(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168695
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】回転電機のステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 11/25 20160101AFI20241128BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H02K11/25
H02K3/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085577
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 希幸
(72)【発明者】
【氏名】吉村 友彦
【テーマコード(参考)】
5H604
5H611
【Fターム(参考)】
5H604AA03
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604DB26
5H604PB03
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB06
5H611PP02
5H611QQ04
5H611UA02
(57)【要約】
【課題】サーミスタによってコイルの温度を精度良く測定すること。
【解決手段】スロット68内には、柱状の絶縁部材75がスロット68内においてヨーク64の周方向で隣り合うコイル57同士の間に配置されている。絶縁部材75は、絶縁部材75の長手方向に位置する端面75dに開口するサーミスタ挿入孔81を有している。サーミスタ90は、サーミスタ挿入孔81内に挿入された状態で絶縁部材75に保持されている。これによれば、コイル57に対するサーミスタ90の位置が安定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のヨーク、及び前記ヨークの内周面から延びる複数のティースを有し、前記ヨークの周方向で隣り合うティースの間にスロットが形成されているステータコアと、
前記各ティースに巻線が前記スロットを通過しながら集中巻きで巻回されることにより形成されるコイルと、
前記コイルの温度を測定するサーミスタと、を備えている回転電機のステータであって、
前記スロット内には、柱状の絶縁部材が前記スロット内において前記周方向で隣り合うコイル同士の間に配置されており、
前記絶縁部材は、前記絶縁部材の長手方向に位置する端面に開口するサーミスタ挿入孔を有し、
前記サーミスタは、前記サーミスタ挿入孔内に挿入された状態で前記絶縁部材に保持されていることを特徴とする回転電機のステータ。
【請求項2】
前記サーミスタと前記絶縁部材における前記サーミスタ挿入孔を区画する内面との間には、樹脂が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機のステータ。
【請求項3】
前記サーミスタは、
前記コイルの温度を測定するセンサ部と、
前記センサ部から延びるリード線と、を有し、
前記絶縁部材は、前記サーミスタにおける前記サーミスタ挿入孔に対する挿入方向に位置する孔底面を有し、
前記センサ部は、前記センサ部が前記サーミスタ挿入孔に挿入されて前記孔底面に当接したときに、予め定められた長さ分だけ前記絶縁部材の端面から突出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転電機のステータ。
【請求項4】
前記ティースは、
前記ヨークの内周面から延びるティース延在部と、
前記ティース延在部の先端から前記ヨークの周方向の両側に突出する一対の鍔部と、を有し、
前記絶縁部材は、前記周方向で隣り合う鍔部同士の隙間であるスロットオープンを跨いだ状態で前記周方向で隣り合う鍔部それぞれに支持される支持面を有し、
前記支持面には、前記スロットオープンに臨む凹部が形成されており、
前記凹部は、前記サーミスタ挿入孔に連通しており、
前記凹部内には、前記絶縁部材よりも熱伝導性の高い樹脂が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機のステータ。
【請求項5】
前記絶縁部材は、
前記スロット内において前記周方向で隣り合うコイルの一方を支持する第1コイル支持面と、
前記スロット内において前記周方向で隣り合うコイルの他方を支持する第2コイル支持面と、を有し、
前記第1コイル支持面及び前記第2コイル支持面には、前記凹部と前記スロット内とを連通する連通孔が開口していることを特徴とする請求項4に記載の回転電機のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のステータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、回転電機のステータは、ステータコアと、コイルと、を備えている。ステータコアは、円筒状のヨーク、及び複数のティースを有している。複数のティースは、ヨークの内周面から延びている。そして、ステータコアには、ヨークの周方向で隣り合うティースの間にスロットが形成されている。コイルは、各ティースに巻線がスロットを通過しながら集中巻きで巻回されることにより形成されている。ティースは、ティース延在部と、一対の鍔部と、を有している。ティース延在部は、ヨークの内周面から延びている。一対の鍔部は、ティース延在部の先端からヨークの周方向の両側に突出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような回転電機のステータにおいては、コイルの温度を測定するサーミスタを備えている場合がある。しかしながら、コイルに対するサーミスタの位置が不安定であると、サーミスタによってコイルの温度を精度良く測定することが困難となる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する回転電機のステータは、円筒状のヨーク、及び前記ヨークの内周面から延びる複数のティースを有し、前記ヨークの周方向で隣り合うティースの間にスロットが形成されているステータコアと、前記各ティースに巻線が前記スロットを通過しながら集中巻きで巻回されることにより形成されるコイルと、前記コイルの温度を測定するサーミスタと、を備えている回転電機のステータであって、前記スロット内には、柱状の絶縁部材が前記スロット内において前記周方向で隣り合うコイル同士の間に配置されており、前記絶縁部材は、前記絶縁部材の長手方向に位置する端面に開口するサーミスタ挿入孔を有し、前記サーミスタは、前記サーミスタ挿入孔内に挿入された状態で前記絶縁部材に保持されている。
