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特開2024-168658軸受の状態監視方法、および状態監視装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168658
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】軸受の状態監視方法、および状態監視装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/045 20190101AFI20241128BHJP
【FI】
G01M13/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085525
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯川 謹次
(72)【発明者】
【氏名】西端 伸司
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024AC05
2G024BA27
2G024CA13
2G024DA09
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA15
(57)【要約】
【課題】監視対象の回転数を直接測定できない場合であっても、自転数の変動、公転数の変動を測定可能な軸受装置の状態監視方法及び状態監視装置を提供する。
【解決手段】監視対象である第1の回転部材と、前記第1の回転部材と同期して回転動作を行う第2の回転部材とを含んで構成される軸受装置の状態監視を行う状態監視方法であって、前記軸受装置の回転動作に伴って発生する振動に基づく信号を検出し、前記信号に対して周波数分析を行い、スペクトルデータを導出し、前記信号のうち、回転動作に伴って前記第2の回転部材にて発生する振動に基づく信号を用いて、前記回転動作における回転速度を算出し、前記スペクトルデータのピークが現れる周波数と、前記回転速度における前記軸受装置の自転による理論周波数および公転による理論周波数の少なくとも一方とを比較し、前記軸受装置における自転および公転の変動の少なくとも一方を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象である第1の回転部材と、前記第1の回転部材と同期して回転動作を行う第2の回転部材とを含んで構成される軸受装置の状態監視を行う状態監視方法であって、
前記軸受装置の回転動作に伴って発生する振動に基づく信号を検出する検出工程と、
前記信号に対して周波数分析を行い、スペクトルデータを導出する導出工程と、
前記信号のうち、回転動作に伴って前記第2の回転部材にて発生する振動に基づく信号を用いて、前記回転動作における回転速度を算出する算出工程と、
前記スペクトルデータのピークが現れる周波数と、前記回転速度における前記軸受装置の自転による理論周波数および公転による理論周波数の少なくとも一方とを比較し、前記軸受装置における自転および公転の変動の少なくとも一方を判定する判定工程と、
を有することを特徴とする状態監視方法。
【請求項2】
前記第1の回転部材は、転がり軸受であり、
前記第2の回転部材は、前記回転動作にて回転する回転軸に連結された連結部材である、請求項1に記載の状態監視方法。
【請求項3】
前記連結部材は、チェーン、またはベルトである、請求項2に記載の状態監視方法。
【請求項4】
前記第1の回転部材は、転がり軸受であり、
前記第2の回転部材は、転がり軸受である、請求項1に記載の状態監視方法。
【請求項5】
前記検出工程において、前記第1の回転部材の周辺に設置された振動センサを用いて、前記信号を検出する、請求項1に記載の状態監視方法。
【請求項6】
前記軸受装置は、前記第2の回転部材の近傍に、前記第1の回転部材と同期して回転動作を行う第3の回転部材を含んで構成され、
前記検出工程において、
前記第1の回転部材の周辺に設置された第1のセンサを用いて第1の信号を検出し、
前記第3の回転部材の周辺に設置された第2のセンサを用いて第2の信号を検出し、
前記導出工程において、前記第1の信号を用いてスペクトルデータを導出し、
前記算出工程において、前記第2の信号を用いて、前記回転動作における回転速度を算出する、請求項1に記載の状態監視方法。
【請求項7】
前記検出工程において、
前記第1の回転部材の周辺に設置された第1のセンサを用いて第1の信号を検出し、
前記第2の回転部材の周辺に設置された第2のセンサを用いて第2の信号を検出し、
前記導出工程において、前記第1の信号を用いてスペクトルデータを導出し、
前記算出工程において、前記第2の信号を用いて、前記回転動作における回転速度を算出する、請求項1に記載の状態監視方法。
【請求項8】
監視対象である第1の回転部材と、前記第1の回転部材と同期して回転動作を行う第2の回転部材とを含んで構成される軸受装置の状態監視を行う状態監視装置であって、
前記軸受装置の回転動作に伴って発生する振動に基づく信号を検出する検出手段と、
前記信号に対して周波数分析を行い、スペクトルデータを導出する導出手段と、
前記信号のうち、回転動作に伴って前記第2の回転部材にて発生する振動に基づく信号を用いて、前記回転動作における回転速度を算出する算出手段と、
