(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168747
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】振動検出装置
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20241128BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20241128BHJP
【FI】
G01H17/00 D
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085669
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 滉平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 博文
(72)【発明者】
【氏名】小松 浩之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴敏
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024AD21
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA04
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB13
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
(57)【要約】
【課題】対象物に取り付けられて対象物の振動を検出する振動検出装置において小型化を図ること。
【解決手段】振動検出装置1は、筐体10が対象物Tに取り付けられている状態において対象物Tの振動に応じて振動可能な振動板20と、振動板20に配置される圧電素子30と、筐体10において振動板20から離れて配置される振動検出素子41と、複数の動作モードのうち1つの動作モードを選択して動作する制御部42と、を備える。制御部42は、第1判定モードにおいて、筐体10が対象物Tに取り付けられている状態で第1所定信号を圧電素子30に出力し、第1所定信号に応じた圧電素子30の変形によって生じる振動板20の振動を示す第1振動信号を振動検出素子41から取得し、第1振動信号に基づいて振動板20の第1周波数特性P1を算出し、第1周波数特性P1と第1基準周波数特性B1とを比較して筐体10の取付状態の可否を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に取り付け可能な筐体と、
前記筐体が前記対象物に取り付けられている状態において前記対象物の振動に応じて振動可能な振動板と、
前記振動板に配置されている圧電素子と、
前記筐体において前記振動板から離れた部位に配置される振動検出素子と、
複数の動作モードのうち1つの動作モードを選択して動作する制御部と、を備え、
前記複数の動作モードは、前記対象物の振動を検出する振動検出モード、および、前記対象物に対する前記筐体の取付状態の可否を判定する第1判定モードを有し、
前記第1判定モードにおいて、前記制御部は、
前記筐体が前記対象物に取り付けられている状態で予め定められている第1所定信号を前記圧電素子に出力し、
前記第1所定信号に応じた前記圧電素子の変形によって生じる前記振動板の振動を示す第1振動信号を前記振動検出素子から取得し、
前記第1振動信号に基づいて前記振動板の第1周波数特性を算出し、
前記第1周波数特性と第1基準周波数特性とを比較して前記筐体の取付状態の可否を判定する、
振動検出装置。
【請求項2】
前記第1基準周波数特性は、第1の第1基準周波数特性および前記第1の第1基準周波数特性より感度が大きい第2の第1基準周波数特性を有し、
前記第1判定モードにおいて、前記制御部は、
前記第1周波数特性において予め定められている所定の周波数に対応する感度が、前記第1の第1基準周波数特性において前記所定の周波数に対応する感度以上かつ前記第2の第1基準周波数特性において前記所定の周波数に対応する感度以下の第1基準範囲外にある場合、前記筐体の取付状態が不可であると判定する、
請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項3】
前記所定の周波数は、前記対象物の振動に対応する周波数の範囲外の周波数である、
請求項2に記載の振動検出装置。
【請求項4】
前記第1基準周波数特性は、第1の第1基準周波数特性および前記第1の第1基準周波数特性より感度が大きい第2の第1基準周波数特性を有し、
前記第1判定モードにおいて、前記制御部は、
前記第1周波数特性における感度の最大値が、前記第1の第1基準周波数特性の感度の最大値以上かつ前記第2の第1基準周波数特性の感度の最大値以下の第2基準範囲外にある場合、前記筐体の取付状態が不可であると判定する、
請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項5】
前記第1基準周波数特性は、第1の第1基準周波数特性および前記第1の第1基準周波数特性より感度が大きい第2の第1基準周波数特性を有し、
前記第1判定モードにおいて、前記制御部は、
前記第1周波数特性の感度の最大値に対応する周波数が、前記第1の第1基準周波数特性の感度の最大値に対応する周波数以上かつ前記第2の第1基準周波数特性の感度の最大値に対応する周波数以下の第3基準範囲外にある場合、前記筐体の取付状態が不可であると判定する、
請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項6】
前記第1判定モードにおいて、前記制御部は、
予め定められている所定周波数範囲内における前記第1周波数特性と前記第1基準周波数特性との誤差が第1判定値以上である場合、前記筐体の取付状態が不可であると判定する、
請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項7】
前記複数の動作モードは、前記筐体が前記対象物に取り付けられていない状態において前記振動板および前記圧電素子の一方に異常があるか否かを判定する第2判定モードをさらに有し、
前記第2判定モードにおいて、前記制御部は、
前記筐体が前記対象物に取り付けられていない状態で予め定められている第2所定信号を前記圧電素子に出力し、
前記第2所定信号に応じた前記圧電素子の変形によって生じる前記振動板の振動を示す第2振動信号を前記振動検出素子から取得し、
前記第2振動信号に基づいて前記振動板の第2周波数特性を算出し、
前記第2周波数特性において予め定められている所定の周波数に対応する感度が第2判定値以下である場合、前記振動板および前記圧電素子の一方に異常があると判定する、