【0006】
これによれば、サーミスタが、サーミスタ挿入孔内に挿入された状態で絶縁部材に保持されているため、コイルに対するサーミスタの位置が安定する。したがって、サーミスタによってコイルの温度を精度良く測定することができる。
【0007】
上記回転電機のステータにおいて、前記サーミスタと前記絶縁部材における前記サーミスタ挿入孔を区画する内面との間には、樹脂が充填されているとよい。
これによれば、サーミスタと絶縁部材におけるサーミスタ挿入孔を区画する内面との間が樹脂によって埋められるため、コイルから絶縁部材に伝達された熱が樹脂を介してサーミスタに伝達され易くなる。したがって、サーミスタによってコイルの温度をさらに精度良く測定することができる。
【0008】
上記回転電機のステータにおいて、前記サーミスタは、前記コイルの温度を測定するセンサ部と、前記センサ部から延びるリード線と、を有し、前記絶縁部材は、前記サーミスタにおける前記サーミスタ挿入孔に対する挿入方向に位置する孔底面を有し、前記センサ部は、前記センサ部が前記サーミスタ挿入孔に挿入されて前記孔底面に当接したときに、予め定められた長さ分だけ前記絶縁部材の端面から突出する。
【0009】
サーミスタをサーミスタ挿入孔に挿入する際には、センサ部が孔底面に当接するまでセンサ部をサーミスタ挿入孔に対して挿入する。すると、センサ部が予め定められた長さ分だけ絶縁部材の端面から突出する。作業者は、センサ部が予め定められた長さ分だけ絶縁部材の端面から突出していることを視認することにより、センサ部が、サーミスタ挿入孔内に予め定められた位置に挿入されていることを容易に確認することができる。したがって、作業者は、サーミスタがサーミスタ挿入孔に対して正確に挿入されているか否かを容易に確認することが可能となる。
【0010】
上記回転電機のステータにおいて、前記ティースは、前記ヨークの内周面から延びるティース延在部と、前記ティース延在部の先端から前記ヨークの周方向の両側に突出する一対の鍔部と、を有し、前記絶縁部材は、前記周方向で隣り合う鍔部同士の隙間であるスロットオープンを跨いだ状態で前記周方向で隣り合う鍔部それぞれに支持される支持面を有し、前記支持面には、前記スロットオープンに臨む凹部が形成されており、前記凹部は、前記サーミスタ挿入孔に連通しており、前記凹部内には、前記絶縁部材よりも熱伝導性の高い樹脂が充填されているとよい。
【0011】
これによれば、コイルから絶縁部材に伝達された熱が、絶縁部材よりも熱伝導性の高い樹脂に伝達されて樹脂に効率良く放熱される。したがって、コイルから生じる熱を効率良く放熱することができる。その結果、サーミスタの耐久性を向上させることができる。
【0012】
上記回転電機のステータにおいて、前記絶縁部材は、前記スロット内において前記周方向で隣り合うコイルの一方を支持する第1コイル支持面と、前記スロット内において前記周方向で隣り合うコイルの他方を支持する第2コイル支持面と、を有し、前記第1コイル支持面及び前記第2コイル支持面には、前記凹部と前記スロット内とを連通する連通孔が開口しているとよい。
【0013】
これによれば、凹部内に樹脂を充填する際に、凹部内の空気が各連通孔を介してスロット内に放出される。したがって、凹部内に空気溜まりが形成されてしまうことを回避することができる。さらには、凹部内に樹脂を充填する際に、凹部内に流れ込んだ樹脂の一部が、各連通孔を介してスロット内に流れ込む。これにより、スロット内に効率良く樹脂を流し込むことができる。したがって、スロット内にも樹脂を効率良く充填することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、サーミスタによってコイルの温度を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態における電動圧縮機の断面図である。
【
図4】
図4は、ステータの一部分を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図5は、ステータの一部分を拡大して示す斜視図である。
【
図6】
図6は、絶縁部材とサーミスタとの関係を示す断面図である。
【
図7】
図7は、絶縁部材の一部分を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、絶縁部材、サーミスタ、及び樹脂の関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、回転電機のステータを具体化した一実施形態を
図1~
図8にしたがって説明する。本実施形態の回転電機のステータは、電動圧縮機の一部を構成している。電動圧縮機は、燃料電池車に搭載される遠心式の圧縮機である。電動圧縮機は、流体としての空気を圧縮する。
【0017】
<電動圧縮機の基本構成>
図1に示すように、電動圧縮機10は、回転電機11と、ハウジング12と、を備えている。ハウジング12は、モータハウジング13と、第1コンプレッサハウジング14、第2コンプレッサハウジング15、第1プレート16、第2プレート17、及び第3プレート18を有している。モータハウジング13、第1コンプレッサハウジング14、第2コンプレッサハウジング15、第1プレート16、第2プレート17、及び第3プレート18は、金属材料製である。モータハウジング13、第1コンプレッサハウジング14、第2コンプレッサハウジング15、第1プレート16、第2プレート17、及び第3プレート18は、例えば、アルミニウム製である。
【0018】
モータハウジング13は、端壁13a、及び周壁13bを有している。端壁13aは、例えば、円板状である。周壁13bは、端壁13aの外周部から円筒状に延びている。周壁13bには、冷却水通路13cが形成されている。モータハウジング13の周壁13bは、冷却水通路13cを流れる冷却水によって冷却されている。
【0019】
第1プレート16は、例えば、円板状である。第1プレート16は、モータハウジング13の周壁13bの開口を閉塞している。そして、モータハウジング13と第1プレート16とによって、モータ室25が区画されている。したがって、ハウジング12は、モータ室25を区画する。モータ室25は、回転電機11を収容する。したがって、ハウジング12は、回転電機11を収容する。
【0020】
ハウジング12は、第1軸受保持部26を有している。第1軸受保持部26は、第1プレート16の中央部からモータ室25内に突出している。第1軸受保持部26は、円筒状である。第1軸受保持部26の軸線は、周壁13bの軸線に一致している。第1軸受保持部26の内側は、第1プレート16を貫通して第1プレート16におけるモータハウジング13とは反対側に位置する端面に開口している。
