(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168761
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】地下核シェルター
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085691
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】516134372
【氏名又は名称】株式会社富士イノベーションセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】崎田 松男
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA23
2E139AA25
2E139AA30
2E139AB22
2E139AC26
(57)【要約】
【課題】設置型シェルターを使用して核攻撃の中心点近くにおいても核攻撃から身を守ることが可能な地下核シェルターの提供。
【解決手段】地下部に設置される設置型シェルター2であり、側面に出入口扉2A,2Bが設けられた設置型シェルター2と、設置型シェルター2の少なくとも上面および側面を覆うRC構造物3であり、設置型シェルター2の出入口扉2A,2Bが設けられている側面とは異なる方向の側面に出入口扉3A,3Bが設けられたRC構造物3と、RC構造物3の出入口扉3A,3Bの外側に設けられ、地上部と行き来するための避難経路4A,4Bとを含む地下核シェルター1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下部に設置される設置型シェルターであり、側面に出入口扉が設けられた設置型シェルターと、
前記設置型シェルターの少なくとも上面および側面を覆うRC構造物であり、前記設置型シェルターの出入口扉が設けられている側面とは異なる方向の側面に出入口扉が設けられたRC構造物と、
前記RC構造物の出入口扉の外側に設けられ、地上部と行き来するための避難経路と
を含む地下核シェルター。
【請求項2】
前記設置型シェルターの出入口扉は、第1の出入口扉および第2の出入口扉から構成され、前記第1の出入口扉は、前記第2の出入口扉と反対側の側面に設けられたものであり、
前記RC構造物の出入口扉は、第3の出入口扉および第4の出入口扉から構成され、前記第3の出入口扉は、前記第4の出入口扉と反対側の側面に設けられたものである請求項1記載の地下核シェルター。
【請求項3】
前記RC構造物の上面に設けられた耐火物を含む請求項1または2に記載の地下核シェルター。
【請求項4】
前記耐火物の上面に敷設された土を含む請求項3記載の地下核シェルター。
【請求項5】
前記地上部の前記避難経路への出入口には、鉛直方向に対して傾斜させた出入口扉を有する請求項1または2に記載の地下核シェルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核攻撃から身を守るための地下核シェルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の国際情勢から、核攻撃や放射性物質の汚染から身を守る核シェルターへの関心が高まりつつある。日本においても工場で組み立てたシェルターを設置場所へ運搬して設置する設置型シェルターが販売されている(例えば、非特許文献1,2参照。)。しかしながら、日本での核シェルターの普及率は0.02%と非常に低い。また、例えば特許文献1に記載のように、津波や洪水などの水災害時に緊急避難するための水災害時避難用シェルターなども提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の水災害時避難用シェルターは、RC構造で地下に建築された床面および壁面を有する地下シェルター室と、地下シェルター室の床面から地上に上がるための階段と、階段の上部を囲うようにRC構造で地上に建築された壁面と天蓋とを有する階段室とを有し、階段室が、外部への出入口を有し、かつ階段室の壁面の一部が、中央部が突出した平面視V字状の波切り壁とされてなるものである。
【0004】
この従来の水災害時避難用シェルターでは、階段室の壁面の一部が、中央部が突出した平面視V字状の波切り壁とされており、津波が来た場合に地上にある家屋が流されてもRC構造の階段室を残して地下にある地下シェルター室は残るので、被害を逃れることが可能となっている。
