(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168757
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】指令値の決定方法、決定装置、および配電システム
(51)【国際特許分類】
G05F 1/67 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G05F1/67 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085683
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】野本 斗生
【テーマコード(参考)】
5H420
【Fターム(参考)】
5H420BB03
5H420BB12
5H420BB14
5H420CC03
5H420DD02
5H420EB13
5H420FF03
5H420FF04
5H420FF05
5H420FF24
5H420GG01
5H420HJ01
(57)【要約】
【課題】最大電力点への制御の追従速度を向上させた指令値の決定方法を実現する。
【解決手段】指令値の決定方法は、測定値の増加が連続した場合、次回の指令値を、測定値が連続して増加した指令値のひとつである対象指令値に決定する第1工程と、対象指令値に対応するその時点の測定値と過去の測定値との差の絶対値が閾値以内である場合に、その次の指令値を、測定値の増加が連続したときの最後の指令値以下の値に決定する第2工程とを含み、第2工程において決定される指令値の、対象指令値に対する変動幅は、太陽電池パネルの開放電圧に対する、対象指令値に対応する出力電圧の比率が大きい程、大きい幅に決定される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルに接続されたコンバータに指令値を複数回入力することで得られた、前記太陽電池パネルの出力電力の複数の測定値に基づいて、新たな指令値を決定する、指令値の決定方法であって、
前記指令値を減少させながら前記指令値を入力するごとに、当該指令値に対応する測定値と、前回入力した指令値に対応する測定値との比較を、今回の測定値が前回の測定値以下にならない限り複数回繰り返し、今回の測定値が前回の測定値よりも大きい状態が、所定回数連続した場合、次回入力する指令値を、前記測定値が連続して増加した指令値のうちのひとつである対象指令値に決定する第1工程と、
前記対象指令値に対応するその時点の測定値と、前記対象指令値に対応する過去の測定値との差の絶対値が所定の閾値以内である場合に、その次に前記コンバータに入力する指令値を、前記測定値が前回よりも大きい状態が所定回数連続したときの最後の指令値以下の値に決定する第2工程とを含み、
前記第2工程において決定される前記指令値の、前記対象指令値に対する変動幅は、前記太陽電池パネルの開放電圧に対する、前記太陽電池パネルの前記対象指令値に対応する出力電圧の比率が大きい程、大きい幅に決定される、指令値の決定方法。
【請求項2】
太陽電池パネルに接続されたコンバータに指令値を複数回入力することで得られた、前記太陽電池パネルの出力電力の複数の測定値に基づいて、新たな指令値を決定する、指令値の決定方法であって、
前記指令値を増加させながら前記指令値を入力するごとに、当該指令値に対応する測定値と、前回入力した指令値に対応する測定値との比較を、今回の測定値が前回の測定値以下にならない限り複数回繰り返し、今回の測定値が前回の測定値よりも大きい状態が、所定回数連続した場合、次回入力する指令値を、前記測定値が連続して増加した指令値のうちのひとつである対象指令値に決定する第3工程と、
前記対象指令値に対応するその時点の測定値と、前記対象指令値に対応する過去の測定値との差の絶対値が所定の閾値以内である場合に、その次に前記コンバータに入力する指令値を、前記測定値が前回よりも大きい状態が所定回数連続したときの最後の指令値以上の値に決定する第4工程とを含み、
前記第4工程において決定される前記指令値の、前記対象指令値に対する変動幅は、前記太陽電池パネルの開放電圧に対する、前記太陽電池パネルの前記対象指令値に対応する出力電圧の比率が大きい程、大きい幅に決定される、指令値の決定方法。
【請求項3】
前記対象指令値に対応するその時点の測定値と、前記対象指令値に対応する過去の測定値との差の絶対値が、前記閾値よりも大きい場合、次回入力する指令値を継続して前記対象指令値に決定する第5工程と、
前記対象指令値を繰り返し前記指令値として入力し、当該対象指令値に対応する測定値と、前回入力した前記対象指令値に対応する測定値との差の絶対値が前記閾値以内となった場合に、その次に前記コンバータに入力する指令値を、前記対象指令値から変動させた値に決定する第6工程とをさらに含む、請求項1または2に記載の指令値の決定方法。
【請求項4】
太陽電池パネルに接続されたコンバータに指令値を複数回入力することで得られた、前記太陽電池パネルの出力電力の複数の測定値に基づいて、新たな指令値を決定する、指令値の決定装置であって、
前記指令値を減少させながら前記指令値を入力するごとに、当該指令値に対応する測定値と、前回入力した指令値に対応する測定値との比較を、今回の測定値が前回の測定値以下にならない限り複数回繰り返す第1処理部と、
今回の測定値が前回の測定値よりも大きい状態が、所定回数連続した場合、次回入力する指令値を、前記測定値が連続して増加した指令値のうちのひとつである対象指令値に決定する第2処理部と、
前記対象指令値に対応するその時点の測定値と、前記対象指令値に対応する過去の測定値との差の絶対値が所定の閾値以内である場合に、その次に前記コンバータに入力する指令値を、前記測定値が前回よりも大きい状態が所定回数連続したときの最後の指令値以下の値に決定する第3処理部とを含み、
前記第3処理部により決定される前記指令値の、前記対象指令値に対する変動幅は、前記太陽電池パネルの開放電圧に対する、前記太陽電池パネルの前記対象指令値に対応する出力電圧の比率が大きい程、大きい幅に決定される、決定装置。
【請求項5】
