(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168722
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】補強注入構造及び地山補強工法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/04 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
E21D9/04 F
E21D9/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085622
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】柳下 和也
(72)【発明者】
【氏名】瀧 穂高
(72)【発明者】
【氏名】山田 明
(72)【発明者】
【氏名】田村 兼一
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐介
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AB07
2D054AC20
2D054FA02
2D054FA07
(57)【要約】
【課題】地山に打設された長尺補強管の端末部分を環状溝で折断する際に、長尺補強管に内挿された注入材の注入ホースの対応部分も確実に撤去することができる。
【解決手段】注入材103の吐出孔21が周壁に形成され、複数本の補強管2を直列に接続して地山100に打設される長尺補強管3と、長尺補強管3に内挿され、長尺補強管3の内部に注入材103を注入する複数本の注入ホース4を備え、長尺補強管3の端末部分に長手方向に間隔を開けて環状溝26dが設けられ、環状溝26dに対応する位置に配置されている注入ホース4の配置部分に、注入ホース4を構成するホース部44を直列に接続し且つ環状溝26dの折断の為の外力で直列するホース部44同士の接続が解除されるホースジョイント43が設けられる補強注入構造1。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入材の吐出孔が周壁に形成され、複数本の補強管を直列に接続して地山に打設される長尺補強管と、
前記長尺補強管に内挿され、前記長尺補強管の内部に注入材を注入する複数本の注入ホースとを備え、
前記長尺補強管の端末部分に長手方向に間隔を開けて環状溝が設けられ、
前記環状溝に対応する位置に配置されている所要の前記注入ホースの配置部分に、前記注入ホースを構成するホース部を直列に接続し且つ前記環状溝の折断の為の外力で直列するホース部同士の接続が解除されるホースジョイントが設けられることを特徴とする補強注入構造。
【請求項2】
注入材の吐出孔が周壁に形成され、複数本の補強管を直列に接続して地山に打設される長尺補強管と、
前記長尺補強管に内挿され、前記長尺補強管の内部に注入材を注入する複数本の注入ホースとを備え、
前記長尺補強管の端末部分に長手方向に間隔を開けて環状溝が設けられ、
前記長尺補強管の長手方向で隣に配置されている第1の前記環状溝と第2の前記環状溝との間の領域に、前記注入ホースの一部を構成する易切断性ホース部が配設されることを特徴とする補強注入構造。
【請求項3】
複数本の補強管を直列に接続して長尺補強管を地山に打設する第1工程と、
複数本の注入ホースを前記長尺補強管に内挿し、前記長尺補強管の端末部分に長手方向に間隔を開けて設けられた環状溝に対応する位置に、前記注入ホースを構成するホース部を直列に接続し且つ前記環状溝の折断の為の外力で直列するホース部同士の接続が解除されるホースジョイントを配置する第2工程と、
複数本の前記注入ホースで前記長尺補強管の内部に注入材を注入し、前記長尺補強管の周壁に形成された吐出孔から前記注入材を周辺地山に吐出し、前記長尺補強管の周辺地山に固結領域を形成する第3工程と、
掘削機械の工具により、前記長尺補強管の端末部分を前記環状溝の箇所で折断すると共に、折断した前記環状溝に対応する位置で前記注入ホースの前記ホース部を前記ホースジョイントから取り外す第4工程とを備えることを特徴とする地山補強工法。
【請求項4】
複数本の補強管を直列に接続して長尺補強管を地山に打設する第1工程と、