【0005】
ところで、日本における核攻撃の被害報告(例えば、非特許文献3参照。)では、原爆の中心点より500メートルの圏内においては、RC構造の建築物であっても地上部分は倒壊したり亀裂を生じたりしていたが、屋外待避壕(掩蓋)や横穴式防空壕の崩壊したものはなく、土の掩蓋壕は内外部ともに異常がなかったとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“CRISIS-01 一般家庭普及型 防災核シェルター”,[online],直エンジニアリング株式会社,[令和5年5月17日検索],インターネット<URL:https://crisis01.com/files/libs/1437/202209290944311734.pdf>
【非特許文献2】“[室内/屋外]設置型シェルター(最後の砦)”,[online],ワールドネットインターナショナル株式会社,[令和5年5月17日検索],インターネット<URL:https://kakushelter.com/shelter-product-information-2/room-type-shelter/>
【非特許文献3】“原爆の威力”,[online],長崎市,[令和5年5月17日検索],インターネット<URL:https://nagasakipeace.jp/search/about_abm/scene/iryoku.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
核攻撃から身を守るためには、核シェルターを備えておくことが重要であり、前述の設置型シェルターは手軽に設置できるという点で優れている。しかしながら、現在販売されている設置型シェルターは主に鉄鋼製であり、この設置型シェルターを単に地上へ設置しただけでは、前述の日本における核攻撃の被害報告を見る限り、核攻撃の中心点近くでこの設置型シェルターが耐えうるとは言い難い。
【0009】
そこで、本発明においては、手軽に設置できる設置型シェルターを使用して核攻撃の中心点近くにおいても核攻撃から身を守ることが可能な地下核シェルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の地下核シェルターは、地下部に設置される設置型シェルターであり、側面に出入口扉が設けられた設置型シェルターと、設置型シェルターの少なくとも上面および側面を覆うRC構造物であり、設置型シェルターの出入口扉が設けられている側面とは異なる方向の側面に出入口扉が設けられたRC構造物と、RC構造物の出入口扉の外側に設けられ、地上部と行き来するための避難経路とを含むものである。
【0011】
本発明の地下核シェルターによれば、地下部に設置された設置型シェルターがRC構造物によりその少なくとも上面および側面が覆われており、核攻撃の爆風に対してRC構造物により設置型シェルターが保護される。また、設置型シェルターの出入口扉がRC構造物の出入口扉とは異なる方向の側面に設けられているため、核攻撃の爆風により仮にRC構造物の出入口扉が突破されたとしても設置型シェルターの出入口扉に直接到達しないので、設置型シェルターの出入口扉は保護される。
【0012】
設置型シェルターの出入口扉は、第1の出入口扉および第2の出入口扉から構成され、第1の出入口扉は、第2の出入口扉と反対側の側面に設けられたものであり、RC構造物の出入口扉は、第3の出入口扉および第4の出入口扉から構成され、第3の出入口扉は、第4の出入口扉と反対側の側面に設けられたものであることが望ましい。
【0013】
これにより、設置型シェルターの第1の出入口扉および第2の出入口扉の一方およびRC構造物の第3の出入口扉および第4の出入口扉の一方が核攻撃により使用できなくなったとしても他方の出入口扉から脱出することが可能となる。また、これらの設置型シェルターの第1の出入口扉および第2の出入口扉はRC構造物の第3の出入口扉および第4の出入口扉とは異なる方向の側面に設けられているため、核攻撃の爆風により仮にRC構造物の第3の出入口扉および第4の出入口扉が突破されたとしても設置型シェルターの第1の出入口扉および第2の出入口扉に直接到達しないので、設置型シェルターの第1の出入口扉および第2の出入口扉は保護される。
【0014】
また、本発明の地下核シェルターは、RC構造物の上面に設けられた耐火物を含むことが望ましい。これにより、核攻撃の熱線に地上部が晒されたとしてもRC構造物の上面が耐火物により守られるため、RC構造物が保護され、このRC構造物に上面が覆われている設置型シェルターも保護される。