太陽電池パネルに接続されたコンバータに指令値を複数回入力することで得られた、前記太陽電池パネルの出力電力の複数の測定値に基づいて、新たな指令値を決定する、指令値の決定装置であって、
前記指令値を増加させながら前記指令値を入力するごとに、当該指令値に対応する測定値と、前回入力した指令値に対応する測定値との比較を、今回の測定値が前回の測定値以下にならない限り複数回繰り返す第4処理部と、
今回の測定値が前回の測定値よりも大きい状態が、所定回数連続した場合、次回入力する指令値を、前記測定値が連続して増加した指令値のうちのひとつである対象指令値に決定する第5処理部と、
前記対象指令値に対応するその時点の測定値と、前記対象指令値に対応する過去の測定値との差の絶対値が所定の閾値以内である場合に、その次に前記コンバータに入力する指令値を、前記測定値が前回よりも大きい状態が所定回数連続したときの最後の指令値以上の値に決定する第6処理部とを含み、
前記第6処理部により決定される前記指令値の、前記対象指令値に対する変動幅は、前記太陽電池パネルの開放電圧に対する、前記太陽電池パネルの前記対象指令値に対応する出力電圧の比率が大きい程、大きい幅に決定される、決定装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の決定装置を含む配電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の出力を制御する指令値の決定方法、決定装置、および当該決定装置を含む配電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、太陽光発電構造において、システムを最適な作業点で操作する最大電力点追従方法が開示されている。当該方法では、太陽エネルギーモジュールの発電電力が連続的にN回逓減する場合、入力電圧がポジティブな傾向からネガティブな傾向になり、又はネガティブな傾向からポジティブな傾向になるように、電力コンバータの電圧調整方向を変える。Nは2以上の正の整数である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術では、電力の増加が連続した場合、実際に日射量が変化したか否かに関わらず、電圧調整方向を切り替える。このため、最大電力点への制御の追従速度が低下するという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、最大電力点への制御の追従速度を向上させた指令値の決定方法などを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る指令値の決定方法は、太陽電池パネルに接続されたコンバータに指令値を複数回入力することで得られた、前記太陽電池パネルの出力電力の複数の測定値に基づいて、新たな指令値を決定する、指令値の決定方法であって、前記指令値を減少させながら前記指令値を入力するごとに、当該指令値に対応する測定値と、前回入力した指令値に対応する測定値との比較を、今回の測定値が前回の測定値以下にならない限り複数回繰り返し、今回の測定値が前回の測定値よりも大きい状態が、所定回数連続した場合、次回入力する指令値を、前記測定値が連続して増加した指令値のうちのひとつである対象指令値に決定する第1工程と、前記対象指令値に対応するその時点の測定値と、前記対象指令値に対応する過去の測定値との差の絶対値が所定の閾値以内である場合に、その次に前記コンバータに入力する指令値を、前記測定値が前回よりも大きい状態が所定回数連続したときの最後の指令値以下の値に決定する第2工程とを含み、前記第2工程において決定される前記指令値の、前記対象指令値に対する変動幅は、前記太陽電池パネルの開放電圧に対する、前記太陽電池パネルの前記対象指令値に対応する出力電圧の比率が大きい程、大きい幅に決定される。
【0007】
また、本発明の一態様に係る指令値の決定方法は、太陽電池パネルに接続されたコンバータに指令値を複数回入力することで得られた、前記太陽電池パネルの出力電力の複数の測定値に基づいて、新たな指令値を決定する、指令値の決定方法であって、前記指令値を増加させながら前記指令値を入力するごとに、当該指令値に対応する測定値と、前回入力した指令値に対応する測定値との比較を、今回の測定値が前回の測定値以下にならない限り複数回繰り返し、今回の測定値が前回の測定値よりも大きい状態が、所定回数連続した場合、次回入力する指令値を、前記測定値が連続して増加した指令値のうちのひとつである対象指令値に決定する第3工程と、前記対象指令値に対応するその時点の測定値と、前記対象指令値に対応する過去の測定値との差の絶対値が所定の閾値以内である場合に、その次に前記コンバータに入力する指令値を、前記測定値が前回よりも大きい状態が所定回数連続したときの最後の指令値以上の値に決定する第4工程とを含み、前記第4工程において決定される前記指令値の、前記対象指令値に対する変動幅は、前記太陽電池パネルの開放電圧に対する、前記太陽電池パネルの前記対象指令値に対応する出力電圧の比率が大きい程、大きい幅に決定される。
【0008】
また、本発明の一態様に係る指令値の決定装置は、太陽電池パネルに接続されたコンバータに指令値を複数回入力することで得られた、前記太陽電池パネルの出力電力の複数の測定値に基づいて、新たな指令値を決定する、指令値の決定装置であって、前記指令値を減少させながら前記指令値を入力するごとに、当該指令値に対応する測定値と、前回入力した指令値に対応する測定値との比較を、今回の測定値が前回の測定値以下にならない限り複数回繰り返す第1処理部と、今回の測定値が前回の測定値よりも大きい状態が、所定回数連続した場合、次回入力する指令値を、前記測定値が連続して増加した指令値のうちのひとつである対象指令値に決定する第2処理部と、前記対象指令値に対応するその時点の測定値と、前記対象指令値に対応する過去の測定値との差の絶対値が所定の閾値以内である場合に、その次に前記コンバータに入力する指令値を、前記測定値が前回よりも大きい状態が所定回数連続したときの最後の指令値以下の値に決定する第3処理部とを含み、前記第3処理部により決定される前記指令値の、前記対象指令値に対する変動幅は、前記太陽電池パネルの開放電圧に対する、前記太陽電池パネルの前記対象指令値に対応する出力電圧の比率が大きい程、大きい幅に決定される。