前記スペクトルデータのピークが現れる周波数と、前記回転速度における前記軸受装置の自転による理論周波数および公転による理論周波数の少なくとも一方とを比較し、前記軸受装置における自転および公転の変動の少なくとも一方を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする状態監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受の状態監視方法、および状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸受の外輪あるいは内輪等に生じる音や振動をセンサによって検出し、その検出信号に基いて異常の有無を判断する技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、振動センサの出力から特徴量抽出部において周波数特徴量と時間特徴量とを抽出して異常診断部に入力し、異常診断部が周波数特徴量と時間特徴量と基準データとを照合することにより、異常の有無および異常の種別を判断可能とした回転機器の異常診断方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、軸受から発生する振動を検出し、検出された信号波形にエンベロープ処理および周波数分析を施し、得られたエンベロープスペクトルのピーク値を所定の周波数範囲で測定された全スペクトルの積分値であるオーバーオール値で除算して算出値を得て、該算出値を基準値と比較して異常の有無を判断する軸受の異常診断方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3449194号公報
【特許文献2】特許第4120099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
軸受装置の状態監視では、自転滑りや公転滑り、または公転数の変動などを対象としても行われている。このような状態監視においては、軸受装置の回転数の情報が必要となる。回転数の情報(変動等)を精度良く検出するためには、診断対象付近に回転センサを設置する必要があるが、装置構成によっては、回転センサが設置できなかったり、回転数の情報が取得できなかったりすることが想定される。一方、軸受装置において、回転動作を行った際に、所定の周期にて振動を発生させる構成要素がある。このような構成要素としては、チェーンやベルトなどの周辺部材、監視対象以外の軸受なども挙げられる。特許文献1や特許文献2では、このような構成要素からの振動を想定して、異常診断時に利用する回転数を導出する扱うことについては十分に考慮されていなかった。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、監視対象の回転数を直接測定できない場合であっても、自転数の変動、公転数の変動を測定可能な軸受装置の状態監視方法及び状態監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、監視対象である第1の回転部材と、前記第1の回転部材と同期して回転動作を行う第2の回転部材とを含んで構成される軸受装置の状態監視を行う状態監視方法であって、
前記軸受装置の回転動作に伴って発生する振動に基づく信号を検出する検出工程と、
前記信号に対して周波数分析を行い、スペクトルデータを導出する導出工程と、
前記信号のうち、回転動作に伴って前記第2の回転部材にて発生する振動に基づく信号を用いて、前記回転動作における回転速度を算出する算出工程と、
前記スペクトルデータのピークが現れる周波数と、前記回転速度における前記軸受装置の自転による理論周波数および公転による理論周波数の少なくとも一方とを比較し、前記軸受装置における自転および公転の変動の少なくとも一方を判定する判定工程と、
を有することを特徴とする状態監視方法。
【0009】
また、本発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、監視対象である第1の回転部材と、前記第1の回転部材と同期して回転動作を行う第2の回転部材とを含んで構成される軸受装置の状態監視を行う状態監視装置であって、
前記軸受装置の回転動作に伴って発生する振動に基づく信号を検出する検出手段と、
前記信号に対して周波数分析を行い、スペクトルデータを導出する導出手段と、
前記信号のうち、回転動作に伴って前記第2の回転部材にて発生する振動に基づく信号を用いて、前記回転動作における回転速度を算出する算出手段と、
前記スペクトルデータのピークが現れる周波数と、前記回転速度における前記軸受装置の自転による理論周波数および公転による理論周波数の少なくとも一方とを比較し、前記軸受装置における自転および公転の変動の少なくとも一方を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする状態監視装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、監視対象の回転数を直接測定できない場合であっても、自転数の変動、公転数の変動の状態監視が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る軸受装置の状態監視装置の概略構成図。
図2】第1の実施形態に係るエンベロープスペクトルの例を示すグラフ図。
図3】第1の実施形態に係る状態監視処理のフローチャート。
図4】第2の実施形態に係る軸受装置の状態監視装置の概略構成図。
図5】第2の実施形態に係るエンベロープスペクトルの例を示すグラフ図。
図6】第3の実施形態に係る軸受装置の状態監視装置の概略構成図。
図7】第3の実施形態に係るエンベロープスペクトルの例を示すグラフ図。
図8】第4の実施形態に係る軸受装置の状態監視装置の概略構成図。
図9】第4の実施形態に係るエンベロープスペクトルの例を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る軸受装置の状態監視装置の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を説明するための一実施形態であり、本発明を限定して解釈されることを意図するものではなく、また、各実施形態で説明されている全ての構成が本発明の課題を解決するために必須の構成であるとは限らない。また、各図面において、同じ構成要素については、同じ参照番号を付すことにより対応関係を示す。
