(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168713
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】研磨用シリカ系粒子分散液およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20241128BHJP
C01B 33/143 20060101ALI20241128BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20241128BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241128BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20241128BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C01B33/143
C09K3/14 550Z
C09G1/02
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085610
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】向井 達也
(72)【発明者】
【氏名】中山 和洋
【テーマコード(参考)】
3C158
4G072
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AC04
3C158BA02
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3C158BA05
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4G072AA25
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4G072UU30
5F057AA03
5F057AA28
5F057BA30
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5F057DA03
5F057EA01
5F057EA07
5F057EA15
5F057EA27
5F057EA31
(57)【要約】
【課題】研磨スラリーとして使用した場合に、うねりを小さくでき、かつ研磨速度を高くできる研磨用シリカ系粒子分散液の提供。
【解決手段】以下を満たす、粒子の内部に向かって窪んだ部分を有する窪み型シリカ系粒子を含む粒子群が溶媒に分散してなる研磨用シリカ系粒子分散液。粒子群の平均粒子径が特定範囲内であること。粒子群の重量換算粒子径分布が特定形状であること。粒子群の細孔容積が特定範囲内であること。窪み型シリカ系粒子は粒子の輪郭線が粒子の内部に向かって凹状に窪んだ部分を有し、該凹状に窪んだ部分を挟んだ粒子輪郭上の2点に接する接線Mから垂直方向に下した直線と、粒子輪郭線とが交わる点までの接線Mからの最大の長さをLとしたときLが特定範囲であること。粒子群の比表面積換算粒子径Deに対するLaの比特定値以上になること。ここでLaは粒子群中の窪み型シリカ系粒子における前記長さLの個数平均値を表す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の[1]~[5]を満たす、粒子の内部に向かって窪んだ部分を有する窪み型シリカ系粒子を含む粒子群が溶媒に分散してなる研磨用シリカ系粒子分散液。
[1]前記粒子群の動的光散乱法による平均粒子径(Dd)が40~300nmの範囲内であること。
[2]前記粒子群の重量換算粒子径分布において、粒子径の小さい方からの累積10%粒子径(D10)、累積90%粒子径(D90)および累積50%粒子径(D50)が、次式を満たすこと。
式:1.6≦(D90-D10)/D50≦5
[3]前記粒子群の窒素吸着法による細孔容積が0.1~0.35ml/gの範囲内であること。
[4]前記窪み型シリカ系粒子は、電子顕微鏡写真または画像において、粒子の輪郭線が粒子の内部に向かって凹状に窪んだ部分を有し、該凹状に窪んだ部分を挟んだ粒子輪郭上の2点に接する接線Mから接線Mに垂直方向に下した直線と、粒子輪郭線とが交わる点までの接線Mからの最大の長さをLとしたとき、L≧3nmであること。
[5]前記粒子群の比表面積換算粒子径Deに対するLaの比(La/De)が0.15以上になる。(ここでLaは、前記粒子群中の前記窪み型シリカ系粒子における前記長さLの個数平均値を表す。)
【請求項2】
前記粒子群における前記窪み型シリカ系粒子の含有率が25~90質量%である、請求項1に記載の研磨用シリカ系粒子分散液。
【請求項3】
前記窪み型シリカ系粒子の長径/短径比の平均値が1.34~5の範囲にある、請求項1または請求項2に記載の研磨用シリカ系粒子分散液。
【請求項4】
下記工程(a)~(c)を備える研磨用シリカ系粒子分散液の製造方法。
工程(a):珪酸アルカリ水溶液に、酸性珪酸液とハロゲン化アルカリとを添加して混合し、シリカモル数(MTS)とハロゲン化アルカリのモル数(MH)との比((MTS)/(MH))が2~100であって、シリカ濃度が10~18質量%の範囲内である前駆体分散液を調製する工程。
工程(b):前記前駆体分散液を50~95℃に保持し、続いて同温度範囲を維持しながら前記酸性珪酸液を連続的に又は断続的に添加し、種粒子分散液を調製する工程。
工程(c):前記種粒子分散液に含まれるSiO2に対して2~100倍のモル数のSiO2を含む前記酸性珪酸液を、前記種粒子分散液に添加してシリカ系粒子分散液を得る工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク基板研磨用研磨スラリーあるいは磁気ディスク基板研磨用組成物に好適な研磨用シリカ系粒子分散液と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨用粒子としては、従来、シリカゾルやヒュームドシリカおよびヒュームドアルミナ等が用いられている。半導体の集積回路付基板の製造においては、シリコンウェハー上にアルミニウムの配線を形成し、この上に絶縁膜としてシリカ等の酸化膜を設ける。この場合に配線による凹凸が生じるので、この酸化膜を研磨して平坦化することが行われている。このような基板の研磨において、研磨後の表面は段差や凹凸がなく平坦で、さらにミクロな傷等もなく平滑であること、および高い研磨速度が求められている。
【0003】
高い研磨速度を得る方法としては、サイズの大きな砥粒を使用することが一般的である。しかし、砥粒の粒子径が大きくなり過ぎると、研磨後の基板表面の平坦性が悪化する傾向にある。そこで、表面の平坦性を悪化させることなく高い研磨速度を得るために、砥粒を非球形とする、つまり砥粒を異形形状の粒子(異形粒子)とすることが有効である事が知られている。サイズの大きな異形形状の粒子を得る方法として、特許文献1のように、多孔質シリカゲルをビーズミルなどによって粉砕して異形多孔質ゲルを調製し、この異形多孔質ゲルを珪酸などによって粒子成長させることで、サイズが大きく、異形度の高い異形形状の粒子を得る方法が知られている。
【0004】
高い研磨速度を得る別の方法としては、特許文献2のように、珪酸アルカリ水溶液と酸性珪酸液にハロゲン化アルカリを添加し、ハロゲン化アルカリとシリカのモル比を0.01~0.5として、加熱攪拌し、レイノルズ数が2000~1,000,000の範囲で攪拌しながら酸性珪酸液を添加することで、一次粒子が少なくとも4個以上クラスター化したシリカ粒子の製造法が知られている。
【0005】
高い研磨速度を得るさらに別の方法としては、特許文献3のように珪酸アルキルを加水分解して得られる加水分解液を、アルカリ触媒及び水を含む液に添加して、混合液のpHを制御することで、屈曲構造及び/または分岐構造をもつ非球形のシリカ粒子、すなわち異形シリカ粒子を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-177576号公報
【特許文献2】特許第6207345号公報
