(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168652
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】構造体および筐体
(51)【国際特許分類】
H01R 4/64 20060101AFI20241128BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01R4/64 A
H05K5/03 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085512
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】山下 展輝
(72)【発明者】
【氏名】関島 大志郎
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AB12
4E360BA08
4E360BD10
4E360EA18
4E360GA34
4E360GB48
4E360GC02
(57)【要約】
【課題】 インダクタンスを低減することを目的とする。
【解決手段】 導電性を有する第1板状部を備えた構造体であって、前記第1板状部は、前記第1板状部から延在し、端部が開放端である第1弾性部材と第2弾性部材とが設けられ、前記第1弾性部材は第1方向に延在し、前記第2弾性部材は前記第1方向とは反対の方向である第2方向に延在し、前記第1弾性部材は、前記第1方向または前記第2方向と交差する第3方向において、前記第2弾性部材の少なくとも一部に並んで設けられることを特徴とする構造体。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する第1板状部を備えた構造体であって、
前記第1板状部は、前記第1板状部から延在し、端部が開放端である第1弾性部材と第2弾性部材とが設けられ、
前記第1弾性部材は第1方向に延在し、前記第2弾性部材は前記第1方向とは反対の方向である第2方向に延在し、
前記第1弾性部材は、前記第1方向または前記第2方向と交差する第3方向において、前記第2弾性部材の少なくとも一部に並んで設けられることを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間には、前記第1板状部が設けられていないことを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記第3方向は、前記第1方向または前記第2方向に直交する方向であることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項4】
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との距離は、前記第3方向における前記第1弾性部材と前記第1板状部との距離より小さいことを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項5】
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との距離は、前記第3方向における前記第2弾性部材と前記第1板状部との距離より小さいことを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項6】
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との距離は、前記第1方向における前記第1弾性部材と前記第1板状部との距離より小さいことを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項7】
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との距離は、前記第2方向における前記第2弾性部材と前記第1板状部との距離より小さいことを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項8】
前記第1弾性部材は、前記第1方向または前記第2方向と交差する第3方向において、前記第2弾性部材と前記第1弾性部材の半分以上の長さだけ並んで設けられることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項9】
前記第1方向および前記第2方向は、前記第1板状部の長手方向であることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項10】
前記第1方向および前記第2方向は、前記第1板状部の長手方向と交差する方向であることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項11】
前記第1方向は、前記第2方向に対して45°以下の角度をなすことを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項12】
