(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168732
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ドライフィルム、一体型封止シート、発光型電子部品、及び発光型電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20241128BHJP
H01L 33/56 20100101ALI20241128BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20241128BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20241128BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241128BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241128BHJP
B32B 27/08 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G09F9/30 309
H01L33/56
H01L23/30 F
G09F9/33
G09F9/00 338
B32B7/023
B32B27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085636
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】片桐 航
(72)【発明者】
【氏名】小泉 昭紘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一義
【テーマコード(参考)】
4F100
4M109
5C094
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
4F100AA37A
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK25D
4F100AK27B
4F100AK29B
4F100AK42D
4F100AK53A
4F100AK53B
4F100AK53C
4F100AL06B
4F100AL07B
4F100AL09B
4F100AT00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA26
4F100CC00D
4F100EH46
4F100EJ17
4F100GB41
4F100JA07C
4F100JB12A
4F100JB12B
4F100JB12C
4F100JB14D
4F100JK07A
4F100JK07B
4F100JK07C
4F100JK12D
4F100JL10A
4F100JN01B
4F100JN01C
4F100JN13
4F100YY00C
4M109AA02
4M109BA03
4M109CA22
4M109DB11
4M109EA02
4M109EB02
4M109EB04
4M109EB08
4M109EB19
4M109GA01
5C094BA25
5C094DA07
5C094DA13
5C094FB01
5C094GB10
5C094JA07
5C094JA11
5F142AA03
5F142AA82
5F142BA32
5F142CB14
5F142CB22
5F142CD17
5F142CD18
5F142CG03
5F142CG04
5F142CG05
5F142CG16
5F142CG26
5F142DB02
5F142DB17
5F142FA18
5F142GA01
5G435BB04
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】光素子間に低弾性黒色硬化性樹脂層を充分に充填でき、通常の硬化温度や硬化時間であっても硬化させることができ、硬化後の外観不良と部分的に輝度が低下することによる斑の発生も抑制されたドライフィルム、このドライフィルムを用いた一体型封止シート、発光型電子部品及び発光型電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3とを備え、低弾性黒色硬化性樹脂層1の全光線透過率が0~30%であり、低弾性透明硬化性樹脂層2及び高弾性透明硬化性樹脂層3を合わせた全光線透過率が70~99%であり、100℃及び150℃において、高弾性透明硬化性樹脂層3の貯蔵弾性率が、低弾性黒色硬化性樹脂層1及び低弾性透明硬化性樹脂層2の貯蔵弾性率より大きい、ドライフィルム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板の前記複数の発光素子が配置された面に圧着されるドライフィルムであって、
前記圧着時に前記素子付き基板に直接接して配置される側から順次積層された、低弾性黒色硬化性樹脂層と、低弾性透明硬化性樹脂層と、高弾性透明硬化性樹脂層とを備えた、ドライフィルム。
【請求項2】
100℃において、前記高弾性透明硬化性樹脂層の貯蔵弾性率が、前記低弾性透明硬化性樹脂層及び前記低弾性黒色硬化性樹脂層の貯蔵弾性率より大きい、請求項1に記載のドライフィルム。
【請求項3】
100℃において、前記低弾性透明硬化性樹脂層の貯蔵弾性率が、前記低弾性黒色硬化性樹脂層の貯蔵弾性率より大きい、請求項1又は2に記載のドライフィルム。
【請求項4】
前記高弾性透明硬化性樹脂層の貯蔵弾性率が、100℃において1.0×107Pa以下である、請求項1又は2に記載のドライフィルム。
【請求項5】
前記低弾性黒色硬化性樹脂層の貯蔵弾性率が、100℃において1.0×105Pa以下である、請求項1又は2に記載のドライフィルム。
【請求項6】
前記低弾性透明硬化性樹脂層の貯蔵弾性率が、100℃において1.0×105Pa以下である、請求項1又は2に記載のドライフィルム。
【請求項7】
前記高弾性透明硬化性樹脂層の貯蔵弾性率が、150℃において1.0×105Pa以上である、請求項1又は2に記載のドライフィルム。
【請求項8】
前記低弾性黒色硬化性樹脂層の全光線透過率が0~30%である、請求項1又は2に記載のドライフィルム。
【請求項9】
前記低弾性透明硬化性樹脂層の全光線透過率が50%以上である、請求項1又は2に記載のドライフィルム。
【請求項10】
前記高弾性透明硬化性樹脂層の全光線透過率が50%以上である、請求項1又は2に記載のドライフィルム。
【請求項11】
前記高弾性透明硬化性樹脂層が高分子量エポキシ樹脂を含む、請求項1又は2に記載のドライフィルム。
【請求項12】
前記高分子量エポキシ樹脂の重量平均分子量が10,000~100,000である、請求項11に記載のドライフィルム。
【請求項13】
前記高弾性透明硬化性樹脂層が、前記高分子量エポキシ樹脂としてフェノキシ型エポキシ樹脂を含む、請求項11に記載のドライフィルム。
【請求項14】
前記高弾性透明硬化性樹脂層の総樹脂固形分100質量%に対する前記高分子量エポキシ樹脂の配合量が30~80質量%である、請求項11に記載のドライフィルム。
【請求項15】
前記低弾性黒色硬化性樹脂層がエラストマーを含む、請求項1又は2に記載のドライフィルム。
【請求項16】
前記エラストマーが変性エラストマーである、請求項15に記載のドライフィルム。
【請求項17】
前記変性エラストマーが酸変性アクリロニトリルブタジエンゴムである、請求項16に記載のドライフィルム。
【請求項18】
前記低弾性黒色硬化性樹脂層がカーボンブラックを含む、請求項1又は2に記載のドライフィルム。
【請求項19】
請求項1又は2に記載のドライフィルムと、前記高弾性透明硬化性樹脂層の前記低弾性透明硬化性樹脂層の反対側に設けられた封止フィルム層を備える、一体型封止シート。
【請求項20】
前記封止フィルム層が、支持フィルム層と、前記支持フィルム層の前記高弾性透明硬化性樹脂層と反対側に設けられたハードコート層を備える、請求項19に記載の一体型封止シート。
【請求項21】
基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板と、前記素子付き基板の前記複数の発光素子が配置された面に圧着された請求項1又は2に記載のドライフィルムとを備え、
前記低弾性黒色硬化性樹脂層と、前記低弾性透明硬化性樹脂層及び前記高弾性透明硬化性樹脂層の一部とが前記複数の発光素子間に充填されており、
前記低弾性黒色硬化性樹脂層と前記低弾性透明硬化性樹脂層と前記高弾性透明硬化性樹脂層は硬化している発光型電子部品。
【請求項22】
基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板と、前記素子付き基板の前記複数の発光素子が配置された面に圧着された請求項19に記載の一体型封止シートとを備え、
前記低弾性黒色硬化性樹脂層と、前記低弾性透明硬化性樹脂層及び高弾性透明硬化性樹脂層の一部とが前記複数の発光素子間に充填されており、
前記低弾性黒色硬化性樹脂層と前記低弾性透明硬化性樹脂層と前記高弾性透明硬化性樹脂層は硬化している発光型電子部品。
【請求項23】
基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板の前記複数の発光素子が配置された面に、請求項1又は2に記載のドライフィルムを前記低弾性黒色硬化性樹脂層が接するように配置して熱圧着し、
加熱により前記低弾性黒色硬化性樹脂層と前記低弾性透明硬化性樹脂層と前記高弾性透明硬化性樹脂層を硬化させる、発光型電子部品の製造方法。
【請求項24】
前記熱圧着時の温度が80~120℃であり、前記硬化を100~160℃の加熱で行う、請求項23に記載の発光型電子部品の製造方法。
【請求項25】
基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板の前記複数の発光素子が配置された面に、請求項19に記載の一体型封止シートを前記低弾性黒色硬化性樹脂層が接するように配置して熱圧着し、
加熱により前記低弾性黒色硬化性樹脂層と前記低弾性透明硬化性樹脂層と前記高弾性透明硬化性樹脂層を硬化させる、発光型電子部品の製造方法。
【請求項26】
前記熱圧着時の温度が80~120℃であり、前記硬化を100~160℃の加熱で行う、請求項25に記載の発光型電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライフィルム、一体型封止シート、発光型電子部品、及び発光型電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、極小の発光ダイオードを用いた、ミニLED、マイクロLEDと呼ばれるディスプレイ技術が注目されている。
ミニLED、マイクロLEDは、二種類の使用方法がある。一方は、基板上に配置された多数のLEDにより液晶のバックライトを構成することにより、バックライトの輝度を局所的に制御することを可能とする技術である。
もう一方は、画素を構成するR(赤)、G(緑)、B(青)を、それぞれの色のLEDで発光させ、各色のLEDが発光した高純度な色がそのまま目に届く仕組みである。
【0003】
ミニLED、マイクロLEDでは、基板上に複数の発光素子が配置された電子部品が使用される。斯かる電子部品には、複数の発光素子の間を光拡散防止性の樹脂で埋めるために、ドライフィルムが使用されている(特許文献1)。
ドライフィルムは、硬化性樹脂組成物を保護フィルム上に塗布乾燥させて得られる樹脂フィルムであり、これを基板の発光素子が配置された面に圧着して発光素子間に充填した後、硬化させることが行われている。
【0004】
特許文献1では、複数の発光素子間の光拡散を防止するため、ドライフィルムとして、光拡散防止性の樹脂が使用されている。
光拡散防止性の樹脂からなるドライフィルムを基板の発光素子が配置された面に圧着すると、発光素子間だけでなく、不可避的に発光素子上にも光拡散防止性の樹脂層が形成されてしまう。
【0005】
発光素子上に形成された光拡散防止性の樹脂層をそのまま残してしまうと、発光素子間の光拡散だけでなく、本来、視認者側に発すべき光まで遮蔽されてしまう。
そのため、特許文献1では、ドライフィルムを圧着した後、発光素子上の樹脂をプラズマ処理等のエッチングにより取り除き、露出した発光素子を光透過性の封止材で覆うことが記載されている。
【0006】
そこで、特許文献2では、発光素子の高さ以下とした黒色接着層と黒色接着層より融点の高い透明接着層との2層構成のドライフィルムを使用することにより、後から溶融させた透明接着層により発光素子上の黒色接着層を洗い流し、発光素子間の基板底部に押しつけ、発光素子上に黒色接着層が残らないようにできるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-22562号公報
【特許文献2】中国特許出願公開第115084320号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1のようにプラズマ処理等のエッチングを行う場合には、多大な時間がかかり、製造コスト増大の要因となっている。また、エッチングにより発光素子上の樹脂を完全に取り除くのは難しく、部分的に輝度が低下し、斑になる恐れもある。
さらに、最表面に封止材層を設けるためには、封止材のドライフィルムをさらに積層する作業も必要である。
【0009】
また、特許文献2では、透明接着層により発光素子上の黒色接着層を洗い流し、発光素子間の基板底部に押しつけ、発光素子上に黒色接着層が残らないようにできるとされている。しかし、発光素子をハンダで実装する際に、発光素子の傾きや高さに発光素子ごとの差異が生じるため、透明接着層が黒色接着層を均一に洗い流すことができず、一部の発光素子上に黒色接着層が残留し、輝度が低下する。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みて、多大な時間かかるプラズマ処理等のエッチング工程を省略でき、発光素子の傾きや高さに発光素子ごとの差異があっても輝度の低下が抑制されたドライフィルム、このドライフィルムを用いた一体型封止シート、発光型電子部品及び発光型電子部品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1] 基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板の前記複数の発光素子が配置された面に圧着されるドライフィルムであって、
前記圧着時に前記素子付き基板に直接接して配置される側から順次積層された、低弾性黒色硬化性樹脂層と、低弾性透明硬化性樹脂層と、高弾性透明硬化性樹脂層とを備えた、ドライフィルム。
[2]100℃において、前記高弾性透明硬化性樹脂層の貯蔵弾性率が、前記低弾性透明硬化性樹脂層及び前記低弾性黒色硬化性樹脂層の貯蔵弾性率より大きい、[1]に記載のドライフィルム。
[3]100℃において、前記低弾性透明硬化性樹脂層の貯蔵弾性率が、前記低弾性黒色硬化性樹脂層の貯蔵弾性率より大きい、[1]又は[2]に記載のドライフィルム。
[4]前記高弾性透明硬化性樹脂層の貯蔵弾性率が、100℃において1.0×107Pa以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のドライフィルム。
