(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168677
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】提案装置および提案方法
(51)【国際特許分類】
G10G 1/00 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G10G1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085553
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 亜希
【テーマコード(参考)】
5D182
【Fターム(参考)】
5D182AD05
(57)【要約】
【課題】楽曲づくりを行うユーザに対して、楽曲に適した楽器を提案すること。
【解決手段】提案装置は、ユーザにより作曲された分析対象楽曲に関する第1楽曲情報を取得する第1取得部と、分析対象楽曲の比較対象である比較対象楽曲に関する第2楽曲情報を取得する第2取得部と、第1楽曲情報と、第2楽曲情報とを比較して、分析対象楽曲と、比較対象楽曲との差異を判定する判定部と、分析対象楽曲に使用することで分析対象楽曲と、比較対象楽曲との差異が小さくなるような少なくとも1つの楽器をユーザに提案する提案部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザにより作曲された分析対象楽曲に関する第1楽曲情報を取得する第1取得部と、
前記分析対象楽曲の比較対象である比較対象楽曲に関する第2楽曲情報を取得する第2取得部と、
前記第1楽曲情報と、前記第2楽曲情報とを比較して、前記分析対象楽曲と、前記比較対象楽曲との差異を判定する判定部と、
前記分析対象楽曲に使用することで前記分析対象楽曲と、前記比較対象楽曲との差異が小さくなるような少なくとも1つの楽器を前記ユーザに提案する提案部と、
を備える、提案装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記分析対象楽曲と、前記比較対象楽曲との周波数帯域ごとのゲインの差異を判定する、
請求項1に記載の提案装置。
【請求項3】
前記提案部は、前記分析対象楽曲を構成するフレームごとに、追加または削除すべき楽器を提案する、
請求項1または2に記載の提案装置。
【請求項4】
前記比較対象楽曲は、前記分析対象楽曲と同一のジャンルの楽曲または前記ユーザにより指定された楽曲である、
請求項1または2に記載の提案装置。
【請求項5】
ユーザにより作曲された分析対象楽曲に関する第1楽曲情報を取得するステップと、
前記分析対象楽曲の比較対象である比較対象楽曲に関する第2楽曲情報を取得するステップと、
前記第1楽曲情報と、前記第2楽曲情報とを比較して、前記分析対象楽曲と、前記比較対象楽曲との差異を判定するステップと、
前記分析対象楽曲に使用することで前記分析対象楽曲と、前記比較対象楽曲との差異が小さくなるような少なくとも1つの楽器を前記ユーザに提案するステップと、
を含む、提案方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、提案装置および提案方法に関する。
【背景技術】
【0002】
楽曲を自動で生成する技術が知られている。例えば、特許文献1には、利用者の意図や嗜好に合致した楽曲を自動作曲することのできる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ユーザが自ら作曲した楽曲に何かが物足りないと感じていても、その原因を突き止めて修正することは容易ではない。そのため、ユーザが作曲した楽曲に足りない要素を提案する技術が望まれている。
【0005】
本発明は、楽曲づくりを行うユーザに対して、楽曲に適した楽器を提案することのできる提案装置および提案方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の提案装置は、ユーザにより作曲された分析対象楽曲に関する第1楽曲情報を取得する第1取得部と、前記分析対象楽曲の比較対象である比較対象楽曲に関する第2楽曲情報を取得する第2取得部と、前記第1楽曲情報と、前記第2楽曲情報とを比較して、前記分析対象楽曲と、前記比較対象楽曲との差異を判定する判定部と、前記分析対象楽曲に使用することで前記分析対象楽曲と、前記比較対象楽曲との差異が小さくなるような少なくとも1つの楽器を前記ユーザに提案する提案部と、を備える。
【0007】
