(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001687
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】発電システム、移動体及び発電方法
(51)【国際特許分類】
C01B 3/06 20060101AFI20231227BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20231227BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20231227BHJP
H10N 10/13 20230101ALI20231227BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20231227BHJP
B60L 50/70 20190101ALI20231227BHJP
B60L 58/30 20190101ALI20231227BHJP
B01J 25/02 20060101ALI20231227BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20231227BHJP
【FI】
C01B3/06
H01M8/0606
H01M8/00 Z
H01L35/30
H01M8/04 Z
B60L50/70
B60L58/30
B01J25/02 M
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100517
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】長坂 政彦
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 康孝
(72)【発明者】
【氏名】内山 晃臣
【テーマコード(参考)】
4G169
5H125
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BB03A
4G169BB03B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169CB81
5H125AA01
5H125AC07
5H125BA00
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB04
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA16
5H127BA33
5H127BA59
(57)【要約】
【課題】テトラヒドロほう酸塩を含む水溶液から水素を生成する発電システムのエネルギー効率を向上できる技術を提供する。
【解決手段】発電システムは、電力によって移動する移動体に搭載された発電システムであって、テトラヒドロほう酸塩を含む水溶液を調製する原液容器と、原液容器によって調製された水溶液を反応させて水素及びメタほう酸塩水溶液を生成する触媒を有するリアクタと、リアクタによって生成された水素と大気中酸素とを反応させて電力を得る第1電力変換器と、リアクタと移動体の外部の流体との間の温度差に応じた熱電発電により電力を得る第2電力変換器と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力によって移動する移動体に搭載された発電システムであって、
テトラヒドロほう酸塩を含む水溶液を調製する原液容器と、
前記原液容器によって調製された前記水溶液を反応させて水素及びメタほう酸塩水溶液を生成する触媒を有するリアクタと、
前記リアクタによって生成された水素と大気中酸素とを反応させて電力を得る第1電力変換器と、
前記リアクタと前記移動体の外部の流体との間の温度差に応じた熱電発電により電力を得る第2電力変換器と、
を備える発電システム。
【請求項2】
前記流体によって冷却される冷却部を備え、
前記第2電力変換器は、前記リアクタと前記冷却部との間の温度差に応じた熱電発電により電力を得る、
請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記流体が流れる流路を備え、
前記流路は、
外部から流入した前記流体が流れる第1流路と、
前記第1流路に接続され、その内部を流れる前記流体と前記リアクタとが熱交換する第2流路と、