[5]前記低弾性黒色硬化性樹脂層の貯蔵弾性率が、100℃において1.0×105Pa以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のドライフィルム。
[6]前記低弾性透明硬化性樹脂層の貯蔵弾性率が、100℃において1.0×105Pa以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のドライフィルム。
[7]前記高弾性透明硬化性樹脂層の貯蔵弾性率が、150℃において1.0×105Pa以上である、[1]~[6]のいずれかに記載のドライフィルム。
[8]前記低弾性黒色硬化性樹脂層の全光線透過率が0~30%である、[1]~[7]のいずれかに記載のドライフィルム。
[9]前記低弾性透明硬化性樹脂層の全光線透過率が50%以上である、[1]~[8]のいずれかに記載のドライフィルム。
[10]前記高弾性透明硬化性樹脂層の全光線透過率が50%以上である、[1]~[9]のいずれかに記載のドライフィルム。
[11]前記高弾性透明硬化性樹脂層が高分子量エポキシ樹脂を含む、[1]~[10]のいずれかに記載のドライフィルム。
[12]前記高分子量エポキシ樹脂の重量平均分子量が10,000~100,000である、[11]に記載のドライフィルム。
[13]前記高弾性透明硬化性樹脂層が、前記高分子量エポキシ樹脂としてフェノキシ型エポキシ樹脂を含む、[11]又は[12]に記載のドライフィルム。
[14]前記高弾性透明硬化性樹脂層の総樹脂固形分100質量%に対する前記高分子量エポキシ樹脂の配合量が30~80質量%である、[11]~[13]のいずれかに記載のドライフィルム。
[15]前記低弾性黒色硬化性樹脂層がエラストマーを含む、[1]~[14]のいずれかに記載のドライフィルム。
[16]前記エラストマーが変性エラストマーである、[15]に記載のドライフィルム。
[17]前記変性エラストマーが酸変性アクリロニトリルブタジエンゴムである、[16]に記載のドライフィルム。
[18]前記低弾性黒色硬化性樹脂層がカーボンブラックを含む、[1]~[17]のいずれかに記載のドライフィルム。
[19][1]~[18]のいずれかに記載のドライフィルムと、前記高弾性透明硬化性樹脂層の前記低弾性透明硬化性樹脂層の反対側に設けられた封止フィルム層を備える、一体型封止シート。
[20]前記封止フィルム層が、支持フィルム層と、前記支持フィルム層の前記高弾性透明硬化性樹脂層と反対側に設けられたハードコート層を備える、[19]に記載の一体型封止シート。
[21]基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板と、前記素子付き基板の前記複数の発光素子が配置された面に圧着された[1]~[18]のいずれかに記載のドライフィルムとを備え、
前記低弾性黒色硬化性樹脂層と、前記低弾性透明硬化性樹脂層及び前記高弾性透明硬化性樹脂層の一部とが前記複数の発光素子間に充填されており、
前記低弾性黒色硬化性樹脂層と前記低弾性透明硬化性樹脂層と前記高弾性透明硬化性樹脂層は硬化している発光型電子部品。
[22]基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板と、前記素子付き基板の前記複数の発光素子が配置された面に圧着された[19]又は[20]に記載の一体型封止シートとを備え、
前記低弾性黒色硬化性樹脂層と、前記低弾性透明硬化性樹脂層及び高弾性透明硬化性樹脂層の一部とが前記複数の発光素子間に充填されており、
前記低弾性黒色硬化性樹脂層と前記低弾性透明硬化性樹脂層と前記高弾性透明硬化性樹脂層は硬化している発光型電子部品。
[23]基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板の前記複数の発光素子が配置された面に、[1]~[18]のいずれかに記載のドライフィルムを前記低弾性黒色硬化性樹脂層が接するように配置して熱圧着し、
加熱により前記低弾性黒色硬化性樹脂層と前記低弾性透明硬化性樹脂層と前記高弾性透明硬化性樹脂層を硬化させる、発光型電子部品の製造方法。
[24]前記熱圧着時の温度が80~120℃であり、前記硬化を100~160℃の加熱で行う、[23]に記載の発光型電子部品の製造方法。
[25]基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板の前記複数の発光素子が配置された面に、[19]又は[20]に記載の一体型封止シートを前記低弾性黒色硬化性樹脂層が接するように配置して熱圧着し、
加熱により前記低弾性黒色硬化性樹脂層と前記低弾性透明硬化性樹脂層と前記高弾性透明硬化性樹脂層を硬化させる、発光型電子部品の製造方法。
[26]前記熱圧着時の温度が80~120℃であり、前記硬化を100~160℃の加熱で行う、[25]に記載の発光型電子部品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のドライフィルム又は一体型封止シートによれば、発光素子の傾きや高さに発光素子ごとの差異があっても、多大な時間かかるプラズマ処理等のエッチングを行わずに、輝度の低下を抑制できる。
また、本発明の発光型電子部品及び発光型電子部品の製造方法によれば、生産コストやエネルギー消費を増大させることなく、十分な輝度と黒色度を有する発光型電子部品を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るドライフィルムの模式断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る発光型電子部品の製造方法の概略説明図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る発光型電子部品の製造方法の概略説明図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る発光型電子部品の製造方法の概略説明図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る発光型電子部品の製造方法の概略説明図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る発光型電子部品の製造方法の概略説明図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る一体型封止シートの模式断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る発光型電子部品の製造方法の概略説明図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る発光型電子部品の製造方法の概略説明図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る発光型電子部品の製造方法の概略説明図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る発光型電子部品の製造方法の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲において、主成分とは、組成物全体の全固形分に対して、50質量%以上を占める成分を意味する。「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
【0015】
《第1実施形態》
<ドライフィルム>
図1、2を用いて、第1実施形態に係るドライフィルム100について説明する。
図1に示すように、ドライフィルム100は低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3が積層されて基本的に構成されている。
本実施形態のドライフィルム100は、さらに、取り扱いの便宜のため、低弾性黒色硬化性樹脂層1及び高弾性透明硬化性樹脂層3のいずれか一方もしくは両方の表面に保護フィルムを有していてもよい。
【0016】
図1には、低弾性黒色硬化性樹脂層1及び高弾性透明硬化性樹脂層3の両方の表面に保護フィルムを有している例を示している。具体的には、第1の保護フィルム6に、低弾性黒色硬化性樹脂層1、低弾性透明硬化性樹脂層2、高弾性透明硬化性樹脂層3、第2の保護フィルム7が順次積層されている。
【0017】
図2に示すように、ドライフィルム100は、基板11に複数の発光素子(発光素子12、発光素子13、発光素子14)が配置された素子付き基板10の複数の発光素子の間を埋めるために使用される。素子付き基板10の詳細については後述する。
ドライフィルム100は、圧着時において、
図2に示すように、低弾性黒色硬化性樹脂層1が素子付き基板10に直接接するようにして使用される。
ドライフィルム100を素子付き基板10に圧着して発光型電子部品を得る具体的方法については後述する。
【0018】
<低弾性黒色硬化性樹脂層>
低弾性黒色硬化性樹脂層1は、発光素子間の光拡散を防止し、ディスプレイのコントラストを向上させる層である。
また、熱圧着工程において、素子付き基板10に配置された複数の発光素子の間を十分に充填し、熱硬化工程での不充填空隙の膨張による外観不良や、後工程での外的要因による発光素子へのダメージを防止するための層である。
【0019】
[全光線透過率]
低弾性黒色硬化性樹脂層1は全光線透過率が低い。なお、低弾性黒色硬化性樹脂層1の全光線透過率は、硬化状態において測定される。低弾性黒色硬化性樹脂層1は硬化状態における全光線透過率が0~30%となるように調製される。低弾性黒色硬化性樹脂層1は、硬化状態における全光線透過率が0~20%となるように調製されることが好ましく、0~10%となるように調製されることがより好ましい。
低弾性黒色硬化性樹脂層1の硬化状態における全光線透過率が上限値以下であることにより、発光素子間の光拡散を防止することができる。
【0020】
本明細書における全光線透過率はヘイズメータにより測定することができる。
硬化状態における全光線透過率は、主として、カーボンブラック等の顔料や染料の配合の有無、乃至は配合量により調整できる。また、樹脂層の厚みや樹脂種によっても調整できる。
【0021】
[貯蔵弾性率]
素子付き基板10に圧着し硬化させる前の低弾性黒色硬化性樹脂層1は未硬化状態又は半硬化状態である。硬化前の低弾性黒色硬化性樹脂層1の貯蔵弾性率は、100℃において、高弾性透明硬化性樹脂層3の硬化前の貯蔵弾性率より小さい。また、100℃において、低弾性透明硬化性樹脂層2の硬化前の貯蔵弾性率より小さいことが好ましい。
【0022】
低弾性黒色硬化性樹脂層1の硬化前の貯蔵弾性率は、100℃において1.0×105Pa以下であることが好ましく、1.0×102Pa以上、1.0×105Pa以下であることが好ましく、1.0×103Pa以上、5.0×104Pa以下であることがより好ましい。
【0023】
硬化前の低弾性黒色硬化性樹脂層1の100℃における貯蔵弾性率が好ましい上限値以下であることにより、素子付き基板10への圧着時に充分な流動性が得られ、複数の発光素子による素子付き基板10の凹凸に追従して、複数の発光素子の間を充分に埋めることができる。
硬化前の低弾性黒色硬化性樹脂層1の100℃における貯蔵弾性率が好ましい下限値以上であることにより、熱圧着時の圧力偏重を防ぐことができ、均一な外観を保つことができる。また、範囲外への樹脂の流出を防止でき、圧着後の膜厚を確保できる。
【0024】
[硬化性樹脂組成物]
低弾性黒色硬化性樹脂層1は、硬化性樹脂組成物で構成されている。硬化性樹脂組成物としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリウレタン樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂と硬化剤を含む熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。
【0025】
中でも、低温での硬化性を実現でき、耐熱性、信頼性に優れることから、エポキシ樹脂組成物であることが好ましい。
本明細書において、エポキシ樹脂組成物とは、エポキシ樹脂を主成分として含む組成物、あるいはエポキシ樹脂と硬化剤とを主成分として含む組成物である。
【0026】
(エポキシ樹脂)
本明細書及び特許請求の範囲において、エポキシ樹脂とは、分子中にエポキシ基をもつ化合物である。
本発明に用いるエポキシ樹脂としては、一分子中に2つ以上のエポキシ基を有するものが好ましい。エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性樹脂との反応で架橋構造を形成し、硬化物に高い耐熱性を発現させることができるからである。また、エポキシ基が2つ以上のエポキシ樹脂を用いた場合、エポキシ基と反応可能な官能基を有する硬化剤との架橋度が十分であり、硬化物に十分な耐熱性が得られる。
【0027】
一分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を2つ有する2官能エポキシ樹脂、分子中にエポキシ基を3つ以上有する多官能エポキシ樹脂、重量平均分子量が10,000以上の高分子量エポキシ樹脂等が挙げられる。また、それらを水素添加されたエポキシ樹脂であってもよい。
【0028】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、高分子量エポキシ樹脂は、分子中のエポキシ基の数に関わらず、2官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂に分類せず、フェノキシ型エポキシ樹脂に分類する。
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の分子量である。
【0029】
エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、又はそれらを高分子量化したフェノキシ型エポキシ樹脂、それらの水素添加したもの等のビスフェノール系エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、o-クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂、キシレン構造含有ノボラックエポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸グリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル等のグリシジルエステル系エポキシ樹脂;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン、ソルビトールのポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールのポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂;臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、フッ素含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等の特殊骨格エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0030】
