(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168692
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】抵抗溶接機
(51)【国際特許分類】
B23K 11/24 20060101AFI20241128BHJP
B23K 11/14 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B23K11/24 338
B23K11/14 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085574
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】591026056
【氏名又は名称】株式会社ヤマダスポット
(74)【代理人】
【識別番号】100097700
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 恒則
(72)【発明者】
【氏名】山田 末男
(57)【要約】
【課題】ワークの母材への溶着の沈み量を検出できるようにした抵抗溶接機を提供する。
【解決手段】ガイドピン付き下部電極7上に母材19及び溶接用突起付きワークW1を載置し、上部電極16を降下させ、上下電極16,7間に通電してワークを母材19に溶着する抵抗溶接機であって、下部電極7上の母材19上にワークW1をセットした際の高さh1を計測し、通電して溶着後の高さh2を計測してワークの沈み量h1-h2を検出する検出器を備えてなる。溶着後の沈み量の測定は最も沈んだ時点の値を計測するようにする。沈み量は0.01mmの分解能で計測するようにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドピン付き下部電極上に母材及び溶接用突起付きワークを載置し、上部電極を降下させ、上下電極間に通電してワークを母材に溶着する抵抗溶接機であって、下部電極上の母材上にワークをセットした際の高さを計測し、通電して溶着後の高さを計測してワークの沈み量を検出する検出器を備えてなることを特徴とする抵抗溶接機。
【請求項2】
溶着後の沈み量の測定は最も沈んだ時点の値を計測する請求項1に記載の抵抗溶接機。
【請求項3】
沈み量は0.01mmの分解能で計測する請求項1又は2に記載の抵抗溶接機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母材にナット、ボルト等の小物部品を溶着する抵抗溶接機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下面に溶着用の突起を有するワーク、例えばナットを母材に溶着する際は、該ナットを、その突起が母材に当接するように上下の向きを決めて母材に載置する必要がある。近年では、省力化を図ったり生産性を高めるために、ワークをパーツフィーダで母材に供給するようにしている。該パーツフィーダはワークの向きが正常となるように配慮されているものの、何らかの原因で上下の向きが反転されて母材に載置されることがある。
ところで、従来の抵抗溶接機として特許文献1があった。即ち、母材に載置されたワークに上部電極を当接させて該ワークの高さを計測する高さ計測部と、空気供給源から供給された圧縮空気を前記上部電極の軸心部から前記ワークに向けて噴出する空気噴出路と、該空気噴出路の圧力を検知する圧力センサとを設け、前記高さ計測部及び圧力センサのデータを入力して前記電極への通電の「要・否」を判定する判定部を設け、判定部で「要」と判定された際にのみ電極に通電するものである。
【0003】
前記従来のものは、母材に載置されたワークの高さが異なっていたり、反転載置あるいは位置ずれした際に、該ワークの溶着を阻止することができる。
また、マイコン制御により、通電の電流値や通電時間が設定範囲内にあるか否かを判別する制御は従来から行われている。
しかし、抵抗溶接機(スポット溶接機)において、ワークを母材に溶着した際のワークの沈み量(溶着用突起の沈み量)を検出する装置は従来存在しなかった。
装置の故障等何らかの原因により、ワークの溶着の沈み量が不十分であると溶着強度が不足し剥がれ等を引き起こし不良品となる。一方、ワークの溶着の沈み量が過度であると、ワークがナットの場合、ナットのネジ山がつぶれてボルトをねじ込み困難となる不具合を来す。
このため、溶着の沈み量には適正な範囲があり、これを検出できる装置が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、ワークの母材への溶着の沈み量を検出できるようにした抵抗溶接機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る抵抗溶接機は、ガイドピン付き下部電極上に母材及び溶接用突起付きワークを載置し、上部電極を降下させ、上下電極間に通電してワークを母材に溶着する抵抗溶接機であって、下部電極上の母材上にワークをセットした際の高さを計測し、通電して溶着後の高さを計測してワークの沈み量を検出する検出器を備えてなること、を特徴としている。
請求項2に係る発明は、溶着後の沈み量の測定は最も沈んだ時点の値を計測するようにしたものである。
請求項3に係る発明は、沈み量は0.01mmの分解能で計測するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、下部電極上の母材上にワークをセットした際の高さを計測し、通電して溶着後の高さを計測してワークの沈み量を検出する検出器を備えてなるので、適正な沈み量の範囲にあるか否かの検出が可能となり、溶着不良による不良品の検出が容易になる。
請求項2に係る発明によれば、溶着後の沈み量の測定は最も沈んだ時点の値を計測するようにしたので、正確な沈み量の計測が可能となる。