複数本の注入ホースを前記長尺補強管に内挿し、前記長尺補強管の端末部分に長手方向に間隔を開けて隣に設けられた第1の環状溝と前記第2の環状溝との間の領域に、前記注入ホースの一部を構成する易切断性ホース部を配設する第2工程と、
複数本の前記注入ホースで前記長尺補強管の内部に注入材を注入し、前記長尺補強管の周壁に形成された吐出孔から前記注入材を周辺地山に吐出し、前記長尺補強管の周辺地山に固結領域を形成する第3工程と、
掘削機械の工具により、前記第2の環状溝より前記長尺補強管の端末寄りに設けられた前記第1の環状溝の箇所で前記長尺補強管の端末部分を折断すると共に、前記第1の環状溝に対応する位置で前記易切断性ホース部を切断する第4工程とを備えることを特徴とする地山補強工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば無拡幅長尺先受け工法(無拡幅AGF工法)の長尺補強管に注入管を内挿して注入材を注入する場合に用いられる補強注入構造及び地山補強工法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル掘進に先立って切羽前方地山を補強する工法として
図9及び
図10に示す無拡幅AGF工法が知られている。無拡幅AGF工法では、切羽201から直近の支保工202の内周に沿って前方の地山200に斜め方向に向けて長さ3m程度の吐出孔付き部分鋼管である吐出孔付きの補強管203を打ち込み、補強管203を打ち込みながら何本か直列に接続して長さ12m程度の長尺補強管204を地山200に打設した後、長尺補強管204に複数本の注入ホース205(
図11、
図12参照)を内挿して補強管203の内部に注入材206を注入し、補強管203の吐出孔から周囲の地山200に注入材206を浸透させて注入材206による固結領域を地山200に形成する。
【0003】
無拡幅AGF工法は、切羽201から直近の支保工202の内周に沿って地山200に斜め前方に向かって長尺補強管204を打設するものであるため、トンネル掘進を進めて次の切羽201に前進すると、端末補強管203a、換言すれば長尺補強管204の端末部分がトンネル空間Tに露出してしまい、トンネル掘進方向TDへのトンネル掘進の障害となる。
【0004】
そこで、特許文献1では、鋼製補強管の外周に長手方向に所定の間隔をおいて複数の環状溝を形成し、この鋼製補強管を端末補強管として打設することにより、鋼製補強管の打設位置の下側を掘削する時に露出した鋼製補強管の端部を簡単に折断できるようにし、露出した端末補強管がトンネル掘進の障害になることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、長手方向に間隔を開けて環状溝が形成された端末補強管203aを環状溝の箇所で折断する際には、端末補強管203aの内部に注入ホース205と硬化した注入材206が入っており、掘削機械の刃207を用い、環状溝の箇所で端末補強管203aを折断して除去する時には、その内部の注入ホース205の部分と硬化した注入材206も合わせて除去することになる。
【0007】
しかしながら、注入ホース205はナイロンホースのように切れにくい材料で形成されているのが通常であり、環状溝の箇所で端末補強管203aを折断した時に、
図11及び
図12のように複数本の注入ホース205が切羽201からぶら下がって残っている状態になることが多々ある。現状では、ぶら下がって残った注入ホース205の部分を作業員が油圧ブレーカーの工具部分を繰り返し当てて時間をかけて撤去しているが、この撤去作業は非情に煩雑で時間がかかることに加え、撤去作業時によって切羽部分の地山200を緩ませてしまう可能性があり、危険を伴う。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、地山に打設された長尺補強管の端末部分を環状溝で折断する際に、長尺補強管に内挿された注入材の注入ホースの対応部分も確実に撤去することができる補強注入構造及び地山補強工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の補強注入構造は、注入材の吐出孔が周壁に形成され、複数本の補強管を直列に接続して地山に打設される長尺補強管と、前記長尺補強管に内挿され、前記長尺補強管の内部に注入材を注入する複数本の注入ホースとを備え、前記長尺補強管の端末部分に長手方向に間隔を開けて環状溝が設けられ、前記環状溝に対応する位置に配置されている所要の前記注入ホースの配置部分に、前記注入ホースを構成するホース部を直列に接続し且つ前記環状溝の折断の為の外力で直列するホース部同士の接続が解除されるホースジョイントが設けられることを特徴とする。