本発明の提案方法は、ユーザにより作曲された分析対象楽曲に関する第1楽曲情報を取得するステップと、前記分析対象楽曲の比較対象である比較対象楽曲に関する第2楽曲情報を取得するステップと、前記第1楽曲情報と、前記第2楽曲情報とを比較して、前記分析対象楽曲と、前記比較対象楽曲との差異を判定するステップと、前記分析対象楽曲に使用することで前記分析対象楽曲と、前記比較対象楽曲との差異が小さくなるような少なくとも1つの楽器を前記ユーザに提案するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、楽曲づくりを行うユーザに対して、楽曲に適した楽器を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る提案装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る楽器の周波数帯域を説明するための図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る楽器情報の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るサンプル音源情報の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る目標音源情報の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の第1の例に係る提案装置の処理内容を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るゲイン特性の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の第2の例に係る提案装置の処理内容を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る提案装置の構成例を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る提案装置の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0011】
[第1実施形態]
(提案装置)
図1を用いて、第1実施形態に係る提案装置の構成例について説明する。
図1は、第1実施形態に係る提案装置の構成例を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、提案装置10は、入力部12と、表示部14と、音声出力部16と、記憶部18と、通信部20と、制御部22と、を備える。提案装置10は、例えば、コンピュータなどの情報処理装置である。提案装置10は、例えば、ユーザが作曲した楽曲と、比較対象となる楽曲を比較し、ユーザが作曲した楽曲に不足しているまたは過剰な楽器を提案する装置である。
【0013】
入力部12は、提案装置10に対する各種の操作を受け付ける。入力部12は、キーボード、マウス、スイッチ、ボタン、タッチパネル等で実現される。
【0014】
表示部14は、各種の画像を表示する。表示部14は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)等を含むディスプレイである。
【0015】
音声出力部16は、各種の音声を出力するスピーカである。
【0016】
記憶部18は、各種の情報を記憶している。記憶部18は、制御部22の演算内容、およびプログラム等の情報を記憶する。記憶部18は、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)等の外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。
【0017】
記憶部18は、分析対象楽曲18aと、楽器情報18bと、サンプル音源情報18cと、目標音源情報18dと、を記憶している。
【0018】
分析対象楽曲18aは、例えば、周波数特性の分析対象となる楽曲である。分析対象楽曲18aは、例えば、各種の楽器の音源で構成された楽曲であり、単一の楽器の音源を含む楽曲でもよいし、複数の楽器の音源を含む楽曲であってもよい。分析対象楽曲18aは、例えば、ボーカル音源や、効果音や、電子楽器による音源を含んでもよい。分析対象楽曲18aは、例えば、ユーザが作曲した楽曲である。分析対象楽曲18aは、例えば、クラウドサーバなどに記憶されていてもよい。分析対象楽曲18aは、第1楽曲情報の一種である。
【0019】
楽器情報18bは、各種の楽器が発する音の周波数帯域に関する情報を含む。
図2は、第1実施形態に係る楽器の周波数帯域を説明するための図である。
図2は、横軸が周波数[Hz(ヘルツ)]を示す。
図2に示すとおり、周波数が100[Hz]未満は低音域、100[Hz]以上1[kHz(キロヘルツ)]未満は中音域、1[kHz]以上は高音域である。バスドラは、例えば、低音域から中音域の音を発する。ベースは、例えば、低音域から中音域の音を発する、ピアノは、例えば、低音域から高音域の音を発する。ギターは、例えば、低音域から高音域の音を発する。スネアは、例えば、中音域から高音域の音を発する。男性ボーカルは、例えば、中音域の音声を発する。女性ボーカルは、例えば、中音域の音声を発する。ハイハットや、シンバルは、例えば、高音域の音を発する。