【0021】
ハウジング12は、第2軸受保持部27を有している。第2軸受保持部27は、モータハウジング13の端壁13aの中央部からモータ室25内に突出している。第2軸受保持部27は、円筒状である。第2軸受保持部27の軸線は、周壁13bの軸線に一致している。したがって、第1軸受保持部26の軸線と第2軸受保持部27の軸線とは一致している。第2軸受保持部27の内側は、モータハウジング13の端壁13aを貫通して端壁13aにおける周壁13bとは反対側に位置する端面に開口している。
【0022】
第2プレート17は、第1プレート16におけるモータハウジング13とは反対側に位置する端面に連結されている。第2プレート17は、第2プレート17の厚み方向が第1プレート16の厚み方向に一致した状態で、第1プレート16に取り付けられている。
【0023】
第2プレート17には、第1挿通孔17hが形成されている。第1挿通孔17hは、第2プレート17の中央部を貫通している。第1挿通孔17hは、第1軸受保持部26の内側に連通している。第1挿通孔17hの軸線は、第1軸受保持部26の軸線に一致している。
【0024】
第3プレート18は、モータハウジング13の端壁13aにおける周壁13bとは反対側に位置する端面に連結されている。第3プレート18は、第3プレート18の厚み方向がモータハウジング13の端壁13aの厚み方向に一致した状態で、モータハウジング13の端壁13aに取り付けられている。
【0025】
第3プレート18には、第2挿通孔18hが形成されている。第2挿通孔18hは、第3プレート18の中央部を貫通している。第2挿通孔18hは、第2軸受保持部27の内側に連通している。第2挿通孔18hの軸線は、第2軸受保持部27の軸線に一致している。
【0026】
第1コンプレッサハウジング14は、空気が吸入される円孔状の第1吸入口35を有する筒状である。第1コンプレッサハウジング14は、第1吸入口35の軸線が、第1挿通孔17hの軸線と一致した状態で第2プレート17における第1プレート16とは反対側に位置する端面に連結されている。第1吸入口35は、第1コンプレッサハウジング14における第2プレート17とは反対側に位置する端面に開口している。第1吸入口35には、図示しないエアクリーナによって清浄化された空気が流れる。
【0027】
電動圧縮機10は、第1インペラ室36、第1吐出室37、及び第1ディフューザ流路38を備えている。第1インペラ室36、第1吐出室37、及び第1ディフューザ流路38は、第1コンプレッサハウジング14と第2プレート17との間に形成されている。第1インペラ室36は、第1吸入口35に連通している。第1吐出室37は、第1インペラ室36の周囲で第1吸入口35の軸心周りに延びている。第1ディフューザ流路38は、第1インペラ室36と第1吐出室37とを連通している。第1インペラ室36は、第1挿通孔17hに連通している。
【0028】
電動圧縮機10は、第1吐出通路39を有している。第1吐出通路39は、第1コンプレッサハウジング14に形成されている。第1吐出通路39の第1端は、第1吐出室37に連通している。第1吐出通路39の第2端は、第1コンプレッサハウジング14の外周面に開口している。
【0029】
第2コンプレッサハウジング15は、空気が吸入される円孔状の第2吸入口40を有する筒状である。第2コンプレッサハウジング15は、第2吸入口40の軸線が、第2挿通孔18hの軸線と一致した状態で第3プレート18におけるモータハウジング13とは反対側に位置する端面に連結されている。第2吸入口40は、第2コンプレッサハウジング15における第3プレート18とは反対側に位置する端面に開口している。
【0030】
電動圧縮機10は、第2インペラ室41、第2吐出室42、及び第2ディフューザ流路43を備えている。第2インペラ室41、第2吐出室42、及び第2ディフューザ流路43は、第2コンプレッサハウジング15と第3プレート18との間に形成されている。第2インペラ室41は、第2吸入口40に連通している。第2吐出室42は、第2インペラ室41の周囲で第2吸入口40の軸心周りに延びている。第2ディフューザ流路43は、第2インペラ室41と第2吐出室42とを連通している。第2インペラ室41は、第2挿通孔18hに連通している。
【0031】
電動圧縮機10は、第2吐出通路44を有している。第2吐出通路44は、第2コンプレッサハウジング15に形成されている。第2吐出通路44の第1端は、第2吐出室42に連通している。第2吐出通路44の第2端は、第2コンプレッサハウジング15の外周面に開口している。
【0032】
第2吐出通路44には、供給配管45が接続されている。供給配管45は、燃料電池スタック46に接続されている。供給配管45の第1端は、第2吐出通路44に接続されている。供給配管45の第2端は、燃料電池スタック46に接続されている。
【0033】
電動圧縮機10は、接続配管47を備えている。接続配管47の第1端は、第1吐出通路39に連通している。接続配管47の第2端は、第2吸入口40に連通している。接続配管47内には、第1吐出室37から第1吐出通路39に吐出された空気が流れる。そして、接続配管47内を通過した空気は、第2吸入口40を介して第2インペラ室41に吸入される。
【0034】
電動圧縮機10は、回転軸50を備えている。回転軸50は、回転軸50の軸線と周壁13bの軸線とが一致した状態で、モータ室25内を横切っている。回転軸50の軸方向の一端である第1端は、モータ室25内から第1軸受保持部26の内側及び第1挿通孔17hを通過して第1インペラ室36内に突出している。回転軸50の軸方向の他端である第2端は、モータ室25内から第2軸受保持部27の内側及び第2挿通孔18hを通過して第2インペラ室41内に突出している。
【0035】
電動圧縮機10は、第1インペラ51及び第2インペラ52を備えている。第1インペラ51は、回転軸50の第1端に連結されている。第1インペラ51は、第1インペラ室36に収容されている。したがって、第1インペラ室36は、第1インペラ51を収容する。第1インペラ51は、第1インペラ室36内に吸入された空気を圧縮するために回転軸50と一体に回転する。
【0036】
第2インペラ52は、回転軸50の第2端に連結されている。第2インペラ52は、第2インペラ室41に収容されている。したがって、第2インペラ室41は、第2インペラ52を収容する。第2インペラ52は、第2インペラ室41内に吸入された空気を圧縮するために回転軸50と一体に回転する。第2インペラ52は、第1インペラ51によって圧縮された後の空気を圧縮するために回転する。
【0037】
このように、第1インペラ51及び第2インペラ52は、回転軸50と一体に回転する。そして、第1インペラ51及び第2インペラ52は、回転軸50の回転に伴って駆動して空気を圧縮する圧縮機構を構成している。