請求項1に記載の振動検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、振動検出装置の一例として、チェストピースに配置されて聴診対象から聴診音を取得する聴診音取得部、聴診対象との接触を検出する2つの接触検出部、および、2つの接触検出部の検出結果に基づいてチェストピースが聴診対象に正しく押し当てられているか否かを判定する判定部を備える聴診器が開示されている。判定部の判定結果に基づいてユーザがチェストピースを聴診対象に正しく押し当てることで、聴診音取得部が聴診対象に適切に接触し、聴診器は聴診音を適切に取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象物の振動を検出する振動検出装置においては、振動検出装置が対象物に取り付けられた(装着された)状態で対象物の振動を検出する場合がある。しかしながら、特許文献1の振動検出装置は、2つの接触検出部を聴診対象(対象物)に接触させるために2つの接触検出部が聴診音取得部の周囲に配置されていることで比較的大きく、対象物に取り付け可能な場所が制限される可能性がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、対象物に取り付けられて対象物の振動を検出する振動検出装置において小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の振動検出装置は、対象物に取り付け可能な筐体と、前記筐体が前記対象物に取り付けられている状態において前記対象物の振動に応じて振動可能な振動板と、前記振動板に配置されている圧電素子と、前記筐体において前記振動板から離れた部位に配置される振動検出素子と、複数の動作モードのうち1つの動作モードを選択して動作する制御部と、を備え、前記複数の動作モードは、前記対象物の振動を検出する振動検出モード、および、前記対象物に対する前記筐体の取付状態の可否を判定する第1判定モードを有し、前記第1判定モードにおいて、前記制御部は、前記筐体が前記対象物に取り付けられている状態で予め定められている第1所定信号を前記圧電素子に出力し、前記第1所定信号に応じた前記圧電素子の変形によって生じる前記振動板の振動を示す第1振動信号を前記振動検出素子から取得し、前記第1振動信号に基づいて前記振動板の第1周波数特性を算出し、前記第1周波数特性と第1基準周波数特性とを比較して前記筐体の取付状態の可否を判定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の振動検出装置によれば、振動検出装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係る振動検出装置の構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、第1判定モードにおいて信号処理部が実行するフローチャートである。
【
図3】
図3は、振動板の第1周波数特性を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1実施形態の第1変形例に係る第1周波数特性および第1基準周波数特性を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の第1実施形態の第2変形例に係る第1周波数特性および第1基準周波数特性を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の第1実施形態の第2変形例に係る信号処理部が第1判定モードで実行するフローチャートである。
【
図7】
図7は、本開示の第1実施形態の第3変形例に係る第1周波数特性および第1基準周波数特性を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の第1実施形態の第3変形例に係る信号処理部が第1判定モードで実行するフローチャートである。
【
図9】
図9は、本開示の第1実施形態の第4変形例に係る信号処理部が第1判定モードで実行するフローチャートである。
【
図10】
図10は、本開示の第1実施形態の第5変形例に係る第1周波数特性および第1基準周波数特性を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の第1実施形態の第5変形例に係る信号処理部が第1判定モードで実行するフローチャートである。
【
図12】
図12は、本開示の第2実施形態に係る信号処理部が第2判定モードで実行するフローチャートである。
【
図14】
図14は、本開示の第1実施形態の他の変形例に係る振動検出装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本開示が限定されるものではない。各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、本開示の第1実施形態に係る振動検出装置1の構成を示す断面図である。振動検出装置1は、対象物Tの振動を検出する。振動検出装置1は、例えば聴診器である。振動検出装置1が聴診器である場合、対象物Tは生体(例えば人体)であり、対象物Tの振動は生体音(例えば心音)である。
【0011】
振動検出装置1は、筐体10、振動板20、圧電素子30、および、制御基板40を備えている。
【0012】
筐体10は、開口部10aを有する箱状である。筐体10は、例えば円柱状である。筐体10の材料は、例えば熱可塑性樹脂である。振動検出装置1は、装着体2によって対象物Tに取り付けられる。装着体2は、例えばベルトである。対象物Tが人体の胸部である場合、装着体2が胸部に巻かれることで、振動検出装置1が胸部に取り付けられる。
【0013】
また、筐体10には、操作部11および表示部12が配置されている。操作部11は、ユーザが操作するためのボタンおよびスイッチなどを有する。表示部12は例えば液晶ディスプレイである。操作部11および表示部12は、タッチパネルを構成してもよい。
【0014】
振動板20は、開口部10aに配置され、互いに反対側に位置する第1板面21および第2板面22を有する板形状である。振動板20は、例えば円板形状である。第1板面21および第2板面22は、平面状である。振動板20は、厚さ方向に沿って振動可能である。振動板20は、電気伝導性を有する。振動板20の材料は、金属(例えば銅およびニッケルなど)である。
【0015】
筐体10が対象物Tに取り付けられている状態において、振動板20の第2板面22は、対象物Tの外表面に接触する。対象物Tの外表面は、対象物Tの振動に応じて振動する。よって、振動板20は、筐体10が対象物Tに取り付けられている状態において対象物Tの振動に応じて振動可能である。なお、対象物Tの振動および振動板20の振動が筐体10を伝達することは、筐体10が有する剛性によって抑制される。
【0016】
圧電素子30は、筐体10に収納され、振動板20に配置されている。圧電素子30は、ピエゾ素子である。圧電素子30は、例えば、材料をチタン酸ジルコン酸鉛とするPZT系圧電セラミックスである。圧電素子30は、互いに反対側に位置する第1電極面31および第2電極面32を有する膜状である。
【0017】
圧電素子30の第2電極面32が振動板20の第1板面21と電気的に接続する。第2電極面32と第1板面21とは、例えば、電気伝導性を有する導電性接着層(不図示)によって接着されている。導電性接着層は、例えば導電性フィラー(例えば銀の微粒子)を含む接着剤が硬化したものである。