【特許文献3】国際公開2010/035613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の研磨用組成物は、研磨速度は高いものの、研磨後の基板表面において高い平坦性を得ようとした場合は、異形粒子の粒子径をより小さく調製する必要があった。特許文献1の方法を用いて粒子径を小さくしようとした場合、原料に使用する多孔質シリカゲルを更に小さなサイズに粉砕するために繰り返し粉砕を行う必要がある。繰り返し粉砕を行うことで異形多孔質ゲルのサイズを小さくすることはできるが、同時に異形多孔質ゲルの異形度も低くなる。その結果として、珪酸などにより粒子成長させた後の異形シリカ粒子の異形度も低くなるため、研磨速度が低下するといった問題があった。また、異形多孔質ゲルを所定のサイズに粉砕するためには、何度も繰り返して粉砕を行う必要があるため、非効率で経済的でないという課題もあった。
【0008】
また、特許文献2に記載のシリカ粒子は、球状のシリカ粒子と比較して研磨速度は高いものの、ハードディスクの一次研磨用途においては、より高い研磨速度が求められており、さらに高い研磨速度を実現しながら、同時に、うねりなどの研磨基板の表面の平坦性は、より低くすることが求められている。すなわち、特許文献2の記載のシリカ粒子は、研磨速度は高いものの、高い研磨速度と低うねりを両立すること出来ないという課題があった。
【0009】
また、特許文献3に記載のコロイダルシリカは、ケイ酸アルキルを加水分解して得られる加水分解液を用いて屈曲構造及び/または分岐構造を備える粒子が開示されているが、該コロイダルシリカは原料にケイ酸アルキルを用いているため、非常に高価であり経済性が非常に悪く、ハードディスク用途には適用できないという課題があった。さらに筆者らが実際に再現実験を行ったところ、屈曲または分岐構造は得られるものの、ケイ酸アルカリを原料とした異形シリカ粒子と比較すると、粒子の硬さが不足しているためか、研磨速度が著しく遅いという課題もあった。
【0010】
本発明は、研磨スラリーとして使用した場合に、うねりを小さくでき、かつ研磨速度を高くできる研磨用シリカ系粒子分散液およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)~(4)である。
(1)以下の[1]~[5]を満たす、粒子の内部に向かって窪んだ部分を有する窪み型シリカ系粒子を含む粒子群が溶媒に分散してなる研磨用シリカ系粒子分散液。
[1]前記粒子群の動的光散乱法による平均粒子径(Dd)が40~300nmの範囲内であること。
[2]前記粒子群の重量換算粒子径分布において、粒子径の小さい方からの累積10%粒子径(D10)、累積90%粒子径(D90)および累積50%粒子径(D50)が、次式を満たすこと。
式:1.6≦(D90-D10)/D50≦5
[3]前記粒子群の窒素吸着法による細孔容積が0.1~0.35ml/gの範囲内であること。
[4]前記窪み型シリカ系粒子は、電子顕微鏡写真または画像において、粒子の輪郭線が粒子の内部に向かって凹状に窪んだ部分を有し、該凹状に窪んだ部分を挟んだ粒子輪郭上の2点に接する接線Mから接線Mに垂直方向に下した直線と、粒子輪郭線とが交わる点までの接線Mからの最大の長さをLとしたとき、L≧3nmであること。
[5]前記粒子群の比表面積換算粒子径Deに対するLaの比(La/De)が0.15以上になる。(ここでLaは、前記粒子群中の前記窪み型シリカ系粒子における前記長さLの個数平均値を表す。)
(2)前記粒子群における前記窪み型シリカ系粒子の含有率が25~90質量%である、上記(1)に記載の研磨用シリカ系粒子分散液。
(3)前記窪み型シリカ系粒子の長径/短径比の平均値が1.34~5の範囲にある、上記(1)または(2)に記載の研磨用シリカ系粒子分散液。
(4)下記工程(a)~(c)を備える研磨用シリカ系粒子分散液の製造方法。
工程(a):珪酸アルカリ水溶液に、酸性珪酸液とハロゲン化アルカリとを添加して混合し、シリカモル数(MTS)とハロゲン化アルカリのモル数(MH)との比((MTS)/(MH))が2~100であって、シリカ濃度が10~18質量%の範囲内である前駆体分散液を調製する工程。
工程(b):前記前駆体分散液を50~95℃に保持し、続いて同温度範囲を維持しながら前記酸性珪酸液を連続的に又は断続的に添加し、種粒子分散液を調製する工程。
工程(c):前記種粒子分散液に含まれるSiO2に対して2~100倍のモル数のSiO2を含む前記酸性珪酸液を、前記種粒子分散液に添加してシリカ系粒子分散液を得る工程。
【発明の効果】
【0012】
例えば、磁気ディスク基板の研磨するための研磨スラリーまたは研磨用組成物として本発明の研磨用シリカ系粒子分散液を用いると、十分な研磨速度を示し、更に被研磨基板上での「うねり」の発生も抑制することが可能である。本発明は、このような研磨用シリカ系粒子分散液を提供し、さらにその製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、窪み型シリカ系粒子を電子顕微鏡(走査型電子顕微鏡等)を用いて観察して得られる写真または画像のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明について説明する。
本発明は、粒子の内部に向かって窪んだ部分を有する窪み型シリカ系粒子を含む粒子群が溶媒に分散してなる研磨用シリカ系粒子分散液であり、以下の[1]~[5]を満たす。
[1]前記粒子群の動的光散乱法による平均粒子径(Dd)が40~300nmの範囲内であること。
[2]前記粒子群の重量換算粒子径分布において、粒子径の小さい方からの累積10%粒子径(D10)、累積90%粒子径(D90)および累積50%粒子径(D50)が、次式を満たすこと。
式:1.6≦(D90-D10)/D50≦5
[3]前記粒子群の窒素吸着法による細孔容積が0.1~0.35ml/gの範囲内であること。
[4]前記窪み型シリカ系粒子は、電子顕微鏡写真または画像において、粒子の輪郭線が粒子の内部に向かって凹状に窪んだ部分を有し、該凹状に窪んだ部分を挟んだ粒子輪郭上の2点に接する接線Mから接線Mに垂直方向に下した直線と、粒子輪郭線とが交わる点までの接線Mからの最大の長さをLとしたとき、L≧3nmであること。
[5]前記粒子群の比表面積換算粒子径Deに対するLaの比(La/De)が0.15以上になる。(ここでLaは、前記粒子群中の前記窪み型シリカ系粒子における前記長さLの個数平均値を表す。)
このようなシリカ系粒子分散液を、以下では「本発明の分散液」ともいう。
【0015】
また、本発明の分散液が含む粒子群を、以下では「本発明の粒子群」ともいう。なお、本発明において「粒子群」の文言は、多数の粒子の集合を意味する。
【0016】
また、本発明は、下記工程(a)~(c)を備える研磨用シリカ系粒子分散液の製造方法である。
工程(a):珪酸アルカリ水溶液に、酸性珪酸液とハロゲン化アルカリとを添加して混合し、シリカモル数(MTS)とハロゲン化アルカリのモル数(MH)との比((MTS)/(MH))が2~100であって、シリカ濃度が10~18質量%の範囲内である前駆体分散液を調製する工程。
工程(b):前記前駆体分散液を50~95℃に保持し、続いて同温度範囲を維持しながら前記酸性珪酸液を連続的に又は断続的に添加し、種粒子分散液を調製する工程。
工程(c):前記種粒子分散液に含まれるSiO2に対して2~100倍のモル数のSiO2を含む前記酸性珪酸液を、前記種粒子分散液に添加してシリカ系粒子分散液を得る工程。
このような製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
【0017】
本発明の分散液は、本発明の製造方法によって製造することが好ましい。
【0018】
<窪み型シリカ系粒子>
窪み型シリカ系粒子について説明する。
窪み型シリカ系粒子は粒子の内部に向かって窪んだ部分を有する。
【0019】
窪み型シリカ系粒子について、
図1を用いて説明する。
図1は、窪み型シリカ系粒子を電子顕微鏡(走査型電子顕微鏡等)を用いて観察して得られる写真または画像のイメージ図である。
図1に示すように、粒子の内部に向かって凹状に窪んだ部分において、粒子輪郭の2点(A点およびB点)に接する1本の接線Mを引き、その接線Mから粒子輪郭まで、接線Mに垂直方向に直線を下し、直線の長さ(接線Mから粒子輪郭までの長さ)をLとしたとき、L≧3nmとなる粒子を、窪み型シリカ系粒子とする。
【0020】
窪み型シリカ系粒子に該当し得るものとして、非球状粒子、粒子連結型粒子、板状粒子、湾曲状粒子、細長い粒子、分岐状粒子が挙げられる。
【0021】
