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特開2024-168717表面測定装置、加工装置及び表面測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168717
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】表面測定装置、加工装置及び表面測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 13/16 20060101AFI20241128BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G01B13/16
B23Q17/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085617
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】本田 敏文
(72)【発明者】
【氏名】徳永 大介
【テーマコード(参考)】
2F066
3C029
【Fターム(参考)】
2F066AA31
2F066DD13
2F066DD20
2F066FF08
2F066HH16
2F066KK01
3C029AA01
(57)【要約】
【課題】本開示は、測定対象物の表面形状をより高速に測定することが可能な表面測定装置、加工装置及び表面測定方法を説明する。
【解決手段】表面測定装置は、ステージと、センサユニットと、供給部と、制御部とを備える。制御部は、内部流路を通じて流れてきた気体が、第1~第Nのノズルの吹出孔から下方に向けて吹き出されるように、供給部を動作させる第1の処理と、第1の処理による供給部の動作中に、センサユニットが測定対象物の表面上を走査するように、ステージ及びセンサユニットの少なくとも一方を動作させる第2の処理と、第2の処理によるセンサユニットの走査中に、第1~第Nのエアセンサにおいてそれぞれ測定された気体の流量に基づいて、第1~第Nのノズルと測定対象物の表面との離隔距離をそれぞれ算出する第3の処理とを実行するように構成されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物を載置可能なステージと、
前記ステージの上方に配置され且つ前記ステージに対して相対移動可能に構成されたセンサユニットと、
前記センサユニットに気体を供給するように構成された供給部と、
制御部とを備え、
前記センサユニットは、
前記供給部から供給された前記気体が内部流路を流通する際の前記気体の流量をそれぞれ測定するように構成された第1~第N(Nは2以上の自然数)のエアセンサと、
水平方向に沿った第1の方向に一列に並ぶように配置された前記第1~第Nのエアセンサを保持するように構成されたベース部と、
前記第1~第Nのエアセンサの前記内部流路とそれぞれ連通し且つ前記ステージに向けて開口された吹出孔が設けられた第1~第Nのノズルとを含み、
前記制御部は、
前記内部流路を通じて流れてきた前記気体が、前記第1~第Nのノズルの前記吹出孔から下方に向けて吹き出されるように、前記供給部を動作させる第1の処理と、
前記第1の処理による前記供給部の動作中に、前記センサユニットが前記測定対象物の表面上を走査するように、前記ステージ及び前記センサユニットの少なくとも一方を動作させる第2の処理と、
前記第2の処理による前記センサユニットの走査中に、前記第1~第Nのエアセンサにおいてそれぞれ測定された前記気体の流量に基づいて、前記第1~第Nのノズルと前記測定対象物の表面との離隔距離をそれぞれ算出する第3の処理とを実行するように構成されている、表面測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1~第Nのエアセンサのうち一つのエアセンサの前記内部流路を流通した前記気体が、前記第1~第Nのノズルのうち前記一つのエアセンサに対応する一つのノズルから、前記ステージに載置された基準ブロックの表面に吹き出されるときの、前記一つのエアセンサが測定した前記気体の流量と、前記一つのノズルと前記基準ブロックの表面との離隔距離との関係を表すモデルを予め取得する第4の処理をさらに実行するように構成されており、
前記第3の処理は、前記第2の処理による前記センサユニットの走査中に、前記モデルと、前記第1~第Nのエアセンサにおいてそれぞれ測定された前記気体の流量とに基づいて、前記第1~第Nのエアセンサと前記測定対象物の表面との離隔距離をそれぞれ算出することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1~第Nのエアセンサの前記内部流路を流通した前記気体が、前記第1~第Nのノズルから、前記ステージに載置された基準ブロックの表面に吹き出されるときの、第n(nは1~Nのいずれかの自然数)のエアセンサが測定した前記気体の流量と、第nのノズルと前記基準ブロックの表面との離隔距離との関係を表すモデルを、前記第1~第Nのエアセンサについて予め取得する第4の処理をさらに実行するように構成されており、
前記第3の処理は、前記第2の処理による前記センサユニットの走査中に、前記モデルと、前記第1~第Nのエアセンサにおいてそれぞれ測定された前記気体の流量とに基づいて、前記第1~第Nのエアセンサと前記測定対象物の表面との離隔距離をそれぞれ算出することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1~第Nのエアセンサはそれぞれ、前記内部流路に連通する入口部及び出口部を含み、
前記第1~第Nのノズルは、前記吹出孔が前記第1~第Nのエアセンサのうち対応するエアセンサの前記出口部とそれぞれ連通するように、前記ベース部の底面に設けられており、
前記ベース部は、前記第1~第Nのエアセンサの前記入口部及び前記供給部と連通する内部空間を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の処理は、
水平方向に沿い且つ前記第1の方向に交差する第2の方向において、前記センサユニットが前記測定対象物の表面上を所定回数走査しつつ、前記第2の方向における走査ごとに、前記第1の方向において前記第1~第Nのエアセンサが隣り合う間隔よりも小さい送りピッチで前記センサユニットが移動するように、前記ステージ及び前記センサユニットの少なくとも一方を動作させることと、
前記測定対象物の表面のうち前記センサユニットによって走査されていない領域に至るまで、前記第2の方向において前記センサユニットが移動するように、前記ステージ及び前記センサユニットの少なくとも一方を動作させることとを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記センサユニットは、前記第1~第Nのノズルの前記吹出孔よりも小さい別の吹出孔が設けられ、且つ、前記第1~第Nのノズルに装着された状態で前記別の吹出孔が前記吹出孔と連通するように、前記第1~第Nのノズルのそれぞれに着脱可能に構成された複数のアタッチメントノズルをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
