(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168736
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ヒドリドイオン導電デバイス及びヒドリドイオン導電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 3/00 20060101AFI20241128BHJP
C01F 17/30 20200101ALI20241128BHJP
C01F 11/00 20060101ALI20241128BHJP
C01B 6/04 20060101ALI20241128BHJP
H01M 8/1016 20160101ALN20241128BHJP
【FI】
C01B3/00 A
C01F17/30
C01F11/00
C01B6/04
H01M8/1016
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085653
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】中 具道
【テーマコード(参考)】
4G076
4G140
5H126
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AA19
4G076AA30
4G076CA10
4G076DA04
4G076DA30
4G140AA32
4G140AA45
4G140AA46
5H126AA03
5H126BB06
5H126HH00
5H126JJ03
(57)【要約】
【課題】潮解の抑制が可能なヒドリドイオン導電デバイス及びヒドリドイオン導電デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係るヒドリドイオン導電デバイスは、第1層と、第1保護層と、第2保護層と、導電層と、を含む。前記第1層は、ヒドリドイオン導電材料を含む。前記第1層は、上方向に突出する凸部を有する。前記第1保護層は、前記第1層の上に設けられる。前記第1保護層は、前記上方向と交差する第1方向において前記凸部の上端と並び前記第1方向に延在する上面を有する。前記第2保護層は、前記第1層の上、および、前記第1保護層の上に設けられる。前記導電層は、前記第2保護層の上に設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドリドイオン導電材料を含み、上方向に突出する凸部を有する第1層と、
前記第1層の上に設けられた第1保護層であって、前記上方向と交差する第1方向において前記凸部の上端と並び前記第1方向に延在する上面を有する第1保護層と、
前記第1層の上および前記第1保護層の上に設けられた第2保護層と、
前記第2保護層の上に設けられた導電層と、
を備えたヒドリドイオン導電デバイス。
【請求項2】
前記第2保護層は、前記第1保護層よりも薄い、請求項1に記載のヒドリドイオン導電デバイス。
【請求項3】
前記第1保護層の前記上面の粗さは、前記第1層の上面の粗さよりも小さい、請求項1に記載のヒドリドイオン導電デバイス。
【請求項4】
前記第1保護層の前記上面の算術平均粗さRaは、10μm以下である、請求項3記載のヒドリドイオン導電デバイス。
【請求項5】
ヒドリドイオン導電材料を含み上方向に突出する凸部を有する第1層の上に、前記凸部の高さよりも厚い第1保護層を形成する第1積層工程と、
前記第1保護層の上面を研磨して平坦化する研磨工程と、
研磨した前記第1保護層の前記上面の上に第2保護層を形成する第2積層工程と、
を備えたヒドリドイオン導電デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記研磨工程は、前記上方向と交差する第1方向において第1保護層の上面が前記凸部の上端と並ぶように、前記第1保護層を研磨する、請求項5記載のヒドリドイオン導電デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記第1積層工程、前記研磨工程及び前記第2積層工程は、前記ヒドリドイオン導電材料の潮解を抑制するように除湿された第1雰囲気下で実行される、請求項5または6に記載のヒドリドイオン導電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ヒドリドイオン導電デバイス及びヒドリドイオン導電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドリドイオン(水素の陰イオンH-)が内部で移動可能なヒドリドイオン導電材料が開発されている。