【0013】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について説明する。本実施形態では、監視対象として、転がり軸受を含んで構成される軸受装置を例に挙げて説明する。
【0014】
[装置構成]
図1は、本実施形態に係る状態監視装置100および監視対象である軸受装置200の構成例を示す概略構成図である。
【0015】
状態監視装置100は、本実施形態に係る状態監視方法を実行可能な情報処理装置である。状態監視装置100は、例えば、不図示の制御部、記憶部、外部インタフェース、および入出力部等を含んで構成される。状態監視装置100は、例えば、PC(Personal Computer)などの汎用的な情報処理装置にて構成されてもよいし、測定専用の装置として構成されてもよい。
【0016】
不図示の制御部は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Single Processor)、または専用回路などから構成されてよい。不図示の記憶部は、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の揮発性および不揮発性の記憶媒体により構成され、制御部からの指示により各種情報の入出力が可能である。
【0017】
不図示の外部インタフェースは、外部装置に接続されるためのインタフェースであり、本実施形態では、振動センサ205や増幅器206を介してデータの送受信が可能なように構成される。不図示の入出力部は、ユーザからの操作を受け付けたり、監視結果などの各種情報を表示したりする。例えば、入出力部は、スピーカやライト、或いは液晶ディスプレイ等の表示デバイス等から構成され、制御部からの指示により、ユーザへの出力を行う。入出力部による出力方法は特に限定するものではないが、例えば、画面出力による視覚的な出力であってもよいし、音声による聴覚的な出力であってもよい。
【0018】
状態監視装置100は、A/D変換部101、波形処理部102、信号処理部103、および、監視処理部104を含んで構成される。これらの部位は、制御部が記憶部に格納された各種プログラムやデータを読み出して実行することで実現されてよい。ここでは、本実施形態に係る構成のみを例示的に示しており、状態監視装置100が更に他の構成を備えてもよい。
【0019】
監視対象である軸受装置200は、転がり軸受201、回転軸202、ハウジング203、および連結部材204を含んで構成される。更に、軸受装置200の周辺には、振動センサ205および増幅器206が設置される。
【0020】
転がり軸受201は、回転軸202の回転に同期して回転可能な回転輪である内輪、ハウジング203に固定される固定輪である外輪、内外輪間に転動自在に配設された転動体、および、転動体を回動自在に保持する保持器を備える。転がり軸受201の種類は特に限定するものではなく、例えば、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、自動調心ころ軸受などが用いられてよい。そのほか、本実施形態に係る状態監視方法は、高速回転かつ低荷重で使用される軸受や、予圧抜けが発生し得る軸受などを監視対象として適用可能である。
【0021】
回転軸202は、不図示の駆動部による駆動力に基づいて回転動作を行う。また、回転軸202には、回転力(例えば、トルク)を伝達するための連結部材204が連結される。なお、連結部材204側から回転軸202に回転力を伝達するような構成であってもよい。ハウジング203には、転がり軸受201が設置される。連結部材204は、例えば、チェーンやベルト(金属ベルト、タイミングベルトなど)などから構成される。本実施形態において、連結部材204は、連結された回転軸202の回転に伴って、一定の振動が生じるように構成される。言い換えると、連結部材204にて発生した振動が、回転軸202、更には、転がり軸受201に伝達する。
【0022】
振動センサ205は、転がり軸受201に対向配置される。振動センサ205は、軸受装置200にて発生する振動を電気信号として検出し、増幅器206へ提供する。増幅器206は、振動センサ205にて検出された電気信号を増幅し、状態監視装置100へ入力する。
【0023】
状態監視装置100において、A/D変換部101は、増幅器206を介して取得した振動センサ205からの振動データを、デジタル信号に変換する。更に、波形処理部102は、A/D変換部101にて変換されたデジタル信号に対して、エンベロープ処理および周波数分析を行い、スペクトルデータを算出する。
【0024】
信号処理部103は、波形処理部102にて算出された振動スペクトルの周波数に基づいて、回転軸202の回転数(または、回転速度)を算出する。本実施形態では、回転と同期して振動が発生する部位として連結部材204を含んで構成されており、信号処理部103はこの振動情報に着目して、回転数を算出する。更に、信号処理部103は、算出した回転数に基づいて、軸受装置200における理論周波数を算出する。理論周波数は、軸受装置200の構成に応じて予め算出式が規定され、この算出式を用いて算出される。監視処理部104は、信号処理部103にて算出された理論周波数と、波形処理部102にて算出したスペクトルデータに基づいて、軸受装置200の状態診断を行う。特に、本実施形態では、転がり軸受が備える転動体周りの自転滑りおよび公転滑りに係る状態診断を行う。
【0025】
[検出例]
