特開 2024-168693 回転電機のステータ、及び電動圧縮機

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024168693

(43)【公開日】2024-12-05

(54)【発明の名称】回転電機のステータ、及び電動圧縮機

(51)【国際特許分類】

   H02K 3/34 20060101AFI20241128BHJP

   F04D 29/00 20060101ALI20241128BHJP

【ＦＩ】

H02K3/34 C

F04D29/00 B

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023085575

(22)【出願日】2023-05-24

(71)【出願人】

【識別番号】000003218

【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機

(74)【代理人】

【識別番号】100105957

【弁理士】

【氏名又は名称】恩田 誠

(74)【代理人】

【識別番号】100068755

【弁理士】

【氏名又は名称】恩田 博宣

(72)【発明者】

【氏名】鈴木 希幸

(72)【発明者】

【氏名】吉村 友彦

【テーマコード（参考）】

3H130

5H604

【Ｆターム（参考）】

3H130AA13

3H130AB07

3H130AB27

3H130AB47

3H130AB62

3H130AB65

3H130AB69

3H130AC03

3H130AC13

3H130BA32H

3H130BA66H

3H130DA02Z

3H130DB01Z

3H130DB13Z

3H130DD01Z

3H130DF08Z

3H130EA07A

3H130EA07E

3H130EA07G

3H130EA07H

5H604BB01

5H604BB14

5H604CC01

5H604CC05

5H604CC15

5H604CC16

5H604PB03

(57)【要約】

【課題】漏れ磁束に伴うコイルの渦電流の発生を抑制すること。
【解決手段】絶縁部材７５は、ティース６５におけるティース側面７１と鍔面７２との境界部７３よりもヨーク６４の径方向外側にコイル５７が配置された状態でコイル５７を支持している。このため、鍔面７２上にコイル５７の一部が存在しない。したがって、ヨーク６４の内周面からヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７同士の間を通過してティース６５の鍔部６７に向けて流れる漏れ磁束φ１が発生しても、漏れ磁束φ１がコイル５７の一部を流れてしまうことが抑制されている。
【選択図】図４

【特許請求の範囲】

【請求項1】

円筒状のヨーク、及び前記ヨークの内周面から延びる複数のティースを有し、前記ヨークの周方向で隣り合うティースの間にスロットが形成されているステータコアと、
前記各ティースに巻線が前記スロットを通過しながら集中巻きで巻回されることにより形成されるコイルと、を備え、
前記ティースは、
前記ヨークの内周面から延びるティース延在部と、
前記ティース延在部の先端から前記ヨークの周方向の両側に突出する一対の鍔部と、を有している回転電機のステータであって、
前記ティース延在部は、前記周方向に位置するとともに前記スロットを区画するティース側面を有し、
前記鍔部は、前記ティース側面から前記鍔部の先端まで延びるとともに前記スロットを区画する鍔面を有し、
前記スロット内には、前記ティースにおける前記ティース側面と前記鍔面との境界部よりも前記ヨークの径方向外側に前記コイルが配置された状態で前記コイルを支持する絶縁部材が配置されていることを特徴とする回転電機のステータ。

【請求項2】

前記絶縁部材は、
前記スロット内において前記周方向で隣り合うコイルの一方を支持する第１コイル支持面と、
前記スロット内において前記周方向で隣り合うコイルの他方を支持する第２コイル支持面と、を有し、
前記第１コイル支持面及び前記第２コイル支持面は、前記境界部から互いに接近しながら前記ヨークの内周面に向けて延びていることを特徴とする請求項１に記載の回転電機のステータ。

【請求項3】

前記絶縁部材は、前記第１コイル支持面と前記第２コイル支持面とを前記ヨークの内周面側において接続する外周端部を有し、
前記スロット内における前記外周端部に対する前記ヨークの径方向外側に位置するクリアランスは、前記巻線の外径よりも小さいことを特徴とする請求項２に記載の回転電機のステータ。

【請求項4】

回転軸と、
前記回転軸を回転させる回転電機と、
前記回転電機を収容するハウジングと、
前記回転軸の回転に伴って駆動して流体を圧縮する圧縮機構と、を備え、
前記回転電機は、ステータを備え、
前記ステータは、
円筒状のヨーク、及び前記ヨークの内周面から延びる複数のティースを有し、前記ヨークの周方向で隣り合うティースの間にスロットが形成されているステータコアと、
前記各ティースに巻線が前記スロットを通過しながら集中巻きで巻回されることにより形成されるコイルと、を備え、
前記ティースは、
前記ヨークの内周面から延びるティース延在部と、
前記ティース延在部の先端から前記ヨークの周方向の両側に突出する一対の鍔部と、を有している電動圧縮機であって、
前記ティース延在部は、前記周方向に位置するとともに前記スロットを区画するティース側面を有し、
前記鍔部は、前記ティース側面から前記鍔部の先端まで延びるとともに前記スロットを区画する鍔面を有し、
前記スロット内には、前記ティースにおける前記ティース側面と前記鍔面との境界部よりも前記ヨークの径方向外側に前記コイルが配置された状態で前記コイルを支持する絶縁部材が配置されていることを特徴とする電動圧縮機。

【請求項5】

前記回転軸を回転可能に支持する軸受を備え、
前記ハウジングは、前記軸受を保持する筒状の軸受保持部を有し、
前記ステータは、前記コイルの一部であるとともに前記ステータコアの端面から突出するコイルエンドを備え、
前記軸受保持部は、前記コイルエンドの内側に突出していることを特徴とする請求項４に記載の電動圧縮機。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、回転電機のステータ、及び電動圧縮機に関する。

【背景技術】

【0002】

電動圧縮機は、回転軸と、回転電機と、ハウジングと、圧縮機構と、を備えている。回転電機は、回転軸を回転させる。ハウジングは、回転電機を収容する。圧縮機構は、回転軸の回転に伴って駆動する。圧縮機構は、流体を圧縮する。回転電機は、ステータを備えている。

【0003】

例えば特許文献１に開示されているように、回転電機のステータは、ステータコアと、コイルと、を備えている。ステータコアは、円筒状のヨーク、及び複数のティースを有している。複数のティースは、ヨークの内周面から延びている。そして、ステータコアには、ヨークの周方向で隣り合うティースの間にスロットが形成されている。コイルは、各ティースに巻線がスロットを通過しながら集中巻きで巻回されることにより形成されている。ティースは、ティース延在部と、一対の鍔部と、を有している。ティース延在部は、ヨークの内周面から延びている。一対の鍔部は、ティース延在部の先端からヨークの周方向の両側に突出している。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０１９－１２６２５１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

