を保護するため、制御部101は、照射範囲調整部81により表示パネル64の照射範囲を調整せず、光源65からのすべての光を遮光する。
【0079】
例6では、ミラーM1を用いた遮断機構67の動作状況が判定項目であり、制御部101またはコントローラ100は、遮断機構67の動作中に判定結果[3]を判定する。制御部101またはコントローラ100は、遮断機構67が働いているときには、照射範囲調整部81により表示パネル64の照射範囲を制御しない。
【0080】
例7では、表示パネル64の周囲温度Taが判定項目であり、制御部101またはコントローラ100は、周囲温度Taの温度が所定閾値を超えない場合に判定結果[1]を判定し、周囲温度Taの温度が所定閾値を超えた場合に判定結果[2]を判定する。なお、周囲温度Taは、表示パネル64の周囲温度でもよいし、HUD装置1の内部空間温度、または、ダッシュボード内温度でもよい。
【0081】
例8では、車両の位置情報(経度、緯度)と日時から算出される太陽高度又は仰角αが判定項目であり、制御部101またはコントローラ100は、角度αが所定の範囲内にないときに判定結果[1]を判定し、角度αが所定の範囲内にあるときに判定結果[2]を判定する。
【0082】
例9では、車両の位置情報(経度、緯度)と日時から算出される太陽高度又は仰角αおよび太陽方位角β、さらに、車両の向き又は方位角γに対する、太陽の相対方位角β-γが判定項目である。制御部101またはコントローラ100は、α、β、および、β-γが所定の範囲内にないときに、判定結果[1]を判定する。制御部101またはコントローラ100は、α、β、β-γのうちの何れかが所定の範囲内にあるときに、判定結果[2]を判定する。
【0083】
ここで、
図13を参照しながら、上記の例8および例9に関する角度α、β、γについて説明する。
図13に示すように、角度αは太陽高度又は仰角となる。角度βは太陽60の方位角となる。角度γは車両2の方位角となる。角度β-γは、太陽の車両向きに対する相対方位角である。従って、例8および例9では、太陽光が表示パネルへ入射する条件(太陽高度および方位角)を考慮した判定が行われ、太陽光が表示パネルへ入射し易い条件では、照射範囲が調整される。なお、角度α、β、γは、公知の方法で取得することができる。
【0084】
例10では、車両の照度センサ905で取得した車両の外光の照度が判定項目であり、制御部101またはコントローラ100は、車両の外光の照度が所定閾値を超えない場合に判定結果[1]を判定し、車両の外光の照度が所定閾値を超えた場合に判定結果[2]を判定する。
【0085】
例11では、車両の温度センサ912で取得した温度(すなわち、車内外の温度)が判定項目であり、制御部101またはコントローラ100は、当該温度が所定閾値を超えない場合に判定結果[1]を判定し、当該温度が所定閾値を超えた場合に判定結果[2]を判定する。
【0086】
例12では、HUD装置1の動作における異常検知が判定項目であり、制御部101またはコントローラ100は、HUD装置1の動作の異常が検知された場合に判定結果[3]を判定する。例えば、HUD装置1の異常動作によって、映像輝度が異常に明るくなってしまい、車両の運転が妨害されてしまう。このような場合に、照射範囲調整部81で映像光を遮光する手段は有効である。
【0087】
例13では、HUD装置1の動作状況が判定項目であり、制御部101またはコントローラ100は、HUD装置1が起動しているときは判定結果[2]を判定し、照射範囲調整部81により表示パネル64の照射範囲を常に調整する。
【0088】
例14では、映像描画に使用する表示パネル64の画素数が判定項目であり、制御部101またはコントローラ100は、使用する画素数が所定閾値を超えた場合に判定結果[1]を判定し、使用する画素数が所定閾値を超えない場合に判定結果[2]を判定する。すなわち、映像描画に使用する画素数が多い場合、照射範囲調整部81により表示パネル64の照射範囲を調整することによる、表示パネル64の温度上昇を抑える効果が弱くなるので、制御部101またはコントローラ100は、映像描画に使用する画素数が多い場合には照射範囲調整部81により表示パネル64の照射範囲を調整しない。
【0089】
制御部101またはコントローラ100は、S100のタイミングで、上記の例1~例14の何れか一つの項目に基づいた判定を行うことができる。そして、制御部101またはコントローラ100は、その判定結果に応じた制御を行うことができる。
【0090】
