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特開2024-168729プラント制御システム及びプラント制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168729
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】プラント制御システム及びプラント制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/05 20060101AFI20241128BHJP
   G05B 9/03 20060101ALI20241128BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G05B19/05 L
G05B9/03
G05B23/02 V
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085633
(22)【出願日】2023-05-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢島 英治
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雄三
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和幸
【テーマコード(参考)】
3C223
5H209
5H220
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223BA03
3C223CC04
3C223DD02
3C223EA01
3C223FF47
5H209AA01
5H209DD04
5H209DD11
5H209GG16
5H209HH13
5H209JJ09
5H209SS01
5H209SS06
5H209SS07
5H209TT05
5H220AA01
5H220BB09
5H220CC09
5H220CX01
5H220CX05
5H220HH08
5H220JJ12
5H220JJ28
5H220KK01
5H220MM08
(57)【要約】
【課題】入出力機能と制御機能との連携が損なわれた場合にも制御状態を維持して、安定したプラント操業を実現する。
【解決手段】コントローラ10は、測定器41から得られる受信データを基に操作機器42を制御するための第1出力データを作成する主制御部11を備える。IO装置20は、測定器41から得られた受信データを基に操作機器42を制御するための第2出力データを作成する補助制御部23と、主制御部11及び補助制御部23と測定器41及び操作機器42との間の通信を中継する入出力部22と、連携が損なわれた場合、補助制御部23により作成された第2出力データを操作機器42へ送信するように入出力部22を制御する管理部21とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に連携して動作するコントローラと入出力装置とを有するプラント制御システムであって、
前記コントローラは、
第1機器から得た受信データを基に第1出力データを作成する主制御部を備え、
前記入出力装置は、
前記第1機器から得た前記受信データを基に第2出力データを作成する補助制御部と、
前記主制御部及び前記補助制御部と前記第1機器及び第2機器との間の通信を中継する入出力部と、
前記連携が損なわれた場合、前記第2出力データを前記第2機器へ送信するように前記入出力部を制御する管理部とを備えた
ことを特徴とするプラント制御システム。
【請求項2】
前記管理部は、前記連携が維持されている場合、前記主制御部により作成された前記第1出力データを前記第2機器へ送信するように前記入出力部を制御することを特徴とする請求項1に記載のプラント制御システム。
【請求項3】
前記管理部は、前記第1出力データの前記第2機器へ送信と、前記第2出力データの前記第2機器へ送信とを排他的に制御することを特徴とする請求項2に記載のプラント制御システム。
【請求項4】
前記主制御部は、前記入出力部を介して前記第1機器から送出された前記受信データを入力として受け付け、前記入出力部を介して各前記受信データを基に作成した前記第1出力データを前記第2機器へ出力し、
前記補助制御部は、前記入出力部を介して前記第1機器から送出された前記受信データを入力として受け付け、前記入出力部を介して各前記受信データを基に作成した前記第2出力データを前記第2機器へ出力する
ことを特徴とする請求項1に記載のプラント制御システム。
【請求項5】
前記連携が損なわれた場合、
前記管理部は、前記第2出力データの前記第2機器への出力を前記入出力部に指示し、前記連携の復帰を確認すると、前記入出力部から出力された前記第2出力データを前記主制御部へフィードバックし、前記第1出力データの前記第2機器への出力を前記入出力部に指示し、
前記補助制御部は、前記連携の復帰が前記管理部により確認されるまで、前記受信データ及び前記入出力部から出力された前記第2出力データを基に、次回の前記第2出力データを算出し、
前記主制御部は、前記連携の復帰が前記管理部により確認されると、前記受信データ及び前記管理部からフィードバックされた前記入出力部から出力された前記第2出力データを基に、次回の前記第1出力データを算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のプラント制御システム。
【請求項6】
前記連携が維持されている場合、
前記管理部は、前記第1出力データの前記第2機器への出力を前記入出力部に指示し、且つ、前記入出力部から出力された前記第1出力データを前記補助制御部へフィードバックし、
前記主制御部は、前記受信データ及び前記入出力部から出力された前記第1出力データを基に、次回の前記第1出力データを算出し、
前記補助制御部は、前記受信データ及び前記管理部からフィードバックされた前記入出力部から出力された前記第1出力データを基に、次回の前記第2出力データを算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のプラント制御システム。
【請求項7】
前記管理部は、前記主制御部から取得したプラントの状態を表す状態情報に基づいて前記主制御部が異常状態と判定した場合、又は、前記主制御部から計画停止の通知を受けた場合に、前記連携が損なわれたと判定することを特徴とする請求項1に記載のプラント制御システム。
【請求項8】
相互に連携して動作するコントローラ及び入出力装置によるプラント制御方法であって、
前記コントローラが、
第1機器から得た受信データを基に第1出力データを作成し、
前記入出力装置が、
前記第1機器から得た前記受信データを基に第2出力データを作成し、