ところで、このような回転電機のステータにおいては、ヨークの内周面からヨークの周方向で隣り合うコイル同士の間を通過してティースの各鍔部に向けて流れる漏れ磁束が発生する場合がある。このとき、例えば、各鍔部におけるスロットを区画する面である鍔面上にコイルの一部が存在すると、ヨークの内周面からヨークの周方向で隣り合うコイル同士の間を通過してティースの鍔部に向けて流れる漏れ磁束が、鍔面上に存在するコイルを流れる場合がある。すると、鍔面上に存在するコイルに渦電流が発生するため、鍔面上に存在するコイルが発熱してしまう。このようにコイルが発熱すると、回転電機の出力が低下してしまう。したがって、漏れ磁束に伴うコイルの渦電流の発生を抑制することが望まれている。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上記課題を解決する回転電機のステータは、円筒状のヨーク、及び前記ヨークの内周面から延びる複数のティースを有し、前記ヨークの周方向で隣り合うティースの間にスロットが形成されているステータコアと、前記各ティースに巻線が前記スロットを通過しながら集中巻きで巻回されることにより形成されるコイルと、を備え、前記ティースは、前記ヨークの内周面から延びるティース延在部と、前記ティース延在部の先端から前記ヨークの周方向の両側に突出する一対の鍔部と、を有している回転電機のステータであって、前記ティース延在部は、前記周方向に位置するとともに前記スロットを区画するティース側面を有し、前記鍔部は、前記ティース側面から前記鍔部の先端まで延びるとともに前記スロットを区画する鍔面を有し、前記スロット内には、前記ティースにおける前記ティース側面と前記鍔面との境界部よりも前記ヨークの径方向外側に前記コイルが配置された状態で前記コイルを支持する絶縁部材が配置されている。

【0007】

これによれば、絶縁部材が、ティースにおけるティース側面と鍔面との境界部よりもヨークの径方向外側にコイルが配置された状態でコイルを支持しているため、鍔面上にコイルの一部が存在しない。したがって、ヨークの内周面からヨークの周方向で隣り合うコイル同士の間を通過してティースの鍔部に向けて流れる漏れ磁束が発生しても、漏れ磁束がコイルの一部を流れてしまうことを抑制することができる。その結果、漏れ磁束に伴うコイルの渦電流の発生を抑制することができる。

【0008】

上記回転電機のステータにおいて、前記絶縁部材は、前記スロット内において前記周方向で隣り合うコイルの一方を支持する第１コイル支持面と、前記スロット内において前記周方向で隣り合うコイルの他方を支持する第２コイル支持面と、を有し、前記第１コイル支持面及び前記第２コイル支持面は、前記境界部から互いに接近しながら前記ヨークの内周面に向けて延びているとよい。

【0009】

これによれば、第１コイル支持面及び第２コイル支持面が、ティース側面と鍔面との境界部から互いに接近しながらヨークの内周面に向けて延びている。このため、スロット内に配置されるコイルの配置スペースを極力確保しつつも、ヨークの内周面からヨークの周方向で隣り合うコイル同士の間を通過してティースの鍔部に向けて流れる漏れ磁束がコイルを流れることを抑制することができる。

【0010】

上記回転電機のステータにおいて、前記絶縁部材は、前記第１コイル支持面と前記第２コイル支持面とを前記ヨークの内周面側において接続する外周端部を有し、前記スロット内における前記外周端部に対する前記ヨークの径方向外側に位置するクリアランスは、前記巻線の外径よりも小さいとよい。

【0011】

スロット内における絶縁部材の外周端部に対するヨークの径方向外側に位置するクリアランスが極力小さくなるまで第１コイル支持面及び第２コイル支持面を延ばすことにより、絶縁部材が、スロット内において周方向で隣り合うコイル同士の絶縁を確保し易くなる。しかしながら、例えば、スロット内において、絶縁部材の外周端部に対するヨークの径方向外側にクリアランスが存在しない設計にすると、絶縁部材をスロット内に配置する作業が困難となる虞がある。一方で、スロット内における絶縁部材の外周端部に対するヨークの径方向外側に位置するクリアランスを確保し過ぎると、スロット内においてヨークの周方向で隣り合うコイルの巻線がクリアランスを通過し得る。すると、スロット内においてヨークの周方向で隣り合うコイル同士の絶縁が確保できない虞がある。そこで、スロット内における絶縁部材の外周端部に対するヨークの径方向外側に位置するクリアランスを、巻線の外径よりも小さくした。これによれば、スロット内においてヨークの周方向で隣り合うコイルの巻線がクリアランスを通過することが無い。したがって、スロット内においてヨークの周方向で隣り合うコイル同士の絶縁を確保しつつも、漏れ磁束に伴うコイルの渦電流の発生を抑制することができる。

【0012】

上記課題を解決する電動圧縮機は、回転軸と、前記回転軸を回転させる回転電機と、前記回転電機を収容するハウジングと、前記回転軸の回転に伴って駆動して流体を圧縮する圧縮機構と、を備え、前記回転電機は、ステータを備え、前記ステータは、円筒状のヨーク、及び前記ヨークの内周面から延びる複数のティースを有し、前記ヨークの周方向で隣り合うティースの間にスロットが形成されているステータコアと、前記各ティースに巻線が前記スロットを通過しながら集中巻きで巻回されることにより形成されるコイルと、を備え、前記ティースは、前記ヨークの内周面から延びるティース延在部と、前記ティース延在部の先端から前記ヨークの周方向の両側に突出する一対の鍔部と、を有している電動圧縮機であって、前記ティース延在部は、前記周方向に位置するとともに前記スロットを区画するティース側面を有し、前記鍔部は、前記ティース側面から前記鍔部の先端まで延びるとともに前記スロットを区画する鍔面を有し、前記スロット内には、前記ティースにおける前記ティース側面と前記鍔面との境界部よりも前記ヨークの径方向外側に前記コイルが配置された状態で前記コイルを支持する絶縁部材が配置されている。これによれば、漏れ磁束に伴うコイルの渦電流の発生が抑制された電動圧縮機を提供することができる。

【0013】

上記電動圧縮機において、前記回転軸を回転可能に支持する軸受を備え、前記ハウジングは、前記軸受を保持する筒状の軸受保持部を有し、前記ステータは、前記コイルの一部であるとともに前記ステータコアの端面から突出するコイルエンドを備え、前記軸受保持部は、前記コイルエンドの内側に突出しているとよい。