【0009】
また、本発明の一態様に係る指令値の決定装置は、太陽電池パネルに接続されたコンバータに指令値を複数回入力することで得られた、前記太陽電池パネルの出力電力の複数の測定値に基づいて、新たな指令値を決定する、指令値の決定装置であって、前記指令値を増加させながら前記指令値を入力するごとに、当該指令値に対応する測定値と、前回入力した指令値に対応する測定値との比較を、今回の測定値が前回の測定値以下にならない限り複数回繰り返す第4処理部と、今回の測定値が前回の測定値よりも大きい状態が、所定回数連続した場合、次回入力する指令値を、前記測定値が連続して増加した指令値のうちのひとつである対象指令値に決定する第5処理部と、前記対象指令値に対応するその時点の測定値と、前記対象指令値に対応する過去の測定値との差の絶対値が所定の閾値以内である場合に、その次に前記コンバータに入力する指令値を、前記測定値が前回よりも大きい状態が所定回数連続したときの最後の指令値以上の値に決定する第6処理部とを含み、前記第6処理部により決定される前記指令値の、前記対象指令値に対する変動幅は、前記太陽電池パネルの開放電圧に対する、前記太陽電池パネルの前記対象指令値に対応する出力電圧の比率が大きい程、大きい幅に決定される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、最大電力点への制御の追従速度を向上させた指令値の決定方法などを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1に係る制御装置を備える配電システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態1に係る制御装置による指令値の決定方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】第1決定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】第2決定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】ΔV×k変動処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】制御装置による指令値の決定方法における、太陽電池パネルの出力電圧および出力電力の変動の一例を示すグラフである。
【
図7】実施形態2に係る指令値の決定方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態2における第2決定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】第3決定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0013】
(配電システム)
図1は、実施形態1に係る制御装置を備える配電システム100の構成を示すブロック図である。配電システム100は、負荷200に電力を供給する。
図1に示すように、配電システム100は、太陽電池パネル10、DC(Direct Current)-DCコンバータ20(コンバータ)、制御装置30(決定装置)、電力計40、および記憶装置50を備える。
【0014】
太陽電池パネル10は、日射量に応じて発電した電力をDCにより出力する。DC-DCコンバータ20は、太陽電池パネル10から入力されるDCの電圧を変換して出力する。ただし、配電システム100は、DC-DCコンバータ20の代わりに、例えば太陽電池用のパワーコンディショナーなど、他の電力系統との連系用インバータを備えていてもよい。また、太陽電池パネル10は、図示しないブレーカーを介してDC-DCコンバータ20に接続されていてもよい。
【0015】
制御装置30は、DC-DCコンバータ20に指令値を複数回入力することで得られた、太陽電池パネル10の出力電力の複数の測定値に基づいて、新たな指令値を決定する。当該指令値は、DC-DCコンバータ20のデューティ比を制御する指令値である。デューティ比が大きくなると、太陽電池パネル10の出力電圧が小さくなる。デューティ比が小さくなると、太陽電池パネル10の出力電圧が大きくなる。すなわち、制御装置30は、DC-DCコンバータ20のデューティ比を介して、太陽電池パネル10の出力電圧を制御する。
【0016】
太陽電池パネル10の出力電力は、太陽電池パネル10の出力電圧に応じて変動する。制御装置30は、太陽電池パネル10の出力電圧を制御することで、太陽電池パネル10の出力電力を制御する。制御装置30の具体的な構成については後述する。
【0017】
電力計40は、太陽電池パネル10の出力電力を測定し、測定値に応じた信号を制御装置30へ出力する。以下の説明では、太陽電池パネル10の出力電力の測定値について、単に測定値と称する場合がある。また、配電システム100は、電力計40の代わりに電流計および電圧計を備えていてもよい。その場合、電流計および電圧計が測定した出力電流および出力電圧に基づいて、制御装置30が出力電力を算出すればよい。
【0018】
記憶装置50は、制御装置30における処理に必要な情報を記憶する。記憶装置50は、例えば測定値を記憶する。ただし、記憶装置50は、必ずしも配電システム100に含まれていなくてもよい。その場合、制御装置30は、処理に必要な情報を記憶した外部の記憶装置と通信可能に接続されていてよい。
【0019】
(制御装置)
上述したとおり、制御装置30は、DC-DCコンバータ20のデューティ比を制御する指令値を決定して、DC-DCコンバータ20に入力する。制御装置30は、一定の間隔、例えば3秒間隔で指令値を決定し、DC-DCコンバータ20に入力する。
図1に示す例では、制御装置30は、状態判定部31、電力比較部32(第1処理部、第4処理部)、および指令値決定部33(第2処理部、第3処理部、第5処理部、第6処理部)を備える。
【0020】
状態判定部31は、太陽電池パネル10に対する日射量についての状態を判定する。状態判定部31による判定の結果に応じて、電力比較部32および指令値決定部33による処理の内容が変化する。