前記連携が維持されている場合、前記コントローラから前記第1出力データを取得して第2機器へ送信し、
前記連携が損なわれた場合、前記第2出力データを前記第2機器へ送信する
ことを特徴とするプラント制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント制御システム及びプラント制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、石油、石油化学、化学、ガスなどを用いた各種プラントでは、工業プロセスにおける各種の状態量(例えば、圧力、温度、流量等)を制御するプラント制御システムが構築されており、高度な自動操業が実現されている。プラント制御システムは、例えば、DCS(Distributed Control System)等である。プラント制御システムには、フィールド機器と呼ばれる現場機器(測定器、操作器)が設けられる。そして、プラント制御システムは、流量計や温度計等の各種測定器による測定結果を取得し、この測定結果に応じてバルブやアクチュエータ等の操作機器の操作量を求め、この操作量に応じて操作機器を制御する。
【0003】
上述したような制御を行うため、プラント制御システムは、フィールド機器とのデータ交換を行う入出力機能と、入力データを利用し制御演算を実施し出力データを作成する制御機能とを有する。そして、プラント制御システムでは入出力機能と制御機能とが連携して動作することで、安定したプラントの操業が可能となる。プラント制御システムは、入出力機能と制御機能が一体化した装置で実現される場合と、入出力機能と制御機能が分離した装置で実現される場合があり、目的により選択利用することが可能である。ここでは、プラント制御装置が入出力機能と制御機能が分離した構成における入出力機能を有する装置をIO(Input Output)装置と呼び、制御機能を有する装置をコントローラと呼ぶ。
【0004】
プラント制御システムにおいて、入出力機能と制御機能とを異なる装置に配備することで、以下のようなメリットが得られる。1つには、IT(Internet Technology)技術の活用等に基づいたコントローラの高性能化による制御機能の能力アップが容易になるといったメリットが挙げられる。他にも、コントローラを計器室などの安全な環境に設置可能となることや、コントローラとIO装置をスケーラブルに拡張可能となることや、ノード分離により小規模高分散化されることでメンテナンス性が高まることがメリットとして挙げられる。
【0005】
なお、プラント施設の管理方法として、以下の様な技術が提案されている。例えば、計測された第1装置のプロセス値及び設定されたパラメータに基づいて第2装置の第1制御値を計算し、他の装置で計算された第2装置の第2制御値と第1制御値とを比較して、第1制御値を第2装置に設定するか否かを決定する技術が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-61661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、プラント制御システムにおいて入出力機能と制御機能とを異なる装置に配備した場合、入出力機能と制御機能の連携が損なわれると安定したプラント操業が行えなくなるおそれがある。連携が損なわれる原因として以下の様な理由が考えられる。例えば、入出力機能と制御機能の物理的距離が離れるほど経路が複雑となるため、経路が途切れる確率が高まる。また、サーバPC(Personal Computer)やクラウドの利用等といったIT技術を活用するほどそれらの装置の障害により連携が損なわれるリスクが高まる。他にも、高度化した制御機能のハードウェアやソフトウェアでは、メンテナンス頻度が高まるが、メンテナンス目的で各装置の動作が一時的に停止されることが考えられ、その場合に連携が途切れることになる。
【0008】
そして、入出力機能と制御機能との連携が損なわれた場合、操業を停止してプラントを安全な状態に移行することが行われる。プラントを一時停止した場合、再度操業を開始するまでに大きな機会損失が生じる。このように、従来、プラント制御システムにおける入出力機能と制御機能とを異なる装置に配備した場合に、安定したプラント操業を実現することは困難であった。
【0009】
また、算出した制御値と他の装置により算出された制御値とを比較して制御に用いるか否かを決定する技術では、制御値の信頼性を向上させることはできるが、入出力機能と制御機能の連携が損なわれた場合の対処は困難である。したがって、この技術を用いても、安定したプラント操業を実現することは困難である。
【0010】
本発明の一側面は、安定したプラント操業を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一側面に係るプラント制御システムは、相互に連携して動作するコントローラと入出力装置とを有する。前記コントローラは、第1機器から得た受信データを基に第1出力データを作成する主制御部を備える。前記入出力装置は、前記第1機器から得た前記受信データを基に第2出力データを作成する補助制御部と、前記主制御部及び前記補助制御部と前記第1機器及び第2機器との間の通信を中継する入出力部と、前記連携が損なわれた場合、前記第2出力データを前記第2機器へ送信するように前記入出力部を制御する管理部とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、入出力機能と制御機能との連携が損なわれた場合にも制御状態を維持して、安定したプラント操業を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るプラント制御システムのブロック図である。
図2】コントローラが正常状態の操作機器制御処理のシーケンス図である。
図3】コントローラが異常状態の操作機器制御処理のシーケンス図である。
図4】コントローラのメンテナンス時の操作機器制御処理のシーケンス図である。
図5】コントローラの異常状態からの復帰時の操作機器制御処理のシーケンス図である。
図6】コンピュータのハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつプラント制御システム及びプラント制御方法の実施形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、各実施形態は、矛盾のない範囲内で適宜組み合わせることができる。
【0015】
(全体構成)
図1は、実施形態に係るプラント制御システムのブロック図である。プラント制御システム1は、プラントの状態を表す情報を入力データとして取得する。そして、プラント制御システム1は、入力データを利用して制御演算を実施して出力データを作成する。その後、プラント制御システム1は、生成した出力データを用いてプラントを制御する。
【0016】