【0038】
回転電機11は、ロータ53と、ステータ54と、を備えている。ロータ53は、回転軸50に固定されている。ロータ53は、回転軸50に固定された円筒状のロータコア55と、ロータコア55に設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。ロータ53は、回転軸50と一体に回転する。
【0039】
ステータ54は、ハウジング12に固定されている。ステータ54は、ロータ53の外側に配置されている。ステータ54は、円筒状のステータコア56と、コイル57と、を備えている。
【0040】
ステータコア56は、モータハウジング13の周壁13bの内周面に固定されている。ステータコア56は、第1端面56aと、第2端面56bと、を有している。第1端面56aは、ステータコア56における軸方向の一方に位置する端面である。第2端面56bは、ステータコア56における軸方向の他方に位置する端面である。ステータコア56は、第1端面56aが第1プレート16に対して回転軸50の軸方向で対向するとともに、第2端面56bがモータハウジング13の端壁13aに対して回転軸50の軸方向で対向した状態で、モータ室25内に配置されている。
【0041】
コイル57は、ステータコア56に巻回されている。ステータ54は、第1コイルエンド57a及び第2コイルエンド57bを備えている。第1コイルエンド57a及び第2コイルエンド57bは、コイル57の一部である。第1コイルエンド57aは、ステータコア56の端面である第1端面56aから第1プレート16に向けて突出している。第2コイルエンド57bは、ステータコア56の端面である第2端面56bからモータハウジング13の端壁13aに向けて突出している。
【0042】
回転軸50は、図示しないバッテリからコイル57に電流が流れることによって、ロータ53と一体に回転する。したがって、回転電機11は、回転軸50を回転させる。
電動圧縮機10は、第1軸受33及び第2軸受34を備えている。第1軸受33は円筒状である。第1軸受33は、動圧滑り軸受である。第1軸受33は、第1軸受保持部26に保持されている。第1軸受33は、回転軸50を第1プレート16に対して回転可能に支持する。
【0043】
第2軸受34は円筒状である。第2軸受34は、動圧滑り軸受である。第2軸受34は、第2軸受保持部27に保持されている。第2軸受34は、回転軸50をモータハウジング13の端壁13aに対して回転可能に支持する。このように、回転軸50は、第1軸受33及び第2軸受34を介してハウジング12に回転可能に支持されている。
【0044】
電動圧縮機10は、第1シール部材58を備えている。第1シール部材58は、第1挿通孔17hと回転軸50との間に設けられている。第1シール部材58は、第1インペラ室36から第1挿通孔17h及び第1軸受保持部26の内側を介してモータ室25内に向かう空気の洩れを抑制する。第1シール部材58は、例えば、シールリングである。
【0045】
電動圧縮機10は、第2シール部材59を備えている。第2シール部材59は、第2挿通孔18hと回転軸50との間に設けられている。第2シール部材59は、第2インペラ室41から第2挿通孔18h及び第2軸受保持部27の内側を介してモータ室25内に向かう空気の洩れを抑制する。第2シール部材59は、例えば、シールリングである。
【0046】
第1吸入口35を介して第1インペラ室36に吸入された空気は、第1インペラ51の回転によって加速されながら、第1ディフューザ流路38に送り込まれて、第1ディフューザ流路38を通過することにより昇圧される。そして、第1ディフューザ流路38を通過した空気は、第1吐出室37に吐出される。第1吐出室37に吐出された空気は、第1吐出通路39に吐出される。第1吐出通路39に吐出された空気は、接続配管47及び第2吸入口40を介して第2インペラ室41に吸入される。第2インペラ室41に吸入された空気は、第2インペラ52の回転によって加速されながら、第2ディフューザ流路43に送り込まれて、第2ディフューザ流路43を通過することにより昇圧される。そして、第2ディフューザ流路43を通過した空気は、第2吐出室42に吐出される。第2吐出室42に吐出された空気は、第2吐出通路44に吐出される。第2吐出通路44に吐出された空気は、供給配管45を介して燃料電池スタック46に供給される。したがって、電動圧縮機10は、燃料電池スタック46に対して空気を供給する。燃料電池スタック46に供給された空気に含まれる酸素は、燃料電池スタック46の発電に寄与する。
【0047】
電動圧縮機10は、導入通路60を備えている。導入通路60は、第2プレート17に形成されている。導入通路60の第1端は、第2プレート17の外周面に開口している。導入通路60の第2端は、第1挿通孔17hにおける第1シール部材58よりもモータ室25寄りの部分に連通している。
【0048】
電動圧縮機10は、排出通路61を備えている。排出通路61は、第3プレート18に形成されている。排出通路61の第1端は、第2挿通孔18hにおける第2シール部材59よりもモータ室25寄りの部分に連通している。排出通路61の第2端は、第3プレート18の外周面に開口している。
【0049】
導入通路60の第1端には、分岐配管62が接続されている。分岐配管62は、供給配管45の途中から分岐されている。分岐配管62の第1端は、供給配管45に接続されている。分岐配管62の第2端は、導入通路60の第1端に接続されている。分岐配管62の途中には、インタークーラ63が設けられている。インタークーラ63は、分岐配管62内を流れる空気を冷却する。
【0050】
供給配管45を流れる空気の一部は、分岐配管62に流れ込む。分岐配管62を流れる空気は、インタークーラ63によって冷却される。これにより、インタークーラ63を通過した空気は、第2吐出室42に吐出された空気の温度よりも低い温度となる。そして、インタークーラ63によって冷却された空気は、導入通路60、第1挿通孔17h、及び第1軸受保持部26の内側を通過してモータ室25内へ導入される。したがって、導入通路60は、モータ室25内に空気を導入する。
【0051】
第1軸受33は、第1軸受保持部26の内側を通過する空気によって冷却される。回転電機11は、モータ室25内に導入された空気によって冷却される。モータ室25内に導入された空気は、ステータ54とロータ53との間を通過して、第2軸受保持部27の内側を流れる。第2軸受34は、第2軸受保持部27の内側を通過する空気によって冷却される。そして、第2軸受保持部27の内側を通過した空気は、第2挿通孔18h及び排出通路61を介して外部へ排出される。
【0052】
<ステータ>
図2及び