【0021】
電力比較部32は、今回の測定値を、過去の測定値と比較する。指令値決定部33は、電力比較部32による比較の結果に応じて、新たな指令値を決定する。具体的には、指令値決定部33は、電力比較部32による比較の結果に応じて、今回の指令値の値を増加または減少させることで、新たな指令値を決定する。ただし、指令値決定部33は、今回の指令値の値を増加させるか減少させるかを決定するために、電力比較部32による比較の結果の他、今回の指令値の値を決定する時に、前回の指令値の値を増加させて決定したか、減少させて決定したかも参照する。
【0022】
以下の説明では、指令値の値を決定するために、その前の指令値の値を変動させた方向を、変動方向と称する場合がある。例えば、今回の指令値の値を決定するために、前回の指令値の値を変動させた方向を、今回の変動方向と称する場合がある。
【0023】
実施形態1では、指令値決定部33は、新たな指令値を、元の指令値に対して一定の幅ΔV(単位減少幅、単位増加幅)だけ減少または増加させた値に決定する。ただし、指令値決定部33による指令値の決定方法はこれに限られない。
【0024】
電力比較部32は、初期状態では、今回の測定値を、前回の測定値と比較する。この状態において、指令値決定部33は、今回の測定値が前回の測定値よりも大きければ、今回の指令値の値を、今回の変動方向と同じ方向に変動させた値を、新たな指令値として決定する。指令値決定部33は、今回の測定値が前回の測定値以下であれば、今回の指令値の値を、今回の変動方向とは逆の方向に変動させた値を、新たな指令値として決定する。
【0025】
ただし、指令値決定部33は、今回の測定値が前回の測定値よりも大きい状態が、所定の回数連続した場合、DC-DCコンバータ20に次回入力する指令値を、測定値が連続して増加した指令値のうちのひとつである対象指令値に決定する。この場合、新たな指令値の変動方向は、今回の指令値の変動方向とは逆方向となる。
【0026】
このとき、指令値決定部33は、対象指令値を今回の指令値として新たな指令値を決定する処理において、電力比較部32が今回の測定値と比較する過去の測定値を、対象指令値を過去にDC-DCコンバータ20に入力した時の測定値に決定する。新たな指令値を決定する処理において、電力比較部32は、対象指令値に対応する今回の測定値が、対象指令値に対応する過去の測定値と同じであるか判定する。ただし、この判定には、測定誤差および特性変化の許容量を考慮した不感帯が設けられる。すなわち、電力比較部32は、対象指令値をDC-DCコンバータ20に入力した時間の違いに起因する、当該対象指令値に対応するその時点の測定値と過去の測定値との差の絶対値が、所定の閾値以内であるか判定する。
【0027】
対象指令値に対応するその時点の測定値と過去の測定値との差の絶対値が閾値以内でない場合、太陽電池パネル10に対する日射量に変化が生じていると考えられる。この場合、指令値決定部33は、今回の変動方向と同じ方向に対象指令値の値を変動させた値を新たな指令値に決定する。
【0028】
一方、対象指令値に対応するその時点の測定値と過去の測定値との差の絶対値が閾値以内である場合、太陽電池パネル10に対する日射量に変化が生じていないと考えられる。この場合、指令値決定部33は、今回の変動方向とは逆方向に、対象指令値を指令値に決定したときの指令値の変動幅以上に変動させた値を新たな指令値に決定する。
【0029】
すなわち、電力比較部32は、指令値を減少させながら指令値をDC-DCコンバータ20に入力するごとに、当該指令値に対応する測定値と、前回入力した指令値に対応する測定値との比較を、今回の測定値が前回の測定値以下にならない限り複数回繰り返す。そして、今回の測定値が前回の測定値よりも大きい状態が、所定回数連続した場合、指令値決定部33は、DC-DCコンバータ20に次回入力する指令値を、上述の対象指令値に決定する。
【0030】
さらに、指令値決定部33は、対象指令値を今回の指令値として新たな指令値を決定する処理において、対象指令値に対応する今回の測定値と過去の測定値との差の絶対値が閾値以内である場合、その次にDC-DCコンバータ20に入力する指令値を、今回の測定値が前回の測定値よりも大きい状態が連続したときの最後の指令値以下の値に決定する。
【0031】
また、電力比較部32は、指令値を増加させながら指令値をDC-DCコンバータ20に入力するごとに、当該指令値に対応する測定値と、前回入力した指令値に対応する測定値との比較を、今回の測定値が前回の測定値以下にならない限り複数回繰り返す。そして、今回の測定値が前回の測定値よりも大きい状態が、所定回数連続した場合、指令値決定部33は、DC-DCコンバータ20に次回入力する指令値を、上述の対象指令値に決定する。
【0032】
さらに、指令値決定部33は、対象指令値を今回の指令値として新たな指令値を決定する処理において、対象指令値に対応する今回の測定値と過去の測定値との差の絶対値が閾値以内である場合、その次にDC-DCコンバータ20に入力する指令値を、今回の測定値が前回の測定値よりも大きい状態が連続したときの最後の指令値以上の値に決定する。
【0033】
このとき、指令値決定部33は、対象指令値の次にDC-DCコンバータ20に入力する指令値の、対象指令値に対する変動幅を、太陽電池パネル10の開放電圧に対する、対象指令値に対応する出力電圧の比率が大きい程、大きい値に決定する。例えば、指令値決定部33は、対象指令値、すなわち今回の指令値に対応する出力電圧が以下の4つの領域のいずれに属するかによって、新たな指令値の、対象指令値からの変動幅を決定する。
・第1領域は、開放電圧の0%以上かつ70%以下の領域である。
・第2領域は、開放電圧の70%よりも大きく、かつ80%以下の領域である。
・第3領域は、開放電圧の80%よりも大きく、かつ90%以下の領域である。
・第4領域は、開放電圧の90%よりも大きく、かつ100%以下の領域である。
【0034】