【0018】
圧電素子30は振動板20の振動に応じて変形し、第1電極面31と第2電極面32との間で電圧が生じる。また、圧電素子30は、第1電極面31と第2電極面32との間に電圧が印加されることで変形し、振動板20を振動させる(詳細は後述する)。
【0019】
制御基板40は、振動板20および圧電素子30から離れた状態で筐体10に収納されている。制御基板40は、振動検出素子41、および、制御部42を備えている。
【0020】
振動検出素子41は、制御基板40の板面に配置されている。つまり、振動検出素子41は、筐体10において振動板20から離れた部位に配置されている。
【0021】
振動検出素子41は、振動を検出可能である。振動検出素子41は、例えばコンデンサマイクおよびMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイクなどの静電容量型のマイクである。なお、振動検出素子41は、振動板および振動板に配置される圧電素子を含んで構成されてもよい。
【0022】
振動検出素子41は、筐体10の外部から筐体10内に伝達する振動(音:以下、ノイズと称する)を検出する。また、振動検出素子41は、圧電素子30に電圧が印加されることで生じる振動板20の振動(音)を筐体10内の空間を介して検出する(詳細は後述する)。なお、上記のように対象物Tの振動および振動板20の振動が筐体10を伝達することが抑制されており、振動検出素子41が筐体10を介して対象物Tの振動および振動板20の振動を検出することは抑制されている。
【0023】
制御部42は、振動検出装置1を統括制御する。制御部42は、操作部11、表示部12、圧電素子30、および、振動検出素子41と電気的に接続されている。制御部42は、複数の動作モードのうち1つの動作モードを選択して動作する。複数の動作モードは、振動検出モード、および、第1判定モードを有する。
【0024】
振動検出モードは、対象物Tの振動を検出する制御部42の動作モードである。第1判定モードは、対象物Tに対する筐体10の取付状態の可否を判定する制御部42の動作モードである。制御部42は、操作部11に配置される動作モードの選択のためのボタンがユーザによって操作されることで、複数の動作モードのうち1つの動作モードを選択する。
【0025】
制御部42は、記憶部42a、および、信号処理部42bを備える。
【0026】
記憶部42aは、第1判定モードにおいて、筐体10の取付状態の可否を判定するための基準となるデータ(詳細は後述する)が格納されている。信号処理部42bは、選択された動作モードに応じて、次に説明するように動作する。
【0027】
はじめに、振動検出モードにおける信号処理部42bの動作について説明する。筐体10が対象物Tに取り付けられて対象物Tの外表面と振動板20とが接触している状態で、操作部11において振動検出モードが選択されることで、信号処理部42bは、振動検出モードを選択し、振動検出モードでの動作を開始する。
【0028】
上記のように、振動板20は対象物Tの振動に応じて振動し、圧電素子30は、振動板20の振動に応じて変形することで、第1電極面31と第2電極面32との間に電圧が生じる。圧電素子30に生じた電圧の波形は、対象物Tの振動の波形に相当する。
【0029】
信号処理部42bは、圧電素子30に生じた電圧を示す信号を取得する。信号処理部42bは、当該信号に解析することで、対象物Tの振動の大きさ(振幅)および周期(対象物Tが人体の胸部である場合、例えば心拍数)などを算出する。
【0030】
また、振動板20は、対象物Tの振動以外にも筐体10の外部から筐体10内に伝達するノイズに応じて振動する。よって、圧電素子30に生じた電圧を示す信号には、当該ノイズに応じた振動板20の振動によって生じる圧電素子30の電圧を示す信号も含まれる。
【0031】
そこで、信号処理部42bは、振動検出素子41が検出するノイズを示す信号(以下、ノイズ信号と称する)を取得する。信号処理部42bは、上記の圧電素子30に生じた電圧を示す信号からノイズ信号の成分を除去する。これにより、信号処理部42bは、対象物Tの振動の大きさおよび周期などを精度よく算出することができる。信号処理部42bが算出した対象物Tの振動の大きさおよび周期は、表示部12に表示される。
【0032】
次に、第1判定モードにおける信号処理部42bの動作について説明する。
【0033】
図2は、第1判定モードにおいて信号処理部42bが実行するフローチャートである。筐体10が対象物Tに取り付けられている状態で、操作部11において第1判定モードが選択されることで、信号処理部42bは、第1判定モードを選択し、
図2に示すフローチャートを実行する。
【0034】
信号処理部42bは、ステップS1で、予め定められている第1所定信号を圧電素子30に出力する。第1所定信号は、予め定められている所定の変形量で圧電素子30を所定の周期で繰り返し変形させる信号である。第1所定信号によって圧電素子30が繰り返し変形することで、振動板20が振動する。
【0035】
また、第1所定信号によって生じる圧電素子30の所定の変形量および所定の周期は、筐体10内の空間を介して振動検出素子41に伝達する振動(音)を生じさせる振動板20の振幅および周期に対応する。よって、第1所定信号によって生じる振動板20の振動(音)は、筐体10内の空間を介して振動検出素子41に伝達し、振動検出素子41によって検出される。振動検出素子41は、振動板20の振動を示す第1振動信号を制御部42に出力する。
【0036】
信号処理部42bは、ステップS2で、第1振動信号を取得する。続けて、信号処理部42bは、ステップS3で、第1振動信号に基づいて振動板20の第1周波数特性P1を算出する。
【0037】
図3は、振動板20の第1周波数特性P1を示す図である。第1周波数特性P1は、周波数に対する振動板20の感度特性である。
図3において、横軸は周波数を示し、縦軸は感度を示す。なお、第1周波数特性P1の波形が
図3に示す波形に限定されないことは言うまでもない。
【0038】
第1周波数特性P1の波形は、振動板20の材料および形状、圧電素子30の形状、ならびに、対象物Tに対する振動板20の傾斜の度合によって定まる。また、本第1実施形態においては、対象物Tに対する振動板20の傾斜の度合は比較的小さい状態でほぼ変化せず、対象物Tに対する装着体2の締め付け力が変化するものとする。
【0039】
第1周波数特性P1の感度は、対象物Tに対する装着体2の締め付け力が強くなるほど小さくなる。具体的には、対象物Tに対する装着体2の締め付け力が強くなるほど、対象物Tに対する振動板20の押圧力が強くなり、第1所定信号によって生じる振動板20の振幅が小さくなる。よって、対象物Tに対する装着体2の締め付け力が強くなるほど、振動検出素子41が検出する振動板20の振幅、および、振動検出素子41が出力する第1振動信号の振幅が小さくなり、第1振動信号に基づいて算出される第1周波数特性P1の感度は小さくなる。
【0040】
また、対象物Tの外表面に対する振動板20の傾斜の度合が比較的小さい場合、第1周波数特性P1の感度と対象物Tに対する装着体2の締め付け力との比率は、周波数の大きさに関わらずほぼ一定である。すなわち、対象物Tに対する装着体2の締め付け力が強くなるほど、第1周波数特性P1の波形は、
