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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168653
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ガルバノスキャナ
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20241128BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20241128BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
B23K26/082
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085513
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 猛司
【テーマコード(参考)】
2H045
4E168
【Fターム(参考)】
2H045AB02
4E168CB04
4E168EA15
(57)【要約】
【課題】 ミラーの取り付け角度の自由度を向上させること。
【解決手段】 ステータと、ロータとミラーホルダと、ミラーと、を有し、前記ミラーホルダには、ロータ回転軸に対して垂直で、前記マウント部と接触する第1平面部と、前記ミラーホルダを前記マウント部に締結するための前記ロータの回転軸の平行方向に開けられた少なくとも2個の穴が設けられ、前記マウント部には、ロータ回転軸に対して垂直で、前記ミラーホルダの前記第1平面部と接触する第2平面部と、前記第2平面部に配置され前記ミラーホルダを前記マウント部に締結するための回転軸の平行方向に開けられた少なくとも3個のネジ穴と、前記ロータの回転軸の垂直方向に突出した凸部と、が設けられ、前記ステータは、前記凸部との接触により前記ロータの回転角度範囲を規制する凹部を有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータに対して回動可能に支持され、先端にマウント部を有するロータと、
前記マウント部に設けられたミラーホルダと、
前記ミラーホルダに保持されたミラーと、
を有し、
前記ミラーホルダには、ロータ回転軸に対して垂直で、前記マウント部と接触する第1平面部と、前記ミラーホルダを前記マウント部に締結するための前記ロータの回転軸の平行方向に開けられた少なくとも2個の穴が設けられ、
前記マウント部には、ロータ回転軸に対して垂直で、前記ミラーホルダの前記第1平面部と接触する第2平面部と、前記第2平面部に配置され前記ミラーホルダを前記マウント部に締結するための回転軸の平行方向に開けられた少なくとも3個のネジ穴と、前記ロータの回転軸の垂直方向に突出した凸部と、が設けられ、
前記ステータは、前記凸部との接触により前記ロータの回転角度範囲を規制する凹部を有する、
ことを特徴とするガルバノスキャナ。
【請求項2】
前記ミラーホルダは、前記穴より内側に配置された勘合軸を有し
前記マウント部は、前記ネジ穴より内側に配置された勘合穴し、
前記勘合軸との前記勘合穴の勘合により前記ロータの回転軸に対して直交する方向の位置決めを行うことを特徴とする請求項1に記載のガルバノスキャナ。
【請求項3】
前記ミラーホルダは、外径R1の第1円筒部を有し、
前記マウント部は、前記第2平面部と同一の稜線を有する外径R2の第2円筒部と、前記第2円筒部に対して前記第2平面部の法線反対方向に配置された外径R3の第3円筒部と、前記第3円筒部に対して、前記第2平面部の法線反対方向に配置され、前記ステータに対してロータを回動させるベアリングが接合される外径R4の第4円筒部を有し、
R1、R2、R3、R4の関係が、
R1≧R2≧R3>R4
を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のガルバノスキャナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガルバノスキャナに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ穴あけ装置、レーザトリマ装置、レーザリペア装置などのレーザ加工装置(工作機械)においては、レーザ光をピンポイントで被対象物に照射するガルバノスキャナが使用されうる。ガルバノスキャナは、モータの回転軸に取り付けられたミラー(ガルバノミラー)の回転角度を制御しながら、かかるミラーでレーザ光を反射させて被対象物の目標位置に光を照射する。ガルバノスキャナには、生産性の観点から加工の高速性が求められる。一方で、一般にガルバノスキャナのモータを高速に動かそうとした場合には、指令値と実軌跡との乖離が大きくなり、加工精度が低下してしまう。すなわち、ガルバノスキャナには、高速性と指令値に対する追従性(応答性)の両立が求められる。