図2に示すように、各種の楽器はそれぞれ異なる音域の音を発し得る。
【0020】
図3は、第1実施形態に係る楽器情報の一例を示す図である。
図3に示すように、楽器情報18bは、「楽器」および「周波数帯域」といった項目を含む。楽器情報18bは、「楽器」と「周波数帯域」とが対応付けられた情報である。
【0021】
「楽器」は、楽器名を示す項目である。例えば、「楽器」には、楽器#1のように概念的に示されているが、実際には、具体的な楽器名が示される。
【0022】
「周波数帯域」は、楽器が発する音の周波数帯域を示す項目である。「周波数帯域」には、周波数帯域#1のように概念的に示されているが、実際には、具体的な周波数帯域が示される。
【0023】
楽器情報18bにおいて、例えば、楽器#1は、周波数帯域#1の音を発することを示している。楽器情報18bは、例えば、クラウドサーバなどに記憶されていてもよい。
【0024】
サンプル音源情報18cは、各種のジャンルごとの音源と周波数情報とが対応付けられた情報である。
図4は、第1実施形態に係るサンプル音源情報の一例を示す図である。
図4に示すように、サンプル音源情報18cは、「サンプル音源」および「周波数情報」といった項目を含む。サンプル音源情報18cは、「サンプル音源」と「周波数情報」とが対応付けられた情報である。また、サンプル音源情報18cとして、各種のジャンルごとの周波数情報のみからなる情報であってもよい。この場合の周波数情報は、各種のジャンルごとに統計的に算出された周波数情報であってもよいし、ユーザがジャンルごとの理想と想定する周波数情報であってもよい。サンプル音源情報18cは、第2楽曲情報の一種である。
【0025】
「サンプル音源」は、ジャンルごとの理想と想定される音源を示す。例えば、「サンプル音源」には、サンプル音源#1のように概念的に示されているが、実際には、具体的な音源データを示す。例えば、サンプル音源#1はクラシック、サンプル音源#2はバラードのように、ジャンルの異なる音源データが示される。
【0026】
「周波数情報」は、楽曲の全体に含まれる周波数ごとのゲイン特性を示す情報である。例えば、「周波数情報」には、周波数情報#A1のように概念的に示されているが、実際には、具体的な周波数ごとのゲイン特性を数値で示す情報や、周波数ごとのゲイン特性を示すスペクトル波形が示される。このことから、サンプル音源情報はユーザが目指す音楽ジャンルの理想周波数情報ともいえる。
【0027】
サンプル音源情報18cにおいて、例えば、サンプル音源#1の周波数情報は、周波数情報#A1であることを示す。サンプル音源情報18cは、例えば、クラウドサーバなどに記憶されていてもよい。
【0028】
目標音源情報18dは、ユーザが憧れている楽曲の周波数情報を示す情報である。
図5は、第1実施形態に係る目標音源情報の一例を示す図である。目標音源情報18dは、「目標音源」および「周波数情報」といった項目を含む。目標音源情報18dは、「目標音源」と「周波数情報」とが対応付けられた情報である。目標音源情報18dは、第2楽曲情報の一種である。
【0029】
「周波数情報」は、楽曲の全体に含まれる周波数ごとのゲイン特性を示す情報である。例えば、「周波数情報」には、周波数情報#B1のように概念的に示されているが、実際には、具体的な周波数ごとのゲイン特性を数値で示す情報や、周波数ごとのゲイン特性を示すスペクトル波形が示される。
【0030】
「目標音源」は、ユーザが憧れの理想とする、または目標としている音源を示す。例えば、「目標音源」には、目標音源#1のように概念的に示されているが、実際には、具体的な音源データを示す。「目標音源」は、1つであってもよいし、複数であっても、音源の一部であってもよい。目標音源が複数ある場合は、例えば、複数の目標音源からユーザが選択できるようにしてもよいし、それぞれの目標音源から一または複数の部分ずつをユーザの好みに応じて抽出できるようにしてもよい。
【0031】
目標音源情報18dにおいて、例えば、目標音源#1の周波数情報は、周波数情報#B1であることを示す。目標音源情報18dは、例えば、クラウドサーバなどに記憶されていてもよい。
【0032】
通信部20は、提案装置10と、外部装置との間の通信を実行する通信インターフェースである。通信部20は、例えば、提案装置10と、クラウドサーバとの間の通信を実行する。
【0033】
