(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168741
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ワークの形状良否判定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G01B11/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085658
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】布施 直紀
(72)【発明者】
【氏名】湯藤 隆夫
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA53
2F065GG04
2F065HH04
2F065MM11
2F065PP22
2F065QQ25
2F065QQ38
2F065RR08
2F065SS04
2F065TT03
(57)【要約】
【課題】多大の手間を要する三次元データの合成を行うことなく、簡易かつ確実に被検ワークの形状の良否判定を行うことができるワークの形状良否判定方法を提供する
【解決手段】異なる複数の傾動角度で光測定して得られた被検ワークの各画像を、それぞれ前記傾動角度と同一の各傾動角度で予め取得した基準ワークの各画像とマッチングさせ、マッチングした両画像の差異を算出して、全ての傾動角度で両画像の差異が所定値よりも小さい時に前記被検ワークの形状を良と判定する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる複数の傾動角度で光測定して得られた被検ワークの各画像を、それぞれ前記傾動角度と同一の各傾動角度で予め取得した基準ワークの各画像とマッチングさせ、マッチングした両画像の差異を算出して、全ての傾動角度で両画像の差異が所定値よりも小さい時に前記被検ワークの形状を良と判定するワークの形状良否判定方法。
【請求項2】
前記光測定はレーザスキャナを使用して点群データを得るものである請求項1に記載のワークの形状良否判定方法。
【請求項3】
前記マッチングした両画像について、各画像のバウンディングボックスを得て、当該バウンディングボックスの形状を比較することによって前記被検ワークの形状の良否を判定する請求項1又は2に記載のワークの形状良否判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は形状良否判定方法に関し、特に光計測によって被検ワークの精密な形状を検出してその良否を判定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検ワークの精密な形状を、コンピュータ内で直接処理可能な点群データとして得ることが可能なレーザスキャナが多用されつつあるが、この場合に、レーザ光の死角となってデータ取得ができない死角領域が発生する。なお、特許文献1には、死角領域に規格情報の寸法データをあてはめて、死角領域を含む計測対象オブジェクトの全体モデルを生成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで従来は例えば、被検ワークを傾動可能な測定ステージ上に載置して、複数角度に傾動させ、各傾動角度で得られた三次元データを合成して死角領域の無い被検ワークの全体画像を得て、形状の良否判定を行っている。しかし、三次元データの合成には多大の手間を要するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、多大の手間を要する三次元データの合成を行うことなく、簡易かつ確実に被検ワークの形状の良否判定を行うことができるワークの形状良否判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、異なる複数の傾動角度で光測定して得られた被検ワークの各画像を、それぞれ前記傾動角度と同一の各傾動角度で予め取得した基準ワークの各画像とマッチングさせ、マッチングした両画像の差異を算出して、全ての傾動角度で両画像の差異が所定値よりも小さい時に前記被検ワークの形状を良と判定する。
【0007】
本第1発明において、複数の傾動角度の、各傾動角度における光測定で生じる被検ワークの死角領域は異なっているから、一の傾動角度で死角領域であっても他の傾動角度では死角領域にはならないようにでき、複数の傾動角度についてそれぞれ被検ワークと基準ワークの画像をマッチングさせて両画像の差異を算出し、全ての傾動角度で両画像の差異が所定値よりも小さい時にのみ前記被検ワークの形状を良と判定するようにすれば、死角領域に影響されることなく確実に被検ワークの良否を判定することができる。加えて、本第1発明によれば、従来のように複数の傾動角度で得られた三次元データを合成して被検ワークの全体画像を得る必要は無いから、三次元データの合成の手間がかからず演算の負担が軽減される。
【0008】
本第2発明では、前記光測定はレーザスキャナを使用して点群データを得るものである。
【0009】
本第3発明では、前記マッチングした両画像について、各画像のバウンディングボックスを得て、当該バウンディングボックスの形状を比較することによって前記被検ワークの形状の良否を判定する。
【0010】
本第3発明においては、被検ワークと基準ワークの各画像のバウンディングボックスを比較することによって迅速かつ簡易に被検ワークの形状の良否を判定することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明のワークの形状良否判定方法によれば、簡易かつ確実に被検ワークの形状の良否判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明方法を実施する装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】コンピュータ内で行われる処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】被検ワークと基準ワークの、マッチング前の三軸方向から見た各二次元画像である。
【