前記第1方向は、前記第2方向に対して20°以下の角度をなすことを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項13】
前記第1板状部に対向し導電性を有する第2板状部が設けられ、
前記第1弾性部材および前記第2弾性部材は、前記第2板状部の側に突出する曲げ部が設けられ、
前記曲げ部と前記第2板状部とが当接することを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項14】
前記第1板状部に対向し導電性を有する第2板状部が設けられ、
前記第2板状部は、前記第2板状部から延在し、端部が開放端である第3弾性部材が設けられ、
前記第3弾性部材は前記第2方向に延在し、
前記第3弾性部材は、前記第3方向において、前記第1弾性部材の少なくとも一部に並んで設けられることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項15】
前記第2板状部は、前記第2板状部から延在し、端部が開放端である第4弾性部材が設けられ、
前記第4弾性部材は前記第1方向に延在し、
前記第4弾性部材は、前記第3方向において、前記第3弾性部材の少なくとも一部に並んで設けられることを特徴とする請求項14に記載の構造体。
【請求項16】
導電性を有する第1板状部と、導電性を有する第2板状部を備えた構造体であって、
前記第1板状部は、前記第1板状部から延在し、端部が開放端である第1弾性部材が設けられ、
前記第2板状部は、前記第2板状部から延在し、端部が開放端である第2弾性部材が設けられ、
前記第1弾性部材は第1方向に延在し、前記第2弾性部材は前記第1方向とは反対の方向である第2方向に延在し、
前記第1弾性部材は、前記第1方向または前記第2方向と交差する第3方向において、前記第2弾性部材の少なくとも一部に並んで設けられることを特徴とする構造体。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載の構造体を有する容器と、前記容器の開口部を覆う蓋とを備えることを特徴とする筐体。
【請求項18】
容器と、前記容器を覆う蓋を備え、前記蓋は請求項1乃至16のいずれか1項に記載の構造体を有することを特徴とする筐体。
【請求項19】
前記筐体は、板金からなることを特徴とする請求項17に記載の筐体。
【請求項20】
請求項17に記載の筐体の内部に、前記筐体の外部の電子機器を制御する制御部が設けられることを特徴とする電装ボックス。
【請求項21】
シートに画像を形成する画像形成部を備え、
請求項17に記載の筐体の内部に設けられた制御装置によって、前記画像形成部を制御することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体および筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、信号の入力または出力が可能な複数の回路を含む電気回路が搭載されている。各回路が動作すると、動作に応じた電流が、電気回路を搭載するプリント回路板を伝搬し、高周波雑音電流ならびに電圧が発生して、機器同士の接点を介して、導電性を有する機器へと流れ込む。このように接点を介してなる構造体は、特定の周波数帯域において共振系を構成し、大きな不要輻射ノイズを発生することが問題となっている。そこで特許文献1では、電子機器を構成する各部品を、ばね部品を介在させて電気的に接続する形態が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の形態では、各部品間にばね部品を介在させているため、弾性部材のインダクタンスが増大する虞があった。そこで本発明は、インダクタンスを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段は、導電性を有する第1板状部を備えた構造体であって、前記第1板状部は、前記第1板状部から延在し、端部が開放端である第1弾性部材と第2弾性部材とが設けられ、前記第1弾性部材は第1方向に延在し、前記第2弾性部材は前記第1方向とは反対の方向である第2方向に延在し、前記第1弾性部材は、前記第1方向または前記第2方向と交差する第3方向において、前記第2弾性部材の少なくとも一部に並んで設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、インダクタンスを低減する上で有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の構造体を構成する筐体の斜視図である。
【
図2】(a)は容器の上面図であり、(b)は構造体の拡大図であり、(c)は方向C1と方向C2がなす角度の説明図である。
【
図3】第1板状部と弾性部材との位置関係を示した図である。
【
図4】弾性部材の延在方向の変形例を示した図である。
【
図8】実施例および比較例の結果を示したグラフである。
【
図9】実施形態の構造体を適用可能な画像形成装置の斜視図である。
【