【0014】

これによれば、絶縁部材が、ティースにおけるティース側面と鍔面との境界部よりもヨークの径方向外側にコイルが配置された状態でコイルを支持している。よって、鍔面上にコイルの一部が存在しないため、鍔面上を通過してステータコアの端面から突出するコイルエンドが存在しない。したがって、スロット内における鍔面上の部分に対して、軸受保持部の一部が回転軸の軸方向で対向するように軸受保持部をコイルエンドの内側に突出させることが可能となる。よって、軸受保持部をコイルエンドの内側に配置し易くすることができるため、電動圧縮機における回転軸の軸方向に体格を小型化し易くすることができる。

【発明の効果】

【0015】

この発明によれば、漏れ磁束に伴うコイルの渦電流の発生を抑制することができる。

【図面の簡単な説明】

【0016】

【図1】図１は、実施形態における電動圧縮機の断面図である。

【図2】図２は、ステータの斜視図である。

【図3】図３は、ステータの断面図である。

【図4】図４は、ステータの一部分を拡大して示す断面図である。

【図5】図５は、ステータの一部分を拡大して示す断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0017】

以下、回転電機のステータ、及び電動圧縮機を具体化した一実施形態を図１～図５にしたがって説明する。本実施形態の回転電機のステータは、電動圧縮機の一部を構成している。電動圧縮機は、燃料電池車に搭載される遠心式の圧縮機である。電動圧縮機は、流体としての空気を圧縮する。

【0018】

＜電動圧縮機の基本構成＞
図１に示すように、電動圧縮機１０は、回転電機１１と、ハウジング１２と、を備えている。ハウジング１２は、モータハウジング１３と、第１コンプレッサハウジング１４、第２コンプレッサハウジング１５、第１プレート１６、第２プレート１７、及び第３プレート１８を有している。モータハウジング１３、第１コンプレッサハウジング１４、第２コンプレッサハウジング１５、第１プレート１６、第２プレート１７、及び第３プレート１８は、金属材料製である。モータハウジング１３、第１コンプレッサハウジング１４、第２コンプレッサハウジング１５、第１プレート１６、第２プレート１７、及び第３プレート１８は、例えば、アルミニウム製である。

【0019】

モータハウジング１３は、端壁１３ａ、及び周壁１３ｂを有している。端壁１３ａは、例えば、円板状である。周壁１３ｂは、端壁１３ａの外周部から円筒状に延びている。周壁１３ｂには、冷却水通路１３ｃが形成されている。モータハウジング１３の周壁１３ｂは、冷却水通路１３ｃを流れる冷却水によって冷却されている。

【0020】

第１プレート１６は、例えば、円板状である。第１プレート１６は、モータハウジング１３の周壁１３ｂの開口を閉塞している。そして、モータハウジング１３と第１プレート１６とによって、モータ室２５が区画されている。したがって、ハウジング１２は、モータ室２５を区画する。モータ室２５は、回転電機１１を収容する。したがって、ハウジング１２は、回転電機１１を収容する。

【0021】

ハウジング１２は、軸受保持部としての第１軸受保持部２６を有している。第１軸受保持部２６は、第１プレート１６の中央部からモータ室２５内に突出している。第１軸受保持部２６は、円筒状である。第１軸受保持部２６の軸線は、周壁１３ｂの軸線に一致している。第１軸受保持部２６の内側は、第１プレート１６を貫通して第１プレート１６におけるモータハウジング１３とは反対側に位置する端面に開口している。

【0022】

ハウジング１２は、軸受保持部としての第２軸受保持部２７を有している。第２軸受保持部２７は、モータハウジング１３の端壁１３ａの中央部からモータ室２５内に突出している。第２軸受保持部２７は、円筒状である。第２軸受保持部２７の軸線は、周壁１３ｂの軸線に一致している。したがって、第１軸受保持部２６の軸線と第２軸受保持部２７の軸線とは一致している。第２軸受保持部２７の内側は、モータハウジング１３の端壁１３ａを貫通して端壁１３ａにおける周壁１３ｂとは反対側に位置する端面に開口している。

【0023】

第２プレート１７は、第１プレート１６におけるモータハウジング１３とは反対側に位置する端面に連結されている。第２プレート１７は、第２プレート１７の厚み方向が第１プレート１６の厚み方向に一致した状態で、第１プレート１６に取り付けられている。

【0024】

第２プレート１７には、第１挿通孔１７ｈが形成されている。第１挿通孔１７ｈは、第２プレート１７の中央部を貫通している。第１挿通孔１７ｈは、第１軸受保持部２６の内側に連通している。第１挿通孔１７ｈの軸線は、第１軸受保持部２６の軸線に一致している。

【0025】

第３プレート１８は、モータハウジング１３の端壁１３ａにおける周壁１３ｂとは反対側に位置する端面に連結されている。第３プレート１８は、第３プレート１８の厚み方向がモータハウジング１３の端壁１３ａの厚み方向に一致した状態で、モータハウジング１３の端壁１３ａに取り付けられている。

【0026】

第３プレート１８には、第２挿通孔１８ｈが形成されている。第２挿通孔１８ｈは、第３プレート１８の中央部を貫通している。第２挿通孔１８ｈは、第２軸受保持部２７の内側に連通している。第２挿通孔１８ｈの軸線は、第２軸受保持部２７の軸線に一致している。

【0027】

第１コンプレッサハウジング１４は、空気が吸入される円孔状の第１吸入口３５を有する筒状である。第１コンプレッサハウジング１４は、第１吸入口３５の軸線が、第１挿通孔１７ｈの軸線と一致した状態で第２プレート１７における第１プレート１６とは反対側に位置する端面に連結されている。第１吸入口３５は、第１コンプレッサハウジング１４における第２プレート１７とは反対側に位置する端面に開口している。第１吸入口３５には、図示しないエアクリーナによって清浄化された空気が流れる。

【0028】

電動圧縮機１０は、第１インペラ室３６、第１吐出室３７、及び第１ディフューザ流路３８を備えている。第１インペラ室３６、第１吐出室３７、及び第１ディフューザ流路３８は、第１コンプレッサハウジング１４と第２プレート１７との間に形成されている。第１インペラ室３６は、第１吸入口３５に連通している。第１吐出室３７は、第１インペラ室３６の周囲で第１吸入口３５の軸心周りに延びている。第１ディフューザ流路３８は、第１インペラ室３６と第１吐出室３７とを連通している。第１インペラ室３６は、第１挿通孔１７ｈに連通している。