図5】基準アークと形状良の被検ワークの、マッチング状態での三軸方向から見た各二次元画像である。
【
図6】基準ワークと形状不良の被検ワークの、マッチング状態での三軸方向から見た各二次元画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0014】
図1には本発明方法を実施するための装置の外観を示す。
図1において、傾動装置はモータ駆動される台枠1を備えており、台枠1は回転軸11の回りに所定角度範囲の旋回が可能であるとともに、回転軸11回りの旋回位置で当該回転軸11に直交する回転軸12回りに所定角度範囲の旋回が可能である。そして、台枠1に支持される図略のステージ上に被検ワークが載置され、これによって、被検ワークの姿勢を三次元的に複数の傾動位置に変更することができる。
【0015】
台枠1の上方(すなわち被検ワークの上方)にはレーザスキャナ2が配設されており、死角領域を解消すべく複数の傾動位置に姿勢が変更された被検ワークについて、各傾動位置において三次元データ(立体形状の点群データ)がレーザスキャナ2によって得られる。得られた三次元データはレーザスキャナ2に接続されたコンピュータ3に送られて、以下に説明する処理によって基準ワークと被検ワークの立体画像(点群データから得られる立体画像)がマッチングされて、被検ワークの形状の良否が判定される。
【0016】
なお、上記基準ワークは、被検ワークと同形状で各部の寸法が正確に仕上げられた、寸法仕様を満足したワークである。本実施形態では、後述する被検ワークの形状良否判定処理に先立って、基準ワークをステージ上に載置して上記複数の所定傾動位置に傾動させ、各傾動位置でレーザスキャナ2によって得られた三次元データ(立体形状の点群データ)を予めコンピュータ3内に記憶させておく。
【0017】
コンピュータ3内で行われる形状良否判定処理は以下の
図2のフローチャートで示す通りである。すなわち、
図2のステップ101 でコンピュータ3からの指令で台枠1(すなわち被検ワーク)を所定角度位置へ傾動させ、ステップ102では、レーザスキャナ2によってこの方向から見た被検ワークの三次元データ(立体形状の点群データ)を取得し、この三次元データをボクセルデータに変換して、各ボクセルの法線ベクトルを算出する。
図3には各ボクセルについて法線ベクトルNvを算出した立体画像の一例を示す。
【0018】
図2のステップ103では、基準ワークを同角度だけ傾動させて得た三次元データを読出し、同様に各ボクセルの法線ベクトルを算出する。そして、被検ワークと基準ワークの立体画像の各法線ベクトルが最も一致するように例えばICP(Iterative Closest Point)法によって両者をマッチングさせる(
図2のステップ104)。これにより、傾動によって被検ワークがアタッチメント上を自重で滑りその位置や角度がずれても、これに関係なく、その立体画像を基準ワークの立体画像と良好にマッチングさせることができる。このような本実施形態では、被検ワークの傾動時の滑り止め構造を設ける必要が無いから、当該構造による死角領域の発生を防止することができる。
【0019】
この状態で本実施形態では、基準ワークと被検ワークの、マッチングした両立体画像の3次元バウンディングボックスを算出する(ステップ105)。そして、ステップ106では、両バウンディングボックスの外形寸法の相違が許容範囲内であれば全体形状良として次のステップ107へ進む。これに対して、上記両バウンディングボックスの外形寸法の相違が許容範囲外である場合は形状不良と判定される(ステップ108)。
【0020】
被検ワークと基準ワークの立体画像をそれぞれX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の三方向から見た二次元画像によって上記処理をさらに説明すると、
図4はマッチング前の被検ワークの二次元画像Ftと基準ワークの二次元画像Fsであり、(1),(2),(3)はそれぞれX軸方向、Y軸方向、Z軸方向から見たものである。
【0021】
図5の(1),(2),(3)は被検ワークの形状が基準ワークの形状と一致している場合の、マッチング後のそれぞれX軸方向、Y軸方向、Z軸方向から見た二次元画像Fs,Ftであり、単純矩形のバウンディングボックス(図中の白線)もその大きさが一致している。
【0022】
一方、
図6の(1),(2),(3)は被検ワークの形状が基準ワークの形状と一致していない場合の、マッチング後のそれぞれX軸方向、Y軸方向、Z軸方向から見た二次元画像Ft,Fsであり、単純矩形のバウンディングボックス(図中の白線)の外形はその大きさが一致していない。
【0023】
図2のステップ107では、基準ワークの立体画像とマッチングされた被検ワークの立体画像について、平面度や、面のなす角度等の局所的な形状不良の有無が判定され、局所的な形状不良がある場合には形状不良と判定される(ステップ108)。局所的な形状不良がなければ、当該角度位置での被検ワークは形状良と判定される(ステップ109)。
【0024】
以上のステップ101~109は前述したように、死角領域を解消すべく複数の傾動位置に被検ワークを傾動させて繰り返される。
【0025】
表1には、被検ワークを各傾動位置a~eに傾動させた各場合において、X軸、Y軸、Z軸方向から見た基準ワークと被検ワークの各二次元画像Fs,Ftのバウンディングボックスに生じた外形寸法差の一例を示す。表1では傾動位置c、dにおいて絶対値0.05mm以上の寸法差が生じているので当該被検ワークは最終的に形状不良と判定される。
【0026】
【0027】
結局、複数の傾動位置の全てにおいてステップ109で形状良と判定された場合のみ、最終的に被検ワークは形状良と判定される。
【0028】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、基準ワークをステージ上に載置して複数の所定傾動位置に傾動させ、各傾動位置でレーザスキャナ2によって得られた三次元データを予めコンピュータ3内に記憶させたが、CADで作成された三次元データとして予めコンピュータに記憶させておいても良い。
上記実施形態では光計測をレーザスキャナにより行ったが、これに限られるものではない。
【符号の説明】
【0029】
1…台枠、11、12…回転軸、2…レーザスキャナ、3…コンピュータ。