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特開2024-168733ガスクロマトグラフおよび質量分析計の消耗品の消耗度評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168733
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ガスクロマトグラフおよび質量分析計の消耗品の消耗度評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20241128BHJP
【FI】
G01N27/62 C
G01N27/62 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085638
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(71)【出願人】
【識別番号】506208908
【氏名又は名称】学校法人兵庫医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 智教
(72)【発明者】
【氏名】尾島 典行
(72)【発明者】
【氏名】西海 信
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA06
2G041FA21
2G041HA01
(57)【要約】
【課題】ガスクロマトグラフまたは質量分析計において、試料と接触する位置に設けられた消耗品の消耗度を適切に評価する。
【解決手段】試料と接触する消耗品を備えるガスクロマトグラフに指標物質を含む評価用試料を通過させ、通過してきた該評価用試料を質量分析計で質量分析する分析工程、または、試料と接触する消耗品を備える質量分析計を用いて指標物質を含む評価用試料を質量分析する分析工程と、前記分析工程における質量分析の結果から前記指標物質の信号強度を取得する信号強度取得工程と、前記信号強度取得工程で取得された信号強度と、予め設定された基準信号強度とを比較することにより、前記消耗品の消耗度を評価する評価工程と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と接触する消耗品を備えるガスクロマトグラフに指標物質を含む評価用試料を通過させ、通過してきた該評価用試料を質量分析計で質量分析する分析工程と、
前記分析工程における質量分析の結果から前記指標物質の信号強度を取得する信号強度取得工程と、
前記信号強度取得工程で取得された信号強度と、予め設定された基準信号強度とを比較することにより、前記消耗品の消耗度を評価する評価工程と、
を有するガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法。
【請求項2】
前記消耗品はセプタム、ガラスインサート、またはカラムである、請求項1に記載のガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法。
【請求項3】
前記評価用試料は少なくとも二種類の前記指標物質を含み、
前記信号強度取得工程において、二種類の前記指標物質の信号強度を取得し、
前記評価工程において、前記信号強度取得工程で取得された二種類の前記指標物質の信号強度の比と、予め設定された基準信号強度比とを比較することにより、前記消耗品の消耗度を評価する、請求項2に記載のガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法。
【請求項4】
前記消耗品がガラスインサートであり、
前記信号強度取得工程において、Lactic acid-2TMS、Benzoic acid-TMS、3-Hydroxybutyric acid-2TMS、Pyruvic acid-meto-TMS、2-Hydroxybutyric acid-2TMS、2-Hydroxyisovaleric acid-2TMS、3-Hydroxyisobutyric acid-2TMS、Elaidic acid-TMS、2-Hydroxyisobutyric acid-2TMS、Uric acid-4TMS、1,5-Anhydro-glucitol-4TMS、Margaric acid-TMS、Glycerol-3TMS、Hippuric acid-TMS、3-Hydroxyisovaleric acid-2TMS、Myristic acid-TMS、Urea-2TMS、Stearic acid-TMS、Palmitic acid-TMS、およびOctanoic acid-TMSからなる第1群から選択される一つの指標物質の信号強度と、Glutamine-3TMS、Glutamic acid-3TMS、Phenylalanine-2TMS、Histidine-3TMS、Asparagine-3TMS、Threitol-4TMS、3-Aminoglutaric acid-2TMS、N-Acetyl-Ornithine-4TMS、Cysteine-3TMS、Alanine-2TMS、4-Hydroxyproline-3TMS、およびMethionine-2TMSからなる第2群から選択される一つの指標物質の信号強度を取得する、請求項3に記載のガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法。
【請求項5】
前記消耗品がカラムであり、