【0029】

電動圧縮機１０は、第１吐出通路３９を有している。第１吐出通路３９は、第１コンプレッサハウジング１４に形成されている。第１吐出通路３９の第１端は、第１吐出室３７に連通している。第１吐出通路３９の第２端は、第１コンプレッサハウジング１４の外周面に開口している。

【0030】

第２コンプレッサハウジング１５は、空気が吸入される円孔状の第２吸入口４０を有する筒状である。第２コンプレッサハウジング１５は、第２吸入口４０の軸線が、第２挿通孔１８ｈの軸線と一致した状態で第３プレート１８におけるモータハウジング１３とは反対側に位置する端面に連結されている。第２吸入口４０は、第２コンプレッサハウジング１５における第３プレート１８とは反対側に位置する端面に開口している。

【0031】

電動圧縮機１０は、第２インペラ室４１、第２吐出室４２、及び第２ディフューザ流路４３を備えている。第２インペラ室４１、第２吐出室４２、及び第２ディフューザ流路４３は、第２コンプレッサハウジング１５と第３プレート１８との間に形成されている。第２インペラ室４１は、第２吸入口４０に連通している。第２吐出室４２は、第２インペラ室４１の周囲で第２吸入口４０の軸心周りに延びている。第２ディフューザ流路４３は、第２インペラ室４１と第２吐出室４２とを連通している。第２インペラ室４１は、第２挿通孔１８ｈに連通している。

【0032】

電動圧縮機１０は、第２吐出通路４４を有している。第２吐出通路４４は、第２コンプレッサハウジング１５に形成されている。第２吐出通路４４の第１端は、第２吐出室４２に連通している。第２吐出通路４４の第２端は、第２コンプレッサハウジング１５の外周面に開口している。

【0033】

第２吐出通路４４には、供給配管４５が接続されている。供給配管４５は、燃料電池スタック４６に接続されている。供給配管４５の第１端は、第２吐出通路４４に接続されている。供給配管４５の第２端は、燃料電池スタック４６に接続されている。

【0034】

電動圧縮機１０は、接続配管４７を備えている。接続配管４７の第１端は、第１吐出通路３９に連通している。接続配管４７の第２端は、第２吸入口４０に連通している。接続配管４７内には、第１吐出室３７から第１吐出通路３９に吐出された空気が流れる。そして、接続配管４７内を通過した空気は、第２吸入口４０を介して第２インペラ室４１に吸入される。

【0035】

電動圧縮機１０は、回転軸５０を備えている。回転軸５０は、回転軸５０の軸線と周壁１３ｂの軸線とが一致した状態で、モータ室２５内を横切っている。回転軸５０の軸方向の一端である第１端は、モータ室２５内から第１軸受保持部２６の内側及び第１挿通孔１７ｈを通過して第１インペラ室３６内に突出している。回転軸５０の軸方向の他端である第２端は、モータ室２５内から第２軸受保持部２７の内側及び第２挿通孔１８ｈを通過して第２インペラ室４１内に突出している。

【0036】

電動圧縮機１０は、第１インペラ５１及び第２インペラ５２を備えている。第１インペラ５１は、回転軸５０の第１端に連結されている。第１インペラ５１は、第１インペラ室３６に収容されている。したがって、第１インペラ室３６は、第１インペラ５１を収容する。第１インペラ５１は、第１インペラ室３６内に吸入された空気を圧縮するために回転軸５０と一体に回転する。

【0037】

第２インペラ５２は、回転軸５０の第２端に連結されている。第２インペラ５２は、第２インペラ室４１に収容されている。したがって、第２インペラ室４１は、第２インペラ５２を収容する。第２インペラ５２は、第２インペラ室４１内に吸入された空気を圧縮するために回転軸５０と一体に回転する。第２インペラ５２は、第１インペラ５１によって圧縮された後の空気を圧縮するために回転する。

【0038】

このように、第１インペラ５１及び第２インペラ５２は、回転軸５０と一体に回転する。そして、第１インペラ５１及び第２インペラ５２は、回転軸５０の回転に伴って駆動して空気を圧縮する圧縮機構を構成している。

【0039】

回転電機１１は、ロータ５３と、ステータ５４と、を備えている。ロータ５３は、回転軸５０に固定されている。ロータ５３は、回転軸５０に固定された円筒状のロータコア５５と、ロータコア５５に設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。ロータ５３は、回転軸５０と一体に回転する。

【0040】

ステータ５４は、ハウジング１２に固定されている。ステータ５４は、ロータ５３の外側に配置されている。ステータ５４は、円筒状のステータコア５６と、コイル５７と、を備えている。

【0041】

ステータコア５６は、モータハウジング１３の周壁１３ｂの内周面に固定されている。ステータコア５６は、第１端面５６ａと、第２端面５６ｂと、を有している。第１端面５６ａは、ステータコア５６における軸方向の一方に位置する端面である。第２端面５６ｂは、ステータコア５６における軸方向の他方に位置する端面である。ステータコア５６は、第１端面５６ａが第１プレート１６に対して回転軸５０の軸方向で対向するとともに、第２端面５６ｂがモータハウジング１３の端壁１３ａに対して回転軸５０の軸方向で対向した状態で、モータ室２５内に配置されている。

【0042】

コイル５７は、ステータコア５６に巻回されている。ステータ５４は、コイルエンドである第１コイルエンド５７ａ及び第２コイルエンド５７ｂを備えている。第１コイルエンド５７ａ及び第２コイルエンド５７ｂは、コイル５７の一部である。第１コイルエンド５７ａは、ステータコア５６の端面である第１端面５６ａから第１プレート１６に向けて突出している。第１軸受保持部２６は、第１コイルエンド５７ａの内側に突出している。第２コイルエンド５７ｂは、ステータコア５６の端面である第２端面５６ｂからモータハウジング１３の端壁１３ａに向けて突出している。第２軸受保持部２７は、第２コイルエンド５７ｂの内側に突出している。

【0043】

回転軸５０は、図示しないバッテリからコイル５７に電流が流れることによって、ロータ５３と一体に回転する。したがって、回転電機１１は、回転軸５０を回転させる。
電動圧縮機１０は、第１軸受３３及び第２軸受３４を備えている。第１軸受３３は円筒状である。第１軸受３３は、動圧滑り軸受である。第１軸受３３は、第１軸受保持部２６に保持されている。したがって、第１軸受保持部２６は、第１軸受３３を保持する。第１軸受３３は、回転軸５０を第１プレート１６に対して回転可能に支持する。したがって、第１軸受３３は、回転軸５０を回転可能に支持する軸受である。