表示部をさらに備え、
前記制御部は、前記第3の処理によって算出された離隔距離に基づく前記測定対象物の表面形状を、前記第1~第Nのエアセンサの位置に応じて二次元的又は三次元的に前記表示部に表示させる第4の処理をさらに実行するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の表面測定装置と、
前記測定対象物を加工するように構成された工具と、
前記工具及び前記表面測定装置を保持するように構成された保持部とを備える、加工装置。
【請求項9】
ステージ上に載置された測定対象物の表面をセンサユニットによって測定する表面測定方法であって、
前記センサユニットは、
供給部から供給された気体が内部流路を流通する際の前記気体の流量をそれぞれ測定するように構成された第1~第N(Nは2以上の自然数)のエアセンサと、
水平方向に沿った第1の方向に一列に並ぶように配置された前記第1~第Nのエアセンサを保持するように構成されたベース部と、
前記第1~第Nのエアセンサの前記内部流路とそれぞれ連通し且つ前記ステージに向けて開口された吹出孔が設けられた第1~第Nのノズルとを含み、
前記気体を、前記内部流路を通じて前記第1~第Nのノズルの前記吹出孔から下方に向けて吹き出す第1の工程と、
前記第1の工程における前記測定対象物の表面への前記気体の吹き出し中に、前記センサユニットが前記測定対象物の表面上を走査する第2の工程と、
前記第2の工程における前記センサユニットの走査中に、前記第1~第Nのエアセンサにおいてそれぞれ測定された前記気体の流量に基づいて、前記第1~第Nのノズルと前記測定対象物の表面との離隔距離をそれぞれ算出する第3の工程とを含む、表面測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面測定装置、加工装置及び表面測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、接触式又は非接触式のプローブで測定対象物の表面を走査して、当該表面の形状を測定する方法を開示している。当該方法では、まず、クロマティックポイントセンサ(CPS)が、当該表面上を、水平方向に沿った所定の第1の方向に沿って走査するように、測定対象物がCPSに対して変位される。次に、水平方向に沿い且つ第1の方向に交差する第2の方向に沿った所定の送りピッチにて測定対象物がCPSに対して変位される。その後は、これらが繰り返される。こうして、CPSが当該表面を全体的に蛇行しながら走査することで、当該表面の全体の表面形状が取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-045372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、測定対象物の表面形状をより高速に測定することが可能な表面測定装置、加工装置及び表面測定方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
表面測定装置の一例は、測定対象物を載置可能なステージと、ステージの上方に配置され且つステージに対して相対移動可能に構成されたセンサユニットと、センサユニットに気体を供給するように構成された供給部と、制御部とを備える。センサユニットは、供給部から供給された気体が内部流路を流通する際の気体の流量をそれぞれ測定するように構成された第1~第N(Nは2以上の自然数)のエアセンサと、水平方向に沿った第1の方向に一列に並ぶように配置された第1~第Nのエアセンサを保持するように構成されたベース部と、第1~第Nのエアセンサの内部流路とそれぞれ連通し且つステージに向けて開口された吹出孔が設けられた第1~第Nのノズルとを含む。制御部は、内部流路を通じて流れてきた気体が、第1~第Nのノズルの吹出孔から下方に向けて吹き出されるように、供給部を動作させる第1の処理と、第1の処理による供給部の動作中に、センサユニットが測定対象物の表面上を走査するように、ステージ及びセンサユニットの少なくとも一方を動作させる第2の処理と、第2の処理によるセンサユニットの走査中に、第1~第Nのエアセンサにおいてそれぞれ測定された気体の流量に基づいて、第1~第Nのノズルと測定対象物の表面との離隔距離をそれぞれ算出する第3の処理とを実行するように構成されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る表面測定装置、加工装置及び表面測定方法によれば、測定対象物の表面形状をより高速に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、加工装置の一例を概略的に示す側面図である。
図2図2は、センサユニットの一例を下方から見た様子を概略的に示す斜視図である。
図3図3は、センサユニットの一例を上方から見た様子を概略的に示す分解斜視図である。
図4図4は、図2のIV-IV線断面図である。
図5図5は、加工装置の主要部を示すブロック図である。
図6図6は、コントローラのハードウェア構成の一例を示す概略図である。
図7図7(a)は、エアセンサのモデルの生成手順を説明するための、表面測定装置の断面図であり、図7(b)は、所定時間経過ごとにエアセンサのノズルと基準ブロックの表面との離隔距離を変更したときの気体の流量の変化の例を、エアセンサごとに示すグラフである。
図8図8は、エアセンサのモデル(特性)の一例を示すグラフである。
図9図9は、測定対象物に対する表面測定装置の移動の様子の一例を示す上面図である。
図10図10(a)は、一つのエアセンサが測定対象物の表面を一方の側縁から他方の側縁まで1回走査したときに測定された当該測定対象物の表面形状の様子を、横軸をエアセンサのZ方向における位置とし、縦軸を当該表面の基準位置における高さに対する相対位置として示すデータの一例であり、図10(b)は、表面測定装置によって測定対象物の表面全体が走査されたときの当該測定対象物の表面形状の様子を、濃淡によって二次的に示したデータの一例である。
図11図11は、アタッチメントノズルが取り付けられた表面測定装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本明細書において、図の上、下、右、左というときは、図中の符号の向きを基準とすることとする。
【0009】
図面には、X軸、Y軸及びZ軸により規定される直交座標系が例示されている場合がある。当該直交座標系において、Y軸は鉛直上向きに延びており、X軸はY軸に直交するように水平方向に延びており、Z軸はX軸及びY軸の双方に直交するように水平方向に延びている。
【0010】
[加工装置の構成]
図1図4を参照して、加工装置1について説明する。加工装置1は、図1に示されるように、測定対象物Wを加工する機能を有する。測定対象物Wは、例えば、金属部材であってもよいし、非金属部材であってもよい。
【0011】