前記信号強度取得工程において、2-Hydroxyisobutyric acid-2TMS、Malic acid-3TMS、3-Aminopropanoic acid-3TMS、Gluconic acid-methyloxime-5TMS、Uric acid-4TMS、Glucosamine-5TMS、Hippuric acid-TMS、Fructose-meto-5TMS、Sorbose-meto-5TMS、および2-Aminoadipic acid-3TMSからなる第3群から選択される一つの指標物質の信号強度と、2-Deoxy-glucose-4TMS、Succinic acid-2TMS、Isocitric acid-4TMS、Ornithine-4TMS、Tyramine-3TMS、Ascorbic acid-4TMS、Citric acid-4TMS、Glucose-meto-5TMS、Kynurenine-3TMS、Rhamnose-meto-4TMS、Xylulose-meto-4TMS、Valine-2TMS、Cystine-4TMS、Glutamic acid-3TMS、Phenylalanine-2TMS、Glutamine-3TMS、およびAlanine-2TMSからなる第4群から選択される一つの指標物質の信号強度を取得する、請求項3に記載のガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法。
【請求項6】
前記指標物質が安定同位体標識されたものである、請求項4又は5に記載のガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法。
【請求項7】
請求項4に記載のガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法に用いられる評価用試料であって、
前記第1群から選択される少なくとも一つの指標物質と、前記第2群から選択される少なくとも一つの指標物質とを含む、ガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価用試料。
【請求項8】
請求項5に記載のガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法に用いられる評価用試料であって、
前記第3群から選択される少なくとも一つの指標物質と、前記第4群から選択される少なくとも一つの指標物質とを含む、ガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価用試料。
【請求項9】
試料と接触する消耗品を備える質量分析計を用いて指標物質を含む評価用試料を質量分析する分析工程と、
前記分析工程における質量分析の結果から前記指標物質の信号強度を取得する信号強度取得工程と、
前記信号強度取得工程で取得された信号強度と、予め設定された基準信号強度とを比較することにより、前記消耗品の消耗度を評価する評価工程と、
を有する質量分析計の消耗品の消耗度評価方法。
【請求項10】
前記消耗品はイオン化室またはフィラメントである、請求項9に記載の質量分析計の消耗品の消耗度評価方法。
【請求項11】
前記評価用試料は少なくとも二種類の前記指標物質を含み、
前記信号強度取得工程において、二種類の前記指標物質の信号強度を取得し、
前記評価工程において、前記信号強度取得工程で取得された二種類の前記指標物質の信号強度の比と、予め設定された基準信号強度比とを比較することにより、前記消耗品の消耗度を評価する、請求項9又は10に記載の質量分析計の消耗品の消耗度評価方法。
【請求項12】
前記消耗品がイオン化室であり、
前記信号強度取得工程において、2-Aminoethanol-3TMS、myo-Inositol-6TMS、2-Aminopimelic acid-3TMS、Sorbose-meto-5TMS、3-Aminopropanoic acid-3TMS、Isocitric acid-4TMS、Psicose-meto-5TMS、Glycerol-3TMS、2-Isopropylmalic acid-3TMS、3-Hydroxybutyric acid-2TMS、Inositol-6TMS、Citric acid-4TMS、Uric acid-4TMS、Fructose-meto-5TMS、Glucuronic acid-meto-5TMS、およびArabinose-meto-4TMSからなる第5群から選択される一つの指標物質の信号強度を取得し、2-Aminobutyric acid-2TMS、Phenylalanine-2TMS、Glutamic acid-3TMS、Alanine-2TMS、Isoleucine-2TMS、Leucine-2TMS、Arginine-3TMS、Threonine-3TMS、Glucosamine-5TMS、Serine-3TMS、3-Aminoglutaric acid-2TMS、4-Hydroxyproline-3TM、Cysteine-3TMS、Octanoic acid-TMS、およびCystine-4TMSからなる第6群から選択される一つの指標物質の信号強度を取得する、請求項11に記載の質量分析計の消耗品の消耗度評価方法。
【請求項13】
前記指標物質が安定同位体標識されたものである、請求項12に記載の質量分析計の消耗品の消耗度評価方法。
【請求項14】
請求項12に記載の質量分析計の消耗品の消耗度評価方法に用いる評価用試料であって、