図10】画像形成装置に搭載される画像形成部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。ただし、以下に説明する形態は、発明の1つの実施形態であって、これに限定されるものではない。そして、共通する構成を複数の図面を相互に参照して説明し、共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。同じ名称で別々の事項については、それぞれ、第1の事項、第2の事項というように、「第〇」を付けて区別することができる。
【0009】
図1は、本発明に係る構造体を、金属板材で構成された筐体1に適用した実施形態を示す斜視図である。筐体1は金属板材を成形した容器2と、容器2の開口部を覆う蓋3(第2板状部)とからなる部品で構成されている。容器2には、金属板材の縁を折り曲げ加工によって成形した取り付け面4(第1板状部)が設けられている。容器2の取り付け面4上に蓋3を重ね、ビスや溶接などで固定することで筐体1は箱状となる。筐体1は家電やパーソナルコンピュータの筐体や複写機、加工機等の制御ボックス等に使用可能であり、容器2の中に電装部品や制御関連機器を取り付け、或いは収納することができる。筐体1内で生じる静電気や電磁障害の対策のために、容器2および蓋3はそれぞれ金属等の導電性材料で形成されている。また、容器2および蓋3のいずれか一方を接地した場合に、他方も接地されるように、これらの間で導通を確保した構造体を構成している。
【0010】
本実施形態の筐体1においては、蓋3に設けられた構造体6の弾性部材5a、5b、5c、5dにおいて、容器2と蓋3との導通を取るように構成されている。容器2および蓋3を構成する導電性材料は同じ材料でも良いし、互いに異なる材料でも構わない。弾性部材の数は、2つ以上であれば特に限定されるものではない。
【0011】
筐体1の容器2および蓋3で使用する金属板材の材質は電気抵抗値の低い鉄材もしくは銅材といった板金の導電部材であることが好ましい。板材の厚みは0.4~1.2mmが望ましい。材質や板厚については塑性変形可能な導電部材であれば、本発明を実施することができる。導電部材の表面は場合によっては防錆性を維持する等の目的で亜鉛めっきなどの塗膜が施されていることがある。
【0012】
容器2および蓋3を形成する金属板材の表面は、この金属板材を構成する導電性材料よりも導電性が低い被膜で被覆されていることが好ましい。この被膜としては、傷がついたり指紋が残留したりすることを防ぎ、良好な外観維持のため潤滑性の高い絶縁材料から成る絶縁被膜を用いることが好ましい。しかし導電性の観点から、容器2と蓋3の導通を取る接点部分には被膜が設けられていないことが好ましい。
【0013】
<第1実施形態>
図2を用いて、
図1の第1実施形態における構造体6の構成について説明する。
図2(a)は容器2の上面図であり、
図2(b)は構造体6の拡大図である。
【0014】
構造体6は、板状部101と板状部102との接点の構造であり、ここで板状部101はたとえば容器2の取り付け面4に設けられ、板状部102はたとえば容器2に設けられている。そして、取り付け面4の上に蓋3が置かれることによって、板状部101および板状部102が互いに重なっている。容器2に蓋3を重ね、構造体6において導通を取ることで、高周波雑音電流の漏洩、または特定の周波数帯域において共振系を構成することによる大きな不要輻射ノイズを抑制することができる。
【0015】
図2(a)では、弾性部材2つからなる1つの構造体6が、板状部101の各辺に沿うようにそれぞれ1つずつ設けられている。
図2(a)のように弾性部材5a、5b、弾性部材5c、5d、弾性部材5e、5f、弾性部材5g、5hを各辺に沿うように設けてもよいが、同じ辺に沿うように弾性部材5a~5hを設けてもよい。1つの構造体6に3つ以上の弾性部材が含まれるように構成することもできる。また、
図2(a)では容器2の取り付け面4に弾性部材5a~5hを設けているが、蓋3に弾性部材5a~5hを設けても良い。
【0016】
図2(b)は構造体6のうち、弾性部材5a、5bを拡大した図である。構造体6のうち弾性部材5a、5bを例に挙げて説明するが、弾性部材5c~5hも同様の構成であることが好ましい。
【0017】
弾性部材5a、5bは、それぞれ接続部51a、51bおよび開放端50a、50bを有しており、弾性部材5aは方向C1に延在し、弾性部材5bは方向C2に延在する。本実施形態の板状部101からに延びる弾性部材5aは、相対する弾性部材5bが延びる方向C2とは反対の方向C1に延在するように設けられている。さらに弾性部材5aは、弾性部材5bと方向C1または方向C2と交差する方向C3において、少なくとも一部が並んで設けられている。このように構成することで、弾性部材5aに流れる電流と弾性部材5bに流れる電流は互いに対向する電流成分であるため、弾性部材5aと弾性部材5bとの相互作用が発生する。相互作用が発生することで、弾性部材5aと弾性部材5bのインダクタンスを低減することができる。弾性部材5aは、弾性部材5bと方向C1または方向C2と交差する方向C3において、弾性部材5aの長さの半分以上の長さが並ぶように構成することで、よりインダクタンスを低減することができる。