図3において縦軸に沿って感度が小さくなる方向にほぼ平行移動する。
【0041】
また、
図3には、筐体10の取付状態の可否を判定するための基準となる第1基準周波数特性B1が示されている。第1基準周波数特性B1は、振動検出モードにおいて対象物Tの振動が適切に検出される筐体10の取付状態において、第1所定信号に応じた圧電素子30の変形によって生じる振動板20の振動を示す第1振動信号に基づいて算出される。
【0042】
つまり、第1基準周波数特性B1は、振動検出モードにおいて対象物Tの振動が適切に検出される筐体10の取付状態における振動板20の第1周波数特性P1に相当する。
図3には、2つの第1基準周波数特性B1が示されている。2つの第1基準周波数特性B1は、具体的には、第1の第1基準周波数特性B1a、および、第1の第1基準周波数特性B1aより感度が小さい第2の第1基準周波数特性B1bである。
【0043】
第1の第1基準周波数特性B1aは、振動検出モードにおいて対象物Tの振動が適切に検出される筐体10の取付状態に対応する第1周波数特性P1のうち、下限の感度に対応する第1周波数特性P1に相当する。第2の第1基準周波数特性B1bは、振動検出モードにおいて対象物Tの振動が適切に検出される筐体10の取付状態に対応する第1周波数特性P1のうち、上限の感度に対応する第1周波数特性P1に相当する。なお、第1の第1基準周波数特性B1aの感度が振動検出モードにおいて対象物Tの振動が適切に検出されるときの第1周波数特性P1の下限の感度に限定されないこと、および、第2の第1基準周波数特性B1bの感度が振動検出モードにおいて対象物Tの振動が適切に検出されるときの第1周波数特性P1の上限の感度に限定されないことは言うまでもない。
【0044】
2つの第1基準周波数特性B1は、対象物Tの振動が適切に検出されているか否かを検査する実験等によって予め実測されることで導出され、記憶部42aに予め格納されている。
【0045】
信号処理部42bは、
図2に示すステップS4で、第1周波数特性P1と第1基準周波数特性B1とを比較する。信号処理部42bは、具体的には、ステップS4で、
図3に示す第1周波数特性P1において予め定められている所定の周波数fsに対応する感度(点Aの感度)が、所定の周波数fsに対応する第1基準範囲Hb1外であるか否かを判定する。
【0046】
所定の周波数fsは、対象物Tの振動に対応する周波数の範囲外の周波数に定められている。これにより、信号処理部42bは、対象物Tの振動の影響が抑制された状態で、筐体10の取付状態の可否を判定することができる。
【0047】
第1基準範囲Hb1は、第1の第1基準周波数特性B1aにおいて所定の周波数fsに対応する感度(点Bの感度)以上かつ第2の第1基準周波数特性B1bにおいて所定の周波数fsに対応する感度(点Cの感度)以下の範囲である。つまり、第1基準範囲Hb1は、振動検出モードにおいて対象物Tの振動が適切に検出される範囲である。
【0048】
例えば、対象物Tに対する装着体2の締め付け力が比較的強いことで、第1周波数特性P1において所定の周波数fsに対応する感度が比較的低く、所定の周波数fsに対応する第1基準範囲Hb1外である場合(ステップS4でYes)、信号処理部42bは、ステップS5で筐体10の取付状態が不可であると判定する。
【0049】
信号処理部42bは、筐体10の取付状態が不可であると判定した場合、筐体10の取付状態が不可である旨を表示部12に表示する。ユーザは、筐体10の取付状態が不可である旨の表示に基づいて、対象物Tに対する装着体2の締め付け力を調整することで、筐体10の取付状態を見直す。
【0050】
一方、対象物Tに対する装着体2の締め付け力が適切であり、第1周波数特性P1において所定の周波数fsに対応する感度が所定の周波数fsに対応する第1基準範囲Hb1内である場合(ステップS4でNo)、信号処理部42bは、ステップS6で筐体10の取付状態が可であると判定する。
【0051】
信号処理部42bは、筐体10の取付状態が可であると判定した場合、筐体10の取付状態が可である旨を表示部12に表示する。ユーザは、筐体10の取付状態が可である旨の表示に基づいて、当該筐体10の取付状態にて振動検出モードで対象物Tの振動を検出する。
【0052】
このように信号処理部42bは、第1判定モードにおいて、筐体10の取付状態の可否を判定する。ユーザは、第1判定モードの判定結果に基づいて、筐体10の取付状態を調整することができる。したがって、振動検出装置1は、対象物Tの振動を適切に検出することができる。
【0053】
また、上記のように信号処理部42bは、第1判定モードにおいて筐体10の取付状態の判定を行うために、振動検出モードにおいてノイズの検出を行う振動検出素子41を用いている。つまり、振動検出装置1は、部品点数を増加することなく、上記のように筐体10の取付状態の判定を行うことができる。さらに、筐体10が対象物Tに取り付けられている状態において振動検出素子41が対象物Tから離れた位置にあっても、信号処理部42bは、上記のように筐体10の取付状態の判定を行うことができる。つまり、振動検出素子41が対象物Tに接触する必要はなく、振動検出素子41が対象物Tに接触する場合と比べて、振動検出装置1の部品レイアウトの自由度を向上させることができる。したがって、振動検出素子41の小型化を図ることができる。
【0054】
<第1実施形態の第1変形例>
次に、本開示の第1実施形態の第1変形例に係る振動検出装置1について、主として上記の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0055】
図4は、本開示の第1実施形態の第1変形例に係る第1周波数特性P1および第1基準周波数特性B1を示す図である。
【0056】
本第1変形例においては、対象物Tに対する装着体2の締め付け力が強くなると、特定の周波数の範囲Htにおける第1周波数特性P1の感度の低下量は、他の周波数に比べて大きくなる。よって、第1の第1基準周波数特性B1aの感度は、特定の周波数の範囲Htにおいて局所的に小さくなる。このような第1周波数特性P1の波形は、振動板20の材料および形状、ならびに、圧電素子30の形状によって定まる。
【0057】
本第1変形例において所定の周波数fsは、特定の周波数の範囲Ht内に定められる。上記のように、対象物Tに対する装着体2の締め付け力が強くなると、特定の周波数の範囲Htにおける第1周波数特性P1の感度の低下量は、他の周波数に比べて大きくなる。よって、所定の周波数fsが対象物Tの振動に対応する周波数の範囲内にある場合においても、信号処理部42bは、対象物Tの振動の影響が抑制された状態で、筐体10の取付状態の可否を判定することができる。なお、本第1変形例において所定の周波数fsは、対象物Tの振動に対応する周波数の範囲内にあってもよい。
【0058】