前記第5群から選択される少なくとも一つの指標物質と、前記第6群から選択される少なくとも一つの指標物質とを含む、質量分析計の消耗品の消耗度評価用試料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフおよび質量分析計に用いられる消耗品の消耗度を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフや質量分析計等の分析装置には、構成部品の中に、使用に伴う劣化や汚染などで交換が必要になる、いわゆる消耗品が含まれている。消耗品の交換が適切に行われないと、測定の精度に影響が出る恐れがある。そのため、多くの分析装置や分析装置制御システムには、消耗品の使用状況や交換の目安をユーザーに通知する機能が備わっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、消耗品の使用度(使用時間、使用回数、使用量)を監視し、該使用度、及び消耗品ごとに予め設定された使用度の上限値に基づいて消耗品の交換予定日を算出する分析装置制御システムが記載されている。このシステムでは、算出された交換予定日が消耗品ごとにディスプレイに表示され、交換予定日を過ぎている消耗品に対しては「交換要」とのアラートがさらに表示される。ユーザーはこれらの表示を確認して消耗品の交換を行うことで、分析装置を適正な状態に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-032022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスクロマトグラフの試料気化室に設けられたセプタムやインサート、分離カラム、および質量分析計のイオン化室、該イオン化室のイオン源に設けられたフィラメントなどの消耗品は、測定中、気化あるいはイオン化された試料に曝されている。このような消耗品では、分析装置の使用度だけでなく、測定する試料の性状によっても劣化や汚染の進行度合い(以下「消耗度」とよぶ)が異なる。特許文献1の方法では、そのようなことが考慮されておらず、消耗品の実際の消耗度を評価できていないという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ガスクロマトグラフまたは質量分析計において、試料と接触する位置に設けられた消耗品の消耗度を適切に評価することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係るガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法は、
試料と接触する消耗品を備えるガスクロマトグラフに指標物質を含む評価用試料を通過させ、通過してきた該評価用試料を質量分析計で質量分析する分析工程と、
前記分析工程における質量分析の結果から前記指標物質の信号強度を取得する信号強度取得工程と、
前記信号強度取得工程で取得された信号強度と、予め設定された基準信号強度とを比較することにより、前記消耗品の消耗度を評価する評価工程と、
を有する。
【0008】
また、上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析計の消耗品の消耗度評価方法は、
試料と接触する消耗品を備える質量分析計を用いて指標物質を含む評価用試料を質量分析する分析工程と、
前記分析工程における質量分析の結果から前記指標物質の信号強度を取得する信号強度取得工程と、
前記信号強度取得工程で取得された信号強度と、予め設定された基準信号強度とを比較することにより、前記消耗品の消耗度を評価する評価工程と、
を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガスクロマトグラフまたは質量分析計において、試料と接触する位置に設けられた消耗品の消耗度を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る消耗品の消耗度評価方法の一実施形態において評価を行うガスクロマトグラフ質量分析装置の概略構成図。
図2】上記実施形態の評価手順を示すフローチャート。
図3】ガラスインサートの消耗度評価用指標物質を選定するために実施したクラスター解析の一次解析結果を示す図。
図4A図3におけるクラスターG1の二次解析結果を示す図。
図4B図3におけるクラスターG2、G3の二次解析結果を示す図。
図5】カラムの消耗度評価用指標物質を選定するために実施したクラスター解析の一次解析結果を示す図。
図6図5におけるクラスターC5の二次解析結果を示す図。
図7】イオン化室の消耗度評価用指標物質を選定するために実施したクラスター解析の一次解析結果を示す図。
図8A図7におけるクラスターM1の二次解析結果を示す図。
図8B図7におけるクラスターM3の二次解析結果を示す図。
図9図8AのクラスターM11の三次解析結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る消耗品の消耗度評価方法の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)の消耗品の消耗度評価方法について説明する。なお、本発明の「ガスクロマトグラフ」および「質量分析計」は、ガスクロマトグラフ質量分析装置の一部を構成するガスクロマトグラフおよび質量分析計をそれぞれ含む。
【0012】
図1は、本実施形態において消耗品の消耗度評価を行うGC-MSの概略構成図である。このGC-MSは、ガスクロマトグラフ1と、質量分析計2と、データ処理部3と、記憶部4とを備える。
【0013】
ガスクロマトグラフ1は、微量の液体試料を気化させる試料気化室10と、試料気化室10中に液体試料を注入するマイクロシリンジ11と、試料成分を時間方向に分離するカラム12と、カラム12を温調するカラムオーブン13とを備える。試料気化室10の内部にはガラスインサート101が収容され、その上部はセプタム102で密封されている。
【0014】
質量分析計2は、例えばトリプル四重極質量分析計であり、図示しない真空ポンプにより真空排気される分析室20の内部に、測定対象である化合物がイオン化されるイオン化室21と、イオンを収束しつつ輸送するイオンレンズ22と、4本のロッド電極からなる前段四重極マスフィルタ23と、内部に多重極イオンガイド24が配置されたコリジョンセル25と、後段四重極マスフィルタ26と、入射したイオンの量に応じたイオン強度信号を検出信号として出力する検出器27とを備える。コリジョンセル25の内部には、アルゴンや窒素などの不活性化ガスであるコリジョンガスが連続的に又は断続的に供給される。イオン化室21は測定対象である化合物を電子イオン化法によりイオン化するイオン源(図示せず)を備え、該イオン源には熱電子を生成するフィラメント211が設けられている。
