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  • 特開-結束棒材の本数計数装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168743
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】結束棒材の本数計数装置
(51)【国際特許分類】
   G06M 9/00 20060101AFI20241128BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241128BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20241128BHJP
【FI】
G06M9/00 Z
G06T7/00 350C
G06T7/60 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085660
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】木全 謙太
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096FA02
5L096FA04
5L096FA16
5L096FA53
5L096FA59
5L096FA60
5L096FA65
5L096FA66
5L096GA51
5L096HA11
5L096KA04
5L096MA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】目視を要することなく棒材端面を正確に認識して確実な本数計測を自動で行うことが可能な結束棒材の本数計数装置を提供する。
【解決手段】結束された複数の棒材4を端面側から撮影した全体画像2aを得るカメラ2と、得られた全体画像2aより棒材4の各端面画像4aを得る物体検出用AI部31としてのMask R-CNNと、得られた各端面画像4aにつき所定の特性値を検出して、これら特性値が許容値内にある端面画像4aの数を棒材4の本数とする本数確認部32とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結束された複数の棒材を端面側から撮影した全体画像を得る撮像手段と、得られた全体画像より前記棒材の各端面画像を得る物体検出用AI部と、得られた各端面画像につき所定の特性値を検出して、これら特性値が許容値内にある端面画像の数を前記棒材の本数とする本数確認部とを備える結束棒材の本数計数装置。
【請求項2】
前記物体検出用AI部をMask R-CNNで構成した請求項1に記載の結束棒材の本数計数装置。
【請求項3】
前記特性値は、前記Mask R-CNNで生成された前記各端面画像内のマスク領域の面積、隣接するマスク領域との重心間距離およびマスク領域の重心-外周間の最小距離のうちの少なくとも一つ以上である請求項2に記載の結束棒材の本数計数装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の棒材(線材を含む)をベルトや針金で束ねた結束棒材の本数を計数する本数計数装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
結束棒材の本数計数装置としては例えば特許文献1に示すものがある。ここでは、結束された複数の棒材の端面に照明光を当ててこれをカメラで撮影し、得られた撮影画像を所定の輝度閾値で二値化する。そして、二値化画像中の島状領域(ランド)の重心座標や最大半径、外周長等の特性値が所定範囲にあるものを正常ランド、すなわち棒材端面の画像であると判定して本数を計数する。上記閾値を適当に変更しつつ上記判定を繰り返して棒材の本数を計数し、計数された棒材の端面画像を上記二値化画像中から消去して、残った端面画像を目視により確認して計数する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-173901
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の装置では、負担は軽減されているとはいえ、目視による計数が必要である上に、実際の棒材端面は、ペンキ塗装や面切削ムラによる傾斜、ラベルの貼着の有無等によって輝度のバラツキが大きく、輝度の閾値のみから棒材端面を正確に識別することは困難であるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、目視を要することなく棒材端面を正確に認識して確実な本数計測を自動で行うことが可能な結束棒材の本数計数装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、結束された複数の棒材(4)を端面側から撮影した全体画像(2a)を得る撮像手段(2)と、得られた全体画像(2a)より前記棒材(4)の各端面画像(4a)を得る物体検出用AI部(31)と、得られた各端面画像(4a)につき所定の特性値を検出して、これら特性値が許容値内にある端面画像(4a)の数を前記棒材(4)の本数とする本数確認部(32)とを備える結束棒材の本数計数装置。
【0007】
前記物体検出用AI部(31)はMask R-CNNで構成することができる。またこの場合の前記特性値は、前記Mask R-CNNで生成された前記各端面画像(4a)内のマスク領域(44)の面積、隣接するマスク領域(44)との重心間距離およびマスク領域(44)の重心-外周間の最小距離のうちの少なくとも一つ以上とするのが良い。
【0008】
本発明によれば、棒材端面の輝度や形状のバラツキが大きい場合でも物体検出用AI部によって各棒材の端面画像を得ることができる。そして各端面画像につき所定の特性値を検出して、これら特性値が許容値内にある端面画像のみを実際の棒材の端面画像とするから、例えば端面に貼付されたラベルの端面画像は排除されて、正確に棒材の端面画像のみから棒材の本数が算出される
【0009】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明の結束棒材の本数計数装置によれば、目視を要することなく棒材端面を正確に認識して確実な本数計測を自動で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本数計数装置の全体構成を示す図である。
図2】結束された丸棒鋼の端面部斜視図である。
図3】Mask R-CNNの概念的構成を示す図である。