前記第2流路に接続され、前記リアクタと熱交換した前記流体を外部に流出させる第3流路と、を含み、
前記第2電力変換器は、前記第1流路と前記第3流路との間の温度差に応じた熱電発電により電力を得る、
請求項1に記載の発電システム。
【請求項4】
前記触媒は、ラネーニッケルである、請求項1~3の何れか一項に記載の発電システム。
【請求項5】
前記水溶液は、メタほう酸塩を含む、請求項1~3の何れか一項に記載の発電システム。
【請求項6】
前記水素に含まれる水分を除去する除湿部を備える、請求項1~3の何れか一項に記載の発電システム。
【請求項7】
電力によって移動する移動体であって、
テトラヒドロほう酸塩を含む水溶液を調製する原液容器と、
前記原液容器によって調製された前記水溶液を反応させて水素及びメタほう酸塩水溶液を生成する触媒を有するリアクタと、
前記リアクタによって生成された水素と大気中酸素とを反応させて電力を得る第1電力変換器と、
前記リアクタと前記移動体の外部の流体との間の温度差に応じた熱電発電により電力を得る第2電力変換器と、
少なくとも前記第1電力変換器から得られる電力によって前記移動体を移動させる推進器と、
を備える移動体。
【請求項8】
電力によって移動する移動体の発電方法であって、
テトラヒドロほう酸塩を含む水溶液を調製する調製工程と、
触媒によって前記水溶液を反応させて水素及びメタほう酸塩水溶液を生成する水素生成工程と、
生成された前記水素と大気中酸素とを反応させて電力を得る第1電力変換工程と、
前記水素生成工程での反応熱と前記移動体の外部の流体の温度とに基づいた熱電発電により電力を得る第2電力変換工程と、
を備える発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電システム、移動体及び発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、潜水艦の発電システムを開示する。この発電システムは、水素化ホウ素亜鉛などの水溶液を反応させて水素を生成する。生成された水素は、燃料電池において酸素と反応して直流電力に変換される。水素を生成する際に生じた反応熱は、熱交換器を通して外部に吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の潜水艦は、効率的にエネルギーを使用する観点から改善の余地がある。本開示は、発電システムでの反応熱を電力に変換してエネルギー効率を向上できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る発電システムは、電力によって移動する移動体に搭載される。発電システムは、原液容器、リアクタ、第1電力変換器及び第2電力変換器を備える。原液容器は、テトラヒドロほう酸塩を含む水溶液を調製する。リアクタは、原液容器によって調製された水溶液を反応させて水素及びメタほう酸塩水溶液を生成する触媒を有する。第1電力変換器は、リアクタによって生成された水素と大気中酸素とを反応させて電力を得る。第2電力変換器は、リアクタと移動体の外部の流体との間の温度差に応じた熱電発電により電力を得る。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、テトラヒドロほう酸塩を含む水溶液から水素を生成する発電システムの反応熱を電力に変換してエネルギー効率を向上できる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る発電システムの一例を示す模式図である。
【
図2】(A)は、実施形態に係る発電システムが搭載された車の一例を示す模式図である。(B)は、実施形態に係る発電システムが搭載された車の別の例を示す模式図である。
【
図3】(A)は、実施形態に係る発電システムが搭載された船の一例を示す模式図である。(B)は、実施形態に係る発電システムが搭載された船の別の例を示す模式図である。
【
図4】(A)は、実施形態に係る発電システムが搭載された飛行体の一例を示す模式図である。(B)は、実施形態に係る発電システムが搭載された飛行体の一例を示す平面図である。
【
図5】(A)は、実施形態に係る発電システムが搭載された飛行体の別の例を示す模式図である。(B)は、実施形態に係る発電システムが搭載された飛行体の別の例を示す平面図である。
【