高分子量エポキシ樹脂としては、フェノキシ型エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリブタジエン、グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合体、その他の樹脂をエポキシ変性した変性ポリマー等を用いることができる。
これらのエポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記エポキシ樹脂の中でも、低弾性黒色硬化性樹脂層1に用いられるエポキシ樹脂としては、硬化後の架橋密度を高められる観点から、多官能エポキシ樹脂であることが好ましい。
多官能エポキシ樹脂の中でも、特に、ノボラック型のエポキシ樹脂は、適度に柔軟骨格を導入でき、柔軟性や軟化点の調整が可能なエポキシ樹脂のため、硬化物が脆性破壊を起こしづらくなり、エポキシ樹脂組成物の硬化物の長期使用に対する性能の安定性が向上し、架橋密度を高められ、耐熱性も向上するため、より好ましい。
【0032】
ノボラック型のエポキシ樹脂の具体例としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製の「YX7700」、日本化薬株式会社製の「NC7000L」、「XD1000」、「EOCN-1020」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の「ESN485」、DIC株式会社製の「N-690」、「N-695」、「HP-7200H」、「HP-7200L」等が挙げられる。
【0033】
低弾性黒色硬化性樹脂層1における、多官能エポキシ樹脂の配合量は、低弾性黒色硬化性樹脂層1の総樹脂固形分100質量%に対して、10~99質量%であることが好ましく、40~95質量%であることがより好ましく、60~90質量%であることがさらに好ましい。上記下限値以上であると、架橋密度を高めて耐薬品性や耐熱性を付与できる。また、上記上限値以下であると、熱圧着時の貯蔵弾性率を調整でき、低弾性黒色硬化性樹脂層1の流動性を確保できる。
【0034】
低弾性黒色硬化性樹脂層1は、高分子量エポキシ樹脂を含まないか、含む場合は、高弾性透明硬化性樹脂層3よりも少ない配合量で含むことが好ましい。これにより、熱圧着時の充分な流動性を確保しやすい。
【0035】
低弾性黒色硬化性樹脂層1における、高分子量エポキシ樹脂の配合量は、低弾性黒色硬化性樹脂層1の総樹脂固形分100質量%に対して、50質量%未満であることが好ましく、30質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることがさらに好ましい。
【0036】
熱圧着時の十分な流動性を確保する観点から、低弾性黒色硬化性樹脂層1には、軟化点又は融点が、100℃以下のエポキシ樹脂が含まれることが好ましい。ハンドリング性や硬化物の耐熱性の観点から、軟化点又は融点が、50~95℃のエポキシ樹脂が含まれることがより好ましい。上記範囲内の軟化点又は融点を有するエポキシ樹脂を含むことで、貯蔵弾性率の制御が可能になる。
【0037】
低弾性黒色硬化性樹脂層1における、エポキシ樹脂全体の配合量は、低弾性黒色硬化性樹脂層1の総樹脂固形分100質量%に対して、10~100質量%であることが好ましく、20~99質量%であることがより好ましく、35~95質量%であることがさらに好ましい。上記範囲内であると、貯蔵弾性率の制御が可能であり、熱圧着時の適当な流動性を確保できる。また、上記下限値以上であると、硬化後の耐熱性を向上できる。
【0038】
(エラストマー)
低弾性黒色硬化性樹脂層1は、エポキシ樹脂等の樹脂に加えて、エラストマーを含むことが好ましい。エラストマーを含むことにより、貯蔵弾性率の制御すなわち、流動性の制御が容易となる。
【0039】
エラストマーとしては、優れた耐熱性が得られることから、一般に「ゴム」と呼ばれる熱硬化性エラストマーが好ましい。熱硬化性エラストマーとしては、ブタジエンとアクリロニトリルのランダム共重合体であるアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。中でもエポキシ樹脂との相溶性が良好で、低弾性黒色硬化性樹脂層1の100℃付近での流動性の制御が可能であり、低弾性透明硬化性樹脂層2や素子付き基板10との密着性が良好であることから、NBRが好ましい。
【0040】
エラストマーの重量平均分子量は、100,000~1,000,000であることが好ましく、120,000~500,000であることがより好ましく、150,000~300,000であることがさらに好ましい。エラストマーの重量平均分子量が上記範囲であれば、低弾性黒色硬化性樹脂層1の貯蔵弾性率を制御でき、熱圧着時の流動性を確保できる。エラストマーの重量平均分子量が上記上限値以下であれば、エポキシ樹脂との相溶性が向上して熱硬化時の流動をより効果的に制御できる。
【0041】
特に低弾性黒色硬化性樹脂層1がエポキシ樹脂組成物で構成される場合、エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマーを含むことが好ましい。エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマーあれば、エポキシ樹脂の硬化剤としても作用する。また、エポキシ樹脂と反応し結合できるため、耐熱性と熱衝撃への信頼性が向上する。さらに、エポキシ樹脂と反応可能な官能基と樹脂骨格の極性の違いが分散性に良好に作用し、低弾性黒色硬化性樹脂層1にカーボンブラックを含有させる場合に良好な分散性が得られる。
【0042】
エポキシ基と反応可能な官能基としては、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、リン酸基等の酸基、及びこれらの酸無水物基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。中でも低温での硬化が可能で、可使時間を確保できることから、酸基又は酸無水物基が好ましく、カルボキシ基又はカルボン酸無水物基が特に好ましい。
【0043】
すなわち、低弾性黒色硬化性樹脂層1は、エポキシ樹脂組成物で構成される場合、酸基又は酸無水物基を有する酸変性エラストマーを含有することが好ましく、カルボキシ基を有する酸変性エラストマーを含有することがより好ましい。カルボキシ基を有する酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム(酸変性NBR)を含有することが特に好ましい。
【0044】
カルボキシ基を有する酸変性NBRとしては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等を導入したカルボキシル化アクリロニトリルゴムが好ましい。カルボキシル化アクリロニトリルゴムの市販品としては、日本ゼオン株式会社製Nipol(登録商標)NX775、Nipol 1072CGJが挙げられる。
エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマーは2種以上を併用してもよい。
【0045】
低弾性黒色硬化性樹脂層1のエラストマーの配合量は、高弾性透明硬化性樹脂層3のエラストマーの配合量より多いことが好ましい。これにより、低弾性黒色硬化性樹脂層1に多官能エポキシのような低分子量成分が多い配合において、熱圧着時の低弾性黒色硬化性樹脂層1の貯蔵弾性率を高弾性透明硬化性樹脂層3より低い適度な範囲に調整でき、かつ、熱硬化時の流動を抑制できる。結果として、低弾性黒色硬化性樹脂層1に熱圧着時の十分な流動性と熱硬化時の流れだしの抑制が可能になる。
【0046】
低弾性黒色硬化性樹脂層1のエラストマーの配合量は、低弾性黒色硬化性樹脂層1の総樹脂固形分100質量%に対して、0.01~90質量%であることが好ましく、1~80質量%であることがより好ましく、5~65質量%であることがさらに好ましい。上記範囲内であると、貯蔵弾性率の制御が可能であり、熱圧着時の適当な流動性を確保できる。また、上記下限値以上であると、カーボンブラックの分散性が良好になる。さらに、成膜性が向上し、エポキシ樹脂組成物を塗工して成膜する際の膜厚の分布を狭くできる。
【0047】
(硬化剤)
低弾性黒色硬化性樹脂層1がエポキシ樹脂組成物で構成される場合、エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマー以外のその他のエポキシ樹脂用の硬化剤を含んでいてもよい。その他の硬化剤としては、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤等の公知の硬化剤が挙げられる。
その他の硬化剤は2種以上を併用してもよい。
【0048】
(硬化触媒)
低弾性黒色硬化性樹脂層1がエポキシ樹脂組成物で構成される場合、エポキシ樹脂の硬化反応を促進する硬化触媒を含んでもよい。
硬化触媒としては、イミダゾール系、第三級アミン系、リン化合物系等が挙げられる。中でもエポキシ樹脂と相溶性がよく、黄変の原因になりづらいことから、イミダゾール系が好ましい。
イミダゾール系の硬化触媒の中でも、シアノエチル基を有するものがエポキシ樹脂に溶けやすいことから、特に好ましい。
【0049】
硬化触媒の配合量は、低弾性黒色硬化性樹脂層1の総樹脂固形分100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.05~4質量部であることがより好ましく、0.1~3質量部であることがさらに好ましい。上記範囲内であると、硬化を十分に進められ、ドライフィルム100の可使時間を確保できる。
硬化触媒は2種以上を併用してもよい。
【0050】
(黒色顔料又は黒色染料)
低弾性黒色硬化性樹脂層1は、黒色に着色されている。着色のために、黒色顔料又は黒色染料を含有することが好ましく、黒色顔料を含有することがより好ましく、カーボンブラックを含有することがさらに好ましい。黒色に着色されていることにより、素子付き基板10の複数の発光素子の間の光拡散防止性が得られる。
【0051】
カーボンブラックの粒子径は10~500nmであるのが好ましく、10~300nmがより好ましく、10~100nmが特に好ましい。なお、粒子径は、平均粒子径のことを言い、動的光散乱法による測定装置により求めることができる。動的光散乱法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製のNanotracWave II UT151が挙げられる。
【0052】
カーボンブラックのISO 787-9に基づくpHは5以下であることが好ましく、1~4.5であることがより好ましく、2~4であることがさらに好ましい。
カーボンブラックのpHが好ましい上限値以下であることにより、良好な分散性が得られ、黒色度を向上させることができる。カーボンブラックのpHが好ましい下限値以上であることにより、低弾性黒色硬化性樹脂層の塗液での分散安定性が向上して、沈降や黒色度の安定性が高まる。
【0053】
カーボンブラックとしては、ガスブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック等の公知のカーボンブラックの1種又は2種以上を用いることができる。また、樹脂被覆カーボンブラックを使用してもよい。さらに、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブを使用してもよい。
【0054】
中でも酸性カーボンであるガスブラックは、表面官能基の量が多く、分散性が高く、少量添加で十分な光拡散防止機能を発揮する点で好ましい。また、低弾性黒色硬化性樹脂層1にエポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する変性エラストマーを含む場合、ガスブラックの表面官能基とエポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する変性エラストマーの官能基との相互作用により、分散性がさらに高まり、良好な光拡散防止性と塗液安定性とを確保できる。
【0055】
カーボンブラックの配合量は、低弾性黒色硬化性樹脂層1の固形分全量基準で、0.1~15質量%であることが好ましく、1.0~10質量%であることがより好ましい。カーボンブラックの配合量が上記下限値以上であると十分な遮光性が得られる。カーボンブラックの配合量が上記上限値を超えると、低弾性黒色硬化性樹脂層1のチキソ性が高まり、熱圧着時の流動性が低下して、素子付き基板10の複数の発光素子の間を十分に充填できなくなる。
【0056】
(その他の成分)
低弾性黒色硬化性樹脂層1は、難燃性や耐熱性の向上、屈折率の調整のために、無機フィラーを含むことができる。
低弾性黒色硬化性樹脂層1は、さらに必要に応じて、エポキシ樹脂とエラストマー以外の樹脂、増粘剤、消泡剤及び/又はレベリング剤、カップリング剤等の密着性付与剤、難燃剤を用いることができる。
【0057】
<透明硬化性樹脂層>
本実施形態のドライフィルム100は、低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3の2層の透明硬化性樹脂層を備える。これら2層は全光線透過率が高い。なお、低弾性透明硬化性樹脂層2及び高弾性透明硬化性樹脂層3の各々の全光線透過率は、硬化状態において測定される。
【0058】
<低弾性透明硬化性樹脂層2>
低弾性透明硬化性樹脂層2は、熱圧着工程において、素子付き基板10に配置された複数の発光素子の間に低弾性黒色硬化性樹脂層1を押し込みつつ、その少なくとも一部も、複数の発光素子の間に充填される層である。
【0059】
[全光線透過率]
低弾性透明硬化性樹脂層2は、硬化状態における全光線透過率が50%以上となるように調製されることが好ましく、50~95%となるように調製されることがより好ましく、80~90%となるように調製されることがさらに好ましい。
低弾性透明硬化性樹脂層2の硬化状態における全光線透過率が下限値以上であることにより、硬化状態における低弾性透明硬化性樹脂層2が発光素子の上に残っても、視認者側への光の到達が妨げられない。
【0060】
[貯蔵弾性率]
素子付き基板10に圧着し硬化させる前の低弾性透明硬化性樹脂層2は未硬化状態又は半硬化状態である。硬化前の低弾性透明硬化性樹脂層2の貯蔵弾性率は、100℃において、硬化前の高弾性透明硬化性樹脂層3より小さい。また、100℃において、低弾性黒色硬化性樹脂層1の硬化前の貯蔵弾性率と同じか、それより大きいことが好ましい。
【0061】
低弾性透明硬化性樹脂層2の硬化前の貯蔵弾性率は、100℃において1.0×105Pa以下であることが好ましく、1.0×103~1.0×105Paであることが好ましく、5.0×103~1.0×105Paであることがより好ましい。
【0062】
硬化前の低弾性透明硬化性樹脂層2の100℃における貯蔵弾性率が好ましい上限値以下であることにより、素子付き基板10への圧着時に充分な流動性が得られ、複数の発光素子による素子付き基板10の凹凸に追従して低弾性黒色硬化性樹脂層1と共に、複数の発光素子の間を充分に埋めることができる。
【0063】
硬化前の低弾性透明硬化性樹脂層2の100℃における貯蔵弾性率が好ましい上限値を超えると、低弾性透明硬化性樹脂層2の流動性が足りず、複数の発光素子の間を充分に埋めにくくなるうえ、低弾性黒色硬化性樹脂層1を複数の発光素子の間を充分に押し込みにくくなる。