なお、窪み型シリカ系粒子がシリカからなることは、例えば、ICP装置(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)により確認することができる。窪み型シリカ系粒子を含む水分散液1gを容量30mlの蓋付きジルコニアボールに採取し、乾燥(200℃、20分)、焼成(700℃、5分)した後、Na2O22gとNaOH1gを加えて15分間溶融する。さらに、HCl50mlと水200mlを加えて溶解したのち、純水で500mlになるよう希釈して試料とした。得られた試料について、ICP装置(島津製作所(株)製、ICPS-8100、解析ソフトウェアICPS-8000)を用いて、ケイ素の含有量を測定することができる。そして、ケイ素の含有率が90質量%以上であった場合、その粒子はシリカからなると判断するものとする。
【0022】
窪み型シリカ系粒子はそれ自体の形状に起因して、研磨粒子として用いた場合に転動し難いため、基板と砥粒間の動摩擦係数が高くなり研磨速度が高くなる。また窪んだ形状であることはすなわち異形粒子または連結型等の形状である。そのため、基板との接触面積が高くなり、研磨速度が高くなる。一方で、基板と砥粒の接触面積が高いため、基板への局所的な応力集中が緩和され、すなわち比較的応力が分散されて研磨が行われるため、基板の表面粗さやうねりが良化する傾向にある。
また、本発明の窪み型シリカ系粒子は、1.6≦(D90-D10)/D50≦5を満たす粒子径分布を備えている。すなわち粒子径分布が広いため、サイズの小さな粒子も多く含んでいる。また窪み型シリカ系粒子の含有率は25~90質量%であることが好ましく、その場合、窪み型以外にも真球状でサイズの小さなシリカ系粒子を多く含んでいる。そのため、研磨時に砥粒が研磨パッドによって基板に押し付けられ、砥粒がパッド表面で濃縮、すなわち砥粒群がパッドの凸部で密な構造を形成する際に、窪み型シリカ系粒子が有する窪んだ部分に真球状などの微小な粒子が入り込むため、研磨パッドと基板間に、空隙が少なく、より緻密なシリカ系粒子群がパッキングされた構造が形成されながら研磨が行われる。そのため、研磨基板と砥粒の接触面積が高くなる。また窪み型粒子の窪んだ部分に微小粒子が入り込んだ構造が形成されたり、緻密なシリカ系粒子群の構造が形成されると砥粒または砥粒群の転動が抑止されると考えられる。このような効果により基板と接触面積が高く、応力が分散されるため、研磨速度が高く、かつ基板の表面粗さやうねりなどが良化すると推定している。
【0023】
窪み型シリカ系粒子は、本発明の粒子群の少なくとも一部を構成する。そして、本発明の粒子群が溶媒に分散してなるものが本発明の分散液である。
本発明の分散液を研磨材として用いると、高い研磨速度を示しながら、被研磨基板表面の「うねり」や「表面粗さ」を緩和、すなわち平滑にすることができる。
【0024】
なお、本発明の粒子群はシリカからなるが、シリカ以外の成分を10質量%以下含有してもよい。シリカ以外の成分としてAl、Ti、Fe、Ca、Mg、Cr、Ni、Cu、Zn、KまたはNaないしそれらの酸化物を挙げることができる。
本発明の粒子群がシリカからなることは、前記のとおり、例えばICP装置を用いて確認することができる。
また、本発明の粒子群が含み得るシリカ以外の成分の含有率は、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析装置を用いて特定と定量をすることができる。なお、Ni、Cu、KおよびNaについては、原子吸光分光光度計を用いて、特定と定量をすることができる。
【0025】
窪み型シリカ系粒子の本発明の粒子群における含有率について説明する。
シリカ系粒子分散液を電子顕微鏡(走査型電子顕微鏡写真等)を用いて倍率20万倍で観察し、同一視野内に200個以上の粒子を含むように撮影し、得られた写真または画像内の粒子について、
図1を用いて説明した上記のような方法によって、その粒子が窪み型シリカ系粒子に該当するか否かを確認する。具体的には、同一視野内において無作為に選び出した200個の粒子について、窪み型シリカ系粒子に該当するか否かを確認し、200個の粒子のうち、窪み型シリカ系粒子に該当するものの個数比率(含有率)を算出する。
【0026】
このようにして算出した、粒子群における窪み型シリカ系粒子の含有率が25~90質量%であることが好ましく、30~85質量%であることがより好ましく、40~80質量%であることがもっとも好ましい。
粒子群における窪み型シリカ系粒子の含有率がこのような範囲であると、本発明の分散液を研磨用と粒子として用いた場合に、窪み型シリカ系粒子における窪んでいる部分へ微小な粒子が入り込み易く、その結果、高研磨速度を達ししつつ、基板表面のうねりや表面粗さを緩和、すなわち平滑にすることができる。
なお、前記200個の粒子のうち、窪み型シリカ系粒子に該当する粒子における前記長さ(L)の個数平均値を求め、その値を個数平均値Laとする。
【0027】
<平均粒子径(Dd)>
本発明の粒子群の動的光散乱法による平均粒子径(Dd)は40~300nmが好ましく、80~250nmであることがより好ましく、100~200nmが更に好ましく、120~170nmであることが最も好ましい。
平均粒子径(Dd)が40~300nmの範囲であると、本発明の分散液を研磨材として用いた場合に、高い研磨速度を得ることができ、さらに研磨対象物への研磨砥粒の残留も抑止でき、加えて、研磨対象物におけるスクラッチ発生も抑制することができ、うねりや表面粗さも抑制し、研磨対象物の表面をより平滑化することができる。
平均粒子径(Dd)が低すぎると、本発明の分散液を研磨材として使用した場合に研磨速度が低くなる傾向がある。平均粒子径(Dd)が高すぎると、うねりや表面粗さが悪化し、更にスクラッチが発生しやすくなる傾向がある。
【0028】
なお、本発明の粒子群の平均粒子径(Dd)は、次に説明する動的光散乱法によって測定して得た値を意味するものとする。
具体的には、シリカ濃度が1質量%のシリカ粒子分散液を調整し、粒度分布測定装置(大塚電子製「nanoSAQLA」)を用いて測定した。分散媒には0.58質量%濃度のアンモニア水を使用した。
【0029】
<粒子群の重量換算粒子径分布>
本発明の粒子群における重量換算粒子径分布は、粒子径の小さい方からの累積10%粒子径(D10)、累積90%粒子径(D90)および累積50%粒子径(D50)が、次式を満たす。
式:1.6≦(D90-D10)/D50≦5
【0030】
ここで(D90-D10)/D50の範囲は、1.6~5の範囲が好ましい。
重量換算粒子径分布における(D90-D10)/D50の値は、粒子径分布の広さを示しており、(D90-D10)/D50の値が大きいほど粒子径分布が広くなる。すなわち、(D90-D10)/D50の値が大きい場合は、粒径が小さな粒子と大きな粒子とを同時に備えていることになる。本発明の粒子群は、粒径が大きな窪み型シリカ系粒子と、その窪んでいる部分に入り込むことができる微小な粒子との両方を含むため、窪み型シリカ系粒子における窪んでいる部分へ微小な粒子が入り込む。そのため本発明の分散液を研磨材として用いた場合、高い研磨速度を達ししつつ、うねりや表面粗さを緩和する傾向にある。
また、粒子径が大きな粒子は粒子単独でも高い研磨速度を示す一方で、うねりを悪化させる傾向があるが、合わせて存在する微小な粒子が、悪化したうねりを修復する作用を備える。
本発明の粒子群における重量換算粒子径分布は上記式を満たすため、このような効果を発揮する。
粒子群の重量換算粒子径分布(D90-D10)/D50の値が1.6未満の場合、本発明の分散液を研磨材として使用すると研磨速度が遅くなる傾向がある。他方、(D90-D10)/D50の値が5を超える場合、本発明の分散液を研磨材として使用すると、分布が広くなり過ぎ粗大な粒子が増えるため、被研磨面にうねりや表面粗さが悪化する傾向にある。(D90-D10)/D50の値は1.6~4の範囲がより好ましく、1.6~3.0の範囲が更に好ましい。
【0031】
<細孔容積>
本発明の粒子群の窒素吸着法による細孔容積は0.1~0.35ml/gの範囲が好ましく、0.1~0.3ml/gの範囲であることがより好ましい。
ここで本発明における細孔容積は、後述するようにシリカ系微粒子分散液を105℃で乾燥させた乾燥粉の細孔容積であるが、これは研磨時に本発明のシリカ系微粒子が研磨パッドによって基板に押し付けられた際に、研磨パッド上で形成されるシリカ系粒子群のパッキング構造の緻密さを示しているものである。従って、細孔容積が小さい場合は、研磨パッド上でより緻密なパッキング構造が形成されるものと考えられる。すなわち窪み型シリカ系微粒子の窪み部分に微小粒子が入り込んだ構造を形成していると考えられる。細孔容積が大きい場合は、パッキング構造が疎であり、窪み粒子の窪み部への小粒子が十分に充填されていないものと考えられる。パッキング構造が緻密な場合は、砥粒と基板の接触面積が高くなり、研磨速度向上するとともに、応力が分散し、基板の表面粗さやうねりが良化する傾向にある。