例えば、指令値決定部33は、対象指令値に対応する出力電圧が第1領域に属する場合には、今回の変動方向とは逆方向に対象指令値の値をΔVの1倍変動させた値を新たな指令値としてよい。指令値決定部33は、対象指令値に対応する出力電圧が第2領域に属する場合には、今回の変動方向とは逆方向に対象指令値の値をΔVの2倍変動させた値を新たな指令値としてよい。指令値決定部33は、対象指令値に対応する出力電圧が第3領域に属する場合には、今回の変動方向とは逆方向に対象指令値の値をΔVの3倍変動させた値を新たな指令値としてよい。指令値決定部33は、対象指令値に対応する出力電圧が第4領域に属する場合には、今回の変動方向とは逆方向に対象指令値の値をΔVの4倍変動させた値を新たな指令値としてよい。
【0035】
出力電圧についての領域の数、領域の境界となる割合、および、領域ごとの変動幅のΔVに対する倍率は、上記の例に限られない。ただし、指令値決定部33は、ΔVに対する倍率を、出力電圧がどの領域に属する場合であっても1倍以上とする。
【0036】
特に、指令値決定部33は、対象指令値に対応する出力電圧が、第1領域、すなわち最も出力電圧が低い側に位置する領域に属する場合に、ΔVに対する倍率を1倍としてよい。また、太陽電池パネル10の仕様としての最大電力点電圧は、第1領域に属していてよい。これにより、最大電力点の近傍から出力電圧が大きく離れる可能性を低減できる。
【0037】
指令値決定部33は、以上のとおり新たな指令値を決定することで、対象指令値に対応する出力電圧が開放電圧に近いほど、対象指令値に対する新たな指令値の変動幅を大きくできる。このため、出力電圧が最大電力点よりも高く、かつ、最大電力点から遠いと想定される状態においては、出力電圧を最大電力点に急速に近づけることができる。また、指令値決定部33は、太陽電池パネル10の出力電圧が開放電圧から遠いほど、対象指令値に対する新たな指令値の変動幅を小さくできる。このため、出力電圧が最大電力点に近いと想定される状態においては、出力電圧が最大電力点から大きく離れることを防止できる。したがって、出力電圧の、最大電力点への制御の追従性を向上させることができる。
【0038】
また、太陽電池パネル10においては、出力電圧が過度に低下すると、短絡したかのような状態になる可能性がある。指令値決定部33は、以上のとおり指令値を決定することで、対象指令値に対応する出力電圧が最大電力点よりも低いと想定される状態においては、出力電圧が大きく変動して出力電圧が過度に低下する可能性を低減できる。
【0039】
(具体例)
制御装置30による、新たな指令値の決定方法の具体例を以下に説明する。以下の具体例では、今回の指令値の値をVref(n)とし、前回の指令値の値をVref(n-1)とし、新たな指令値の値をVref(n+1)とする。新たな指令値の値を決定するために今回の指令値の値を変動させる変動幅を、ΔVとする。指令値を対象指令値とするまでの、出力電圧の増加についての所定の回数を、2回とする。対象指令値を、前回の指令値の値Vref(n-1)とする。
【0040】
Vref(n)は、前回の測定値と前々回の測定値との比較結果に応じて、Vref(n-1)-ΔVまたはVref(n-1)+ΔVのいずれかである。指令値決定部33は、Vref(n+1)を以下のように決定する。
・Vref(n)=Vref(n-1)-ΔVであり、かつ、Vref(n)に対応する測定値が、Vref(n-1)に対応する測定値よりも大きければ、Vref(n+1)=Vref(n)-ΔVとする。
・Vref(n)=Vref(n-1)-ΔVであり、かつ、Vref(n)に対応する測定値が、Vref(n-1)に対応する測定値以下であれば、Vref(n+1)=Vref(n)+ΔVとする。
・Vref(n)=Vref(n-1)+ΔVであり、かつ、Vref(n)に対応する測定値が、Vref(n-1)に対応する測定値よりも大きければ、Vref(n+1)=Vref(n)+ΔVとする。
・Vref(n)=Vref(n-1)+ΔVであり、かつ、Vref(n)に対応する測定値が、Vref(n-1)に対応する測定値以下であれば、Vref(n+1)=Vref(n)-ΔVとする。
【0041】
指令値決定部33は、指令値を減少させながら指令値をDC-DCコンバータ20に入力して、今回の測定値が前回の測定値よりも大きい状態が、2回連続した場合、Vref(n+1)=Vref(n)+ΔVとする。さらに、Vref(n+1)に対応する測定値とVref(n-1)に対応する測定値との差の絶対値が、所定の閾値以内である場合、指令値決定部33は、Vref(n+2)を、Vref(n+1)-ΔV×kに決定する。kの値は、上述した、Vref(n+1)に対応する出力電圧が上述した第1領域から第4領域までのいずれに属するかによって決定される倍率である。上述したとおり、倍率kの値は必ず1以上である。すなわち、指令値決定部33は、Vref(n+1)をΔV以上の変動幅で減少させた値をVref(n+2)とする。
【0042】
また、指令値決定部33は、指令値を増加させながら指令値をDC-DCコンバータ20に入力して、今回の測定値が前回の測定値よりも大きい状態が、2回連続した場合、Vref(n+1)=Vref(n)-ΔVとする。さらに、Vref(n+1)に対応する測定値とVref(n-1)に対応する測定値との差の絶対値が、所定の閾値以内である場合、指令値決定部33は、Vref(n+2)をVref(n+1)+ΔV×kに決定する。すなわち、指令値決定部33は、Vref(n+1)をΔV以上の変動幅で増加させた値をVref(n+2)とする。
【0043】
これらの例における閾値は、Vref(n+1)に対応する測定値とVref(n-1)に対応する測定値との差についての不感帯を規定する。当該閾値は、出力電力の測定誤差、および、太陽電池パネル10の温度変化等に起因する特性変化の許容量などを考慮して、制御装置30の製造者により適宜設定されてよい。
【0044】
これにより、太陽電池パネル10に対する日射量に変化がない場合に、Vref(n+2)をVref(n+1)からΔVだけ変動させる場合、すなわちVref(n)と同じ値に決定する場合と比較して、太陽電池パネル10の出力電力が大きくなる方向への指令値の変動が大きくなる。したがって、本実施形態に係る指令値の決定方法によれば、太陽電池パネル10の出力電圧が最大電力点に到達するまでの、指令値の追従性が向上する。