硬化前の100℃における低弾性透明硬化性樹脂層2の貯蔵弾性率は、低弾性黒色硬化性樹脂層1の硬化前の貯蔵弾性率に対して0.8~1000倍が好ましく、1~100倍がより好ましい。
【0064】
[硬化性樹脂組成物]
低弾性透明硬化性樹脂層2は、硬化性樹脂組成物で構成されている。硬化性樹脂組成物としては、低弾性黒色硬化性樹脂層1と同様に、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリウレタン樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂と硬化剤を含む熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。中でも、低温での硬化性を実現でき、耐熱性、信頼性に優れることから、エポキシ樹脂組成物であることが好ましい。
【0065】
(エポキシ樹脂)
低弾性透明硬化性樹脂層2に用いられるエポキシ樹脂の例としては、低弾性黒色硬化性樹脂層1と同様の種類が挙げられる。
上記エポキシ樹脂の中でも、低弾性透明硬化性樹脂層2に用いられるエポキシ樹脂としては、硬化後の架橋密度を高められ、適度な分子量を持つことで、弾性率の調整が容易であることから、多官能エポキシ樹脂が好ましい。
【0066】
低弾性透明硬化性樹脂層2が、高分子量エポキシ樹脂を含む場合、その配合量は、低弾性透明硬化性樹脂層2の総樹脂固形分100質量%に対して、50質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、10~35質量%であることがさらに好ましい。
低弾性透明硬化性樹脂層2における、高分子量エポキシ樹脂の配合量が上記好ましい下限値以上であれば、低弾性黒色硬化性樹脂層1を複数の発光素子の間を充分に押し込む貯蔵弾性率が得られやすくなる。好ましい上限値以下であれば、低弾性透明硬化性樹脂層2が、複数の発光素子の間を充填されやすい。
【0067】
低弾性透明硬化性樹脂層2における、エポキシ樹脂全体の配合量は、低弾性透明硬化性樹脂層2の総樹脂固形分100質量%に対して、10~100質量%であることが好ましく、20~99質量%であることがより好ましく、35~95質量%であることがさらに好ましい。
低弾性透明硬化性樹脂層2におけるエポキシ樹脂全体の配合量が上記範囲内であると、貯蔵弾性率の制御が可能であり、熱圧着時の適当な流動性を確保できる。また、上記下限値以上であると、硬化後の耐熱性を向上できる。
【0068】
(エラストマー)
低弾性透明硬化性樹脂層2は、エポキシ樹脂等の樹脂に加えて、エラストマーを含むことが好ましい。エラストマーを含むことにより、貯蔵弾性率の制御が容易となる。
【0069】
エラストマーとしては、低弾性黒色硬化性樹脂層1と同様の種類が挙げられる。中でもエポキシ樹脂との相溶性が良好で、低弾性透明硬化性樹脂層2の150℃付近での貯蔵弾性率を高められ、低弾性黒色硬化性樹脂層1との密着性が良好であることから、NBRが好ましい。エラストマーの好ましい重量平均分子量も低弾性黒色硬化性樹脂層1と同様である。
【0070】
特に低弾性透明硬化性樹脂層2がエポキシ樹脂組成物で構成される場合、エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマーを含むことが好ましい。エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマーあれば、エポキシ樹脂の硬化剤としても作用する。また、エポキシ樹脂と反応し結合できるため、耐熱性と熱衝撃への信頼性が向上する。
【0071】
エポキシ基と反応可能な官能基としては、低弾性黒色硬化性樹脂層1と同様の種類が挙げられる。中でも低温での硬化が可能で、可使時間を確保できることから、酸基又は酸無水物基が好ましく、カルボキシ基又はカルボン酸無水物基が特に好ましい。
【0072】
低弾性透明硬化性樹脂層2は、エポキシ樹脂組成物で構成される場合、カルボキシ基を有する酸変性NBRを含有することが特に好ましい。
カルボキシ基を有する酸変性NBRとしては、低弾性黒色硬化性樹脂層1と同様の種類が挙げられる。
エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマーは2種以上を併用してもよい。
【0073】
低弾性透明硬化性樹脂層2のエラストマーの配合量は、低弾性透明硬化性樹脂層2の総樹脂固形分100質量%に対して、90質量%以下であることが好ましく、1~80質量%であることがより好ましく、5~65質量%であることがさらに好ましい。
低弾性透明硬化性樹脂層2における、エラストマーの配合量が上記好ましい下限値以上であれば、成膜性が向上し、成膜する際の膜厚の分布を狭くできる。好ましい上限値以下であれば、低弾性透明硬化性樹脂層2が、複数の発光素子の間を充填されやすい。
【0074】
(硬化剤)
低弾性透明硬化性樹脂層2がエポキシ樹脂組成物で構成される場合、エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマー以外のその他のエポキシ樹脂用の硬化剤を含んでいてもよい。その他の硬化剤としては、低弾性黒色硬化性樹脂層1と同様の硬化剤が挙げられる。その他の硬化剤は2種以上を併用してもよい。
【0075】
(硬化触媒)
低弾性透明硬化性樹脂層2がエポキシ樹脂組成物で構成される場合、エポキシ樹脂の硬化反応を促進する硬化触媒を含んでもよい。
硬化触媒としては、低弾性黒色硬化性樹脂層1と同様の硬化触媒が挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0076】
硬化触媒の配合量は、低弾性透明硬化性樹脂層2の総樹脂固形分100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.05~4質量部であることがより好ましく、0.1~3質量部であることがさらに好ましい。上記範囲内であると、硬化を十分に進められ、ドライフィルム100の可使時間を確保できる。
硬化触媒は2種以上を併用してもよい。
【0077】
(その他の成分)
低弾性透明硬化性樹脂層2は、発光ムラや色ムラを抑制するために黒色顔料又は黒色染料を含有してもよい。
【0078】
全光線透過率を高くする観点から、低弾性透明硬化性樹脂層2がカーボンブラックを含む場合、その配合量は、総樹脂固形分100質量部に対して、5質量部未満であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることがさらに好ましい。
低弾性透明硬化性樹脂層2は、さらに必要に応じて、エポキシ樹脂とエラストマー以外の樹脂、増粘剤、消泡剤及び/又はレベリング剤、カップリング剤等の密着性付与剤、難燃剤を用いることができる。
【0079】
<高弾性透明硬化性樹脂層3>
高弾性透明硬化性樹脂層3は、熱圧着工程において、素子付き基板10に配置された複数の発光素子の間に低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2を十分に押し込むみ、発光素子上から低弾性黒色硬化性樹脂層1を除去するための層である。
【0080】
[全光線透過率]
高弾性透明硬化性樹脂層3は、硬化状態における全光線透過率が50%以上となるように調製されることが好ましく、75~99.5%となるように調製されることがより好ましく、80~99.5%となるように調製されることがさらに好ましい。
高弾性透明硬化性樹脂層3の硬化状態における全光線透過率が下限値以上であることにより、視認者側への光の到達が妨げられない。
【0081】
[貯蔵弾性率]
素子付き基板10に圧着し硬化させる前の高弾性透明硬化性樹脂層3は未硬化状態又は半硬化状態である。硬化前の高弾性透明硬化性樹脂層3の貯蔵弾性率は、100℃において、硬化前の低弾性黒色硬化性樹脂層1及び硬化前の低弾性透明硬化性樹脂層2の貯蔵弾性率より大きい。
高弾性透明硬化性樹脂層3の硬化前の貯蔵弾性率は、100℃から150℃において、硬化前の低弾性黒色硬化性樹脂層1及び硬化前の低弾性透明硬化性樹脂層2の貯蔵弾性率より大きいことが好ましい。
【0082】
なお、100℃と150℃で、硬化前の高弾性透明硬化性樹脂層3の貯蔵弾性率が硬化前の低弾性黒色硬化性樹脂層1及び硬化前の低弾性透明硬化性樹脂層2の貯蔵弾性率より大きい場合、通常100℃~150℃の全範囲において、硬化前の高弾性透明硬化性樹脂層3の貯蔵弾性率は硬化前の低弾性黒色硬化性樹脂層1及び硬化前の低弾性透明硬化性樹脂層2の貯蔵弾性率より大きい。
【0083】
高弾性透明硬化性樹脂層3の硬化前の貯蔵弾性率は、100℃において1.0×107Pa以下であることが好ましく、1.0×104Pa以上、1.0×107Pa以下であることが好ましく、5.0×104Pa以上、5.0×106Pa以下であることがより好ましい。
【0084】
硬化前の高弾性透明硬化性樹脂層3の100℃における貯蔵弾性率が好ましい範囲内であることにより、素子付き基板10への圧着時に低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2に応力を伝え、発光素子上から低弾性黒色硬化性樹脂層1を十分に除去する弾性と、複数の発光素子の凹凸に追従して変形する柔軟性とを両立でき、低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2で、複数の発光素子の間を充分に埋めやすくなる。
【0085】
硬化前の高弾性透明硬化性樹脂層3の100℃における貯蔵弾性率が好ましい上限値を超えると、高弾性透明硬化性樹脂層3の流動性が足りず、複数の発光素子の凹凸に追従して変形しにくくなるため、高さの低い発光素子の上部だけ低弾性黒色硬化性樹脂層1を十分に除去できず、輝度が低下しやすくなるうえ、低弾性黒色硬化性樹脂層1を複数の発光素子の間を充分に押し込みにくくなり、残った空隙由来の気泡等の欠点が発生しやすくなる。また、熱圧着時に高弾性透明硬化性樹脂層3にクラックが発生することで、ヒビ様欠点が発生しやすくなる。
【0086】
硬化前の高弾性透明硬化性樹脂層3の100℃における貯蔵弾性率が好ましい下限値を下回ると、発光素子上の低弾性黒色硬化性樹脂層1を十分に除去しにくくなる。また、高弾性透明硬化性樹脂層3の流動性が高すぎて熱圧着後に発光素子に合わせて高弾性透明硬化性樹脂層3の表面が凹凸形状になってしまい、外観不良になりやすい。
【0087】
硬化前の高弾性透明硬化性樹脂層3の貯蔵弾性率は、150℃において1.0×104Pa以上であることが好ましく、1.0×104~5.0×107Paであることが好ましく、1.0×105~1.0×107Paであることがより好ましい。
【0088】
硬化前の高弾性透明硬化性樹脂層3の150℃における貯蔵弾性率が好ましい上限値を超えると、熱硬化時に硬化収縮によるクラックが発生しやすくなる。硬化前の高弾性透明硬化性樹脂層3の150℃における貯蔵弾性率が好ましい下限値以上であることにより、熱硬化時の流動を抑制でき、ハジキのような硬化後の外観不良が抑制され、さらには、後工程でエッチング処理を行う場合にも支障が生じにくい。
【0089】
硬化前の100℃における高弾性透明硬化性樹脂層3の貯蔵弾性率は、低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2の各々の硬化前の貯蔵弾性率に対して10~1000倍が好ましく、30~500倍がより好ましい。硬化前の150℃の高弾性透明硬化性樹脂層3の貯蔵弾性率は、低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2の各々の貯蔵弾性率の5~10000倍が好ましく、10~1000倍がより好ましい。
【0090】
[硬化性樹脂組成物]
高弾性透明硬化性樹脂層3は、硬化性樹脂組成物で構成されている。硬化性樹脂組成物としては、低弾性黒色硬化性樹脂層1と同様に、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリウレタン樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂と硬化剤を含む熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。中でも、低温での硬化性を実現でき、耐熱性、信頼性に優れることから、エポキシ樹脂組成物であることが好ましい。
【0091】
(エポキシ樹脂)
高弾性透明硬化性樹脂層3に用いられるエポキシ樹脂の例としては、低弾性黒色硬化性樹脂層1と同様の種類が挙げられる。
【0092】
高弾性透明硬化性樹脂層3に適度な圧着時粘度を付与できる観点から、高弾性透明硬化性樹脂層3は、重量平均分子量が10,000~100,000の高分子量エポキシ樹脂を含むことが好ましい。他の樹脂成分との相溶性が良好で、乾燥後もドライフィルムに残る可能性のある沸点の高い溶剤を混合しなくても溶解できる観点から、重量平均分子量が10,000~35,000の高分子量エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
【0093】
高弾性透明硬化性樹脂層3に用いられるエポキシ樹脂として重量平均分子量が10,000~100,000の高分子量エポキシ樹脂を含むことにより、加熱時に適度な粘度を有するため、高弾性透明硬化性樹脂層3の100℃~150℃の範囲の貯蔵弾性率を好ましい範囲に調整できる。
高弾性透明硬化性樹脂層3に用いられる高分子量エポキシ樹脂は、他のエポキシ樹脂との相溶性が良好であることから、フェノキシ型エポキシ樹脂が好ましい。
【0094】
フェノキシ型エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の中でも比較的に分子量が大きく、加熱時に適度な粘度を有するため、高弾性透明硬化性樹脂層3の100℃~150℃の範囲の貯蔵弾性率を好ましい範囲に調整できる。また、フェノキシ型エポキシ樹脂は、ポリエステル等の他の熱可塑性樹脂と異なり、エポキシ樹脂としての硬化が可能なため、架橋密度を高めることができ、硬化物の耐熱性や長期使用に対する性能の信頼性を損なわない。
【0095】
熱圧着時に低弾性黒色硬化性樹脂層1を押し込む貯蔵弾性率を確保する観点から、高弾性透明硬化性樹脂層3に用いられるフェノキシ型エポキシ樹脂のガラス転移温度は、100℃以上であることが好ましい。
【0096】
フェノキシ型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製の「1256」「YX7200」「YX8100」「YX7180」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の「YP-50」「YP-50S」「YP-70」、DIC株式会社製の「N-690」、DIC株式会社製の「H-157」「EXA-192」等が挙げられる。
【0097】
高弾性透明硬化性樹脂層3における、高分子量エポキシ樹脂の配合量は、高弾性透明硬化性樹脂層3の総樹脂固形分100質量%に対して、30~80質量%であることが好ましく、40~75質量%であることがより好ましく、45~70質量%であることがさらに好ましい。
高弾性透明硬化性樹脂層3における、フェノキシ型エポキシ樹脂の好ましい配合量も同様である。
【0098】
上記範囲内であると、貯蔵弾性率の制御が可能であり、熱圧着時の低弾性黒色硬化性樹脂層1と高弾性透明硬化性樹脂層3を押し込む貯蔵弾性率を確保でき、発光素子上から低弾性黒色硬化性樹脂層1を十分に除去できる。また、熱硬化時の流動を抑制でき、ハジキのような硬化後の外観不良が抑制され、さらには、後工程でエッチング処理を行う場合にも支障が生じにくい。また、靭性が向上し、熱圧着時にヒビ様欠点が発生しづらくなる。