【0044】

第２軸受３４は円筒状である。第２軸受３４は、動圧滑り軸受である。第２軸受３４は、第２軸受保持部２７に保持されている。したがって、第２軸受保持部２７は、第２軸受３４を保持する。第２軸受３４は、回転軸５０をモータハウジング１３の端壁１３ａに対して回転可能に支持する。したがって、第２軸受３４は、回転軸５０を回転可能に支持する軸受である。このように、回転軸５０は、第１軸受３３及び第２軸受３４を介してハウジング１２に回転可能に支持されている。

【0045】

電動圧縮機１０は、第１シール部材５８を備えている。第１シール部材５８は、第１挿通孔１７ｈと回転軸５０との間に設けられている。第１シール部材５８は、第１インペラ室３６から第１挿通孔１７ｈ及び第１軸受保持部２６の内側を介してモータ室２５内に向かう空気の洩れを抑制する。第１シール部材５８は、例えば、シールリングである。

【0046】

電動圧縮機１０は、第２シール部材５９を備えている。第２シール部材５９は、第２挿通孔１８ｈと回転軸５０との間に設けられている。第２シール部材５９は、第２インペラ室４１から第２挿通孔１８ｈ及び第２軸受保持部２７の内側を介してモータ室２５内に向かう空気の洩れを抑制する。第２シール部材５９は、例えば、シールリングである。

【0047】

第１吸入口３５を介して第１インペラ室３６に吸入された空気は、第１インペラ５１の回転によって加速されながら、第１ディフューザ流路３８に送り込まれて、第１ディフューザ流路３８を通過することにより昇圧される。そして、第１ディフューザ流路３８を通過した空気は、第１吐出室３７に吐出される。第１吐出室３７に吐出された空気は、第１吐出通路３９に吐出される。第１吐出通路３９に吐出された空気は、接続配管４７及び第２吸入口４０を介して第２インペラ室４１に吸入される。第２インペラ室４１に吸入された空気は、第２インペラ５２の回転によって加速されながら、第２ディフューザ流路４３に送り込まれて、第２ディフューザ流路４３を通過することにより昇圧される。そして、第２ディフューザ流路４３を通過した空気は、第２吐出室４２に吐出される。第２吐出室４２に吐出された空気は、第２吐出通路４４に吐出される。第２吐出通路４４に吐出された空気は、供給配管４５を介して燃料電池スタック４６に供給される。したがって、電動圧縮機１０は、燃料電池スタック４６に対して空気を供給する。燃料電池スタック４６に供給された空気に含まれる酸素は、燃料電池スタック４６の発電に寄与する。

【0048】

電動圧縮機１０は、導入通路６０を備えている。導入通路６０は、第２プレート１７に形成されている。導入通路６０の第１端は、第２プレート１７の外周面に開口している。導入通路６０の第２端は、第１挿通孔１７ｈにおける第１シール部材５８よりもモータ室２５寄りの部分に連通している。

【0049】

電動圧縮機１０は、排出通路６１を備えている。排出通路６１は、第３プレート１８に形成されている。排出通路６１の第１端は、第２挿通孔１８ｈにおける第２シール部材５９よりもモータ室２５寄りの部分に連通している。排出通路６１の第２端は、第３プレート１８の外周面に開口している。

【0050】

導入通路６０の第１端には、分岐配管６２が接続されている。分岐配管６２は、供給配管４５の途中から分岐されている。分岐配管６２の第１端は、供給配管４５に接続されている。分岐配管６２の第２端は、導入通路６０の第１端に接続されている。分岐配管６２の途中には、インタークーラ６３が設けられている。インタークーラ６３は、分岐配管６２内を流れる空気を冷却する。

【0051】

供給配管４５を流れる空気の一部は、分岐配管６２に流れ込む。分岐配管６２を流れる空気は、インタークーラ６３によって冷却される。これにより、インタークーラ６３を通過した空気は、第２吐出室４２に吐出された空気の温度よりも低い温度となる。そして、インタークーラ６３によって冷却された空気は、導入通路６０、第１挿通孔１７ｈ、及び第１軸受保持部２６の内側を通過してモータ室２５内へ導入される。

【0052】

第１軸受３３は、第１軸受保持部２６の内側を通過する空気によって冷却される。回転電機１１は、モータ室２５内に導入された空気によって冷却される。モータ室２５内に導入された空気は、ステータ５４とロータ５３との間を通過して、第２軸受保持部２７の内側を流れる。第２軸受３４は、第２軸受保持部２７の内側を通過する空気によって冷却される。そして、第２軸受保持部２７の内側を通過した空気は、第２挿通孔１８ｈ及び排出通路６１を介して外部へ排出される。

【0053】

＜ステータ＞
図２及び図３に示すように、ステータコア５６は、円筒状のヨーク６４、及び複数のティース６５を有している。各ティース６５は、ヨーク６４の内周面から延びている。複数のティース６５は、ヨーク６４の周方向に間隔を置いて配置されている。詳細には、複数のティース６５は、ヨーク６４の周方向に等間隔置きに配置されている。各ティース６５は、ヨーク６４の内周面からステータコア５６の軸線Ｌ１に向けて延びている。各ティース６５におけるヨーク６４とは反対側の面である先端面は、弧状に湾曲する円弧面である。各ティース６５の先端面は、同心円上に位置している。

【0054】

ステータコア５６の軸方向に位置するヨーク６４の両端面は平坦面状である。ステータコア５６の軸方向に位置する各ティース６５の両端面は平坦面状である。ステータコア５６の軸方向におけるヨーク６４の長さとステータコア５６の軸方向における各ティース６５の長さとは同じである。ヨーク６４の各端面及び各ティース６５の各端面は同一平面上に位置している。ヨーク６４の両端面の一方及び各ティース６５の両端面の一方は、ステータコア５６の第１端面５６ａを形成するとともに、ヨーク６４の両端面の他方及び各ティース６５の両端面の他方は、ステータコア５６の第２端面５６ｂを形成している。

【0055】

図３に示すように、各ティース６５は、ティース延在部６６と、一対の鍔部６７と、を有している。ティース延在部６６は、ヨーク６４の内周面から延びている。したがって、ティース延在部６６は、ティース６５におけるヨーク６４の内周面から延在する部位である。一対の鍔部６７は、ティース延在部６６におけるヨーク６４とは反対側の端に位置する先端からヨーク６４の周方向の両側に突出している。