図6】実施形態に係る発電方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0009】
以下の説明では、テトラヒドロほう酸塩には、以下に例示したほう酸塩に対応する水素化物が含まれる。例えば、ほう酸塩としてメタほう酸塩を用いた場合、NaBH4(水素化ほう素ナトリウム)、KBH4、LiBH4、Ca(BH4)2、Mg(BH4)2等が含まれる。
【0010】
ほう酸塩としては、例えばメタほう酸塩、四ほう酸塩、五ほう酸塩等のほう酸塩が挙げられる。メタほう酸塩としては、例えばNaBO2、KBO2、LiBO2、Ca(BO2)2、Mg(BO2)2等が挙げられる。四ほう酸塩としては、例えばNa2B4O7、Na2O・2BO3、K2O・B2O3、Li2B4O7、Mg3B4O9等が挙げられる。五ほう酸塩としては、例えばNaB5O8、Na2O・5B2O3、KB5O8、K2O・5B2O9、LiB5O8等が挙げられる。また、天然のほう酸塩鉱物であるNa2B4O7・10H2O、Na2B4O7・4H2O、Ca2B6O11・5H2O、CaNaB5O9・6H2O、Mg7Cl2B17O30等を用いることもできる。入手容易性、入手コスト、化学的安定性、水素脱着容易性、水素貯蔵密度等の観点からは、ほう酸塩としてメタほう酸ナトリウムを用いることができる。
【0011】
図1は、実施形態に係る発電システム1の一例を示す模式図である。
図1に示されるように、発電システム1は、原料容器10、水容器11、原液容器20、リアクタ30、バッファ容器31、回収容器32、第1電力変換器40、第2電力変換器50及び制御部70を備える。
【0012】
原料容器10は、テトラヒドロほう酸塩を貯蔵する。原料容器10は、配管によって原液容器20に接続される。原料容器10に貯蔵されたテトラヒドロほう酸塩は、配管を介して原液容器20に供給される。原料容器10は、第1供給装置10aを介して配管に接続されてもよい。第1供給装置10aは、原料容器10から一定量のテトラヒドロほう酸塩を、配管を介して原液容器20に供給する。第1供給装置10aによって供給されるテトラヒドロほう酸塩の量は、制御部70によって制御される。第1供給装置10aは、例えばスクリューフィーダである。第1供給装置10aは、振動フィーダであってもよい。
【0013】
水容器11は、水を貯蔵する。水容器11は、配管によって原液容器20に接続される。水容器11に貯蔵された水は、配管を介して原液容器20に供給される。水容器11と原液容器20との間の配管には、第2供給装置11aが設けられてもよい。第2供給装置11aは、水容器11から一定量の水を原液容器20に供給する。第2供給装置11aによって供給される水の量は、制御部70によって制御される。第2供給装置11aは、例えばポンプである。
【0014】
原液容器20は、テトラヒドロほう酸塩を含む水溶液を調製する。原液容器20では、原料容器10から供給されたテトラヒドロほう酸塩と、水容器11から供給された水とが混合される。原液容器20の内部には、撹拌機が設けられてもよい。以下では、原液容器20で調製されたテトラヒドロほう酸塩を含む水溶液を、単に「水溶液」と記載する場合がある。水溶液に含まれるテトラヒドロほう酸塩の濃度は、予め定められた濃度に調製される。
【0015】
原液容器20は、配管によってリアクタ30に接続される。原液容器20に貯蔵された水溶液は、配管を介してリアクタ30に供給される。原液容器20とリアクタ30との間の配管には、第3供給装置20aが設けられてもよい。第3供給装置20aは、原液容器20から一定量の水溶液をリアクタ30に供給する。第3供給装置20aによって供給される水溶液の量は、制御部70によって制御される。第3供給装置20aは、例えばポンプである。
【0016】
リアクタ30は、原液容器20によって調製された水溶液を反応させて水素及びメタほう酸塩水溶液を生成する触媒を有する。例えば、リアクタ30の内部には触媒が配置される。触媒は、一例としてメッシュ触媒である。触媒の材料は、一例としてラネーニッケルである。リアクタ30の内部では、原液容器20から供給された水溶液が触媒によって反応して、水素及びメタほう酸塩水溶液が生成される。リアクタ30の内部には、噴霧ノズルが設けられてもよい。噴霧ノズルは、原液容器20から供給された水溶液を、リアクタ30の内部に配置されたメッシュ触媒に向けて噴霧する。
【0017】