また、上記上限値以下であると、硬化状態における高弾性透明硬化性樹脂層3の架橋密度を高め、耐熱性や耐薬品性を向上できる。
【0099】
さらに、高弾性透明硬化性樹脂層3に用いられるエポキシ樹脂として、多官能エポキシ樹脂が含まれることが好ましい。多官能エポキシ樹脂は、架橋密度を高められることで、エポキシ樹脂組成物の硬化物の長期使用に対する性能の安定性がさらに向上し、耐熱性も向上する。また、フェノキシ型エポキシ樹脂よりも100℃~150℃の範囲の粘度が低いため、フェノキシ型エポキシ樹脂と組み合わせることで、高弾性透明硬化性樹脂層3の貯蔵弾性率を調整できる。
【0100】
多官能エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製の「YX7700」「157S70」「1032S60」、日本化薬株式会社製の「NC7000L」「XD1000」「EOCN-1020」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の「ESN485」、DIC株式会社製の「N-690」、「N-695」「HP-7200H」等が挙げられる。
【0101】
高弾性透明硬化性樹脂層3における、多官能エポキシ樹脂の配合量は、高弾性透明硬化性樹脂層3総樹脂固形分100質量%に対して、90質量%以下であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、20~70質量%であることがさらに好ましい。上記範囲内であれば、高弾性透明硬化性樹脂層3の熱圧着時の貯蔵弾性率を制御でき、かつ、硬化状態において耐熱性や耐薬品性を付与できる。
【0102】
熱圧着時の十分な流動性を確保する観点から、高弾性透明硬化性樹脂層3には、軟化点又は融点が、120℃以下のエポキシ樹脂が含まれることが好ましい。ハンドリング性や硬化物の耐熱性の観点から、軟化点又は融点が、50~105℃のエポキシ樹脂が含まれることがより好ましい。上記範囲内の軟化点又は融点を有するエポキシ樹脂を含むことで、貯蔵弾性率の制御が可能になる。
【0103】
高弾性透明硬化性樹脂層3における、エポキシ樹脂全体の配合量は、高弾性透明硬化性樹脂層3の総樹脂固形分100質量%に対して、10~100質量%であることが好ましく、30~99質量%であることがより好ましく、50~95質量%であることがさらに好ましい。上記範囲内であると、貯蔵弾性率の制御が可能であり、熱圧着時の低弾性黒色硬化性樹脂層1を押し込む貯蔵弾性率を確保できる。また、熱硬化時の流動を抑制でき、ハジキのような硬化後の外観不良が抑制され、さらには、後工程でエッチング処理を行う場合にも支障が生じにくい。また、上記下限値以上であると、硬化状態において耐熱性が向上する。
【0104】
(エラストマー)
高弾性透明硬化性樹脂層3は、エポキシ樹脂等の樹脂に加えて、エラストマーを含むことが好ましい。エラストマーを含むことにより、貯蔵弾性率の制御が容易となる。
【0105】
エラストマーとしては、低弾性黒色硬化性樹脂層1と同様の種類が挙げられる。中でもエポキシ樹脂との相溶性が良好で、高弾性透明硬化性樹脂層3の150℃付近での貯蔵弾性率を高められ、低弾性透明硬化性樹脂層2との密着性が良好であることから、NBRが好ましい。エラストマーの好ましい重量平均分子量も低弾性黒色硬化性樹脂層1と同様である。
【0106】
特に高弾性透明硬化性樹脂層3がエポキシ樹脂組成物で構成される場合、エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマーを含むことが好ましい。エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマーあれば、エポキシ樹脂の硬化剤としても作用する。また、エポキシ樹脂と反応し結合できるため、耐熱性と熱衝撃への信頼性が向上する。さらに、エポキシ樹脂と反応可能な官能基と樹脂骨格の極性の違いが分散性に良好に作用し、高弾性透明硬化性樹脂層3にカーボンブラックを含有させる場合に良好な分散性が得られる。
【0107】
エポキシ基と反応可能な官能基としては、低弾性黒色硬化性樹脂層1と同様の種類が挙げられる。中でも低温での硬化が可能で、可使時間を確保できることから、酸基又は酸無水物基が好ましく、カルボキシ基又はカルボン酸無水物基が特に好ましい。
【0108】
高弾性透明硬化性樹脂層3は、エポキシ樹脂組成物で構成される場合、カルボキシ基を有する酸変性NBRを含有することが特に好ましい。
カルボキシ基を有する酸変性NBRとしては、低弾性黒色硬化性樹脂層1と同様の種類が挙げられる。
エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマーは2種以上を併用してもよい。
【0109】
高弾性透明硬化性樹脂層3のエラストマーの配合量は、高弾性透明硬化性樹脂層3の総樹脂固形分100質量%に対して、0~50質量%であることが好ましく、1~70質量%であることがより好ましく、5~50質量%であることがさらに好ましい。上記範囲内であると、貯蔵弾性率の制御が可能である。また、上記上限値以下であると、熱圧着時の低弾性黒色硬化性樹脂層を押し込む貯蔵弾性率を確保できる。また、熱硬化時の流動を抑制でき、ハジキのような硬化後の外観不良が抑制され、さらには、後工程でエッチング処理を行う場合にも支障が生じにくい。また、上記下限値以上であると、カーボンブラックの分散性が良好になる。さらに、成膜性が向上し、エポキシ樹脂組成物を塗工して成膜する際の膜厚の分布を狭くできる。
【0110】
(硬化剤)
高弾性透明硬化性樹脂層3がエポキシ樹脂組成物で構成される場合、エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマー以外のその他のエポキシ樹脂用の硬化剤を含んでいてもよい。その他の硬化剤としては、低弾性黒色硬化性樹脂層1及び低弾性透明硬化性樹脂層2と同様の硬化剤が挙げられる。その他の硬化剤は2種以上を併用してもよい。
【0111】
(硬化触媒)
高弾性透明硬化性樹脂層3がエポキシ樹脂組成物で構成される場合、エポキシ樹脂の硬化反応を促進する硬化触媒を含んでもよい。
硬化触媒としては、低弾性黒色硬化性樹脂層1及び低弾性透明硬化性樹脂層2と同様の硬化触媒が挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0112】
硬化触媒の配合量は、高弾性透明硬化性樹脂層3の総樹脂固形分100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.05~4質量部であることがより好ましく、0.1~3質量部であることがさらに好ましい。上記範囲内であると、硬化を十分に進められ、ドライフィルム100の可使時間を確保できる。
硬化触媒は2種以上を併用してもよい。
【0113】
(その他の成分)
高弾性透明硬化性樹脂層3は、発光ムラや色ムラを抑制するために黒色顔料又は黒色染料を含有してもよい。
全光線透過率を高くする観点から、高弾性透明硬化性樹脂層3がカーボンブラックを含む場合、その配合量は、総樹脂固形分100質量部に対して、5質量部未満であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることがさらに好ましい。
高弾性透明硬化性樹脂層3は、さらに必要に応じて、エポキシ樹脂とエラストマー以外の樹脂、増粘剤、消泡剤及び/又はレベリング剤、カップリング剤等の密着性付与剤、難燃剤を用いることができる。
【0114】
<保護フィルム>
第1の保護フィルム6及び第2の保護フィルム7(以下、第1の保護フィルム6及び第2の保護フィルム7を総称して単に「保護フィルム」という場合がある。)は、低弾性黒色硬化性樹脂層1、低弾性透明硬化性樹脂層2及び高弾性透明硬化性樹脂層3を保護する役割を有するものであり、これらの硬化性樹脂層を形成する際には、硬化性樹脂組成物の塗液が塗布されるフィルムとしても使用できる。
【0115】
保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルム、及び、表面処理した紙等を用いることができる。
【0116】
これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムを好適に使用することができる。保護フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが概ね10~150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。保護フィルムの樹脂層を設ける面には、離型処理が施されていてもよい。
【0117】
<ドライフィルムの製造方法>
ドライフィルム100を得るためには、まず、第2の保護フィルム7に高弾性透明硬化性樹脂層3用の硬化性樹脂組成物の塗液を塗布乾燥したものと、離型フィルム上に低弾性透明硬化性樹脂層2用の硬化性樹脂組成物の塗液を塗布乾燥したものを用意する。これらを、高弾性透明硬化性樹脂層3と低弾性透明硬化性樹脂層2が接するようにして重ね、ラミネートし、離型フィルムを剥離することで、低弾性透明硬化性樹脂層2、高弾性透明硬化性樹脂層3と第2の保護フィルム7が順次積層した積層体が得られる。
次に、第1の保護フィルム6に低弾性黒色硬化性樹脂層1用の硬化性樹脂組成物の塗液を塗布乾燥したものを用意する。
【0118】
その後、これらを、低弾性透明硬化性樹脂層2と低弾性黒色硬化性樹脂層1が接するようにして重ね、ラミネートすることにより、第1の保護フィルム6に、低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3と第2の保護フィルム7が順次積層した積層体が得られる。
【0119】
低弾性黒色硬化性樹脂層1用の硬化性樹脂組成物の塗液と低弾性透明硬化性樹脂層2用の硬化性樹脂組成物の塗液と高弾性透明硬化性樹脂層3用の硬化性樹脂組成物の塗液とは、塗布を支障なく行える粘度となる量の有機溶剤を含有することが好ましい。
有機溶剤としては、特に制限はないが、例えば、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などを挙げることができる。具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、2-メトキシプロパノール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等の他、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラクロロエチレン、テレビン油等が挙げられる。
【0120】
なお、カーボンブラックを塗液に配合する際は、カーボンブラック粉末を加えてもよいし、カーボンブラック分散液を加えてもよい。
【0121】
低弾性黒色硬化性樹脂層1用の硬化性樹脂組成物の塗液と低弾性透明硬化性樹脂層2用の硬化性樹脂組成物の塗液と高弾性透明硬化性樹脂層3用の硬化性樹脂組成物の塗液の塗布方法としては、例えば、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等の各種コーターが挙げられる。
乾燥温度は、60~160℃が好ましく、80~130℃が好ましく、90~120℃がさらに好ましい。
【0122】
ラミネート時の温度は、20~120℃が好ましく、30~100℃がより好ましく、40~80℃がさらに好ましい。ラミネート時における温度を好ましい下限値以上とすることにより、低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2との間に未硬化状態又は半硬化状態でもハンドリング可能な密着力を確保できる。また、ラミネート時における温度を好ましい上限値以下とすることにより、気泡の挟み込みや皴の発生を防止できる。
ラミネートは、ロールラミネーター、プレス機、真空プレス機等を用いて行うことができる。
【0123】
<素子付き基板>
素子付き基板10は、
図2に示すように、基板11上に複数の発光素子が配置されたものである。
図2等では、模式的に、3つの発光素子(発光素子12、発光素子13、発光素子14)が配置された部分を示している。
【0124】
基板11の材質に限定はないが、公知のプリント基板を好適に使用できる。公知のプリント基板としては、ガラスエポキシ基板、フッ素樹脂基板、セラミックス基板等が挙げられる。
発光素子は、典型的には、発光ダイオードである。本発明は、発光素子が極小の場合に特に好適に適用できる。
【0125】
例えば、高さが1000nm~200μm、1辺が0.001~0.5mmの発光ダイオードを使用することができる。
ミニLEDやマイクロLEDを得るための素子付き基板10としては、発光素子として、R、G、Bの3色の発光ダイオードを、あるいは発光素子として、青色発光ダイオードを用いることができる。
【0126】
<発光型電子部品の製造方法>
本発明の発光型電子部品の製造方法は、基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板の前記複数の発光素子が配置された面に、本発明のドライフィルム100を、その低弾性黒色硬化性樹脂層1が接するように配置し、熱圧着して前記複数の発光素子の間に低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2及び高弾性透明硬化性樹脂層3の一部を充填し、加熱して低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3を硬化させる方法である。
以下、
図2~6を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る発光型電子部品の製造方法について説明する。
【0127】
本実施形態の製造方法では、まず、
図2に示すように、素子付き基板10の発光素子12、発光素子13、発光素子14が配置された面に、第1の保護フィルム6を剥離して低弾性黒色硬化性樹脂層1が露出したドライフィルム100を、その低弾性黒色硬化性樹脂層1が接するように配置する。
【0128】
このとき、すなわち、圧着前において、低弾性黒色硬化性樹脂層1の厚さは、発光素子の高さに対して10~80%であることが好ましい。上記下限値については、15%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。また、上記上限値については、70%以下であることがより好ましく、65%以下であることがさらに好ましく、55%以下であることが特に好ましい。
【0129】
低弾性黒色硬化性樹脂層1の厚さが発光素子の高さに対して10%以上であると、発光素子間の光拡散を防止する機能が充分となる。低弾性黒色硬化性樹脂層1の厚さが発光素子の高さに対して15%以上であると、発光素子間に樹脂が十分に充填できる。低弾性黒色硬化性樹脂層1の厚さが発光素子の高さに対して30%以上であると、硬化後の低弾性黒色硬化性樹脂層1の膜厚の変化率が小さく、発光型電子部品全体で均一な黒色度を実現できる。
【0130】