ヒドリドイオン導電材料は、ヒドリドイオンに対する高いイオン導電性を有する。そのため、ヒドリドイオン導電材料を新たなデバイスに応用する研究が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒドリドイオン導電材料は、高い潮解性を有する。これに起因して、ヒドリドイオン導電材料を用いたデバイスの性能や耐久性が低下する場合がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、潮解の抑制が可能なヒドリドイオン導電デバイス及びヒドリドイオン導電デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るヒドリドイオン導電デバイスは、第1層と、第1保護層と、第2保護層と、導電層と、を含む。前記第1層は、ヒドリドイオン導電材料を含む。前記第1層は、上方向に突出する凸部を有する。前記第1保護層は、前記第1層の上に設けられる。前記第1保護層は、前記上方向と交差する第1方向において前記凸部の上端と並び前記第1方向に延在する上面を有する。前記第2保護層は、前記第1層の上、および、前記第1保護層の上に設けられる。前記導電層は、前記第2保護層の上に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係るヒドリドイオン導電デバイスを例示する模式的断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るヒドリドイオン導電デバイスを例示する模式的断面図である。
【
図3】
図3(a)~
図3(e)は、実施形態に係るヒドリドイオン導電デバイスの製造方法を例示する模式的断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るヒドリドイオン導電デバイスの動作を説明する模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るヒドリドイオン導電デバイスを例示する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係るヒドリドイオン導電デバイスを例示する模式的断面図である。
図1に表したように、実施形態に係るヒドリドイオン導電デバイス100は、ヒドリドイオン導電材料を含む第1層10と、第1層10の上に設けられた保護膜20と、保護膜20の上に設けられた導電層30と、を有する。この例では、さらに、第1層10の下に保護膜40が設けられ、保護膜40の下に導電層50が設けられている。
【0009】
後述するように、第1層10の表面は凹凸を有するが、
図1(及び
図4)においては、便宜上、凹凸の図示を省略している。
【0010】
なお、実施形態の説明においては、第1層10から導電層30へ向かう方向をZ方向とし、Z方向に対して垂直な1つの方向をX方向(第1方向)とし、Z方向及びX方向に垂直な方向をY方向としている。また、説明において、第1層10から導電層30へ向かう方向を「上」と定義し、その反対方向を「下」と定義している。これらの方向は、第1層10と導電層30との相対的な位置関係に基づき、重力の方向とは無関係である。
【0011】
第1層10には、ヒドリドイオンが高速で拡散できる化合物(ヒドリドイオン導電材料)が用いられる。ヒドリドイオン導電材料におけるヒドリドイオンのイオン導電率は、特に限定されないが、例えば、300℃において、1.0×10-4S/cm(ジーメンス/センチメートル)以上、好ましくは、1.0×10-2S/cm以上である。
【0012】
具体的には、ヒドリドイオン導電材料には、ランタン(La)とストロンチウム(Sr)とリチウム(Li)と水素(H)と酸素(O)とを含む酸水素化物、例えばLa2-x-ySrx+yLiH1-x+yO3-yを用いることができる。または、ヒドリドイオン導電材料には、バリウム(Ba)とLiとHとOとを含む酸水素化物、例えば、Ba1.8LiH2.8O0.9を用いることができる。ヒドリドイオン導電材料は、アルカリ土類金属の水素化物MH2(Mは、カルシウム(Ca)、Sr及びBaの少なくともいずれか)でもよい。
【0013】
導電層30及び導電層50は、例えば金属を含む電極である。
導電層30には、例えば、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、Cu(銅)及び銀(Ag)の少なくともいずれかを用いることができる。この例では、導電層30には、Tiが用いられている。