本実施形態に係るプラント制御システム1は、コントローラ10及びIO装置20を有する。コントローラ10とIO装置20とは、ネットワーク30を介して接続される。また、IO装置20は、測定器41及び操作機器42を含む各種フィールド機器40に接続される。測定器41には、例えば、圧力センサ、温度センサ及び流速センサ等が含まれる。また、操作機器42には、バルブやアクチュエータ等が含まれる。この測定器41が「第1機器」の一例にあたり、操作機器42が「第2機器」の一例にあたる。
【0017】
コントローラ10は、例えば、DCSにより実現される。コントローラ10は、プラントの状態を表す情報としてフィールド機器40のうちの測定器41による測定結果を入力データとしてIO装置20から定期的に受信して、受信した入力データを用いて制御演算を実施して出力データを作成する主制御機能を有する。また、コントローラ10は、IO装置20を介して出力データを操作機器42へ送信する。
【0018】
コントローラ10は、主制御機能により複数のIO装置20を統括した制御ループを構築可能である。これにより、コントローラ10は、複数のIO装置20にまたがってプラント全体の効率的な制御運転が実現可能となる。
【0019】
コントローラ10は、IO装置20と分離されることで、性能や物理的な配置の制約が軽減される。これにより、コントローラ10は、処理能力、応答性及びメンテナンス性を考慮した制御対象範囲や配置場所の決定が可能となる。
【0020】
IO装置20は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)により実現される。IO装置20は、フィールド機器40のうちの測定器41による測定結果を各測定器41から定期的に取得する。そして、IO装置20は、取得した測定結果を入力データとしてネットワーク30を介してコントローラ10へ送信する。また、IO装置20は、ネットワーク30を介して出力データをコントローラ10から受信する。そして、IO装置20は、取得した出力データを操作機器42へ送信する。IO装置20は、以上の入出力機能を有する入出力装置である。
【0021】
また、IO装置20は、通信切断などによりコントローラ10との連携が損なわれた場合、コントローラ10に代わって入力データから出力データを算出して操作機器42を制御する補助制御機能を有する。コントローラ10との連携が回復すると、IO装置20は、操作機器42の制御をコントローラ10に戻して、入出力機能の処理を実施する。ここで、「連携」とは、単に接続され通信可能となった状態ではなく、コントローラ10とIO装置20との間でデータの送受信を行い協働して動作可能な状態を指す。
【0022】
IO装置20は、プラントの各所に配置される各操作機器42と物理的に結線されるため、物理的な配置が固定されることから、プラントの各所に分散配置される。IO装置20は、プラントの稼働率向上とコストの観点を加味して「制御対象の単位」で配置される。すなわち、IO装置20は、データの送受信を行う対象とするユニットが割り当てられる。以下では、制御対象の単位を「ユニット」と呼ぶ。プラントにおけるユニットは、1つのまとまりとなる処理を行う機構がまとめられたものであり、「貯蔵タンク」や「配管」や「反応窯」等にあたる。
【0023】
IO装置20は、補助制御機能により割り当てられたユニットに含まれる操作機器42に限定した制御ループを構築可能である。IO装置20は、補助制御機能により、割り当てられたユニットのスコープの範囲で制御を維持し、危険を察知した場合はフォールバックを行うことで、割り当てられたユニットを安全状態に移行させることができる。
【0024】
(コントローラ10)
コントローラ10は、図1に示すように、主制御機能を備えた主制御部11を有する。
【0025】
主制御部11は、IO装置20の入出力部22からネットワーク30を介して入力データを受信する。次に、主制御部11は、予め登録されたアプリケーションを用いて制御演算を実行して、入力データ及び自己が前回出力した出力データで示される出力値から操作機器42を制御するための出力値を含む出力データを作成する。以下では、自己が前回出力した出力データで示される出力値を、「自己の前回出力値」と呼ぶ。その後、主制御部11は、作成した出力データをIO装置20の入出力部22へネットワーク30を介して送信する。また、主制御部11は、ハートビートなどの自己の状態を示す状態信号をIO装置20の管理部21へ継続的に送信する。
【0026】
コントローラ10が異常状態となり停止されて修理された後に復帰した場合及びメンテナンスにより停止されて復帰した場合のいずれの場合も、主制御部11は、状態信号の送信を再開する。その後、主制御部11は、IO装置20の補助制御機能により算出された前回の出力データで示される前回出力値のフィードバックをIO装置20の管理部21から受ける。以下では、管理部21から受信した前回出力値を、「フィードバックされた前回出力値」と呼ぶ。
【0027】
また、主制御部11は、IO装置20の入出力部22からネットワーク30を介して入力データを受信する。そして、主制御部11は、受信した入力データ及びフィードバックされた前回出力値を用いて制御演算を実行して出力データを作成する。これにより、主制御部11は、補助制御部23からのバンプレスな制御対象に対する制御機能の切り替えを可能とする。
【0028】
ここで、主制御部11により作成された操作機器42を制御するための出力データが「第1出力データ」の一例にあたる。すなわち、主制御部11は、第1機器である測定器41から得た受信データを基に第1出力データを作成する。より詳しくは、主制御部11は、入出力部22を介して第1機器から送出された受信データを入力として受け付け、入出力部22を介して各受信データを基に作成した第1出力データを第2機器である操作機器42へ出力する。また、主制御部11は、連携の復帰が管理部21により確認されると、受信データ及び管理部21からフィードバックされた入出力部22から出力された第2出力データを基に、次回の第1出力データを算出する。ここで、IO装置20が有する補助制御機能により作成された操作機器42を制御するための出力データが「第2出力データ」の一例にあたる。
【0029】
(IO装置20)
IO装置20は、図1に示すように、主制御機能と補助制御機能との運用を管理する管理部21、入出力機能を備えた入出力部22及び補助制御機能を備えた補助制御部23を有する。
【0030】
管理部21は、状態信号をコントローラ10の主制御部11から受信する。管理部21は、受信した状態信号からコントローラ10が正常状態か否かを判定する。例えば、管理部21は、受信した信号を解析してコントローラ10が正常状態であるか異常状態であるかを判定する。他にも、管理部21は、状態信号を受信しなくなった場合にコントローラ10に異常が発生したと判定してもよい。