【0056】

ステータコア５６には、ヨーク６４の周方向で隣り合うティース６５の間にスロット６８が形成されている。ヨーク６４の周方向で隣り合う鍔部６７同士の隙間であるスロットオープン６９は、スロット６８に連通している。スロットオープン６９は、ヨーク６４の周方向で隣り合う鍔部６７におけるティース延在部６６からの延在方向の先端同士の間の空間である。コイル５７は、各ティース６５に巻線７０がスロット６８を通過しながら集中巻きで巻回されることにより形成されている。したがって、コイル５７の一部は、スロット６８の内部に位置している。

【0057】

図４に示すように、ティース延在部６６は、一対のティース側面７１を有している。各ティース側面７１は、ティース延在部６６におけるヨーク６４の周方向の両側にそれぞれ位置している。各ティース側面７１は、ヨーク６４の内周面に連続している。各ティース側面７１は、各スロット６８を区画する。各鍔部６７は、鍔面７２を有している。各鍔面７２は、ティース側面７１におけるヨーク６４の内周面とは反対側の端部に連続している。ティース側面７１におけるヨーク６４の内周面とは反対側の端部は、ティース６５におけるティース側面７１と鍔面７２との境界部７３でもある。言い換えると、鍔面７２における鍔部６７の先端とは反対側の端部は、ティース６５におけるティース側面７１と鍔面７２との境界部７３でもある。各鍔面７２は、ティース側面７１から鍔部６７の先端まで延びている。各鍔面７２は、境界部７３から弧状に湾曲しながら延びた後、鍔部６７の先端まで平坦面状に延びている。各鍔面７２は、各スロット６８を区画する。スロット６８は、ヨーク６４の内周面の一部、ティース側面７１、及び鍔面７２によって画定される空間である。

【0058】

ステータ５４は、スロット絶縁シート７４を備えている。スロット絶縁シート７４は、各スロット６８内に挿入されている。スロット絶縁シート７４は、コイル５７とステータコア５６との間に配置されている。スロット絶縁シート７４は、各スロット６８内に位置するコイル５７の部分とステータコア５６とを絶縁する。スロット絶縁シート７４は、細長帯状のシートを短手方向に沿って略Ｕ字状に湾曲させた形状である。スロット絶縁シート７４は、その長手方向がステータコア５６の軸方向に一致した状態でスロット６８に挿入されている。スロット絶縁シート７４は、スロット６８を形成するヨーク６４の内周面の一部、ティース側面７１、及び鍔面７２に沿って延びている。スロット絶縁シート７４は、ステータコア５６の軸方向の第１端から第２端にかけて延びている。

【0059】

＜絶縁部材＞
図２及び図３に示すように、各スロット６８内には、絶縁部材７５が配置されている。絶縁部材７５は、三角柱状である。絶縁部材７５は、樹脂製である。絶縁部材７５は、スロット６８内においてヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７同士の間に配置されている。絶縁部材７５は、スロット６８内においてヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７同士の間を絶縁している。絶縁部材７５は、絶縁部材７５の長手方向がステータコア５６の軸方向に一致した状態で、スロット６８内に配置されている。絶縁部材７５の長手方向の両側に位置する両端部は、ステータコア５６の第１端面５６ａ及び第２端面５６ｂそれぞれから突出している。したがって、絶縁部材７５の長手方向の長さは、ステータコア５６の軸方向の長さよりも長い。

【0060】

図４に示すように、絶縁部材７５は、第１コイル支持面７６と、第２コイル支持面７７と、支持面７８と、外周端部７９と、を有している。第１コイル支持面７６は、スロット６８内においてヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７の一方側に位置する面である。第２コイル支持面７７は、スロット６８内においてヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７の他方側に位置する面である。

【0061】

第１コイル支持面７６は、スロット６８内においてヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７の一方を支持する。第１コイル支持面７６は、スロット６８内においてヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７の一方に接触している。第２コイル支持面７７は、スロット６８内においてヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７の他方を支持する。第２コイル支持面７７は、スロット６８内においてヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７の他方に接触している。

【0062】

なお、以下の説明では、スロット６８内においてヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７の一方を、単に「第１コイル５７Ａ」と記載する場合もある。また、スロット６８内においてヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７の他方を、単に「第２コイル５７Ｂ」と記載する場合もある。

【0063】

第１コイル支持面７６は、ティース６５の境界部７３よりもヨーク６４の径方向外側に第１コイル５７Ａが配置された状態で第１コイル５７Ａを支持する。第２コイル支持面７７は、ティース６５の境界部７３よりもヨーク６４の径方向外側に第２コイル５７Ｂが配置された状態で第２コイル５７Ｂを支持する。したがって、絶縁部材７５は、ティース６５の境界部７３よりもヨーク６４の径方向外側にコイル５７が配置された状態でコイル５７を支持する。

【0064】

第１コイル支持面７６及び第２コイル支持面７７は、互いに接近する方向に凹む円弧状に延びる湾曲面である。第１コイル支持面７６及び第２コイル支持面７７は、各々に対応するコイル５７の巻線７０が巻回されているティース６５の境界部７３から互いに接近しながらヨーク６４の内周面に向けて延びている。

【0065】

支持面７８は、第１コイル支持面７６におけるヨーク６４の内周面とは反対側に位置する端部と第２コイル支持面７７におけるヨーク６４の内周面とは反対側に位置する端部とを接続している。支持面７８の一部分は、鍔面７２に沿って延びている。支持面７８は、スロットオープン６９を跨ぐようにスロット６８内で延びている。支持面７８は、スロットオープン６９をスロット６８側から閉塞している。したがって、支持面７８の一部は、スロットオープン６９の内側に臨んでいる。支持面７８は、スロット絶縁シート７４を介して各鍔部６７に支持されている。したがって、絶縁部材７５は、各鍔部６７に支持されている。これにより、第１コイル支持面７６によって第１コイル５７Ａがヨーク６４の径方向外側に向けて押し付けられるとともに、第２コイル支持面７７によって第２コイル５７Ｂがヨーク６４の径方向外側に向けて押し付けられている。