これによれば、地山に打設された長尺補強管の端末部分を環状溝で折断する際に、ホースジョイントで接続されている注入ホースのホース部を折断動作で取り外すことができる。即ち、地山に打設された長尺補強管の端末部分を環状溝で折断する際に、長尺補強管に内挿された注入材の注入ホースの対応部分も確実に撤去することができる。従って、ぶら下がって残った注入ホースの部分を作業員が油圧ブレーカーの工具部分を繰り返し当てて時間をかけて撤去する煩雑な作業を無くすことができると共に、撤去作業によって切羽部分の地山を緩ませてしまうリスクを無くすことができる。
【0010】
本発明の補強注入構造は、注入材の吐出孔が周壁に形成され、複数本の補強管を直列に接続して地山に打設される長尺補強管と、前記長尺補強管に内挿され、前記長尺補強管の内部に注入材を注入する複数本の注入ホースとを備え、前記長尺補強管の端末部分に長手方向に間隔を開けて環状溝が設けられ、前記長尺補強管の長手方向で隣に配置されている第1の前記環状溝と第2の前記環状溝との間の領域に、前記注入ホースの一部を構成する易切断性ホース部が配設されることを特徴とする。
これによれば、地山に打設された長尺補強管の端末部分を環状溝で折断する際に、注入ホースの一部を構成する易切断性ホース部を折断動作で切断することができる。即ち、地山に打設された長尺補強管の端末部分を環状溝で折断する際に、長尺補強管に内挿された注入材の注入ホースの対応部分も確実に撤去することができる。従って、ぶら下がって残った注入ホースの部分を作業員が油圧ブレーカーの工具部分を繰り返し当てて時間をかけて撤去する煩雑な作業を無くすことができると共に、撤去作業によって切羽部分の地山を緩ませてしまうリスクを無くすことができる。
【0011】
本発明の地山補強工法は、複数本の補強管を直列に接続して長尺補強管を地山に打設する第1工程と、複数本の注入ホースを前記長尺補強管に内挿し、前記長尺補強管の端末部分に長手方向に間隔を開けて設けられた環状溝に対応する位置に、前記注入ホースを構成するホース部を直列に接続し且つ前記環状溝の折断の為の外力で直列するホース部同士の接続が解除されるホースジョイントを配置する第2工程と、複数本の前記注入ホースで前記長尺補強管の内部に注入材を注入し、前記長尺補強管の周壁に形成された吐出孔から前記注入材を周辺地山に吐出し、前記長尺補強管の周辺地山に固結領域を形成する第3工程と、掘削機械の工具により、前記長尺補強管の端末部分を前記環状溝の箇所で折断すると共に、折断した前記環状溝に対応する位置で前記注入ホースの前記ホース部を前記ホースジョイントから取り外す第4工程とを備えることを特徴とする。
これによれば、地山に打設された長尺補強管の端末部分を環状溝で折断する際に、ホースジョイントで接続されている注入ホースのホース部を折断動作で取り外すことができる。即ち、地山に打設された長尺補強管の端末部分を環状溝で折断する際に、長尺補強管に内挿された注入材の注入ホースの対応部分も確実に撤去することができる。従って、ぶら下がって残った注入ホースの部分を作業員が油圧ブレーカーの工具部分を繰り返し当てて時間をかけて撤去する煩雑な作業を無くすことができると共に、撤去作業によって切羽部分の地山を緩ませてしまうリスクを無くすことができる。
【0012】
本発明の地山補強工法は、複数本の補強管を直列に接続して長尺補強管を地山に打設する第1工程と、複数本の注入ホースを前記長尺補強管に内挿し、前記長尺補強管の端末部分に長手方向に間隔を開けて隣に設けられた第1の環状溝と前記第2の環状溝との間の領域に、前記注入ホースの一部を構成する易切断性ホース部を配設する第2工程と、複数本の前記注入ホースで前記長尺補強管の内部に注入材を注入し、前記長尺補強管の周壁に形成された吐出孔から前記注入材を周辺地山に吐出し、前記長尺補強管の周辺地山に固結領域を形成する第3工程と、掘削機械の工具により、前記第2の環状溝より前記長尺補強管の端末寄りに設けられた前記第1の環状溝の箇所で前記長尺補強管の端末部分を折断すると共に、前記第1の環状溝に対応する位置で前記易切断性ホース部を切断する第4工程とを備えることを特徴とする。
