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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168755
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】高周波モジュール及び通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/38 20150101AFI20241128BHJP
   H04B 1/00 20060101ALI20241128BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H04B1/38
H04B1/00 260
H04B1/00 257
H01L23/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085681
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 礼滋
(72)【発明者】
【氏名】可児 広幸
(72)【発明者】
【氏名】竹内 壮央
【テーマコード(参考)】
5K011
【Fターム(参考)】
5K011AA06
5K011BA02
5K011BA03
5K011BA04
5K011DA02
5K011DA27
5K011JA01
5K011KA18
(57)【要約】
【課題】信号品質の向上と小型化とを両立する。
【解決手段】高周波モジュール1は、主面90a及び90bを有するモジュール基板90と、モジュール基板90に配置された送信フィルタ41と、モジュール基板90に配置された、送信フィルタ43a及び受信フィルタ43bを含むデュプレクサ43と、送信フィルタ41及びデュプレクサ43との接続を切り替えるアンテナスイッチ50と、送信フィルタ41及び43aの接続を切り替えるスイッチ30と、を備え、送信フィルタ41は、FDD用の第1バンドのアップリンク動作バンドを含む通過帯域を有し、送信フィルタ43aは、第1バンドのアップリンク動作バンドを含む通過帯域を有し、受信フィルタ43bは、第1バンドのダウンリンク動作バンドを含む通過帯域を有し、送信フィルタ41と受信フィルタ43bとは、主面90a側で積層されている。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び当該第1主面の反対側の第2主面を有するモジュール基板と、
前記モジュール基板に配置された第1弾性波フィルタと、
前記モジュール基板に配置された、第2弾性波フィルタ及び第3弾性波フィルタを含むデュプレクサと、
前記第1弾性波フィルタ及び前記デュプレクサとの接続を切り替えるアンテナスイッチと、
前記第1弾性波フィルタ及び前記第2弾性波フィルタの接続を切り替える送信側スイッチと、
を備え、
前記第1弾性波フィルタは、FDD(Frequency Division Duplex)用の第1バンドのアップリンク動作バンドを含む通過帯域を有し、
前記第2弾性波フィルタは、前記第1バンドのアップリンク動作バンドを含む通過帯域を有し、
前記第3弾性波フィルタは、前記第1バンドのダウンリンク動作バンドを含む通過帯域を有し、
前記第1弾性波フィルタと前記第3弾性波フィルタとは、前記第1主面側で積層されている、
高周波モジュール。
【請求項2】
前記送信側スイッチを介して前記第1弾性波フィルタ及び前記第2弾性波フィルタに接続された電力増幅器を備える、
請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項3】
前記第1主面の平面視において、前記電力増幅器と前記第1弾性波フィルタとの距離は、前記電力増幅器と前記第2弾性波フィルタとの距離より長い、
請求項2に記載の高周波モジュール。
【請求項4】
前記第1弾性波フィルタ、前記第3弾性波フィルタ及び前記第1主面を覆う樹脂部材と、
前記樹脂部材の表面を覆うシールド膜と、を備え、
前記第1弾性波フィルタは、前記シールド膜に接触している、
請求項1~3のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【請求項5】
前記第3弾性波フィルタは、前記モジュール基板と前記第1弾性波フィルタとの間に位置しており、
前記第1弾性波フィルタは、前記第3弾性波フィルタに対向する面とは反対側の面で前記シールド膜に接触している、
請求項4に記載の高周波モジュール。
【請求項6】
前記送信側スイッチは、
前記電力増幅器の出力端に接続される第1共通端子と、
前記第1弾性波フィルタの入力端に接続される第1選択端子と、
前記第2弾性波フィルタの入力端に接続される第2選択端子と、を有し、
前記アンテナスイッチは、
アンテナに接続される第2共通端子と、
前記第1弾性波フィルタの出力端に接続される第3選択端子と、
前記第2弾性波フィルタの出力端及び前記第3弾性波フィルタの入力端に接続される第4選択端子と、を有し、
前記第1共通端子と前記第1選択端子とが接続された場合に、前記第2共通端子は、前記第3選択端子に接続されて、前記第4選択端子には接続されない、
請求項2又は3に記載の高周波モジュール。
【請求項7】
前記第1共通端子と前記第2選択端子とが接続された場合に、前記第2共通端子は、前記第4選択端子に接続されて、前記第3選択端子には接続されない、
請求項6に記載の高周波モジュール。
【請求項8】
前記第1弾性波フィルタは、パワークラス2に対応し、
前記第2弾性波フィルタは、パワークラス3に対応する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【請求項9】
前記第1弾性波フィルタの耐電力は、前記第2弾性波フィルタの耐電力より高い、
請求項1~3のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【請求項10】
前記第1弾性波フィルタのサイズは、前記第2弾性波フィルタのサイズより大きい、
請求項1~3のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【請求項11】
前記第3弾性波フィルタは、前記モジュール基板と前記第1弾性波フィルタとの間に位置しており、
前記第3弾性波フィルタは、前記第1主面の平面視において、前記第1弾性波フィルタより小さい、
請求項1~3のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【請求項12】
前記第3弾性波フィルタに接続された低雑音増幅器を備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【請求項13】
前記第2弾性波フィルタは、前記第1主面に配置され、
前記アンテナスイッチ及び前記送信側スイッチは、前記第2主面に配置されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【請求項14】
前記第2弾性波フィルタ、前記アンテナスイッチ及び前記送信側スイッチは、前記第1主面に配置されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【請求項15】
請求項1~3のいずれか1項に記載の高周波モジュールと、
前記高周波モジュールを伝送される高周波信号を処理するよう構成された信号処理回路と、を備える、
通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波モジュール及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの移動体通信装置では、特に、マルチバンド化の進展に伴い、部品点数が増加して通信装置が大型化することが懸念されている。特許文献1には、複数のバンドに対応するフロントエンドモジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開2015/0133067号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、複数のフィルタが必要となるため、モジュールの小型化が難しい。また、信号の同時伝送を許容する場合には、信号間のアイソレーションが十分でないと信号品質が劣化する。
【0005】
そこで、本発明は、信号品質の向上と小型化とを両立することができる高周波モジュール及び通信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る高周波モジュールは、第1主面及び当該第1主面の反対側の第2主面を有するモジュール基板と、モジュール基板に配置された第1弾性波フィルタと、モジュール基板に配置された、第2弾性波フィルタ及び第3弾性波フィルタを含むデュプレクサと、第1弾性波フィルタ及びデュプレクサとの接続を切り替えるアンテナスイッチと、第1弾性波フィルタ及び第2弾性波フィルタの接続を切り替える送信側スイッチと、備え、第1弾性波フィルタは、FDD(Frequency Division Duplex)用の第1バンドのアップリンク動作バンドを含む通過帯域を有し、第2弾性波フィルタは、第1バンドのアップリンク動作バンドを含む通過帯域を有し、第3弾性波フィルタは、第1バンドのダウンリンク動作バンドを含む通過帯域を有し、第1弾性波フィルタと第3弾性波フィルタとは、第1主面側で積層されている。
【0007】