【0066】

図５に示すように、絶縁部材７５の外周端部７９は、第１コイル支持面７６と第２コイル支持面７７とをヨーク６４の内周面側において接続している。絶縁部材７５の外周端部７９は、第１コイル支持面７６におけるヨーク６４の内周面側に位置する端部と第２コイル支持面７７におけるヨーク６４の内周面側に位置する端部とを接続している。外周端部７９は、絶縁部材７５における支持面７８とは反対側に位置する尖端部である。外周端部７９は、スロット絶縁シート７４から離間している。したがって、外周端部７９とスロット絶縁シート７４との間には、クリアランス８０が形成されている。クリアランス８０は、スロット６８内における外周端部７９に対するヨーク６４の径方向外側に位置する。クリアランス８０は、巻線７０の外径Ｄ１よりも小さい。

【0067】

図４に示すように、第１軸受保持部２６及び第２軸受保持部２７の一部は、スロット６８内における鍔面７２上の部分に対して、回転軸５０の軸方向で対向している。第１軸受保持部２６は、スロット６８内における鍔面７２上の部分に対して、第１軸受保持部２６の一部が回転軸５０の軸方向で対向するように第１コイルエンド５７ａの内側に突出している。第２軸受保持部２７は、スロット６８内における鍔面７２上の部分に対して、第２軸受保持部２７の一部が回転軸５０の軸方向で対向するように第２コイルエンド５７ｂの内側に突出している。

【0068】

［実施形態の作用］
次に、実施形態の作用について説明する。
コイル５７から生じる熱は、例えば、ティース６５及びヨーク６４を介してモータハウジング１３の周壁１３ｂに伝達される。ここで、モータハウジング１３の周壁１３ｂは、冷却水通路１３ｃを流れる冷却水によって冷却されている。したがって、コイル５７から生じる熱は、ティース６５及びヨーク６４を介してモータハウジング１３の周壁１３ｂに効率良く放熱される。

【0069】

図４において矢印で示すように、このような回転電機１１のステータ５４においては、ヨーク６４の内周面からヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７同士の間を通過してティース６５の各鍔部６７に向けて流れる漏れ磁束φ１が発生する場合がある。このとき、例えば、各鍔部６７の鍔面７２上にコイル５７の一部が存在すると、ヨーク６４の内周面からヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７同士の間を通過して鍔部６７に向けて流れる漏れ磁束φ１が、鍔面７２上に存在するコイル５７を流れる場合がある。また、図４において矢印で示すように、ロータ５３の回転位置によっては、スロットオープン６９を跨いでヨーク６４の周方向で隣り合う鍔部６７の一方から他方へ流れる漏れ磁束φ２が発生する場合がある。このとき、例えば、各鍔部６７の鍔面７２上にコイル５７の一部が存在すると、スロットオープン６９を跨いでヨーク６４の周方向で隣り合う鍔部６７の一方から他方へ流れる漏れ磁束φ２が、鍔面７２上に存在するコイル５７を流れる場合がある。すると、鍔面７２上に存在するコイル５７に渦電流が発生するため、鍔面７２上に存在するコイル５７が発熱してしまう。このようにコイル５７が発熱すると、回転電機１１の出力が低下してしまう。

【0070】

そこで、絶縁部材７５が、ティース６５の境界部７３よりもヨーク６４の径方向外側にコイル５７が配置された状態でコイル５７を支持している。このため、鍔面７２上にコイル５７の一部が存在しない。したがって、ヨーク６４の内周面からヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７同士の間を通過して鍔部６７に向けて流れる漏れ磁束φ１が発生しても、漏れ磁束φ１がコイル５７の一部を流れてしまうことが抑制されている。また、スロットオープン６９を跨いでヨーク６４の周方向で隣り合う鍔部６７の一方から他方へ流れる漏れ磁束φ２が発生しても、漏れ磁束φ２がコイル５７の一部を流れてしまうことが抑制されている。その結果、漏れ磁束φ１，φ２に伴うコイル５７の渦電流の発生が抑制されている。

【0071】

［実施形態の効果］
実施形態では以下の効果を得ることができる。
（１）絶縁部材７５が、ティース６５におけるティース側面７１と鍔面７２との境界部７３よりもヨーク６４の径方向外側にコイル５７が配置された状態でコイル５７を支持しているため、鍔面７２上にコイル５７の一部が存在しない。したがって、ヨーク６４の内周面からヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７同士の間を通過してティース６５の鍔部６７に向けて流れる漏れ磁束φ１が発生しても、漏れ磁束φ１がコイル５７の一部を流れてしまうことを抑制することができる。その結果、漏れ磁束φ１に伴うコイル５７の渦電流の発生を抑制することができる。

【0072】

（２）第１コイル支持面７６及び第２コイル支持面７７が、ティース側面７１と鍔面７２との境界部７３から互いに接近しながらヨーク６４の内周面に向けて延びている。このため、スロット６８内に配置されるコイル５７の配置スペースを極力確保しつつも、ヨーク６４の内周面からヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７同士の間を通過して鍔部６７に向けて流れる漏れ磁束φ１がコイル５７を流れることを抑制することができる。

【0073】

（３）スロット６８内における絶縁部材７５の外周端部７９に対するヨーク６４の径方向外側に位置するクリアランス８０が極力小さくなるまで第１コイル支持面７６及び第２コイル支持面７７を延ばすことが考えられる。そうすることにより、絶縁部材７５が、スロット６８内において周方向で隣り合うコイル５７同士の絶縁を確保し易くなる。しかしながら、例えば、スロット６８内において、絶縁部材７５の外周端部７９に対するヨーク６４の径方向外側にクリアランス８０が存在しない設計にすると、絶縁部材７５をスロット６８内に配置する作業が困難となる虞がある。一方で、スロット６８内における絶縁部材７５の外周端部７９に対するヨーク６４の径方向外側に位置するクリアランス８０を確保し過ぎると、スロット６８内においてヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７の巻線７０がクリアランス８０を通過し得る。すると、スロット６８内においてヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７同士の絶縁が確保できない虞がある。そこで、スロット６８内における絶縁部材７５の外周端部７９に対するヨーク６４の径方向外側に位置するクリアランス８０を、巻線７０の外径Ｄ１よりも小さくした。これによれば、スロット６８内においてヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７の巻線７０がクリアランス８０を通過することが無い。したがって、スロット６８内においてヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７同士の絶縁を確保しつつも、漏れ磁束φ１に伴うコイル５７の渦電流の発生を抑制することができる。