【0015】
ガスクロマトグラフ1においては、ヘリウム等のキャリアガスが一定流量で試料気化室10を経てカラム12に供給される。マイクロシリンジ11から試料気化室10に微量の液体試料が注入されると、液体試料は試料気化室10内で瞬時に気化し、キャリアガス流に乗ってカラム12に導入される。そして、カラムオーブン13により温調されたカラム12を通過する間に、試料に含まれる各種成分は分離され、時間的にずれてカラム12の出口から流出する。
【0016】
カラム12から流出する試料ガスは、質量分析計2のイオン化室21に導入される。試料ガスに含まれる成分分子はフィラメント211から発生する熱電子と衝突することにより順次イオン化される。 イオン化された成分分子は、SIM(選択イオンモニタリング)測定、プロダクトイオンスキャン測定、MRM(多重反応モニタリング)測定等の各種モニタリングモードおよびスキャンモードにより質量分析される。
【0017】
例えば、SIM測定では、前段四重極マスフィルタ23ではイオンを選別せず(マスフィルタとして機能させず)、後段四重極マスフィルタ26を通過させるイオンの質量電荷比を固定してイオンを検出する。一方、プロダクトイオンスキャン測定及びMRM測定では、前段四重極マスフィルタ23及び後段四重極マスフィルタ26の両方をマスフィルタとして機能させる。前段四重極マスフィルタ23ではプリカーサイオンとして設定されたイオンのみを通過させる。また、コリジョンセル25の内部にコリジョンガスを供給し、プリカーサイオンを開裂させてプロダクトイオンを生成する。MS/MSスキャン測定では後段四重極マスフィルタ26を通過するイオンの質量電荷比を走査し、MRM測定では後段四重極マスフィルタ26を通過するイオンの質量電荷比を固定する。後段四重極マスフィルタ26を通過したイオンは検出器27により検出される。
【0018】
データ処理部3は、機能ブロックとして、データ格納部30、クロマトグラム作成部31、ピーク検出部32、ピーク面積比計算部33、および評価処理部34を備える。また、データ処理部3は記憶部4に接続されている。これら各部の詳細は後述する。
【0019】
データ処理部3および記憶部4の実体は例えばパーソナルコンピュータであり、該コンピュータに予めインストールされた専用の制御・処理ソフトウェアをコンピュータ上で動作させることにより、各機能を実現するものとすることができる。
【0020】
ガスクロマトグラフ1のガラスインサート101、セプタム102、およびカラム12、ならびに質量分析計2のイオン化室21、およびフィラメント211は分析時に試料が接触する消耗品であり、本実施形態に係る消耗度評価方法の評価対象である。以下、本実施形態に係る消耗度評価方法の評価手順を図2のフローチャートを参照しつつ説明する。以下の説明では二種類の指標物質を使って消耗品の消耗度を評価することとしたが、消耗度の評価に用いる指標物質は一種類でもよく、三種類以上でもよい。
【0021】
ステップS1において、或る消耗品に対応する二種類の指標物質を含む評価用試料を用意する。評価したい消耗品が複数ある場合は、それぞれの消耗品に対応する二種類の指標物質を含む評価用試料を用意する。指標物質の詳細は後述する。ステップS2において、評価対象の消耗品を備えるGC-MSを用いて評価用試料の質量分析を行う。ステップS3において、ステップS2で得られた質量分析の結果から、二種類の指標物質の信号強度を取得する。ステップS4において、取得された二種類の指標物質の信号強度の比を計算する。ステップS5において、計算された信号強度の比と、評価対象の消耗品を交換する目安として予め設定された基準信号強度比とを比較することにより、当該消耗品の消耗度を評価する。評価したい消耗品が複数ある場合は、ステップS3~ステップS5の各処理を消耗品ごとに行う。
【0022】
上述したGC-MSでは、ステップS3~ステップS5がデータ処理部3のピーク検出部32、ピーク面積比計算部33、評価処理部34により実施される。また、各消耗品に対応する指標物質に関する情報(指標物質の種類、指標物質由来のイオンの質量電荷比の値、保持時間)、および基準信号強度比が記憶部4に記憶されているものとする。
【0023】
具体的には、質量分析計2の検出器27から出力される検出信号データはデータ処理部3のデータ格納部30に一旦格納される。分析が終了すると、クロマトグラム作成部31は、データ格納部30から評価用試料のデータを読み出し、該データに基づいて指標物質に特徴的な特定の質量電荷比におけるマスクロマトグラムを、二種類の指標物質それぞれについて作成する。ピーク検出部32は、それらマスクロマトグラムにおいて予め設定されている保持時間付近のピークをそれぞれ検出し、検出したピークのピーク面積を二種類の指標物質の信号強度として計算する。ピーク面積比計算部33は、ピーク検出部32により計算された二種類の指標物質のピーク面積の比を計算する。評価処理部34は、これら二種類の指標物質において予め設定された基準ピーク面積比(基準信号強度比)を記憶部4から読み出し、ピーク面積比計算部33により計算されたピーク面積比と該基準ピーク面積比とを比較する。
【0024】
指標物質としては、消耗品の劣化や汚染の進行度合いに応じて信号強度が変化(増大、減少)するか、あるいは変化しないかが予め確認された物質を用いることができる。例えば、指標物質は血漿中の代謝成分の中から選ばれる。具体的には、ガスクロマトグラフとトリプル四重極質量分析計が接続されたGC-MSを用い、まず未使用の消耗品を用いて血漿試料を測定する。その後、通常の測定を行うことにより該当の消耗品の使用回数を変えた条件で血漿試料を測定する。このとき、該当の消耗品以外の消耗品は、その都度、新しいものと交換して測定を行い、該当の消耗品の使用回数以外のその他の条件を同じに揃えておく。こうして得られた測定結果から、血漿試料中の代謝成分に由来するマスクロマトグラムのピークの信号強度(ピーク面積)の値の変化を確認する。