【0003】
本発明の比較例として、図6に示す比較例1のガルバノスキャナがある。図6は、比較例1のガルバノスキャナのミラー取り付け部を示した図である。ガルバノスキャナは、静止したステータに対して往復回転運動するロータが構成されており、ロータには円筒形状のシャフトが回転軸方向に飛び出すように構成されている。ミラーが固定されたミラーホルダは、本体とカバーから構成されており、ミラーホルダ本体とカバーでシャフトを挟むように締結固定される。シャフトには回転軸垂直方向に突出した凸部が構成されており、ステータ部の凹部との接触によりロータの回転運動範囲を規制することができる。
【0004】
また、本発明の比較例として、図7に示す比較例2のガルバノスキャナがある。図7は、比較例2のガルバノスキャナのミラー取り付け部を示した図である。比較例2のガルバノスキャナは、ロータのシャフト先端に回転軸平行方向にネジ穴が構成されている。ミラーが固定されたミラーホルダにも回転軸平行方向に穴が構成されており、ミラーホルダをシャフト先端に締結固定する。ロータには凹部が構成されており、ステータから回転軸垂直方向に突出した凸部との接触によりロータの回転運動範囲を規制することができる。特許文献1の図3には、比較例1の構成のガルバノスキャナについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-322542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、比較例1のガルバノスキャナは、シャフトよりも外側にネジとミラーホルダが構成される必要がある。また、ミラーホルダとシャフトの接触面積を確保するために回転軸方向に一定の長さが必要となる。これにより、シャフト及びミラーホルダのイナーシャが大きくなり、ガルバノスキャナの動特性を悪化させてしまうおそれがある。
【0007】
また、比較例2のガルバノスキャナは、回転角度規制用の凹部がロータに構成されているため、ミラーホルダ固定用のネジ穴を配置する自由度がないという問題がある。比較例2の場合、ネジ穴が2個しか配置できないため、ミラーの取り付け角度選択自由度は0°と180°の2通りしかない。
【0008】
そこで、本発明は、ミラーの取り付け角度の自由度を向上させるうえで有利なガルバノスキャナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのガルバノスキャナは、ステータと、前記ステータに対して回動可能に支持され、先端にマウント部を有するロータと、前記マウント部に設けられたミラーホルダと、前記ミラーホルダに保持されたミラーと、を有し、前記ミラーホルダには、ロータ回転軸に対して垂直で、前記マウント部と接触する第1平面部と、前記ミラーホルダを前記マウント部に締結するための前記ロータの回転軸の平行方向に開けられた少なくとも2個の穴が設けられ、前記マウント部には、ロータ回転軸に対して垂直で、前記ミラーホルダの前記第1平面部と接触する第2平面部と、前記第2平面部に配置され前記ミラーホルダを前記マウント部に締結するための回転軸の平行方向に開けられた少なくとも3個のネジ穴と、前記ロータの回転軸の垂直方向に突出した凸部と、が設けられ、前記ステータは、前記凸部との接触により前記ロータの回転角度範囲を規制する凹部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ミラーの取り付け角度の自由度を向上させるうえで有利なガルバノスキャナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態のガルバノスキャナの断面図を示した図である。
図2】第1実施形態のガルバノスキャナのミラー取り付け部を示した図である。
図3】第2実施形態のガルバノスキャナのミラー取り付け部を示した図である。
図4】第2実施形態のガルバノスキャナのミラーホルダを示した図である。
図5】第3実施形態のガルバノスキャナのミラー取り付け部を示した図である。
図6】比較例1のガルバノスキャナのミラー取り付け部を示した図である。