加工装置1は、図1に例示されるように、ステージ10と、加工ユニット20と、センサユニット100と、供給部30と、ディスプレイ40(表示部)と、コントローラCtr(制御部)とを備える。加工装置1は、測定対象物Wの加工に伴い発生する塵埃の飛散抑制のために、これらの一部又は全部を収容可能に構成された筐体(図示せず)をさらに備えていてもよい。なお、加工装置1のうち、少なくとも、ステージ10と、センサユニット100と、供給部30と、コントローラCtrとによって、表面測定装置2が構成されていてもよい。
【0012】
ステージ10は、上面(載置面)に載置される測定対象物Wを吸着保持するように構成されている。ステージ10は、例えば、マグネットチャックであってもよいし、真空チャックであってもよい。ステージ10がマグネットチャックの場合、ステージ10の表面には、複数の磁性体が露出していてもよい。当該複数の磁性体は、ステージ10の表面において、N極とS極とが交互に並ぶように配置されていてもよい。ステージ10は、少なくとも一つの測定対象物Wを保持してもよいし、複数の測定対象物Wを保持してもよい。
【0013】
ステージ10には、アクチュエータ11が接続されている。アクチュエータ11は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、X軸及びZ軸に沿った水平面内においてステージ10を変位させるように構成されていてもよい。アクチュエータ11は、例えば、電動モータに直動機構(ボールねじ、直動ガイドベアリングなど)が組み合わされたものであってもよい。
【0014】
加工ユニット20は、測定対象物Wが所定形状となるように測定対象物Wを加工する機能を有する。加工ユニット20は、ステージ10の上方に配置されていてもよい。加工ユニット20は、保持部21と、工具22と、アクチュエータ23,24とを含む。
【0015】
保持部21は、工具22を回転可能に保持している。保持部21は、センサユニット100を保持している。保持部21は、図1に例示されるように、工具22及び/又はセンサユニット100が保持部21の下部から下方に向けて突出するように、工具22及び/又はセンサユニット100を保持していてもよい。
【0016】
工具22は、測定対象物Wに接触した状態で測定対象物Wを加工するように構成されている。例えば、加工装置1が研削装置である場合には、工具22は、測定対象物Wを研削加工する砥石であってもよい。工具22は、例えば、円柱状又は円板状を呈していてもよい。この場合、工具22の周面が測定対象物Wと接触することにより測定対象物Wの加工が行われてもよいし、工具22の端面が測定対象物Wと接触することにより測定対象物Wの加工が行われてもよい。
【0017】
アクチュエータ23は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、Y軸に沿った上下方向において加工ユニット20を変位させるように構成されていてもよい。アクチュエータ23は、例えば、電動モータに直動機構(ボールねじ、直動ガイドベアリングなど)が組み合わされたものであってもよい。
【0018】
アクチュエータ24は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、工具22を回転駆動させるように構成されていてもよい。アクチュエータ24は、例えば、電動モータであってもよい。
【0019】
センサユニット100は、ステージ10上に載置されている測定対象物Wの表面状態を測定するように構成されている。上述のように、センサユニット100は、加工ユニット20の保持部21の下部に取り付けられている。そのため、アクチュエータ11によってステージ10が動作することにより、センサユニット100も、加工ユニット20と共に、ステージ10に対して相対移動する。
【0020】
センサユニット100は、図1図4に例示されるように、ベース部110と、複数のエアセンサ120と、複数のノズル130とを含む。
【0021】
ベース部110は、複数のエアセンサ120及び複数のノズル130を保持するように構成されている。ベース部110は、図1図4の例では、X方向に延びる略直方体形状を呈している。図4に例示されるように、ベース部110は、内部に設けられた内部空間V1を含んでいる。ベース部110は、図2図4に例示されるように、一対の上面S1及び下面S2と、一対の側面S3,S4とを含んでいる。
【0022】
一対の上面S1及び下面S2は、水平方向に沿って延びている。上面S1は、加工ユニット20の保持部21の下部に接続されている。下面S2は、ステージ10の上面及びステージ10に載置されている測定対象物Wの表面Waと対面している。下面S2には、複数のノズル130が取り付けられている。
【0023】
一対の側面S3,S4は、鉛直方向に沿って延びている。側面S3,S4はそれぞれ、上面S1及び下面S2を接続している。側面S3には、供給部30と流体的に接続される流入孔111が設けられている。流入孔111は、内部空間V1と連通している。流入孔111は、図2に例示されるように、側面S3の中央近傍に配置されていてもよい。
【0024】
側面S4には、図1図4に例示されるように、複数のエアセンサ120が取り付けられている。側面S4には、複数のエアセンサ120に対応する位置にそれぞれ、一対の接続孔112,113が設けられている。図4に例示されるように、複数の接続孔113はそれぞれ、側面S4から下面S2に至るまで、ベース部110の内部を延びている。
【0025】
複数のエアセンサ120は、図2及び図3に例示されるように、水平方向に沿った第1の方向(X軸に沿った方向)に沿って並ぶように、側面S4に配置されている。複数のエアセンサ120の数は、2つ以上であればよい。すなわち、センサユニット100は、第1~第N(Nは2以上の自然数)のエアセンサ120を含んでいるともいえる。図1図4の例では、センサユニット100は、第1のエアセンサ120A、第2のエアセンサ120B、・・・、第11のエアセンサ120Kを含んでいる(図2参照)。
【0026】
複数のエアセンサ120は、図4に例示されるように、筐体121と、センサ本体122とを含む。筐体121は、内部に設けられた内部流路V2を含んでいる。筐体121のうちベース部110と対面する側面には、入口部123及び出口部124が開口されている。入口部123及び出口部124は、内部流路V2と連通している。エアセンサ120がベース部110に取り付けられている状態において、入口部123は、対応する接続孔112と流体的に接続され、出口部124は、対応する接続孔113と流体的に接続される。
【0027】
センサ本体122は、筐体121の内部流路V2に位置するように、筐体121内に取り付けられている。センサ本体122は、内部流路V2を流通する気体の流量を測定するように構成されている。センサ本体122は、測定した気体の流量のデータをコントローラCtrに送信するように構成されている。
【0028】
複数のノズル130はそれぞれ、図2及び図3に例示されるように、複数のエアセンサ120に対応して位置するように、水平方向に沿った第1の方向(X軸に沿った方向)に沿って並んでいる。すなわち、複数のノズル130の数は、複数のエアセンサ120の数と同じである。図1図4の例では、センサユニット100は、第1のノズル130A、第2のノズル130B、・・・、第11のノズル130Kを含んでいる(図2参照)。