【0025】
例として、ガラスインサート101の使用回数を変えて上述した測定を行い、初回の信号強度に対する、使用回数を変更した場合の信号強度の変化率を求め、該変化率に基づきクラスター解析によるグループ化を行った結果を図3図4A、4Bに示す。図3は一次解析の結果を示し、G1~G10は各一次クラスターを表す。図4A図3のクラスターG1における二次解析の結果を示し、G11~G15は各二次クラスターを表す。図4B図3のクラスターG2,G3における二次解析の結果を示し、G21~G24は各二次クラスターを表す。また、表1に、クラスターG13~G15、G6、G22~24におけるガラスインサート101の使用回数を変えたときの信号強度(ピーク面積)の変化率をまとめた表を示す。変化率は、各クラスターに含まれる成分の変化率を足し合わせ、それを成分数で割った平均値を示す。以下、同様とする。
【0026】
【表1】
【0027】
クラスターG13~G15、およびクラスターG6に含まれる化合物では、ガラスインサート101の使用回数が増えると信号強度が増加する傾向があった。一方、クラスターG22~G24では、使用回数が増えると検出強度が減少する傾向があった。
【0028】
同様に、カラム12の使用回数を変え、信号強度の変化率に基づきクラスター解析によるグループ化を行った結果を図5、6に示す。図5は一次解析の結果を示し、C1~C10は各一次クラスターを表す。図6図5のクラスターC5における二次解析の結果を示し、C51~C53は各二次クラスターを示す。また、表2に、クラスターC2~C4、C53、C9、C10におけるカラム12の使用回数を変えたときの信号強度の変化率をまとめた表を示す。
【0029】
【表2】
【0030】
解析の結果、クラスターC2、C3、C53では、カラム12の使用回数が増えても信号強度はあまり変わらなかった。一方、クラスターC4、C9、C10では使用回数が増えるにつれ、信号強度が増加する傾向があった。
【0031】
同様に、イオン化室21の使用回数を変え、信号強度の変化率に基づきクラスター解析によるグループ化を行った結果を図7図8A、8B、図9に示す。図7は一次解析の結果を示し、M1~M10は各一次クラスターを表す。図8A図7のクラスターM1における二次解析の結果を示し、M11~M14は各二次クラスターを表す。図8B図7のクラスターM3における二次解析の結果を示し、M31~M33は各二次クラスターを表す。図9は、図8AのクラスターM11における三次解析の結果を示し、M111~M116は各三次クラスターを表す。また、表3に、クラスターM111~M113、M32、M33、M4におけるイオン化室21の使用回数を変えたときの検出強度の変化率をまとめた表を示す。
【0032】
【表3】
【0033】
解析の結果、クラスターM111~M113では、イオン化室21の使用回数が増えても信号強度はあまり変わらなかった。一方、クラスターM32、M33、M4では使用回数が増えるにつれ、信号強度が減少する傾向があった。
【0034】
以上の解析結果から、消耗品の使用回数を変えたときの信号強度の変化傾向がそれぞれ異なる二種類の指標物質を用い、それらに由来するピークの信号強度の比を求めることにより、該信号強度比に基づいて各消耗品の消耗度を評価することができると考えられる。
【0035】
したがって、図3図4A、4Bより、ガラスインサート101の評価に用いる評価用試料は、検出強度の増加傾向が確認された、(クラスターG13):Lactic acid-2TMS、2-Hydroxybutyric acid-2TMS、3-Hydroxybutyric acid-2TMS、2-Hydroxyisovaleric acid-2TMS、3-Hydroxyisobutyric acid-2TMS、Pyruvic acid-meto-TMS、Elaidic acid-TMS、Uric acid-4TMS、1,5-Anhydro-glucitol-4TMS、Benzoic acid-TMS、2-Hydroxyisobutyric acid-2TMS、(クラスターG14):Margaric acid-TMS、(クラスターG15):Glycerol-3TMS、Hippuric acid-TMS、3-Hydroxyisovaleric acid-2TMS、Myristic acid-TMS、および(クラスターG6):Urea-2TMS、Octanoic acid-TMS、Stearic acid-TMS、Palmitic acid-TMSからなる第1群から選択される少なくとも一つの化合物と、検出強度の減少傾向が確認された、(クラスターG22):Glutamine-3TMS、Histidine-3TMS、Threitol-4TMS、Glutamic acid-3TMS、Phenylalanine-2TMS、3-Aminoglutaric acid-2TMS、Asparagine-3TMS、(クラスターG23):Cysteine-3TMS、Methionine-2TMS、4-Hydroxyproline-3TMS、および(クラスターG24):N-Acetyl-Ornithine-4TMS、Alanine-2TMSからなる第2群から選択される少なくとも一つの化合物とを指標物質として含むことが好ましい。なお、TMS、metoはそれぞれトリメチルシリル(trimethylsilyl)化、メトキシム(methoxim)化されていることを表す。以下、同様である。
【0036】