【0031】
管理部21は、コントローラ10が正常状態であると判定した場合、コントローラ10の主制御部11からの出力データを操作機器42へ出力することを入出力部22に指示する。この場合、管理部21は、補助制御部43により作成された出力データの操作機器42への入出力部22による送信を停止させる。さらに、管理部21は、入出力部22が操作機器42へ出力した、コントローラ10により作成された出力データを前回出力値として補助制御部23へフィードバックする。管理部21は、入出力部22が操作機器42へ出力データを出力するたびに、出力データを前回出力値として補助制御部23へフィードバックすることを繰り返す。
【0032】
これに対して、コントローラ10が異常状態であると判定した場合、管理部21は、連携が損なわれたとして、補助制御部23からの出力データを、操作機器42へ出力することを入出力部22に指示する。また、コントローラ10のメンテナンス時に、管理部21は、メンテナンス実行の通知をコントローラ10の主制御部11から受信する。そして、メンテナンス実行の通知を受信した場合も、管理部21は、連携が損なわれたとして、補助制御部23からの出力データを、操作機器42へ出力することを入出力部22に指示する。このように、異常状態の場合やメンテナンス等の計画停止の場合等に、管理部21は、コントローラ10との連携が損なわれたと判定する。そして、コントローラ10との連携が損なわれた場合に、管理部21は、補助制御部23からの出力データを、操作機器42へ出力することを入出力部22に指示する。また、いずれの場合も、管理部21は、主制御部11により作成された出力データの操作機器42への入出力部22による送信を停止させる。以下では、コントローラ10が異常状態であると補助制御部23に判定された場合の「異常状態の場合」と呼び、コントローラ10にメンテナンスが行われた場合を「メンテナンスの場合」と呼ぶ。
【0033】
異常状態の場合及びメンテナンスの場合等の連携が損なわれたいずれの場合でも、コントローラ10の修理やメントナンスの完了後にコントローラ10が復帰すると、管理部21は、コントローラ10の主制御部11からの状態信号の受信を再開する。そして、状態信号の受信を再開してコントローラ10が正常状態であることを確認すると、管理部21は、入出力部22が操作機器42へ出力した最新の出力データを前回出力値として主制御部11へフィードバックする。
【0034】
その後、管理部21は、コントローラ10の主制御部11からの出力データを、操作機器42へ出力する状態に戻るように入出力部22に指示する。この場合、管理部21は、補助制御部43により作成された出力データの操作機器42への入出力部22による送信を停止させる。さらに、管理部21は、入出力部22が操作機器42へ出力した出力データの前回出力値としての補助制御部23へのフィードバックを再開する。
【0035】
このように、管理部21は、連携が損なわれた場合、第2出力データを第2機器である操作機器42へ送信するように入出力部22を制御する。より詳しくは、管理部21は、連携が損なわれたことを確認して、第2出力データの第2機器への出力を入出力部22に指示し、連携の復帰を確認すると、入出力部22から出力された各受信データを基に作成した第2出力データを主制御部11へフィードバックし、第1出力データの第2機器への出力を入出力部22に指示する。また、管理部21は、連携が維持されている場合、主制御部11により作成された第1出力データを第2機器へ送信するように入出力部22を制御する。より詳しくは、管理部21は、連携が維持されていることを確認して、第1出力データの第2機器への出力を入出力部22に指示し、且つ、入出力部22から出力された第1出力データを補助制御部23へフィードバックする。また、管理部21は、第1出力データの第2機器へ送信と、第2出力データの第2機器へ送信とを排他的に制御する。また、管理部21は、主制御部11から取得したプラントの状態を表す状態情報に基づいて主制御部11が異常状態と判定した場合、又は、主制御部11から計画停止の通知を受けた場合に、連携が損なわれたと判定する。
【0036】
入出力部22は、測定結果を測定器41から受信する。そして、入出力部22は、取得した測定結果を入力データとして主制御部11及び補助制御部23へ送信する。このように、入出力部22は、主制御部11及び補助制御部23と第1機器である測定器41及び第2機器である操作機器42との間の通信を中継する。
【0037】
入出力部22は、コントローラ10が正常状態である場合、主制御部11からの出力データの操作機器42への出力の指示を管理部21から受ける。また、コントローラ10が正常状態である場合、入出力部22は、出力データを主制御部11及び補助制御部23の双方から受信する。この場合、入出力部22は、管理部21からの指示にしたがい、主制御部11から受信した出力データを操作機器42へ出力する。
【0038】
これに対して、異常状態の場合又はメンテナンスの場合等のようにコントローラ10との連携が損なわれた場合、入出力部22は、補助制御部23からの出力データの操作機器42への出力の指示を管理部21から受ける。そして、入出力部22は、出力データを補助制御部23から受信する。この場合、入出力部22は、管理部21からの指示にしたがい、補助制御部23から受信した出力データを操作機器42へ出力する。
【0039】
その後、コントローラ10が復帰して正常状態であることが確認されると、入出力部22は、主制御部11からの出力データを、操作機器42へ出力する状態に戻す指示を管理部21から受ける。この場合、コントローラ10が正常状態に戻ったため、入出力部22は、出力データを主制御部11及び補助制御部23の双方から受信する。そして、入出力部22は、管理部21からの指示にしたがい、主制御部11から受信した出力データを操作機器42へ出力する。
【0040】
補助制御部23は、コントローラ10が正常状態の場合、コントローラ10の主制御部11により算出された前回の出力データで示される前回出力値のフィードバックを管理部21から受ける。また、補助制御部23は、入力データを入出力部22から取得する。そして、補助制御部23は、フィードバックされた前回出力値及び入力データを用いて制御演算を実行して出力データを作成する。その後、補助制御部23は、作成した出力データを入出力部22へ出力する。
【0041】
異常状態の場合又はメンテナンスの場合等でありコントローラ10との連携が損なわれた場合、補助制御部23は、入出力部22が操作機器42へ出力した出力データで示される前回出力値のフィードバックの受信が中断する。この場合も、補助制御部23は、入力データを入出力部22から取得する。そして、異常状態の場合又はメンテナンスの場合等いずれの場合にも、その後の1回目の出力データの生成において、補助制御部23は、フィードバックされた前回出力値及び取得した入力データを用いて制御演算を実行して出力データを作成する。そして、補助制御部23は、作成した出力データを入出力部22へ出力する。このように、補助制御部23は、フィードバックされた前回出力値を用いて制御演算を行なって出力データを作成することで、バンプレスな切り替えが可能となる。