【0029】
複数のノズル130はそれぞれ、図3及び図4に例示されるように、ステージ10の上面に向けて開口された吹出孔131を含む。隣り合うノズル130の吹出孔131同士の距離は、測定対象物Wの測定において求められる精度に応じて設定されうるが、例えば10mm程度であってもよい。
【0030】
吹出孔131は、図4に例示されるように接続孔113のうちベース部110の下面S2に設けられた開口と連通している。したがって、流入孔111、内部空間V1、複数の接続孔112、複数の内部流路V2、複数の接続孔113及び吹出孔131は、この順に連通している。
【0031】
供給部30は、センサユニット100に気体を供給するように構成されている。具体的には、供給部30は、コントローラCtrからの指示信号に基づき、流入孔111を通じてベース部110の内部空間V1に、所定流量の気体を供給するように構成されている。供給部30は、例えば、ブロワ、ポンプなどであってもよい。供給部30によってセンサユニット100に供給される気体は、例えば、空気、不活性ガスなどであってもよい。
【0032】
ディスプレイ40は、コントローラCtrからの指示信号に基づき、種々の情報を画面上に表示する機能を有する。ディスプレイ40に表示される情報は、センサユニット100によって測定された測定対象物Wの表面形状であってもよいし、測定対象物Wのサイズであってもよいし、測定対象物Wの位置(原点座標)であってもよいし、測定対象物Wの加工条件であってもよい。
【0033】
[コントローラの詳細]
コントローラCtrは、図5に例示されるように、機能モジュールとして、読取部M1と、記憶部M2と、処理部M3と、指示部M4とを有する。これらの機能モジュールは、コントローラCtrの機能を便宜上複数のモジュールに区切ったものに過ぎず、コントローラCtrを構成するハードウェアがこのようなモジュールに分かれていることを必ずしも意味するものではない。各機能モジュールは、プログラムの実行により実現されるものに限られない。例えば、専用の電気回路(例えば論理回路)、又は、これを集積した集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)によって各機能モジュールが実現されてもよい。
【0034】
読取部M1は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体RMからプログラムを読み取るように構成されている。記録媒体RMは、加工装置1の各部を動作させるためのプログラムを記録している。記録媒体RMは、例えば、半導体メモリ、光記録ディスク、磁気記録ディスク、光磁気記録ディスクなどであってもよい。なお、以下では、加工装置1の各部は、アクチュエータ11,23,24、供給部30及びディスプレイ40を含みうる。
【0035】
記憶部M2は、種々のデータを記憶するように構成されている。記憶部M2は、例えば、読取部M1において記録媒体RMから読み出したプログラム、外部入力装置(図示せず)を介してオペレータから入力された設定データなどを記憶していてもよい。記憶部M2は、例えば、エアセンサ120によって測定された気体の流量のデータを記憶していてもよい。詳しくは後述するが、記憶部M2は、エアセンサ120が測定した気体の流量と、ノズル130と基準ブロック140の表面141(後述する)との離隔距離との関係を表すモデルを記憶していてもよい。
【0036】
処理部M3は、各種データを処理するように構成されている。処理部M3は、例えば、記憶部M2に記憶されている各種データに基づいて、加工装置1の各部を動作させるための信号を生成してもよい。処理部M3は、エアセンサ120によって測定された気体の流量のデータに基づいて、各ノズル130と測定対象物Wの表面Waとの離隔距離を算出してもよい。
【0037】
ところで、図4に例示されるように、ノズル130の吹出孔131から気体が測定対象物Wの表面Waに向けて吹き出されると、当該離隔距離に応じて気体の流れにくさ(インピーダンス)が変化する。すなわち、当該離隔距離が小さい場合には、ノズル130の吹出孔131と測定対象物Wの表面Waとの間の空間が狭く、吹出孔131から吹き出された気体が直ちに表面Waに衝突するので、気体が流れにくくなる。一方、当該離隔距離が大きい場合には、ノズル130の吹出孔131と測定対象物Wの表面Waとの間の空間が広く、吹出孔131から吹き出された気体が表面Waに衝突するまでに気体が周囲の空間に拡がる傾向にあるので、気体が流れやすくなる。そのため、エアセンサ120によって、内部流路V2を流れる気体の流量を測定することで、当該離隔距離の大きさを算出することができる。なお、センサ本体122において、測定される気体の流量が電圧値として出力され、電圧値のデータがコントローラCtrに送信されてもよい。すなわち、コントローラCtrは、センサ本体122から電圧値のデータを受信後、当該電圧値を流量に変換する処理を実行してもよい。
【0038】
指示部M4は、処理部M3において生成された動作信号を、加工装置1の各部に送信するように構成されている。
【0039】
コントローラCtrのハードウェアは、例えば一つ又は複数の制御用のコンピュータにより構成されていてもよい。コントローラCtrは、図6に示されるように、ハードウェア上の構成として回路C1を含んでいてもよい。回路C1は、電気回路要素(circuitry)で構成されていてもよい。回路C1は、例えば、プロセッサC2と、メモリC3と、ストレージC4と、ドライバC5と、入出力ポートC6とを含んでいてもよい。
【0040】
プロセッサC2は、メモリC3及びストレージC4の少なくとも一方と協働してプログラムを実行し、入出力ポートC6を介した信号の入出力を実行することで、上述した各機能モジュールを実現するように構成されていてもよい。メモリC3及びストレージC4は、記憶部M2として機能してもよい。ドライバC5は、加工装置1の各部をそれぞれ駆動するように構成された回路であってもよい。入出力ポートC6は、ドライバC5と加工装置1の各部との間で、信号の入出力を仲介するように構成されていてもよい。
【0041】
加工装置1は、一つのコントローラCtrを備えていてもよいし、複数のコントローラCtrで構成されるコントローラ群(制御部)を備えていてもよい。加工装置1がコントローラ群を備えている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコントローラCtrによって実現されていてもよいし、2個以上のコントローラCtrの組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラCtrが複数のコンピュータ(回路C1)で構成されている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコンピュータ(回路C1)によって実現されていてもよい。あるいは、上記の機能モジュールがそれぞれ、2つ以上のコンピュータ(回路C1)の組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラCtrは、複数のプロセッサC2を有していてもよい。この場合、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのプロセッサC2によって実現されていてもよいし、2つ以上のプロセッサC2の組み合わせによって実現されていてもよい。