触媒と接触した水溶液は、以下の式(1)で示されるように加水分解され、水素及びメタほう酸塩水溶液が生成される。生成される水素及びメタほう酸塩水溶液の量は、第3供給装置20aによって供給される水溶液の量によって調整される。生成される水素及びメタほう酸塩水溶液の量は、制御部70によって制御される。
NaBH4(aq)+2H2O→NaBO2(aq)+4H2+217kJ (1)
【0018】
バッファ容器31は、リアクタ30の下方に設けられる。リアクタ30とバッファ容器31とは、リアクタ30の内部空間とバッファ容器31の内部空間とが一つの空間を画成するように連結される。リアクタ30において生成された水素及びメタほう酸塩水溶液は、バッファ容器31に貯蔵される。バッファ容器31には、圧力センサ及び水量センサが設けられてもよい。
【0019】
バッファ容器31は、配管によって回収容器32に接続される。バッファ容器31に貯蔵されたメタほう酸塩水溶液は、配管を介して回収容器32に供給される。バッファ容器31と回収容器32との間の配管には、液体調整弁が設けられてもよい。液体調整弁は、例えば電磁弁であり、制御部70によって制御される。制御部70は、バッファ容器31に設けられた水量センサの測定値に応じて液体調整弁の開閉を制御することによって、バッファ容器31から回収容器32に供給されるメタほう酸塩水溶液の量を制御する。
【0020】
バッファ容器31は、配管によって第1電力変換器40に接続される。バッファ容器31に貯蔵された水素は、配管を介して第1電力変換器40に供給される。バッファ容器31と第1電力変換器40との間の配管には、気体調整弁31aが設けられてもよい。気体調整弁31aは、例えば電磁弁であり、制御部70によって制御される。制御部70は、バッファ容器31に設けられた圧力センサの測定値に応じて気体調整弁31aの開閉を制御することによって、バッファ容器31から第1電力変換器40に供給される水素の量を制御する。
【0021】
第1電力変換器40は、リアクタ30によって生成された水素と大気中酸素とを反応させて電力を得る。第1電力変換器40は、例えば燃料電池である。制御部70は、第1電力変換器40の起電力に応じて気体調整弁31aの開閉を制御することで、バッファ容器31から第1電力変換器40に供給される水素の量を制御してもよい。第1電力変換器40は、推進器60(後述する
図2~
図5参照)に電力を供給する。推進器60は、電力を駆動力に変換する。例えば、推進器60は、電動機である。推進器60は、駆動部61を動かすことによって、発電システム1が搭載されるシステムを移動させる。
【0022】
第2電力変換器50は、発電システム1が搭載されたシステムの外部の流体と、リアクタ30との間の温度差に応じた熱電発電により電力を得る。流体は、気体であってもよいし、液体であってもよい。第2電力変換器50は、例えば熱電素子である。第2電力変換器50は、推進器60に電力を供給してもよい。第2電力変換器50は、システムの電源又は制御部70に電力を供給してもよい。
【0023】
第2電力変換器50は、システムの外部に連通する流路52に熱的に接続される。流路52には、システムの外部の流体が流れる。流路52は、第1流路52a、第2流路52b及び第3流路52cを含む。
【0024】
第1流路52aは、システムの外部に連通する。第1流路52aには、外部から流体が流入する。第2流路52bは、第1流路52aに接続され、リアクタ30と熱的に接続される。外部から流入した流体は、第2流路52bにおいてリアクタ30と熱交換する。第3流路52cは、第2流路52bに接続され、システムの外部に連通する。リアクタ30と熱交換した流体は、第3流路52cを介して外部に流出する。第2電力変換器50は、第1流路52a及び第3流路52cと熱的に接続され、第1流路52aと第3流路52cとの間の温度差に応じた熱電発電により電力を得る。
【0025】
原液容器20で調製されるテトラヒドロほう酸塩を含む水溶液は、メタほう酸塩を含んでいてもよい。例えば、水が貯蔵される水容器11に、メタほう酸塩水溶液が貯蔵される回収容器32から、メタほう酸塩水溶液が供給されてもよい。
【0026】
発電システム1は、リアクタ30で生成される水素に含まれた水分を除去する除湿部31bを備えてもよい。除湿部31bは、例えば、バッファ容器31の水素が第1電力変換器40に向かって流れる配管に配置される。除湿部31bは、例えば、シリカゲルを含む弁である。
【0027】
図2の(A)は、実施形態に係る発電システム1が搭載された車の一例を示す模式図である。