図3に示すように、ステータコア56は、円筒状のヨーク64、及び複数のティース65を有している。各ティース65は、ヨーク64の内周面から延びている。複数のティース65は、ヨーク64の周方向に間隔を置いて配置されている。詳細には、複数のティース65は、ヨーク64の周方向に等間隔置きに配置されている。各ティース65は、ヨーク64の内周面からステータコア56の軸線L1に向けて延びている。各ティース65におけるヨーク64とは反対側の面である先端面は、弧状に湾曲する円弧面である。各ティース65の先端面は、同心円上に位置している。
【0053】
ステータコア56の軸方向に位置するヨーク64の両端面は平坦面状である。ステータコア56の軸方向に位置する各ティース65の両端面は平坦面状である。ステータコア56の軸方向におけるヨーク64の長さとステータコア56の軸方向における各ティース65の長さとは同じである。ヨーク64の各端面及び各ティース65の各端面は同一平面上に位置している。ヨーク64の両端面の一方及び各ティース65の両端面の一方は、ステータコア56の第1端面56aを形成するとともに、ヨーク64の両端面の他方及び各ティース65の両端面の他方は、ステータコア56の第2端面56bを形成している。
【0054】
図3に示すように、各ティース65は、ティース延在部66と、一対の鍔部67と、を有している。ティース延在部66は、ヨーク64の内周面から延びている。したがって、ティース延在部66は、ティース65におけるヨーク64の内周面から延在する部位である。一対の鍔部67は、ティース延在部66におけるヨーク64とは反対側の端に位置する先端からヨーク64の周方向の両側に突出している。
【0055】
ステータコア56には、ヨーク64の周方向で隣り合うティース65の間にスロット68が形成されている。ヨーク64の周方向で隣り合う鍔部67同士の隙間であるスロットオープン69は、スロット68に連通している。スロットオープン69は、ヨーク64の周方向で隣り合う鍔部67におけるティース延在部66からの延在方向の先端同士の間の空間である。コイル57は、各ティース65に巻線70がスロット68を通過しながら集中巻きで巻回されることにより形成されている。したがって、コイル57の一部は、スロット68の内部に位置している。
【0056】
図4に示すように、ティース延在部66は、一対のティース側面71を有している。各ティース側面71は、ティース延在部66におけるヨーク64の周方向の両側にそれぞれ位置している。各ティース側面71は、ヨーク64の内周面に連続している。各ティース側面71は、各スロット68を区画する。各鍔部67は、鍔面72を有している。各鍔面72は、ティース側面71におけるヨーク64の内周面とは反対側の端部に連続している。各鍔面72は、ティース側面71から鍔部67の先端まで延びている。各鍔面72は、各スロット68を区画する。スロット68は、ヨーク64の内周面の一部、ティース側面71、及び鍔面72によって画定される空間である。
【0057】
ステータ54は、スロット絶縁シート74を備えている。スロット絶縁シート74は、各スロット68内に挿入されている。スロット絶縁シート74は、コイル57とステータコア56との間に配置されている。スロット絶縁シート74は、各スロット68内に位置するコイル57の部分とステータコア56とを絶縁する。スロット絶縁シート74は、細長帯状のシートを短手方向に沿って略U字状に湾曲させた形状である。スロット絶縁シート74は、その長手方向がステータコア56の軸方向に一致した状態でスロット68に挿入されている。スロット絶縁シート74は、スロット68を形成するヨーク64の内周面の一部、ティース側面71、及び鍔面72に沿って延びている。スロット絶縁シート74は、ステータコア56の軸方向の第1端から第2端にかけて延びている。
【0058】
<絶縁部材>
図2及び
図3に示すように、各スロット68内には、絶縁部材75が配置されている。絶縁部材75は、三角柱状である。絶縁部材75は、樹脂製である。絶縁部材75は、スロット68内においてヨーク64の周方向で隣り合うコイル57同士の間に配置されている。絶縁部材75は、スロット68内においてヨーク64の周方向で隣り合うコイル57同士の間を絶縁している。絶縁部材75は、絶縁部材75の長手方向がステータコア56の軸方向に一致した状態で、スロット68内に配置されている。
【0059】
図2に示すように、絶縁部材75の長手方向の両側に位置する両端部は、ステータコア56の第1端面56a及び第2端面56bそれぞれから突出している。したがって、絶縁部材75の長手方向の長さは、ステータコア56の軸方向の長さよりも長い。
【0060】
絶縁部材75におけるステータコア56の第1端面56aから突出している部分は、ヨーク64の周方向で隣り合う第1コイルエンド57aの間に配置されている。そして、絶縁部材75におけるステータコア56の第1端面56aから突出している部分は、ヨーク64の周方向で隣り合う第1コイルエンド57a同士の間を絶縁している。このように、絶縁部材75は、ステータコア56の第1端面56aから突出するとともにヨーク64の周方向で隣り合う第1コイルエンド57a同士の間に配置される部分を有している。
【0061】
絶縁部材75におけるステータコア56の第2端面56bから突出している部分は、ヨーク64の周方向で隣り合う第2コイルエンド57bの間に配置されている。そして、絶縁部材75におけるステータコア56の第2端面56bから突出している部分は、ヨーク64の周方向で隣り合う第2コイルエンド57b同士の間を絶縁している。このように、絶縁部材75は、ステータコア56の第2端面56bから突出するとともにヨーク64の周方向で隣り合う第2コイルエンド57b同士の間に配置される部分を有している。
【0062】
図4に示すように、絶縁部材75は、第1コイル支持面76と、第2コイル支持面77と、を有している。第1コイル支持面76は、ヨーク64の周方向で隣り合うコイル57の一方側に位置する面である。第2コイル支持面77は、ヨーク64の周方向で隣り合うコイル57の他方側に位置する面である。
【0063】
第1コイル支持面76は、ヨーク64の周方向で隣り合うコイル57の一方を支持する。第1コイル支持面76は、ヨーク64の周方向で隣り合うコイル57の一方に接触している。第2コイル支持面77は、ヨーク64の周方向で隣り合うコイル57の他方を支持する。第2コイル支持面77は、ヨーク64の周方向で隣り合うコイル57の他方に接触している。第1コイル支持面76及び第2コイル支持面77は、各々に対応するコイル57の巻線70が巻回されているティース65の鍔部67の鍔面72上から互いに接近しながらヨーク64の内周面に向けて延びている。
【0064】