また、制御部101またはコントローラ100は、S100のタイミングで、上記の例1~例14の複数の項目に基づいた判定をしてもよい。ここで、判定項目間において異なる判定結果が出力された場合、制御部101またはコントローラ100は、例えば、判定結果[3]、判定結果[2]、判定結果[1]の順で優先して制御を行ってもよい。判定結果[3]、判定結果[2]、判定結果[1]の順で優先順位が高いので、例えば、例1~例14のうちの3つの判定項目を用いた判定によって判定結果[3]と判定結果[2]と判定結果[1]が出力された場合、制御部101は、優先順位の高い判定結果[3]に基づく制御を行うことができる。なお、判定結果[3]、判定結果[2]、判定結果[1]の優先順位は、この順に限らない。
【0091】
また、
図12に示す判定項目Aは、適宜に変更されてもよい。新たな判定項目が追加されてもよいし、判定項目の一部が省略されてもよいし、複数の判定項目を組み合わせてもよい。
【0092】
次に、表示パネル64の劣化を更に抑制する技術について説明する。表示パネル64上で光が照射されている箇所は、劣化が進みやすい。そこで、表示パネル64上の映像の描画位置を変えることで、表示パネル64上の長寿命化が図られる。すなわち、表示パネル64の繰り返しの使用により、表示パネル64には、頻繁に絵が描画される領域と、あまり描画されない領域と、が形成される。そこで、あまり描画されない領域に描画位置を移すことで、表示パネル64の更なる長寿命化が図られる。このような、表示パネル64上での描画位置の移動は、例えば、車両のイグニッションスイッチがONとなる度(HUD装置1の起動時)に実施してもよいし、一定期間が経過したときに実施してもよい。また、車両の走行中以外、いつ実施してもよい。なお、表示パネル64上の映像の描画位置は表示パネル64へ入射する光の範囲、あるいは、照射範囲となる。
【0093】
ここで、ミラーM1の角度を変えることにより、ウィンドシールド3に投射する映像の位置を、表示領域5上で上下方向に容易に調整することができるので、表示パネル64上で上下方向に照射範囲を動かすことが好ましい。すなわち、
図14に示すように、描画する絵I3、言い換えれば、照射範囲S3は、表示パネル64上において上下方向で動かすことが好ましい。ここで、ミラーM1を用いた位置調整を考慮して、表示パネル64上において、描画する絵I3に関する移動量、および、描画位置PAから描画位置PBへの移動量は、同じであることが望ましい。
【0094】
従って、制御部101またはコントローラ100は、照射範囲および/または表示パネル64上の描画位置を上下方向に移す制御を行い、さらに、駆動機構62を駆動しミラーM1の角度を調整することで、運転者が視認する描画対象(オブジェクト)の位置を調整する制御を行ってもよい。その一方で、制御部101またはコントローラ100は、表示パネル64上の単独の描画対象だけの照射範囲および/または描画位置を変更する制御を行ってもよい。
【0095】
制御部101またはコントローラ100は、一例として、表示パネル64上での描画位置の使用頻度に基づいて、照射範囲および/または表示パネル64上の描画位置を移す制御を行ってもよい。また、制御部101またはコントローラ100は、表示パネル64上での描画位置の今までの使用時間に基づいて、照射範囲および/または表示パネル64上の描画位置を移す制御を行ってもよい。
【0096】
次に、
図15を参照しながら、変形例の構造について説明する。上記と同様の説明は省略することがある。
図15の例では、照射範囲調整部91は、入射側の反射型偏光素子Aが省略されており、出射側の反射型偏光素子B(偏光素子)(91b)を有する。反射型偏光素子B(91b)は、図示しないが、液晶素子91aへ、OCA(Optical Clear Adhesive)を用いて直接貼合してもよいし、ガラス基材に反射型偏光素子B(91b)がOCAを用いて貼合されたものを、液晶素子91aの出射側に設けてもよい。なお、反射型偏光素子B(91b)は、吸収型偏光素子で代替してもよいが、吸収型偏光素子の光吸収によって照射範囲調整部91が高温となり、熱によって劣化してしまうため、反射型偏光素子を用いるのが望ましい。照射範囲調整部91には、直線偏光の光が入射する。なお、光源65からの光は、適宜に配置される偏光変換素子を透過し、照射範囲調整部91に入射する。
【0097】
ここで、偏光素子の透過軸角度に関して、反射型偏光素子B(91b)と吸収型偏光素子A(64b)は、透過軸が平行となるように設定されている。吸収型偏光素子A(64b)と吸収型偏光素子B(64c)は、透過軸が直交となるように設定されている。言い換えると、反射型偏光素子B(91b)と吸収型偏光素子A(64b)は、反射軸と吸収軸が平行となるように設定されている。吸収型偏光素子A(64b)と吸収型偏光素子B(64c)は、吸収軸が直交となるように設定されている。