【0032】
<比(La/De)>
本発明の粒子群では、上記のようにして求めた平均値Laの、本発明の粒子群の比表面積換算粒子径Deに対する比(La/De)が0.15以上であることが好ましく、0.15~1.00であることがより好ましく、0.2~0.8であることが更に好ましい。
前記のとおり、本願明細書において、Lは窪み型シリカ系粒子の内部に向かって凹状に窪んだ部分の深さの絶対値を表し、Laはその個数平均値を表すが、前記比(La/De)は窪み型シリカ系粒子の粒子サイズに対する窪んでいる部分の深さの割合の指標となる。比(La/De)の値が0.15未満の場合、粒子サイズに対して窪み部の深さの割合が小さいため、窪み部に微小粒子が入りにくく、パッキング構造が疎になる傾向にある。他方、比(La/De)の値の増大に比例して、粒子サイズに対して窪み部の深さの割合が大きいため、窪み部に微小粒子はより多く入るものの、そのような窪み部の深さの割合の大きい粒子は、窪み型シリカ系粒子のサイズが大きくなる傾向にあり、結果としてスクラッチが発生し易く、また基板の表面粗さやうねりが悪化する傾向にある。
【0033】
なお、本発明の粒子群の比表面積換算粒子径Deは、比表面積から換算された値である。
具体的には、後述する。
【0034】
<窪み型シリカ系粒子の長径/短径比の平均値>
本発明の窪み型シリカ系粒子の長径/短径比の平均値は1.34~5.0の範囲にあることが好ましい。窪み型シリカ系粒子の長径/短径比の平均値がこの範囲にあれば、そのような本発明の分散液を研磨用途に適用した場合に、実用的に充分な研磨速度を得ることができる。窪み型シリカ系粒子の長径/短径比の平均値が1.34未満の場合、充分な研磨速度を得難くなる。また、窪み型シリカ系粒子の長径/短径比の平均値が5.0を超える場合、研磨速度は向上するが、被研磨面上でのスクラッチ生成が増加し易くなる。
【0035】
なお、本発明の窪み型シリカ系粒子の長径/短径の平均値の測定方法は後記したとおりである。
【0036】
前述のように、本発明の分散液は、本発明の粒子群が溶媒に分散してなるものである。
ここで溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エーテル類、エステル類、珪トン類等水溶性の有機溶媒が挙げられる。また、水と有機溶媒からなる混合溶媒であってもよい。
【0037】
本発明の分散液が含む本発明の粒子群の含有率は1~50質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましい。
ここで本発明の分散液が含む本発明の粒子群の含有率は、本発明の分散液に1000℃灼熱減量を行い、得られた固形分を秤量し、別途算出したアルカリ含有量を酸化物換算(Na2Oなど)したものを差し引いた濃度が、本発明の粒子群の含有率として算出した。
【0038】
<磁気ディスク基板研磨用組成物>
磁気ディスク基板研磨用組成物について説明する。
磁気ディスク基板研磨用組成物は、本発明の分散液または本発明の粒子群を含むものである。
磁気ディスク基板研磨用組成物は研磨用スラリーを含む概念である。磁気ディスク基板研磨用組成物であって固形分濃度が低いもの、または磁気ディスク基板研磨用組成物を水などで希釈したものを、通常、研磨用スラリーという。
本発明の分散液を含む磁気ディスク基板研磨用組成物を、以下では「本発明の組成物」ともいう。
【0039】
本発明の組成物は、本発明の分散液に、さらに他の成分が含んだものであってよい。
他の成分として、研磨促進剤、界面活性剤、親水性化合物、複素環化合物、pH調整剤およびpH緩衝剤から選ばれる1以上の成分を使用することができる。
【0040】
研磨促進剤の例としては、硫酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、フッ酸等の酸、あるいはこれら酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩およびこれらの混合物等が挙げられる。本発明の組成物がこれらの研磨促進剤を含むと、複合成分からなる被研磨材を研磨する際に、被研磨材の特定の成分についての研磨速度を促進することにより、最終的に平坦な研磨面を得ることができる。
【0041】
本発明の組成物が研磨促進剤を含有する場合、その含有量は0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
本発明の研磨用組成物の分散性や安定性を向上させるためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の界面活性剤または親水性化合物を添加することができる。
【0042】
界面活性剤と親水性化合物は、いずれも被研磨面への接触角を低下させる作用を有し、均一な研磨を促す作用を有する。界面活性剤および/または親水性化合物としては、例えば、以下の群から選ばれるものを使用することができる。
【0043】
陰イオン界面活性剤として、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、およびリン酸エステル塩等が挙げられる。カルボン酸塩として、石鹸、N-アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩、およびアシル化ペプチド等が挙げられる。スルホン酸塩として、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンおよびアルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、およびN-アシルスルホン酸塩等が挙げられる。
硫酸エステル塩として、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、およびアルキルアミド硫酸塩等が挙げられる。リン酸エステル塩として、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩等が挙げられる。
【0044】
陽イオン界面活性剤として、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、およびイミダゾリニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤として、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、およびアルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0045】
非イオン界面活性剤として、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられ、エーテル型として、ポリオキシエチレンアルキルおよびアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが挙げられ、エーテルエステル型として、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、エステル型として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル、含窒素型として、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が例示される。その他に、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0046】
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤もしくは非イオン系界面活性剤が好ましい。また、塩としては、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられ、特にアンモニウム塩およびカリウム塩が好ましい。
【0047】