図7】比較例2のガルバノスキャナのミラー取り付け部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。尚、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態のガルバノスキャナ(ガルバノモータ)100の図である。本実施形態のガルバノスキャナ100は、図1に示すように、ステータユニット114(ステータ)に対してロータユニット115(ロータ)がベアリング109によって回動可能に支持されている。ステータユニット114は、凹部117が設けられたモータケース112、ヨーク111、コイル110、エンコーダ113を有する。ロータユニット115は、シャフトOUT105、磁石106、シャフトIN107、スケール108、ピン104を有する。磁石106、コイル110、ヨーク111は、磁気回路を構成しており、コイル110に投入される電力は、磁気回路によりロータユニット115の回転運動に変換される。スケール108、エンコーダ113を有する光学式エンコーダは、ロータユニット115の回転変位を検出する。ロータユニット115の先端(マウント部)には、ミラーホルダ102が設けられ、ミラーホルダ102は、ミラー101を保持する。ミラーユニット116は、ネジ103によってロータ回転軸Aと平行方向に締結されており、回転するミラー101に光を反射させることで光を走査する。
【0014】
図2は、本実施形態のガルバノスキャナ100のミラー取り付け部の拡大図である。図2に示すように、ロータユニット115のシャフトOUT105先端には、ロータ回転軸Aに垂直な平面部SR(第2平面部)が設けられている。シャフトOUT105円筒側面には、回転軸垂直方向に突出したピン104(凸部)が配置されており、モータケース112に設けられた凹部117との接触により回転角度範囲が規制される。平面部SRには、6個のネジ穴121が60度ピッチで回転軸平行方向に設けられている。一方、ミラーホルダ102には、ミラー101が接着固定されており、ロータ側平面部SRと接触する平面部SM(第1平面部)が設けられている。また、ミラーホルダ102にはシャフトOUT105のネジ穴121にネジ103で締結固定するための2個の穴122が設けられている。
【0015】
本実施形態におけるガルバノスキャナ100には、下記の2点の特徴がある。1点目は、シャフトOUTの平面部SRに6個の回転軸平行方向に開けられたネジ穴121を設けている点である。本構成によりミラーホルダ102の2つの穴122と対になるネジ穴121を選択することで、ミラーユニット116の取り付け方位を60度ピッチ6方位から選択することが可能である。また、回転軸平行方向に締結する本実施形態の構造は、比較例1のようにシャフトよりも大きく飛び出したネジ及びミラーホルダの構造よりも軽量化が可能になる。2点目は、シャフトOUT105に回転角度範囲規制用のピン104を設けている点である。比較例2ではロータ側に凹部117を設けているため、一か所当たり約50~60°の角度が必要な凹部により、ネジ穴の数が制限されてしまう。本実施例のようにロータ側にピンを設けることで、十分な数のネジ穴を構成することができる。
【0016】
このように、本実施形態では、ロータ及びミラーホルダのイナーシャ(慣性モーメント)を低減し、ガルバノスキャナ100の動特性を向上すると同時に、ミラー取り付け方位自由度を確保することができる。なお、本実施形態では、シャフトOUT平面部SRに6個のネジ穴、ミラーホルダに2個の穴を設けているが、これに限定される事なく、例えば、ミラーホルダに3個や4個の穴を設けても良い。すなわち、平面部SRに3個以上のネジ穴、ミラーホルダに2個以上の穴を設けることでミラー取り付け自由度が得られる。
【0017】
<第2実施形態>
次に、図3及び図4に基づいて本実施形態のガルバノスキャナについて説明する。図3は、本実施形態のガルバノスキャナのミラー取り付け部を示した図である。本実施形態のガルバノスキャナの基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、言及しない点については第1実施形態に従う。本実施形態のガルバノスキャナは、図3に示すように、シャフトOUT105の平面部SR中央に勘合位置決め用の勘合穴131が設けられている。一方、図4に示すように、ミラーホルダ102の平面部SM中央には勘合位置決め用の勘合軸132が設けられている。ミラーホルダ102をシャフトOUT105にネジ締結すると、勘合穴131と勘合軸132が嵌め合うことで回転軸垂直方向(直交する方向)に高精度に位置決めすることができる。回転軸に対するミラーホルダ及びミラーの重心がずれているとロータ回転動作時に振動やミラーの倒れが発生するため、これを防ぐことが可能になる。本実施形態の特徴は、締結用のネジ穴及び穴よりも、勘合穴及び勘合軸が中央に配置されている点である。勘合部によるイナーシャ増加はなくガルバノスキャナの動特性改善が可能であり、ミラー取り付け方位自由度も確保されている。