【0042】
その後、補助制御部23は、自己の前回出力値及び取得した入力データを用いて制御演算を実行して出力データを作成する。そして、補助制御部23は、作成した出力データを入出力部22へ出力する。補助制御部23は、自己の前回出力値を用いた出力データの作成及び入出力部22への出力を、コントローラ10が復帰して正常状態になるまで繰り返す。
【0043】
その後、コントローラ10が復帰して正常状態であることが確認されると、補助制御部23は、コントローラ10の主制御部11により算出された前回の出力データで示される前回出力値の管理部21からのフィードバックが再開される。また、補助制御部23は、入力データを入出力部22から取得する。そして、補助制御部23は、フィードバックされた前回出力値及び取得した入力データを用いて制御演算を実行して出力データを作成する。その後、補助制御部23は、作成した出力データを入出力部22へ出力する。
【0044】
ここで、補助制御部23は、ユニットに限定した制御ループを構築可能である。例えば、1つのユニットである貯蔵タンクに備えられたセンサやバルブ等をまとめて制御対象として、補助制御部23は、それらに関する測定結果を測定器41から受信してユニット単位での操作機器42の制御を実行する。そして、補助制御部23は、担当するユニットスコープの範囲で制御を維持し、危険を察知した場合はフォールバックを行うことで、担当するユニットを安全状態に移行することができる。フォールバックでは、補助制御部23は、出力値をホールドして一定の出力値を維持したり、安全側の値を出力値として設定したりすることで、割り当てられたユニットを安全状態に移行する。例えば、補助制御部23は、バルブの制御であれば、安全側の値としてバルブを完全に閉めるために出力値を0に設定することができる。
【0045】
このように、補助制御部23は、第1機器である測定器41から得た受信データである測定結果を基に第2出力データを作成する。また、補助制御部23は、入出力部22を介して第1機器から送出された受信データを入力として受け付け、入出力部22を介して第2出力データを第2機器へ出力する。そして、連携が損なわれた場合、補助制御部23は、連携の復帰が管理部21により確認されるまで、受信データ及び入出力部22から出力された第2出力データを基に、次回の第2出力データを算出する。また、連携が維持されている場合、受信データ及び管理部21からフィードバックされた入出力部22から出力された第1出力データを基に、次回の第2出力データを算出する。
【0046】
(操作機器制御処理)
(正常状態)
図2は、コントローラが正常状態の操作機器制御処理のシーケンス図である。各部の間を結ぶ矢印は信号の送受信を表す。次に、図2を参照して、本実施形態に係るプラント制御システム1によるコントローラ10が正常状態における操作機器制御処理の流れを説明する。
【0047】
入出力部22は、オーバーサンプリング方式により、割り当てられたユニットに配置された測定器41から測定結果を高周期で取得する(ステップS101)。ここで、図2ではステップS101として測定結果を取得するように記載したが、実際には、入出力部22は、オーバーサンプリング方式による測定結果の取得を継続する。
【0048】
入出力部22は、操作機器制御処理の定周期イベントのタイミングが到来したことを確認する(ステップS102)。
【0049】
次に、入出力部22は、収集済みの最新データである測定結果を入力データとしてコントローラ10の主制御部11及び補助制御部23へ送信する(ステップS103)。
【0050】
主制御部11は、入力データをIO装置20の入出力部22から受信する。そして、主制御部11は、入力データ及び自己の前回出力値から出力データを作成する(ステップS104)。
【0051】
次に、主制御部11は、作成した出力データをIO装置20の入出力部22へ送信する(ステップS105)。
【0052】
また、補助制御部23は、入力データを入出力部22から受信する。そして、補助制御部23は、入力データ及びフィードバックされた前回出力値ら出力データを作成する(ステップS106)。
【0053】
次に、補助制御部23は、作成した出力データを入出力部22へ送信する(ステップS107)。
【0054】
管理部21は、コントローラ10から受信した状態情報から、コントローラ10が正常状態であると判定する(ステップS108)。
【0055】
そして、管理部21は、コントローラ10から受信した出力データの操作機器42への出力を入出力部22に指示する(ステップS109)。
【0056】
入出力部22は、管理部21からの指示にしたがい、コントローラ10から受信した出力データを操作機器42へ送信する(ステップS110)。
【0057】
管理部21は、入出力部22により出力された出力データを取得する。(ステップS111)。
【0058】
その後、管理部21は、取得した出力データを前回出力値として補助制御部23にフィードバックする(ステップS112)。
【0059】
(異常状態発生時)
図3は、コントローラが異常状態の操作機器制御処理のシーケンス図である。次に、図3を参照して、本実施形態に係るプラント制御システム1によるコントローラ10が異常状態における操作機器制御処理の流れを説明する。
【0060】
入出力部22は、定周期イベントとして測定結果の取得及び取得した測定結果の入力データとしての送信を含む入力データ送信処理を実行する(ステップS201)。この入力データ送信処理は、図2のステップS101からステップS103にあたる。ただし、この場合、コントローラ10が異常状態となり、IO装置20とコントローラ10との間の連携が喪失しているため、入出力部22は、入力データのコントローラ10への送信は行わない。
【0061】
補助制御部23は、入力データをIO装置20の入出力部22から受信する。そして、補助制御部23は、入力データ及びフィードバックされた前回出力値から出力データを作成する(ステップS202)。
【0062】
次に、補助制御部23は、作成した出力データを入出力部22へ送信する(ステップS203)。
【0063】
管理部21は、コントローラ10から受信した状態情報から、コントローラ10が異常状態であると判定する(ステップS204)。
【0064】
そして、管理部21は、補助制御部23から受信した出力データの操作機器42への出力を入出力部22に指示する(ステップS205)。
【0065】
入出力部22は、管理部21からの指示にしたがい、補助制御部23から受信した出力データを操作機器42へ送信する(ステップS206)。