【0042】
[モデルの生成方法]
次に、図7及び図8を参照して、エアセンサ120のモデル(特性)の生成方法について説明する。まず、図7(a)に例示されるように、ステージ10に基準ブロック140を載置する。次に、コントローラCtrがアクチュエータ23を制御して、ノズル130が基準ブロック140の表面141に接触するまで、センサユニット100を保持部21と共に降下させる。
【0043】
次に、コントローラCtrがアクチュエータ23を制御して、ノズル130が基準ブロック140の表面141から10μm上方に位置するように、センサユニット100を保持部21と共に上昇させる。この状態で、コントローラCtrが供給部30を制御して、センサユニット100に気体を供給させる。これにより、ノズル130の吹出孔131から基準ブロック140の表面141に気体が吹き付けられる。このとき、エアセンサ120において、気体の流量の測定を所定時間継続する。
【0044】
次に、当該所定時間が経過すると、供給部30からのセンサユニット100への気体の供給を継続させたまま、コントローラCtrがアクチュエータ23を制御する。すなわち、ノズル130がさらに10μm上方に位置するように(ノズル130が基準ブロック140の表面141から20μm上方に位置するように)、センサユニット100を保持部21と共に上昇させる。そして、上記と同様に、エアセンサ120において、気体の流量の測定を所定時間継続する。以降も同様に、ノズル130を10μmずつ上昇させながら、エアセンサ120において、気体の流量の測定を所定回数繰り返す。なお、上記したノズル130の上昇量である10μmは一例であり、モデルに求められる精度に応じて当該上昇量を増減させてもよい。
【0045】
こうして得られた測定結果を、図7(b)に示す。上述したようにノズル130が所定時間経過ごとに上昇していくので、図7(b)に例示されるように、エアセンサ120において測定される気体の流量は、時間経過に応じて階段状に大きくなっている。なお、図7(b)では、一例として、3つのエアセンサ120A~エアセンサ120Cの測定結果の例を示している。
【0046】
次に、ノズル130が10μmに位置していたときの気体の流量のデータの平均値を算出する。ノズル130の高さ位置が20μm以降においても同様に、ノズル130の高さ位置ごとに流量のデータの平均値を算出する。こうして算出された複数の平均値を、図8に例示されるように、横軸を基準ブロック140の表面141からのノズル130の高さ位置とし、縦軸を気体の流量としたグラフにプロットする。次に、プロットされたデータに基づいて、近似線を算出する。これにより、ノズル130の高さ位置に対する気体の流量の関数が近似線によって表され、当該近似線がモデルとして得られる。ここで、当該近似線は、例えば、プロットされたデータ同士を直線で結んだ折れ線であってもよいし、線形近似であってもよいし、多項式近似であってもよい。
【0047】
こうして得られた1つのモデルを、全てのエアセンサ120に適用してもよい。あるいは、図7(b)において例示されるエアセンサ120A~120Cのようにエアセンサ120ごとの測定結果のばらつきが大きい場合には、上述の手順にて各エアセンサ120ごとに個別のモデルを生成してもよい(図8参照)。
【0048】
[測定対象部の表面測定方法]
次に、図9及び図10を参照して、測定対象物Wの表面Waを測定する方法について説明する。
【0049】
まず、測定対象物Wの表面Waが上方を向くように、ステージ10に測定対象物Wを載置する。次に、コントローラCtrがアクチュエータ23に指示して、ノズル130が測定対象物Wの表面Waの基準位置から所定の高さとなるように、センサユニット100の高さ位置を調節する。ここで、当該基準位置は、例えば、事前の測定などにより表面Waの高さ位置が既知の任意の位置であってもよい。
【0050】
次に、コントローラCtrが供給部30を制御して、センサユニット100に気体を供給させる。これにより、各ノズル130の吹出孔131から気体が下方に向けて吹き出される(第1の処理、第1の工程)。
【0051】
次に、各ノズル130の吹出孔131から気体が吹き出ている状態で、コントローラCtrがアクチュエータ11に指示して、センサユニット100が測定対象物Wの表面Waを走査するように、ステージ10を動作させる(第2の処理、第2の工程)。具体的には、まず、図9に例示されるように、ノズル130が、測定対象物Wの一方の側縁から他方の側縁を超えるまで、水平方向に沿い且つ第1の方向に交差する第2の方向(Z軸に沿った方向)において、センサユニット100を走査させる。すなわち、吹出孔131から吹き出している気体が、測定対象物Wの一方の側縁から他方の側縁を超えるまで、測定対象物Wの表面Waに対して吹き付けられる。
【0052】
このとき、センサユニット100の走査に伴い、ノズル130と測定対象物Wの表面Waとの離隔距離に応じた気体の流量がエアセンサ120において測定される。コントローラCtrは、エアセンサ120において測定された気体の流量のデータに基づいて、ノズル130と測定対象物Wの表面Waとの離隔距離を算出する(第3の処理、第3の工程)。コントローラCtrは、各エアセンサ120において測定された気体の流量のデータを、予め取得したモデルに代入することで、当該離隔距離を算出してもよい。各エアセンサ120ごとにモデルを取得している場合には、コントローラCtrは、各エアセンサ120において測定された気体の流量のデータを、対応するモデルに代入することで、各ノズル130と測定対象物Wの表面Waとの離隔距離をそれぞれ算出してもよい。なお、図10(a)に、センサユニット100が測定対象物Wの一方の側縁から他方の側縁を超えるまで移動したときに、一つのエアセンサ120において測定された気体の流量のデータに基づく当該離隔距離の算出結果の一例を示す。
【0053】
続いて、コントローラCtrがアクチュエータ11に指示して、第1の方向(X軸に沿った方向)において所定の送りピッチで、ステージ10を動作させる。当該送りピッチは、例えば、隣り合うノズル130の吹出孔131同士の距離(隣り合うエアセンサ120の同士の間隔)よりも小さく設定されていてもよい。当該送りピッチは、例えば、隣り合うノズル130の吹出孔131同士の距離の1/2~1/10程度に設定されていてもよい。なお、センサユニット100が測定対象物Wの一方の側縁から他方の側縁へ、あるいはその逆へと、第2の方向(Z軸に沿った方向)において移動する回数は、当該送りピッチに応じて設定されてもよい。例えば、当該送りピッチが、隣り合うノズル130の吹出孔131同士の距離の1/2に設定されている場合には、第2の方向(Z軸に沿った方向)において移動する回数が2回に設定されていてもよい。当該送りピッチが、隣り合うノズル130の吹出孔131同士の距離の1/10に設定されている場合には、第2の方向(Z軸に沿った方向)において移動する回数が10回に設定されていてもよい。