【0045】
ただし、指令値決定部33の動作は上記の具体例に限定されない。例えば、指令値決定部33は、指令値を対象指令値とするまでの、出力電圧の増加についての所定の回数を、3回以上としてもよい。また、指令値決定部33は、対象指令値を、前回よりも前にDC-DCコンバータ20に入力した指令値としてもよい。例えば、指令値決定部33は、対象指令値を、今回の2回前にDC-DCコンバータ20に入力した指令値Vref(n-2)としてもよい。
【0046】
(指令値の決定方法)
図2は、制御装置30による指令値の決定方法の一例を示すフローチャートである。制御装置30による新たな指令値Vref(n+1)の決定方法の一例について以下に説明する。以下に説明する例では、制御装置30は、太陽電池パネル10に対する日射量についての状態を示す変数stateを参照する。また、制御装置30は、今回の測定値が前回の測定値よりも連続して増加した回数を示す変数countを参照する。
【0047】
処理の開始時点では、制御装置30は、今回の指令値Vref(n)をDC-DCコンバータ20に入力している状態である。また、太陽電池パネル10は、Vref(n)に対応する直流電力を出力している。
【0048】
制御装置30による指令値の決定方法では、まず、状態判定部31が、stateの値を判定する(S1)。stateの値が1である場合(S1でstate=1)には、制御装置30は、後述する第1決定処理を実行する(S2)。stateの値が1である状態は、太陽電池パネル10に対する日射量に変動が生じていない状態である。stateの値が2である場合(S1でstate=2)には、制御装置30は、後述する第2決定処理を実行する(S3)。stateの値が2である状態は、太陽電池パネル10に対する日射量に変動が生じている可能性がある状態である。第1決定処理または第2決定処理の実行後、制御装置30は、新たな指令値を決定するために、ステップS1から処理を繰り返す。
【0049】
図3は、第1決定処理の一例を示すフローチャートである。第1決定処理において、電力比較部32は、太陽電池パネル10の、今回の測定値P(n)を取得する(S21)。ここでいう今回の測定値P(n)は、今回の指令値Vref(n)に対応する太陽電池パネル10の出力電力の測定値である。電力比較部32は、測定値P(n)の取得と合わせて、Vref(n)を決定した時の測定値P(n)およびP(n-1)を、順次P(n-1)およびP(n-2)に繰り下げる。さらに、電力比較部32は、今回の測定値P(n)が前回の測定値P(n-1)よりも大きいか否かを判定する(S22)。
【0050】
P(n)がP(n-1)よりも大きい場合(S22でYES)、指令値決定部33は、countの値が2以上であるか否かを判定する(S23)。countの値が2以上でない場合(S23でNO)、指令値決定部33は、Vref(n)の値を今回の変動方向と同じ方向にΔV変動させた値を、Vref(n+1)の値に決定する(S24)。その後、指令値決定部33は、countの値を1増加させ(S25)、第1決定処理を終了する。
【0051】
P(n)が(n-1)よりも大きく、かつ、countの値が2以上である場合(S23でYES)、指令値決定部33は、stateの値を2に変更する(S26)。その後、指令値決定部33は、Vref(n)の値を今回の変動方向とは逆方向にΔV変動させた値を、Vref(n+1)の値に決定する(S27、第1工程、第3工程)。このときのVref(n+1)の値が対象指令値である。また、値としてはVref(n+1)=Vref(n-1)である。その後、指令値決定部33は、countの値を0にリセットし(S28)、第1決定処理を終了する。P(n)がP(n-1)よりも大きくない場合(S22でNO)、指令値決定部33は、上述したステップS26をスキップしてステップS27およびS28の処理を実行してVref(n+1)の値を決定し、第1決定処理を終了する。
【0052】
図4は、第2決定処理の一例を示すフローチャートである。第2決定処理が行われる場合、Vref(n)およびVref(n-2)の値は対象指令値の値である。また、P(n)は、対象指令値に対応する今回の測定値である。P(n-2)は、対象指令値に対応する過去の測定値である。
【0053】
第2決定処理において、電力比較部32は、P(n)を取得する(S31)。ステップS31の内容は、上述したステップS21の内容と同じである。さらに、電力比較部32は、P(n)とP(n-2)との差の絶対値が閾値th1以内であるか否かを判定する(S32)。
【0054】
P(n)とP(n-2)との差の絶対値がth1以内でない場合(S32でNO)、指令値決定部33は、Vref(n)の値を、今回の変動方向と同じ方向にΔV変動させた値を、Vref(n+1)に決定する(S33)。P(n)とP(n-2)との差の絶対値がth1以内である場合(S32でYES)、指令値決定部33は、後述するΔV×k変動処理を実行する(S34、第2工程、第4工程)。ステップS33またはS34の後、指令値決定部33は、stateの値を1に変更し(S35)、第2決定処理を終了する。
【0055】
図5は、ΔV×k変動処理の一例を示すフローチャートである。
図5に示すフローチャートにおける、太陽電池パネル10の出力電圧についての各領域の定義は、上述した例のとおりである。
【0056】
ΔV×k変動処理において、指令値決定部33は、太陽電池パネル10の出力電圧が第4領域内であるか否かを判定する(S341)。太陽電池パネル10の出力電圧が第4領域内である場合(S341でYES)、指令値決定部33は、kの値を4に決定する(S342)。
【0057】
太陽電池パネル10の出力電圧が第4領域内でない場合(S341でNO)、指令値決定部33は、太陽電池パネル10の出力電圧が第3領域内であるか否かを判定する(S343)。太陽電池パネル10の出力電圧が第3領域内である場合(S343でYES)、指令値決定部33は、kの値を3に決定する(S344)。
【0058】