これによれば、地山に打設された長尺補強管の端末部分を環状溝で折断する際に、注入ホースの一部を構成する易切断性ホース部を折断動作で切断することができる。即ち、地山に打設された長尺補強管の端末部分を環状溝で折断する際に、長尺補強管に内挿された注入材の注入ホースの対応部分も確実に撤去することができる。従って、ぶら下がって残った注入ホースの部分を作業員が油圧ブレーカーの工具部分を繰り返し当てて時間をかけて撤去する煩雑な作業を無くすことができると共に、撤去作業によって切羽部分の地山を緩ませてしまうリスクを無くすことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地山に打設された長尺補強管の端末部分を環状溝で折断する際に、長尺補強管に内挿された注入材の注入ホースの対応部分も確実に撤去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態の補強注入構造が用いられる無拡幅長尺先受け工(AGF工)を示す縦断説明図。
【
図2】(a)は第1実施形態の補強注入構造の模式断面図、(b)は同図(a)における長尺補強管の端末側の拡大図。
【
図3】第1実施形態の補強注入構造の部分拡大模式断面図。
【
図4】第1実施形態の補強注入構造における長尺補強管の正面図。
【
図5】(a)は第1実施形態の補強注入構造における長尺補強管を構成する先頭補強管の正面図、(b)は同長尺補強管を構成する第1中間補強管の正面図、(c)は同長尺補強管を構成する第2中間補強管の正面図、(d)は同長尺補強管を構成する端末補強管の正面図。
【
図6】(a)~(d)は第1実施形態の地山補強工法の模式工程説明図。
【
図7】(a)は第2実施形態の補強注入構造の模式断面図、(b)は同図(a)における長尺補強管の端末側の拡大図。
【
図8】第2実施形態の補強注入構造における長尺補強管の正面図。
【
図9】無拡幅長尺先受け工における長尺補強管の配置を示す横断説明図。
【
図10】無拡幅長尺先受け工における端末補強管の折断を説明する縦断説明図。
【
図11】(a)、(b)は注入ホースが切羽からぶら下がって残ってしまう課題を説明する課題説明図。
【
図12】(a)、(b)は注入ホースが切羽からぶら下がって残ってしまう課題を説明する拡大課題説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態の補強注入構造及び地山補強工法〕
本発明による第1実施形態の補強注入構造1は、例えば
図1に示す無拡幅長尺先受け工(無拡幅AGF工)に設けられる。
図1の無拡幅長尺先受け工では、切羽101直近の地山100から斜め前方に向けて、3m程度の部分鋼管である補強管2を4本程度の複数本、直列に連結しながら穿孔102を形成するように打設し、直列に連結した複数本の補強管2で長尺補強管3を構成している。長尺補強管3の周囲の地山100には、長尺補強管3の内部に注入されて地山100に浸透した二液混合タイプ等の注入材103の硬化によって固結領域が形成され、これから掘削するトンネル空間Tの周囲の地山100が傘のように覆って補強される(
図9参照)。
【0016】
無拡幅長尺先受け工法の施工の際には、例えば、トンネル掘進時に、1m程度掘り進む毎に支保工104を建て込んで吹付コンクリート105を施すと共に、例えば9m程度掘り進む毎に長尺補強管3を打設する。無拡幅長尺先受け工法の施工では、切羽101の直近の地山100から斜め前方に向けて長尺補強管3が打設されることにより、次段、次次段の掘進サイクルで掘削すべき地山100内に、長尺補強管3の端末部分に位置する端末補強管2dが配置され、トンネル掘進にともなって邪魔になった端末補強管2dが後述する環状溝26dの箇所で折断される。
【0017】
第1実施形態の補強注入構造1は、
図2~
図5に示すように、複数本の補強管2を有し、長手方向に連通する複数本の補強管2を直列に接続して地山100に打設される長尺補強管3が構成される。第1実施形態では、長尺補強管3を構成する補強管2として、先頭補強管2aと、第1中間補強管2bと、第2中間補強管2cと、端末補強管2dの4本が設けられ、地山100の穿孔の奥側から先頭補強管2aと、第1中間補強管2bと、第2中間補強管2cと、端末補強管2dが順に配置されて直列接続され、地山100に打設される。