さらに、その他の界面活性剤、親水性化合物等としては、エステル(グリセリンエステル、ソルビタンエステルおよびアラニンエチルエステル等)、エーテル(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアル珪ニルエーテル、アルキルポリエチレングリコール、アルキルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールアル珪ニルエーテル、アル珪ニルポリエチレングリコール、アル珪ニルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アル珪ニルポリエチレングリコールアル珪ニルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアル珪ニルエーテル、アルキルポリプロピレングリコール、アルキルポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリプロピレングリコールアル珪ニルエーテル、およびアル珪ニルポリプロピレングリコール等)、多糖類(アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、カードランおよびプルラン等)、アミノ酸塩(グリシンアンモニウム塩およびグリシンナトリウム塩等)、ポリカルボン酸およびその塩(ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p-スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩およびポリグリオキシル酸等)、ビニル系ポリマ(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリアクロレイン等)、スルホン酸およびその塩(メチルタウリン酸アンモニウム塩、メチルタウリン酸ナトリウム塩、硫酸メチルナトリウム塩、硫酸エチルアンモニウム塩、硫酸ブチルアンモニウム塩、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、1-アリルスルホン酸ナトリウム塩、2-アリルスルホン酸ナトリウム塩、メトキシメチルスルホン酸ナトリウム塩、エトキシメチルスルホン酸アンモニウム塩、3-エトキシプロピルスルホン酸ナトリウム塩等)、およびアミド等(プロピオンアミド、アクリルアミド、メチル尿素、ニコチンアミド、コハク酸アミドおよびスルファニルアミド等)が挙げられる。
【0048】
なお、適用する被研磨基材がガラス基板等である場合は何れの界面活性剤であっても好適に使用できるが、半導体集積回路用シリコン基板等の場合であって、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはハロゲン化物等による汚染の影響を嫌う場合にあっては、酸もしくはそのアンモニウム塩系の界面活性剤を使用することが望ましい。
【0049】
本発明の組成物が界面活性剤および/または親水性化合物を含有する場合、その含有量は、総量として、本発明の組成物の1L中、0.001g以上10g以下とすることが好ましく、0.01g以上5g以下とすることがより好ましく0.1g以上3g以下とすることが特に好ましい。
【0050】
界面活性剤または親水性化合物は1種のみでもよいし、2種以上を使用してもよく、異なる種類のものを併用することもできる。
【0051】
本発明の組成物については、被研磨基材に金属が含まれる場合に、金属に不動態層または溶解抑制層を形成させて、被研磨基材の侵食を抑制する目的で、複素環化合物を含有させても構わない。ここで、「複素環化合物」とはヘテロ原子を1個以上含んだ複素環を有する化合物である。ヘテロ原子とは、炭素原子、または水素原子以外の原子を意味する。複素環とはヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物を意味する。ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、珪素原子、およびホウ素原子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。複素環化合物の例として、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、テトラゾール等を用いることができる。より具体的には、1,2,3,4-テトラゾール、5-アミノ-1,2,3,4-テトラゾール、5-メチル-1,2,3,4-テトラゾール、1,2,3-トリアゾール、4-アミノ-1,2,3-トリアゾール、4,5-ジアミノ-1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
本発明の組成物が複素環化合物を配合する場合の含有量については、0.001質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上0.7質量%以下であることがより好ましく、0.002質量%以上0.4質量%以下であることがさらに好ましい。
【0053】
上記各添加剤の効果を高めるため等に必要に応じて酸または塩基を添加して研磨用組成物のpHを調節することができる。
【0054】
本発明の組成物をpH7以上に調整するときは、pH調整剤として、アルカリ性のものを使用する。望ましくは、水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、エチルアミン、メチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアミン等のアミンが使用される。
【0055】
研磨用組成物をpH7未満に調整するときは、pH調整剤として、酸性のものが使用される。例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリセリン酸等のヒドロキシ酸類が使用される。
【0056】
本発明の組成物のpH値を一定に保持するために、pH緩衝剤を使用しても構わない。pH緩衝剤としては、例えば、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、4ホウ酸アンモ四水和水等のリン酸塩およびホウ酸塩または有機酸等を使用することができる。
【0057】
本発明の組成物中の研磨用粒子の濃度は、0.5~50質量であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。濃度が0.5質量%未満の場合は、基材や絶縁膜の種類によっては濃度が低すぎて研磨速度が遅く生産性が問題となることがある。研磨用粒子の濃度が50質量%を超えると研磨材の安定性が不充分となり、研磨速度や研磨効率がさらに向上することもなく、また研磨処理のために分散液を供給する工程で乾燥物が生成して付着することがあり傷(スクラッチ)発生の原因となることがある。
【0058】
<本発明の製造方法>
本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、下記の工程(a)~工程(c)を含む。
【0059】
<工程(a)>
工程(a)では珪酸アルカリ水溶液に、酸性珪酸液とハロゲン化アルカリとを添加混合し、シリカモル数(MTS)とハロゲン化アルカリのモル数(MH)の比((MTS)/(MH))が2~100であって、シリカ濃度が10~18質量%の範囲内である前駆体分散液を調製する。
【0060】
ここで、珪酸アルカリ水溶液に含まれるシリカのモル数(MWG)と、酸性珪酸液に含まれるシリカのモル数(MSA1)との合計が、前駆体分散液に含まれるシリカのモル数(MTS)となる。
【0061】
ここで、珪酸アルカリ水溶液、酸性珪酸液およびハロゲン化アルカリの添加量は、ハロゲン化アルカリの添加量(モル数)(MH)が、珪酸アルカリ水溶液に含まれるシリカのモル数(MWG)と、酸性珪酸液に含まれるシリカのモル数(MSA1)との合計であるシリカモル数(MTS)に対して2~100倍となるようにすることが好ましい。つまり、比(MTS)/(MH)が2~100となるようにすることが好ましい。なお、(MTS)/(MH)の値は5~60とすることが更に好ましい。
ここでハロゲン化アルカリは、窪み型構造を形成させるための構造制御剤あるいは凝集剤の役割を果たしている。
珪酸アルカリや酸性珪酸液などを添加し、シリカとアルカリのモル比、シリカ濃度を所定範囲に調整し、この溶液を加熱、攪拌することで前駆体を調製する。