低弾性黒色硬化性樹脂層1の厚さが発光素子の高さに対して80%以下であれば、発光素子の傾きや高さに差異があっても輝度の低下を防止でき、発光素子からの光が視認者側に到達することを妨げない。低弾性黒色硬化性樹脂層1の厚さが発光素子の高さに対して70%以下であれば、熱圧着時の低弾性黒色硬化性樹脂層の外部への漏れ出しを防止できる。低弾性黒色硬化性樹脂層1の厚さが発光素子の高さに対して55%以下であれば、光拡散防止機能を有する低弾性黒色硬化性樹脂層1を、発光素子間に適当に充填できる。
【0131】
低弾性透明硬化性樹脂層2の圧着前の厚さは、発光素子の高さに対して10~80%であることが好ましい。上記下限値については、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。また、上記上限値については、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。
【0132】
低弾性透明硬化性樹脂層2の厚さが発光素子の高さに対して10%以上であると、低弾性透明硬化性樹脂層2が低弾性黒色硬化性樹脂層1を複数の発光素子間に十分に押し込むことができる。低弾性透明硬化性樹脂層2の厚さが発光素子の高さに対して15%以上であると、熱圧着時に低弾性黒色硬化性樹脂層1を均一に押し込むことができ、流動した低弾性黒色硬化性樹脂層1の膜厚のブレによる黒色の濃淡の発生が防止できる。低弾性透明硬化性樹脂層2の厚さが発光素子の高さに対して20%以上であると、低弾性黒色硬化性樹脂層1を薄膜化でき、発光素子上に低弾性黒色硬化性樹脂層1がさらに残りにくくなる。
【0133】
低弾性透明硬化性樹脂層2の厚さが発光素子の高さに対して80%以下であると、発光素子の傾きや高さに差異があっても輝度の低下を防止できる。低弾性透明硬化性樹脂層2の厚さが発光素子の高さに対して70%以下であると、熱圧着時の低弾性透明硬化性樹脂層2の外部への漏れ出しを防止できる。
【0134】
高弾性透明硬化性樹脂層3の圧着前の厚さは、発光素子の高さに対して10~500%であることが好ましい。上記下限値については、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。また、上記上限値については、200%以下であることがより好ましく、150%以下であることがさらに好ましい。
【0135】
高弾性透明硬化性樹脂層3の厚さが発光素子の高さに対して10%以上であると、高弾性透明硬化性樹脂層3が、発光素子上の低弾性黒色硬化性樹脂層1を除去でき、発光素子の上に遮蔽性のある低弾性黒色硬化性樹脂層1を残さないことで、発光素子からの光が視認者側に到達することを妨げない。高弾性透明硬化性樹脂層3の厚さが発光素子の高さに対して15%以上であると、熱圧着時に低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2を均一に押し込むことができ、流動した低弾性黒色硬化性樹脂層1の膜厚のブレによる黒色の濃淡の発生が防止できる。高弾性透明硬化性樹脂層3の厚さが発光素子の高さに対して20%以上であると、熱硬化時に低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2が変形しようとする影響を受けづらくなり、外観不良が発生しにくい。
【0136】
高弾性透明硬化性樹脂層3の厚さが発光素子の高さに対して500%以下であると、厚さ方向に対して残留溶剤の濃度差や熱履歴のムラがない均一な膜を製膜できる。高弾性透明硬化性樹脂層3の厚さが発光素子の高さに対して200%以下であると、熱圧着時に発光素子上面付近での高弾性透明硬化性樹脂層3の流動性を高められ、より効率的に低弾性黒色硬化性樹脂層1を発光素子上から除去できる。高弾性透明硬化性樹脂層3の厚さが発光素子の高さに対して150%以下であると、高弾性透明硬化性樹脂層3の全光線透過率を高くできる。
【0137】
低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3の圧着前の合計厚さは、発光素子の高さに対して100~550%であることが好ましく、110~400%であることが好ましく、120~300%であることがより好ましい。
【0138】
低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3の合計厚さが発光素子の高さに対して上記下限値以上であれば、発光素子の間に充分に硬化性樹脂を埋め込むことができる。
低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3の合計厚さが発光素子の高さに対して上記上限値以下であれば、圧着時に厚みムラを生じにくく、表面に外観不良が発生しにくい。
【0139】
低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3の圧着前の合計厚さに対する低弾性黒色硬化性樹脂層1の圧着前の厚さの割合は、3~70%であることが好ましく、5~60%であることがより好ましく、10~50%であることがさらに好ましい。
低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3の合計厚さに対する低弾性黒色硬化性樹脂層1の圧着前の厚さの割合が上記下限値以上であれば、黒色度を高め、ディスプレイのコントラストを十分向上させることができる。上記上限値以下であれば、圧着時に発光素子上に低弾性黒色硬化性樹脂層1が残りにくく、輝度を十分向上させることができる。
【0140】
低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3の圧着前の合計厚さに対する低弾性透明硬化性樹脂層2の圧着前の厚さの割合は、3~70%であることが好ましく、5~60%であることがより好ましく、10~50%であることがさらに好ましい。
低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3の圧着前の合計厚さに対する低弾性透明硬化性樹脂層2の圧着前の厚さの割合が上記下限値以上であれば、低弾性透明硬化性樹脂層2が低弾性黒色硬化性樹脂層1を複数の発光素子間に十分に押し込むことができる。上記上限値以下であれば、発光素子の傾きや高さに差異があっても輝度の低下を防止できる。
【0141】
この
図2の状態で熱圧着して、ドライフィルム100の低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2及び高弾性透明硬化性樹脂層3の一部を、
図3に示すように発光素子間に埋め込む。
このとき、低弾性黒色硬化性樹脂層1が、貯蔵弾性率が低く流動性が確保されているので、発光素子間に充填されやすく、高弾性透明硬化性樹脂層3と低弾性透明硬化性樹脂層2により、発光素子上から除去されやすいので好ましい。
また、低弾性透明硬化性樹脂層2も、貯蔵弾性率が比較的低く流動性が確保されているので、均一に低弾性黒色硬化性樹脂層1を押し込みつつ、発光素子間に充填されやすい。
さらに、高弾性透明硬化性樹脂層3が、貯蔵弾性率を比較的高く、かつ変形可能な範囲に確保されているため、発光素子の傾きや高さに差異がある場合でも、低弾性黒色硬化性樹脂層1を発光素子上から十分に除去しやすい。
【0142】
熱圧着における温度は、80~120℃が好ましく、90~110℃がより好ましい。熱圧着における温度を80℃以上とすることにより、低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2の流動性と高弾性透明硬化性樹脂層3の柔軟性を確保しやすい。また、熱圧着における温度を120℃以下とすることにより、発光素子にダメージを与えにくい。熱圧着における温度を90~110℃にすることにより、より精密に流動性を制御でき、ムラやヒビ様欠点の発生を抑制できる。
【0143】
熱圧着における圧力は、0.05~1.0MPaが好ましく、0.1~0.5MPaがより好ましい。熱圧着における圧力を好ましい下限値以上とすることにより、発光素子上に低弾性黒色硬化性樹脂層1が残らず、発光素子からの光が視認者側に到達することを妨げない。好ましい上限値以下とすることにより、発光素子にダメージを与えにくい。
【0144】
熱圧着は、真空状態で成形が可能な真空プレス機を用いて行うことが好ましい。これにより、得られる発光型電子部品に空気が混入することによる不良を回避しやすい。
【0145】
圧着後、
図4に示すように第2の保護フィルム7を剥離してから、熱硬化させ、
図5に示すように、低弾性黒色硬化性樹脂層1を黒色硬化物層21(硬化状態の低弾性黒色硬化性樹脂層1)とし、低弾性透明硬化性樹脂層2を第1の透明硬化物層22(硬化状態の低弾性透明硬化性樹脂層2)とし、高弾性透明硬化性樹脂層3を第2の透明硬化物層23(硬化状態の高弾性透明硬化性樹脂層3)とする。
その後、
図6に示すように、封止材25で封止する。これにより、発光型電子部品31が得られる。
【0146】
硬化温度は、100~160℃が好ましく、120~150℃がより好ましい。硬化温度を100℃以上とすることにより、低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3を硬化することができる。硬化温度を120℃以上とすることにより、低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3の硬化時間を短縮できる。また、硬化温度を上記上限温度以下とすることにより、発光素子にダメージを与えにくい。
【0147】
硬化時間は、硬化温度にもよるが、30~360分間が好ましく、45~180分間がより好ましい。
硬化温度において、高弾性透明硬化性樹脂層3の貯蔵弾性率が比較的高く、流動性が抑制されているので、硬化後の外観不良が抑制される。
これにより、基板11に複数の発光素子が配された素子付き基板10の発光素子が配置された面に、ドライフィルム100が圧着された発光型電子部品31が得られる。
【0148】
得られた発光型電子部品31において、低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3は、各々硬化して黒色硬化物層21と第1の透明硬化物層22と第2の透明硬化物層23となっており、黒色硬化物層21と第1の透明硬化物層22及び第2の透明硬化物層23の一部は、複数の発光素子間に充填されている。
なお、
図6では、黒色硬化物層21と第1の透明硬化物層22は総て複数の発光素子間に充填され、第2の透明硬化物層23の一部が、複数の発光素子間に充填されている例を示している。
【0149】
《第2実施形態》
<一体型封止シート>
以下第2実施形態に係る一体型封止シート200について説明する。第2実施形態の説明において、第1実施形態におけるものと同様の構成部材には同じ符号を付して図示し、その詳細な説明を省略する。
【0150】
図7に示すように、一体型封止シート200は低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3と封止フィルム層9が積層されて基本的に構成され、
【0151】
本実施形態の一体型封止シート200は、さらに、取り扱いの便宜のため、低弾性黒色硬化性樹脂層1及び封止フィルム層9のいずれか一方もしくは両方の表面に保護フィルムを有していてもよい。
図7には、両方の表面に保護フィルムを有している例を示している。具体的には、第1の保護フィルム6に、低弾性黒色硬化性樹脂層1、低弾性透明硬化性樹脂層2、高弾性透明硬化性樹脂層3、封止フィルム層9、第2の保護フィルム7が順次積層されている。
なお、封止フィルム層9の表面の硬度が充分であれば、第2の保護フィルム7を省略することができる。
【0152】
一体型封止シート200は、圧着時において、
図8に示すように、低弾性黒色硬化性樹脂層1が素子付き基板10に直接接するようにして使用される。
一体型封止シート200を素子付き基板10に圧着して発光型電子部品を得る具体的方法については後述する。素子付き基板10は、第1実施形態における素子付き基板10と同様である。
【0153】
<硬化性樹脂層>
本実施形態における低弾性黒色硬化性樹脂層1、低弾性透明硬化性樹脂層2、及び高弾性透明硬化性樹脂層3は、第1実施形態のドライフィルム100におけるものと同様で、好ましい態様も同様である。
【0154】
<封止フィルム層>
封止フィルム層9は、発光素子を外部からの物理的衝撃や湿度、水分等から保護するための層である。本実施形態の封止フィルム層9は、支持フィルム層4と支持フィルム層4の高弾性透明硬化性樹脂層3と反対側に設けられたハードコート層5とで構成されている。
【0155】
[全光線透過率]
封止フィルム層9は、全体(本実施形態では、支持フィルム層4とハードコート層5とを合わせたもの)の全光線透過率が20~80%であることが好ましく、30~80%であることがより好ましく、40~75%であることがさらに好ましい。
封止フィルム層9の全光線透過率が下限値以上であることにより、視認者側への光の到達が妨げられない。封止フィルム層9の全光線透過率が上限値以下であることにより、黒色度をより確保しやすい。上記範囲内であることで、コントラストがより向上する。
【0156】
[貯蔵弾性率]
封止フィルム層9は、全体(本実施形態では、支持フィルム層4とハードコート層5とを合わせたもの)の100℃における貯蔵弾性率は、1.0×108Pa以上、1.0×1010Pa以下であることが好ましく、1.0×109Pa以上、9.0×109Pa以下であることが好ましく、3.0×109Pa以上、8.0×109Pa以下であることがより好ましい。
【0157】
封止フィルム層9の100℃における貯蔵弾性率が好ましい上限値以下であることにより、素子付き基板10への圧着時に低弾性黒色硬化性樹脂層1等の流動を妨げない適度な柔軟性が得られ、作業性が向上するうえ、圧力によるクラックを防止できる。
【0158】
封止フィルム層9の100℃における貯蔵弾性率が好ましい下限値以上であることにより、素子付き基板10への圧着時に変形しにくく、低弾性黒色硬化性樹脂層1等に確実に圧力を伝えることができ、ハードコート層5に割れや変形などの不具合を生じさせない。
【0159】
<支持フィルム層>
封止フィルム層9における支持フィルム層4は、発光素子を外部からの物理的衝撃や湿度、水分等から保護するための層である。
【0160】
[全光線透過率]
支持フィルム層4単独の全光線透過率は、30~99%であることが好ましく、50~95%であることがより好ましく、70~95%であることがさらに好ましい。
支持フィルム層4単独の全光線透過率が上記下限値以上であることにより、安価な市販品のフィルムを使用できる。
【0161】
[樹脂]
支持フィルム層4は熱可塑性樹脂で構成されていても熱硬化性樹脂で構成されていてもよい。支持フィルム層4を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン2,6-ナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、フェノキシ樹脂、シンジオタクティックポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられ、耐熱性、耐候性、入手のしやすさ、コスト面等から、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン2,6-ナフタレート樹脂、及びポリカーボネート樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂を含むことが好ましい。