絶縁部材75は、支持面78を有している。支持面78は、スロットオープン69を跨いだ状態でヨーク64の周方向で隣り合う鍔部67それぞれに支持されている。支持面78は、第1コイル支持面76におけるヨーク64の内周面とは反対側に位置する端部と第2コイル支持面77におけるヨーク64の内周面とは反対側に位置する端部とを接続している。支持面78は、平坦面状である。支持面78の一部分は、鍔面72に沿って延びている。支持面78は、スロット絶縁シート74を介して各鍔部67に支持されている。
【0065】
図2に示すように、支持面78は、スロット68内に位置する部分と、ステータコア56の第1端面56a及び第2端面56bそれぞれから突出している部分と、を有している。支持面78には、凹部79が形成されている。凹部79は、支持面78におけるスロット68内に位置する部分から支持面78におけるステータコア56の第1端面56a及び第2端面56bそれぞれから突出している部分まで延びている。凹部79は、絶縁部材75の長手方向に延びている。凹部79は、スロットオープン69に臨んでいる。凹部79におけるスロット68内に位置する部分に形成されている部分は、凹部79においてスロットオープン69に臨む部分である。
【0066】
図4に示すように、凹部79におけるヨーク64の周方向の両側に位置する内面79aの一方は、第1コイル支持面76に沿って延びている。凹部79におけるヨーク64の周方向の両側に位置する内面79aの他方は、第2コイル支持面77に沿って延びている。絶縁部材75は、第1コイル支持面76、及び第1コイル支持面76に沿って延びる凹部79の内面79aをそれぞれ形成する第1壁部75aを有している。絶縁部材75は、第2コイル支持面77、及び第2コイル支持面77に沿って延びる凹部79の内面79aをそれぞれ形成する第2壁部75bを有している。
【0067】
図5に示すように、絶縁部材75は、リブ80を複数有している。各リブ80は、凹部79におけるヨーク64の周方向の両側に位置する内面79a同士を繋いでいる。リブ80は、三角板状である。リブ80は、薄板状である。リブ80は、リブ80の厚み方向が絶縁部材75の長手方向に一致した状態で、凹部79におけるヨーク64の周方向の両側に位置する内面79a同士を繋いでいる。複数のリブ80は、絶縁部材75の長手方向で等間隔置きに配置されている。したがって、絶縁部材75の長手方向で隣り合うリブ80同士の間隔は一定である。そして、凹部79内は、各リブ80によって、絶縁部材75の長手方向で複数の空間79kに仕切られている。
【0068】
図6及び
図7に示すように、絶縁部材75は、サーミスタ挿入孔81を有している。なお、サーミスタ挿入孔81は、複数の絶縁部材75のうちの1つだけに形成されている。サーミスタ挿入孔81は、第1孔82、第2孔83、及び第3孔84を含む。第1孔82は、凹部79の長手方向に位置する内面79eを形成する絶縁部材75の端壁75cを貫通している。第1孔82は、端壁75cの外面に開口している。端壁75cの外面は、絶縁部材75の長手方向に位置する端面75dである。よって、第1孔82は、絶縁部材75の長手方向に位置する端面75dに開口している。したがって、サーミスタ挿入孔81は、絶縁部材75の長手方向に位置する端面75dに開口している。第1孔82は、円孔状である。第1孔82は、絶縁部材75の端面75dにおける支持面78とは反対寄りの部分に開口している。
【0069】
第2孔83は、複数のリブ80のうち、絶縁部材75の長手方向に位置する端面75dに対して最も近い位置に配置されているリブ80を貫通している。第2孔83は、円孔状である。第2孔83の孔径は、第1孔82の孔径と同じである。第3孔84は、複数のリブ80のうち、絶縁部材75の長手方向に位置する端面75dに対して2番目に近い位置に配置されているリブ80を貫通している。第3孔84は、円孔状である。第3孔84の孔径は、第1孔82の孔径及び第2孔83の孔径と同じである。第1孔82の軸線、第2孔83の軸線、及び第3孔84の軸線はそれぞれ一致している。第1孔82、第2孔83、及び第3孔84は、凹部79に連通している。したがって、凹部79は、サーミスタ挿入孔81に連通している。
【0070】
第1孔82、第2孔83、及び第3孔84を含むサーミスタ挿入孔81は、第1壁部75a及び第2壁部75bに対して、第1壁部75a及び第2壁部75bそれぞれの肉厚が限界の最小となる肉厚の部位に対応して配置されている。「限界の最小となる肉厚」とは、絶縁部材75を製造する上で最低限必要となる厚みであって、且つ、最小となる肉厚のことを言う。
【0071】
第1壁部75a及び第2壁部75bには、複数の連通孔85が形成されている。連通孔85は、第1壁部75a及び第2壁部75bにおける各空間79kに対応する部位にそれぞれ1つずつ設けられている。各連通孔85は、凹部79の内面79aに開口している。第1壁部75aに形成されている各連通孔85は、第1コイル支持面76に開口している。第2壁部75bに形成されている各連通孔85は、第2コイル支持面77に開口している。
【0072】
図4に示すように、各連通孔85は、凹部79とスロット68内とを連通している。このように、第1コイル支持面76及び第2コイル支持面77には、凹部79とスロット68内とを連通する連通孔85が開口している。
【0073】
<サーミスタ>
図5及び
図6に示すように、ステータ54は、サーミスタ90を備えている。サーミスタ90は、コイル57の温度を測定する。サーミスタ90は、センサ部91と、リード線92と、を有している。センサ部91は、コイル57の温度を測定する。センサ部91は、チューブ状である。リード線92は、センサ部91の第1端部から延びている。リード線92は、図示しない制御装置に電気的に接続されている。そして、センサ部91によって測定されたコイル57の温度に関する情報は、リード線92を介して制御装置に送信される。
【0074】
図6に示すように、センサ部91の第2端部は、第1孔82、第2孔83、及び第3孔84を通過する。そして、センサ部91は、センサ部91の第2端部が、複数のリブ80のうち、絶縁部材75の長手方向に位置する端面75dに対して3番目に近い位置に配置されているリブ80に当接するまで挿入される。
【0075】