【0018】
ここで方向C1は方向C2の反対の方向としているが、真逆の方向である必要はない。反対の方向に設けられている、とは弾性部材5aの接続部51aが弾性部材5bの接続部51bに対して、弾性部材5aの開放端50aおよび弾性部材5bの開放端50bを介して反対側に設けられていることをいう。
図2(c)の方向C1と方向C2がなす角度θが45°以下であれば、弾性部材5aと弾性部材5bのインダクタンスを低減する上で大きな効果を発現することができる。さらに角度θが20°以下であればより大きな効果を発現することができる。角度θが0°で、方向C3が方向C1および方向C2に直交する形態が最も好ましいが、上記範囲であれば十分にインダクタンス低減効果を奏することができる。
【0019】
図3(a)に示すように、弾性部材5a、5bは、開放端50a、50bの近傍に曲げ部52a、52bを有している。曲げ部52a、52bは、板状部102側に突出するように設けられている。曲げ部52a、52bおよび板状部102の曲げ部52a、52bに当接する部分は保護用の絶縁被膜が設けられておらず、曲げ部52a、52bが板状部102に当接することで、容器2と蓋3の導通を取っている。
【0020】
弾性部材5a、5bは、力が加わることにより変形が可能であるように構成されており、弾性部材5a、5bの厚みは板状部101の厚み以下であることが好ましい。弾性部材5a、5bの幅は、接続部51a、51bの幅以下であることが好ましい。弾性部材5a、5bのX方向における幅は、開放端50a、50bに向かうにつれ徐々に狭まるように構成されることが好ましく、或る箇所から一定の幅であることが好ましい。
【0021】
図3(a)および
図3(b)を用いて、弾性部材5a、5bと第1板状部との位置関係について説明する。弾性部材5aと弾性部材5bとの距離を距離d1とした場合、距離d1を小さくすることで、弾性部材5aと弾性部材5bのインダクタンスを低減する効果が大きくなる。たとえば
図3(a)に示すように、距離d1は方向C3における弾性部材5aと板状部101との距離d2よりも小さいことが好ましい。また、距離d1は方向C3における弾性部材5bと板状部101との距離d3よりも小さいことが好ましい。
【0022】
ほかにも、距離d1は方向C1における弾性部材5aと板状部101との距離d4よりも小さいことが好ましい。また、距離d1は方向C2における弾性部材5bと板状部101との距離d5よりも小さいことが好ましい。上記範囲内であれば、弾性部材5aと弾性部材5bのインダクタンスを低減する上で大きな効果を発現することができる。距離d1は4mm以下が好ましく、3mm以下であればより好ましい。距離d2も同様に4mm以下が好ましく、3mm以下であればより好ましい。距離d3も同様に4mm以下が好ましく、3mm以下であればより好ましい。
【0023】
長さL1および長さL2は、弾性部材5a、5bが設置可能な範囲で適宜設定することができるが、板状部101の強度の観点から、長さL1は5mm以上15mm以下、長さL2は30mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0024】
ここで方向C1および方向C2は容器2の長手方向に相当し、方向C3は容器2の短手方向に相当する。本実施形態では、弾性部材5a、5bは容器2の長手方向に延在するように設けることで、弾性部材5a、5bの強度を確保しているが、
図4(a)に示すように短手方向に延在するように設けてもよい。また、
図4(b)に示すように、長手方向と短手方向の間に延在するように設けてもよい。弾性部材5a、5bの長さは30mm以上50mm以下であることが好ましい。さらに弾性部材5a、5bの長さの1/2以上が並んで設けられているとインダクタンス低減効果が大きくなる。
【0025】
弾性部材5a、5bは、板金からなる容器2または蓋3を切り起こして設けることが好ましいが、容器2または蓋3に後付けで弾性部材5a、5bを設けても良い。
【0026】
容器2と蓋3との導通を取る際には、容器2に対して蓋3を固定するために、たとえば不図示のビスで容器2の端部および蓋3の端部を固定することができる。しかし仮にビスで固定した場合でも、容器2と蓋3との間を完全に密着させることは難しく、容器2と蓋3との間に隙間ができてしまうことがある。隙間が形成された場合、ビスが設けられた位置を節とする電界の共振現象が発生する。すなわち、容器2および蓋3の両端部にビスを設けた場合、ビス同士の距離の2倍に相当する波長に対応する周波数で、共振現象が発生する。こういった共振現象を抑制するために、電界強度が高い位置、すなわち両端部の中間位置において容器2と蓋3の導通を取ることができる。導通はたとえば本実施形態で説明したような弾性部材5a、5bを用いても良い。中間位置で導通を取ることで、共振現象を2倍の周波数帯域へと変化させることによって抑制することができる。
【0027】