【0018】
先頭補強管2aは、注入材103の吐出孔21が筒状の周壁に点在するように形成され、先端に削孔ビット22aが設けられていると共に、後端に雄ねじ部23が設けられている。第1中間補強管2bは、注入材103の吐出孔21が筒状の周壁に点在するように形成され、先端に先端方向に向かって漸次拡径する拡径部24が設けられ、拡径部24の内部に雌ねじ部25が設けられていると共に、後端に雄ねじ部23が設けられている。長尺補強管3を構成する際には、第1中間補強管2bの雌ねじ部25は先頭補強管2aの雄ねじ部23に螺着される。
【0019】
第2中間補強管2cは、第1中間補強管2bと同一構成であり、注入材103の吐出孔21が筒状の周壁に点在するように形成され、先端に先端方向に向かって漸次拡径する拡径部24が設けられ、拡径部24の内部に雌ねじ部25が設けられていると共に、後端に雄ねじ部23が設けられている。長尺補強管3を構成する際には、第2中間補強管2cの雌ねじ部25は第1中間補強管2bの雄ねじ部23に螺着される。
【0020】
端末補強管2dは、先端に先端方向に向かって漸次拡径する拡径部24が設けられ、拡径部24の内部に雌ねじ部25が設けられていると共に、後端に雄ねじ部23が設けられている。更に、端末補強管2dの周壁の外側には、長手方向に間隔を開けて複数の環状溝26dが形成され、図示例では4個の環状溝26dが形成されている。尚、図示例の端末補強管2dは、後述する貫通スリット27dから内部に注入された注入材103を周壁の外側に突出するため、周壁に注入材103の吐出孔21が形成されていない構成になっているが、周壁に吐出孔21を形成しても好適である。
【0021】
また、図示例の端末補強管2dの周壁には、環状溝26d・26dで長手方向に仕切られた仕切領域毎に、長手方向で隣に位置する環状溝26d・26dに跨るようにして仕切領域の周壁の解体を容易化する貫通スリット27dが長手方向に延設されており、貫通スリット27dは、長手方向で隣に位置する仕切領域において周方向の位置が異なるように形成されている。長尺補強管3を構成する際には、端末補強管2dの雌ねじ部25は第2中間補強管2cの雄ねじ部23に螺着され、長尺補強管3の端末部分に長手方向に間隔を開けて環状溝26dが設けられる。
【0022】
長尺補強管3には、長尺補強管3の内部に注入材103を注入する複数本の注入ホース4が内挿され、長尺補強管3の端末に螺着されるキャップ5で支持、固定されており、
図2及び
図3の例では3本のナイロンホース等の注入ホース4が長尺補強管3に内挿されている。本例における各注入ホース4の後端部には合流管41が取り付けられ、それぞれの注入ホース4には図示省略する耐圧ホース、合流管41を介して第1液と第2液の混合液で構成される注入材103が図示省略する薬液ポンプから供給される。各注入ホース4の先端部には形状で混合液を混合攪拌するミキサー42が設けられ、ミキサー42で第1液と第2液の混合を促進して長尺補強管3の内部に注入材103を吐出する。
【0023】
各注入ホース4の先端部に配置されているミキサー42は、長尺補強管3の長さ方向で異なる位置に配置されている。長尺補強管3の長さ方向で異なる位置に配置されたミキサー42から注入された注入材103は長尺補強管3の内部に吐出され、長尺補強管3の周壁に形成された吐出孔21から長尺補強管3の周辺の地山100に吐出されて浸透し、注入材103の硬化により長尺補強管3の周辺の地山100に固結領域を形成する。
【0024】
長尺補強管3の長手方向において、端末補強管2dの環状溝26d、換言すれば長尺補強管3の端末部分の環状溝26dに対応する位置に配置されている所要の注入ホース4の配置部分にはホースジョイント43が設けられており、ホースジョイント43は注入ホース4を構成する筒状のホース部44を直列に接続している。ホースジョイント43は、ホース部44・44を相互に接続し、且つ端末補強管2dの環状溝26dの折断の為の外力でホース部44とホースジョイント43との接続が解除される構成になっており、好適にはストレートホースジョイントが用いられる。
【0025】
第1実施形態の補強注入構造1を地山100に設置する地山補強工法を行う際には、例えば通常の無拡幅長尺先受け工法(無拡幅AGF工法)と同様に、切羽101直近の地山100から斜め前方に向けて、複数本の補強管2に相当する先頭補強管2a、第1中間補強管2b、第2中間補強管2c、端末補強管2dを直列に連結しながら穿孔102を形成するように打設し、複数本の補強管2で構成される長尺補強管3を地山100に打設する(