導電層50には、例えば、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、Cu(銅)及び銀(Ag)の少なくともいずれかを用いることができる。この例では、導電層50には、Pdが用いられている。
【0014】
保護膜20は、導電層30と第1層10とが直接接触して反応することを抑制する。保護膜20のヒドリドイオン導電材料に対する化学的反応性は、導電層30のヒドリドイオン導電材料に対する化学的反応性よりも低い。つまり、保護膜20の材料は、導電層30の材料よりも、ヒドリドイオン導電材料に接触した場合に変化しにくい。同様に、保護膜40は、導電層50と第1層10とが直接接触して反応することを抑制する。保護膜20及び保護膜40には、例えば窒化物、酸化物又は硫化物を用いることができる。
【0015】
図2は、実施形態に係るヒドリドイオン導電デバイスを例示する模式的断面図である。
図2は、
図1に示した領域R1を拡大して示す。
図2に表したように、第1層10の上面10aは、凹凸を有する。すなわち、第1層10は、上方に突出する複数の凸部11を有する。凸部11は、例えば錐体状又は錐台状である。
【0016】
なお、複数の凸部11には、高い凸部11と、それよりも低い凸部11とがあってもよい。複数の凸部11は、複数の凸部11のうち最も上方まで延びた複数の凸部11aを含む。1つの凸部11aの高さは、その凸部11aに隣接する凸部11aの高さと、実質的に同じである。
【0017】
保護膜20は、第1保護層21と、第2保護層22と、を有する。第1保護層21は、第1層10の上面10aの上に設けられている。第1保護層21は、第1層10の上面10aの凹凸を包含する。すなわち、第1保護層21は、第1層10の上面10aの凹凸を埋めるように、凸部11同士の間(言い換えれば凹部の上)に配置されている。
【0018】
第1保護層21の上面21aは、X方向において凸部11aの上端11tと並ぶ。例えば、上面21aのZ方向の位置は、上端11tのZ方向の位置と同じである。上面21aは、X-Y平面に沿って延在する。第1保護層21の上面21aの粗さは、第1層10の上面10aの粗さよりも小さい。つまり、第1保護層21の上面21aは、第1層10の上面10aよりも高い平坦性を有する。第1保護層21の上面21aは、実質的に平面でよい。
【0019】
第2保護層22は、第1層10の上、および、第1保護層21の上面21aの上に設けられている。第2保護層22は、凸部11aの上端11tと接触する。この例では、第1保護層21及び第2保護層22に、窒化チタンが用いられている。第1保護層21の材料と第2保護層22の材料とは、互いに同じでも良いし、異なっていてもよい。
【0020】
第2保護層22は、第1保護層21よりも薄い。すなわち、第2保護層22のZ方向に沿った長さT22は、第1保護層21のZ方向に沿った長さT21よりも短い。第1保護層21の厚さ(長さT21)は、例えば10nm以上1000nm以下である。第1保護層21の厚さは、凸部11aの高さT11aと同じでよい。第2保護層22の厚さ(長さT22)は、例えば5nm以上500nm以下である。
【0021】
導電層30は、第2保護層22の上に設けられる。なお、保護膜20は、必ずしも2層構造に限らず、3層以上でもよい。例えば、第1保護層21は多層構造を有していてもよいし、第2保護層22は多層構造を有していてもよい。
【0022】
図3(a)~
図3(e)は、実施形態に係るヒドリドイオン導電デバイスの製造方法を例示する模式的断面図である。
まず、
図3(a)に表したように、ヒドリドイオン導電材料を含む第1層10を用意する。後述する研磨工程の前においては、第1層10の上面10aにおける最大高さRzは、例えば1nm以上20nm以下であり、第1層10の上面10aにおける算術平均粗さRaは、例えば0.5nm以上10nm以下である。
【0023】
図3(b)に表したように、第1層10の上面10aの上に、例えばスパッタなどによって、第1保護層21を形成する(第1積層工程)。この状態において、第1保護層21は、第1層10の凸部11の高さよりも厚い。すなわち、第1積層工程においては、凸部11の全体を覆うように、凸部11よりも上方まで第1保護層21が設けられる。
【0024】
その後、
図3(c)に表したように、第1保護層21の上面を研磨して平坦化する(研磨工程)。例えば、研磨工程においては、第1層10の凸部11の上端が露出するまで、第1保護層21を研磨する。研磨工程は、第1保護層21と同時に、複数の凸部11の上端を研磨してもよい。このようにして、第1保護層21の上面21aは、凸部11aの上端11tとX方向において並ぶ。凸部11aの上端11tは、X-Y平面に沿って延在する平面状でもよい。