本発明の一態様に係る通信装置は、上記一態様に係る高周波モジュールと、高周波モジュールを伝送される高周波信号を処理するよう構成された信号処理回路と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、信号品質の向上と小型化とを両立することができる高周波モジュール及び通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態に係る高周波モジュール及び通信装置の回路構成図である。
図2A図2Aは、実施の形態に係る高周波モジュールのPC2モードで動作時のスイッチの接続状態を示す回路構成図である。
図2B図2Bは、実施の形態に係る高周波モジュールのPC3モードで動作時のスイッチの接続状態を示す回路構成図である。
図3A図3Aは、実施例1に係る高周波モジュールの平面図である。
図3B図3Bは、実施例1に係る高周波モジュールの断面図である。
図4A図4Aは、実施例2に係る高周波モジュールの平面図である。
図4B図4Bは、実施例2に係る高周波モジュールの断面図である。
図5A図5Aは、実施例3に係る高周波モジュールの平面図である。
図5B図5Bは、実施例3に係る高周波モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。
【0011】
なお、各図は、本発明を示すために適宜強調、省略、又は比率の調整を行った模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではなく、実際の形状、位置関係、及び比率とは異なる場合がある。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡素化される場合がある。
【0012】
以下の各図において、x軸及びy軸は、基板の主面と平行な平面上で互いに直交する軸である。具体的には、平面視において基板が矩形状を有する場合、x軸は、基板の第1辺に平行であり、y軸は、基板の第1辺と直交する第2辺に平行である。また、z軸は、基板の主面に垂直な軸であり、その正方向は上方向を示し、その負方向は下方向を示す。
【0013】
本発明の部品配置において、「基板の平面視」とは、z軸正側からxy平面に物体を正投影して見ることを意味する。「Aは平面視においてBと重なる」とは、xy平面に正投影されたAの領域の少なくとも一部が、xy平面に正投影されたBの領域の少なくとも一部と重なることを意味する。また、「AがB及びCの間に配置される」とは、B内の任意の点とC内の任意の点とを結ぶ複数の線分のうちの少なくとも1つがAを通ることを意味する。
【0014】
本発明の部品配置において、「部品が基板に配置される」とは、部品が基板の主面上に配置されること、及び、部品が基板内に配置されることを含む。「部品が基板の主面に配置される」とは、部品が基板の主面に接触して配置されることに加えて、部品が主面と接触せずに当該主面の上方に配置されること(例えば、部品が主面と接触して配置された他の部品上に積層されること)を含む。また、「部品が基板の主面に配置される」は、主面に形成された凹部に部品が配置されることを含んでもよい。「部品が基板内に配置される」とは、部品がモジュール基板内にカプセル化されることに加えて、部品の全部が基板の両主面の間に配置されているが部品の一部が基板に覆われていないこと、及び、部品の一部のみが基板内に配置されていることを含む。
【0015】
本開示の回路構成において、「接続される」とは、接続端子及び/又は配線導体で直接接続される場合だけでなく、他の回路素子を介して電気的に接続される場合も含む。「A及びBの間に接続される」とは、A及びBの間でA及びBの両方に接続されることを意味する。
【0016】
また、本開示において、「AとBとの距離」とは、AとBとの最短距離を意味し、具体的には、A内の任意の点とB内の任意の点とを結ぶ無数の線分のうち、最短になる線分の長さに相当する。
【0017】
また、回路部品とは、能動素子及び/又は受動素子を含む部品を意味する。つまり、回路部品には、トランジスタ又はダイオード等を含む能動部品、及び、インダクタ、トランスフォーマ、キャパシタ又は抵抗等を含む受動部品が含まれ、端子、コネクタ又は配線等を含む電気機械部品が含まれない。
【0018】
本発明において、「端子」とは、要素内の導体が終了するポイントを意味する。なお、要素間の導体のインピーダンスが十分に低い場合には、端子は、単一のポイントだけでなく、要素間の導体上の任意のポイント又は導体全体と解釈される。
【0019】
また、「平行」及び「垂直」などの要素間の関係性を示す用語、「矩形」などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表すのではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の誤差をも含むことを意味する。
【0020】
また、「AとBとが積層される」とは、AとBとが平面視で重なっていることを意味する。AとBとは接触していてもよく、AとBとの間に他の部材が介在していてもよい。
【0021】
また、本明細書において、「第1」、「第2」などの序数詞は、特に断りの無い限り、構成要素の数又は順序を意味するものではなく、同種の構成要素の混同を避け、区別する目的で用いられている。
【0022】
(実施の形態)
[1 高周波モジュール1及び通信装置4の回路構成]
本実施の形態に係る高周波モジュール1及び通信装置4の回路構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係る高周波モジュール1及び通信装置4の回路構成図である。
【0023】
なお、図1は、例示的な回路構成であり、通信装置4は、多種多様な回路実装及び回路技術のいずれかを使用して実装され得る。したがって、以下に提供される通信装置4の説明は、限定的に解釈されるべきではない。
【0024】
[1.1 通信装置4の回路構成]
まず、通信装置4の回路構成について説明する。
【0025】
本実施の形態に係る通信装置4は、セルラーネットワーク(モバイルネットワークともいう)におけるユーザ端末(UE:User Equipment)に相当し、典型的には、携帯電話、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ウェアラブル・デバイス等である。なお、通信装置4は、IoT(Internet of Things)センサ・デバイス、医療/ヘルスケア・デバイス、車、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)(いわゆるドローン)、無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)であってもよい。また、通信装置4は、セルラーネットワークにおけるBS(Base Station)として機能してもよい。
【0026】
図1に示すように、通信装置4は、高周波モジュール1と、アンテナ2と、RF信号処理回路(RFIC)3と、を備える。
【0027】
高周波モジュール1は、アンテナ2とRFIC3との間で高周波信号を伝送する。高周波モジュール1の具体的な回路構成については後述する。
【0028】
アンテナ2は、高周波モジュール1のアンテナ接続端子100に接続される。アンテナ2は、高周波モジュール1から出力された高周波信号(送信信号)を送信する。また、アンテナ2は、外部から高周波信号(受信信号)を受信して高周波モジュール1へ出力する。
【0029】
RFIC3は、高周波信号を処理するよう構成された信号処理回路の一例である。具体的には、RFIC3は、高周波モジュール1の受信経路を介して入力された高周波受信信号を、ダウンコンバート等により信号処理し、当該信号処理して生成された受信信号を、ベースバンド信号処理回路(BBIC、図示せず)へ出力する。また、RFIC3は、BBICから入力された送信信号をアップコンバート等により信号処理し、当該信号処理して生成された高周波送信信号を、高周波モジュール1の送信経路に出力する。また、RFIC3は、高周波モジュール1が有するスイッチ及び増幅器等を制御する制御部を有する。なお、RFIC3の制御部としての機能の一部又は全部は、RFIC3の外部に実装されてもよく、例えば、高周波モジュール1又はBBICに実装されてもよい。
【0030】
なお、通信装置4の構成は、図1に示した例に限定されない。例えば、通信装置4は、BBICを備えてもよい。また、通信装置4は、複数のアンテナ2を備えてもよい。あるいは、通信装置4は、アンテナ2を備えていなくてもよい。
【0031】
[1.2 高周波モジュール1の回路構成]
次に、高周波モジュール1の回路構成について説明する。
【0032】
図1に示すように、高周波モジュール1は、電力増幅器10と、PA制御回路12と、低雑音増幅器20と、スイッチ30と、送信フィルタ41、42、43a及び44aと、受信フィルタ43b、44b及び45と、アンテナスイッチ50と、整合回路60と、アンテナ接続端子100と、高周波入力端子110と、高周波出力端子120と、制御端子130と、を備える。
【0033】
アンテナ接続端子100、高周波入力端子110、高周波出力端子120及び制御端子130はそれぞれ、高周波モジュール1が備える外部接続端子である。アンテナ接続端子100は、高周波モジュール1の外部でアンテナ2に接続され、高周波モジュール1の内部でアンテナスイッチ50の共通端子50aに接続される。高周波入力端子110は、高周波モジュール1の外部でRFIC3に接続され、高周波モジュール1の内部で電力増幅器10の入力端に接続される。高周波出力端子120は、高周波モジュール1の外部でRFIC3に接続され、高周波モジュール1の内部で低雑音増幅器20の出力端に接続される。制御端子130は、高周波モジュール1の外部でRFIC3に接続され、高周波モジュール1の内部でPA制御回路12に接続される。