また、図5図6より、カラム12の評価に用いる評価用試料は、検出強度が変化しないことが確認された、(クラスターC2):2-Hydroxyisobutyric acid-2TMS、Uric acid-4TMS、3-Aminopropanoic acid-3TMS、Malic acid-3TMS、Gluconic acid-methyloxime-5TMS、(クラスターC3):Glucosamine-5TMS、Hippuric acid-TMS、および(クラスターC53):Fructose-meto-5TMS、Sorbose-meto-5TMS、2-Aminoadipic acid-3TMSからなる第3群から選択される少なくとも一つの化合物と、検出強度の増加傾向が確認された、(クラスターC4):2-Deoxy-glucose-4TMS、Ornithine-4TMS、Tyramine-3TMS、Succinic acid-2TMS、Isocitric acid-4TMS、Valine-2TMS、Citric acid-4TMS、Glucose-meto-5TMS、Ascorbic acid-4TMS、Rhamnose-meto-4TMS、Kynurenine-3TMS、Xylulose-meto-4TMS、(クラスターC9):Cystine-4TMS、Glutamic acid-3TMS、Phenylalanine-2TMS、Glutamine-3TMS、および(クラスターC10):Alanine-2TMSからなる第4群から選択される少なくとも一つの化合物とを指標物質として含むことが好ましい。
【0037】
図7図8A、8B、図9より、イオン化室21の評価に用いる評価用試料は、検出強度が変化しないことが確認された、(クラスターM111):2-Aminoethanol-3TMS、2-Aminopimelic acid-3TMS、Sorbose-meto-5TMS、myo-Inositol-6TMS、Psicose-meto-5TMS、3-Aminopropanoic acid-3TMS、Isocitric acid-4TMS、(クラスターM112):Glycerol-3TMS、3-Hydroxybutyric acid-2TMS、Inositol-6TMS、2-Isopropylmalic acid-3TMS、Citric acid-4TMS、および(クラスターM113):Uric acid-4TMS、Fructose-meto-5TMS、Glucuronic acid-meto-5TMS、Arabinose-meto-4TMSからなる第5群から選択される少なくとも一つの化合物と、検出強度の減少傾向が確認された、(クラスターM32):2-Aminobutyric acid-2TMS、Alanine-2TMS、Phenylalanine-2TMS、Glutamic acid-3TMS、Isoleucine-2TMS、Leucine-2TMS、Arginine-3TMS、(クラスターM33):Threonine-3TMS、Serine-3TMS、4-Hydroxyproline-3TM、3-Aminoglutaric acid-2TMS、Glucosamine-5TMS(1)、および(クラスターM4):Cysteine-3TMS、Cystine-4TMS、Octanoic acid-TMSからなる第6群から選択される少なくとも一つの化合物とを指標物質として含むことが好ましい。
【0038】
セプタム102、フィラメント211についても、上述したのと同様の方法により指標物質を選定することができる。また、評価用試料には、ガラスインサート101の評価用指標物質、セプタム102の評価用指標物質、カラム12の評価用指標物質、イオン化室21の評価用指標物質、フィラメント211の評価用指標物質の全てが含まれていてもよく、任意の組み合わせの消耗品の評価用指標物質が含まれていてもよい。
【0039】
本実施形態に係る消耗品の消耗度評価方法によれば、消耗品の劣化や汚染の状態を適切に評価することができる。また、評価用試料中に、複数の消耗品の評価用指標物質が含まれる場合は、一度の測定で、複数の消耗品についての消耗度を評価することができる。例えば、ガスクロマトグラフまたは質量分析計の測定感度が低下してきたときに、そのような複数の消耗品の評価用指標物質が含まれる評価用試料について質量分析を行えば、どの消耗品の消耗度が大きいかを一度に評価することができ、感度低下の原因を容易に特定することができる。
【0040】
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜に変更することができる。
【0041】
例えば上記実施形態では、消耗品の使用に伴う信号強度の変化の傾向がそれぞれ異なる二種類の指標物質を含む評価用試料を測定し、それらの指標物質に対応するピークの面積値の比に基づいて消耗品の消耗度を評価したが、信号強度が変化することが確認されている一種類の指標物質を含む評価用試料を質量分析することにより消耗度の評価を行ってもよい。具体的には、消耗品の使用により信号強度が変化することが確認されている指標物質について、作成されたマスクロマトグラムからピークを検出し、該ピークの面積値と予め設定された基準面積値とを比較することにより、消耗度の評価を行う。
【0042】
また、指標物質は安定同位体(重水素、炭素13など)で標識されたものであってもよい。そのような指標物質を用いれば、通常の測定試料に該指標物質を混合して測定しても、測定試料中に含まれる指標物質と、標識された指標物質を質量分析により区別することができる。
【0043】
[態様]
上述した例示的な実施形態が以下の態様の具体例であることは、当業者には明らかである。
【0044】
(第1項)本発明の一態様に係るガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法は、
試料と接触する消耗品を備えるガスクロマトグラフに指標物質を含む評価用試料を通過させ、通過してきた該評価用試料を質量分析計で質量分析する分析工程と、