【0074】

（４）絶縁部材７５が、ティース６５におけるティース側面７１と鍔面７２との境界部７３よりもヨーク６４の径方向外側にコイル５７が配置された状態でコイル５７を支持している。よって、鍔面７２上にコイル５７の一部が存在しないため、鍔面７２上を通過してステータコア５６の端面から突出する第１コイルエンド５７ａ又は第２コイルエンド５７ｂが存在しない。したがって、スロット６８内における鍔面７２上の部分に対して、第１軸受保持部２６の一部が回転軸５０の軸方向で対向するように第１軸受保持部２６を第１コイルエンド５７ａの内側に突出させることが可能となる。また、スロット６８内における鍔面７２上の部分に対して、第２軸受保持部２７の一部が回転軸５０の軸方向で対向するように第２軸受保持部２７を第２コイルエンド５７ｂの内側に突出させることが可能となる。よって、第１軸受保持部２６を第１コイルエンド５７ａの内側に配置し易くすることができるとともに、第２軸受保持部２７を第２コイルエンド５７ｂの内側に配置し易くすることができる。このため、電動圧縮機１０における回転軸５０の軸方向に体格を小型化し易くすることができる。

【0075】

（５）絶縁部材７５は、各鍔部６７に支持されている。よって、第１コイル支持面７６によって第１コイル５７Ａがヨーク６４の径方向外側に向けて押し付けられるとともに、第２コイル支持面７７によって第２コイル５７Ｂがヨーク６４の径方向外側に向けて押し付けられている。これによれば、第１コイル５７Ａを形成する巻線７０及び第２コイル５７Ｂを形成する巻線７０が密着するため、第１コイル５７Ａ及び第２コイル５７Ｂそれぞれの放熱性を向上させることができる。また、第１コイル５７Ａを形成する巻線７０及び第２コイル５７Ｂを形成する巻線７０が密着することにより、コイル５７の占積率を向上させることができる。

【0076】

（６）絶縁部材７５が、ティース６５におけるティース側面７１と鍔面７２との境界部７３よりもヨーク６４の径方向外側にコイル５７が配置された状態でコイル５７を支持しているため、鍔面７２上にコイル５７の一部が存在しない。したがって、スロットオープン６９を跨いでヨーク６４の周方向で隣り合う鍔部６７の一方から他方へ流れる漏れ磁束φ２が発生しても、漏れ磁束φ２がコイル５７の一部を流れてしまうことを抑制することができる。その結果、漏れ磁束φ２に伴うコイル５７の渦電流の発生を抑制することができる。

【0077】

［変更例］
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。

【0078】

○ 実施形態において、絶縁部材７５は、第１コイル支持面７６及び第２コイル支持面７７が、各々に対応するコイル５７の巻線７０が巻回されているティース６５の境界部７３から互いに接近しながらヨーク６４の内周面に向けて延びていない構成であってもよい。要は、絶縁部材７５は、ティース６５の境界部７３よりもヨーク６４の径方向外側にコイル５７が配置された状態でコイル５７を支持することが可能な構成であればよい。

【0079】

○ 実施形態において、絶縁部材７５の外周端部７９がスロット絶縁シート７４に接触していてもよい。絶縁部材７５の外周端部７９に対するヨーク６４の径方向外側にクリアランス８０が存在しない構成であってもよい。

【0080】

○ 実施形態において、スロット６８内における絶縁部材７５の外周端部７９に対するヨーク６４の径方向外側に位置するクリアランス８０が、巻線７０の外径Ｄ１以上であってもよい。

【0081】

○ 実施形態において、第１コイル支持面７６及び第２コイル支持面７７は、湾曲面でなくてもよく、例えば、階段状に形成されていてもよい。要は、第１コイル支持面７６及び第２コイル支持面７７は、各々に対応するコイル５７の巻線７０が巻回されているティース６５の境界部７３から互いに接近しながらヨーク６４の内周面に向けて延びていればよい。

【0082】

○ 実施形態において、絶縁部材７５は、三角柱状でなくてもよい。要は、絶縁部材７５は、ティース６５の境界部７３よりもヨーク６４の径方向外側にコイル５７が配置された状態でコイル５７を支持することが可能な構成であれば、その形状は特に限定されるものではない。

【0083】

○ 実施形態において、絶縁部材７５の支持面７８は、スロット絶縁シート７４を介さずに、各鍔部６７に直接接触した状態で各鍔部６７に支持されていてもよい。
○ 実施形態において、第１軸受保持部２６が第１コイルエンド５７ａの内側に突出していなくてもよい。

【0084】

○ 実施形態において、第２軸受保持部２７が第２コイルエンド５７ｂの内側に突出していなくてもよい。
○ 実施形態において、ステータ５４は、スロット６８内においてヨーク６４の周方向で隣り合うコイル５７同士の間を絶縁する相間絶縁シートが、絶縁部材７５とは別にスロット６８内に配置されている構成であってもよい。要は、絶縁部材７５は、ティース６５におけるティース側面７１と鍔面７２との境界部７３よりもヨーク６４の径方向外側にコイル５７が配置された状態でコイル５７を支持することが可能な構成であればよい。

【0085】

○ 実施形態において、電動圧縮機１０は、第２インペラ５２を備えていない構成であってもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機１０は、第２インペラ５２に代えて、タービンホイールを備えている構成であってもよい。

【0086】

○ 実施形態において、電動圧縮機１０は、遠心式でなくてもよく、例えば、スクロール式、ピストン式、又はベーン式等であってもよい。要は、電動圧縮機１０は、回転軸５０の回転に伴って駆動して流体を圧縮する圧縮機構を備えたものであればよい。

【0087】

○ 実施形態において、電動圧縮機１０は、燃料電池車に搭載されていなくてもよい。要は、電動圧縮機１０は、車両に搭載されるものに限定されるものではない。

【符号の説明】

【0088】

１０…電動圧縮機、１１…回転電機、１２…ハウジング、２６…軸受保持部としての第１軸受保持部、２７…軸受保持部としての第２軸受保持部、３３…軸受である第１軸受、３４…軸受である第２軸受、５０…回転軸、５１…圧縮機構を構成する第１インペラ、５２…圧縮機構を構成する第２インペラ、５４…ステータ、５６…ステータコア、５６ａ…端面である第１端面、５６ｂ…端面である第２端面、５７…コイル、５７ａ…コイルエンドである第１コイルエンド、５７ｂ…コイルエンドである第２コイルエンド、６４…ヨーク、６５…ティース、６６…ティース延在部、６７…鍔部、６８…スロット、７０…巻線、７１…ティース側面、７２…鍔面、７３…境界部、７５…絶縁部材、７６…第１コイル支持面、７７…第２コイル支持面、７９…外周端部、８０…クリアランス。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】