図2の(B)は、実施形態に係る発電システム1が搭載された車の別の例を示す模式図である。車2A,2Bは、電力によって移動する移動体の一例である。車2A,2Bは、発電システム1が搭載される移動体の一実施形態である。車2A,2Bは、タイヤを備える。タイヤは、駆動部61の一例である。推進器60は、タイヤを動かすことによって、車2A,2Bを移動させる。
【0028】
図2の(A)及び(B)に示されるように、車2A,2Bでは、第2電力変換器50は、リアクタ30よりも車2A,2Bの外側に配置される。第2電力変換器50は、リアクタ30と車2A,2Bの外部の流体との間の温度差に応じた熱電発電により電力を得る。車2A,2Bの外部の流体は、大気である。この場合には、第2電力変換器50の車2A,2Bの外側に面する部分と、第2電力変換器50のリアクタ30に面する部分との間に温度差が生じやすくなるので、第2電力変換器50の発電効率を向上し得る。
【0029】
車2Aは、流路52を備える。流路52には、大気が流れる。一例として、第1流路52aは、車2Aの前側に配置される。第3流路52cは、車2Aの後側に配置される。第1流路52aと連通する開口が、車2Aの前側に形成されていてもよい。この場合、車2Aの走行速度に応じて、流路52を流れる大気の流速が増えるので、第2電力変換器50の発電効率をさらに向上し得る。
【0030】
車2Bは、冷却部51を備える。冷却部51は、大気によって冷却される。冷却部51は、第2電力変換器50と隣り合うように配置されてもよい。冷却部51は、一例として、車2Bの表面に配置されるヒートシンクである。車2Bでは、第2電力変換器50は、リアクタ30と冷却部51との間の温度差に応じた熱電発電により電力を得る。この場合、車2Aの走行速度に応じて、冷却部51が冷却されるので、第2電力変換器50の発電効率をさらに向上し得る。
【0031】
図3の(A)は、実施形態に係る発電システム1が搭載された船の一例を示す模式図である。
図3の(B)は、実施形態に係る発電システム1が搭載された船の別の例を示す模式図である。船3A,3Bは、電力によって移動する移動体の一例である。船3A,3Bは、発電システム1が搭載される移動体の一実施形態である。船3A,3Bは、スクリュを備える。スクリュは、駆動部61の一例である。推進器60は、スクリュを動かすことによって、船3A,3Bを移動させる。
【0032】
図3の(A)及び(B)に示されるように、船3A,3Bでは、第2電力変換器50は、リアクタ30よりも船3A,3Bの底側に配置される。第2電力変換器50は、リアクタ30と船3A,3Bの外部の流体との間の温度差に応じた熱電発電により電力を得る。船3A,3Bの外部の流体は、船3A,3Bの周囲の水である。この場合には、第2電力変換器50の船3A,3Bの底側に面する部分と、第2電力変換器50のリアクタ30に面する部分との間に温度差が生じやすくなるので、第2電力変換器50の発電効率を向上し得る。
【0033】
船3Aは、流路52を備える。流路52には、水が流れる。一例として、第1流路52aは、船3Aの前側に配置される。第3流路52cは、船3Aの底側に配置される。第1流路52aと連通する開口が、船3Aの前側かつ喫水線の下方に形成されてもよい。この場合、船3Aの走行速度に応じて、流路52を流れる水の流速が増えるので、第2電力変換器50の発電効率をさらに向上し得る。
【0034】
船3Bは、冷却部51を備える。冷却部51は、船3Bの周囲の水によって冷却される。冷却部51は、第2電力変換器50と隣り合うように配置されてもよい。冷却部51は、一例として、船3Bの底面に配置されるヒートシンクである。船3Bでは、第2電力変換器50は、リアクタ30と冷却部51との間の温度差に応じた熱電発電により電力を得る。この場合、船3Aの走行速度に応じて、冷却部51が冷却されるので、第2電力変換器50の発電効率をさらに向上し得る。
【0035】
図4の(A)は、実施形態に係る発電システム1が搭載された飛行体の一例を示す模式図である。
図4の(B)は、実施形態に係る発電システム1が搭載された飛行体の一例を示す平面図である。飛行体は、移動体の一例である。飛行体4Aは、電力によって飛行する飛行体の一例である。飛行体4Aは、発電システム1が搭載される飛行体の一実施形態である。飛行体4Aは、プロペラを備える。プロペラは、駆動部61の一例である。推進器60は、プロペラを動かすことによって、飛行体4Aを飛行させる。