図6(a)、
図1、
図4参照)。
図6(a)の符号105pは一次吹付コンクリート、符号105qは二次吹付コンクリートである。
【0026】
長尺補強管3の打設後には、図示省略する削孔ロッドを長尺補強管3から引き抜き、長尺補強管3に複数本の注入ホース4を内挿し、長尺補強管3の端末に注入ホース4を支持するキャップ5を螺着する(
図6(a)、
図2、
図3参照)。
図6(a)の長尺補強管3と注入ホース4は模式的に示されており、実際には
図3に示す構成の長尺補強管3及び端末補強管2dと、注入ホース4が設けられ、長尺補強管3への注入ホース4の内挿により、長尺補強管3の端末部分の環状溝26dに対応する位置に配置されている注入ホース4の配置部分にホースジョイント43が配置される。
【0027】
そして、複数本の注入ホース4で長尺補強管3の内部に注入材103を注入し、長尺補強管3の周壁に形成された吐出孔21から注入材103を周辺の地山100に吐出し、長尺補強管3の周辺の地山100に注入材103の硬化による固結領域を形成する(
図6(a)、
図1、
図3参照)。
【0028】
注入材103の注入後には、掘削機械の工具、例えばショベルカーのショベル刃や油圧ブレーカーのチゼル等の工具で斫る、或いは叩く等の動作により、長尺補強管3の端末部分を環状溝26dの箇所で折断する、換言すれば長尺補強管3を構成する端末補強管2dを環状溝26dの箇所で折断すると共に、この折断動作により、折断した環状溝26dに対応する位置に配置されている注入ホース4のホース部44をホースジョイント43から取り外す(
図6(b)、
図1~
図3参照)。更に、トンネル掘進の進行に伴い、打設された長尺補強管3のより奥側に位置する環状溝26dにおいて同様の折断動作、折断動作に伴うホース部44のホースジョイント43からの取り外しを順次行っていく(
図6(c)、(d)参照)。
【0029】
第1実施形態の補強注入構造1や地山補強工法によれば、地山100に打設された長尺補強管3の端末部分を環状溝26dで折断する際に、ホースジョイント43で接続されている注入ホース4のホース部44を折断動作で取り外すことができる。即ち、地山100に打設された長尺補強管3の端末部分を環状溝26dで折断する際に、長尺補強管3に内挿された注入材103の注入ホース4の対応部分も確実に撤去することができる。従って、ぶら下がって残った注入ホースの部分を作業員が油圧ブレーカーの工具部分を繰り返し当てて時間をかけて撤去する煩雑な作業を無くすことができると共に、撤去作業によって切羽部分の地山100を緩ませてしまうリスクを無くすことができる。
【0030】
〔第2実施形態の補強注入構造及び地山補強工法〕
本発明による第2実施形態の補強注入構造1mも、例えば
図1に示す無拡幅長尺先受け工(無拡幅AGF工)に設けられる。そして、第2実施形態の補強注入構造1mも、
図7及び
図8に示すように、複数本の補強管2を有し、長手方向に連通する複数本の補強管2を直列に接続して地山100に打設される長尺補強管3mが構成される。第2実施形態では、長尺補強管3mを構成する補強管2として、先頭補強管2aと、第1中間補強管2bと、第2中間補強管2cと、端末補強管2eの4本が設けられ、地山100の穿孔の奥側から先頭補強管2aと、第1中間補強管2bと、第2中間補強管2cと、端末補強管2eが順に配置されて直列接続され、地山100に打設される。
【0031】
長尺補強管3mを構成する先頭補強管2a、第1中間補強管2b、第2中間補強管2cは、それぞれ第1実施形態における長尺補強管3を構成する先頭補強管2a、第1中間補強管2b、第2中間補強管2cと同一であり、端末補強管2eで端末補強管が構成される点だけが長尺補強管3と相違する。
【0032】
端末補強管2eは、先端に先端方向に向かって漸次拡径する拡径部24が設けられ、拡径部24の内部に雌ねじ部25が設けられていると共に、後端に雄ねじ部23が設けられている。端末補強管2eの周壁の外側には、長手方向に間隔を開けて複数の環状溝26eが形成され、図示例では4個の環状溝26eが形成されていると共に、注入材103の吐出孔21が筒状の周壁に点在するように形成されている。長尺補強管3mを構成する際には、端末補強管2eの雌ねじ部25は第2中間補強管2cの雄ねじ部23に螺着され、長尺補強管3mの端末部分に長手方向に間隔を開けて環状溝26eが設けられる。