【0025】
その後、
図3(d)に表したように、研磨した第1保護層21の上面21aの上(及び凸部11aの上端11tの上)に、例えばスパッタなどによって、第2保護層22を形成する(第2積層工程)。さらに、
図3(e)に表したように、第2保護層22の上に、例えばスパッタなどによって、導電層30を形成する。このようにして、ヒドリドイオン導電デバイス100が形成できる。
【0026】
例えば、研磨工程後において、第1保護層21の上面21aの算術平均粗さRaは、例えば0.5nm以上10nm以下、好ましくは10nm以下である。研磨工程後において、第1層10の上面10aの最大高さRz(
図2に表した凸部11aの高さT11aに対応する)は、例えば1nm以上20nm以下であり、第1層10の上面10aの算術平均粗さRaは、例えば0.5nm以上10nm以下である。なお、凹凸を評価する際には、Z-X平面の断面を観察する。算術平均粗さRaや最大高さRzには、JIS B 0601:2001で定義されたパラメータを用いる。パラメータを測定する際の基準長さは、例えば1μm以上5μm以下程度とする。
【0027】
ヒドリドイオン導電デバイス100の動作について説明する。
図4は、実施形態に係るヒドリドイオン導電デバイスの動作を説明する模式図である。 この例では、ヒドリドイオン導電デバイス100は、水素を吸蔵するデバイスとして機能する。第1層10の一方側(この例では導電層30)に、第1層10の他方側(この例では導電層50)に対してマイナスの電圧を印加して電流を流す。このとき、マイナス側に水素を供給すると、水素は導電層及び保護膜を通過して、ヒドリドイオンとして第1層10に吸蔵される。すなわち、この例では、水素は、導電層30及び保護膜20を通過し、ヒドリドイオンとして第1層10内に取り込まれる。
【0028】
なお、実施形態に係るヒドリドイオン導電デバイスは、必ずしも水素吸蔵デバイスに限らない。実施形態に係るヒドリドイオン導電デバイスは、ヒドリドイオン導電材料に電極(保護層又は導電層)が設けられたデバイスであればよく、任意の機能を有するものでよい。例えば、ヒドリドイオン導電デバイスは、二次電池または燃料電池であってもよい。ヒドリドイオン導電デバイスは、水素キャリアの合成や脱水素化を行うデバイスでもよい。
【0029】
実施形態の効果について説明する。
ヒドリドイオン導電材料は、高い潮解性を有する。これに対して、実施形態においては、第1層10の上に、第1保護層21及び第2保護層22が設けられる。第1層10を保護膜20(第1保護層21及び第2保護層22)で覆うことにより、ヒドリドイオン導電材料の潮解を抑制することができる。
【0030】
一方、ヒドリドイオン導電材料の表面には、大きな凹凸が存在する場合がある。例えば、第1層10は、複数の凸部11を有する。このような表面の凹凸を覆うように保護膜を形成する場合、保護膜が厚くなる場合がある。保護膜が厚くなると、保護膜によってイオン伝導性が低下し、デバイス性能が低下する恐れがある。すなわち、例えば、ヒドリドイオン又は水素が保護膜を通過しにくくなるため、ヒドリドイオン導電材料を含む層が水素を吸収または放出しにくくなる場合がある。
【0031】
これに対して、実施形態においては、上述したように、凸部11の上に比較的厚い第1保護層21が形成される(第1積層工程)。そして、第1保護層21を研磨して平坦化する(研磨工程)。これにより、第1保護層21の上面21aは、上方向と交差する第1方向(例えばX方向)において、凸部11の上端11tと並び、第1方向に延在することとなる。例えば、第1保護層21の上面21aの粗さは、第1層10の上面10aの粗さよりも小さい。このように、第1保護層21を研磨することにより、保護膜を薄くすることができ、イオン伝導性の低下(デバイス性能の低下)を抑制することができる。すなわち、ヒドリドイオン又は水素が保護膜20を通過しにくくなることを抑制することができる。
【0032】
そして、研磨した第1保護層21の上に、第2保護層22が設けられる(第2積層工程)。これにより、第1保護層21の厚さを抑えつつ、より確実に第1層10の表面を第1保護層21及び第2保護層22で覆うことができ、ヒドリドイオン導電材料の潮解を抑制することができる。実施形態によれば、ヒドリドイオン導電材料の潮解の抑制と、イオン導電性の維持(保護膜の薄膜化)と、を両立することができる。
【0033】