これらの樹脂を含むことにより、圧着時の変形を防ぐことができる。
【0162】
[膜厚]
支持フィルム層4の厚みは、10~250μmであることが好ましく、20~200μmであることがより好ましく、25~150μmであることがさらに好ましい。
支持フィルム層4の厚みが好ましい下限値以上であることにより、素子を保護するのに十分な強度を有する。支持フィルム層4の厚みが好ましい上限値以下であることにより、視認性が向上し、コストを抑えることができる。
【0163】
<ハードコート層>
[硬度]
ハードコート層5は、発光型電子部品を傷つきから保護するための層である。
ハードコート層5表面の鉛筆硬度はH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることがさらに好ましい。
【0164】
[表面粗さ]
ハードコート層5表面の表面粗さRaは0.1~1μmであることが好ましく、0.2~1μmであることがより好ましく、0.3~1μmであることがさらに好ましい。
ハードコート層5の表面粗さが好ましい下限値以上であることにより、ハードコート層5表面の反射率を低減することができる。ハードコート層5の表面粗さが好ましい上限値以下であることにより、製造が容易となる。
【0165】
[全光線透過率]
ハードコート層5は、全光線透過率が30~99%となるように調製されることが好ましく、50~99%となるように調製されることがより好ましく、60~99%となるように調製されることがさらに好ましい。
ハードコート層5の全光線透過率が下限値以上であることにより、視認者側への光の到達が妨げられない。
【0166】
[硬化性樹脂組成物]
ハードコート層5は、硬化性樹脂組成物で構成されている。ハードコート層5を構成する硬化性樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂組成物、紫外線硬化性樹脂組成物、電子線硬化性樹脂組成物が挙げられる。中でも紫外線硬化性樹脂組成物が好ましい。
紫外線硬化性樹脂組成物としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられ、これらの一種以上を含むことができる。
熱硬化性樹脂組成物としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられ、これらの一種以上を含むことができる。
【0167】
[微粒子]
ハードコート層5は微粒子を含むことが好ましい。微粒子としては、無機微粒子及び有機微粒子の一方又は両方を使用できる。
無機微粒子としては、シリカ微粒子、チタン微粒子が挙げられる。有機微粒子としてはポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂)、ウレタン樹脂が挙げられる。
中でも、シリカ微粒子が好ましい。微粒子を含むことにより、表面粗さを調整したり、表面硬度を向上させたりすることができる。
【0168】
[膜厚]
ハードコート層5の厚みは、0.5~20μmであることが好ましく、1~10μmであることがより好ましく、1.5~8μmであることがさらに好ましい。
ハードコート層5の厚みが好ましい下限値以上であることにより、十分な硬度を確保できる。ハードコート層5の厚みが好ましい上限値以下であることにより、カール等の不具合を生じさせない。
ハードコート層5は、発光ムラや色ムラを抑制するために黒色顔料又は黒色染料を含有してもよい。
【0169】
[光沢度]
ハードコート層5側の光沢計(JIS-Z-8741)により測定した光沢度は1~50であることが好ましく、3~30であることがより好ましく、5~25であることがさらに好ましい。
ハードコート層5側の光沢度が下限値以上であれば製造が容易である。ハードコート層5の光沢度が好ましい上限値以下であることにより、ディスプレイの視認性が向上する。
【0170】
<半透明樹脂層>
封止フィルム層9は、支持フィルム層4の一方又は両方の面に半透明樹脂層を設けてもよい。半透明樹脂層を設けることにより、ディスプレイの黒色度を高め、コントラストを向上させることができる。
また、支持フィルム層4の視認者側に半透明樹脂層を設けた場合は、支持フィルム層4での外光の乱反射を見えにくくすることができる。
【0171】
[全光線透過率]
半透明樹脂層、全光線透過率が20~80%であることが好ましく、30~80%であることがより好ましく、40~75%であることがさらに好ましい。
半透明樹脂層の全光線透過率が下限値以上であることにより、視認者側への光の到達が妨げられない。半透明樹脂層の全光線透過率が上限値以下であることにより、黒色度が高められ、コントラスト向上効果がより向上する。
【0172】
[全体ヘイズ]
半透明樹脂層は、JIS K 7136に基づく全体ヘイズが7%以上であることが好ましく、10~70%であることがより好ましく、15~65%であることがさらに好ましい。
半透明樹脂層の全体ヘイズが好ましい下限値以上であることにより、支持フィルム層4での外光の乱反射の隠蔽性が向上する。半透明樹脂層の全体ヘイズが好ましい上限値以下であることにより黒色度を高められる。半透明樹脂層の全体ヘイズは、半透明樹脂組成物に含まれるカーボンブラックやフィラー、樹脂の相溶性で調製できる。
【0173】
[貯蔵弾性率]
半透明樹脂層の100℃における貯蔵弾性率は1.0×106Pa以上であることが好ましく、1.0×106Pa以上、1.0×1010Pa以下であることがより好ましく、1.0×107Pa以上、5.0×109Pa以下であることがさらに好ましく、1.0×108Pa以上、5.0×109Pa以下であることが特に好ましい。
【0174】
半透明樹脂層の厚さがばらつくと、黒色度が、面方向で不均一になり斑が生じる恐れがある。半透明樹脂層の100℃における貯蔵弾性率が好ましい下限値以上であることにより、素子付き基板10への圧着時に変形しにくくなり、厚さのばらつきがより生じにくい。そのため、発光ムラや色ムラを抑制することができる。
【0175】
半透明樹脂層の100℃における貯蔵弾性率が好ましい上限値以下であることにより、素子付き基板10への圧着時にクラックの発生を防止しやすい。また、半透明樹脂層と、支持フィルム層4またはハードコート層5との密着性を確保しやすい。
【0176】
[半透明樹脂組成物]
半透明樹脂層は、カーボンブラック等を含有した半透明樹脂組成物のコーティング膜、又はその硬化物で構成することができる。半透明樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物、又は硬化性樹脂組成物であり、熱衝撃や高湿度下での耐久性試験で変形等が発生しにくい観点から硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
【0177】
半透明樹脂組成物に含まれる樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、アクリロニトリルブタジエン共重合体、スチレンブタジエン共重合体、酢酸ビニル樹脂、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
半透明樹脂組成物が硬化性樹脂組成物の場合、変形しづらく、着色が安定する観点から硬化膜であることが好ましい。すなわち、素子付き基板10に圧着する以前から硬化していることが好ましい。
【0178】
<保護フィルム>
第1の保護フィルム6及び第2の保護フィルム7としては、第1実施形態の保護フィルムと同様のものが使用でき、好ましい態様も同様である。
【0179】
<一体型封止シートの製造方法>
一体型封止シート200を得るためには、離型シートに低弾性透明硬化性樹脂層2用の硬化性樹脂組成物の塗液を塗布乾燥したものと、封止フィルム層9に高弾性透明硬化性樹脂層3用の硬化性樹脂組成物の塗液を塗布乾燥したものを用意する。
【0180】
その後、これらを、低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3が接するようにして重ね、ラミネートすることにより、封止フィルム層9に、高弾性透明硬化性樹脂層3と低弾性透明硬化性樹脂層2が順次積層した積層体(1)が得られる。
第2の保護フィルム7は、必要に応じて、この封止フィルム層9の表面に積層する。
【0181】
また、第1の保護フィルム6に低弾性黒色硬化性樹脂層1用の硬化性樹脂組成物の塗液を塗布乾燥したものを用意し、積層体(1)の離型シートを剥離したものと低弾性黒色硬化性樹脂層と低弾性透明硬化性樹脂層2とが接するようにして重ね、ラミネートすることにより、一体型封止シート200が得られる。
【0182】
支持フィルム層4にハードコート層5を形成した封止フィルム層9は、支持フィルム層4の表面に、ハードコート層用コート剤を塗布乾燥し、その後硬化することにより得られる。
封止フィルム層9を、支持フィルム層4に半透明樹脂層とハードコート層5とを順次形成したものとする場合は、支持フィルム層4の表面に、半透明樹脂層用の半透明樹脂組成物の塗液を塗布乾燥した後、ハードコート層用コート剤を塗布乾燥し、その後硬化することにより得られる。
【0183】
また、封止フィルム層9を、支持フィルム層4の一方の面に半透明樹脂層を形成し、他方の面にとハードコート層5とを形成したものとする場合は、支持フィルム層4の一方の面に、半透明樹脂層用の半透明樹脂組成物の塗液を塗布乾燥した後、他方の面にハードコート層用コート剤を塗布乾燥し、その後硬化することにより得られる。
なお、ハードコート層用コート剤の塗布は、半透明樹脂組成物を硬化させた後に行ってもよい。
【0184】
<発光型電子部品の製造方法>
本発明の発光型電子部品の製造方法は、基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板の前記複数の発光素子が配置された面に、本発明の一体型封止シート200を、その低弾性黒色硬化性樹脂層1が接するように配置し、熱圧着して前記複数の発光素子の間に低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2及び高弾性透明硬化性樹脂層3の一部を充填し、加熱してこれらの硬化性樹脂層を硬化させる方法である。
以下、
図8~11を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る発光型電子部品の製造方法について説明する。
【0185】
本実施形態の製造方法では、まず、
図8に示すように、素子付き基板10の発光素子12、発光素子13、発光素子14が配置された面に、第1の保護フィルム6を剥離して低弾性黒色硬化性樹脂層1が露出した一体型封止シート200を、その低弾性黒色硬化性樹脂層1が接するように配置する。
【0186】
このとき、すなわち、圧着前において、低弾性黒色硬化性樹脂層1の厚さ、低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3の合計厚さ、低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3の合計厚さ、各層の厚さの比率等の好ましい態様は、第1実施形態のドライフィルム100を用いた場合について説明したのと同様である。
【0187】
この
図8の状態で熱圧着して、ドライフィルム100の低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2及び高弾性透明硬化性樹脂層3の一部を、
図9に示すように発光素子間に埋め込む。
このとき、低弾性黒色硬化性樹脂層1が、貯蔵弾性率が比較的低く流動性が確保されているので、発光素子による凹凸に追従して、発光素子間に充填されやすく、また、発光素子上に残りにくいので好ましい。
また、低弾性透明硬化性樹脂層2も、貯蔵弾性率が比較的低く流動性が確保されているので、発光素子による凹凸に追従して、低弾性黒色硬化性樹脂層1と共に発光素子間に充填されやすい。
【0188】
熱圧着の温度、圧力等の好ましい条件は第1実施形態のドライフィルム100を用いた場合について説明したのと同様である。
また、第1実施形態と同様に、真空状態で成形が可能な真空プレス機を用いて行うことが好ましい。
【0189】
圧着後、
図10に示すように第2の保護フィルム7を剥離してから、熱硬化させ、
図11に示すように、低弾性黒色硬化性樹脂層1を黒色硬化物層21(硬化状態の低弾性黒色硬化性樹脂層1)とし、低弾性透明硬化性樹脂層2を第1の透明硬化物層22(硬化状態の低弾性透明硬化性樹脂層2)とし、高弾性透明硬化性樹脂層3を第2の透明硬化物層23(硬化状態の高弾性透明硬化性樹脂層3)とする。これにより、発光型電子部品32が得られる。
【0190】
得られた発光型電子部品32において、低弾性黒色硬化性樹脂層1と低弾性透明硬化性樹脂層2と高弾性透明硬化性樹脂層3は、各々硬化して黒色硬化物層21と第1の透明硬化物層22と第2の透明硬化物層23となっており、黒色硬化物層21と第1の透明硬化物層22及び第2の透明硬化物層23の一部は、複数の発光素子間に充填されている。
なお、
図11では、黒色硬化物層21と第1の透明硬化物層22は総て複数の発光素子間に充填され、第2の透明硬化物層23の一部が、複数の発光素子間に充填されている例を示している。
【0191】
《作用効果》
本発明のドライフィルム又は一体型封止シートによれば、圧着時に低弾性黒色硬化性樹脂層と低弾性透明硬化性樹脂層とが柔らかく流動性が得られる一方、高弾性透明硬化性樹脂層が硬いため、圧着の応力を低弾性黒色硬化性樹脂層と低弾性透明硬化性樹脂層とに充分に伝えられ、光素子間に低弾性黒色硬化性樹脂層と低弾性透明硬化性樹脂層とを充分に充填できる。
また、高弾性透明硬化性樹脂層が十分な硬さを有しているため、傾きや高さが異なる発光素子の高さが低く、応力のかかりにくい領域でも、発光素子上の黒色硬化性樹脂層を除去することができる。そのため、発光素子の傾きや高さに発光素子ごとの差異があっても、多大な時間かかるプラズマ処理等のエッチングを行わずに、輝度の低下を抑制できる。
【0192】
本発明の発光型電子部品及び発光型電子部品の製造方法によれば、ドライフィルムの表面側となる高弾性透明硬化性樹脂層が最も硬いため、硬化後の外観不良も抑制できる。一体型封止シートは封止フィルム層が積層されているため、一回の圧着で、封止作業まで完了でき、しかも、発光素子の高さや傾きが異なっていても発光素子上の黒色硬化性樹脂層を除去することができる。そのため、生産コストやエネルギー消費を増大させることなく、十分な輝度と黒色度を有する発光型電子部品を得られる。
【実施例0193】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。なお、以下の説明における配合量は、いずれも固形分換算である。
【0194】
<原料>
各実施例、比較例で使用した原材料の詳細は次の通りである。
[エポキシ樹脂]
・EOCN(登録商標)-1020-55:日本化薬社製、クレゾールノボラック型多官能エポキシ樹脂(固形)、軟化点55.7℃、エポキシ当量195g/eq.。
・EPICLON(登録商標)HP-7200H:DIC社製、シクロペンタジエンノボラック型多官能エポキシ樹脂(固形)、軟化点82℃、エポキシ当量227g/eq.。
・jER(登録商標)YX7200B35:三菱ケミカル社製、フェノキシ型エポキシ樹脂(MEK溶液、固形分35質量%)、ガラス転移温度150℃、エポキシ当量8750g/eq.、重量平均分子量27,218のエポキシ樹脂。