図2は、本実施形態に係る軸受装置200に対して状態監視装置100により測定されたエンベロープスペクトルの例を示すグラフ図である。図2において、横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸は強度(dBV)を示す。
【0026】
図2において、Taは、軸受装置200、すなわち転がり軸受201において自転滑りが生じていない場合の理論周波数を示す。Tbは、軸受装置200、すなわち転がり軸受201において公転滑りが生じていない場合の理論周波数を示す。これらの理論周波数は、軸受装置の回転動作中の回転数(回転速度)に基づいて算出される。
【0027】
Aaは、軸受装置200、すなわち転がり軸受201において自転滑りが生じている場合に測定された振動データにおいてピークが現れている周波数(以下、「ピーク周波数」)である。このピーク周波数Aaは、自転滑りの有無に応じて変動し、理論周波数Taに対応する。したがって、理論周波数Taとピーク周波数Aaとの差異Daを監視することで、自転滑りの状態を特定することができる。例えば、差異Daに対する閾値を予め規定しておき、差異Daが閾値以上となった場合に、自転滑りが発生していると判定してよい。
【0028】
また、Abは、軸受装置200、すなわち転がり軸受201において公転滑りが生じている場合に測定された振動データにおいてピークが現れているピーク周波数である。このピーク周波数Abは、公転滑りの有無に応じて変動し、理論周波数Tbに対応する。したがって、理論周波数Tbとピーク周波数Abとの差異Dbを監視することで、公転滑りの状態を特定することができる。例えば、差異Dbに対する閾値を予め規定しておき、差異Dbが閾値以上となった場合に、公転滑りが生じていると判定してよい。
【0029】
なお、ピーク周波数は、公知の手法を用いて特定してよい。このとき、理論周波数に最も近く、かつ、所定の値を超える周波数をピーク周波数としてよい。そのほか、自転滑りや公転滑りの程度や、自転や公転とは関係のない共振が発生している可能性を想定してピーク周波数を特定してもよい。例えば、理論周波数を基準として、一定の範囲内にある周波数をピーク周波数としてもよい。また、スペクトルデータの周期性により、2次以上の高調波のピーク周波数を用いて状態判定が行われてもよい。
【0030】
[処理フロー]
図3は、本実施形態に係る状態監視装置100における状態監視処理のフローチャートである。本処理は、状態監視装置100により実行され、例えば、状態監視装置100が備える制御部が本実施形態に係る処理を実現するためのプログラムを記憶部から読み出して実行することにより実現されてよい。また、本処理フローは、監視対象である軸受装置200が動作中に継続して実行されてもよいし、ユーザの指示に基づいて任意のタイミングで実行されてもよい。ここでは説明を簡単にするため、処理主体を状態監視装置100として包括的に記載する。
【0031】
S301にて、状態監視装置100は、振動センサ205を介して取得された軸受装置200の振動情報を取得する。
【0032】
S302にて、状態監視装置100は、S302にて取得した振動情報をデジタル信号へ変換する。このとき、状態監視装置100は、フィルタリング処理などの処理を併せて行ってもよい。
【0033】
S303にて、状態監視装置100は、S302にて変換された信号に対して、エンベロープ処理や周波数分析を行うことで、着目する周波数を特定する。本実施形態の場合、図2に示したように、自転滑りを判定するためのピーク周波数Aaおよび公転滑りを判定するためのピーク周波数Abを特定する。なお、監視内容に応じて、ピーク周波数Aaおよびピーク周波数Abのいずれかのみを特定してもよい。
【0034】
S304にて、状態監視装置100は、S303にて特定した各ピーク周波数に基づいて、軸受装置200の状態判定を行う。まず、状態監視装置100は、回転動作に伴って発生する振動情報に基づいて、回転軸202の回転数(回転速度)を算出する。本実施形態の場合、連結部材204の構成に起因して、回転動作に伴って発生する振動に着目して、その周期性から回転数を算出してよい。更に、状態監視装置100は、算出した回転数に基づいて、自転滑りを判定するための理論周波数Taおよび公転滑りを判定するための理論周波数Tbを算出する。理論周波数の算出式は、診断対象である軸受装置200の構成に応じて、予め規定されているものとする。更に、状態監視装置100は、理論周波数とピーク周波数の差分に基づいて、状態診断を行う。例えば、以下のように判定してよい。
Da(=|Ta-Aa|)>閾値A:自転滑り有り
Da(=|Ta-Aa|)≦閾値A:自転滑り無し
Db(=|Tb-Ab|)>閾値B:公転滑り有り
Db(=|Tb-Ab|)≦閾値B:公転滑り無し
【0035】
なお、本工程で用いられる、閾値A、閾値Bは、監視対象の構成や動作条件などに応じて、予め規定されている。また、上記の例では、滑りの有り/無しの2分類にて判定したが、理論周波数とピーク周波数の差分に応じて、より多くの分類にて判定してもよい。また、自転滑りおよび公転滑りの判定結果に基づいて、更に軸受装置200内での異常発熱やスキッディングに関する判定を行ってもよい。そのほか、転がり軸受内の転動体の内外輪の滑り、予圧課題、予圧抜け、ころのスキューによる自転数の変動、公転数の変動などに起因した転がり軸受の運転状態の判定を行ってもよい。
【0036】
S305にて、状態監視装置100は、S304における状態判定結果をユーザに対して出力する。出力方法は、特に限定するものではなく、ユーザが認識可能なように、視覚的または聴覚的に出力してもよい。例えば、滑りが発生していると判定した場合にのみ出力を行ってもよい。または、記憶部に履歴情報として記録してもよいし、外部装置(不図示)へ通知してもよい。
【0037】
以上、本実施形態により測定対象に含まれる連結部材からの振動情報に基づいて、軸受装置内の転動体周りの自転数の変動、公転数の変動の測定が可能となる。