ここで前駆体は、主として珪酸の重合体であり、まだ明確に粒子化していないものである。前駆体は後の工程(b)において、酸性珪酸液との反応により核粒子および種粒子(核粒子が凝集し、更に粒子成長してなる)が生成する元となるものである。本願発明では、工程(b)において、前駆体と酸性珪酸液の反応により生成した核粒子が、ハロゲン化アルカリによって、その一部が凝集し、核粒子が3個以上凝集し屈曲した凝集構造をとるものや、そのような凝集構造を有するものが更に粒子成長したものが生成する。この様な凝集構造を有し更に粒子成長したものは、窪み型粒子の種粒子となる。窪み型粒子の種粒子が生成する一方で、凝集しない核粒子も共存するため、種粒子分散液は、窪み型粒子の種粒子と、核粒子の様な球状の粒子が共存した形態である。工程(c)では、引き続き種粒子分散液に酸性珪酸液を添加して種粒子を粒子成長させることで、窪み型シリカ系粒子が生成すると本願発明者らは推定している。
なお、核粒子の生成及び核粒子の凝集は、サイズが小さく、さらに急速に反応が進行するため、その生成ないし凝集の過程を直接観察することは困難である。しかし、本願発明の粒子の粒子径分布やその形状から、核粒子が凝集している間にも新たな核粒子が生成し、さらに一部の核粒子は凝集して種粒子となるものの、大部分の核粒子は凝集しないままであると推察される。
核粒子と種粒子を明確に区別することは困難であるが、種粒子分散液は、前記のとおり、凝集した核粒子からなる種粒子と、凝集しない核粒子が混在したものであり、本明細書における前駆体分散液は、核粒子と種粒子の元となる前駆体の分散液であると考えて差し支えない。
MTS/MHの値が2未満、すなわち凝集剤の量が多い場合は、核粒子の凝集が進み、サイズが大きくなり、沈降が生じたり、工程(b)および(c)を経て得られるシリカ系粒子のサイズが所望のサイズが得られにくくなる。
MTS/MHの値が100を超える場合は、核粒子の凝集が進みにくくなり、所望の窪み型粒子が得られにくくなる。
【0062】
[珪酸アルカリ水溶液]
工程(a)において用いることができる珪酸アルカリ水溶液として、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、第4級アンモニウムシリケートが挙げられる。
珪酸アルカリ水溶液として、1号水ガラス、2号水ガラス、3号水ガラス等の名称で市販されている珪酸ナトリウムまたは珪酸カリウムを用いることが好ましい。
珪酸アルカリ水溶液として、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)等の加水分解性有機化合物を過剰のNaOHなどを用いて加水分解して得られるものを用いることが好ましい。
【0063】
珪酸アルカリ水溶液の濃度は、SiO2換算で、15~30質量%であることが好ましく、15~25質量%であることがより好ましい。
【0064】
[酸性珪酸液]
酸性珪酸液として、珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られるものを用いることができる。
酸性珪酸液の濃度は、SiO2換算で、0.1~10質量%であることが好ましく、1~7質量%であることがより好ましい。
酸性珪酸液のpHは1~3であることが好ましい。
【0065】
[ハロゲン化アルカリ]
ハロゲン化アルカリは水溶液として用いることが好ましい。
ハロゲン化アルカリ水溶液として、塩化カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、塩化リチウムが挙げられる。
ハロゲン化アルカリ水溶液におけるハロゲン化アルカリの濃度は1~30質量%であることが好ましい。
【0066】
珪酸アルカリ水溶液、酸性珪酸液およびハロゲン化アルカリを混合する際の撹拌条件については、特に制限はないが、珪酸アルカリ水溶液、酸性珪酸液とハロゲン化アルカリがほぼ均一に混合できれば、格別に制限されるものではない。また、珪酸アルカリ水溶液、酸性珪酸液およびハロゲン化アルカリの攪拌混合時の温度は、格別に制限されるものではないが、常温で行って構わない。
【0067】
工程(a)では、前述の条件で珪酸アルカリ水溶液、酸性珪酸液およびハロゲン化アルカリを混合し、均一になるまで攪拌混合することにより、前駆体分散液を得る。ここで、前駆体分散液のシリカ濃度は10~18質量%とし、10~15質量%とすることが好ましい。
前駆体分散液のシリカ濃度をこのような範囲とすると、工程(a)以降で生成した核粒子が適度に凝集し、所望の窪み粒子が得られ易く、本発明の製造方法によって最終的に、研磨速度が高く、うねりが発生し難いシリカ系粒子分散液を得やすい。
シリカ濃度が10質量%未満の場合、核粒子の凝集が進まず、窪み粒子が得られにくい。シリカ濃度が18質量%超の場合、核粒子の凝集が進み窪み粒子は得られやすくなるものの、サイズが大きく凝集し易くなったり、研磨砥粒として用いた場合、スクラッチが発生し易く、基板の表面粗さやうねりが悪化する傾向にある。
【0068】
<工程(b)>
工程(b)では工程(a)で得られた前駆体分散液を50~95℃に保持し、続いて同温度範囲を維持しながら、酸性珪酸液を連続的に又は断続的に添加し、種粒子分散液を調製する。
【0069】
前駆体分散液は50~95℃で保持することにより熟成が進行し、後の工程で核粒子が生成する。保持温度については50~95℃(好ましくは60~90℃、より好ましくは60~88℃)の範囲であれば、所望のサイズや形状をした窪み型粒子が得られやすい。
保持温度が95℃を超えると後に生成する核粒子の凝集が進み過ぎるためか、工程(c)を経た後に得られるシリカ系微粒子分散液中における粗大粒子の割合が増加する傾向がある。保持温度が50℃未満の場合は、後に生成する核粒子の凝集が進みにくく、核粒子の凝集が不充分となるためか、所望の窪み型粒子が得られにくくなる傾向にある。
【0070】
ここで50~95℃で保持する時間は、保持温度または前駆体分散液におけるシリカ濃度等によっても異なるが、概ね24時間以内であることが好ましく、実用的には10分から300分の範囲内が推奨される。
【0071】
50~95℃での保持が完了した前駆体分散液については、同温度範囲を維持しながら、酸性珪酸液を連続的または断続的に添加して、種粒子分散液を得る。
【0072】
ここで酸性珪酸液は、工程(a)に挙げたものを用いることができる。
また、工程(a)にて用いたものと同一の酸性珪酸液を工程(b)においても用いることが好ましい。
【0073】
このような工程(b)によって、種粒子分散液を得る。
【0074】
<工程(c)>
工程(c)では、工程(b)で得られた種粒子分散液に酸性珪酸液を添加する。
ここで、種粒子分散液に含まれるSiO2に対して2~100倍のモル数のSiO2を含む酸性珪酸液を添加する。
工程(c)では種粒子が成長してシリカ系粒子が生成する。
【0075】
ここで酸性珪酸液は、工程(a)に挙げたものを用いることができる。
また、工程(a)および工程(b)にて用いたものと同一の酸性珪酸液を工程(c)においても用いることが好ましい。
【0076】
添加する酸性珪酸液に含まれるSiO2の量(モル数)は、種粒子分散液に含まれるSiO2のモル数の2~100倍であるが、3~80倍であることが好ましい。
この値が2倍未満であると、本発明の製造方法によって得られるシリカ系微粒子分散液におけるシリカ粒子の粒子径が小さく、研磨材として使用しても研磨速度が不十分となる場合がある。逆にこの値が100倍を超えると、本発明の製造方法によって得られるシリカ系微粒子分散液におけるシリカ系粒子の粒子径が大きくなり、かつ、シリカ系粒子の形状が球へ近づき、所望の窪み型粒子が得られにくいため、研磨材として使用しても研磨速度が不充分となる場合がある。
【0077】
酸性珪酸液を添加する際の調合液の温度は50~95℃、さらには60~95℃の範囲にあることが好ましい。
温度が50℃未満の場合は、種粒子を粒子成長させるために添加した酸性珪酸液が十分に溶解せず、種粒子表面に沈着しにくくなり、酸性珪酸液による自己核生成が生じ、所望の窪み型粒子が得られにくい傾向にある。
温度が98℃を超えて高い場合は、調合液が沸点近くになるためか、粗大粒子が増加し、研磨剤として用いた場合にスクラッチ(研磨傷)が発生する場合がある。
【0078】
また、酸性珪酸液を添加する際の調合液のpHは9~12.5が好ましく、10~12.0の範囲にあることが更に好ましい。
pHが9未満の場合は、粒子成長のために添加された酸性珪酸液が十分に溶解せず、種粒子表面に沈着せず、珪酸による自己核生成が生じやすい。一方、pHが12.5を超えて高い場合、調合液中のイオン強度が過剰に高くなりすぎ、種粒子の分散安定性が低下して、凝集が過剰に進行し、粗大粒子を生じる場合がある。
【0079】