【0018】
<第3実施形態>
次に、図5に基づいて本実施形態のガルバノスキャナについて説明する。図5は、本実施形態のガルバノスキャナのミラー取り付け部を示した図である。本実施形態のガルバノスキャナの基本的な構成は第1実施形態及び第2実施形態と同様であるため、言及しない点については第1実施形態又は第2実施形態に従う。本実施形態のガルバノスキャナは、図5に示すようにシャフトOUT105の側面円筒に複数の段差が設けられており、イナーシャを最小化する構造になっている。以下では、イナーシャを最小化する構造の寸法制約について説明する。
【0019】
まず初めにミラーホルダ102の側面円筒(第1円筒部)の外径R1は、ミラー101の厚み、ミラー保持部141寸法、ネジ103のねじ頭寸法を考慮した穴122の位置及び大きさに制約され、穴122に対して最小の肉厚を確保して決定される。次にシャフトOUT105の側面円筒(第3円筒部)の外径R3は、シャフトOUT105のネジ穴121に対して最小の肉厚を確保して決定される。ミラーホルダの穴122の径よりもシャフトOUTのネジ穴121の径の方が僅かに小さいため、外径R3は外径R1より小さくすることができる。
【0020】
次に、シャフトOUT105の側面円筒(第2円筒部)の外径R2は、ミラーホルダ102の着座安定性を考慮して外径R1と同一とするのが望ましい。すなわち、マウント部は、第2平面部と同一の稜線を有する外径R2の第2円筒部でありうる。ただし、着座安定性よりもイナーシャを優先する場合はR3と同一にしても構わない。最後に、シャフトOUT105の側面円筒(第4円筒部)の外径R4は不図示のベアリング109の内輪内側面と接合される面である。第3円筒部は、第2円筒部に対して第2平面部の法線反対方向に配置される。また、第4円筒部は、第3円筒部に対して、第2平面部の法線反対方向に配置される。ベアリングはイナーシャの観点から回転ガイド機能及び耐久性を満たす最小のものであるのが望ましい。結果的に外径R4は外径R3よりも小さくなる。
【0021】
以上により、各円筒部の外径は、
R1≧R2≧R3>R4 ・・・(1)
を満たす関係となる。
【0022】
さらに、ミラーホルダ着座安定性を優先する場合には、
R1=R2>R3>R4 ・・・(2)
を満たす関係となる。
【0023】
一方、イナーシャ最小化を優先する場合には、
R1>R2=R3>R4 ・・・(3)
を満たす関係となる。
【0024】
このように、本実施形態では適切な寸法制約条件を考慮して側面円筒外径を選択することで、ロータ及びミラーホルダのイナーシャを低減してガルバノスキャナの動特性を向上しつつ、ミラー取り付け方位自由度を確保することができる。
【0025】
<物品の製造方法の実施形態>
以上に説明した実施形態に係るガルバノスキャナは、物品製造方法に使用しうる。当該物品製造方法は、当該ガルバノスキャナ装置を用いて物体(対象物)の加工を行う加工工程と、当該工程で加工を行われた物体を処理する工程と、を含みうる。加工工程では、ガルバノスキャナ装置により角度制御されたミラーで反射されたレーザ光を物体に照射することで物体の加工を行う。以上に説明した実施形態に係るガルバノスキャナを用いることで、レーザ加工の精度もしくは生産性を向上させることができる。また、当該処理は、例えば、当該加工とは異なる加工、搬送、検査、選別、組立(組付)、および包装のうちの少なくともいずれか一つを含みうる。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストのうちの少なくとも1つにおいて有利である。
【符号の説明】
【0026】
100 ガルバノスキャナ
101 ミラーと、
102 ミラーホルダ
104 ピン(凸部)
109 ベアリング
114 ステータユニット(ステータ)
115 ロータ
117 凹部
121 ネジ穴
122 穴
A ロータ回転軸
SM 平面部(第1平面部)
SR 平面部(第2平面部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7