【0034】
電力増幅器10は、RFIC3から出力された送信信号を増幅するよう構成されている。電力増幅器10は、スイッチ30を介して、送信フィルタ41、42、43a及び44aに接続される。具体的には、電力増幅器10の入力端は、高周波入力端子110に接続される。電力増幅器10の出力端は、整合回路60及びスイッチ30を介して送信フィルタ41、42、43a及び44aに接続される。
【0035】
本実施の形態では、電力増幅器10は、複数のバンドの送信信号を増幅することができる。なお、バンドは、無線アクセス技術(RAT:Radio Access Technology)を用いて構築される通信システムのために、標準化団体など(例えば3GPP(登録商標)、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)等)によって予め定義された周波数バンドを意味する。各実施の形態等では、通信システムとしては、例えばLTE(Long Term Evolution)システム、5G(5th Generation)-NR(New Radio)システム、及びWLAN(Wireless Local Area Network)システム等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0036】
また、アップリンク動作バンドとは、上記バンドのうちのアップリンク用に指定された周波数範囲を意味する。また、ダウンリンク動作バンドとは、上記バンドのうちのダウンリンク用に指定された周波数範囲を意味する。
【0037】
また、電力増幅器10は、複数のパワークラスに対応して送信信号の増幅が可能である。パワークラスとは、最大出力パワーで規定される端末の出力パワーの分類であり、パワークラスの値が小さいほど高い最大出力パワーが許容されることを示す。例えば、3GPP(登録商標)では、パワークラス1(PC1)の最大出力パワーは31dBmであり、パワークラス1.5(PC1.5)の最大出力パワーは29dBmであり、パワークラス2(PC2)の最大出力パワーは26dBmであり、パワークラス3(PC3)の最大出力パワーは23dBmである。電力増幅器10は、少なくともPC2及びPC3に対応した増幅動作が可能である。
【0038】
端末の最大出力パワーは、アンテナ端における最大出力パワーで定義される。ユーザ端末(UE)の最大出力パワーの測定は、3GPP(登録商標)等によって定義された方法で行われる。例えば、図1において、アンテナ2における放射電力を測定することで最大出力パワーが測定される。なお、放射電力の測定の代わりに、アンテナ2の近傍に端子を設けて、その端子に計測器(例えばスペクトルアナライザなど)を接続することで、アンテナ2の最大出力パワーを測定することもできる。
【0039】
PA制御回路12は、電力増幅器10を制御する制御回路の一例である。具体的には、PA制御回路12は、電力増幅器10の動作モード(パワークラス)の切り替えを行う。例えば、PA制御回路12は、電力増幅器10に供給するバイアスを調整することで、送信信号が所望のパワーでアンテナ2から送信されるように送信信号の増幅を行う。
【0040】
また、PA制御回路12は、スイッチ30及びアンテナスイッチ50を制御してもよい。例えば、PA制御回路12は、電力増幅器10の動作モードに応じて、スイッチ30及びアンテナスイッチ50の接続の切り替えを制御してもよい。
【0041】
低雑音増幅器20は、アンテナ2で受信された受信信号を増幅するよう構成されている。低雑音増幅器20は、受信フィルタ43b、44b及び45に接続される。具体的には、低雑音増幅器20の入力端は、受信フィルタ43b、44b及び45の各々の出力端に接続される。低雑音増幅器20の出力端は、高周波出力端子120に接続される。
【0042】
スイッチ30は、送信側スイッチの一例であり、電力増幅器10が出力する送信信号の伝送先を切り替えるためのスイッチである。スイッチ30は、共通端子30aと、選択端子30b、30c、30d及び30eと、を備える。
【0043】
共通端子30aは、第1共通端子の一例であり、電力増幅器10の出力端に接続される。本実施の形態では、共通端子30aは、整合回路60を介して電力増幅器10の出力端に接続される。選択端子30bは、第1選択端子の一例であり、送信フィルタ41の入力端に接続される。選択端子30cは、第1選択端子の一例であり、送信フィルタ42の入力端に接続される。選択端子30dは、第2選択端子の一例であり、送信フィルタ43aの入力端に接続される。選択端子30eは、第2選択端子の一例であり、送信フィルタ44aの入力端に接続される。
【0044】
スイッチ30は、SP4T(Single-Pole Four-Throw)型のスイッチである。共通端子30aは、選択端子30b、30c、30d及び30eの各々に接続可能である。共通端子30aは、選択端子30b、30c、30d及び30eのうちの1つに接続されている場合には、残りの3つには接続されない。共通端子30aと選択端子30b、30c、30d及び30eとの接続は、電力増幅器10の動作モード(パワークラス)、及び、送信信号のバンドに基づいて切り替えられる。接続の切り替えは、例えば、PA制御回路12、RFIC3又は図示されない他の制御部等によって行われる。なお、スイッチ30の構成は、図1に示した例には限定されない。例えば、スイッチ30は、複数の共通端子(例えば、複数の電力増幅器に接続された共通端子)を含んでもよく、選択端子の個数も特に限定されない。
【0045】
アンテナスイッチ50は、アンテナ2に接続される伝送経路を切り替えるためのスイッチである。アンテナスイッチ50は、共通端子50aと、選択端子50b、50c、50d及び50eと、を備える。
【0046】
共通端子50aは、第2共通端子の一例であり、アンテナ接続端子100を介してアンテナ2に接続される。選択端子50bは、第3選択端子の一例であり、送信フィルタ41の出力端に接続される。選択端子50cは、第3選択端子の一例であり、送信フィルタ42の出力端に接続される。選択端子50dは、第4選択端子の一例であり、送信フィルタ43a及び44aの各々の出力端と、受信フィルタ43b、44b及び45の各々の入力端とに接続される。選択端子50eは、第4選択端子の一例である。選択端子50eは、例えば、図示しない他のフィルタに接続されるが、これに限定されない。例えば、選択端子50eは、送信フィルタ44aの出力端及び受信フィルタ44bの入力端、並びに/又は、受信フィルタ45の入力端に接続されてもよい。なお、選択端子50eは設けられていなくてもよい。
【0047】
アンテナスイッチ50は、SP4T型のスイッチである。共通端子50aは、選択端子50b、50c、50d及び50eの各々に接続可能である。共通端子50aは、選択端子50b、50c、50d及び50eのうちの1つに接続されている場合には、残りの3つには接続されない。共通端子50aと選択端子50b、50c、50d及び50eとの接続は、電力増幅器10の動作モード(パワークラス)、及び、送信信号のバンドに基づいて切り替えられる。接続の切り替えは、例えば、PA制御回路12、RFIC3又は図示されない他の制御部等によって行われる。なお、アンテナスイッチ50の構成は、図1に示した例には限定されない。例えば、アンテナスイッチ50は、複数の共通端子(例えば、複数のアンテナに接続された共通端子)を含んでもよく、選択端子の個数も特に限定されない。
【0048】
送信フィルタ41は、第1弾性波フィルタの一例であり、周波数分割複信(FDD)用の第1バンドのアップリンク動作バンドを含む通過帯域を有する。第1バンドは、一例として、4G-LTEのバンドB1又は5G-NRのバンドn1であるが、これに限定されない。送信フィルタ41の入力端は、スイッチ30の選択端子30bに接続される。送信フィルタ41の出力端は、アンテナスイッチ50の選択端子50bに接続される。
【0049】
なお、弾性波フィルタは、具体的には、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタである。弾性波フィルタは、複数の共振子を有し、その組み合わせによって所望の通過帯域を有するフィルタを実現している。また、弾性波フィルタは、BAW(Bulk Acoustic Wave)フィルタであってもよい。BAWフィルタの共振子構造としては、例えば、FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)又はSMR(Solidly Mounted Resonator)等が利用できる。
【0050】
送信フィルタ42は、弾性波フィルタの一例であり、FDD用の第2バンドのアップリンク動作バンドを含む通過帯域を有する。第2バンドは、一例として、4G-LTEのバンドB3又は5G-NRのバンドn3であるが、これに限定されない。送信フィルタ42の入力端は、スイッチ30の選択端子30cに接続される。送信フィルタ42の出力端は、アンテナスイッチ50の選択端子50cに接続される。
【0051】
送信フィルタ43aは、第2弾性波フィルタの一例であり、FDD用の第1バンドのアップリンク動作バンドを含む通過帯域を有する。例えば、送信フィルタ43aの通過帯域は、送信フィルタ41の通過帯域と同じ、又は、互いの通過帯域の少なくとも一部が重複している。送信フィルタ43aの入力端は、スイッチ30の選択端子30dに接続される。送信フィルタ43aの出力端は、アンテナスイッチ50の選択端子50dに接続される。なお、送信フィルタ43aは、受信フィルタ43bとともに、デュプレクサ43(図3A等を参照)を構成している。
【0052】