【0033】
長尺補強管3mには、第1実施形態の長尺補強管3と同様、内部に注入材103を注入する複数本の注入ホース4mが内挿され、長尺補強管3mの端末に螺着されるキャップ5で支持、固定されており、例えば3本のナイロンホース等の注入ホース4mが長尺補強管3mに内挿されている。第1実施形態と同様に、各注入ホース4mの後端部には合流管41が取り付けられ(
図3参照)、それぞれの注入ホース4mには耐圧ホース、合流管41を介して第1液と第2液の混合液で構成される注入材103が薬液ポンプから供給される。各注入ホース4mの先端部には形状で混合液を混合攪拌するミキサー42が設けられ、ミキサー42で第1液と第2液の混合を促進して長尺補強管3mの内部に注入材103を吐出する。
【0034】
各注入ホース4mの先端部に配置されているミキサー42は、第1実施形態と同様に、長尺補強管3mの長さ方向で異なる位置に配置されている。長尺補強管3mの長さ方向で異なる位置に配置されたミキサー42から注入された注入材103は長尺補強管3mの内部に吐出され、長尺補強管3mの周壁に形成された吐出孔21から長尺補強管3mの周辺の地山100に吐出されて浸透し、注入材103の硬化により長尺補強管3mの周辺の地山100に固結領域を形成する。
【0035】
長尺補強管3mの長手方向で、穿孔102の最も孔奥側に配置される一番目の環状溝26eと、最も孔奥側の環状溝26eの隣に配置され、二番目に孔奥側に配置される環状溝26eとの間の領域には、2本の注入ホース4mのそれぞれの一部を構成する易切断性ホース部45mが配設されている。また、長尺補強管3mの長手方向で、穿孔102の二番目に孔奥側に配置される環状溝26eと、二番目に孔奥側に配置される環状溝26eの隣に配置され、三番目に孔奥側に配置される環状溝26eとの間の領域には、3本の注入ホース4mのそれぞれの一部を構成する易切断性ホース部45mが配設されている。易切断性ホース部45mは、掘削機械の工具、例えばショベルカーのショベル刃や油圧ブレーカーのチゼル等の工具で切断可能な材料で形成されており、好適には硬質塩ビ管のような硬質樹脂管で形成される。
【0036】
最も孔奥側に配置される一番目の環状溝26eと二番目に孔奥側の環状溝26との間の領域と、二番目に孔奥側の環状溝26eと三番目に孔奥側の環状溝26との間の領域とに、一連で対応するように設けられる易切断性ホース部45mは、例えばソケットとホースニップルとで構成されるホース継手46mにより、孔奥側に配置されるホース部44に接続されると共に、端末側に配置されるホース部44に接続される。二番目に孔奥側の環状溝26eと三番目に孔奥側の環状溝26との間の領域だけに、一連で対応するように設けられる易切断性ホース部45mは、同様のホース継手46mによって端末側に配置されるホース部44に接続される。
【0037】
第2実施形態の補強注入構造1mを地山100に設置する地山補強工法を行う際には、端末補強管2eを用いること以外は第1実施形態と同様に、切羽101直近の地山100から斜め前方に向けて、複数本の補強管2に相当する先頭補強管2a、第1中間補強管2b、第2中間補強管2c、端末補強管2eを直列に連結しながら穿孔102を形成するように打設し、複数本の補強管2で構成される長尺補強管3mを地山100に打設する(
図6(a)、
図1、
図8参照)。
【0038】
長尺補強管3mの打設後には、削孔ロッドを長尺補強管3mから引き抜き、長尺補強管3mに複数本の注入ホース4mを内挿し、長尺補強管3mの端末に注入ホース4mを支持するキャップ5を螺着する(
図6(a)、
図7参照)。この長尺補強管3mへの注入ホース4mの内挿により、例えば穿孔102の最も孔奥側の環状溝26eと、その隣で二番目に孔奥側に配置される環状溝26eとの間の領域に、2本の注入ホース4mのそれぞれの一部を構成する易切断性ホース部45mが配設され、二番目に孔奥側の環状溝26eと、その隣で三番目に孔奥側に配置される環状溝26eとの間の領域に、3本の注入ホース4mのそれぞれの一部を構成する易切断性ホース部45mが配設される。
【0039】