前記分析工程における質量分析の結果から前記指標物質の信号強度を取得する信号強度取得工程と、
前記信号強度取得工程で取得された信号強度と、予め設定された基準信号強度とを比較することにより、前記消耗品の消耗度を評価する評価工程と、
を有する。
【0045】
(第2項)第1項に係るガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法において、
前記消耗品はセプタム、ガラスインサート、またはカラムであってもよい。
【0046】
第1項または第2項に係るガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法によれば、ガスクロマトグラフにおいて試料と接触する消耗品の消耗度を適切に評価することができる。
【0047】
(第3項)第1項または第2項に係るガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法において、
前記評価用試料は少なくとも二種類の前記指標物質を含み、
前記信号強度取得工程において、二種類の前記指標物質の信号強度を取得し、
前記評価工程において、前記信号強度取得工程で取得された二種類の前記指標物質の信号強度の比と、予め設定された基準信号強度比とを比較することにより、前記消耗品の消耗度を評価するものであってもよい。
【0048】
(第4項)第3項に係るガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法において、
前記消耗品がガラスインサートであり、
前記信号強度取得工程において、Lactic acid-2TMS、Benzoic acid-TMS、3-Hydroxybutyric acid-2TMS、Pyruvic acid-meto-TMS、2-Hydroxybutyric acid-2TMS、2-Hydroxyisovaleric acid-2TMS、3-Hydroxyisobutyric acid-2TMS、Elaidic acid-TMS、2-Hydroxyisobutyric acid-2TMS、Uric acid-4TMS、1,5-Anhydro-glucitol-4TMS、Margaric acid-TMS、Glycerol-3TMS、Hippuric acid-TMS、3-Hydroxyisovaleric acid-2TMS、Myristic acid-TMS、Urea-2TMS、Stearic acid-TMS、Palmitic acid-TMS、およびOctanoic acid-TMSからなる第1群から選択される一つの指標物質の信号強度と、Glutamine-3TMS、Glutamic acid-3TMS、Phenylalanine-2TMS、Histidine-3TMS、Asparagine-3TMS、Threitol-4TMS、3-Aminoglutaric acid-2TMS、N-Acetyl-Ornithine-4TMS、Cysteine-3TMS、Alanine-2TMS、4-Hydroxyproline-3TMS、およびMethionine-2TMSからなる第2群から選択される一つの指標物質の信号強度を取得するものであってもよい。
【0049】
(第5項)第3項に係るガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法において、
前記消耗品がカラムであり、
前記信号強度取得工程において、2-Hydroxyisobutyric acid-2TMS、Malic acid-3TMS、3-Aminopropanoic acid-3TMS、Gluconic acid-methyloxime-5TMS、Uric acid-4TMS、Glucosamine-5TMS、Hippuric acid-TMS、Fructose-meto-5TMS、Sorbose-meto-5TMS、および2-Aminoadipic acid-3TMSからなる第3群から選択される一つの指標物質の信号強度と、2-Deoxy-glucose-4TMS、Succinic acid-2TMS、Isocitric acid-4TMS、Ornithine-4TMS、Tyramine-3TMS、Ascorbic acid-4TMS、Citric acid-4TMS、Glucose-meto-5TMS、Kynurenine-3TMS、Rhamnose-meto-4TMS、Xylulose-meto-4TMS、Valine-2TMS、Cystine-4TMS、Glutamic acid-3TMS、Phenylalanine-2TMS、Glutamine-3TMS、およびAlanine-2TMSからなる第4群から選択される一つの指標物質の信号強度を取得するものであってもよい。
【0050】
第3項~第5項のいずれかに係るガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法によれば、二種類の指標物質の信号強度の比に基づいて消耗度を評価するため、信号強度の変化が見えやすくなり、より適切に消耗品の消耗度を評価することができる。
【0051】
(第6項)第4項又は第5項に係るガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法において、
前記指標物質が安定同位体標識されたものであってもよい。
【0052】
第6項に係るガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法によれば、通常の測定試料に指標物質を混合して測定する場合でも、適切に消耗品の消耗度を評価することができる。
【0053】
(第7項)本発明の一態様に係るガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価用試料は、 第4項に係るガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法に用いられる評価用試料であって、