一般的には、導通を取るために弾性部材を用いる場合、弾性部材の強度を高めるために弾性部材の長さはより長いことが好ましい。しかし本発明者は、弾性部材の長さを長くしすぎると、インダクタンスが増大することを確認した。従って、弾性部材を長くした場合、インダクタンスが増大し共振抑制効果が減少する。逆に弾性部材を短くした場合、弾性部材を長くした場合に比べてインダクタンスを低減することができるが、不十分であった。そこで本発明は、反対の方向に延在する弾性部材を設けることで、よりインダクタンスを低減することができる。
【0028】
<第2実施形態>
図5を用いて、本実施形態に係る構造体6について説明する。
図5は
図2(a)の構造体6の拡大図の変形例である。本実施形態の構造体6は、弾性部材5a、5b間に導体11(板状部101)が設けられている点で第1実施形態と異なる。すなわち、弾性部材5aが設けられた領域12は、弾性部材5bが設けられた領域13と導体11を介して別の領域である。
【0029】
本実施形態においても、方向C1に延在する弾性部材5aは、方向C2に延在する弾性部材5bと方向C3において少なくとも一部が並んで設けられる。それにより、弾性部材5a、5b間に導体11がある場合においても、弾性部材5aと弾性部材5bのインダクタンスを低減することができる。ここでは領域12および領域13にそれぞれ1つずつ弾性部材を設けた形態を説明したが、各領域に複数の弾性部材を設けてもよい。
【0030】
このような構成とすることで、弾性部材5aの延在する方向に伝搬する電流成分と、弾性部材5bの延在する方向に伝搬する電流成分とが、少なくとも導体11の領域において相反する向きに流れる。それにより弾性部材5a、5bとで構成される電気的な接点構造に寄生するインダクタンスを低減することができる。すなわち、容器2と蓋3との間で構成される共振特性を抑制する効果を高くすることができる。
【0031】
<第3実施形態>
図6を用いて、本実施形態に係る構造体6について説明する。本実施形態に係る構造体6は、板状部101に弾性部材5aが設けられ、板状部102に弾性部材5bが設けられている点で第1実施形態と異なる。
【0032】
弾性部材5aは板状部102に設けられた領域14に設けられ、弾性部材5bは板状部101に設けられた領域15に設けられている。本実施形態では、同一の板状部材に設けられていないが、板状部101と板状部102を重ねることで、弾性部材5aと弾性部材5bには逆向きの電流が流れる。領域Dにおいて弾性部材5aと弾性部材5bとが並ぶため、弾性部材5aと弾性部材5bのインダクタンスを低減することができる。ここでは領域14を板状部101に投影することで領域Dを定義しているが、板状部101と板状部102を重ね、電流の流れを見ることで弾性部材5aと弾性部材5bとが並んでいることを確認してもよい。
【0033】
板状部101に弾性部材5a、5bを設け、板状部102に弾性部材5c、5d(第3弾性部材、第4弾性部材)を設けるように構成してもよい。
図5に示すように、弾性部材5aと弾性部材5bとは板状部101と板状部102とを重ねたときに、重ならない位置に設けられることが好ましい。重なってしまう場合、うまく導通が取れなくなる虞がある。
【0034】
領域14を板状部101に投影したとき、領域15と重ならないように構成しているが、一部が重なってもよい。また、領域14と領域15が重なり、弾性部材5aと弾性部材5bとが重ならないように構成してもよい。本実施形態で示すように、異なる板状部に弾性部材が設けられるように構成した場合でも、インダクタンス低減の効果を奏することができる。
【0035】
<実施例>
図3に示した構造体6を作製し、距離d1および距離d2を変化させ、インダクタンス値を測定した。板状部101は鉄とし、長さL1を10mm、長さL2を41mm、導体厚を0.6mmとした。弾性部材5a、5bの長さを40mmとし、幅を1mmとした。距離d2と距離d3は等しい値を設定した。弾性部材5a、5bの曲げ部52a、52bにおいて、板状部102と1mm×0.6mmの幅で接地させた。
【0036】
距離d1および距離d2を2.66mmで等しく配置したときのインダクタンス値は17.8nHであった。そこから距離d1を小さくしていき、距離d1を0.1mmとしたときのインダクタンス値は8.4nHであった。結果を
図8(a)に示す。
【0037】
また、距離d1を0.1mmで固定し、距離d2を3.5mmとしたときのインダクタンス値は16nHであった。そこから距離d2を小さくしていき、距離d2を0.1mmとしたときのインダクタンス値は7.1nHであった。結果を
図8(b)に示す。
【0038】
<比較例>
図7を用いて比較例について説明する。
図7は、弾性部材5に対して相反する向きに延在する別の弾性部材がない点で実施例と異なる。弾性部材5と弾性部材5を囲む導体との距離は2.66mmとし、それ以外は実施例と同様の寸法で作製した。このときのインダクタンス値は19nHであった。比較例の結果を
図8(a)および
図8(b)に点線で示す。
【0039】
<評価結果>
図8(a)および