そして、複数本の注入ホース4で長尺補強管3mの内部に注入材103を注入し、長尺補強管3mの周壁に形成された吐出孔21から注入材103を周辺の地山100に吐出し、長尺補強管3mの周辺の地山100に注入材103の硬化による固結領域を形成する(
図6(a)、
図1、
図7参照)。
【0040】
注入材103の注入後には、掘削機械の工具、例えばショベルカーのショベル刃や油圧ブレーカーのチゼル等の工具で斫る、叩く等の動作により、一番目の環状溝26e、二番目の環状溝26eより長尺補強管3mの端末寄りに設けられた三番目の環状溝26eの箇所で長尺補強管3mの端末部分を折断する、換言すれば長尺補強管3mを構成する端末補強管2eを三番目の環状溝26eの箇所で折断すると共に、掘削機械の工具により、三番目の環状溝26eに対応する位置に配置されている注入ホース4mの易切断性ホース部45mを切断する(
図6(b)、
図1、
図7参照)。
【0041】
更に、トンネル掘進の進行に伴い、掘削機械の工具で斫る、叩く等の動作により、一番目の環状溝26eより長尺補強管3mの端末寄りに設けられた二番目の環状溝26eの箇所で長尺補強管3mの端末部分を折断すると共に、掘削機械の工具、例えばショベルカーのショベル刃や油圧ブレーカーのチゼル等の工具により、二番目の環状溝26eに対応する位置に配置されている注入ホース4mの易切断性ホース部45mを切断し(
図6(c)、
図7参照)、次いで、一番目の環状溝26eの箇所で長尺補強管3mの端末部分を折断すると共に、掘削機械の工具により、一番目の環状溝26eに対応する位置に配置されている注入ホース4mの易切断性ホース部45mを切断する(
図6(d)、
図7参照)。
【0042】
第2実施形態の補強注入構造1mや地山補強工法によれば、地山100に打設された長尺補強管3mの端末部分を環状溝26eで折断する際に、注入ホース4mの一部を構成する易切断性ホース部45mを折断動作で切断することができる。即ち、地山100に打設された長尺補強管3mの端末部分を環状溝26eで折断する際に、長尺補強管3mに内挿された注入材103の注入ホース4mの対応部分も確実に撤去することができる。従って、ぶら下がって残った注入ホースの部分を作業員が油圧ブレーカーの工具部分を繰り返し当てて時間をかけて撤去する煩雑な作業を無くすことができると共に、撤去作業によって切羽部分の地山100を緩ませてしまうリスクを無くすことができる。
【0043】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、各実施形態、各例の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記内容や下記の更なる変形例も含まれる。
【0044】
例えば本発明におけるホースジョイントは、上記好適例のストレートホースジョイント以外にも、注入ホースを構成するホース部を直列に接続し且つ注入ホースの長手方向に前記ホース部を引っ張ることで接続が解除される構成であれば適宜である。また、本発明における易切断性ホース部は、上記好適例の硬質樹脂管以外にも適用可能な範囲で適宜である。また、本発明は無拡幅長尺先受け工法(無拡幅AGF工法)以外の補助工法でも適用可能であり、例えば鏡補強工法でも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば無拡幅長尺先受け工法(無拡幅AGF工法)の長尺補強管に注入管を内挿して注入材を注入する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1、1m…補強注入構造 2…補強管 2a…先頭補強管 2b…第1中間補強管 2c…第2中間補強管 2d、2e…端末補強管 21…吐出孔 22a…削孔ビット 23…雄ねじ部 24…拡径部 25…雌ねじ部 26d、26e…環状溝 27d…貫通スリット 3、3m…長尺補強管 4、4m…注入ホース 41…合流管 42…ミキサー 43…ホースジョイント 44…ホース部 45m…易切断性ホース部 46m…ホース継手 5…キャップ 100…地山 101…切羽 102…穿孔 103…注入材 104…支保工 105…吹付コンクリート 105p…一次吹付コンクリート 105q…二次吹付コンクリート 200…地山 201…切羽 202…支保工 203…補強管 203a…端末補強管 204…長尺補強管 205…注入ホース 206…注入材 207…掘削機械の刃 T…トンネル空間 TD…トンネル掘進方向