また、所定の周波数fsは、複数定められてもよい。この場合、所定の周波数fsは、特定の周波数の範囲Ht内、および、特定の周波数の範囲Ht外の両方に定めてもよい。またこの場合、信号処理部42bは、複数の所定の周波数fsに対応する第1周波数特性P1の感度それぞれが複数の所定の周波数fsに対応する第1基準範囲Hb1外である場合(ステップS4でYes)、筐体10の取付状態が不可であると判定する(ステップS5)。これにより、第1周波数特性P1が局所的に変化する場合においても、筐体10の取付状態の可否をより精度よく判定することができる。なお、信号処理部42bは、複数の所定の周波数fsのうち少なくとも1つの所定の周波数fsに対応する第1周波数特性P1の感度が複数の所定の周波数fsのうち少なくとも1つの所定の周波数fsに対応する第1基準範囲Hb1外である場合(ステップS4でYes)、筐体10の取付状態が不可であると判定してもよい(ステップS5)。
【0059】
<第1実施形態の第2変形例>
次に、本開示の第1実施形態の第2変形例に係る振動検出装置1について、主として上記の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0060】
図5は、本開示の第1実施形態の第2変形例に係る第1周波数特性P1および第1基準周波数特性B1を示す図である。
図5には、第1所定周波数範囲Hf1が示されている。第1所定周波数範囲Hf1には、対象物Tの振動に対応する周波数の範囲が含まれる。なお、第1所定周波数範囲Hf1は、対象物Tの振動に対応する周波数の範囲を含まなくてもよい。
【0061】
図6は、本開示の第1実施形態の第2変形例に係る信号処理部42bが第1判定モードで実行するフローチャートである。
図6に示すフローチャートは、
図2のフローチャートのステップS4に代えて、ステップS14を実行する。
【0062】
信号処理部42bは、ステップS14にて、第1所定周波数範囲Hf1内における第1周波数特性P1の積分値が、第1の第1基準周波数特性B1aの積分値以上かつ第2の第1基準周波数特性B1bの積分値以下の範囲外であるか否かを判定する。
【0063】
例えば、対象物Tに対する装着体2の締め付け力が比較的強いことで、第1所定周波数範囲Hf1内における第1周波数特性P1の積分値が比較的小さく、第1の第1基準周波数特性B1aの積分値以上かつ第2の第1基準周波数特性B1bの積分値以下の範囲外である場合(ステップS14でYes)、信号処理部42bは、ステップS5で筐体10の取付状態が不可であると判定する。
【0064】
一方、対象物Tに対する装着体2の締め付け力が適切であり、第1所定周波数範囲Hf1内における第1周波数特性P1の積分値が、第1の第1基準周波数特性B1aの積分値以上かつ第2の第1基準周波数特性B1bの積分値以下の範囲内である場合(ステップS14でNo)、信号処理部42bは、ステップS6で筐体10の取付状態が可であると判定する。
【0065】
<第1実施形態の第3変形例>
次に、本開示の第1実施形態の第3変形例に係る振動検出装置1について、主として上記の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0066】
図7は、本開示の第1実施形態の第3変形例に係る第1周波数特性P1および第1基準周波数特性B1を示す図である。本第3変形例においては、対象物Tに対する装着体2の締め付け力の強さがほぼ変化せず、対象物Tに対する振動板20の傾斜の度合が変化するものとする。
【0067】
本第3変形例において、第1周波数特性P1の波形は、1つの頂点を有する凸形状である。また、対象物Tに対する振動板20の傾斜の度合が大きくなるほど、第1周波数特性P1の感度が大きくなるとともに、第1周波数特性P1の感度の最大値における波形の曲率が大きくなる。また、対象物Tに対する振動板20の傾斜の度合が大きくなるほど、第1周波数特性P1の感度の最大値に対応する周波数が小さくなる。
【0068】
よって、第1の第1基準周波数特性B1aと第2の第1基準周波数特性B1bとを比較した場合、第2の第1基準周波数特性B1bの波形において感度の最大値(点Fの感度)に対応する曲率は、第1の第1基準周波数特性B1aの波形において感度の最大値(点Eの感度)に対応する曲率より大きい。また、第2の第1基準周波数特性B1bにおける感度の最大値(点Fの感度)に対応する周波数は、第1の第1基準周波数特性B1aにおける感度の最大値(点Eの感度)に対応する周波数より小さい。
【0069】
図8は、本開示の第1実施形態の第3変形例に係る信号処理部42bが第1判定モードで実行するフローチャートである。
図8に示すフローチャートは、
図2のフローチャートのステップS4に代えて、ステップS24を実行する。
【0070】
信号処理部42bは、ステップS24にて、第1周波数特性P1の感度の最大値(点Dの感度)が第2基準範囲Hb2外であるか否かを判定する。第2基準範囲Hb2は、第1の第1基準周波数特性B1aの感度の最大値(点Eの感度)以上かつ第2の第1基準周波数特性B1bの感度(点Fの感度)以下の範囲である。
【0071】
例えば、対象物Tに対する振動板20の傾斜の度合が比較的大きいことで、第1周波数特性P1の感度の最大値が比較的大きく、第2基準範囲Hb2外である場合(ステップS24でYes)、信号処理部42bは、ステップS5で筐体10の取付状態が不可であると判定する。
【0072】
一方、対象物Tに対する振動板20の傾斜の度合が比較的小さく、対象物Tに対する装着体2の締め付け力が適切であり、第1周波数特性P1の感度の最大値が第2基準範囲Hb2内である場合(ステップS24でNo)、信号処理部42bは、ステップS6で筐体10の取付状態が可であると判定する。
【0073】
<第1実施形態の第4変形例>
次に、本開示の第1実施形態の第4変形例に係る振動検出装置1について、主として上記の第1実施形態の第3変形例と異なる部分を説明する。
【0074】
図9は、本開示の第1実施形態の第4変形例に係る信号処理部42bが第1判定モードで実行するフローチャートである。
図9に示すフローチャートは、
図8のフローチャートのステップS24に代えて、ステップS34を実行する。
【0075】
信号処理部42bは、ステップS34にて、
図7に示す第1周波数特性P1の感度の最大値(点Dの感度)に対応する周波数が第3基準範囲Hb3外であるか否かを判定する。第3基準範囲Hb3は、第2の第1基準周波数特性B1bの感度の最大値(点Fの感度)に対応する周波数以上かつ第1の第1基準周波数特性B1aの感度の最大値(点Eの感度)に対応する周波数以下の範囲である。
【0076】
例えば、対象物Tに対する振動板20の傾斜の度合が比較的大きいことで、第1周波数特性P1の感度の最大値に対応する周波数が比較的小さく、第3基準範囲Hb3外である場合(ステップS34でYes)、信号処理部42bは、ステップS5で筐体10の取付状態が不可であると判定する。
【0077】
一方、対象物Tに対する振動板20の傾斜の度合が比較的小さく、対象物Tに対する装着体2の締め付け力が適切であり、第1周波数特性P1の感度の最大値に対応する周波数が第3基準範囲Hb3内である場合、(ステップS34でNo)、信号処理部42bは、ステップS6で筐体10の取付状態が可であると判定する。
【0078】
<第1実施形態の第5変形例>