【0054】
続いて、ノズル130の吹出孔131が、測定対象物Wの他方の側縁から一方の側縁を超えるまで、第2の方向(Z軸に沿った方向)において、センサユニット100を走査させる。以上の動作を繰り返すことにより、センサユニット100が第2の方向(Z軸に沿った方向)において測定対象物Wの表面Wa上を所定回数走査しつつ、第2の方向(Z軸に沿った方向)における走査ごとに当該送りピッチで移動する。換言すれば、センサユニット100は、測定対象物Wの表面Wa上において、測定対象物Wに対して蛇行しながら(左右に曲折しながら)移動する。このセンサユニット100による、測定対象物Wに対する相対的な蛇行移動を、センサユニット100のスキャン動作と称することがある。
【0055】
以上により、測定対象物Wの表面Waのうち測定対象となる領域(例えば、当該表面Waの一部又は全部)の全てが測定されると、測定対象物Wの表面Waの測定処理が完了する。なお、以上の処理によって、測定対象物Wの表面Waのうち測定対象となる領域の全てが測定されない場合には、次の処理が行われてもよい。すなわち、コントローラCtrがアクチュエータ11に指示して、測定対象物Wの表面Waのうちセンサユニット100によって走査されていない領域(走査未了領域)にセンサユニット100が至るまで、ステージ10を動作させてもよい(図9の矢印Ar参照)。このステージ10の動作を、センサユニット100の相対位置を走査未了領域にシフトさせるという意味で、センサユニット100のシフト動作と称することがある。
【0056】
当該シフト動作後、コントローラCtrが、アクチュエータ11及び供給部30に指示する。これにより、各ノズル130の吹出孔131から気体が下方に向けて吹き出されている状態で、センサユニット100が測定対象物Wの表面Waのうち走査未了領域を走査するように、ステージ10が再び動作する。その後も、測定対象物Wの表面Waに走査未了領域が存在する場合には、上記のスキャン動作及びシフト動作が繰り返し実行されてもよい。
【0057】
測定対象物Wの表面Waの測定処理が完了すると、コントローラCtrは、上記の処理の過程で得られた離隔距離に基づいて測定対象物Wの表面形状を算出して、当該表面形状をディスプレイ40に表示させてもよい(第4の処理、第4の工程)。具体的には、コントローラCtrは、コントローラCtrにおいて算出された離隔距離をそれぞれ、測定対象物Wの表面Waの高さ位置に変換してもよい。次に、コントローラCtrは、各エアセンサ120の位置に応じて当該高さ位置の大きさを二次元的又は三次元的にディスプレイ40に表示させてもよい。図10(b)に、離隔距離が小さい位置(測定対象物Wの表面Waの高さ位置が相対的に高い位置)をグレーの濃色で表示し、離隔距離が大きい位置(測定対象物Wの表面Waの高さ位置が相対的に低い位置)をグレーの淡色で表示した二次元画像の一例を示す。
【0058】
[作用]
以上の例によれば、各ノズル130の吹出孔131からそれぞれ測定対象物Wの表面Waに向けて気体を吹き付けながら、センサユニット100を表面Wa上において走査させている。そして、各エアセンサ120によって測定される気体の流量に基づいて、各ノズル130と表面Waとの離隔距離(ギャップ)をそれぞれ算出している。そのため、センサユニット100が表面Wa上を走査するたびに、測定対象物Wの表面形状に関する複数のデータが一度に取得される。そのため、一つのエアセンサ120が測定対象物Wの表面全体を走査する場合と比較して、測定対象物Wの表面全体の表面形状をより高速に測定することが可能となる。また、以上の例によれば、エアセンサ120がノズル130の吹出孔131よりも上流側に位置している。そのため、ノズル130と測定対象物Wの表面Waとの離隔距離が変化することに伴い、吹出孔131から吹き出される気体の流量が変化すると、当該吹出孔131と同一の流路で且つ上流側にあるエアセンサにおいても気体の流量が直ちに変化する。すなわち、極めて高速な応答速度が得られる。したがって、以上の例によれば、測定対象物Wの表面形状を極めて高速に測定することが可能となる。
【0059】
以上の例によれば、モデルを予め取得しておくことで、各エアセンサ120において測定される気体の流量から直ちに、各エアセンサ120と測定対象物Wの表面Waとの離隔距離が推定されうる。そのため、センサユニット100による測定対象物Wの表面形状の測定中に時々刻々と変化する各エアセンサ120における気体の流量に応じて、各離隔距離を精度よく且つ即時に推定することが可能となる。
【0060】
以上の例によれば、各エアセンサ120についてモデルが予め取得されうる。そのため、製造誤差などによりエアセンサ120の機体ごとに特性が僅かずつ異なるような場合であっても、各エアセンサ120に応じたモデルを用いて、各エアセンサ120と測定対象物Wの表面Waとの離隔距離をより正確に算出することが可能となる。
【0061】
以上の例によれば、ベース部110内の内部空間V1がベース部110の接続孔112を介して各エアセンサ120の入口部123と連通している。また、以上の例によれば、各エアセンサ120の出口部124がそれぞれ、ベース部110の接続孔113を介して、対応するノズル130の吹出孔131と連通している。そのため、ベース部110から各ノズル130の吹出孔131までの流路の全長がより短くなりうる。したがって、ノズル130と測定対象物Wの表面Waとの離隔距離の変化に対するエアセンサ120における気体の流量の応答速度が、より高速となる。その結果、測定対象物Wの表面形状をさらに高速に測定することが可能となる。
【0062】
以上の例によれば、センサユニット100のシフト動作が行われうる。そのため、測定対象物Wの表面Waのうち隣り合うノズル130同士の間に対応する領域については、細かな送りピッチでセンサユニット100を走査する。一方、測定対象物Wの表面Waのうち走査未了領域については、センサユニット100が第2の方向に大きく移動した後に、センサユニット100によるスキャン動作が行われうる。したがって、測定対象物Wの表面全体を一つのセンサユニット100によって効率的に測定することが可能となる。
【0063】
以上の例によれば、コントローラCtrによって算出された離隔距離に基づく測定対象物Wの表面形状が、各エアセンサ120の位置に応じて、二次元的又は三次元的にディスプレイ40に表示される。そのため、測定対象物Wの表面形状を、作業者が視覚を通じて容易に把握することが可能となる。
【0064】
以上の例によれば、加工装置1が表面測定装置2を含んでおり、加工ユニット20に工具22及びセンサユニット100が取り付けられている。そのため、測定対象物Wの表面形状がセンサユニット100によって測定された後に、その測定データに基づいて直ちに測定対象物Wを工具22で加工しうる。そのため、測定対象物Wの表面形状の測定処理と測定対象物Wの加工処理との間で測定対象物の移動が不要となり、これに伴い、測定対象物Wの移動後の位置調整なども不要となる。したがって、測定処理から加工処理への時間が短縮化されるので、生産性を高めることが可能となる。