【0015】
さらに、本発明の地下核シェルターは、耐火物の上面に敷設された土を含むことが望ましい。これにより、耐火物が核攻撃の熱線に直接晒されることがなくなるので、熱線から耐火物自体も保護される。
【0016】
地上部の避難経路への出入口には、鉛直方向に対して傾斜させた出入口扉を有することが望ましい。これにより、核攻撃の爆風が地上部の避難経路への出入口の出入口扉に到達した際に斜め方向に逃がされるため、出入口扉への威力が低減される。
【発明の効果】
【0017】
(1)地下部に設置される設置型シェルターであり、側面に出入口扉が設けられた設置型シェルターと、設置型シェルターの少なくとも上面および側面を覆うRC構造物であり、設置型シェルターの出入口扉が設けられている側面とは異なる方向の側面に出入口扉が設けられたRC構造物と、RC構造物の出入口扉の外側に設けられ、地上部と行き来するための避難経路とを含む構成により、核攻撃の爆風に対してRC構造物により設置型シェルターは保護され、設置型シェルターの出入口扉も保護されるので、手軽に設置できる設置型シェルターを使用して核攻撃の中心点近くにおいても核攻撃から身を守ることが可能となる。
【0018】
(2)設置型シェルターの出入口扉が、第1の出入口扉および第2の出入口扉から構成され、第1の出入口扉は、第2の出入口扉と反対側の側面に設けられたものであり、RC構造物の出入口扉が、第3の出入口扉および第4の出入口扉から構成され、第3の出入口扉は、第4の出入口扉と反対側の側面に設けられたものであることにより、核攻撃の爆風により仮にRC構造物の第3の出入口扉および第4の出入口扉が突破されたとしても設置型シェルターの第1の出入口扉および第2の出入口扉に直接到達しないので、設置型シェルターの第1の出入口扉および第2の出入口扉は保護され、設置型シェルターからの脱出経路が確保される。
【0019】
(3)RC構造物の上面に設けられた耐火物を含むことにより、核攻撃の熱線からRC構造物が保護され、このRC構造物に上面が覆われている設置型シェルターも保護されるので、核攻撃の中心点近くにおいてもより確実に身を守ることが可能となる。
【0020】
(4)耐火物の上面に敷設された土を含むことにより、熱線から耐火物自体も保護されるので、核攻撃の中心点近くにおいてもさらに確実に身を守ることが可能となる。
【0021】
(5)地上部の避難経路への出入口に、鉛直方向に対して傾斜させた出入口扉を有することにより、核攻撃の爆風の出入口扉への威力が低減され、この出入口扉が保護されるので、核攻撃の中心点近くにおいてもさらに確実に身を守ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態における地下核シェルターの水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は本発明の実施の形態における地下核シェルターの水平断面図、
図2は
図1のA-A断面図、
図3は
図1のB-B断面図である。
【0024】
図1~
図3に示すように、本発明の実施の形態における地下核シェルター1は、地下部Uに設置される設置型シェルター2と、設置型シェルター2を覆うRC(鉄筋コンクリート)構造物3と、地上部Gと行き来するための避難経路4A,4Bとを備える。また、RC構造物3の上面には耐火レンガや耐火セラミックス等の耐火物5が設けられ、耐火物5の上面には土6が敷設されている。
【0025】
設置型シェルター2は、側面に出入口扉2A,2Bが設けられている。出入口扉2Aは、出入口扉2Bと反対側の側面に設けられている。設置型シェルター2としては、例えば、前述のような非特許文献1,2に記載のものを使用することができる。
【0026】
RC構造物3は、設置型シェルター2の少なくとも上面および側面を覆うものである。RC構造物3は、例えばボックスカルバートやPC(プレキャストコンクリート)板等により形成することができる。RC構造物3の壁厚は、例えば約40cmとする。RC構造物3は、設置型シェルター2を収容する収容空間7を形成する。設置型シェルター2は工場で製造され、設置場所まで運搬されてRC構造物3の収容空間7内へ設置される。なお、設置型シェルター2は、工場で製造されたパーツをRC構造物3の収容空間7内で組み立てて設置する構成としても良い。
【0027】