【0098】
この例では、映像光(S偏光)が液晶素子91aに入射し、液晶素子91aによってP偏光へと変調された光は、反射型偏光素子B(91b)を透過し、表示パネル64へ入射する。一方、液晶素子81aによって変調されなかった光は、反射型偏光素子B(91b)で反射され、表示パネル64に入射しない。ここで、液晶素子91aは、画素毎に階調を調整することができるので、液晶素子91aに入射した光が、反射型偏光素子B(91b)を透過するか、または、反射型偏光素子(91b)で反射するかを、画素毎に調整できる。すなわち、照射範囲調整部91を用いることで、表示パネル64へ光が入射する範囲を、任意に調整することができる。また、表示パネル64において、液晶素子64aは、偏光変換する性質を有する構造であり、吸収型偏光素子A(64b)はS偏光を吸収し、吸収型偏光素子B(64c)はP偏光を吸収する。
【0099】
この例では、照射範囲調整部91はP偏光を出射し、表示パネル64はS偏光を出射する構成であるが、それぞれの偏光素子の特性を逆として、照射範囲調整部91はS偏光を出射し、表示パネル64はP偏光を出射する構成であってもよい。ただし、ウィンドシールド3に対してS偏光での入射の方が望ましい。
【0100】
照射範囲調整部91は、表示映像を描画しないため、カラーフィルタは不要であり、液晶素子91aは低画素数でもよい。カラーフィルタは、その特性上、可視光の一部を光吸収する。そのため、照射範囲調整部91の透過率が低下する問題が生じる。また、当該液晶素子91aは、透過率の高い素子、すなわち、開口率の大きい液晶素子が望ましい。通常、液晶素子は、低画素数の方が、画素サイズが大きく、光を遮る電極や配線部分が有効領域に占める面積の割合も小さいため、開口率が大きい。また、一例として、照射範囲調整部91はMEMSシャッター方式の構造が採用されてもよい。
【0101】
次に、
図16を参照しながら、変形例の構造について説明する。上記と同様の説明は省略することがある。
図16の例では、照射範囲調整部95は、表示パネル64に入射させる光を反射させ、表示パネル64に入射させない光を透過させる構造である。なお、照射範囲調整部95へ入射する映像光は、ランダム偏光でも直線偏光でもよい。直線偏光を用いる場合では、光源65からの光は、適宜に配置される偏光変換素子を透過し、照射範囲調整部95に入射する。
【0102】
表示パネル64の全領域にわたって照射する範囲の調整を行うことができるように、照射範囲調整部95の大きさ及び/又は配置が決定される。当該変形例では、照射範囲調整部95は表示パネル64に対して傾き、表示パネル64のサイズより大きいが、これに限らない。そして、HUD装置1の制御部101またはコントローラ100は、照射範囲調整部95を調整し、照射範囲S1’の光を反射させることで、表示パネル64に光を入射させる。このとき、光を照射しない範囲S2’の光は、照射範囲調整部95を透過する。
【0103】
この例では、照射範囲調整部95はP偏光を反射し、表示パネル64はS偏光を出射する構成であるが、照射範囲調整部95はS偏光を反射し、表示パネル64はP偏光を出射する構成であってもよい。ただし、ウィンドシールド3に対してS偏光での入射の方が望ましい。
【0104】
一例として、照射範囲調整部95は、MEMSシャッター方式の構造、または、DLP方式の構造が採用されてもよい。
【0105】
本発明は前述した内容に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、例えば、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をしてもよい。
【0106】
光源部が単一の光源65により構成されてもよい。また、光源部が複数の光源65により構成されてもよい。
【0107】
前述したように、実施の形態に係る技術、光源と表示パネルとの間に照射範囲調整部を備えることで、発熱による表示パネルの寿命低下を抑制することが可能になる。また、照射範囲調整部の光の透過割合が高いので、運転者に対し、運転支援などのためのよりよい虚像を提供でき、安全運転などに寄与する情報表示装置(ヘッドアップディスプレイ装置)を提供できる。これにより、交通事故を防止することが可能となる。さらに、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「3.すべての人に健康と福祉を」に貢献することが可能になる。
【符号の説明】
【0108】
64 表示パネル
65 光源
81 照射範囲調整部