【0065】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0066】
(1)以上の例では、ノズル130と基準ブロック140の表面141との離隔距離と、ノズル130の吹出孔131から当該表面141に吹き付けられた気体の流量との関係性を示す近似線を、モデルとして得ていた。しかしながら、例えば、供給部30からセンサユニット100への気体の流量、ノズル130の吹出孔131の開口面積なども、モデルを構成する一つの要素として含まれていてもよい。
【0067】
(2)図11に例示されるように、表面測定装置2は、各ノズル130に対して着脱可能に構成された複数のアタッチメントノズル150をさらに含んでいてもよい。アタッチメントノズル150は、ノズル130の下面及び周面の一部の外形と適合する凹形状を呈していてもよい。アタッチメントノズル150は、ノズル130に対して密着するように、例えば接着剤、雄ネジ及び雌ネジによる螺合構造などによってノズル130に接合されていてもよい。接着剤を用いてアタッチメントノズル150をノズル130に接合した場合には、接着剤の除去液などを用いてノズル130からアタッチメントノズル150を取り外してもよい。アタッチメントノズル150は、自身を貫通する吹出孔151(別の吹出孔)を含む。吹出孔151の開口面積は、吹出孔131の開口面積よりも小さく設定されている。
【0068】
図11の例によれば、アタッチメントノズル150がノズル130に取り付けられることにより、測定対象物Wの表面Waに気体が衝突したときの面積が小さくなる。そのため、測定対象物Wの表面Waのうちより狭い範囲に応答して、エアセンサ120における気体の流量が変化する。したがって、測定対象物Wの表面状態をより精密に測定することが可能となる。また、図11の例によれば、アタッチメントノズル150がノズル130に対して着脱可能とされている。そのため、アタッチメントノズル150を着脱するだけで、センサユニット100において、次の2つの用途の使い分けが可能となる。すなわち、一つの用途は、比較的大径の吹出孔131を備えるノズルを用いて測定対象物Wの表面全体を迅速に測定する用途である。一方、もう一つの用途は、比較的小径の吹出孔151を備えるアタッチメントノズル150を用いて測定対象物Wの表面状態を精密に測定する用途である。
【0069】
(3)エアセンサ120がステージ10及び測定対象物Wに対して相対移動可能に構成されていれば、エアセンサ120及びステージのうち一方が移動してもよいし、双方が移動してもよい。
【0070】
(4)加工装置1は、ステージ10に載置されている測定対象物Wの高さ、位置などを識別するためのカメラをさらに備えていてもよい。
【0071】
(5)測定対象物Wの形状は、特に限定されない。すなわち、測定対象物Wの形状は、直方体形状、円柱状、多角柱状、環状、筒状、歯車状などであってもよい。加工装置1は、測定対象物Wの形状及び加工目的に応じて、工具22により、円筒研削、内面研削、心なし研削、ねじ研削、歯車研削、ならい研削、及び切断を行ってもよい。
【0072】
(6)加工装置1は、工具22を測定対象物Wに接触して測定対象物Wを加工する加工装置であれば、どのような加工を行う装置であってもよい。例えば、加工装置1は、研削装置であってもよいし、切削装置であってもよいし、研磨装置であってもよい。加工装置1が切削装置である場合、工具22は切削工具(例えば、バイト、フライス工具など)であってもよい。加工装置1が研磨装置である場合、工具22は測定対象物Wに対して定圧で押し付けられる遊離砥粒又は固定砥粒であってもよい。
【0073】
[他の例]
例1.表面測定装置の一例は、測定対象物を載置可能なステージと、ステージの上方に配置され且つステージに対して相対移動可能に構成されたセンサユニットと、センサユニットに気体を供給するように構成された供給部と、制御部とを備える。センサユニットは、供給部から供給された気体が内部流路を流通する際の気体の流量をそれぞれ測定するように構成された第1~第N(Nは2以上の自然数)のエアセンサと、水平方向に沿った第1の方向に一列に並ぶように配置された第1~第Nのエアセンサを保持するように構成されたベース部と、第1~第Nのエアセンサの内部流路とそれぞれ連通し且つステージに向けて開口された吹出孔が設けられた第1~第Nのノズルとを含む。制御部は、内部流路を通じて流れてきた気体が、第1~第Nのノズルの吹出孔から下方に向けて吹き出されるように、供給部を動作させる第1の処理と、第1の処理による供給部の動作中に、センサユニットが測定対象物の表面上を走査するように、ステージ及びセンサユニットの少なくとも一方を動作させる第2の処理と、第2の処理によるセンサユニットの走査中に、第1~第Nのエアセンサにおいてそれぞれ測定された気体の流量に基づいて、第1~第Nのノズルと測定対象物の表面との離隔距離をそれぞれ算出する第3の処理とを実行するように構成されている。この場合、第1~第Nのノズルの吹出孔からそれぞれ測定対象物の表面に向けて気体を吹き付けながら、センサユニットを当該表面上において走査させている。そして、第1~第Nのエアセンサによって測定される気体の流量に基づいて、各ノズルと当該表面との離隔距離(ギャップ)をそれぞれ算出している。そのため、センサユニットが当該表面上を走査するたびに、測定対象物の表面形状に関するN個のデータが一度に取得される。そのため、一つのエアセンサが測定対象物の表面全体を走査する場合と比較して、測定対象物の表面全体の表面形状をより高速に測定することが可能となる。また、例1の装置の場合、エアセンサがノズルの吹出孔よりも上流側に位置している。そのため、ノズルと測定対象物の表面との離隔距離が変化することに伴い、吹出孔から吹き出される気体の流量が変化すると、当該吹出孔と同一の流路で且つ上流側にあるエアセンサにおいても気体の流量が直ちに変化する。すなわち、極めて高速な応答速度が得られる。したがって、例1の装置によれば、測定対象物の表面形状を極めて高速に測定することが可能となる。
【0074】
例2.例1の装置において、制御部は、第1~第Nのエアセンサのうち一つのエアセンサの内部流路を流通した気体が、第1~第Nのノズルのうち一つのエアセンサに対応する一つのノズルから、ステージに載置された基準ブロックの表面に吹き出されるときの、一つのエアセンサが測定した気体の流量と、一つのノズルと基準ブロックの表面との離隔距離との関係を表すモデルを予め取得する第4の処理をさらに実行するように構成されており、第3の処理は、第2の処理によるセンサユニットの走査中に、モデルと、第1~第Nのエアセンサにおいてそれぞれ測定された気体の流量とに基づいて、第1~第Nのエアセンサと測定対象物の表面との離隔距離をそれぞれ算出することを含んでいてもよい。この場合、モデルを予め取得しておくことで、各エアセンサにおいて測定される気体の流量から直ちに、各エアセンサと測定対象物の表面との離隔距離が推定される。そのため、センサユニットによる測定対象物の表面形状の測定中に時々刻々と変化する各エアセンサにおける気体の流量に応じて、各離隔距離を精度よく且つ即時に推定することが可能となる。