制御部22は、提案装置10の各部を制御する。制御部22は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の情報処理装置と、RAMまたはROM等の記憶装置とを有する。制御部24は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。制御部24は、ハードウェアと、ソフトウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
【0034】
制御部22は、第1取得部30と、第2取得部32と、判定部34と、提案部36と、を備える。
【0035】
第1取得部30は、分析対象楽曲に関する第1楽曲情報を取得する。第1取得部30は、例えば、ユーザにより作曲された分析対象楽曲18aを第1楽曲情報として取得する。
【0036】
第2取得部32は、分析対象楽曲の比較対象となる比較対象楽曲に関する第2楽曲情報を取得する。第2取得部32は、例えば、サンプル音源情報18cに含まれる分析対象楽曲に対応するジャンルの周波数情報を第2楽曲情報として取得する。第2取得部32は、例えば、目標音源情報18dに含まれる目標音源の周波数情報を第2楽曲情報として取得する。第2取得部32は、例えば、1つの第2楽曲情報を取得してもよいし、複数の第2楽曲情報を取得してもよい。第2取得部32は、複数の第2楽曲情報を取得した場合、取得したそれぞれの周波数情報を解析した結果に基づいて、改めて1つの第2楽曲情報としてもよい。
【0037】
判定部34は、第1取得部30が取得した第1楽曲情報と、第2取得部32が取得した第2楽曲情報とを比較する。判定部34は、第1楽曲情報および第2楽曲情報の周波数情報に対して解析処理を実行する(周波数解析処理)。判定部34は、例えば、分析対象楽曲18aと、分析対象楽曲に対応するジャンルのサンプル音源との差異を判定する。判定部34は、例えば、分析対象楽曲18aに対して周波数解析処理を実行して、楽曲全体にわたっての周波数ごとのゲインを算出する。判定部34は、例えば、分析対象楽曲18aのスペクトル波形と、サンプル音源とのスペクトル波形を比較して、周波数ごとのゲインの差異を判定する。
【0038】
判定部34は、例えば、分析対象楽曲18aと、目標音源との差異を判定してもよい。判定部34は、例えば、分析対象楽曲18aと、目標音源とのスペクトル波形を比較して、周波数ごとのゲインの差異を判定してもよい。
【0039】
判定部34は、例えば、分析対象楽曲18aと、比較対象楽曲との所定の周波数帯域のゲインの平均値をそれぞれ算出して、算出したゲインの平均値の差異を判定してもよい。判定部34は、例えば、低音域、中音域、および高音域における分析対象楽曲18aと、比較対象楽曲のゲインの平均値を算出してもよい。この場合、判定部34は、例えば、所定の周波数間隔(例えば、数百Hz)ごとのゲインの平均値の差異を判定してもよい。判定部34は、各音域で算出したゲインの平均値に基づいて、どの音域に差異のピークがあるのかを判定し、判定した結果を可視化して表示部14に表示させるようにしてもよい。
【0040】
提案部36は、分析対象楽曲18aと、比較対象楽曲とのゲインの差異に基づいて、分析対象楽曲18aに使用することでゲインの差異が小さくなるような少なくも1つの楽器をユーザに提案する。提案部36は、例えば、ある周波数帯域で分析対象楽曲18aのゲインが比較対象楽曲のゲインに比べて小さい場合には、ゲインを大きくするような楽器を追加するように提案する。提案部36は、例えば、ある周波数帯域で分析対象楽曲18aのゲインが比較対象楽曲のゲインに比べて大きい場合には、ゲインを小さくするように楽器を削除することを提案する。提案部36は、例えば、分析対象楽曲18aに使用することで、比較対象楽曲とゲインが一致するような少なくとも1つの楽器を提案してもよい。
【0041】
提案部36は、例えば、分析対象楽曲18aの全体にわたって追加または削除する楽器を提案してもよい。提案部36は、例えば、分析対象楽曲18aを構成する複数のフレームごとに、追加または削除する楽器を提案してもよい。
【0042】
提案部36は、例えば、ある周波数帯域で分析対象楽曲18aのゲインが比較対象楽曲のゲインに比べて小さい場合には、現在の楽曲で使用している楽器をゲインの大きい楽器に置き換えることを提案してもよい。提案部36は、例えば、ある周波数帯域で分析対象楽曲18aのゲインが比較対象楽曲のゲインに比べて大きい場合には、現在の楽曲で使用している楽器をゲインの小さい楽器に置き換えることを提案してもよい。
【0043】
提案部36は、例えば、ある周波数帯域で分析対象楽曲18aのゲインが比較対象楽曲のゲインに比べて小さい場合には、現在の楽曲で使用している楽器の音を強調してゲインを大きくするように提案してもよい。提案部36は、例えば、ある周波数帯域で分析対象楽曲18aのゲインが比較対象楽曲のゲインに比べて大きい場合には、現在の楽曲で使用している楽器の音を弱めてゲインを小さくするように提案してもよい。提案部36は、楽曲制作におけるミックス工程またはマスタリング工程の分析対象楽曲18aに対して比較対象楽曲と周波数帯域ごとに比較した結果に基づいて、周波数帯域ごとのゲインを調整するように提案してもよい。