【0038】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、第1の実施形態と重複する構成については説明を省略し、差分に着目して説明を行う。
【0039】
[装置構成]
図4は、本実施形態に係る状態監視装置100および監視対象である軸受装置400の構成例を示す概略構成図である。状態監視装置100の構成は第1の実施形態と同様である。
【0040】
監視対象である軸受装置400は、転がり軸受401、402、回転軸403、ハウジング404、および連結部材405を含んで構成される。更に、軸受装置400の周辺には、振動センサ406、407、および増幅器408、409が設置される。
【0041】
転がり軸受401、402は、回転軸403の回転に同期して回転可能な回転輪である内輪、ハウジング404に固定される固定輪である外輪、内外輪間に転動自在に配設された転動体、および、転動体を回動自在に保持する保持器を備える。本実施形態では、転がり軸受401、402のいずれも同じ構成であるものとして説明するが、別個の種類の転がり軸受であってもよい。また、転がり軸受401を監視対象とし、転がり軸受402を回転数を算出するための振動情報を取得する対象として説明する。
【0042】
回転軸403は、所定の駆動力に基づいて回転動作を行う。また、回転軸403には、回転力(例えば、トルク)を伝達するための連結部材405が連結される。ハウジング404には、転がり軸受401、402が設置される。連結部材405は、例えば、チェーンやベルト(金属ベルト、タイミングベルトなど)などから構成される。本実施形態において、連結部材405は、回転軸403の回転に伴って、一定の振動が生じるように構成される。言い換えると、連結部材405にて発生した振動が、回転軸403、更には、転がり軸受402に伝達する。また、転がり軸受402は、監視対象である転がり軸受401よりも連結部材405に近い位置に配置される。
【0043】
振動センサ406は、転がり軸受402に対向配置される。振動センサ406は、転がり軸受402周辺にて発生する振動を電気信号として検出し、増幅器408へ提供する。増幅器408は、振動センサ406にて検出された電気信号を増幅し、状態監視装置100へ入力する。また、振動センサ407は、監視対象である転がり軸受401に対向配置される。振動センサ407は、転がり軸受401周辺にて発生する振動を電気信号として検出し、増幅器409へ提供する。増幅器409は、振動センサ407にて検出された電気信号を増幅し、状態監視装置100へ入力する。したがって、転がり軸受401よりも転がり軸受402の方が、連結部材405にて生じた振動が伝達しやすいため、この振動情報を振動センサ406によってより精度良く検出するように構成される。
【0044】
本実施形態では、監視対象である転がり軸受401の状態診断を行うために、連結部材405にて生じた振動情報を、連結部材405により近い位置の転がり軸受402周辺から取得し、これを状態診断に用いる。より具体的には、連結部材405に近い転がり軸受402周辺から取得された振動情報から回転軸403の回転数(回転速度)を算出する。更に、算出された回転数と、監視対象である転がり軸受401周辺から取得された振動情報に基づくスペクトルデータとに基づいて、転がり軸受401の状態診断を行う。なお、転がり軸受401、402、回転軸403、および連結部材405は、同期して回転動作を行う。
【0045】
[検出例]
図5は、本実施形態に係る軸受装置400に対して状態監視装置100により測定されたエンベロープスペクトルの例を示すグラフ図である。図5において、横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸は強度を示す。ここでは、転がり軸受402側にて取得された振動情報に基づいて、公転数の変動を捉える例について説明する。
【0046】
図5において、Tcは、軸受装置400、すなわち転がり軸受401において公転滑りが生じていない場合の理論周波数を示す。この理論周波数は、連結部材405により近い位置に配置された転がり軸受402周辺から取得された回転数に基づいて算出される。
【0047】
Acは、軸受装置400、すなわち転がり軸受401において公転滑りが生じている場合に測定された振動データにおいてピークが現れているピーク周波数である。このピーク周波数Acは、公転滑りの有無に応じて変動し、理論周波数Tcに対応する。したがって、理論周波数Tcとピーク周波数Acとの差異Dcを監視することで、公転数の変動、すなわち、公転滑りの状態を特定することができる。例えば、差異Dcに対する閾値を予め規定しておき、差異Dbが閾値以上となった場合に、公転滑りが生じていると判定してよい。
【0048】
本実施形態では、より連結部材405に近い位置に配置された転がり軸受402周辺から得られる振動情報に基づいて回転数を算出し、この回転数に基づいて、診断対象である転がり軸受401の状態診断を行う。このとき、転がり軸受402の状態診断を併せて行ってもよい。また、図4では、2つの転がり軸受を備える軸受装置の例を示したが、同じ回転軸に3つ以上の転がり軸受が設置されている場合でも同様に処理してよい。すなわち、最も連結部材に近い転がり軸受の周辺から検出された振動情報に基づいて回転数を算出し、この回転数に基づいて各転がり軸受の状態診断を行ってもよい。
【0049】
以上、本実施形態により、監視対象の周辺における振動情報に代えて、当該監視対象と同期して回転動作を行う連結部材からの振動情報に基づいて、監視対象の状態診断を行うことが可能となる。