次に、本開示の第1実施形態の第5変形例に係る振動検出装置1について、主として上記の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0079】
図10は、本開示の第1実施形態の第5変形例に係る第1周波数特性P1および第1基準周波数特性B1を示す図である。本第5変形例において、第1基準周波数特性B1は1つである。また、
図10には、第2所定周波数範囲Hf2が示されている。第2所定周波数範囲Hf2には、対象物Tの振動に対応する周波数の範囲が含まれる。なお、第2所定周波数範囲Hf2は、対象物Tの振動に対応する周波数の範囲を含まなくてもよい。
【0080】
図11は、本開示の第1実施形態の第5変形例に係る信号処理部42bが第1判定モードで実行するフローチャートである。
図11に示すフローチャートは、
図2のフローチャートのステップS4に代えて、ステップS44を実行する。
【0081】
信号処理部42bは、ステップS44にて、
図10に示す第2所定周波数範囲Hf2内における第1周波数特性P1と第1基準周波数特性B1との誤差が第1判定値以上であるか否かを判定する。第1周波数特性P1と第1基準周波数特性B1との誤差は、下記の式(1)を用いて算出される。
【0082】
【0083】
式(1)において、Eは第1周波数特性P1と第1基準周波数特性B1との二乗平均平方根誤差であり、nは2以上の自然数であり、fiは第2所定周波数範囲Hf2内の周波数であり、Sb(fi)は第2所定周波数範囲Hf2内の周波数(fi)に対応する第1基準周波数特性B1の感度であり、Sa(fi)は第2所定周波数範囲Hf2内の周波数(fi)に対応する第1周波数特性P1の感度である。
【0084】
第2所定周波数範囲Hf2内における第1周波数特性P1と第1基準周波数特性B1との誤差が第1判定値以上である場合、例えば対象物Tに対する装着体2の締め付け力が比較的強いまたは比較的弱いことにより、筐体10の取付状態が不適切であり、振動検出モードにおいて対象物Tの振動が適切に検出されなくなる。
【0085】
第1判定値は、対象物Tの振動が適切に検出されているか否かを検査する実験等によって予め実測されることで導出され、記憶部42aに予め記憶されている。
【0086】
例えば対象物Tに対する装着体2の締め付け力が比較的強いことで、第2所定周波数範囲Hf2内における第1周波数特性P1と第1基準周波数特性B1との誤差が比較的大きく、第1判定値以上である場合(ステップS44でYes)、信号処理部42bは、ステップS5で筐体10の取付状態が不可であると判定する。
【0087】
一方、対象物Tに対する装着体2の締め付け力が適切であり、第2所定周波数範囲Hf2内における第1周波数特性P1と第1基準周波数特性B1との誤差が比較的小さく、第1判定値より小さい場合(ステップS44でNo)、信号処理部42bは、ステップS6で筐体10の取付状態が可であると判定する。
【0088】
なお、信号処理部42bは、第1周波数特性P1と第1基準周波数特性B1との誤差を、平均絶対誤差および平均二乗誤差などを用いて算出してもよい。
【0089】
<第2実施形態>
次に、本開示の第2実施形態に係る振動検出装置1について、主として上記の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0090】
本第2実施形態において、複数の動作モードは、筐体10が対象物Tに取り付けられていない状態において振動板20および圧電素子30の一方に異常があるか否かを判定する第2判定モードをさらに有する。
【0091】
図12は、本開示の第2実施形態に係る信号処理部42bが第2判定モードで実行するフローチャートである。筐体10が対象物Tに取り付けられていない状態で、操作部11において第2判定モードが選択されることで、信号処理部42bは、第2判定モードを選択し、
図12に示すフローチャートを実行する。
【0092】
信号処理部42bは、ステップS51で、予め定められている第2所定信号を圧電素子30に出力する。第2所定信号は、予め定められている第2の所定の変形量で圧電素子30を第2の所定の周期で繰り返し変形させる信号である。第2所定信号によって圧電素子30が繰り返し変形することで、振動板20が振動する。なお、第2の所定の変形量および第2の所定の周期は、上記の第1判定モードの第1所定信号における所定の変形量および所定の周期と等しくてもよいし、異なってもよい。
【0093】
また、第2所定信号によって生じる圧電素子30の第2の所定の変形量および第2の所定の周期は、筐体10内の空間を介して振動検出素子41に伝達する振動(音)を生じさせる振動板20の振幅および周期に対応する。よって、第2所定信号によって生じる振動板20の振動(音)は、筐体10内の空間を介して振動検出素子41に伝達し、振動検出素子41によって検出される。振動検出素子41は、振動板20の振動を示す第2振動信号を制御部42に出力する。
【0094】
信号処理部42bは、ステップS52で、第2振動信号を取得する。続けて、信号処理部42bは、ステップS53で、第2振動信号に基づいて振動板20の第2周波数特性P2を算出する。
【0095】
図13は、振動板20の第2周波数特性P2を示す図である。
図13において、横軸は周波数を示し、縦軸は感度を示す。なお、第2周波数特性P2の波形が
図13に示す波形に限定されないことは言うまでもない。
【0096】
図13には、振動板20および圧電素子30が正常である場合に対応する第2周波数特性P2が実線にて示されており、振動板20および圧電素子30の一方の劣化が比較的大きい場合に対応する第2周波数特性P2が破線にて示されている。
【0097】
振動板20および圧電素子30の一方が劣化した場合、第2所定信号に応じた圧電素子30の変形によって生じる振動板20の振幅が小さくなる。よって、振動検出素子41が検出する振動板20の振幅、および、振動検出素子41が出力する第2振動信号の振幅が小さくなり、第2周波数特性P2の感度は小さくなる。つまり、振動板20および圧電素子30の一方の劣化が比較的大きい場合に対応する破線の第2周波数特性P2の感度は、振動板20および圧電素子30が正常である場合に対応する実線の第2周波数特性P2の感度より小さい。
【0098】
信号処理部42bは、ステップS54で、第2周波数特性P2において所定の周波数fsに対応する感度(点Gの感度)が第2判定値J2以下であるか否かを判定する。
【0099】
第2周波数特性P2において所定の周波数fsに対応する感度が比較的小さく、第2判定値J2以下である場合、振動板20および圧電素子30の一方の劣化が比較的大きく、振動検出モードにおいて対象物Tの振動が適切に検出されなくなる。第2判定値J2は、対象物Tの振動が適切に検出されているか否かを検査する実験等によって予め実測されることで導出され、記憶部42aに予め記憶されている。
【0100】
例えば、振動板20の劣化が比較的大きいことで第2周波数特性P2において所定の周波数fsに対応する感度が比較的小さく、第2判定値J2以下である場合(ステップS54でYes)、信号処理部42bは、ステップS55で振動板20および圧電素子30の一方が異常であると判定する。
【0101】