工程(c)では酸性珪酸液を添加する際に分散液のpHを前記範囲に調整するには必要に応じてpH調整剤として、酸または塩基を添加することができる。
酸としては、塩酸、硝酸、硫酸などの鉱酸を用いることができる。
また、塩基としてはNaOH、KOH等のアルカリ金属水酸化物、酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの金属炭酸塩、アンモニア、モノエタノールアミン、ピペラジンなどのアミン類、テトラメチルアンモニウムなどの第4級アンモニウム水酸化物等の塩基性窒素化合物を用いることができる。
【0080】
前記工程(c)についで、洗浄することもできる。
洗浄することによってシリカ系粒子分散液に残存する不純物、例えば、原料由来のNa、K等、前駆体等の凝集ないし異形化のために使用したカチオン、アニオン、あるいはpH調整に使用した酸あるいは塩基等を除去し、研磨時の悪影響、あるいは被研磨基板を電子デバイス等に用いた場合の悪影響を抑制することができる。
洗浄方法としては、限外濾過膜法、イオン交換樹脂法等従来公知の方法を採用することができる。
【0081】
さらに、本発明の製造方法では、前記工程(c)についで、あるいは前記洗浄の後、所望の粒子径以外の粒子(特に粒子径が過大な粗大粒子)、所望の形状以外の粒子が存在している場合、必要に応じてこれを分離除去することができる。このような粒子が残存していると、残存量によっても異なるが、研磨速度が不充分となる場合、スクラッチ発生の原因になる場合あるいは研磨基板の平滑性が悪化する場合がある。
分離方法としては、所望の粒子径以外の粒子、所望の形状以外の粒子を除去できれば特に制限はなく従来公知の方法を採用することができる。例えば、各種フィルター、遠心分離機等が挙げられる。
【0082】
前記工程(c)についで、所望により濃縮処理をしても構わない。
濃縮後のシリカ濃度としては、例えば、10~50質量%の範囲が推奨される。
【実施例0083】
各実施例および各比較例で得られたシリカ系粒子分散液について、下記の評価を行った。得られた結果を表1に示す。また、表2には各実施例および各比較例でのシリカ系微粒子分散液の製造工程での条件等を記した。
【0084】
1)窪み型シリカ系粒子の確認、含有率および[La]/[De]の算定
シリカ系粒子分散液の走査型電子顕微鏡写真((株)日立製作所製S-2000型、倍率20万倍、同一視野内に200個以上の粒子を含む)を撮影し、その写真内の粒子が窪み型シリカ系粒子に該当するか否かを、次の方法で確認した。
初めに、1つの粒子の凹状に窪んだ部分において、該凹状に窪んだ部分を挟んだ粒子輪郭線上の2点(A点およびB点)に接する1本の接線Mを引き、その接線Mから粒子輪郭まで、接線Mに垂直方向に下した直線の最大の長さを求めた。そして、その長さ(L)が3nm以上となった場合、その粒子を窪み型シリカ系粒子であると判断した。なお、1つの粒子において窪んだ部分が複数あり、長さLが3nm以上となる窪みも複数ある場合、その粒子における長さLは、最大のLを意味するものとする。
このようにして視野内において無作為に選び出した200個の粒子について、窪み型シリカ系粒子に該当するか否かを調査する。そして、200個の粒子のうち、窪み型シリカ系粒子に該当するものの個数比率(含有率)を算出した。
【0085】
次に、前記方法により窪み型シリカ系粒子に該当した粒子について各々における長さ(L)の個数平均値を求め、それを個数平均値Laとした。
【0086】
次に、後述する方法でシリカ系粒子群の比表面積換算粒子径Deを求めた後、[La]/[De]の値を算出した。
【0087】
2)窪み型シリカ系粒子の長径/短径比の平均値
シリカ系粒子分散液の走査型電子顕微鏡写真((株)日立製作所製S-2000型、倍率20万倍、同一視野内に200個以上の粒子を含む)を撮影し、前記1)と同様な方法で窪み型シリカ系粒子の確認を行い、窪み型シリカ系粒子が50個以上確認できた走査型電子顕微鏡写真を用意する。そして、窪み型シリカ系粒子の中で無作為に選んだ50個の窪み型シリカ系粒子について、それぞれ外接四角形の長径/短径比が最大になる場合をその粒子の長径/短径比とし、50個の平均を求めて、窪み型シリカ系粒子の長径/短径比の平均値とした。
【0088】
3)粒子群の重量換算粒子径分布と重量平均粒子径(D50)の測定
シリカ系粒子分散液を0.05質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液で希釈し、固形分濃度で2質量%とした。そして、このうちの0.1mLを、公知のディスク遠心式粒度分布測定装置(CPS Instrimen社製)にシリンジで注入して、8%から24%のショ糖の密度勾配液中で18000rpmの測定条件で測定して重量換算粒子径分布を求めた。
そして、得られた重量換算粒子径分布において、粒子径の小さい方から累積10%粒子径(D10)[nm]、累積50%粒子径(D50)[nm]、累積90%粒子径(D90)[nm]の値を求め、(D90-D10)/D50の値を算定した。
なお、粒子径の小さい方から累積50%の粒子径(D50)[nm]を重量平均粒子径とした。
【0089】
4)粒子群の細孔容積の測定方法
シリカ系粒子分散液を乾燥させて得た試料粉体10gをルツボに取り分けて、温度105℃で1時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却した。次に、よく洗浄したセルに秤量して試料1gを取り分けて、300℃で2時間真空脱気し、続いてマイクロトラックベル社製のBELSORP-miniにセットし、試料にN2を吸着させ吸着等温線を得た。ここで相対圧(P/P0):0.990の時の値を細孔容積とした。
なお、以下の式から細孔容積を算出した。
細孔容積(mL/g)=(0.001567×(V-Vc)/W)
上記の式で、Vは圧力735mmHgにおける標準状態の吸着量(mL)、Vcは圧力735mmHgにおけるセルブランクの容量(mL)、Wは試料の質量(g)を表す。また、窒素ガスと液体窒素の密度の比は0.001567とした。
【0090】
5)粒子群の比表面積換算粒子径(De)
比表面積換算粒子径はシリカ微粒子の比表面積Saを測定し、下式を用いて求めることができる。(De)(nm)=6000/(ρ×Sa)
(ここで、ρはシリカ微粒子の密度2.2[g/cm3]を表す。)
シリカ微粒子の比表面積が100m2/g以上となった場合には、BET法における焼成時に焼結が進むため、この場合には、タイトレーション法により比表面積(SA)を求め、(De)=6000/(SA×ρ)の式から比表面積換算粒子径(De)を算出した。
【0091】
<BET法>
シリカ系粒子を含むシリカ粒子系分散液50mL(シリカ濃度40質量%)をHNO3でpH3.5に調整し、1-プロパノール40mLを加え、110℃で16時間乾燥した試料について、乳鉢で粉砕後、マッフル炉にて500℃、1時間焼成し、測定用試料とした。そして、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12)を用いて窒素吸着法(BET法)を用いて、窒素の吸着量から、BET1点法により比表面積を算出した。
【0092】
具体的には、試料0.5gを測定セルに取り、窒素30v%とヘリウム70v%との混合ガス気流中、300℃で20分間脱ガス処理を行い、その上で試料を上記混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させた。次に、上記混合ガスを流しながら試料温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、シリカ系粒子の比表面積を算出した。
そして、得られた比表面積(Sa)を前述の比表面積から粒子径への換算式に代入して比表面積換算粒子径(De)を求めた。
【0093】
<タイトレーション法>
ここでタイトレーション法とは、次のような方法である。
まず初めに、SiO2として1.5gに相当する試料をビーカーに採取してから、恒温反応槽(25℃)に移し、純水を加えて液量を90mlにした。なお、以下の操作は、25℃に保持した恒温反応槽中にて行った。
次に、pH3.6になるように0.1モル/L塩酸水溶液をここに加えた。さらに、塩化ナトリウムを30g加え、純水で150mlに希釈し、10分間攪拌した。