太陽電池パネル10の出力電圧が第3領域内でない場合(S343でNO)、指令値決定部33は、太陽電池パネル10の出力電圧が第2領域内であるか否かを判定する(S345)。太陽電池パネル10の出力電圧が第2領域内である場合(S345でYES)、指令値決定部33は、kの値を2に決定する(S346)。太陽電池パネル10の出力電圧が第2領域内でない場合(S345でNO)、出力電圧は第1領域内である。この場合、指令値決定部33は、kの値を1に決定する(S347)。
【0059】
指令値決定部33は、ステップS342,S344,S346,S347のいずれかによりkの値を決定した後、Vref(n)の値を、今回の変動方向とは逆方向にΔV×k変動させた値を、Vref(n+1)に決定する(S348)。以上により、指令値決定部33は、ΔV×k変動処理を終了する。
【0060】
(動作例)
図6は、制御装置30による指令値の決定方法における、太陽電池パネル10の出力電圧および出力電力の変動の一例を示すグラフである。
図6において、符号601は、出力電圧と出力電力との関係を示すグラフである。符号601において、横軸は出力電圧を示し、縦軸は出力電力を示す。
図6において、符号602は、時間と出力電力との関係を示すグラフである。符号602において、横軸は時間を示し、縦軸は出力電力を示す。
図6においては、符号601の縦軸の位置と符号602の縦軸の位置とを合わせている。
図6において、符号603は、時間と出力電圧との関係を示すグラフである。符号603において、横軸は時間を示し、縦軸は出力電圧を示す。
図6においては、符号602の横軸の位置と符号603の横軸の位置とを合わせている。また、視認性のため、符号603においては、縦軸と横軸との交点における縦軸の値を0Vよりも大きい値としている。
【0061】
図6に示す例では、太陽電池パネル10に対する日射量に変動はないものとしている。また、
図6に示す例では、制御装置30がDC-DCコンバータ20に入力する指令値の初期値を、出力電圧が開放電圧になる値とする。また、
図6に示す例では、太陽電池パネル10の開放電圧は500Vである。また、
図6に示す例では、指令値がΔV変動した場合、出力電圧は20V変動するものとする。また、
図6に示す例では、太陽電池パネル10の最大電力点における出力電圧Vpmは、340Vである。また、
図6に示す例では、出力電圧は、以下のとおり第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3、および第4領域R4に区分されている。
・第1領域R1は、出力電圧が0V以上、かつ350V以下の領域である。
・第2領域R2は、出力電圧が350Vよりも大きく、かつ400V以下の領域である。
・第3領域R3は、出力電圧が400Vよりも大きく、かつ450V以下の領域である。
・第4領域R4は、出力電圧が450Vよりも大きく、かつ500V以下の領域である。
それぞれの領域における変動幅の倍率は、上述した例と同じである。
【0062】
制御装置30による指令値の決定方法では、出力電圧は、500Vから480Vへ、480Vから460Vへ変動し、その後に再び480Vに変動する。このとき、出力電圧を480Vとする指令値が、対象指令値となっている。上述したとおり、太陽電池パネル10に対する日射量に変動はないものとしているため、出力電圧が480Vである状態において、今回の出力電力と過去の出力電力とは互いに同一と見なせる。また、480Vという出力電圧は、第4領域R4に属する。このため、制御装置30は、DC-DCコンバータ20に入力する指令値を、ΔV×4減少させる。その結果、太陽電池パネル10の出力電圧は、480Vから一気に80V減少し、400Vに変動する。
【0063】
さらに、太陽電池パネル10の出力電圧は、400Vから380Vへ、380Vから360Vへ変動し、その後に再び380Vに変動する。このときは、出力電圧を380Vとする指令値が、対象指令値となっている。上述したとおり、太陽電池パネル10に対する日射量に変動はないものとしているため、出力電圧が380Vである状態において、今回の出力電力と過去の出力電力とは互いに同一と見なせる。また、380Vという出力電圧は、第2領域R2に属する。このため、制御装置30は、DC-DCコンバータ20に入力する指令値を、ΔV×2減少させる。その結果、太陽電池パネル10の出力電圧は、380Vから40V減少し、340Vに変動する。
【0064】
この時点で、太陽電池パネル10の出力電圧は、最大電力点における出力電圧Vpmに到達した状態となる。これ以降、制御装置30は、太陽電池パネル10の出力電圧がVpmの近傍で往復するように、指令値を決定する。
【0065】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0066】
実施形態2における指令値の決定方法は、DC-DCコンバータ20に次回入力する指令値を対象指令値に決定した後、対象指令値に対応する今回の測定値と過去の測定値との差の絶対値が閾値以内でない場合に、実施形態1における指令値の決定方法と相違する。すなわち、実施形態2における指令値の決定方法は、太陽電池パネル10に対する日射量に変化が生じている場合に、実施形態1における指令値の決定方法と相違する。
【0067】
実施形態2における指令値の決定方法では、指令値決定部33は、対象指令値に対応する今回の測定値と過去の測定値との差の絶対値が閾値よりも大きい場合、DC-DCコンバータ20に次回入力する指令値を、再び対象指令値に決定する。この場合、電力比較部32は、次回以降に新たな指令値を決定する処理において、対象指令値に対応する今回の測定値と前回の測定値とを比較する。具体的には、電力比較部32は、対象指令値に対応する今回の測定値と前回の測定値との差の絶対値が閾値以内であるか否かを判定する。この閾値は、対象指令値に対応する今回の測定値と前回の測定値との差についての不感帯を規定する。当該閾値は、上述した、対象指令値に対応する今回の測定値と過去の測定値との差について最初に判定したときの閾値と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0068】
対象指令値に対応する今回の測定値と前回の測定値との差の絶対値が閾値以内でない間は、太陽電池パネル10に対する日射量の変化が継続していると考えられる。この間、指令値決定部33は、対象指令値を新たな指令値として繰り返し決定し、DC-DCコンバータ20に入力する。