【0036】
図4の(A)及び(B)に示されるように、飛行体4Aでは、推進器60は、プロペラを回転させて飛行体4Aを飛行させる。一例として、飛行体4Aは、クアッドコプターである。飛行体4Aは、流路52を備える。流路52には、大気が流れる。一例として、第1流路52aは、飛行体4Aのプロペラが発生する気流が当たる位置に配置される。第3流路52cは、飛行体4Aの底側に配置される。第1流路52aと連通する開口が、飛行体4Aのプロペラが発生する気流が当たる位置に形成されてもよい。この場合、飛行体4Aのプロペラの回転速度に応じて、流路52を流れる大気の流速が増えるので、第2電力変換器50の発電効率をさらに向上し得る。
【0037】
図5の(A)は、実施形態に係る発電システム1が搭載された飛行体の別の例を示す模式図である。
図5の(B)は、実施形態に係る発電システム1が搭載された飛行体の別の例を示す平面図である。飛行体4Bは、電力によって飛行する飛行体の一例である。飛行体4Bは、発電システム1が搭載される飛行体の一実施形態である。飛行体4Bは、プロペラを備える。推進器60は、プロペラを動かすことによって、飛行体4Aを飛行させる。
【0038】
図5の(A)及び(B)に示されるように、飛行体4Bでは、推進器60は、プロペラを回転させて飛行体4Bを飛行させる。一例として、飛行体4Bは、クアッドコプターである。飛行体4Bは、冷却部51を備える。冷却部51は、大気によって冷却される。冷却部51は、第2電力変換器50と隣り合うように配置されてもよい。冷却部51は、一例として、飛行体4Bのプロペラが発生する気流が当たる位置に配置されるヒートシンクである。飛行体4Bでは、第2電力変換器50は、リアクタ30と冷却部51との間の温度差に応じた熱電発電により電力を得る。この場合、飛行体4Bのプロペラの回転速度に応じて、冷却部51が冷却されるので、第2電力変換器50の発電効率をさらに向上し得る。
【0039】
実施形態に係る発電システム1が搭載される飛行体は、クアッドコプターには限定されない。実施形態に係る発電システム1が搭載される飛行体は、飛行機、ヘリコプター、飛行船、グライダー又はロケット等であってもよい。当該飛行機は、ジェット機及びプロペラ機の何れであってもよい。
【0040】
図6は、実施形態に係る発電方法の一例を示すフローチャートである。発電方法は、例えば、発電システム1の制御部70によって実行される。発電システム1は、移動体又は飛行体に搭載される。当該発電方法は、制御部70などを操作する作業者によって実行されてもよい。以下では、一例として、制御部70が発電方法を実行する例について説明する。
【0041】
最初に、制御部70は、テトラヒドロほう酸塩を含む水溶液を調製する調製工程(ステップS10)を実行する。制御部70は、第1供給装置10a及び第2供給装置11aを操作して、所定の濃度のテトラヒドロほう酸塩を含む水溶液を調製してもよい。
【0042】
次に、制御部70は、触媒によって水溶液を反応させて水素及びメタほう酸塩水溶液を生成する水素生成工程(ステップS20)を実行する。水溶液は、調製工程(ステップS10)で調製された水溶液である。制御部70は、第3供給装置20aを操作して、反応する当該水溶液の量を制御してもよい。
【0043】
次に、制御部70は、生成された水素と大気中酸素とを反応させて電力を得る第1電力変換工程を実行する(ステップS30)。水素は、水素生成工程(ステップS20)で生成された水素である。制御部70は、気体調整弁31aを制御することによって、バッファ容器31から第1電力変換器40に向かって流れる水素の量を制御してもよい。
【0044】
最後に、制御部70は、水素生成工程(ステップS20)での反応熱と、発電システム1が搭載された移動体又は飛行体の外部の流体との温度とに基づいた熱電発電により電力を得る第2電力変換工程(ステップS40)を実行する。
【0045】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、本開示は上記実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。
【0046】
ここで、本開示に含まれる種々の例示的実施形態を、以下の条項1~8に記載する。
【0047】
[条項1]
電力によって移動する移動体に搭載された発電システムであって、