送信フィルタ44aは、弾性波フィルタの一例であり、FDD用の第2バンドのアップリンク動作バンドを含む通過帯域を有する。例えば、送信フィルタ44aの通過帯域は、送信フィルタ42の通過帯域と同じ、又は、互いの通過帯域の少なくとも一部が重複している。送信フィルタ44aの入力端は、スイッチ30の選択端子30eに接続される。送信フィルタ44aの出力端は、アンテナスイッチ50の選択端子50dに接続される。なお、送信フィルタ44aの出力端は、アンテナスイッチ50の選択端子50eに接続されてもよい。なお、送信フィルタ44aは、受信フィルタ44bとともに、デュプレクサ44(図3A等を参照)を構成している。
【0053】
送信フィルタ41及び42は、PC2に対応している。送信フィルタ43a及び44aは、PC3に対応している。つまり、送信フィルタ41及び43aは、同じアップリンク動作バンドを通過帯域として有するが、通過させる信号の最大出力パワー(パワークラス)が相違する。具体的には、送信フィルタ41を通過する信号の最大出力パワーは、送信フィルタ43aを通過する信号の最大出力パワーより大きい。最大出力パワーが大きい信号を通過可能にするため、送信フィルタ41の耐電力は、送信フィルタ43aの耐電力より高い。
【0054】
例えば、送信フィルタ41のサイズは、送信フィルタ43aのサイズより大きい。サイズが大きくなることにより、耐電力を高めることができる。サイズは、例えば、モジュール基板90(図3A図3B等を参照)に実装された場合において、モジュール基板90の主面90aの平面視における専有面積で表される。あるいは、サイズは、体積であってもよい。
【0055】
また、送信フィルタ41の共振子の数が、送信フィルタ43aの共振子の数より多くてもよい。共振子の数が多くなることにより、耐電力を高めることができる。あるいは、一般的には、BAWフィルタの耐電力がSAWフィルタの耐電力より高いので、送信フィルタ41がBAWフィルタであり、送信フィルタ43aがSAWフィルタであってもよい。また、材料、電極形状等によって、送信フィルタ41及び43aの耐電力に差が設けられてもよい。
【0056】
送信フィルタ42と送信フィルタ44aとも同様である。具体的には、送信フィルタ42の耐電力は、送信フィルタ44aの耐電力より高い。例えば、送信フィルタ42のサイズは、送信フィルタ44aのサイズより大きい。また、送信フィルタ42の共振子の数が、送信フィルタ44aの共振子の数より多くてもよい。また、送信フィルタ42がBAWフィルタであり、送信フィルタ44aがSAWフィルタであってもよい。
【0057】
受信フィルタ43bは、第3弾性波フィルタの一例であり、FDD用の第1バンドのダウンリンク動作バンドを含む通過帯域を有する。受信フィルタ43bの入力端は、アンテナスイッチ50の選択端子50dに接続される。受信フィルタ43bの出力端は、低雑音増幅器20の入力端に接続される。
【0058】
受信フィルタ44bは、弾性波フィルタの一例であり、FDD用の第2バンドのダウンリンク動作バンドを含む通過帯域を有する。受信フィルタ44bの入力端は、アンテナスイッチ50の選択端子50dに接続される。受信フィルタ44bの出力端は、低雑音増幅器20の入力端に接続される。なお、受信フィルタ44bの入力端は、アンテナスイッチ50の選択端子50eに接続されてもよい。
【0059】
受信フィルタ45は、弾性波フィルタの一例であり、第3バンドの少なくとも一部を含む通過帯域を有する。本実施の形態では、第3バンドは、時分割複信(TDD:Time Division Duplex)用のバンドであり、例えば、4G-LTEのバンドB40又は5G-NRのバンドn40であるが、これに限定されない。第3バンドは、FDD用のバンドであってもよく、受信フィルタ45は、FDD用のバンドのダウンリンク動作バンドを含む通過帯域を有してもよい。受信フィルタ45の入力端は、アンテナスイッチ50の選択端子50dに接続される。受信フィルタ45の出力端は、低雑音増幅器20の入力端に接続される。なお、受信フィルタ45の入力端は、アンテナスイッチ50の選択端子50eに接続されてもよい。
【0060】
整合回路60は、電力増幅器10の出力インピーダンスを整合させる。整合回路60は、例えば、インダクタ、キャパシタ及び抵抗の少なくとも1つを含んでいる。なお、インピーダンス整合を目的とした整合回路は、整合回路60以外に設けられてもよい。例えば、整合回路は、高周波入力端子110と電力増幅器10の入力端との間、低雑音増幅器20の出力端と高周波出力端子120との間、及び、低雑音増幅器20の入力端と受信フィルタ43b、44b及び45との間などに設けられていてもよい。
【0061】
なお、高周波モジュール1の構成は、図1に示した例に限定されない。例えば、高周波モジュール1は、送信フィルタ42及び44a、並びに、受信フィルタ44b及び45を備えていなくてもよい。この場合、スイッチ30は、選択端子30c及び30eを備えていなくてもよく、アンテナスイッチ50は、選択端子50cを備えていなくてもよい。また、高周波モジュール1は、整合回路60を備えていなくてもよい。この場合、電力増幅器10の出力端は、スイッチ30の共通端子30aに直接接続されている。
【0062】
また、高周波モジュール1は、複数の電力増幅器10及び複数の低雑音増幅器20を備えてもよい。例えば、複数の電力増幅器10は、互いに異なるバンドの送信信号を増幅するよう構成される。複数の低雑音増幅器20は、互いに異なるバンドの受信信号を増幅するよう構成される。
【0063】
あるいは、高周波モジュール1は、電力増幅器10及び低雑音増幅器20を備えていなくてもよい。この場合、スイッチ30の共通端子30aは、高周波モジュール1が備える複数の外部接続端子のうち、高周波モジュール1の外部に設けられた電力増幅器の出力端に接続することができる外部接続端子に接続される。また、受信フィルタ43b、44b及び45の各々の出力端は、高周波モジュール1が備える複数の外部接続端子のうち、高周波モジュール1の外部に設けられた低雑音増幅器の入力端に接続することができる外部接続端子に接続される。
【0064】
また、送信フィルタ42及び44a並びに受信フィルタ44b及び45は、弾性波フィルタでなくてもよい。例えば、送信フィルタ42及び44a並びに受信フィルタ44b及び45は、インダクタ及びキャパシタ等で構成されたLCフィルタであってもよい。
【0065】
[2 動作]
続いて、本実施の形態に係る高周波モジュール1の動作について説明する。以下では、第1バンド(バンドB1)の信号を送受信する場合の動作を中心に説明を行う。なお、高周波モジュール1は、第2バンド(バンドB3)の信号を送受信する場合も、第1バンドと同様の動作を行うことができる。
【0066】
高周波モジュール1は、第1バンドの送信信号を伝送する場合に、PC2モード及びPC3モードのいずれかで動作可能である。すなわち、高周波モジュール1は、状況に応じて、高い最大出力パワー(PC2モード)で送信信号をアンテナ2から送信させることが可能である。
【0067】
送信信号の最大出力パワーが高い場合、具体的には、PC2モードで高周波モジュール1が動作する場合には、発熱量の増加に伴う送信信号の品質の劣化、及び、フィルタ等の回路部品の耐電力が問題となる。このため、本実施の形態1に係る高周波モジュール1では、耐電力が高い送信フィルタ41を設けることにより、PC2モードに対応させている。
【0068】
また、高周波モジュール1では、HD-FDD(Half Duplex - Frequency Division Duplex)方式で送信信号の伝送を行う。具体的には、高周波モジュール1は、PC2モードの場合には、第1バンドの送信信号をTDD方式で送信し、PC3モードの場合には、第1バンドの送信信号をFDD方式で送信する。すなわち、PC3モードの場合には、第1バンドの受信信号を受信可能であるが、PC2モードの場合には、高周波モジュール1は、第1バンドの受信信号を受信しない。
【0069】
図2Aは、本実施の形態に係る高周波モジュール1のPC2モードで動作時の各スイッチの接続状態を示す回路構成図である。図2Aに示すように、PC2モードで動作時には、スイッチ30では、共通端子30aと選択端子30bとが接続され、アンテナスイッチ50では、共通端子50aと選択端子50bとが接続される。これにより、電力増幅器10がPC2モードで増幅した第1バンドの送信信号は、耐電力の高い送信フィルタ41を通過して、アンテナ2から送信される。
【0070】
アンテナスイッチ50では、共通端子50aが選択端子50dには接続されないので、低雑音増幅器20並びに受信フィルタ43b、44b及び45は、アンテナ2から切り離された状態になる。よって、低雑音増幅器20並びに受信フィルタ43b、44b及び45はいずれも動作しないので、これらの回路部品による発熱を抑制することができる。
【0071】
このように、PC2モードでは、主な発熱源が電力増幅器10及び送信フィルタ41になり、他の部品からの発熱が抑制される。発熱が抑制されることにより、送信信号の品質の劣化を抑制することができる。また、熱による影響を受けた耐電力の低下も抑制することができる。また、PC2モードでは、受信信号の受信を行わないことにより、送信経路の回路部品の発熱の影響を受けて受信信号の品質が劣化するのを抑制することができる。
【0072】
図2Bは、本実施の形態に係る高周波モジュール1のPC3モードで動作時の各スイッチの接続状態を示す回路構成図である。図2Bに示すように、PC3モードで動作時には、スイッチ30では、共通端子30aと選択端子30dとが接続され、アンテナスイッチ50では、共通端子50aと選択端子50dとが接続される。これにより、電力増幅器10がPC3モードで増幅した第1バンドの送信信号は、送信フィルタ43aを通過して、アンテナ2から送信される。また、アンテナ2で受信された第1バンドの受信信号は、受信フィルタ43bを通過して低雑音増幅器20で増幅され、RFIC3へ出力される。