【0069】
DC-DCコンバータ20に今回入力した対象指令値に対応する測定値と前回入力した対象指令値に対応する測定値との差の絶対値が閾値以内となった場合、太陽電池パネル10に対する日射量が変化しなくなったと考えられる。この場合、指令値決定部33は、その次にDC-DCコンバータ20に入力する指令値を、対象指令値から変動させた値に決定する。その後は、制御装置30は、実施形態1と同様に動作して指令値を決定する。
【0070】
通常、太陽電池パネル10の出力電圧が最大電力点から遠ざかる方向に指令値の値が変動すると、太陽電池パネル10の出力電力の測定値は減少する。しかし、太陽電池パネル10に対する日射量に変化が生じている場合、例えば出力電圧が最大電力点から遠ざかる方向に指令値の値が変動しても、見かけ上の測定値が増加する場合がある。このような場合、出力電圧が最大電力点から遠ざかる方向に指令値が変動を継続し、出力電圧が最大電力点から大きく遠ざかる可能性がある。
【0071】
実施形態2に係る指令値の決定方法によれば、太陽電池パネル10に対する日射量に変化が生じている場合、当該日射量が変化しなくなるまでの間、制御装置30は、DC-DCコンバータ20に入力する指令値を継続して対象指令値とする。これにより、太陽電池パネル10に対する日射量の変化に起因して測定値の増減についての判定を誤り、出力電圧が最大電力点から遠ざかる可能性を低減できる。
【0072】
太陽電池パネル10に対する日射量に変化が生じなくなったとき、指令値決定部33は、その次にDC-DCコンバータ20に入力する指令値を、対象指令値から増加した値としてもよく、減少した値としてもよい。例えば、指令値決定部33は、指令値を継続して対象指令値とする直前の変動方向と同じ方向に対象指令値の値を変動させた値を、新たな指令値としてもよい。
【0073】
図7は、実施形態2に係る指令値の決定方法の一例を示すフローチャートである。実施形態2に係る指令値の決定方法では、状態判定部31は、stateの値が1,2,3のいずれであるかを判定する(S1)。制御装置30は、stateの値が1である場合(S1においてstate=1)には、第1決定処理を実行する(S2)。制御装置30は、stateの値が2である場合(S1においてstate=2)には、第2決定処理を実行する(S3)。制御装置30は、stateの値が3である場合(S1においてstate=3)には、第3決定処理を実行する(S4)。stateの値が3である状態は、太陽電池パネル10に対する日射量に変動が生じている可能性が高い状態である。第1決定処理については実施形態1と同じであるため、説明を省略する。
【0074】
図8は、実施形態2における第2決定処理の一例を示すフローチャートである。
図8に示す例では、電力比較部32による処理は、実施形態1における第2決定処理の一例と同様である。すなわち、実施形態2における第2決定処理においても、電力比較部32は、今回の測定値P(n)を取得し(S31)、P(n)と、P(n-2)との差の絶対値がth1以内であるか否かを判定する(S32)。
【0075】
実施形態2における第2決定処理では、P(n)と、P(n-2)との差の絶対値がth1以内でない場合(S32でNO)、指令値決定部33は、stateの値を3に変更する(S36)。さらに、指令値決定部33は、Vref(n)の値をVref(n+1)の値に決定し(S37、第5工程)、第2決定処理を終了する。
【0076】
P(n)と、P(n-2)との差の絶対値がth1以内である場合(S32でYES)、指令値決定部33は、stateの値を1に変更する(S38)。さらに、指令値決定部33は、実施形態1と同じΔV×k変動処理によりVref(n)の値を決定し(S39)、第2決定処理を終了する。この場合におけるステップS38,S39の処理はそれぞれ、
図4に示したステップS35,S34の処理と同じである。
【0077】
図9は、第3決定処理の一例を示すフローチャートである。
図9に示す例では、電力比較部32は、太陽電池パネル10の、今回の測定値P(n)を取得する(S41)。ステップS41の内容は、上述したステップS21の内容と同じである。次に、電力比較部32は、P(n)とP(n-1)との差の絶対値が閾値th2以内であるか否かを判定する(S42)。
【0078】
P(n)とP(n-1)との差の絶対値がth2以内でない場合(S42でNO)、指令値決定部33は、Vref(n)の値をVref(n+1)の値に決定する(S45)。一方、P(n)とP(n-1)との差の絶対値がth2以内である場合(S42でYES)、指令値決定部33は、stateの値を1に変更する(S43)。その後、指令値決定部33は、Vref(n)の値をΔV変動させた値をVref(n+1)の値に決定する(S44、第6工程)。ステップS44またはS45の後、指令値決定部33は、第3決定処理を終了する。
【0079】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置30(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロックとしてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0080】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0081】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0082】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0083】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0084】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
30 制御装置(決定装置)
32 電力比較部(第1処理部、第4処理部)
33 指令値決定部(第2処理部、第3処理部、第5処理部、第6処理部)