【0050】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、第1の実施形態と重複する構成については説明を省略し、差分に着目して説明を行う。本実施形態と第1の実施形態との差分として、監視対象の構成および振動情報の取得に係る構成が異なる。
【0051】
[装置構成]
図6は、本実施形態に係る状態監視装置100および監視対象である軸受装置600の構成例を示す概略構成図である。状態監視装置100の構成は第1の実施形態と同様である。
【0052】
監視対象である軸受装置600は、転がり軸受601、602、回転軸603、およびハウジング604を含んで構成される。更に、軸受装置600の周辺には、振動センサ605、および増幅器606が設置される。
【0053】
転がり軸受601、602は、回転軸603の回転に同期して回転可能な回転輪である内輪、ハウジング604に固定される固定輪である外輪、内外輪間に転動自在に配設された転動体、および、転動体を回動自在に保持する保持器、を備える。本実施形態では、転がり軸受601、602のいずれも同じ構成であるものとして説明するが、別個の種類の転がり軸受であってもよい。本実施形態では、転がり軸受601を監視対象とし、転がり軸受602を回転数を算出するための振動情報を取得する対象として説明する。なお、振動情報を取得する対象である転がり軸受602は、内部の隙間が小さい、軸荷重が大きい、予圧が負荷された複列軸受など、滑りが生じにくい構成であることが好ましい。
【0054】
回転軸603は、不図示の駆動部による所定の駆動力に基づいて回転動作を行う。ハウジング604には、転がり軸受601、602が設置される。
【0055】
振動センサ605は、転がり軸受602の振動情報を取得可能なように配置される。振動センサ605は、転がり軸受602にて発生する振動を電気信号として検出し、増幅器606へ提供する。増幅器606は、振動センサ605にて検出された電気信号を増幅し、状態監視装置100へ入力する。第2の実施形態の図4にて示した構成との差異としては、本実施形態に係る構成では、振動センサは1つであり、また、連結部材も含まれていない。
【0056】
本実施形態では、監視対象である転がり軸受601の状態診断を行うために、転がり軸受602にて生じた振動情報に着目し、これを状態診断に用いる。なお、転がり軸受601、602、および回転軸603は、同期して回転動作を行う。つまり、振動センサ605にて検出される振動情報は、転がり軸受601側にて発生した振動と、転がり軸受602側にて発生した振動とが含まれる。本実施形態では、それらの振動のうち、回転動作に伴って転がり軸受602側にて発生する振動の特性に着目し、回転数を算出する。
【0057】
[検出例]
図7は、本実施形態に係る軸受装置600に対して状態監視装置100により測定されたエンベロープスペクトルの例を示すグラフ図である。図7において、横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸は強度を示す。
【0058】
図7において、Tdは、転がり軸受601において自転滑りが生じていない場合の理論周波数を示す。Teは、転がり軸受601において公転滑りが生じていない場合の理論周波数を示す。これらの理論周波数は、予め特定され、記憶部等に保持されている。
【0059】
Adは、転がり軸受601において自転滑りが生じている場合に測定された振動データにおいてピークが現れているピーク周波数である。このピーク周波数Adは、自転滑りの有無に応じて変動し、理論周波数Tdに対応する。したがって、理論周波数Tdとピーク周波数Adとの差異Ddを監視することで、自転数の変動、すなわち、自転滑りの状態を特定することができる。例えば、差異Ddに対する閾値を予め規定しておき、差異Ddが閾値以上となった場合に、自転滑りが生じていると判定してよい。
【0060】
また、Aeは、転がり軸受601において公転滑りが生じている場合に測定された振動データにおいてピークが現れているピーク周波数である。このピーク周波数Aeは、公転滑りの有無に応じて変動し、理論周波数Teに対応する。したがって、理論周波数Teとピーク周波数Aeとの差異Deを監視することで、公転滑りの状態を特定することができる。例えば、差異Deに対する閾値を予め規定しておき、差異Deが閾値以上となった場合に、公転滑りが生じていると判定してよい。
【0061】
以上、本実施形態により、複数の転がり軸受を含む軸受装置において、監視対象と同期して回転動作を行う転がり軸受からの振動情報に基づいて回転数を算出した上で、当該回転数を用いて監視対象の状態診断を行うことが可能となる。
【0062】
<第4の実施形態>
以下、本発明の第4の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、第1の実施形態と重複する構成については説明を省略し、差分に着目して説明を行う。本実施形態と第1の実施形態との差分として、監視対象の構成および振動情報の取得に係る構成が異なる。
【0063】
[装置構成]
図8は、本実施形態に係る状態監視装置100および監視対象である軸受装置800の構成例を示す概略構成図である。状態監視装置100の構成は第1の実施形態と同様である。
【0064】
監視対象である軸受装置800は、転がり軸受801、802、回転軸803、およびハウジング804を含んで構成される。更に、軸受装置800の周辺には、振動センサ805、806、および増幅器807、808が設置される。
【0065】
転がり軸受801、802は、回転軸803の回転に同期して回転可能な回転輪である内輪、ハウジング804に固定される固定輪である外輪、内外輪間に転動自在に配設された転動体、および、転動体を回動自在に保持する保持器を備える。本実施形態では、転がり軸受801、802のいずれも同じ構成であるものとして説明するが、別個の種類の転がり軸受であってもよい。本実施形態では、転がり軸受601を監視対象として説明する。なお、振動情報を取得する対象である転がり軸受802は、内部の隙間が小さい、軸荷重が大きい、予圧が負荷された複列軸受など、滑りが生じにくい構成であることが好ましい。