図8(b)に示すように、弾性部材5a、5bを設けることで、弾性部材5のみを設けた場合に比べて、インダクタンス値を低減することができた。さらに、距離d1および距離d2を小さくするにつれて、インダクタンス値を低減することができた。
【0040】
<第4実施形態>
図9は、第1実施形態から第3実施形態の構造体6を使用した筐体1を適用可能な装置の一例としての画像形成装置600の説明図である。
【0041】
画像形成装置600は、例えば電子写真方式のレーザビームプリンタである。画像形成装置600は、筐体1、外装カバー601、画像形成部610および画像読取部620と、を備えている。
【0042】
画像読取部620は、セットされた原稿の画像を読み取る装置である。画像形成部610は、画像データに基づいてシートに画像を形成する。シートとは、普通紙、コート紙等の特殊紙、封筒、およびインデックス紙等の紙、オーバーヘッドプロジェクタ用のプラスチックフィルム、並びに布などを含む記録媒体とする。
【0043】
図10は、
図9に示した画像形成部610の模式図である。画像形成部610は、筐体1の内部に設けられた制御装置によって制御される。画像形成部610は、
図10に示すように、電子写真方式の画像形成ユニットPUと、定着装置107と、を備える。画像形成動作の開始が指示されると、感光体である感光ドラム109が回転し、感光ドラム109の表面が帯電装置110によって一様に帯電される。すると、露光装置103が、画像読取部620又は外部のコンピュータから送信された画像データに基づいてレーザ光を変調して出力し、感光ドラム109の表面を走査して静電潜像を形成する。この静電潜像は、現像装置104から供給されるトナーによって現像されてトナー像となる。
【0044】
このような画像形成動作に並行して、不図示のカセット又は手差しトレイに積載されたシートを画像形成部610へ向けて給送する給送動作が実行される。給送されたシートは、画像形成ユニットPUによる画像形成動作の進行に合わせて搬送される。そして、感光ドラム109に担持されたトナー像は、転写ローラ5によってシートに転写される。トナー像転写後に感光ドラム109上に残ったトナーは、クリーニング装置106によって回収される。トナー像が転写されたシートは、定着装置107へと受け渡されて、ローラ対に挟持されて加熱および加圧される。トナーが溶融しシートに固着して画像が定着したシートは、排出ローラ対によって機外に排出される。両面印刷の場合には、反転搬送部108によってシートは反転した状態で搬送され、画像形成部610によって裏面に画像を形成された後に機外に排出される。
【0045】
なお、画像形成部610は、記録媒体としてのシートに画像を形成可能な画像形成手段の一例であり、上述の直接転写方式に代えて中間転写体を含む中間転写方式の構成を用いてもよく、インクジェット方式等の他の機構を用いてもよい。
【0046】
以上、説明した実施形態は、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。例えば、先の実施形態では、筐体を構成する容器が第1板状部を有し、蓋が第2板状部を有する構成としたが、それぞれが反対の板状部を有するようにしても構わない。また、先の実施形態においては、容器と蓋との間の導通をとる筐体の例を説明した。しかしながら、本発明は互いに重ね合わされる板状部をそれぞれ有する部材間で導通をとる構造体であれば、どのようなものにも適用が可能である。
【0047】
また、先に説明した複数の実施形態を互いに組み合わせた構成としても構わない。また、少なくとも1つの実施形態の一部の事項の削除あるいは置換を行うことができる。更に、少なくとも1つの実施形態に新たな事項の追加を行うことも可能である。
【0048】
なお、本明細書の開示内容は、本明細書に明示的に記載したことのみならず、本明細書および本明細書に添付した図面から把握可能な全ての事項を含む。
【0049】
また本明細書の開示内容は、本明細書に記載した個別の概念の補集合を含んでいる。すなわち、本明細書に例えば「AはBよりも大きい」旨の記載があれば、たとえ「AはBよりも大きくない」旨の記載を省略していたとしても、本明細書は「AはBよりも大きくない」旨を開示していると云える。なぜなら、「AはBよりも大きい」旨を記載している場合には、「AはBよりも大きくない」場合を考慮していることが前提だからである。
【0050】
以下に本発明の開示内容を示す。
【0051】
(構成1)
導電性を有する第1板状部を備えた構造体であって、前記第1板状部は、前記第1板状部から延在し、端部が開放端である第1弾性部材と第2弾性部材とが設けられ、前記第1弾性部材は第1方向に延在し、前記第2弾性部材は前記第1方向とは反対の方向である第2方向に延在し、前記第1弾性部材は、前記第1方向または前記第2方向と交差する第3方向において、前記第2弾性部材の少なくとも一部に並んで設けられることを特徴とする構造体。
【0052】
(構成2)
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間には、前記第1板状部が設けられていないことを特徴とする構成1に記載の構造体。
【0053】
(構成3)