【0066】
その後、定周期イベントのタイミングが再度到来すると、入出力部22は、入力データ送信処理を実行する(ステップS207)。
【0067】
補助制御部23は、入力データをIO装置20の入出力部22から受信する。そして、補助制御部23は、入力データ及び自己の前回出力値から出力データを作成する(ステップS208)。
【0068】
次に、補助制御部23は、作成した出力データを入出力部22へ送信する(ステップS209)。
【0069】
入出力部22は、管理部21からの指示にしたがい、補助制御部23から受信した出力データを操作機器42へ送信する(ステップS210)。
【0070】
(メンテナンス時)
図4は、コントローラのメンテナンス時の操作機器制御処理のシーケンス図である。次に、図4を参照して、本実施形態に係るプラント制御システム1によるコントローラ10のメンテナンス時における操作機器制御処理の流れを説明する。
【0071】
管理部21は、メンテナンス通知をコントローラ10から受信する(ステップS301)。その後、コントローラ10はメンテナンスのために停止され、IO装置20とコントローラ10との間の連携が喪失する。
【0072】
入出力部22は、入力データ送信処理を実行する(ステップS302)。
【0073】
補助制御部23は、入力データをIO装置20の入出力部22から受信する。そして、補助制御部23は、入力データ及びフィードバックされた前回出力値から出力データを作成する(ステップS303)。
【0074】
次に、補助制御部23は、作成した出力データを入出力部22へ送信する(ステップS304)。
【0075】
管理部21は、コントローラ10からメンテナンス通知を受信しているので、補助制御部23から受信した出力データの操作機器42への出力を入出力部22に指示する(ステップS305)。
【0076】
入出力部22は、管理部21からの指示にしたがい、補助制御部23から受信した出力データを操作機器42へ送信する(ステップS306)。
【0077】
その後、定周期イベントのタイミングが再度到来すると、入出力部22は、入力データ送信処理を実行する(ステップS307)。
【0078】
補助制御部23は、入力データをIO装置20の入出力部22から受信する。そして、補助制御部23は、入力データ及び自己の前回出力値から出力データを作成する(ステップS308)。
【0079】
次に、補助制御部23は、作成した出力データを入出力部22へ送信する(ステップS309)。
【0080】
入出力部22は、管理部21からの指示にしたがい、補助制御部23から受信した出力データを操作機器42へ送信する(ステップS310)。
【0081】
(異常状態からの復帰時)
図5は、コントローラの異常状態からの復帰時の操作機器制御処理のシーケンス図である。次に、図5を参照して、本実施形態に係るプラント制御システム1によるコントローラ10が異常状態から正常状態に復帰した場合における操作機器制御処理の流れを説明する。
【0082】
管理部401は、復帰したコントローラ10から状態情報を受信して、コントローラ10が正常状態に戻ったことを確認する(ステップS401)。
【0083】
そして、管理部401は、入出力部22により前回出力された出力データを前回出力値としてコントローラ10の主制御部11へフィードバックする(ステップS402)。
【0084】
入出力部22は、入力データ送信処理を実行する(ステップS403)。
【0085】
主制御部11は、入力データをIO装置20の入出力部22から受信する。そして、主制御部11は、入力データ及びフィードバックされた前回出力値から出力データを作成する(ステップS404)。
【0086】
次に、主制御部11は、作成した出力データをIO装置20の入出力部22へ送信する(ステップS405)。
【0087】
また、補助制御部23は、入力データを入出力部22から受信する。そして、補助制御部23は、入力データ及び自己の前回出力値ら出力データを作成する(ステップS406)。
【0088】
次に、補助制御部23は、作成した出力データを入出力部22へ送信する(ステップS407)。
【0089】
管理部21は、コントローラ10が正常状態であることを確認しているので、コントローラ10から受信した出力データの操作機器42への出力を入出力部22に指示する(ステップS408)。
【0090】
入出力部22は、管理部21からの指示にしたがい、コントローラ10から受信した出力データを操作機器42へ送信する(ステップS409)。
【0091】
管理部21は、入出力部22により出力された出力データを取得する。(ステップS410)。
【0092】
その後、管理部21は、取得した出力データを前回出力値として補助制御部23にフィードバックする(ステップS411)。
【0093】
(効果)
以上に説明したように、実施形態に係るプラント制御システム1は、制御機能を有するコントローラ10と入出力機能と有するIO装置20とに分離される。IO装置20は、補助制御機能を有し、ユニット単位でフィールド機器40を管理する。そして、IO装置20は、コントローラ10が正常状態の場合、コントローラ10により算出された出力データをフィールド機器40へ送信して制御を行い、且つ、出力データを補助制御機能にフィードバックする。そして、コントローラ10とIO装置20との連携が損なわれた場合、IO装置20は、補助制御機能により、フィードバックされた前回出力値を用いて出力データを計算してフィールド機器40へ送信して制御を行う。これにより、IO装置20は、ユニット単位でプラントの制御を継続する。さらに、コントローラ10の復帰時には、コントローラ10は、IO装置20が作成した前回出力値のフィードバックを受けて、フィードバックされた前回出力値から出力データを計算して、プラントの制御を継続する。
【0094】
これにより、プラント制御システム1は、入出力機能と制御機能の連携が損なわれた場合でも、安定したプラント操業を行うことが可能となる。ここで、主制御機能と補助制御機能では、異なるロジックで動作させることが可能である。また、通常時はコストパフォーマンスの高いサーバPCやクラウドのような汎用コンピュータで主制御機能を実行することが可能である。そして、異常時には、操業を守る最低限の制御が、補助制御機能を利用して実行することが可能となる。補助制御機能では、コストパフォーマンスが制限されたコンピュータを利用することができる。また、補助制御機能は、プラントを安全に停止させるためのフォールバック動作を実施してもよい。このように、両制御機能が連動して動作することで、99.99999%(セブンナイン)の稼働率に近づけることができ、プラントの安定した操業を保証することが可能となる。
【0095】