【0044】
(処理内容)
図6を用いて、第1実施形態の第1の例に係る提案装置の処理内容について説明する。
図6は、第1実施形態の第1の例に係る提案装置の処理内容を示すフローチャートである。
【0045】
図6に示す処理は、ユーザが作曲した分析対象楽曲18aと、ユーザが憧れている比較対象楽曲との比較結果に基づいて、楽器を提案する処理を示している。
【0046】
第1取得部30は、第1楽曲情報を取得する(ステップS10)。具体的には、第1取得部30は、例えば、ユーザが作曲した楽曲である分析対象楽曲18aを記憶部18から取得する。そして、ステップS12に進む。
【0047】
第2取得部32は、第2楽曲情報を取得する(ステップS12)。具体的には、第2取得部32は、例えば、ユーザが憧れている楽曲である比較対象楽曲を示す目標音源情報18dを記憶部18から取得する。そして、ステップS14に進む。
【0048】
判定部34は、周波数解析を実行する(ステップS14)。具体的には、判定部34は、例えば、分析対象楽曲18aに対して周波数解析を実行し、ゲイン特性を算出する。判定部34は、例えば、目標音源に対して周波数解析を実行し、ゲイン特性を算出してもよい。そして、ステップS16に進む。
【0049】
判定部34は、分析対象楽曲18aおよび比較対象楽曲のゲイン特性をグラフ化する(ステップS16)。
図7は、第1実施形態に係るゲイン特性の一例を示す図である。
図7は横軸が周波数[Hz]を示し、縦軸がゲイン[dB]を示す。実線の波形101は、分析対象楽曲18aのスペクトル波形である。点線の波形102は、比較対象楽曲のスペクトル波形を示す。
【0050】
判定部34は、分析対象楽曲18aのゲイン特性と、比較対象楽曲のゲイン特性とを比較する(ステップS18)。具体的には、判定部34は、
図7に示すように、波形101と、波形102との一致度合いを判定する。
図7に示す例では、判定部34は、周波数帯域110においては、分析対象楽曲18aのゲインが比較対象楽曲のゲインよりも小さいと判定する。判定部34は、周波数帯域に111においては、分析対象楽曲18aにはこの周波数帯域の音が含まれていないが、比較対象楽曲にはこの周波数帯域の音が含まれていると判定する。判定部34は、周波数帯域112においては、分析対象楽曲18aのゲインが比較対象楽曲のゲインよりも大きいと判定する。判定部34は、周波数帯域110、周波数帯域111、および周波数帯域112以外の周波数帯域については、分析対象楽曲18aのゲインと、比較対象楽曲のゲインとはほぼ一致すると判定する。このように、判定部34は、波形101と、波形102との一致度合いを周波数帯域ごとに判定する。そして、ステップS20に進む。
【0051】
判定部34は、分析対象楽曲18aのゲイン特性と、比較対象楽曲のゲイン特性との比較結果に応じた楽器を判定する(ステップS22)。具体的には、判定部34は、楽器情報18bに基づいて、分析対象楽曲18aに追加または置き換えるべき楽器を判定する。判定部34は、例えば、周波数帯域110においては、分析対象楽曲18aのゲインが不足しているので、楽器情報18bに基づいて、波形101が波形102と一致するような追加または現状の楽器から置き換えるべき楽器を判定する。判定部34は、例えば、周波数帯域111においては、分析対象楽曲18aに周波数帯域111の音が含まれていないので、楽器情報18bに基づいて、波形101が波形102と一致するような追加すべき楽器を判定する。判定部34は、例えば、周波数帯域112においては、分析対象楽曲18aのゲインが過剰なので、楽器情報18bに基づいて、波形101が波形102と一致するような現状の楽器から置き換えるべき楽器を判定する。そして、ステップS22に進む。
【0052】
提案部36は、判定部34により判定された楽器をユーザに提案する(ステップS22)。例えば、提案部36は、判定部34により判定された楽器を表示部14に表示させる。そして、
図6の処理を終了する。
【0053】
図8を用いて、第1実施形態の第2の例に係る提案装置の処理内容について説明する。
図8は、第1実施形態の第2の例に係る提案装置の処理内容を示すフローチャートである。
【0054】
図8に示す処理は、ユーザが作曲した分析対象楽曲18aと、分析対象楽曲18aのジャンルの理想とするサンプル音源との比較結果に基づいて、楽器を提案する処理を示している。
【0055】
ステップS30の処理は、
図6に示すステップS10の処理と同じなので、説明を省略する。
【0056】