RC構造物3は、側面に避難経路4A,4Bから収容空間7へ出入りするための出入口扉3A,3Bが設けられている。出入口扉3A,3Bは爆風に耐えうる堅牢なものである。出入口扉3A,3Bは、設置型シェルター2の出入口扉2A,2Bが設けられている側面とは異なる方向の側面に設けられている。
【0028】
RC構造物3および出入口扉3A,3Bの外側面および内側面には、ポリウレアがコーティングされている。ポリウレアは、イソシアネートとポリアミンの化学反応によって生成されるウレア結合を基本とする樹脂化合物であり、防水性、耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性、防食性に非常に高い能力を発揮し、その強度と柔軟性によってRC構造物の強度を劇的に高めることができる。
【0029】
また、RC構造物3および出入口扉3A,3Bの内側面には、銀イオン光触媒がコーティングされている。このRC構造物3等の内側面にコーティングされた銀イオン光触媒により、RC構造物3の収容空間7内のウイルス、カビ菌や悪臭などを分解して除去することができ、抗ウイルス効果、抗菌効果、防カビ効果や消臭効果などを期待できる。
【0030】
避難経路4A,4Bは、それぞれRC構造物3の出入口扉3A,3Bに外側に設けられる。なお、図示しないが、避難経路4A,4B内には地上部と行き来するための階段、梯子やスロープ等が設けられる。地上部Gの避難経路4A,4Bの出入口には、それぞれ鉛直方向に対して傾斜させた出入口扉8A,8Bが設けられている。
【0031】
上記構成の地下核シェルター1は、地下部Uに設置された設置型シェルター2がRC構造物3によりその少なくとも上面および側面が覆われており、核攻撃の爆風に対してRC構造物3により設置型シェルター1が保護される。また、設置型シェルター2の出入口扉2A,2BがRC構造物3の出入口扉3A,3Bとは異なる方向の側面に設けられているため、核攻撃の中心点近くにおいて爆風により仮にRC構造物3の出入口扉3A,3Bが突破されたとしても設置型シェルター2の出入口扉2A,2Bに直接到達しないので、設置型シェルター2の出入口扉2A,2Bは保護され、設置型シェルター2からの脱出経路が確保される。すなわち、本実施形態における地下核シェルター1では、手軽に設置できる設置型シェルター2を使用して核攻撃の中心点近くにおいても核攻撃から身を守ることができる。
【0032】
また、設置型シェルター2の出入口扉2Aは、出入口扉2Bと反対側の側面に設けられ、RC構造物3の出入口扉3Aは、出入口扉3Bと反対側の側面に設けられているため、
設置型シェルター2の出入口扉2Aおよび出入口扉2Bの一方およびRC構造物3の出入口扉3Aおよび出入口扉3Bの一方が核攻撃により塞がって使用できなくなったとしても他方の出入口扉から脱出することが可能である。
【0033】
また、本実施形態における地下核シェルター1では、RC構造物3の上面に耐火物5が設けられており、核攻撃の中心点近くにおいて熱線に地上部Gが晒されたとしてもRC構造物3の上面が耐火物5により守られるため、RC構造物3が保護され、このRC構造物3に上面が覆われている設置型シェルター2も保護される。なお、耐火物5は省略することも可能である。
【0034】
さらに、本実施形態における地下核シェルター1は、耐火物5の上面に土6が敷設されているため、耐火物5が核攻撃の熱線に直接晒されることがなくなるので、熱線から耐火物5自体も保護される。また、この土6を用いて植物を栽培することも可能である。なお、土6は省略しても良く、RC構造物3上に住居や事務所等を建築しても良い。
【0035】
また、本実施形態における地下核シェルター1では、地上部Gの避難経路4A,4Bへの出入口に設けられた出入口扉8A,8Bを、それぞれ鉛直方向に対して傾斜させているため、核攻撃の爆風がこれらの出入口扉8A,8Bに到達した際に斜め方向に逃がされる。したがって、出入口扉8A,8Bへの核攻撃の爆風の威力が低減され、出入口扉8A,8Bが保護されるので、核攻撃の中心点近くにおいてもさらに確実に身を守ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の地下核シェルターは、核攻撃から身を守るためのシェルターとして有用であり、設置型シェルターを使用して核攻撃の中心点近くにおいても核攻撃から身を守ることが可能な地下核シェルターとして好適である。
【符号の説明】
【0037】
1 地下核シェルター
2 設置型シェルター
2A,2B 出入口扉
3 RC構造物
3A,3B 出入口扉
4A,4B 避難経路
5 耐火物
6 土
7 収容空間
8A,8B 出入口扉