請求項3に係る発明によれば、沈み量は0.01mmの分解能で計測するようにしたので、溶着の沈み量が適正な範囲にあるか否かの検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】下部電極上に載置した母材及びワークに上部電極を降下させ通電して母材上にワークを溶着させる様子を示す要部拡大説明図である。
【
図3】沈み量の検出器と上部電極との連動の様子を示す要部正面図である。
【
図4】溶着後の計測タイミングを検出する測定器の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1において、1は抵抗溶接機(スポット溶接機)であり、機台2に上部アーム3と下部アーム4とを上下に離間させて正面方向(
図1において左方)に突出固定し、下部アーム4の先端部に下部クランプ5を介して棒状の下部電極ホルダ6を挟持固定し、該下部電極ホルダ6の上部に下部電極7を取り付ける。該下部電極7の上部軸心部に、先端が円錐状の頂部を有するガイドピン8を出没可能に取り付けるとともに、該ガイドピン8をバネ(図示せず)により上方に向けて突出付勢する。
【0010】
前記上部アーム3の先端部にシリンダ10を下方に向けて取付けるとともに、そのロッド11を上部アーム3から下方に突出させ、該ロッド11の下端部に支持具12を介して上部クランプ13を固定し、該上部クランプ13に棒状の上部電極ホルダ15を上下に向けて固定し、該上部電極ホルダ15の下端部に上部電極16を前記下部電極7と対向させて固定する。
【0011】
図1において、符号18はフットスイッチである。該フットスイッチ18を踏むことによって前記抵抗溶接機1を作動させ、各電極16,7間に配置した母材19とワーク(被固着物)Wとの溶着作業が簡便に行えるようになっている。なお、抵抗溶接機1を自動運転する場合は前記フットスイッチ18を省略する。
符号20は制御タイマーであり、溶接条件、例えば、母材とワークの種類に応じて設定される電流値、通電時間等を設定する。
また、符号21は、溶着の沈み量を検出する検出器である(上部アーム3の左側面に取り付けてある)。符号22は検出器21の下端部から下方に延びる磁気センサー付きのレールで、
図3に示すように、ブラケット23を介してロッド11下端部の支持具12に固定してある。上部電極16(上部電極ホルダー15)がシリンダ10によって上下動されると、これと同期してレール22も上下動することになり、これにより、ワークの高さを計測する。
図において、Wは母材19に溶着されるワークであり、本例ではナットとする。
【0012】
図2(a)は,下部電極7上に母材19及びワーク(ナット)W1を載置した様子を示し、下部電極7上に出没可能に突出したガイドピン8を母材19に形成した所定の穴に挿通し、該ガイドピン8にワークたる溶着用突起(溶着足)L1を有するナットW1を載置してセットする。次に、同図(b)に示すように、上部電極16を降下させて、上部電極16をナットW1に当接させる。この時の母材19上のナットW1の高さh1を計測する。次いで、上下電極16,7間に通電し、母材19上にナットW2を溶着して固定する。この溶着後のナットW2の高さh2を計測して、溶着による沈み量h1-h2を検出する(同図(c))。なお、溶着後の溶着足を符号L2で示してある。
その沈み量h1-h2が所定の範囲内であれば、溶着良好となり、次の作業に進める(同図(d))。一方、沈み量h1-h2が所定の範囲外の場合は、溶着不良となり、異常ランプとブザーで報知する。
【0013】
溶着後の高さの計測のタイミングは、最も沈みこんだ時点(溶着が最も進んだ時点)の高さh2を計測する。この最も沈みこんだ時点の検出は、
図4に示すようなマイコン電子測定器24により行う。このマイコン電子測定器24は、固定用チューブ25を介して下部電極側の金属板26に固定して取り付けてあり、その信号はケーブル27を介して沈み量検出器21側に送られる。このように、溶着後の沈み量の測定を最も沈んだ時点の値を計測するようにして、正確な沈み量を計測できるようにしてある。
【0014】
高さの計測は、0.01mmの分解能を有する測定器、例えば磁気センサー測定器により行う。0.01mm単位で計測できるので、各種の条件に対応して適正な範囲の沈み量であるか否かの計測が可能となる。レール22の上下の移動量を検出器21内に収容した磁気センサーにより計測する。溶着の前後の高さを計測して沈み量h1-h2を測定する。
【0015】
スポット溶接機1が何らかの原因で通電異常を引き起こし溶着が不十分となり、溶着不良を発生して剥がれ等が起きたりすることがある。本発明によれば、溶着前後の溶着の沈み量を検出することにより、このような溶着不良を検出して不良品の流出を未然に防止することができる。
電極の汚れ、ワークのサビ、塵や埃の付着等により電流が正常に流れない場合、溶着不良となり、不良品の流出を防止できる。
最近の母材の材料は、ハイテン材(高張力鋼)、メッキ鋼鈑等、溶着し難い材質の材料であることも多くなってきている。このような場合でも溶着足(溶接用突起)の沈み量を検出することで、不良品の流出を防ぐことができる。
このように、種々の原因による溶着不良を検出して、不良品の流出を防止することができる。たとい通電の電流値や通電時間が設定範囲内にあったとしても、何らかの原因により溶着の沈み量が適正範囲外となることもあり得る。そうした場合でも、本発明によれば、異常を検知して不良品の流出を防止することができることになる。
【符号の説明】
【0016】
1 抵抗溶接機(スポット溶接機)
2 機台
3 上部アーム
4 下部アーム
5 下部クランプ
6 下部電極ホルダ
7 下部電極
8 ガイドピン
10 シリンダ
11 ロッド
12 支持具
13 上部クランプ
15 上部電極ホルダ
16 上部電極
18 フットスイッチ
19 母材
20 制御タイマー
21 検出器
22 レール
23 ブラケット
24 マイコン電子測定器
25 固定用チューブ
26 下部電極側の金属板
27 ケーブル
h1 溶着前のワークの高さ
h2 溶着後のワークの高さ
L1 溶着前の突起(溶着足)
L2 溶着後の突起(溶着足)
W ワーク(ナット)
W1 溶着前のワーク(ナット)
W2 溶着後のワーク(ナット)