前記第1群から選択される少なくとも一つの指標物質と、前記第2群から選択される少なくとも一つの指標物質とを含む。
【0054】
(第8項)本発明の一態様に係るガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価用試料は、 第5項に係るガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価方法に用いられる評価用試料であって、
前記第3群から選択される少なくとも一つの指標物質と、前記第4群から選択される少なくとも一つの指標物質とを含む。
【0055】
第7項又は第8項に係るガスクロマトグラフの消耗品の消耗度評価用試料によれば、ガスクロマトグラフにおいて試料と接触する消耗品の消耗度を適切に評価することができる。
【0056】
(第9項)本発明の一態様に係る質量分析計の消耗品の消耗度評価方法は、
試料と接触する消耗品を備える質量分析計を用いて指標物質を含む評価用試料を質量分析する分析工程と、
前記分析工程における質量分析の結果から前記指標物質の信号強度を取得する信号強度取得工程と、
前記信号強度取得工程で取得された信号強度と、予め設定された基準信号強度とを比較することにより、前記消耗品の消耗度を評価する評価工程と、
を有する。
【0057】
(第10項)第9項に係る質量分析計の消耗品の消耗度評価方法において、
前記消耗品はイオン化室またはフィラメントであってもよい。
【0058】
第9項又は第10項に係る質量分析計の消耗品の消耗度評価方法によれば、質量分析計において試料と接触する消耗品の消耗度を適切に評価することができる。
【0059】
(第11項)第9項又は第10項に係る質量分析計の消耗品の消耗度評価方法において、
前記評価用試料は少なくとも二種類の前記指標物質を含み、
前記信号強度取得工程において、二種類の前記指標物質の信号強度を取得し、
前記評価工程において、前記信号強度取得工程で取得された二種類の前記指標物質の信号強度の比と、予め設定された基準信号強度比とを比較することにより、前記消耗品の消耗度を評価するものであってもよい。
【0060】
(第12項)第11項に係る質量分析計の消耗品の消耗度評価方法において、
前記消耗品がイオン化室であり、
前記信号強度取得工程において、2-Aminoethanol-3TMS、myo-Inositol-6TMS、2-Aminopimelic acid-3TMS、Sorbose-meto-5TMS、3-Aminopropanoic acid-3TMS、Isocitric acid-4TMS、Psicose-meto-5TMS、Glycerol-3TMS、2-Isopropylmalic acid-3TMS、3-Hydroxybutyric acid-2TMS、Inositol-6TMS、Citric acid-4TMS、Uric acid-4TMS、Fructose-meto-5TMS、Glucuronic acid-meto-5TMS、およびArabinose-meto-4TMSからなる第5群から選択される一つの指標物質の信号強度を取得し、2-Aminobutyric acid-2TMS、Phenylalanine-2TMS、Glutamic acid-3TMS、Alanine-2TMS、Isoleucine-2TMS、Leucine-2TMS、Arginine-3TMS、Threonine-3TMS、Glucosamine-5TMS、Serine-3TMS、3-Aminoglutaric acid-2TMS、4-Hydroxyproline-3TM、Cysteine-3TMS、Octanoic acid-TMS、およびCystine-4TMSからなる第6群から選択される一つの指標物質の信号強度を取得するものであってもよい。
【0061】
第11項又は第12項に係る質量分析計の消耗品の消耗度評価方法によれば、二種類の指標物質の信号強度の比に基づいて消耗度を評価するため、信号強度の変化が見えやすくなり、より適切に消耗品の消耗度を評価することができる。
【0062】
(第13項)第12項に係る質量分析計の消耗品の消耗度評価方法において、
前記指標物質が安定同位体標識されたものであってもよい。
【0063】
第13項に係る質量分析計の消耗品の消耗度評価方法によれば、通常の測定試料に指標物質を混合して測定する場合でも、適切に消耗品の消耗度を評価することができる。
【0064】
(第14項)本発明の一態様に係る質量分析計の消耗品の消耗度評価用試料は、
第12項に係る質量分析計の消耗品の消耗度評価方法に用いる評価用試料であって、 前記第5群から選択される少なくとも一つの指標物質と、前記第6群から選択される少なくとも一つの指標物質とを含むものであってもよい。
【0065】
第14項に係る質量分析計の消耗品の消耗度評価用試料によれば、質量分析計において試料と接触する消耗品の消耗度を適切に評価することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…ガスクロマトグラフ
10…試料気化室
101…ガラスインサート
102…セプタム
11…マイクロシリンジ
12…カラム
13…カラムオーブン
2…質量分析計
20…分析室
21…イオン化室
211…フィラメント
22…イオンレンズ
23…前段四重極マスフィルタ
24…多重極イオンガイド
25…コリジョンセル
26…後段四重極マスフィルタ
27…検出器
3…データ処理部
30…データ格納部
31…クロマトグラム作成部
32…ピーク検出部
33…ピーク面積比計算部
34…評価処理部
4…記憶部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9