【0066】
回転軸803は、不図示の駆動部による所定の駆動力に基づいて回転動作を行う。ハウジング804には、転がり軸受801、802が設置される。
【0067】
振動センサ805は、転がり軸受802に対向配置される。振動センサ806は、転がり軸受802周辺にて発生する振動を電気信号として検出し、増幅器807へ提供する。増幅器807は、振動センサ805にて検出された電気信号を増幅し、状態監視装置100へ入力する。また、振動センサ806は、監視対象である転がり軸受801に対向配置される。振動センサ806は、転がり軸受801周辺にて発生する振動を電気信号として検出し、増幅器808へ提供する。増幅器808は、振動センサ806にて検出された電気信号を増幅し、状態監視装置100へ入力する。第3の実施形態の図6にて示した構成との差異としては、本実施形態に係る構成では、振動センサは2つである。
【0068】
本実施形態では、監視対象である転がり軸受801の状態診断を行うために、転がり軸受802周辺から振動情報を取得し、これを状態診断に用いる。より具体的には、転がり軸受802周辺から取得された振動情報から回転軸803の回転数(回転速度)を算出する。更に、算出された回転数と、監視対象である転がり軸受801周辺から取得された振動情報に基づくスペクトルデータとに基づいて、転がり軸受801の状態診断を行う。なお、転がり軸受801、802、および回転軸803は、同期して回転動作を行う。
【0069】
[検出例]
図9は、本実施形態に係る軸受装置800に対して状態監視装置100により測定されたエンベロープスペクトルの例を示すグラフ図である。図9において、横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸は強度を示す。
【0070】
図9において、Tfは、転がり軸受801において自転滑りが生じていない場合の理論周波数を示す。Tgは、転がり軸受801において公転滑りが生じていない場合の理論周波数を示す。これらの理論周波数は、予め特定され、記憶部等に保持されている。
【0071】
Afは、転がり軸受801において自転滑りが生じている場合に測定された振動データにおいてピークが現れているピーク周波数である。このピーク周波数Afは、自転滑りの有無に応じて変動し、理論周波数Tfに対応する。したがって、理論周波数Tfとピーク周波数Afとの差異Dfを監視することで、自転数の変動、すなわり、自転滑りの状態を特定することができる。例えば、差異Dfに対する閾値を予め規定しておき、差異Dfが閾値以上となった場合に、自転滑りが生じていると判定してよい。
【0072】
また、Agは、転がり軸受601において公転滑りが生じている場合に測定された振動データにおいてピークが現れているピーク周波数である。このピーク周波数Agは、公転滑りの有無に応じて変動し、理論周波数Tgに対応する。したがって、理論周波数Tgとピーク周波数Agとの差異Dgを監視することで、公転数の変動、すなわち公転滑りの状態を特定することができる。例えば、差異Dgに対する閾値を予め規定しておき、差異Dgが閾値以上となった場合に、公転滑りが生じていると判定してよい。
【0073】
以上、本実施形態により、複数の転がり軸受を含む軸受装置において、監視対象と同期して回転動作を行う転がり軸受からの振動情報に基づいて回転数を算出した上で、当該回転数を用いて監視対象の状態診断を行うことが可能となる。
【0074】
<その他の実施形態>
上記の実施形態では、振動センサにより振動を検出して用いる例について説明した。しかし、センサおよびセンサにて検出される振動に係る情報についてはこれに限定するものではない。例えば、マイクロフォンなどの音響センサにより回転動作に伴って発生する音情報を取得し、この音情報を用いて状態監視を行ってもよい。
【0075】
また、本発明において、上述した1つ以上の実施形態の機能を実現するためのプログラムやアプリケーションを、ネットワーク又は記憶媒体等を用いてシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0076】
また、1つ以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array))によって実現してもよい。
【0077】
また、本明細書において、用語「第1」、「第2」といった表現は、他の要素と区別するために用いられているに過ぎず、特定の要素に限定して解釈することを意図するものではない。したがって、本発明を適用する際の構成等に応じてこれらの表現は適宜読み替えられてよい。
【0078】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0079】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 監視対象である第1の回転部材(例えば、転がり軸受201)と、前記第1の回転部材と同期して回転動作を行う第2の回転部材(例えば、連結部材204)とを含んで構成される軸受装置(例えば、軸受装置200)の状態監視を行う状態監視方法であって、
前記軸受装置の回転動作に伴って発生する振動に基づく信号を検出する検出工程(例えば、S301)と、
前記信号に対して周波数分析を行い、スペクトルデータを導出する導出工程(例えば、S302、S303)と、
前記信号のうち、回転動作に伴って前記第2の回転部材にて発生する振動に基づく信号を用いて、前記回転動作における回転速度を算出する算出工程(例えば、S304)と、