上述したように、第2保護層22は、第1保護層21よりも薄い。第2保護層22が比較的薄いことにより、第2保護層22によるイオン伝導性の低下を抑制することができる。ヒドリドイオン導電材料の潮解を抑制しつつも、保護膜20の全体の厚さを薄くすることができる。また、第1保護層21の上面21aの粗さが比較的小さいことにより、第2保護層22が薄くても、第1層10の上面10a及び第1保護層21の上面21aを、より確実に第2保護層22で覆いやすい。したがって、ヒドリドイオン導電材料の潮解を抑制することができる。
【0034】
例えば、ヒドリドイオン導電デバイス100の製造は、第1層10を大気に暴露せずに、外部と隔離された低湿度の空間内(チャンバ内など)で実行される。これにより、潮解を抑制することができる。例えば、
図3(a)~
図3(e)に関して説明した各工程は、ヒドリドイオン導電材料の潮解を抑制するように除湿された所定の雰囲気(第1雰囲気)下で行われる。第1雰囲気は、外部の大気よりも除湿された低湿度環境である。第1雰囲気における湿度は、ヒドリドイオン導電材料の潮解を抑制するように所定値以下にコントロールされている。
図3(a)~
図3(e)の工程の少なくとも一部は、同じ空間内で連続して行われてもよい。
【0035】
なお、第1雰囲気に関して「潮解を抑制する」とは、デバイスとしての機能を損なわせる程度の潮解を生じさせないことである。潮解が抑制された状態は、完全に潮解が生じないことのみならず、製品の実用上、許容可能な範囲で性能を劣化させる潮解が生じることを含んでもよい。
【0036】
具体的には、第1雰囲気における露点は、例えば、-70℃以上-20℃以下、好ましくは-60℃以下である。なお、第1雰囲気における温度は、例えば20℃以上400℃以下とする。
【0037】
第1雰囲気は、不活性ガス雰囲気でもよい。すなわち、各工程は、空気が不活性ガスで置換された空間内で実行されてもよい。不活性ガスには、例えば、アルゴン、または窒素を用いることができる。
【0038】
なお、ヒドリドイオン導電デバイスの断面において、第1保護層21の上面21a(第1保護層21と第2保護層22との界面)は、必ずしも明確に観察できなくてもよい。第1保護層21の上面21aが明確に観察できない場合には、凸部11a(最も高い凸部11)の上端11tを通りX-Y平面に沿って延在する面を、上面21aと見なすことができる。
【0039】
図5は、実施形態に係るヒドリドイオン導電デバイスを例示する模式的断面図である。
図5は、
図1に示した領域R2を拡大して示す。第1層10の下側(下面10b、保護膜40及び導電層50)は、第1層10の上側(上面10a、保護膜20及び導電層30)と同様の構成でよい。すなわち、第1層10の下面10bは、凹凸を有する。第1層10は、下方に突出する複数の凸部12を有する。複数の凸部12は、複数の凸部12のうち最も下方まで延びた複数の凸部12aを含む。
【0040】
保護膜40は、保護層41と、保護層42と、を有する。保護層41は、第1層10の下面10bに接するように設けられている。保護層41は、第1層10の下面10bの凹凸を包含する。保護層41の下面41aは、X方向において凸部12aの下端12tと並ぶ。下面41aは、X-Y平面に沿って延在する。保護層41の下面41aの粗さは、第1層10の下面10bの粗さよりも小さい。保護層42は、凸部12aの下端12t、および、保護層41の下面41aに接するように設けられている。保護層42は、保護層41よりも薄い。導電層50は、保護層42の下面に接するように設けられている。
【0041】
保護層41、保護層42及び導電層50は、保護層31、保護層22及び導電層30と同様の方法により、形成することができる。
【0042】
実施形態によれば、潮解性の抑制が可能なヒドリドイオン導電デバイス及びヒドリドイオン導電デバイスの製造方法を提供することが提供できる。例えば、潮解性の抑制とイオン導電性の維持とのトレードオフを解決することができる。
【0043】
本願明細書において、「垂直」は、厳密な垂直だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
また、実質的に同じとは、完全同一に限らず、製造条件のばらつきなどの範囲で僅かに異なることを含む。
【0044】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 第1層
10a 上面
10b 下面
11、11a 凸部
11t 上端
12、12a 凸部
12t 下端
20 保護膜
21 第1保護層
21a 上面
22 第2保護層
30 導電層
40 保護膜
41 保護層
41a 下面
42 保護層
50 導電層
100 ヒドリドイオン導電デバイス