絶縁部材75の端壁75cと、複数のリブ80のうち、絶縁部材75の端面75dに対して最も近い位置に配置されているリブ80との間の空間79kは、サーミスタ挿入孔81の一部を構成している。複数のリブ80のうち、絶縁部材75の端面75dに対して最も近い位置に配置されているリブ80と絶縁部材75の端面75dに対して2番目に近い位置に配置されているリブ80との間の空間79kもサーミスタ挿入孔81の一部を構成している。複数のリブ80のうち、絶縁部材75の端面75dに対して2番目に近い位置に配置されているリブ80と、絶縁部材75の端面75dに対して3番目に近い位置に配置されているリブ80との間の空間79kもサーミスタ挿入孔81の一部を構成している。そして、絶縁部材75の端面75dに対して3番目に近い位置に配置されているリブ80は、サーミスタ90におけるサーミスタ挿入孔81に対する挿入方向Z1に位置する孔底面81eを形成している。したがって、絶縁部材75は、サーミスタ90におけるサーミスタ挿入孔81に対する挿入方向Z1に位置する孔底面81eを有している。センサ部91は、センサ部91がサーミスタ挿入孔81に挿入されて孔底面81eに当接したときに、予め定められた長さL1分だけ絶縁部材75の端面75dから突出する。
【0076】
<樹脂>
図1に示すように、ハウジング12内には、樹脂95が設けられている。樹脂95は、第1コイルエンド57a、第2コイルエンド57b、及びステータコア56の内周面を被覆する。樹脂95は、ハウジング12に熱的に結合されている。
【0077】
図3及び
図4に示すように、樹脂95の一部は、スロット68内にも充填されている。樹脂95は、絶縁部材75よりも熱伝導性が高い。樹脂95としては、例えば、エポキシ樹脂にセラミックス粒子やガラス繊維が混合されたものが挙げられる。
【0078】
図4に示すように、樹脂95の一部は、凹部79内に充填されている。したがって、凹部79には、絶縁部材75よりも熱伝導性の高い樹脂95が充填されている。
図8に示すように、樹脂95の一部は、センサ部91と絶縁部材75における第1孔82を区画する内面との間に充填されている。樹脂95の一部は、センサ部91と絶縁部材75における第2孔83を区画する内面との間に充填されている。樹脂95の一部は、センサ部91と絶縁部材75における第3孔84を区画する内面との間に充填されている。したがって、サーミスタ90と絶縁部材75におけるサーミスタ挿入孔81を区画する内面との間には、樹脂95が充填されている。サーミスタ90は、サーミスタ90と絶縁部材75とが樹脂95を介して密着することにより、絶縁部材75に保持されている。このように、サーミスタ90は、サーミスタ挿入孔81内に挿入された状態で絶縁部材75に保持されている。
【0079】
[実施形態の作用]
次に、実施形態の作用について説明する。
コイル57から生じる熱は、例えば、ティース65及びヨーク64を介してモータハウジング13の周壁13bに伝達される。ここで、モータハウジング13の周壁13bは、冷却水通路13cを流れる冷却水によって冷却されている。したがって、コイル57から生じる熱は、ティース65及びヨーク64を介してモータハウジング13の周壁13bに効率良く放熱される。また、コイル57から生じる熱は、樹脂95を介してハウジング12に伝達されてハウジング12に放熱される。さらには、導入通路60からモータ室25内に導入された空気の一部によって、樹脂95が冷却される。したがって、コイル57から生じる熱は、樹脂95に伝達されて効率良く放熱される。
【0080】
サーミスタ90のセンサ部91は、コイル57から絶縁部材75に伝達された熱を測定する。このとき、サーミスタ90が、サーミスタ挿入孔81内に挿入された状態で絶縁部材75に保持されている。このため、コイル57に対するサーミスタ90の位置が安定している。したがって、サーミスタ90によってコイル57の温度が精度良く測定される。
【0081】
[実施形態の効果]
実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)サーミスタ90が、サーミスタ挿入孔81内に挿入された状態で絶縁部材75に保持されている。これによれば、コイル57に対するサーミスタ90の位置が安定する。したがって、サーミスタ90によってコイル57の温度を精度良く測定することができる。
【0082】
(2)サーミスタ90と絶縁部材75におけるサーミスタ挿入孔81を区画する内面との間には、樹脂95が充填されている。これによれば、サーミスタ90と絶縁部材75におけるサーミスタ挿入孔81を区画する内面との間が樹脂95によって埋められるため、コイル57から絶縁部材75に伝達された熱が樹脂95を介してサーミスタ90に伝達され易くなる。したがって、サーミスタ90によってコイル57の温度をさらに精度良く測定することができる。
【0083】
(3)サーミスタ90をサーミスタ挿入孔81に挿入する際には、センサ部91が孔底面81eに当接するまでセンサ部91をサーミスタ挿入孔81に対して挿入する。すると、センサ部91が予め定められた長さL1分だけ絶縁部材75の端面75dから突出する。作業者は、センサ部91が予め定められた長さL1分だけ絶縁部材75の端面75dから突出していることを視認することにより、センサ部91が、サーミスタ挿入孔81内に予め定められた位置に挿入されていることを容易に確認することができる。したがって、作業者は、サーミスタ90がサーミスタ挿入孔81に対して正確に挿入されているか否かを容易に確認することが可能となる。
【0084】
(4)凹部79内には、絶縁部材75よりも熱伝導性の高い樹脂95が充填されている。これによれば、コイル57から絶縁部材75に伝達された熱が、絶縁部材75よりも熱伝導性の高い樹脂95に伝達されて樹脂95に効率良く放熱される。したがって、コイル57から生じる熱を効率良く放熱することができる。その結果、サーミスタ90の耐久性を向上させることができる。
【0085】
(5)第1コイル支持面76及び第2コイル支持面77には、凹部79とスロット68内とを連通する連通孔85が開口している。これによれば、凹部79内に樹脂95を充填する際に、凹部79内の空気が各連通孔85を介してスロット68内に放出される。したがって、凹部79内に空気溜まりが形成されてしまうことを回避することができる。さらには、凹部79内に樹脂95を充填する際に、凹部79内に流れ込んだ樹脂95の一部が、各連通孔85を介してスロット68内に流れ込む。これにより、スロット68内に効率良く樹脂95を流し込むことができる。したがって、スロット68内にも樹脂95を効率良く充填することができる。
【0086】
(6)絶縁部材75は、凹部79におけるヨーク64周方向の両側に位置する内面79a同士を繋ぐリブ80を有している。これによれば、絶縁部材75がリブ80を有していない場合に比べて、絶縁部材75におけるヨーク64の周方向での剛性を高めることができる。したがって、スロット68内においてヨーク64の周方向で隣り合うコイル57に絶縁部材75が挟み込まれて両コイル57から絶縁部材75に荷重が作用しても、絶縁部材75の原形状が維持され易くなる。
【0087】