信号処理部42bは、振動板20および圧電素子30の一方が異常であると判定した場合、振動板20および圧電素子30の一方が異常である旨を表示部12に表示する。ユーザは、振動板20および圧電素子30の一方が異常である旨の表示に基づいて、当該振動検出装置1の使用を中止し、別の振動検出装置1を準備する。
【0102】
一方、振動板20の劣化が比較的小さいことで第2周波数特性P2において所定の周波数fsに対応する感度が第2判定値J2より大きい場合(ステップS54でNo)、信号処理部42bは、ステップS56で振動板20および圧電素子30が正常であると判定する。
【0103】
信号処理部42bは、振動板20および圧電素子30が正常であると判定した場合、振動板20および圧電素子30が正常である旨を表示部12に表示する。ユーザは、振動板20および圧電素子30が正常である旨の表示に基づいて、当該振動検出装置1を用いて振動検出モードで対象物Tの振動を検出する。
【0104】
このように信号処理部42bは、第2判定モードにおいて、振動板20および圧電素子30の一方が異常であるか否かを判定する。ユーザは、第2判定モードの判定結果に基づいて、当該振動検出装置1の使用の可否を判断することができる。
【0105】
<他の変形例>
なお、上記した実施の形態は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本開示を限定して解釈するためのものではない。本開示は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本開示にはその等価物も含まれる。
【0106】
例えば、上記の第1実施形態において、信号処理部42bは、ステップS5で筐体10の取付状態が不可であると判定した場合、筐体10の取付状態が不可である旨を表示部12に表示することに代えて、圧電素子30に第3所定信号を出力してもよい。第3所定信号は、圧電素子30が繰り返し変形して振動板20を振動させてブザー音を発生させる信号である。ユーザは、当該ブザー音に基づいて、対象物Tに対する装着体2の締め付け力を調整することで、筐体10の取付状態を見直す。
【0107】
また、上記の第1実施形態において、操作部11および表示部12は筐体10とは別体でもよい。この場合、操作部11および表示部12は、筐体10と別体であり、制御基板40と有線または無線にて電気的に接続される携帯端末(例えばスマートフォン)に含まれてもよい。
【0108】
また、上記の第1実施形態の第5変形例において、信号処理部42bは、ステップS44にて、誤差を用いた判定に代えて、第1周波数特性P1において所定の周波数fsに対応する感度と第1基準周波数特性B1において所定の周波数fsに対応する感度との差が第3判定値以上であるか否かを判定してもよい。
【0109】
第1周波数特性P1において所定の周波数fsに対応する感度と第1基準周波数特性B1において所定の周波数fsに対応する感度との差が第3判定値以上である場合、例えば対象物Tに対する装着体2の締め付け力が比較的強いまたは比較的弱いことにより、筐体10の取付状態が不適切であり、振動検出モードにおいて対象物Tの振動が適切に検出されなくなる。第3判定値は、対象物Tの振動が適切に検出されているか否かを検査する実験等によって予め実測されることで導出され、記憶部42aに予め記憶されている。
【0110】
例えば、対象物Tに対する装着体2の締め付け力が比較的強いことで、第1周波数特性P1において所定の周波数fsに対応する感度と第1基準周波数特性B1において所定の周波数fsに対応する感度との差が比較的大きく、第3判定値以上である場合(ステップS44でYes)、信号処理部42bは、ステップS5で筐体10の取付状態が不可であると判定する。
【0111】
一方、対象物Tに対する装着体2の締め付け力が適切であり、第1周波数特性P1において所定の周波数fsに対応する感度と第1基準周波数特性B1において所定の周波数fsに対応する感度との差が第3判定値より小さい場合(ステップS44でNo)、信号処理部42bは、ステップS6で筐体10の取付状態が可であると判定する。
【0112】
また、上記の第1実施形態の第5変形例において、信号処理部42bは、ステップS44にて、誤差を用いた判定に代えて、第1周波数特性P1の感度の最大値と第1基準周波数特性B1の感度の最大値との差が第4判定値以上であるか否かを判定してもよい。
【0113】
第1周波数特性P1の感度の最大値と第1基準周波数特性B1の感度の最大値との差が第4判定値以上である場合、例えば対象物Tに対する振動板20の傾斜の度合が比較的大きいことにより、筐体10の取付状態が不適切であり、振動検出モードにおいて対象物Tの振動が適切に検出されなくなる。第4判定値は、対象物Tの振動が適切に検出されているか否かを検査する実験等によって予め実測されることで導出され、記憶部42aに予め記憶されている。
【0114】
例えば、対象物Tに対する振動板20の傾斜の度合が比較的大きいことで、第1周波数特性P1の感度の最大値と第1基準周波数特性B1の感度の最大値との差が比較的大きく、第4判定値以上である場合(ステップS44でYes)、信号処理部42bは、ステップS5で筐体10の取付状態が不可であると判定する。
【0115】
一方、対象物Tに対する振動板20の傾斜の度合が適切であり、第1周波数特性P1の感度の最大値と第1基準周波数特性B1の感度の最大値との差が第4判定値より小さい場合(ステップS44でNo)、信号処理部42bは、ステップS6で筐体10の取付状態が可であると判定する。
【0116】
また、上記の第1実施形態の第5変形例において、信号処理部42bは、ステップS44にて、誤差を用いた判定に代えて、第1周波数特性P1の感度の最大値に対応する周波数と第1基準周波数特性B1の感度の最大値に対応する周波数との差が第5判定値以上であるか否かを判定してもよい。
【0117】
第1周波数特性P1の感度の最大値に対応する周波数と第1基準周波数特性B1の感度の最大値に対応する周波数との差が第5判定値以上である場合、例えば対象物Tに対する振動板20の傾斜の度合が比較的大きいことにより、筐体10の取付状態が不適切であり、振動検出モードにおいて対象物Tの振動が適切に検出されなくなる。第5判定値は、対象物Tの振動が適切に検出されているか否かを検査する実験等によって予め実測されることで導出され、記憶部42aに予め記憶されている。
【0118】
例えば、対象物Tに対する振動板20の傾斜の度合が比較的大きいことで、第1周波数特性P1の感度の最大値に対応する周波数と第1基準周波数特性B1の感度の最大値に対応する周波数との差が比較的大きく、第5判定値以上である場合(ステップS44でYes)、信号処理部42bは、ステップS5で筐体10の取付状態が不可であると判定する。
【0119】
一方、対象物Tに対する振動板20の傾斜の度合が適切であり、第1周波数特性P1の感度の最大値に対応する周波数と第1基準周波数特性B1の感度の最大値に対応する周波数との差が第5判定値より小さい場合(ステップS44でNo)、信号処理部42bは、ステップS6で筐体10の取付状態が可であると判定する。
【0120】