テトラヒドロほう酸塩を含む水溶液を調製する原液容器と、
前記原液容器によって調製された前記水溶液を反応させて水素及びメタほう酸塩水溶液を生成する触媒を有するリアクタと、
前記リアクタによって生成された水素と大気中酸素とを反応させて電力を得る第1電力変換器と、
前記リアクタと前記移動体の外部の流体との間の温度差に応じた熱電発電により電力を得る第2電力変換器と、を備える発電システム。
【0048】
この発電システムでは、第1電力変換器及び第2電力変換器の双方から電力が得られるので、第2電力変換器を備えない発電システムと比べて、発電システムのエネルギー効率を向上できる。
【0049】
[条項2]
前記流体によって冷却される冷却部を備え、
前記第2電力変換器は、前記リアクタと前記冷却部との間の温度差に応じた熱電発電により電力を得る、
条項1に記載の、発電システム。
この発電システムでは、冷却部を冷却する流体の流量は、移動体の移動速度に応じて増加するので、発電システムのエネルギー効率をさらに向上できる。
【0050】
[条項3]
前記流体が流れる流路を備え、
前記流路は、
外部から流入した前記流体が流れる第1流路と、
前記第1流路に接続され、その内部を流れる前記流体と前記リアクタとが熱交換する第2流路と、
前記第2流路に接続され、前記リアクタと熱交換した前記流体を外部に流出させる第3流路と、を含み、
前記第2電力変換器は、前記第1流路と前記第3流路との間の温度差に応じた熱電発電により電力を得る、
条項1又は条項2に記載の、発電システム。
この発電システムでは、流路を流れる流体の流量は、移動体の移動速度に応じて増加するので、発電システムのエネルギー効率をさらに向上できる。
【0051】
[条項4]
前記触媒は、ラネーニッケルである、条項1~3の何れか一項に記載の発電システム。
【0052】
[条項5]
前記水溶液は、メタほう酸塩を含む、条項1~4の何れか一項に記載の発電システム。
この発電システムでは、テトラヒドロほう酸塩を含む水溶液の反応によって得られたメタほう酸塩を含む水溶液が再利用されるので、発電システムの構成を小型化し得る。
【0053】
[条項6]
前記水素に含まれる水分を除去する除湿部を備える、条項1~5の何れか一項に記載の発電システム。
【0054】
[条項7]
電力によって移動する移動体であって、
テトラヒドロほう酸塩を含む水溶液を調製する原液容器と、
原液容器によって調製された水溶液を反応させて水素及びメタほう酸塩水溶液を生成する触媒を有するリアクタと、
リアクタによって生成された水素と大気中酸素とを反応させて電力を得る第1電力変換器と、
リアクタと移動体の外部の流体との間の温度差に応じた熱電発電により電力を得る第2電力変換器と、
少なくとも第1電力変換器から得られる電力によって移動体を移動させる推進器と、を備える移動体。
【0055】
[条項8]
電力によって移動する移動体の発電方法であって、
テトラヒドロほう酸塩を含む水溶液を調製する調製工程と、
触媒によって前記水溶液を反応させて水素及びメタほう酸塩水溶液を生成する水素生成工程と、
生成された前記水素と大気中酸素とを反応させて電力を得る第1電力変換工程と、
前記水素生成工程での反応熱と前記移動体の外部の流体の温度とに基づいた熱電発電により電力を得る第2電力変換工程と、
を備える、発電方法。
【0056】
以下、実施形態に係る発電システム及び移動方法の効果を説明すべく、本発明者が実施した実施例について説明する。実施例での電動移動体の制御及び温度測定信号の処理は、PLC(Programmable Logic Controller)を使って実行された。
【0057】
(実施例1)
原料容器10に貯蔵された水素化ほう素ナトリウムを、第1供給装置10aであるスクリューフィーダを10秒間作動させ47g切り出しした。切り出しされた水素化ほう素ナトリウムを、配管を通して、原液容器20に投入した。
【0058】
水容器11に貯蔵された水を、配管を通して第2供給装置11aであるポンプで308mL送り出した。送り出された水を、配管を通して、原液容器20に投入した。原液容器20内に投入された水素化ほう素ナトリウムと水とを撹拌して、水素化ほう素ナトリウム水溶液を調製した。以下では、水素化ほう素ナトリウム水溶液を「原液」と記載する場合がある。
【0059】