【0073】
なお、本実施の形態では、受信フィルタ43b、44b及び45の各入力端が選択端子50dに接続されているので、PC3モードでは、第1バンドの受信信号以外に、第2バンド(バンドB3)の受信信号及び第3バンド(バンドB40)の受信信号の同時受信も可能である。
【0074】
PC3モードでは、PC2モードに比べて、電力増幅器10及び送信フィルタ41での発熱量が抑制される。このため、低雑音増幅器20並びに受信フィルタ43b、44b及び45で発熱があったとしても、適切な放熱が可能である。なお、低雑音増幅器20並びに受信フィルタ43b、44b及び45での発熱量は、通常の場合、電力増幅器10等での発熱量に比べて小さい。よって、PC3モードでは、信号品質の劣化を抑制しながら、同時送受信が可能になる。
【0075】
[3 実施例]
続いて、上述した回路構成を有する高周波モジュール1の具体的な実施例について説明する。
【0076】
[3.1 実施例1]
まず、実施例1に係る高周波モジュール1Aについて、図3A及び図3Bを用いて説明する。
【0077】
図3A及び図3Bはそれぞれ、実施例1に係る高周波モジュール1Aの平面図及び断面図である。図3Aは、z軸の正側からモジュール基板90の主面90aを見た図を表している。図3Aでは、樹脂部材92及び93、シールド膜95並びに電極等の図示を省略している。また、モジュール基板90の主面90bに配置された回路部品、及び、他の回路部品とモジュール基板90の主面90aとの間に配置された回路部品は、破線で表している。また、図3Bは、図3AのIII-III線のうち、x軸に平行な部分における断面(xz断面)を表している。また、図3A及び図3Bでは、分かりやすさを考慮して、各回路部品に“PA”等の文字を付しているが、これらの文字は実際の回路部品には付されていなくてもよい。このような図示の手法は、後述する図4A図5Bにおいても同様である。
【0078】
図3A及び図3Bに示す高周波モジュール1Aの回路構成は、図1に示した高周波モジュール1の回路構成と同じである。高周波モジュール1Aは、モジュール基板90と、樹脂部材92及び93と、シールド膜95と、を備える。
【0079】
モジュール基板90は、高周波モジュール1Aを構成する回路部品を実装する基板である。モジュール基板90としては、例えば、複数の誘電体層の積層構造を有する低温同時焼成セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramics:LTCC)基板、高温同時焼成セラミックス(High Temperature Co-fired Ceramics:HTCC)基板、部品内蔵基板、再配線層(Redistribution Layer:RDL)を有する基板(例えば、RDLを有するLTCC基板)、又は、プリント基板などが用いられるが、これらに限定されない。
【0080】
モジュール基板90は、主面90aと、主面90aの反対側の主面90bと、を有する。なお、モジュール基板90の内部又は主面90a若しくは90bには、グランド電極層及び配線等が形成されている。グランド電極層及び配線は、例えば金属等の導電材料を用いて形成されている。図3Aに示すように、モジュール基板90の平面視形状は矩形状であるが、これに限定されない。
【0081】
主面90aは、第1主面の一例であり、上面又は表面と呼ばれる場合がある。主面90bは、第2主面の一例であり、下面又は底面と呼ばれる場合がある。本実施例では、主面90a及び90bの各々に、1以上の回路部品が配置されている。つまり、モジュール基板90は、主面90a及び90bの両方が回路部品の実装面として利用される両面実装基板である。
【0082】
1以上の回路部品はそれぞれ、表面実装部品(SMD:Surface Mount Device)である。具体的には、回路部品は、集積回路(IC:Integrated Circuit)、集積受動デバイス(IPD:Integrated Passive Device)、又は、チップインダクタ若しくはチップコンデンサなどの個別受動部品などである。集積回路は、例えば、Si基板を利用したCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)で構成され、具体的にはSOI(Silicon On Insulator)プロセスにより構成されてもよい。あるいは、集積回路は、GaAs、SiGe及びGaNのうちの少なくとも1つで構成されてもよい。
【0083】
本実施例では、電力増幅器10、送信フィルタ41、42、43a及び44a、受信フィルタ43b、44b及び45並びに整合回路60は、主面90aに配置されている。PA制御回路12、低雑音増幅器20、スイッチ30及びアンテナスイッチ50は、主面90bに配置されている。
【0084】
なお、電力増幅器10、PA制御回路12及び低雑音増幅器20はそれぞれ、集積回路で実現されている。また、スイッチ30及びアンテナスイッチ50は、1つの集積回路で実現されているが、各々に個別の集積回路で実現されてもよい。また、整合回路60は、例えば、チップインダクタ若しくはチップコンデンサ又はIPDであるが、これに限定されない。整合回路60の少なくとも一部は、モジュール基板90に設けられた配線によって構成されてもよい。
【0085】
図3Bに示すように、送信フィルタ41と受信フィルタ43bとは、主面90a側で積層されている。本実施例では、受信フィルタ43bは、モジュール基板90と送信フィルタ41との間に位置している。具体的には、受信フィルタ43bは、バンプ電極94aによってモジュール基板90の主面90aに設けられた配線に電気的に接続される。なお、受信フィルタ43bとモジュール基板90の配線との電気的な接続は、バンプ電極94aには限定されず、平面電極、ポスト電極又はボンディングワイヤ等で行われてもよい。
【0086】
送信フィルタ41は、受信フィルタ43bを覆うように設けられている。例えば、送信フィルタ41は、受信フィルタ43bの上面(z軸正側の面で、モジュール基板90に対向する面とは反対側の面)に接触して設けられている。
【0087】
本実施例では、主面90aの平面視において、受信フィルタ43bは、送信フィルタ41より小さい。このため、受信フィルタ43b上に送信フィルタ41を配置した場合、送信フィルタ41の一部が受信フィルタ43bの上面から張り出すようになる。送信フィルタ41の張り出し部分を利用して、送信フィルタ41とモジュール基板90の主面90aに設けられた配線との電気的な接続を確保することができる。例えば、送信フィルタ41は、ポスト電極94bによってモジュール基板90の配線に電気的に接続される。なお、送信フィルタ41とモジュール基板90の配線との電気的な接続は、ポスト電極94bには限定されず、ボンディングワイヤ、又は、受信フィルタ43bに設けられた配線若しくは貫通電極等で行われてもよい。
【0088】
送信フィルタ41は、シールド膜95に接触している。シールド膜95は金属等の熱伝導率の高い材料を用いて形成されているので、送信フィルタ41で発生する熱を、シールド膜95を介して放熱させることができる。本実施例では、図3Bに示すように、送信フィルタ41の上面(z軸正側の面で、受信フィルタ43bに対向する面とは反対側の面)がシールド膜95に接触している。シールド膜95との接触面積を増やすことができるので、熱伝導が速やかに行われ、放熱効率を高めることができる。
【0089】
このように、送信フィルタ41と受信フィルタ43bとを積層して主面90aに配置することにより、送信フィルタ41と受信フィルタ43bとを積層せずに主面90aに配置する場合よりも平面専有面積を減らすことができる。これにより、モジュール基板90を小面積化することができるので、高周波モジュール1Aの小型化を実現することができる。
【0090】
なお、送信フィルタ41と受信フィルタ43bとを積層した場合には、送信信号と受信信号とのアイソレーションを確保できないと、信号品質が劣化するおそれがある。本実施例では、送信フィルタ41はPC2に対応しているので、PC2モードで送信信号を通過させる。その一方で、受信フィルタ43bは、PC2モードでは受信信号を通過させない。また、受信フィルタ43bが受信信号を通過させうるのは、PC3モードの場合であるが、この場合、送信フィルタ41は送信信号を通過させない(送信フィルタ43aが送信信号を通過させる)。つまり、送信フィルタ41による送信信号の通過と受信フィルタ43bによる受信信号の通過とは同時には行われない。このため、送信フィルタ41と受信フィルタ43bとを積層したとしても、送信信号と受信信号とのアイソレーションが問題にはならず、信号品質の劣化を抑制することができる。
【0091】
送信フィルタ43aは、モジュール基板90の主面90aに配置されている。図3Aに示すように、主面90aの平面視において、電力増幅器10と送信フィルタ41との距離は、電力増幅器10と送信フィルタ43aとの距離より長い。簡単に言えば、送信フィルタ41は、送信フィルタ43aと比較した場合に、電力増幅器10からより遠くに配置されている。
【0092】
上述したように、送信フィルタ43aがPC3に対応し、送信フィルタ41がPC2に対応している。このため、送信フィルタ41の発熱量は、送信フィルタ43aの発熱量よりも多くなる。また、電力増幅器10の発熱量は、PC2モードで動作時の方がPC3モードで動作時よりも多くなる。
【0093】