また、本実施形態に係るプラント制御システム1によれば、メンテナンス時にも補助制御機能によりプラント制御を継続させることができ、安定したプラント操業を実施しつつ、制御機能のメンテナンスを容易に行うことが可能となる。例えば、リファイナリのプラントを例にすると、コントローラ10のオープン化によりセキュリティの脅威にさらされており、定期的なセキュリティ強化のための更新が必要になる。更新のタイミングで、プラントの操業が停止した場合、プラントの規模にもよるが安定的な操業を開始するまでに1週間程度要することが多く、機会損失として100M円以上が見込まれる。これに対して、本実施形態に係るプラント制御システム1では、セキュリティ強化のための更新時にもプラントの操業を停止することなく更新を実施できるため、機会損失を抑えることが可能となる。
【0096】
また、本実施形態に係るプラント制御システム1によれば、制御設備の実コスト(TOTEX:Total Expenditure)削減が可能である。例えば、本実施形態に係るプラント制御システム1では、制御機能の負荷変動が大きいアプリケーションの場合、高負荷な制御をクラウド上で実施させることで、制御システムのコストを下げることが可能である。アプリケーションをクラウド上で動作させた場合、利用量に応じたサブスクリプション方式で課金されるため、コストを抑えることができる。このように、高負荷な制御はクラウド上の主制御機能で実施し、低負荷な制御はIOノード上の補助制御機能で実施することで、計装設備のTOTEXを下げることが可能である。例えば、Batch制御で管理を行うビール製造では、発酵や貯蔵の工程は低負荷な制御であり、行程中の占める時間割合も大きい。そこで、発酵や貯蔵の工程を補助制御機能で実施することで、クラウド上で動作する主制御機能の稼働時間を短くすることができ、ランニングコストを下げることが可能である。また、クラウドではなく、専用のコントローラを用意する場合でも、複数の製造工程をずらして実施することで主制御機能が同時に実行されないように管理すれば、主制御機能が動作するコントローラ10は1台準備すればよく、設備投資を抑えることができる。
【0097】
(ハードウェア)
次に、コントローラ10及びIO装置20を実現するためのハードウェア構成例を説明する。図6は、コンピュータのハードウェア構成図である。コントローラ10及びIO装置20は、例えば、図6に示すコンピュータ90により実現可能である。コンピュータ90は、図6に示すように、プロセッサ91、メモリ92、ハードディスク93及び通信装置94を有する。プロセッサ91は、バスを介してメモリ92、ハードディスク93及び通信装置94と接続される。
【0098】
通信装置94は、ネットワークインタフェースカード等であり、他の情報処理装置との通信に使用される。例えば、コントローラ10であれば、通信装置94は、IO装置20との間の通信に使用される。また、IO装置20であれば、通信装置94は、コントローラ10やフィールド機器40との間の通信に使用される。
【0099】
ハードディスク93は、補助記憶装置である。例えば、コントローラ10であれば、ハードディスク93は、主制御部11の機能を実現するためのプログラムを含む各種プログラムを格納する。また、IO装置20であれば、ハードディスク93は、管理部21、入出力部22及び補助制御部23の機能を実現するためのプログラムを含む各種プログラムを格納する。
【0100】
プロセッサ91は、ハードディスク93に格納された各種プログラムを読み出してメモリ92に展開して実行する。これにより、プロセッサ91は、コントローラ10であれば、主制御部11の機能を実現する。また、IO装置20であれば、プロセッサ91は、管理部21、入出力部22及び補助制御部23の機能を実現する。
【0101】
このように、コンピュータ90は、プログラムを読み出して実行することで各種処理方法を実行する情報処理装置として動作する。また、コンピュータ90は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施形態と同様の機能を実現することもできる。なお、ここでいうプログラムは、コンピュータ90によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0102】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【0103】
開示される技術的特徴の組合せのいくつかの例を以下に記載する。
【0104】
(1)
相互に連携して動作するコントローラと入出力装置とを有するプラント制御システムであって、
前記コントローラは、
第1機器から得た受信データを基に第1出力データを作成する主制御部を備え、
前記入出力装置は、
前記第1機器から得た前記受信データを基に第2出力データを作成する補助制御部と、
前記主制御部及び前記補助制御部と前記第1機器及び第2機器との間の通信を中継する入出力部と、
前記連携が損なわれた場合、前記第2出力データを前記第2機器へ送信するように前記入出力部を制御する管理部とを備えた
ことを特徴とするプラント制御システム。
(2)
前記管理部は、前記連携が維持されている場合、前記主制御部により作成された前記第1出力データを前記第2機器へ送信するように前記入出力部を制御することを特徴とする(1)に記載のプラント制御システム。
(3)
前記管理部は、前記第1出力データの前記第2機器へ送信と、前記第2出力データの前記第2機器へ送信とを排他的に制御することを特徴とする(1)又は(2)に記載のプラント制御システム。
(4)
前記主制御部は、前記入出力部を介して前記第1機器から送出された前記受信データを入力として受け付け、前記入出力部を介して各前記受信データを基に作成した前記第1出力データを前記第2機器へ出力し、
前記補助制御部は、前記入出力部を介して前記第1機器から送出された前記受信データを入力として受け付け、前記入出力部を介して各前記受信データを基に作成した前記第2出力データを前記第2機器へ出力する
ことを特徴とする(1)~(3)のいずれか一つに記載のプラント制御システム。
(5)
前記連携が損なわれた場合、
前記管理部は、前記第2出力データの前記第2機器への出力を前記入出力部に指示し、前記連携の復帰を確認すると、前記入出力部から出力された前記第2出力データを前記主制御部へフィードバックし、前記第1出力データの前記第2機器への出力を前記入出力部に指示し、
前記補助制御部は、前記連携の復帰が前記管理部により確認されるまで、前記受信データ及び前記入出力部から出力された前記第2出力データを基に、次回の前記第2出力データを算出し、
前記主制御部は、前記連携の復帰が前記管理部により確認されると、前記受信データ及び前記管理部からフィードバックされた前記入出力部から出力された前記第2出力データを基に、次回の前記第1出力データを算出する
ことを特徴とする(1)~(4)のいずれか一つに記載のプラント制御システム。
(6)
前記連携が維持されている場合、