原液容器20に貯蔵された原液を、第3供給装置20aであるポンプで送り出した。送り出された原液は、リアクタ30内に配置された噴霧ノズルによって、リアクタ30内のラネーニッケルに噴霧された。リアクタ30内には、保持メッシュに保持された330gのラネーニッケルが充填されていた。
【0060】
原液は、ラネーニッケルと接触することによって、上述した式(1)で示される加水分解され、水素及びメタほう酸塩水溶液が生成された。式(1)の反応による反応熱によって、リアクタ30内に充填されたラネーニッケルの温度が上昇した。式(1)の反応によって発生したメタほう酸ナトリウム水溶液及び水素は、ラネーニッケルを通過して、リアクタ30の下方に設けられたバッファ容器31内に流入した。
【0061】
バッファ容器31内に流入したメタほう酸ナトリウム水溶液と水素は気液分離した。メタほう酸ナトリウム水溶液は、回収容器32に流入した。水素は、気体調整弁31aによって減圧されたうえで、第1電力変換器40である固体高分子型燃料電池に供給された。固体高分子型燃料電池において発電が行われた。固体高分子型燃料電池が発電した電力は0.95kWで安定していた。
【0062】
固体高分子型燃料電池から得られた電力によって、誘導電動機(定格1kW)を駆動させた。誘導電動機が発生した推力によって、電動移動体(4輪自動車)を推進させた。電動移動体は、20km/hの速度で走行した。
【0063】
推進した電動移動体は、第1流路52aを介して電動移動体の内部に外部の気流を取り入れた。リアクタ30での反応熱は、第2流路52bを流れる気流と熱交換された。リアクタ30と熱交換した気流は、第3流路を介して外部へ排出された。
【0064】
第2電力変換器50であるペルチェ素子は、第1流路52aと第3流路52cとの温度差に応じた熱電発電により電力を得た。ペルチェ素子によって発電された電動移動体の推進用電源に使用された。電力は約50Wであった。ペルチェ素子によって発電された電力は、専用回路を通して、電動移動体の推進に用いられた。
【0065】
(実施例2)
以下では、誘導電動機が発生した推力によって、電動移動体(ボート)を推進させた実施例について説明する。固体高分子型燃料電池が発電するまでの工程は、上述した実施例1と同じである。
【0066】
固体高分子型燃料電池から得られた電力によって、誘導電動機(定格1kW)を駆動させた。誘導電動機が発生した推力によって、電動移動体(ボート)を推進させた。電動移動体は、5.4ノットの速度で航行した。
【0067】
推進した電動移動体は、第1流路52aを介して電動移動体の内部に外部の水流を取り入れた。リアクタ30での反応熱は、第2流路52bを流れる水流と熱交換された。リアクタ30と熱交換した水流は、第3流路を介して外部へ排出された。
【0068】
第2電力変換器50であるペルチェ素子は、第1流路52aと第3流路52cとの温度差に応じた熱電発電により電力を得た。ペルチェ素子によって発電された電動移動体の推進用電源に使用された。電力は約50Wであった。ペルチェ素子によって発電された電力は、専用回路を通して、電動移動体の推進に用いられた。
【0069】
(実施例3)
以下では、誘導電動機が発生した推力によって、電動飛行体(クアッドコプター)を飛行させた実施例について説明する。固体高分子型燃料電池が発電するまでの工程は、上述した実施例1,2と同じである。
【0070】
固体高分子型燃料電池から得られた電力によって、4台の誘導電動機(定格0.25kW)を駆動させた。各誘導電動機の駆動に応じて、各誘導電動機に対応して設けられたプロペラが回転する。4台の誘導電動機が発生した推力によって、電動移動体は、高度10mに達するまで飛行した。
【0071】
飛行した電動飛行体は、第1流路52aを介して電動飛行体の内部に外部の気流を取り入れた。リアクタ30での反応熱は、第2流路52bを流れる気流と熱交換された。リアクタ30と熱交換した気流は、第3流路を介して外部へ排出された。
【0072】
第2電力変換器50であるペルチェ素子は、第1流路52aと第3流路52cとの温度差に応じた熱電発電により電力を得た。ペルチェ素子によって発電された電動飛行体の推進用電源に使用された。電力は約50Wであった。ペルチェ素子によって発電された電力は、専用回路を通して、電動飛行体の推進に用いられた。
【符号の説明】
【0073】
1…発電システム、20…原液容器、30…リアクタ、31b…除湿部、40…第1電力変換器、50…第2電力変換器、51…冷却部、52…流路、52a…第1流路、52b…第2流路、52c…第3流路、60…推進器。