このため、PC2モードでの発熱量が多い送信フィルタ41と電力増幅器10との間の距離を、送信フィルタ43aと電力増幅器10との間の距離よりも長くすることにより、モジュール基板90内での熱源を分散させることができる。PC2モードで動作時における電力増幅器10と送信フィルタ41との相互の熱干渉を抑制することができるので、信号品質の劣化及び耐電力の低下を抑制することができる。
【0094】
なお、本実施例では、電力増幅器10と送信フィルタ41との間に送信フィルタ43aが配置されているが、これには限定されない。例えば、電力増幅器10が送信フィルタ41と送信フィルタ43aとの間に配置されていてもよい。
【0095】
送信フィルタ42及び44a並びに受信フィルタ44bの位置関係についても同様である。具体的には、送信フィルタ42と受信フィルタ44bとは、主面90a側で積層されている。より具体的には、受信フィルタ44bは、送信フィルタ42とモジュール基板90との間に位置している。また、主面90aの平面視において、電力増幅器10と送信フィルタ42との距離は、電力増幅器10と送信フィルタ44aとの距離より長い。これにより、小型化を実現することができ、信号品質の劣化及び耐電力の低下を抑制することができる。
【0096】
また、本実施例では、送受信のアイソレーションを高めるため、主面90aの平面視において、低雑音増幅器20及び受信フィルタ45を電力増幅器10から離れた位置に配置している。例えば、主面90aをx軸に平行な線で2つの領域に二等分した場合、電力増幅器10が配置される領域(y軸負側の領域)と、低雑音増幅器20及び受信フィルタ45が配置される領域(y軸正側の領域)とは、異なる領域である。これにより、送受信のアイソレーションを高めることができるので、信号品質の劣化を抑制することができる。また、発熱源を分散させることによる信号品質の劣化の抑制及び耐電力の低下の抑制という効果も得られる。
【0097】
樹脂部材92は、主面90aと、主面90aに配置された回路部品の少なくとも1つとを覆う。具体的には、樹脂部材92は、電力増幅器10と、送信フィルタ41、42、43a及び44aと、受信フィルタ43b、44b及び45と、整合回路60とを覆っている。なお、「AがBを覆う」とは、AがBの表面の一部を覆っていればよいことを意味している。例えば、樹脂部材92は、送信フィルタ41の上面を覆わずに側面を覆っている。
【0098】
樹脂部材93は、主面90bと、主面90bに配置された回路部品の少なくとも1つとを覆う。具体的には、樹脂部材93は、PA制御回路12と、低雑音増幅器20と、スイッチ30及びアンテナスイッチ50とを覆っている。
【0099】
樹脂部材92及び93は、主面90a及び90bに設けられた回路部品の機械強度及び耐湿性などの信頼性を確保する機能を有する。樹脂部材92及び93は、絶縁性の樹脂材料を用いて形成される。例えば、モジュール基板90の主面90aに各回路部品を配置した後、液状樹脂を用いて、回路部品及び主面90aの全体をモールドする。このとき、上面を露出させる回路部品(具体的には、送信フィルタ41)の上面も液状樹脂で覆ってよい。液状樹脂を硬化させた後、硬化した樹脂を研磨する。このとき、送信フィルタ41の一部も同時に研磨してもよい。これにより、送信フィルタ41の上面と、樹脂部材92の上面とを面一にすることができるので、シールド膜95のカバレッジを高めることができる。
【0100】
シールド膜95は、樹脂部材92の表面を覆う金属薄膜である。例えば、シールド膜95は、スパッタ法等によって形成される。シールド膜95は、樹脂部材92の上面及び側面、モジュール基板90の側面、並びに、樹脂部材93の側面を連続的に覆っている。
【0101】
上述したように、シールド膜95は、送信フィルタ41の上面に接触しているので、送信フィルタ41で発生する熱を効率良く放熱することができる。なお、シールド膜95は、送信フィルタ41の側面に接触していてもよい。また、シールド膜95は、他の回路部品に接触していてもよい。具体的には、シールド膜95は、電力増幅器10の上面若しくは側面、又は、送信フィルタ42、43a若しくは44aの各々の上面若しくは側面に接触していてもよい。
【0102】
図示されていないが、シールド膜95は、モジュール基板90に設けられたグランド電極層に電気的に接続されている。これにより、シールド膜95は、グランド電位に設定されるので、外来ノイズが高周波モジュール1Aに含まれる回路部品に侵入することを抑制する。また、高周波モジュール1Aに含まれる回路部品が発生させうる電磁波が、高周波モジュール1A以外の他の部品に影響を与えるのを抑制することができる。
【0103】
なお、図3A及び図3Bには示されていないが、樹脂部材93を貫通する複数のポスト電極が設けられている。ポスト電極は、高周波モジュール1Aが備える外部接続端子の一例である。例えば、複数のポスト電極には、図1に示したアンテナ接続端子100、高周波入力端子110、高周波出力端子120及び制御端子130、並びに、グランド端子等が含まれる。複数のポスト電極はそれぞれ、高周波モジュール1Aのz軸負側に配置されるマザー基板上の入出力端子及び/又はグランド端子等に接続される。
【0104】
[3.2 実施例2]
次に、実施例2に係る高周波モジュール1Bについて、図4A及び図4Bを用いて説明する。なお、以下の説明では、実施例1との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0105】
図4A及び図4Bはそれぞれ、実施例2に係る高周波モジュール1Bの平面図及び断面図である。図4Aは、z軸の正側からモジュール基板90の主面90aを見た図を表している。図4Aでは、樹脂部材92、シールド膜95及び電極等の図示を省略している。また、モジュール基板90の主面90bに配置された回路部品、及び、他の回路部品とモジュール基板90の主面90aとの間に配置された回路部品は、破線で表している。また、図4Bは、図4AのIV-IV線のうち、x軸に平行な部分における断面(xz断面)を表している。
【0106】
図4A及び図4Bに示す高周波モジュール1Bの回路構成は、図1に示した高周波モジュール1の回路構成と同じである。高周波モジュール1Bでは、全ての回路部品がモジュール基板90の主面90aに設けられている点が、実施例1に係る高周波モジュール1Aとは主として相違する。すなわち、本実施例では、モジュール基板90は、主面90a及び90bの一方のみが回路部品の実装面として利用される片面実装基板である。
【0107】
具体的には、図4Aに示すように、電力増幅器10、PA制御回路12、低雑音増幅器20、送信フィルタ41、42、43a及び44a、受信フィルタ43b、44b及び45、整合回路60、並びに、スイッチ30及びアンテナスイッチ50を含む集積回路は、主面90aに配置されている。
【0108】
本実施例においても、送信フィルタ41と受信フィルタ43bとは、主面90a側で積層されている。具体的には、受信フィルタ43bは、モジュール基板90と送信フィルタ41との間に位置している。また、主面90aの平面視において、電力増幅器10と送信フィルタ41との距離は、電力増幅器10と送信フィルタ43aとの距離より長い。これにより、小型化を実現することができ、信号品質の劣化及び耐電力の低下を抑制することができる。
【0109】
送信フィルタ42と受信フィルタ44bとは、主面90a側で積層されている。具体的には、受信フィルタ44bは、モジュール基板90と送信フィルタ42との間に位置している。また、主面90aの平面視において、電力増幅器10と送信フィルタ42との距離は、電力増幅器10と送信フィルタ44aとの距離より長い。これにより、小型化を実現することができ、信号品質の劣化及び耐電力の低下を抑制することができる。
【0110】
また、送信フィルタ41及び42はそれぞれ、シールド膜95に接触している。具体的には、図4Bに示すように、送信フィルタ41及び42の各々の上面がシールド膜95に接触している。これにより、放熱性を更に高めることができるので、信号品質の劣化及び耐電力の低下を抑制することができる。
【0111】
また、本実施例では、送受信のアイソレーションを高めるため、主面90aの平面視において、低雑音増幅器20及び受信フィルタ45を電力増幅器10から離れた位置に配置している。例えば、主面90aをy軸に平行な線で2つの領域に二等分した場合、電力増幅器10が配置される領域(x軸正側の領域)と、低雑音増幅器20及び受信フィルタ45が配置される領域(x軸負側の領域)とは、異なる領域である。これにより、送受信のアイソレーションを高めることができるので、信号品質の劣化を抑制することができる。また、発熱源を分散させることによる信号品質の劣化の抑制及び耐電力の低下の抑制という効果も得られる。
【0112】
[3.3 実施例3]
次に、実施例3に係る高周波モジュール1Cについて、図5A及び図5Bを用いて説明する。なお、以下の説明では、実施例1及び2との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0113】
図5A及び図5Bはそれぞれ、実施例3に係る高周波モジュール1Cの平面図及び断面図である。図5Aは、z軸の正側からモジュール基板90の主面90aを見た図を表している。図5Aでは、樹脂部材92、シールド膜95及び電極等の図示を省略している。また、モジュール基板90の主面90bに配置された回路部品、及び、他の回路部品とモジュール基板90の主面90aとの間に配置された回路部品は、破線で表している。また、図5Bは、図5AのV-V線のうち、x軸に平行な部分における断面(xz断面)を表している。
【0114】