そして、pH電極をセットし、攪拌しながら0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液を滴下してpH4.0に調整した。さらに、pH4.0に調整した試料を0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH8.7~9.3の範囲での滴定量とpH値を4点以上記録して、0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の滴定量をX、その時のpH値をYとして、検量線を作った。
そして、V=(A×f×100×1.5)/(W×C)の式からSiO21.5g当たりのpH4.0~9.0までに要する0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の消費量V(ml)を求め、これを用いて、SA=29.0V-28の式に従って比表面積を求めた。
なお、上記式中において、AはSiO21.5g当たりpH4.0~9.0までに要する0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の滴定量(ml)、fは0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の力価、Cは試料のSiO2濃度(%)、Wは試料採取量(g)を意味する。
【0094】
6)粒子群の動的光散乱法による平均粒子径(Dd)の測定
シリカ系粒子分散液(SiO2濃度0.1~5質量%、水溶媒)について、粒子径分布測定装置(大塚電子社製:nanoSAQLA)を用いて、動的光散乱法により平均粒子径を測定した。
【0095】
7)シリカ系粒子分散液のシリカ濃度の測定
シリカ系粒子分散液からなる試料10gに50%硫酸水溶液2mLを加え、白金皿上にて蒸発乾固し、得られた固形物を1000℃にて1時間焼成後、冷却して秤量する。次に、秤量した固形物を微量の50%硫酸水溶液に溶かし、さらにフッ化水素酸20mLを加えてから、白金皿上にて蒸発乾固し、1000℃にて15分焼成後、冷却して秤量する。これらの重量差より固形分の含有量を求め、試料の質量(10g)に対する固形分濃度を算定することができる。次に、別途算出したアルカリ含有量を酸化物換算(Na2Oなど)したものを差し引いた濃度が、本発明の粒子群の含有率として算出した。
また、本発明の粒子群が含み得るシリカ以外の成分の含有率は、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析装置を用いて特定と定量をすることができる。なお、Ni、Cu、KおよびNaについては、原子吸光分光光度計を用いて、特定と定量をすることができる。
【0096】
8)研磨試験方法(研磨速度比およびうねり比)
被研磨基板として、ハードディスク用ニッケルメッキをコーティングしたアルミ基板(東洋鋼鈑社製ニッケルメッキサブストレート)を準備し、この被研磨基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製「NF300」)にセットし、研磨パッド(FILWEL社製「ベラトリックスNO178」)を使用して、基板荷重0.05MPa、定盤回転数50rpm、ヘッド回転数50rpmで、研磨スラリーを40g/分の速度で供給しながら1μm研磨を行った。
【0097】
<研磨速度比>
研磨前後の研磨基板の重量差と研磨時間より研磨速度を求め、比較例1を100とした場合の相対値を算出した。
【0098】
<うねり比>
研磨したドーナツ状のアルミ基板において、その外円と内円との径を2等分する任意の箇所についてうねり波長数十~数百μmでの微少な凹凸の振幅を測定した。
次に、その測定箇所とドーナツ状のアルミ基板における中心点とを結ぶ直線上であって、その中心点がその測定箇所との2等分点となる箇所においても、同様にうねり波長数十~数百μmでの微少な凹凸の振幅を測定した。そして、これら2つの値の平均値を求め、それを「うねりの値」とし、比較例1を100とした場合の相対値(うねり比)を算出した。
凹凸の振幅の測定条件は下記の通りである。
機器:ZygoNewView7200
レンズ:2.5倍
ズーム比:1.0
フィルター:50~500μm
測定エリア:3.75mm×2.81mm
【0099】
<酸性珪酸液の調製>
珪酸ナトリウム水溶液(シリカ濃度24.06質量%、Na2O濃度7.97質量%)に純水を加えて、珪酸ナトリウム水溶液(シリカ濃度5質量%)を得た。得られた珪酸ナトリウム水溶液18kgを6Lの強酸性陽イオン交換樹脂(SK1BH、三菱化学社製)に、空間速度3.0h-1で通液させ、18kg(シリカ濃度4.5質量%、pH2.7)を得た。以下の実施例と比較例では、この酸性珪酸液ないしはこの酸性珪酸液と同等の酸性珪酸液を原料として使用した。
【0100】
[実施例1]
(工程a)
水637gに珪酸ナトリウム水溶液(シリカ濃度24.3質量%)790gを添加して均一になるまで攪拌し、続いて酸性珪酸液(シリカ濃度4.5質量%)80gと塩化カリウム水溶液(濃度20質量%)61gを添加して均一になるまで攪拌し、前駆体分散液(シリカ濃度12.5質量%)を得た。
【0101】
(工程b)
続いて、得られた前駆体分散液を85℃に昇温し、85℃で40分間保持し、85℃に保持しながら、酸性珪酸液(シリカ濃度4.5質量%)6,158gを5時間かけて添加し、その後、水2,230gを添加して冷却し、種粒子分散液(1)を得た。
【0102】
(工程c)
得られた種粒子分散液(1)4,400gを水8,828gに添加し、続いて98℃に昇温させ、98℃を保持したまま、酸性珪酸液(シリカ濃度4.5質量%)26,441gを15時間かけて添加し、シリカ系粒子分散液(1)を得た。得られたシリカ系粒子分散液(1)について、前記6)に記載の動的光散乱法による方法によって平均粒子径(Dd)を測定したところ170nmであった。
【0103】
[実施例2]
(工程a)
水642gに珪酸ナトリウム水溶液(シリカ濃度24.3質量%)600gを添加して均一になるまで攪拌し、続いて酸性珪酸液(シリカ濃度4.5質量%)60gと塩化カリウム水溶液(濃度20質量%)46gを添加して均一になるまで攪拌し、前駆体分散液(シリカ濃度11質量%)を得た。
【0104】
(工程b)
続いて、得られた前駆体分散液を85℃に昇温し、85℃で40分間保持し、85℃に保持しながら、酸性珪酸液(シリカ濃度4.5質量%)4,710gを5時間かけて添加し、その後、水1,748gを加えて冷却し、種粒子分散液(2)を得た。
【0105】
(工程c)
得られた種粒子分散液(2)4,589gを水8,834gに添加し、続いて98℃に昇温して、98℃に保持したまま、酸性珪酸液(シリカ濃度4.5質量%)26,832gを15時間かけて添加し、シリカ系粒子分散液(2)を得た。
得られたシリカ系粒子分散液(2)について、前記6)に記載の動的光散乱法による方法によって平均粒子径(Dd)を測定したところ144nmであった。
【0106】
[比較例1]
(工程a)
水2,278gに珪酸ナトリウム水溶液(シリカ濃度24.3質量%)790gを添加して均一になるまで攪拌し、続いて酸性珪酸液(シリカ濃度4.5質量%)78gと塩化カリウム水溶液(濃度20質量%)61gを添加して均一になるまで攪拌し、前駆体分散液(シリカ濃度6.1質量%)を得た。
【0107】
(工程b)
続いて、得られた前駆体分散液を98℃に昇温し、98℃で40分間保持し、98℃に保持しながら、酸性珪酸液(シリカ濃度4.5質量%)5,984gを5時間かけて添加し、その後、水2,655gを添加して冷却し、種粒子分散液(3)を得た。
【0108】
(工程c)
得られた種粒子分散液(3)4,000gを水5,900gに添加し、続いて98℃に昇温して、98℃に保持したまま、酸性珪酸液(シリカ濃度4.5質量%)26,451gを18時間かけて添加し、シリカ系粒子分散液(3)を得た。得られたシリカ系粒子分散液(3)について、前記6)に記載の動的光散乱法による方法によって平均粒子径(Dd)を測定したところ155nmであった。
【0109】
[比較例2]
比較例1の工程bで得た種粒子分散液(3)3,500gを水5,163gに添加してシリカ溶液を得た。
得られたシリカ溶液を98℃に昇温して、98℃に保持したまま、酸性珪酸液(シリカ濃度4.5質量%)29,181gを22時間かけて添加しシリカ系粒子分散液(4)を得た。
得られたシリカ系粒子分散液(4)について、前記6)に記載の動的光散乱法による方法によって平均粒子径(Dd)を測定したところ154nmであった。
【0110】
[比較例3]
特許文献2の実施例1と同様に操作を行って得られたシリカ微粒子分散液を用いて評価を行った。
【0111】
【0112】