(7)コイル57におけるティース65から離れている部分から生じる熱は、ティース65に伝達され難い。一方で、コイル57におけるティース65から離れている部分から生じる熱は、ティース65よりも近い位置に配置されている絶縁部材75に伝達され易い。したがって、コイル57におけるティース65から離れている部分から生じる熱は、絶縁部材75に放熱され易い。その結果、コイル57から生じる熱を効率良く放熱することができる。
【0088】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0089】
○ 実施形態において、サーミスタ90と絶縁部材75におけるサーミスタ挿入孔81を区画する内面との間に樹脂95が充填されていなくてもよい。この場合、サーミスタ90と絶縁部材75におけるサーミスタ挿入孔81を区画する内面とが直接接触していてもよい。
【0090】
○ 実施形態において、サーミスタ90のセンサ部91が、予め定められた長さL1分だけ絶縁部材75の端面75dから突出しておらず、センサ部91がサーミスタ挿入孔81内に全て挿入されていてもよい。
【0091】
○ 実施形態において、凹部79内に、絶縁部材75よりも熱伝導性の高い樹脂95が充填されていなくてもよい。
○ 実施形態において、第1壁部75a及び第2壁部75bに複数の連通孔85が形成されていなくてもよい。要は、第1コイル支持面76及び第2コイル支持面77に、凹部79とスロット68内とを連通する連通孔85が開口していなくてもよい。
【0092】
○ 実施形態において、絶縁部材75の長手方向で隣り合うリブ80同士の間隔が一定でなくてもよい。
○ 実施形態において、リブ80の数は特に限定されるものではない。
【0093】
○ 実施形態において、絶縁部材75がリブ80を有していなくてもよい。
○ 実施形態において、凹部79が、支持面78におけるスロット68内に位置する部分から支持面78におけるステータコア56の第1端面56a及び第2端面56bそれぞれから突出している部分まで延びていなくてもよい。要は、凹部79は、支持面78には、スロットオープン69に臨む凹部79が形成されていればよい。
【0094】
○ 実施形態において、支持面78に凹部79が形成されていなくてもよい。
○ 実施形態において、絶縁部材75は、三角柱状でなくてもよい。要は、絶縁部材75は、絶縁部材75の長手方向に位置する端面75dに開口するサーミスタ挿入孔81を有する柱状であればよい。
【0095】
○ 実施形態において、絶縁部材75の支持面78は、スロット絶縁シート74を介さずに、各鍔部67に直接接触した状態で各鍔部67に支持されていてもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、第2インペラ52を備えていない構成であってもよい。
【0096】
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、第2インペラ52に代えて、タービンホイールを備えている構成であってもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、遠心式でなくてもよく、例えば、スクロール式、ピストン式、又はベーン式等であってもよい。要は、電動圧縮機10は、回転軸50の回転に伴って駆動して流体を圧縮する圧縮機構を備えたものであればよい。
【0097】
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、燃料電池車に搭載されていなくてもよい。要は、電動圧縮機10は、車両に搭載されるものに限定されるものではない。
上記実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
【0098】
<付記1>
円筒状のヨーク、及び前記ヨークの内周面から延びる複数のティースを有し、前記ヨークの周方向で隣り合うティースの間にスロットが形成されているステータコアと、
前記各ティースに巻線が前記スロットを通過しながら集中巻きで巻回されることにより形成されるコイルと、
前記コイルの温度を測定するサーミスタと、を備えている回転電機のステータであって、
前記スロット内には、柱状の絶縁部材が前記スロット内において前記周方向で隣り合うコイル同士の間に配置されており、
前記絶縁部材は、前記絶縁部材の長手方向に位置する端面に開口するサーミスタ挿入孔を有し、
前記サーミスタは、前記サーミスタ挿入孔内に挿入された状態で前記絶縁部材に保持されていることを特徴とする回転電機のステータ。
【0099】
<付記2>
前記サーミスタと前記絶縁部材における前記サーミスタ挿入孔を区画する内面との間には、樹脂が充填されていることを特徴とする<付記1>に記載の回転電機のステータ。
【0100】
<付記3>
前記サーミスタは、
前記コイルの温度を測定するセンサ部と、
前記センサ部から延びるリード線と、を有し、
前記絶縁部材は、前記サーミスタにおける前記サーミスタ挿入孔に対する挿入方向に位置する孔底面を有し、
前記センサ部は、前記センサ部が前記サーミスタ挿入孔に挿入されて前記孔底面に当接したときに、予め定められた長さ分だけ前記絶縁部材の端面から突出することを特徴とする<付記1>又は<付記2>に記載の回転電機のステータ。
【0101】
<付記4>
前記ティースは、
前記ヨークの内周面から延びるティース延在部と、
前記ティース延在部の先端から前記ヨークの周方向の両側に突出する一対の鍔部と、を有し、
前記絶縁部材は、前記周方向で隣り合う鍔部同士の隙間であるスロットオープンを跨いだ状態で前記周方向で隣り合う鍔部それぞれに支持される支持面を有し、
前記支持面には、前記スロットオープンに臨む凹部が形成されており、
前記凹部は、前記サーミスタ挿入孔に連通しており、
前記凹部内には、前記絶縁部材よりも熱伝導性の高い樹脂が充填されていることを特徴とする<付記1>~<付記3>のいずれか1つに記載の回転電機のステータ。
【0102】
<付記5>
前記絶縁部材は、
前記スロット内において前記周方向で隣り合うコイルの一方を支持する第1コイル支持面と、
前記スロット内において前記周方向で隣り合うコイルの他方を支持する第2コイル支持面と、を有し、
前記第1コイル支持面及び前記第2コイル支持面には、前記凹部と前記スロット内とを連通する連通孔が開口していることを特徴とする<付記4>に記載の回転電機のステータ。
【符号の説明】
【0103】
11…回転電機、54…ステータ、56…ステータコア、57…コイル、64…ヨーク、65…ティース、66…ティース延在部、67…鍔部、68…スロット、69…スロットオープン、70…巻線、75…絶縁部材、75d…端面、76…第1コイル支持面、77…第2コイル支持面、78…支持面、79…凹部、81…サーミスタ挿入孔、81e…孔底面、85…連通孔、90…サーミスタ、91…センサ部、92…リード線、95…樹脂。