図5A及び図5Bに示す高周波モジュール1Cの回路構成は、図1に示した高周波モジュール1の回路構成と同じである。高周波モジュール1Cでは、送信フィルタ41と受信フィルタ43bとの位置関係が逆になっている点が、実施例2に係る高周波モジュール1Bとは主として相違する。また、送信フィルタ42と受信フィルタ44bとの位置関係も逆になっている。
【0115】
本実施例では、送信フィルタ41が、受信フィルタ43bとモジュール基板90との間に位置している。本実施例では、送信フィルタ41は、バンプ電極94aによってモジュール基板90の主面90aに設けられた配線に電気的に接続される。なお、送信フィルタ41とモジュール基板90の配線との電気的な接続は、バンプ電極94aには限定されず、平面電極、ポスト電極又はボンディングワイヤ等で行われてもよい。
【0116】
受信フィルタ43bは、送信フィルタ41を覆うように設けられている。例えば、受信フィルタ43bは、送信フィルタ41の上面(z軸正側の面で、モジュール基板90に対向する面とは反対側の面)に接触して設けられている。
【0117】
本実施例では、主面90aの平面視において、受信フィルタ43bは、送信フィルタ41より小さい。このため、送信フィルタ41上に受信フィルタ43bを配置した場合、受信フィルタ43bは、平面視において、送信フィルタ41の上面内に配置され、送信フィルタ41の上面からは張り出さない。このため、受信フィルタ43bとモジュール基板90の主面90aに設けられた配線との電気的な接続は、送信フィルタ41の上面を利用して行われる。
【0118】
例えば、送信フィルタ41の上面には、再配線層が設けられている。受信フィルタ43bは、平面電極94cによって再配線層に電気的に接続される。受信フィルタ43bと再配線層との接続は、バンプ電極又はポスト電極によって行われてもよい。再配線層は、ボンディングワイヤ、送信フィルタ41の側面に設けられた配線又は送信フィルタ41を貫通する貫通電極等を介してモジュール基板90の配線と電気的に接続される。これにより、受信フィルタ43bとモジュール基板90の配線とは、再配線層を利用して電気的に接続される。
【0119】
なお、受信フィルタ43bとモジュール基板90の配線との電気的な接続は、平面電極94c及び再配線層を利用する場合には限定されない。例えば、受信フィルタ43bは、送信フィルタ41から一部が張り出すように設けられてもよく、張り出した部分に接続されたポスト電極等が利用されてもよい。
【0120】
本実施例では、発熱量が大きい送信フィルタ41がモジュール基板90の主面90aに実装される。このため、モジュール基板90を介して効率良く放熱することができる。また、受信フィルタ43bの上面は、シールド膜95に接触している。このため、受信フィルタ43bで発生する熱は、シールド膜95を利用して放熱することができる。
【0121】
なお、送信フィルタ42と受信フィルタ44bとの位置関係についても同様である。具体的には、送信フィルタ42が、受信フィルタ44bとモジュール基板90との間に位置している。これにより、送信フィルタ42で発生する熱を、モジュール基板90を介して効率良く放熱することができる。
【0122】
上述した各実施例は、高周波モジュール1の具体的な実施例の一例にすぎない。例えば、樹脂部材92及び93、並びに、シールド膜95は設けられていなくてもよい。
【0123】
[4 効果等]
以上のように、本実施の形態に係る高周波モジュール1、1A、1B又は1Cは、主面90a及び90bを有するモジュール基板90と、モジュール基板90に配置された送信フィルタ41と、モジュール基板90に配置された、送信フィルタ43a及び受信フィルタ43bを含むデュプレクサ43と、送信フィルタ41及びデュプレクサ43との接続を切り替えるアンテナスイッチ50と、送信フィルタ41及び43aの接続を切り替えるスイッチ30と、を備え、送信フィルタ41は、FDD用の第1バンドのアップリンク動作バンドを含む通過帯域を有し、送信フィルタ43aは、第1バンドのアップリンク動作バンドを含む通過帯域を有し、受信フィルタ43bは、第1バンドのダウンリンク動作バンドを含む通過帯域を有し、送信フィルタ41と受信フィルタ43bとは、主面90a側で積層されている。
【0124】
これにより、送信フィルタ41と受信フィルタ43bとが積層されているので、送信フィルタ41と受信フィルタ43bとが積層されていない場合に比べて、モジュール基板90の主面90aの平面専有面積を減らすことができる。これにより、モジュール基板90を小面積化することができるので、高周波モジュール1、1A、1B又は1Cの小型化を実現することができる。
【0125】
また、送信フィルタ41による送信信号の通過と受信フィルタ43bによる受信信号の通過とを同時に行わない場合には、送信信号と受信信号とのアイソレーションが問題にはならず、信号品質の劣化を抑制することができる。このように、本実施の形態によれば、信号品質の向上と小型化とを両立することができる高周波モジュール1、1A、1B又は1Cを実現することができる。
【0126】
また、例えば、高周波モジュール1、1A、1B又は1Cは、スイッチ30を介して送信フィルタ41及び43aに接続された電力増幅器10を備える。
【0127】
これにより、電力増幅器10で発生する熱を考慮した放熱設計が容易になる。例えば、放熱性が高まるような部品配置や、部品間で互いの熱影響を受けにくい部品配置を行うことにより、熱の影響による信号品質の劣化及び耐電力の低下を抑制することができる。
【0128】
また、例えば、主面90aの平面視において、電力増幅器10と送信フィルタ41との距離は、電力増幅器10と送信フィルタ43aとの距離より長い。
【0129】
これにより、電力増幅器10と送信フィルタ41との距離を長く確保することができるので、相互の発熱干渉を抑制することができる。よって、信号品質の劣化及び耐電力の低下を抑制することができる。
【0130】
また、例えば、高周波モジュール1、1A、1B又は1Cは、送信フィルタ41及び43a並びに主面90aを覆う樹脂部材92と、樹脂部材92の表面を覆うシールド膜95と、を備え、送信フィルタ41は、シールド膜95に接触している。
【0131】
これにより、送信フィルタ41で発生する熱を、シールド膜95を介して放熱することができる。高周波モジュール1、1A、1B又は1Cの放熱性が高まることにより、信号品質の劣化及び耐電力の低下を抑制することができる。
【0132】
また、例えば、受信フィルタ43bは、モジュール基板90と送信フィルタ41との間に位置しており、送信フィルタ41は、受信フィルタ43bに対向する面とは反対側の面でシールド膜95に接触している。
【0133】
これにより、シールド膜95と送信フィルタ41との接触面積を増やすことができるので、放熱性を更に高めることができる。
【0134】
また、例えば、スイッチ30は、電力増幅器10の出力端に接続される共通端子30aと、送信フィルタ41の入力端に接続される選択端子30bと、送信フィルタ43aの入力端に接続される選択端子30dと、を有し、アンテナスイッチ50は、アンテナ2に接続される共通端子50aと、送信フィルタ41の出力端に接続される選択端子50bと、送信フィルタ43aの出力端及び受信フィルタ43bの入力端に接続される選択端子50dと、を有し、共通端子30aと選択端子30bとが接続された場合に、共通端子50aは、選択端子50bに接続されて、選択端子50dには接続されない。
【0135】
これにより、送信フィルタ41が送信信号を通過させる場合には、受信フィルタ43bが受信信号を通過させないようにすることができる。すなわち、送信フィルタ41をTDD方式で利用することができる。このため、送信信号と受信信号とのアイソレーションが問題にはならず、信号品質の劣化を抑制することができる。
【0136】
また、例えば、共通端子30aと選択端子30dとが接続された場合に、共通端子50aは、選択端子50dに接続されて、選択端子50bには接続されない。
【0137】
これにより、送信フィルタ41が送信信号を通過させない場合には、受信フィルタ43bが受信信号を通過させることができ、送信フィルタ43aが送信信号を通過させることができる。送信フィルタ43a及び受信フィルタ43bを利用した同時送受信が可能になる。
【0138】
また、例えば、送信フィルタ41は、パワークラス2に対応し、送信フィルタ43aは、パワークラス3に対応する。
【0139】
これにより、HD-FDD方式で第1バンドの信号の送受信が可能になる。PC2モードでは第1バンドの送信信号を送信し、かつ、信号の受信を行わないことにより、送信フィルタ41と受信フィルタ43bとを積層したとしても、信号品質の劣化を抑制することができる。PC3モードでは、第1バンドの同時送受信を行うことができる。
【0140】
また、例えば、送信フィルタ41の耐電力は、送信フィルタ43aの耐電力より高い。
【0141】
これにより、PC2モードで増幅された送信信号のような最大出力パワーが大きい信号を、送信フィルタ41が適切に通過させることができる。
【0142】
また、例えば、送信フィルタ41のサイズは、送信フィルタ43aのサイズより大きい。
【0143】
これにより、PC2モードで増幅された送信信号のような最大出力パワーが大きい信号を、送信フィルタ41が適切に通過させることができる。
【0144】
また、例えば、受信フィルタ43bは、モジュール基板90と送信フィルタ41との間に位置しており、受信フィルタ43bは、主面90aの平面視において、送信フィルタ41より小さい。
【0145】
これにより、送信フィルタ41は受信フィルタ43bよりも外側に張り出すように設けられるので、張り出し部分を利用することで、送信フィルタ41とモジュール基板90の主面90aに設けられる配線との電気的な接続を容易に行うことができる。
【0146】