[エラストマー]
・Nipol NX775:日本ゼオン社製、カルボキシ変性ニトリルゴム、重量平均分子量208,000のエラストマー。
【0195】
[硬化触媒]
・キュアゾール(登録商標)2PZ-CN:四国化成社製、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール。
・キュアゾール2E4MZ:四国化成社製、2-エチル-4-メチルイミダゾール。
【0196】
[カーボンブラック]
・Special Black4:ORION ENGINEERED CARBONS社製、ガスブラック、pH3、平均粒子径25nm。
【0197】
[溶剤]
・MEK:純正化学社製、メチルエチルケトン。
・PGM:純正化学社製、プロピレングリコールモノメチルエーテル。
【0198】
[支持フィルム層]
・コスモシャイン(登録商標)A4300:東洋紡社製、PETフィルム、厚さ75μm。
[離形PET]
・1-E:ニッパ社製、厚さ50μm。
・1-TRE:ニッパ社製、厚さ50μm。
【0199】
[ハードコート層用樹脂]
・ACRIT(登録商標)8KX-078:大成ファインケミカル社製、固形分濃度40質量%、UV硬化型アクリルポリマー、重量平均分子量40.000。
【0200】
[微粒子]
・ケミスノー(登録商標)MX-500L:綜研化学社製、架橋アクリル単分散粒子、平均粒子径5μm。
[光ラジカル重合開始剤]
・Omnirad(登録商標)TPO H:IGM Resins B.V.社製。
【0201】
<塗液の調製>
【0202】
[透明硬化性樹脂層用塗液]
表1に示す配合の原料をMEK/PGM=80/20(体積比)の溶剤に混合し、固形分濃度35質量%の透明硬化性樹脂層用塗液(原料3-1~原料3-3)の塗液を調製した。すなわち、表1に示す配合の原料の合計配合量(固形分換算)を、得られる塗液全体に対して35質量%とした。
【0203】
【0204】
[低弾性黒色硬化性樹脂層用塗液]
エポキシ樹脂EPICLON HP-7200H(DIC社製)70質量部と、エラストマーNipol NX775(日本ゼオン社製)30質量部と、硬化触媒キュアゾール2PZ-CN(四国化成社製)3質量部と、カーボンブラックSpecial Black4(ORION ENGINEERED CARBONS社製)4質量部とを、MEK/PGM=80/20(体積比)の溶剤に混合し、固形分濃度35質量%の低弾性黒色硬化性樹脂層用塗液(原料4)を調製した。
【0205】
[半透明樹脂組成物の塗液]
エポキシ樹脂EOCN-1020-55(日本化薬社製)80質量部と、エラストマーNipol NX775(日本ゼオン社製)20質量部と、硬化触媒キュアゾール2E4MZ(四国化成社製)3質量部と、カーボンブラックSpecial Black4(ORION ENGINEERED CARBONS社製)0.5質量部とを、MEK/PGM=80/20(体積比)の溶剤に混合し、固形分濃度25質量%の半透明樹脂組成物(原料1)を調製した。
【0206】
[ハードコート層用コート剤]
ハードコート層用樹脂8KX-078(大成ファインケミカル社製)100質量部と、微粒子ケミスノー MX-500L(綜研化学社製)4.5質量部と、光ラジカル重合開始剤Omnirad TPO H(IGM Resins B.V.社製)0.6質量部とを、MEK/PGM=80/20(体積比)の溶0剤に混合し、固形分濃度25質量%のハードコート層用のコート剤(原料2)を調製した。
【0207】
<各単層の全光線透過率>
コスモシャインA4300(東洋紡社製)の全光線透過率を、日本電色工業社製ヘーズメーターNDH5000を用いて、JIS K 7361に準拠して測定した。
【0208】
コスモシャインA4300(東洋紡社製)に、アプリケータを用いて低弾性透明硬化性樹脂層用塗液と高弾性透明硬化性樹脂層用塗液をそれぞれ乾燥膜厚が25μm(比較例1、2では50μm)となるように塗布し、120℃で5分間乾燥した後、150℃の熱風循環式オーブンで1時間加熱することにより、低弾性透明硬化性樹脂層用塗液又は高弾性透明硬化性樹脂層用塗液を硬化させ、硬化済みの各透明硬化性樹脂層付きフィルムを得た。
得られた硬化済みの透明硬化性樹脂層付きフィルムの全光線透過率を、日本電色工業社製ヘーズメーターNDH5000を用いて、JIS K 7361に準拠し、コスモシャインA4300の透過光を100%として測定した。
各透明硬化性樹脂層の全光線透過率の測定結果を表2、表3に示す。
【0209】
コスモシャインA4300(東洋紡社製)に、アプリケータを用いて低弾性黒色硬化性樹脂層用塗液を乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、120℃で5分間乾燥した後、150℃の熱風循環式オーブンで1時間加熱することにより、低弾性黒色硬化性樹脂層用塗液を硬化させ、硬化済みの低弾性黒色硬化性樹脂層付きフィルムを得た。
得られた硬化済みの低弾性黒色硬化性樹脂層付きフィルムの全光線透過率を、日本電色工業社製ヘーズメーターNDH5000を用いて、JIS K 7361に準拠し、コスモシャインA4300の透過光を100%として測定した。
低弾性黒色硬化性樹脂層の全光線透過率の測定結果を表2、表3に示す。
【0210】
<各単層の貯蔵弾性率>
離形PET 1-E(ニッパ株式会社製、50μm)の離形面上に、アプリケータを用いて低弾性透明硬化性樹脂層用塗液と高弾性透明硬化性樹脂層用塗液と低弾性黒色硬化性樹脂層用塗液をそれぞれ乾燥膜厚が40μmとなるように塗布し、120℃で5分間乾燥した後、離形PET 1-Eを剥離することで、低弾性透明硬化性樹脂層と高弾性透明硬化性樹脂層と低弾性黒色硬化性樹脂層それぞれの単層シートを得た。
【0211】
得られた各単層シートの100℃における貯蔵弾性率を、粘弾性測定装置(TA Instruments社製RSA-G2)を用い、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/minの条件下でJIS K7244に従い測定した。結果を表2、表3に示す。
【0212】
また、得られた高弾性透明硬化性樹脂層の150℃における貯蔵弾性率を、粘弾性測定装置(TA Instruments社製RSA-G2)を用い、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/minの条件下でJIS K7244に従い測定した。結果を表2に示す。
【0213】
<評価用素子付き基板>
エポキシガラス基板上に0.1×0.2mmで高さが65μmのLED発光素子が複数配置されたものを、評価用素子付き基板とした。
【0214】
<ドライフィルム>
[実施例1、2]
離形PET 1-TRE(ニッパ株式会社製、50μm)の離形面上に、アプリケータを用いて表2に示す高弾性透明硬化性樹脂層の塗液(原料3-2又は原料3-3)を乾燥膜厚が25μmとなるように塗布し、120℃で5分間乾燥し、高弾性透明硬化性樹脂層が、離形PETに支持された第1のシートを得た。
【0215】
離形PET 1-E(ニッパ株式会社製、50μm)の離形面上に、アプリケータを用いて低弾性透明硬化性樹脂層の塗液(原料3-1)を乾燥膜厚が25μmとなるように塗布し、120℃で5分間乾燥し、低弾性透明硬化性樹脂層が、離形PETに支持された第2のシートを得た。
【0216】
得られた第1のシートと第2のシートとを低弾性透明硬化性樹脂層と高弾性透明硬化性樹脂層とが接するようにして重ね、60℃のロールラミネーターでラミネートし、第2のシートに用いた離形PET 1-Eを剥離して第3のシートを得た。
【0217】
また、離形PET 1-E(ニッパ株式会社製、50μm)の離形面上に、アプリケータを用いて低弾性黒色硬化性樹脂層の塗液(原料4)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、120℃で5分間乾燥し、低弾性黒色硬化性樹脂層が、離形PETに支持された第4のシートを得た。
【0218】
得られた第3のシートと第4のシートとを低弾性透明硬化性樹脂層と低弾性黒色硬化性樹脂層とが接するようにして重ね、60℃のロールラミネーターでラミネートし、各実施例のドライフィルムを得た。
【0219】
[比較例1]
【0220】
離形PET 1-TRE(ニッパ株式会社製、50μm)の離形面上に、アプリケータを用いて高弾性透明硬化性樹脂層の塗液(原料3-3)を乾燥膜厚が50μmとなるように塗布し、120℃で5分間乾燥し、高弾性透明硬化性樹脂層が、離形PETに支持された第5のシートを得た。
【0221】
また、離形PET 1-E(ニッパ株式会社製、50μm)の離形面上に、アプリケータを用いて低弾性黒色硬化性樹脂層の塗液(原料4)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、120℃で5分間乾燥し、低弾性黒色硬化性樹脂層が、離形PETに支持された第6のシートを得た。
【0222】
得られた第5のシートと第6のシートとを高弾性透明硬化性樹脂層と低弾性黒色硬化性樹脂層とが接するようにして重ね、60℃のロールラミネーターでラミネートし、比較例1のドライフィルムを得た。
【0223】
[ドライフィルムの実装]
各例のドライフィルムの低弾性黒色硬化性樹脂層側の離形PET 1-Eを剥離して、低弾性黒色硬化性樹脂層が評価用素子付き基板のLED発光素子と接するように配置した。
その後真空プレス機にて、真空度100hPa、100℃、0.36MPa、3分間の条件で発光素子の間に、ドライフィルム1を充填し、高弾性透明硬化性樹脂層に接している離形PET 1-TREを剥離した後、150℃のオーブンで1時間加熱して熱硬化させ、各例の発光型電子部品、各10個を得た。
【0224】
[実装後輝度/実装前輝度]
各例の10個の発光型電子部品について、ドライフィルムを実装する前と実装した後の発光型電子部品の輝度をコニカミノルタ製輝度計CA-410を用いて測定し、実装後の輝度を実装前の輝度で除することで実装後輝度/実装前輝度の比率を算出した。10個の発光型電子部品の結果の平均値を表2に示す。
【0225】
【0226】
表2に示すとおり、本発明に係るドライフィルムによれば、全体の輝度の損失を抑制できることが確認できた。
【0227】
<封止フィルム層>
支持フィルム層(コスモシャインA4300:東洋紡社製)の第1の面にバーコーターを用いて、半透明樹脂組成物の塗液を乾燥膜厚が7μmとなるように塗布し、120℃で5分間乾燥した後、80℃の熱風循環式オーブンで72時間加熱することにより、半透明樹脂組成物を硬化した。次いで、半透明樹脂層のフィルム層と反対の面にコロナ処理を施し、バーコーターを用いて、ハードコート層用コート剤を乾燥膜厚が3μmとなるように塗布した。そして、120℃で5分間乾燥した後、400mJ/cm2の紫外線を照射することにより、ハードコート層用コート剤を硬化させた。これにより、半透明樹脂層とハードコート層が支持フィルム層に支持された封止フィルム層を得た。
【0228】
<封止フィルム層の全光線透過率>
得られた封止フィルム層の全光線透過率を、日本電色工業社製ヘーズメーターNDH5000を用いて、JIS K 7361に準拠して測定した。結果を表3に示す。
【0229】
<封止フィルム層の貯蔵弾性率>
得られた封止フィルム層の100℃における貯蔵弾性率を、粘弾性測定装置(TA Instruments社製RSA-G2)を用い、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/minの条件下でJIS K7244に従い測定した。結果を表3に示す。
【0230】
<一体型封止シート>
[実施例3、4]
封止フィルム層における支持フィルム層の第2の面(第1の面と反対側の面)に、アプリケータを用いて表3に示す高弾性透明硬化性樹脂層の塗液(原料3-2又は原料3-3)を乾燥膜厚が25μmとなるように塗布し、120℃で5分間乾燥し、第7の透明硬化性樹脂層が、離形PETに支持された第7のシートを得た。
【0231】
離形PET 1-E(ニッパ株式会社製、50μm)の離形面上に、アプリケータを用いて低弾性透明硬化性樹脂層の塗液(原料3-1)を乾燥膜厚が25μmとなるように塗布した。そして、120℃で5分間乾燥し、離型PET層に低弾性透明硬化性樹脂層が支持された第8のシートを得た。
【0232】
得られた第7のシートと第8のシートとを高弾性透明硬化性樹脂層と第3の低弾性透明硬化性樹脂層とが接するようにして重ね、60℃のロールラミネーターでラミネートし、第8のシートに用いた離形PETを剥離して第9のシートを得た。
【0233】
また、離形PET 1-E(ニッパ株式会社製、50μm)の離形面上に、アプリケータを用いて低弾性黒色硬化性樹脂層の塗液(原料4)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、120℃で5分間乾燥し、低弾性黒色硬化性樹脂層が、離形PETに支持された第10のシートを得た。
【0234】
得られた第9のシートと第10のシートとを低弾性透明硬化性樹脂層と低弾性黒色硬化性樹脂層とが接するようにして重ね、60℃のロールラミネーターでラミネートして、各実施例の一体型封止シートを得た。
【0235】
[比較例2]
封止フィルム層における支持フィルム層の第2の面(第1の面と反対側の面)に、アプリケータを用いて高弾性透明硬化性樹脂層の塗液(原料3-3)を乾燥膜厚が50μmとなるように塗布した。そして、120℃で5分間乾燥し、封止フィルム層に高弾性透明硬化性樹脂層が支持された第11のシートを得た。
【0236】
また、離形PET 1-E(ニッパ株式会社製、50μm)の離形面上に、アプリケータを用いて低弾性黒色硬化性樹脂層の塗液(原料4)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、120℃で5分間乾燥し、低弾性黒色硬化性樹脂層が、離形PETに支持された第12のシートを得た。
【0237】
得られた第11のシートと第12のシートとを高弾性透明硬化性樹脂層と低弾性黒色硬化性樹脂層とが接するようにして重ね、60℃のロールラミネーターでラミネートして、比較例2の一体型封止シートを得た。
【0238】
[一体型封止シートの実装]
各例の一体型封止シートの離形PET 1-Eを剥離して、低弾性黒色硬化性樹脂層が評価用素子付き基板のLED発光素子と接するように配置した。
その後真空プレス機にて、真空度100hPa、100℃、0.36MPa、3分間の条件で発光素子の間に、低弾性黒色硬化性樹脂層と低弾性透明硬化性樹脂層を充填し、150℃のオーブンで1時間加熱して熱硬化させ、各例の発光型電子部品、各10個を得た。
【0239】
[Lab]
各例について得られた10個の発光型電子部品のハードコート層側におけるLab値をコニカミノルタ製 分光測色計CM-5を用いて、JIS K 8722に準拠して測定した。各例について、発光型電子部品10個のLab値を平均した結果を表3に示す。
【0240】
[実装後輝度/実装前輝度]
各例の10個の発光型電子部品について、一体型封止シートを実装する前と実装した後の発光型電子部品の輝度をコニカミノルタ製輝度計CA-410を用いて測定し、実装後の輝度を実装前の輝度で除することで実装後輝度/実装前輝度の比率を算出した。10個の発光型電子部品の結果の平均値を表3に示す。
【0241】
【0242】
表3に示すとおり、本発明に係るドライフィルムによれば、全体の輝度の損失を抑制できることが確認できた。