【0075】
例3.例1の装置において、制御部は、第1~第Nのエアセンサの内部流路を流通した気体が、第1~第Nのノズルから、ステージに載置された基準ブロックの表面に吹き出されるときの、第n(nは1~Nのいずれかの自然数)のエアセンサが測定した気体の流量と、第nのノズルと基準ブロックの表面との離隔距離との関係を表すモデルを、第1~第Nのエアセンサについて予め取得する第4の処理をさらに実行するように構成されており、第3の処理は、第2の処理によるセンサユニットの走査中に、モデルと、第1~第Nのエアセンサにおいてそれぞれ測定された気体の流量とに基づいて、第1~第Nのエアセンサと測定対象物の表面との離隔距離をそれぞれ算出することを含んでいてもよい。この場合、例2の装置と同様の作用効果が得られる。また、例3の装置の場合、各エアセンサについてモデルが予め取得される。そのため、製造誤差などによりエアセンサの機体ごとに特性が僅かずつ異なるような場合であっても、各エアセンサに応じたモデルを用いて、各エアセンサと測定対象物の表面との離隔距離をより正確に算出することが可能となる。
【0076】
例4.例1~例3のいずれかの装置において、第1~第Nのエアセンサはそれぞれ、内部流路に連通する入口部及び出口部を含み、第1~第Nのノズルは、吹出孔が第1~第Nのエアセンサのうち対応するエアセンサの出口部とそれぞれ連通するように、ベース部の底面に設けられており、ベース部は、第1~第Nのエアセンサの入口部及び供給部と連通する内部空間を含んでいてもよい。この場合、ベース部から各ノズルの吹出孔までの流路の全長がより短くなる。そのため、ノズルと測定対象物の表面との離隔距離の変化に対するエアセンサにおける気体の流量の応答速度が、より高速となる。したがって、測定対象物の表面形状をさらに高速に測定することが可能となる。
【0077】
例5.例1~例4のいずれかの装置において、第2の処理は、水平方向に沿い且つ第1の方向に交差する第2の方向において、センサユニットが測定対象物の表面上を所定回数走査しつつ、第2の方向における走査ごとに、第1の方向において第1~第Nのエアセンサが隣り合う間隔よりも小さい送りピッチでセンサユニットが移動するように、ステージ及びセンサユニットの少なくとも一方を動作させることと、測定対象物の表面のうちセンサユニットによって走査されていない領域に至るまで、第2の方向においてセンサユニットが移動するように、ステージ及びセンサユニットの少なくとも一方を動作させることとを含んでいてもよい。この場合、測定対象物の表面のうち隣り合うノズル同士の間に対応する領域については、細かな送りピッチでセンサユニットを走査し、測定対象物の表面のうち当該領域以外については、センサユニットが第2の方向に大きく移動した後に、センサユニットによる走査が行われる。そのため、測定対象物の表面全体を一つのセンサユニットによって効率的に測定することが可能となる。
【0078】
例6.例1~例5のいずれかの装置において、センサユニットは、第1~第Nのノズルの吹出孔よりも小さい別の吹出孔が設けられ、且つ、第1~第Nのノズルに装着された状態で別の吹出孔が吹出孔と連通するように、第1~第Nのノズルのそれぞれに着脱可能に構成された複数のアタッチメントノズルをさらに含んでいてもよい。この場合、アタッチメントノズルがノズルに取り付けられることにより、測定対象物の表面に気体が衝突したときの面積が小さくなる。そのため、測定対象物の表面のうちより狭い範囲に応答して、エアセンサにおける気体の流量が変化する。したがって、測定対象物の表面状態をより精密に測定することが可能となる。また、例6の装置の場合、アタッチメントノズルがノズルに対して着脱可能とされている。そのため、アタッチメントノズルを着脱するだけで、センサユニットにおいて、次の2つの用途の使い分けが可能となる。すなわち、一つの用途は、比較的大径の吹出孔を備えるノズルを用いて測定対象物の表面全体を迅速に測定する用途である。一方、もう一つの用途は、比較的小径の別の吹出孔を備えるアタッチメントノズルを用いて測定対象物の表面状態を精密に測定する用途である。
【0079】
例7.例1~例6のいずれかの装置は、表示部をさらに備え、制御部は、第3の処理によって算出された離隔距離に基づく前記測定対象物の表面形状を、第1~第Nのエアセンサの位置に応じて二次元的又は三次元的に表示部に表示させる第4の処理をさらに実行するように構成されていてもよい。この場合、測定対象物の表面形状を、作業者が視覚を通じて容易に把握することが可能となる。
【0080】
例8.加工装置の一例は、例1~例7のいずれかの表面測定装置と、測定対象物を加工するように構成された工具と、工具及び表面測定装置を保持するように構成された保持部とを備える。この場合、例1の装置と同様の作用効果が得られる。また、表面測定装置が、保持部によって工具と共に保持されているので、測定対象物の表面形状がセンサユニットによって測定された後に、その測定データに基づいて直ちに測定対象物を工具で加工しうる。そのため、測定対象物の表面形状の測定処理と測定対象物の加工処理との間で測定対象物の移動が不要となり、これに伴い、測定対象物の移動後の位置調整なども不要となる。したがって、測定処理から加工処理への時間が短縮化されるので、生産性を高めることが可能となる。
【0081】
例9.表面測定方法の一例は、ステージ上に載置された測定対象物の表面をセンサユニットによって測定する方法である。センサユニットは、供給部から供給された気体が内部流路を流通する際の気体の流量をそれぞれ測定するように構成された第1~第N(Nは2以上の自然数)のエアセンサと、水平方向に沿った第1の方向に一列に並ぶように配置された第1~第Nのエアセンサを保持するように構成されたベース部と、第1~第Nのエアセンサの内部流路とそれぞれ連通し且つステージに向けて開口された吹出孔が設けられた第1~第Nのノズルとを含む。表面測定方法の一例は、気体を、内部流路を通じて第1~第Nのノズルの吹出孔から下方に向けて吹き出す第1の工程と、第1の工程における測定対象物の表面への気体の吹き出し中に、センサユニットが測定対象物の表面上を走査する第2の工程と、第2の工程におけるセンサユニットの走査中に、第1~第Nのエアセンサにおいてそれぞれ測定された気体の流量に基づいて、第1~第Nのノズルと測定対象物の表面との離隔距離をそれぞれ算出する第3の工程とを含む。この場合、例1の装置と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0082】
1…加工装置、2…表面測定装置、10…ステージ、20…加工ユニット、21…保持部、22…工具、30…供給部、40…ディスプレイ(表示部)、100…センサユニット、110…ベース部、120…エアセンサ、123…入口部、124…出口部、130…ノズル、131…吹出孔、140…基準ブロック、141…表面、150…アタッチメントノズル、151…吹出孔(別の吹出孔)、Ctr…コントローラ(制御部)、W…測定対象物、Wa…表面、V1…内部空間、V2…内部流路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11