前記管理部は、前記第1出力データの前記第2機器への出力を前記入出力部に指示し、且つ、前記入出力部から出力された前記第1出力データを前記補助制御部へフィードバックし、
前記主制御部は、前記受信データ及び前記入出力部から出力された前記第1出力データを基に、次回の前記第1出力データを算出し、
前記補助制御部は、前記受信データ及び前記管理部からフィードバックされた前記入出力部から出力された前記第1出力データを基に、次回の前記第2出力データを算出する
ことを特徴とする(1)~(5)のいずれか一つに記載のプラント制御システム。
(7)
前記管理部は、前記主制御部から取得した前記プラントの状態を表す状態情報に基づいて前記主制御部が異常状態と判定した場合、又は、前記主制御部から計画停止の通知を受けた場合に、前記連携が損なわれたと判定することを特徴とする(1)~(6)のいずれか一つに記載のプラント制御システム。
(8)
相互に連携して動作するコントローラ及び入出力装置によるプラント制御方法であって、
前記コントローラが、
第1機器から得た受信データを基に第1出力データを作成し、
前記入出力装置が、
前記第1機器から得た前記受信データを基に第2出力データを作成し、
前記連携が維持されている場合、前記コントローラから前記第1出力データを取得して第2機器へ送信し、
前記連携が損なわれた場合、前記第2出力データを前記第2機器へ送信する
ことを特徴とするプラント制御方法。
【符号の説明】
【0105】
1 プラント制御システム
10 コントローラ
11 主制御部
20 IO装置
21 管理部
22 入出力部
23 補助制御部
30 ネットワーク
40 フィールド機器
41 測定器
42 操作機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に連携して動作するコントローラと入出力装置とを有するプラント制御システムであって、
前記コントローラは、
第1機器から得た受信データを基に第1出力データを作成し、前記入出力装置を介して第2機器へ送信して制御する主制御部を備え、
前記入出力装置は、
前記第1機器から得た前記受信データを基に第2出力データを作成する補助制御部と、
前記主制御部及び前記補助制御部と前記第1機器及び前記第2機器との間の通信を中継する入出力部と、
前記コントローラとの前記連携が損なわれた場合、前記第1出力データの前記第2機器への送信を行なわずに、前記第2出力データを前記第2機器へ送信するように前記入出力部を制御する管理部とを備えた
ことを特徴とするプラント制御システム。
【請求項2】
前記管理部は、前記連携が維持されている場合、前記主制御部により作成された前記第1出力データを前記第2機器へ送信するように前記入出力部を制御することを特徴とする請求項1に記載のプラント制御システム。
【請求項3】
前記管理部は、前記第1出力データの前記第2機器へ送信と、前記第2出力データの前記第2機器へ送信とを排他的に制御することを特徴とする請求項2に記載のプラント制御システム。
【請求項4】
前記主制御部は、前記入出力部を介して前記第1機器から送出された前記受信データを入力として受け付け、前記入出力部を介して各前記受信データを基に作成した前記第1出力データを前記第2機器へ出力し、
前記補助制御部は、前記入出力部を介して前記第1機器から送出された前記受信データを入力として受け付け、前記入出力部を介して各前記受信データを基に作成した前記第2出力データを前記第2機器へ出力する
ことを特徴とする請求項1に記載のプラント制御システム。
【請求項5】
前記連携が損なわれた場合、
前記管理部は、前記第2出力データの前記第2機器への出力を前記入出力部に指示し、前記連携の復帰を確認すると、前記入出力部から出力された前記第2出力データを前記主制御部へフィードバックし、前記第1出力データの前記第2機器への出力を前記入出力部に指示し、
前記補助制御部は、前記連携の復帰が前記管理部により確認されるまで、前記受信データ及び前記入出力部から出力された前記第2出力データを基に、次回の前記第2出力データを算出し、
前記主制御部は、前記連携の復帰が前記管理部により確認されると、前記受信データ及び前記管理部からフィードバックされた前記入出力部から出力された前記第2出力データを基に、次回の前記第1出力データを算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のプラント制御システム。
【請求項6】
前記連携が維持されている場合、
前記管理部は、前記第1出力データの前記第2機器への出力を前記入出力部に指示し、且つ、前記入出力部から出力された前記第1出力データを前記補助制御部へフィードバックし、
前記主制御部は、前記受信データ及び前記入出力部から出力された前記第1出力データを基に、次回の前記第1出力データを算出し、
前記補助制御部は、前記受信データ及び前記管理部からフィードバックされた前記入出力部から出力された前記第1出力データを基に、次回の前記第2出力データを算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のプラント制御システム。
【請求項7】
前記管理部は、前記主制御部から取得したプラントの状態を表す状態情報に基づいて前記主制御部が異常状態と判定した場合、又は、前記主制御部から計画停止の通知を受けた場合に、前記連携が損なわれたと判定することを特徴とする請求項1に記載のプラント制御システム。
【請求項8】
相互に連携して動作するコントローラ及び入出力装置によるプラント制御方法であって、
前記コントローラが、
第1機器から得た受信データを基に第1出力データを作成し、前記入出力装置を介して第2機器へ送信して制御し、
前記入出力装置が、
前記第1機器から得た前記受信データを基に第2出力データを作成し、
前記コントローラとの前記連携が維持されている場合、前記コントローラから前記第1出力データを取得して前記第2機器へ送信し、
前記コントローラとの前記連携が損なわれた場合、前記第1出力データの前記第2機器への送信を行なわずに、前記第2出力データを前記第2機器へ送信する
ことを特徴とするプラント制御方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
一側面に係るプラント制御システムは、相互に連携して動作するコントローラと入出力装置とを有する。前記コントローラは、第1機器から得た受信データを基に第1出力データを作成し、前記入出力装置を介して第2機器へ送信して制御する主制御部を備える。前記入出力装置は、前記第1機器から得た前記受信データを基に第2出力データを作成する補助制御部と、前記主制御部及び前記補助制御部と前記第1機器及び前記第2機器との間の通信を中継する入出力部と、前記コントローラとの前記連携が損なわれた場合、前記第1出力データの前記第2機器への送信を行なわずに、前記第2出力データを前記第2機器へ送信するように前記入出力部を制御する管理部とを備える。