また、例えば、高周波モジュール1、1A、1B又は1Cは、受信フィルタ43bに接続された低雑音増幅器20を備える。
【0147】
これにより、送受信間のアイソレーションを考慮した放熱設計が容易になる。例えば、送信フィルタ41及び電力増幅器10と低雑音増幅器20との距離を長く確保して配置することにより、アイソレーションを高めることができ、信号品質の劣化を抑制することができる。
【0148】
また、例えば、高周波モジュール1Aでは、送信フィルタ43aは、主面90aに配置され、アンテナスイッチ50及びスイッチ30は、主面90bに配置されている。
【0149】
これにより、モジュール基板90の両面に回路部品を分けて配置することができるので、モジュール基板90の小面積化を実現することができる。
【0150】
また、例えば、高周波モジュール1B又は1Cでは、送信フィルタ43a、アンテナスイッチ50及びスイッチ30は、主面90aに配置されている。
【0151】
これにより、モジュール基板90の片面に全ての回路部品を配置することができるので、高周波モジュール1B又は1Cの低背化を実現することができる。
【0152】
また、例えば、本実施の形態に係る通信装置4は、高周波モジュール1、1A、1B又は1Cと、高周波モジュール1、1A、1B又は1Cを伝送される高周波信号を処理するよう構成されたRFIC3と、を備える。
【0153】
これにより、信号品質の向上と小型化とを両立することができる通信装置4を実現することができる。
【0154】
(他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態に係る高周波モジュール及び通信装置について、実施の形態等に基づいて説明したが、本発明に係る高周波モジュールは、上記実施の形態等に限定されるものではない。上記実施の形態等における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、上記実施の形態等に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、上記高周波モジュールを内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0155】
例えば、上記実施の形態等に係る高周波モジュールにおいて、図面に開示された各回路素子及び信号経路を接続する経路の間に、別の回路素子及び配線などが挿入されていてもよい。
【0156】
また、例えば、第3弾性波フィルタは、平面視において、第1弾性波フィルタより大きくてもよい。この場合において、第1弾性波フィルタが第3弾性波フィルタの上面に積層されるときには、第1弾性波フィルタは、第3弾性波フィルタの上面に設けられた再配線層等を利用して電気的な接続を行うことができる。例えば、第3弾性波フィルタの上面に設けられた再配線層は、ボンディングワイヤ、第3弾性波フィルタの側面に設けられた配線又は第3弾性波フィルタを貫通する貫通電極を介してモジュール基板の配線と電気的に接続される。
【0157】
また、例えば、第1弾性波フィルタ及び第2弾性波フィルタが対応するパワークラスは、PC2及びPC3以外のパワークラスであってもよい。第1弾性波フィルタが通過させる信号の最大出力パワーは、第2弾性波フィルタが通過させる信号の最大出力パワーより大きければよい。
【0158】
また、例えば、第1弾性波フィルタの耐電力は、第2弾性波フィルタの耐電力に等しい、又は、第2弾性波フィルタの耐電力より低くてもよい。第1弾性波フィルタが、PC2モードで増幅された信号を通過させることができればよい。サイズ及び共振子の数についても同様である。例えば、第1弾性波フィルタのサイズは、第2弾性波フィルタのサイズに等しい、又は、第2弾性波フィルタのサイズより小さくてもよい。
【0159】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【0160】
以下に、上記実施の形態に基づいて説明した高周波モジュール及び通信装置の特徴を示す。
【0161】
<1>
第1主面及び当該第1主面の反対側の第2主面を有するモジュール基板と、
前記モジュール基板に配置された第1弾性波フィルタと、
前記モジュール基板に配置された、第2弾性波フィルタ及び第3弾性波フィルタを含むデュプレクサと、
前記第1弾性波フィルタ及び前記デュプレクサとの接続を切り替えるアンテナスイッチと、
前記第1弾性波フィルタ及び前記第2弾性波フィルタの接続を切り替える送信側スイッチと、
を備え、
前記第1弾性波フィルタは、FDD(Frequency Division Duplex)用の第1バンドのアップリンク動作バンドを含む通過帯域を有し、
前記第2弾性波フィルタは、前記第1バンドのアップリンク動作バンドを含む通過帯域を有し、
前記第3弾性波フィルタは、前記第1バンドのダウンリンク動作バンドを含む通過帯域を有し、
前記第1弾性波フィルタと前記第3弾性波フィルタとは、前記第1主面側で積層されている、高周波モジュール。
【0162】
<2>
前記送信側スイッチを介して前記第1弾性波フィルタ及び前記第2弾性波フィルタに接続された電力増幅器を備える、<1>に記載の高周波モジュール。
【0163】
<3>
前記第1主面の平面視において、前記電力増幅器と前記第1弾性波フィルタとの距離は、前記電力増幅器と前記第2弾性波フィルタとの距離より長い、<1>又は<2>に記載の高周波モジュール。
【0164】
<4>
前記第1弾性波フィルタ、前記第3弾性波フィルタ及び前記第1主面を覆う樹脂部材と、
前記樹脂部材の表面を覆うシールド膜と、を備え、
前記第1弾性波フィルタは、前記シールド膜に接触している、<1>~<3>のいずれか1つに記載の高周波モジュール。
【0165】
<5>
前記第3弾性波フィルタは、前記モジュール基板と前記第1弾性波フィルタとの間に位置しており、
前記第1弾性波フィルタは、前記第3弾性波フィルタに対向する面とは反対側の面で前記シールド膜に接触している、<4>に記載の高周波モジュール。
【0166】
<6>
前記送信側スイッチは、
前記電力増幅器の出力端に接続される第1共通端子と、
前記第1弾性波フィルタの入力端に接続される第1選択端子と、
前記第2弾性波フィルタの入力端に接続される第2選択端子と、を有し、
前記アンテナスイッチは、
アンテナに接続される第2共通端子と、
前記第1弾性波フィルタの出力端に接続される第3選択端子と、
前記第2弾性波フィルタの出力端及び前記第3弾性波フィルタの入力端に接続される第4選択端子と、を有し、
前記第1共通端子と前記第1選択端子とが接続された場合に、前記第2共通端子は、前記第3選択端子に接続されて、前記第4選択端子には接続されない、<2>又は<3>に記載の高周波モジュール。
【0167】
<7>
前記第1共通端子と前記第2選択端子とが接続された場合に、前記第2共通端子は、前記第4選択端子に接続されて、前記第3選択端子には接続されない、<6>に記載の高周波モジュール。
【0168】
<8>
前記第1弾性波フィルタは、パワークラス2に対応し、
前記第2弾性波フィルタは、パワークラス3に対応する、<1>~<7>のいずれか1つに記載の高周波モジュール。
【0169】
<9>
前記第1弾性波フィルタの耐電力は、前記第2弾性波フィルタの耐電力より高い、<1>~<8>のいずれか1つに記載の高周波モジュール。
【0170】
<10>
前記第1弾性波フィルタのサイズは、前記第2弾性波フィルタのサイズより大きい、<1>~<9>のいずれか1つに記載の高周波モジュール。
【0171】
<11>
前記第3弾性波フィルタは、前記モジュール基板と前記第1弾性波フィルタとの間に位置しており、
前記第3弾性波フィルタは、前記第1主面の平面視において、前記第1弾性波フィルタより小さい、<1>~<10>のいずれか1つに記載の高周波モジュール。
【0172】
<12>
前記第3弾性波フィルタに接続された低雑音増幅器を備える、<1>~<11>のいずれか1つに記載の高周波モジュール。
【0173】
<13>
前記第2弾性波フィルタは、前記第1主面に配置され、
前記アンテナスイッチ及び前記送信側スイッチは、前記第2主面に配置されている、<1>~<12>のいずれか1つに記載の高周波モジュール。
【0174】
<14>
前記第2弾性波フィルタ、前記アンテナスイッチ及び前記送信側スイッチは、前記第1主面に配置されている、<1>~<13>のいずれか1つに記載の高周波モジュール。
【0175】
<15>
<1>~<14>のいずれか1つに記載の高周波モジュールと、
前記高周波モジュールを伝送される高周波信号を処理するよう構成された信号処理回路と、を備える、
通信装置。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明は、マルチバンド対応のフロントエンド部に配置される高周波モジュールとして、携帯電話などの通信機器に広く利用できる。
【符号の説明】
【0177】
1、1A、1B、1C 高周波モジュール
2 アンテナ
3 RFIC
4 通信装置
10 電力増幅器
12 PA制御回路
20 低雑音増幅器
30 スイッチ
30a、50a 共通端子
30b、30c、30d、30e、50b、50c、50d、50e 選択端子
41、42、43a、44a 送信フィルタ
43b、44b、45 受信フィルタ
43、44 デュプレクサ
50 アンテナスイッチ
60 整合回路
90 モジュール基板
90a、90b 主面
92、93 樹脂部材
94a バンプ電極
94b ポスト電極
94c 平面電極
95 シールド膜
100 アンテナ接続端子
110 高周波入力端子
120 高周波出力端子
130 制御端子
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B