前記第3方向は、前記第1方向または前記第2方向に直交する方向であることを特徴とする構成1または2に記載の構造体。
【0054】
(構成4)
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との距離は、前記第3方向における前記第1弾性部材と前記第1板状部との距離より小さいことを特徴とする構成1乃至3のいずれか1項に記載の構造体。
【0055】
(構成5)
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との距離は、前記第3方向における前記第2弾性部材と前記第1板状部との距離より小さいことを特徴とする構成1乃至4のいずれか1項に記載の構造体。
【0056】
(構成6)
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との距離は、前記第1方向における前記第1弾性部材と前記第1板状部との距離より小さいことを特徴とする構成1乃至5のいずれか1項に記載の構造体。
【0057】
(構成7)
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との距離は、前記第2方向における前記第2弾性部材と前記第1板状部との距離より小さいことを特徴とする構成1乃至6のいずれか1項に記載の構造体。
【0058】
(構成8)
前記第1弾性部材は、前記第1方向または前記第2方向と交差する第3方向において、前記第2弾性部材と前記第1弾性部材の半分以上の長さだけ並んで設けられることを特徴とする構成1乃至7のいずれか1項に記載の構造体。
【0059】
(構成9)
前記第1方向および前記第2方向は、前記第1板状部の長手方向であることを特徴とする構成1乃至8のいずれか1項に記載の構造体。
【0060】
(構成10)
前記第1方向および前記第2方向は、前記第1板状部の長手方向と交差する方向であることを特徴とする構成1乃至9のいずれか1項に記載の構造体。
【0061】
(構成11)
前記第1方向は、前記第2方向に対して45°以下の角度をなすことを特徴とする構成1乃至10のいずれか1項に記載の構造体。
【0062】
(構成12)
前記第1方向は、前記第2方向に対して20°以下の角度をなすことを特徴とする構成1乃至11のいずれか1項に記載の構造体。
【0063】
(構成13)
前記第1板状部に対向し導電性を有する第2板状部が設けられ、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材は、前記第2板状部の側に突出する曲げ部が設けられ、前記曲げ部と前記第2板状部とが当接することを特徴とする構成1乃至12のいずれか1項に記載の構造体。
【0064】
(構成14)
前記第1板状部に対向し導電性を有する第2板状部が設けられ、前記第2板状部は、前記第2板状部から延在し、端部が開放端である第3弾性部材が設けられ、前記第3弾性部材は前記第2方向に延在し、前記第3弾性部材は、前記第3方向において、前記第1弾性部材の少なくとも一部に並んで設けられることを特徴とする構成1乃至13のいずれか1項に記載の構造体。
【0065】
(構成15)
前記第2板状部は、前記第2板状部から延在し、端部が開放端である第4弾性部材が設けられ、前記第4弾性部材は前記第1方向に延在し、前記第4弾性部材は、前記第3方向において、前記第3弾性部材の少なくとも一部に並んで設けられることを特徴とする構成1乃至14のいずれか1項に記載の構造体。
【0066】
(構成16)
導電性を有する第1板状部と、導電性を有する第2板状部を備えた構造体であって、前記第1板状部は、前記第1板状部から延在し、端部が開放端である第1弾性部材が設けられ、前記第2板状部は、前記第2板状部から延在し、端部が開放端である第2弾性部材が設けられ、前記第1弾性部材は第1方向に延在し、前記第2弾性部材は前記第1方向とは反対の方向である第2方向に延在し、前記第1弾性部材は、前記第1方向または前記第2方向と交差する第3方向において、前記第2弾性部材の少なくとも一部に並んで設けられることを特徴とする構造体。
【0067】
(筐体1)
構成1乃至16のいずれか1項に記載の構造体を有する容器と、前記容器の開口部を覆う蓋とを備えることを特徴とする筐体。
【0068】
(筐体2)
容器と、前記容器を覆う蓋を備え、前記蓋は構成1乃至16のいずれか1項に記載の構造体を有することを特徴とする筐体。
【0069】
(筐体3)
前記筐体は、板金からなることを特徴とする筐体1または2に記載の筐体。
【0070】
(機器1)
筐体1または2に記載の筐体の内部に、前記筐体の外部の電子機器を制御する制御部が設けられることを特徴とする電装ボックス。
【0071】
(装置1)
シートに画像を形成する画像形成部を備え、
筐体1または2に記載の筐体の内部に設けられた制御装置によって、前記画像形成部を制御することを特徴とする画像形成装置。
【符号の説明】
【0072】
5a 第1弾性部材
5b 第2弾性部材
6 構造体
101 第1板状部
C1 第1方向
C2 第2方向
C3 第3方向