図14は、本開示の第1実施形態の他の変形例に係る振動検出装置1の構成を示す断面図である。本他の変形例に係る振動検出装置1は、軟質部材150をさらに有する。軟質部材150は、振動検出装置1が対象物Tの振動を検出する際に対象物Tの外表面と接触し、対象物Tの振動を振動板20に伝達する。
【0121】
軟質部材150は、接触面151および非接触面152を有する。接触面151は、対象物Tに接触可能な面である。非接触面152は、接触面151が対象物Tに接触している場合に対象物Tから離れている面である。接触面151が対象物Tから離れている状態において、接触面151および非接触面152は、平面状である。
【0122】
本他の変形例において、軟質部材150は板形状であり、接触面151および非接触面152は、互いに反対側に位置する。軟質部材150は、例えば円板形状である。
【0123】
軟質部材150は、柔軟性を有する。軟質部材150は、振動板20より軟質である。軟質部材150は、接触面151が対象物Tに接触しているときに、対象物Tの外表面に沿って接触面151が変形する硬度を有する。軟質部材150のショアA硬度は、50以下である。本他の変形例において、軟質部材150のアスカーC硬度は、およそ15である。なお、軟質部材150の硬度が上記の値に限定されないことは言うまでもない。また、軟質部材150は、弾性を有する。
【0124】
さらに、軟質部材150は、対象物Tの外表面(例えば人体の皮膚)の音響インピーダンスと振動板20の音響インピーダンスの間の音響インピーダンスを有する。これにより、軟質部材150は、対象物Tの振動を適切に伝達することができる。軟質部材150の材料は、高分子材料(例えばシリコンおよびウレタンゴムなど)である。
【0125】
非接触面152には、振動板20の第2板面22が第2板面22の中央から周縁まで貼り付けられている。換言すれば、第2板面22は、第2板面22の隅々まで非接触面152に貼り付けられている。非接触面152と第2板面22とは、接着部材(不図示)を介して貼り付けられている。非接触面152と第2板面22との間には、接着部材以外の部材が介在していない。これにより、非接触面152および接触面151に軟質部材150の厚み方向に沿う凸形状および凹形状が生じることが抑制される。接着部材は、粘着性を有するテープで形成されてもよいし、接着剤が硬化することで形成されてもよい。
【0126】
柔軟性を有する軟質部材150が対象物Tに接触することで、振動検出装置1の対象物Tに対する密着性が向上し、振動検出装置1は、対象物Tの振動をより精度よく検出することができる。
【0127】
なお、本開示は、以下のような構成の組み合わせであってもよい。
【0128】
(1)
対象物に取り付け可能な筐体と、
前記筐体が前記対象物に取り付けられている状態において前記対象物の振動に応じて振動可能な振動板と、
前記振動板に配置されている圧電素子と、
前記筐体において前記振動板から離れた部位に配置される振動検出素子と、
複数の動作モードのうち1つの動作モードを選択して動作する制御部と、を備え、
前記複数の動作モードは、前記対象物の振動を検出する振動検出モード、および、前記対象物に対する前記筐体の取付状態の可否を判定する第1判定モードを有し、
前記第1判定モードにおいて、前記制御部は、
前記筐体が前記対象物に取り付けられている状態で予め定められている第1所定信号を前記圧電素子に出力し、
前記第1所定信号に応じた前記圧電素子の変形によって生じる前記振動板の振動を示す第1振動信号を前記振動検出素子から取得し、
前記第1振動信号に基づいて前記振動板の第1周波数特性を算出し、
前記第1周波数特性と第1基準周波数特性とを比較して前記筐体の取付状態の可否を判定する、
振動検出装置。
【0129】
(2)
前記第1基準周波数特性は、第1の第1基準周波数特性および前記第1の第1基準周波数特性より感度が大きい第2の第1基準周波数特性を有し、
前記第1判定モードにおいて、前記制御部は、
前記第1周波数特性において予め定められている所定の周波数に対応する感度が、前記第1の第1基準周波数特性において前記所定の周波数に対応する感度以上かつ前記第2の第1基準周波数特性において前記所定の周波数に対応する感度以下の第1基準範囲外にある場合、前記筐体の取付状態が不可であると判定する、
(1)に記載の振動検出装置。
【0130】
(3)
前記所定の周波数は、前記対象物の振動に対応する周波数の範囲外の周波数である、
(2)に記載の振動検出装置。
【0131】
(4)
前記第1基準周波数特性は、第1の第1基準周波数特性および前記第1の第1基準周波数特性より感度が大きい第2の第1基準周波数特性を有し、
前記第1判定モードにおいて、前記制御部は、
前記第1周波数特性における感度の最大値が、前記第1の第1基準周波数特性の感度の最大値以上かつ前記第2の第1基準周波数特性の感度の最大値以下の第2基準範囲外にある場合、前記筐体の取付状態が不可であると判定する、
(1)から(3)の何れか1つに記載の振動検出装置。
【0132】
(5)
前記第1基準周波数特性は、第1の第1基準周波数特性および前記第1の第1基準周波数特性より感度が大きい第2の第1基準周波数特性を有し、
前記第1判定モードにおいて、前記制御部は、
前記第1周波数特性の感度の最大値に対応する周波数が、前記第1の第1基準周波数特性の感度の最大値に対応する周波数以上かつ前記第2の第1基準周波数特性の感度の最大値に対応する周波数以下の第3基準範囲外にある場合、前記筐体の取付状態が不可であると判定する、
(1)から(4)の何れか1つに記載の振動検出装置。
【0133】
(6)
前記第1判定モードにおいて、前記制御部は、
予め定められている所定周波数範囲内における前記第1周波数特性と前記第1基準周波数特性との誤差が第1判定値以上である場合、前記筐体の取付状態が不可であると判定する、
(1)から(5)の何れか1つに記載の振動検出装置。
【0134】
(7)
前記複数の動作モードは、前記筐体が前記対象物に取り付けられていない状態において前記振動板および前記圧電素子の一方に異常があるか否かを判定する第2判定モードをさらに有し、
前記第2判定モードにおいて、前記制御部は、
前記筐体が前記対象物に取り付けられていない状態で予め定められている第2所定信号を前記圧電素子に出力し、
前記第2所定信号に応じた前記圧電素子の変化によって生じる前記振動板の振動を示す第2振動信号を前記振動検出素子から取得し、
前記第2振動信号に基づいて前記振動板の第2周波数特性を算出し、
前記第2周波数特性において予め定められている所定の周波数に対応する感度が第2判定値以下である場合、前記振動板および前記圧電素子の一方に異常があると判定する、
(1)から(6)の何れか1つに記載の振動検出装置。
【符号の説明】
【0135】
1 振動検出装置
10 筐体
20 振動板
30 圧電素子
41 振動検出素子
42 制御部
B1 第1基準周波数特性
B1a 第1の第1基準周波数特性
B1b 第2の第1基準周波数特性
fs 所定の周波数
Hb1 第1基準範囲
Hb2 第2基準範囲
Hb3 第3基準範囲
Hf1 第1所定周波数範囲
Hf2 第2所定周波数範囲(所定周波数範囲)
J2 第2判定値
P1 第1周波数特性
P2 第2周波数特性
T 対象物