前記スペクトルデータのピークが現れる周波数と、前記回転速度における前記軸受装置の自転による理論周波数および公転による理論周波数の少なくとも一方とを比較し、前記軸受装置における自転および公転の変動の少なくとも一方を判定する判定工程(例えば、S304)と、
を有することを特徴とする状態監視方法。
この構成よれば、回転センサなどにより監視対象の回転数を直接測定できない場合であっても、自転数の変動、公転数の変動が測定可能となる。
【0080】
(2) 前記第1の回転部材は、転がり軸受(例えば、転がり軸受201)であり、
前記第2の回転部材は、前記回転動作にて回転する回転軸(例えば、回転軸202)に連結された連結部材(例えば、連結部材204)である、(1)に記載の状態監視方法。
この構成よれば、回転センサなどにより監視対象の回転数を直接測定できない場合であっても、監視対象に同期して回転する連結部材による振動情報に着目して回転数を算出し、これを用いて、監視対象の自転数の変動、公転数の変動が測定可能となる。
【0081】
(3) 前記連結部材は、チェーン、またはベルトである、(2)に記載の状態監視方法。
この構成によれば、監視対象に同期して回転するチェーンやベルトによる振動情報に着目して回転数を算出し、これを用いて、監視対象の自転数の変動、公転数の変動が測定可能となる。
【0082】
(4) 前記第1の回転部材は、転がり軸受(例えば、転がり軸受601、転がり軸受801)であり、
前記第2の回転部材は、転がり軸受(例えば、転がり軸受602、転がり軸受802)である、(1)に記載の状態監視方法。
この構成によれば、監視対象に同期して回転する別の転がり軸受による振動情報に着目して回転数を算出し、これを用いて、監視対象の自転数の変動、公転数の変動が測定可能となる。
【0083】
(5) 前記検出工程において、前記第1の回転部材の周辺に設置されたセンサ(例えば、振動センサ205、振動センサ605)を用いて、前記信号を検出する、請求項1に記載の状態監視方法。
この構成によれば、監視対象の状態診断を行う際に、当該監視対象周辺の振動情報を用いて、監視対象の自転数の変動、公転数の変動が測定可能となる。
【0084】
(6) 前記軸受装置は、前記第2の回転部材の近傍に、前記第1の回転部材と同期して回転動作を行う第3の回転部材(例えば、転がり軸受402)を含んで構成され、
前記検出工程において、
前記第1の回転部材の周辺に設置された第1のセンサ(例えば、振動センサ407)を用いて第1の信号を検出し、
前記第3の回転部材の周辺に設置された第2のセンサ(例えば、振動センサ406)を用いて第2の信号を検出し、
前記導出工程において、前記第1の信号を用いてスペクトルデータを導出し、
前記算出工程において、前記第2の信号を用いて、前記回転動作における回転速度を算出する、(1)に記載の状態監視方法。
この構成よれば、回転センサなどにより監視対象の回転数を直接測定できない場合であっても、回転動作に伴って振動を発生させる周辺部材の近傍に設置された回転部材を介して当該周辺部材の振動情報を検出し、これに基づいて回転数を算出して当該回転数を用いて、自転数の変動、公転数の変動が測定可能となる。
【0085】
(7) 前記検出工程において、
前記第1の回転部材の周辺に設置された第1のセンサ(例えば、振動センサ806)を用いて第1の信号を検出し、
前記第2の回転部材の周辺に設置された第2のセンサ(例えば、振動センサ805)を用いて第2の信号を検出し、
前記導出工程において、前記第1の信号を用いてスペクトルデータを導出し、
前記算出工程において、前記第2の信号を用いて、前記回転動作における回転速度を算出する、(1)に記載の状態監視方法。
この構成よれば、回転センサなどにより監視対象の回転数を直接測定できない場合であっても、監視対象と同期して回転を行い、かつ、回転動作に伴って振動を発生させる他の回転部材の振動情報を検出し、これに基づいて回転数を算出して当該回転数を用いて、自転数の変動、公転数の変動が測定可能となる。
【0086】
(8) 監視対象である第1の回転部材(例えば、転がり軸受201)と、前記第1の回転部材と同期して回転動作を行う第2の回転部材(例えば、連結部材204)とを含んで構成される軸受装置(例えば、軸受装置200)の状態監視を行う状態監視装置(例えば、状態監視装置100)であって、
前記軸受装置の回転動作に伴って発生する振動に基づく信号を検出する検出手段(例えば、振動センサ205)と、
前記信号に対して周波数分析を行い、スペクトルデータを導出する導出手段(例えば、状態監視装置100、A/変換部101、波形処理部102)と、
前記信号のうち、回転動作に伴って前記第2の回転部材にて発生する振動に基づく信号を用いて、前記回転動作における回転速度を算出する算出手段(例えば、信号処理部103)と、
前記スペクトルデータのピークが現れる周波数と、前記回転速度における前記軸受装置の自転による理論周波数および公転による理論周波数の少なくとも一方とを比較し、前記軸受装置における自転および公転の変動の少なくとも一方を判定する判定手段(例えば、監視処理部104)と、
を有することを特徴とする状態監視装置。
この構成よれば、回転センサなどにより監視対象の回転数を直接測定できない場合であっても、自転数の変動、公転数の変動が測定可能となる。
【0087】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0088】
100…状態監視装置
101…A/D変換部
102…波形処理部
103…信号処理部
104…監視処理部
200…軸受装置
201…転がり軸受
202…回転軸
203…ハウジング
204…連結部材
205…振動センサ
206…増幅器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9