判定部34は、分析対象楽曲18aのジャンルを判定する(ステップS32)。例えば、判定部34は、分析対象楽曲18aに周波数解析を実行し、解析結果に基づいて、分析対象楽曲18aのジャンルを判定する。例えば、ユーザは、入力部12を介して、分析対象楽曲18aのジャンルを設定してもよい。そして、ステップS34に進む。
【0057】
第2取得部32は、第2楽曲情報を取得する(ステップS34)。具体的には、第2取得部32は、分析対象楽曲18aのジャンルに応じたサンプル音源に関するサンプル音源情報18cを記憶部18から取得する。そして、ステップS36に進む。
【0058】
ステップS36からステップS44の処理は、それぞれ、
図6に示すステップS14からステップS22の処理と同じなので、説明を省略する。
【0059】
上述のとおり、第1実施形態は、ユーザが作曲した楽曲と、比較対象の楽曲とを比較して、ユーザが作曲した楽曲のゲイン特性が比較対象楽曲のゲイン特性と一致するような楽器を提案する。これにより、第1実施形態は、ユーザは自身の想像を超えた新しい楽器の重なりをイメージすることができるようになるので、より広い視野をもって楽曲制作に望むことができるようになる。
【0060】
[第2実施形態]
図9を用いて、第2実施形態に係る提案装置の構成例について説明する。
図9は、第2実施形態に係る提案装置の構成例を示すブロック図である。
【0061】
図9に示すように、提案装置10Aは、制御部22Aが第3取得部38と、推奨部40とを備える点で、
図1に示す提案装置10と異なる。提案装置10Aは、複数の音源をミックスする際に、調整箇所を推奨することのできる装置である。
【0062】
第3取得部38は、ユーザが作曲した楽曲に使用される複数の楽器の音源に関する音源情報を取得する。第3取得部38が取得する音源情報は、ミックスするために使用される音源情報である。ユーザにより作曲された複数の楽器の音源に関する音源情報は、記憶部18に記憶されていてもよいし、クラウドサーバなどに記憶されていてもよい。
【0063】
推奨部40は、第3取得部38が取得した音源において、調整が必要な箇所を推奨する。推奨部40の詳細は、後述する。
【0064】
(処理内容)
図10を用いて、第2実施形態に係る提案装置の処理内容について説明する。
図10は、第2実施形態に係る提案装置の処理内容を示すフローチャートである。
【0065】
第3取得部38は、ミックスするための複数の音源情報を取得する(ステップS50)。例えば、第3取得部38は、複数の楽器の音源情報を取得する。第3取得部38が取得する音源情報の数に制限はない。そして、ステップS52に進む。
【0066】
判定部34Aは、複数の音源のそれぞれについて、トラックごとにゲインの最大値と、ゲインが最大値となる周波数とを特定する(ステップS52)。そして、ステップS54に進む。
【0067】
判定部34Aは、ある音源のゲインの最大値を示す周波数に近い周波数に、所定以上のゲインを示す他の音源があるか否かを判定する(ステップS54)。所定以上のゲインを示す他の音源とは、ゲインの最大値を示す音源のノイズとなり得る音源をいう。提案部36は、ユーザが判定部34Aによる判定結果を時間軸上で把握できるように、判定結果を可視化して表示部14に表示させるようにしてもよい。所定以上のゲインを示す他の音源があると判定された場合(ステップS54;Yes)、ステップS56に進む。所定以上のゲインを示す他の音源があると判定されない場合(ステップS54;No)、
図10の処理を終了する。
【0068】
ステップS54でYesと判定された場合、推奨部40は、第3取得部38が取得した音源において、調整箇所を推奨する(ステップS56)。具体的には、推奨部40は、ステップS54で所定以上のゲインを示すと判定された他の音源を調整が必要な箇所として推奨する。そして、
図10の処理を終了する。
【0069】
上述のとおり、第2実施形態は、複数の音源をミックスする際に、音源の調整が必要な箇所をユーザに推奨することができる。また、第2実施形態は、複数の音源をミックスした後(マスタリング工程)においても、同様の処理を実行することにより音源の調整が必要な箇所をユーザに推奨することができる。これにより、第2実施形態は、ユーザはより適切に楽曲を作成することができる。
【0070】
図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。なお、この分散・統合による構成は動的に行われてもよい。
【0071】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
10 提案装置
12 入力部
14 表示部
16 音声出力部
18 記憶部
18a 分析対象楽曲
18b 楽器情報
18c サンプル音源情報
18d 目標音源情報
20 通信部
22 制御部
30 第1取得部
32 第2取得部
34 判定部
36 提案部
38 第3取得部
40 推奨部