図4】Mask R-CNNの学習過程を示すフローチャートである。
図5】訓練データの一例を示す図である。
図6】本数計数装置の処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
図7】丸棒鋼の端面画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0013】
図1に本数計数装置Eの全体構成を示し、結束された複数の棒材(本実施形態では丸棒鋼)の端面を照明する照明装置1と、照明された複数の棒材を端面側から撮影して全体画像を得るカメラ2とを備え、全体画像データ2aがカメラ2から処理装置3へ送られる。処理装置3はコンピュータを内蔵しており、以下に詳細を説明する物体検出用AI部31と本数確認部32とがコンピュータによって実現されている。
【0014】
物体検出用AI部31では後述するように上記全体画像2aから各棒材の端面画像を識別し、本数確認部32では識別された端面画像につきその特性値を算出して、これら特性値が許容値内にある端面画像の数を算出して、結束された棒材の本数とする。
【0015】
ここで、図2には結束された棒材としての丸棒鋼4の端面部斜視図を示す。また、表1には丸棒鋼4の仕様の一例を示す。表1から明らかなように、丸棒鋼4の製品径や製品温度、製品長、結束される製品本数は様々であり、また製品端面は、熱処理条件やラベル貼付の有無、面取や面切削方法、ペンキ塗装色等の相違によって、その明暗や形状が多様に変化している。表2には、丸棒鋼4の熱処理の種類、ラベル貼付の有無や貼付数、面取や面切削の種類、ペンキ塗装の有無・塗装色の一例を示す。なお、図2に示す例では、丸棒鋼4の全て(全数)の端面にラベル41が添付されている。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
このような丸棒鋼4の、結束された端面を撮影した全体画像2aはその輝度が端面ごとに、あるいは同一端面内でも各部ごとに大きく変化するため、カメラの撮影画像を所定の輝度閾値で二値化して端面を識別する従来の方法ではその正確な識別が困難である。
【0019】
そこで、本数計数装置Eには上述のように、全体画像2aから端面画像を識別するために物体検出用AI部31が設けられており、物体検出用AI部31は本実施形態では、Mask R-CNN(Convolutional Neural Network)である。
【0020】
Mask R-CNNの概念的構成を図3に示す。図3において、311は全体画像を入力する畳み込み層、312は畳み込み層311から出力される特徴マップ、313は特徴マップ上に物体領域を設定するリージョン・プロポーザル・ネットワーク(RPN)、314は各物体領域における固定サイズの特徴マップ、315は全結合層、316はマスク生成層である。全体画像2aを入力するとMask R-CNNより、後述するように、全体画像2a上にバウンディングボックスとそのクラス、およびマスク領域が表示された端面画像が得られる。
【0021】
なお、Mask R-CNNの学習は図4に示す過程で行われる。最初に必要数の訓練データを作成する(ステップ101)。訓練データの一例を図5に示す。訓練データは、全体画像2a内の各丸棒鋼の略円形の端面原画像42bの外周を、複数のポイントとこれらを結ぶ直線からなるパラゴンバウンディングボックス43で囲んだもので、各パラゴンバウンディングボックス43内の端面原画像43にはクラス「marubo」が付与される。
【0022】
図4のステップ102では、訓練データによって転移学習、すなわち既存の学習済みMask R-CNNのヘッド部(図3参照)の変更とそのパラメータの更新がなされ、続くステップ103で、バックボーン部、RPNを含む全体のパラメータが更新されて新たな学習済みMask R-CNN(物体検出用AI部31)が用意される。
【0023】
本数計数装置Eの処理装置3の処理手順を図6のフローチャートで説明する。ステップ201で結束された複数の丸棒鋼4(図2)の端面を撮影して全体画像2aを得る。次に、上流工程側から丸棒鋼4の製品寸法や結束予定本数等の製品情報を取得し(ステップ202)、それに基づいてステップ203で丸棒鋼4の端面(断面)面積、隣接する丸棒鋼4の重心(中心)間距離、重心-外周間の最小距離(半径)等の特性値を算出し、その許容値を設定する。
【0024】
ステップ204では、物体検出用AI部31の学習済みMask R-CNNによって全体画像2aから各丸棒鋼4の端面画像4aを得る。端面画像4aの一例を図7に示す。各端面画像4aは、丸棒鋼4の端面に相当する略円形のマスク領域44が矩形のバウンディングボックス45で区画されており、各バウンディングボックス45にはそのクラス「marubo」が確率表示されている。学習済みMask R-CNNによって、明暗や形状が種々に変化している丸棒鋼4の端面がマスク領域44として確実に識別されている(インスタンスセグメンテーション)。
【0025】
ところで、丸棒鋼4の端面にラベル41(図2)が添付されていると、Mask R-CNNによって、図7に示すように、これら貼付ラベル41が、矩形のバウンディングボックス47で区画された略円形のマスク領域48を有する端面画像4cとして誤認識されることがある。
【0026】
そこで、図6のステップ205では各端面画像4a,4cにつき、そのマスク領域44,48の面積、隣接するマスク領域44,48との重心間距離、およびマスク領域44,48の重心-外周間の最小距離等の特性値が、上記ステップ203で設定された許容値内にあるか否かを解析する。許容値を越えている場合には、そのマスク領域48が属する端面画像4cは丸棒鋼4の端面に相当する端面画像4aではないとしてその数の算出から除かれる。そして残った端面画像4aの数を算出してこれを結束された丸棒鋼4の本数とする(ステップ206)。
【0027】
ステップ207では算出された丸棒鋼の本数を結束予定本数と比較して、一致している場合には正常とし、一致しない場合は異常としてその旨報知する。
【0028】
上記特性値はマスク領域44,48の面積、隣接するマスク領域44,48との重心間距離、およびマスク領域44,48の重心-外周間の最小距離の少なくとも一つ以上であれば良い。また棒材は丸棒鋼に限られない。
【符号の説明】
【0029】
2…カメラ(撮像手段)、2a…全体画像、3…処理装置、31…物体検出用AI部、32…本数確認部、4…丸棒鋼(棒材)、4a…端面画像。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7