(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168762
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】液肥含有ゼリー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C05G 5/18 20200101AFI20241128BHJP
C05G 5/30 20200101ALI20241128BHJP
C05C 11/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C05G5/18
C05G5/30
C05C11/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085693
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】502218411
【氏名又は名称】株式会社サンアンドホープ
(74)【代理人】
【識別番号】100085224
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 重隆
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 康彦
【テーマコード(参考)】
4H061
【Fターム(参考)】
4H061AA01
4H061AA02
4H061CC34
4H061DD18
4H061EE51
4H061EE70
4H061FF05
4H061FF15
4H061GG18
4H061GG20
4H061GG25
4H061GG41
4H061GG43
4H061HH03
4H061LL02
(57)【要約】
【課題】取り扱いが容易で、使用後に生分解されるとともに、液体肥料の肥料成分の効果を長期間にわたって持続できる液肥含有ゼリーを提供する。
【解決手段】液体肥料を、寒天及びゼラチンを含むゲル化剤によりゼリー状に固めた液肥含有ゼリー10とした。これにより、この液肥含有ゼリー10の取り扱いが容易で、使用後に生分解されるとともに、液体肥料の肥料成分の効果を長期間にわたって持続できる。
また、中心側部分ゼリー11と、これを層状に被覆する外側部分ゼリー12とにより液肥含有ゼリー10Aを製造し、かつこれらの部分ゼリー11,12に含まれる液体肥料について、成分又は濃度を異ならせてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体肥料を、寒天及びゼラチンを含むゲル化剤によりゼリー状に固めたことを特徴とする液肥含有ゼリー。
【請求項2】
前記液肥含有ゼリーは、中心側部分ゼリーと、これを層状に被覆する所定数の外側部分ゼリーとからなり、
前記中心側部分ゼリー及び前記所定数の外側部分ゼリーにそれぞれ含まれる前記液体肥料の濃度は、異なっていることを特徴とする請求項1に記載の液肥含有ゼリー。
【請求項3】
水に寒天及びゼラチンを含むゲル化剤を混合するゲル化剤混合工程と、
得られたゲル化剤混合水を、ゲル融解温度以上に加熱しながら撹拌してゲル化剤溶液とする加熱撹拌工程と、
加熱された前記ゲル化剤溶液に、液体肥料を添加して撹拌する液肥混合工程と、
得られた液肥混合溶液を型に流し込んで冷却することで、液肥含有ゼリーを成型するゼリー成型工程とを備えたことを特徴とする液肥含有ゼリー製造方法。
【請求項4】
前記液肥含有ゼリーは、中心側部分ゼリーと、これを層状に被覆する所定数の外側部分ゼリーとからなるもので、
まず、請求項3の液肥含有ゼリー製造方法に則って前記中心側部分ゼリーを成型し、
その後、該中心側部分ゼリーを被覆するように、それぞれ請求項3の液肥含有ゼリー製造方法に則って前記所定数の外側部分ゼリーを順次層状に成型して液肥含有ゼリーとし、
前記中心側部分ゼリー及び前記所定数の外側部分ゼリーにそれぞれ含まれる前記液体肥料の濃度は、異なっていることを特徴とする請求項3に記載の液肥含有ゼリー製造方法。
【請求項5】
前記液体肥料は、窒素を含んだ窒素含有液肥で、
前記液肥混合工程では、加熱された前記ゲル化剤溶液を30℃以下に冷却し、その後、該ゲル化剤溶液に前記窒素含有液肥を添加して撹拌することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の液肥含有ゼリー製造方法。
【請求項6】
前記ゲル化剤は前記寒天及び前記ゼラチンで、
これらの寒天とゼラチンとの配合比を変更することで、前記液体肥料の肥料成分の徐放期間を調整することを特徴とする請求項3に記載の液肥含有ゼリー製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体肥料を含有した液肥含有ゼリー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用肥料や園芸用肥料の形態として、例えば、特許文献1に記載された液体肥料が知られている。
この液体肥料は、植物の三大栄養素(窒素、リン、カリウム)などの肥料成分が水に溶解しているため、根から植物に吸収され易く、固形肥料やペースト状肥料に比べて速効性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような液体肥料は、上述したように固形肥料等に比べて根からの吸収性が高く即効性はあるものの、液体であるが故に、その大半は土の中に流出してしまい、植物にはほとんど吸収されない。
【0005】
そこで、本発明者は鋭意研究の結果、液体肥料をゲル化剤によりゼリー状に固めた液肥含有ゼリーとすれば、取り扱いが容易で、使用後に生分解されるとともに、植物への灌水のたびに液体肥料の肥料成分を土中に徐放することで、長期間にわたって肥料効果を持続できることを知見し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、取り扱いが容易で、使用後に生分解されるとともに、液体肥料の肥料成分の効果を長期間にわたって持続できる液肥含有ゼリーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、液体肥料を、寒天及びゼラチンを含むゲル化剤によりゼリー状に固めたことを特徴とする液肥含有ゼリーである。
【0008】
液体肥料とは、肥料の成分が水に溶けた水溶液の肥料で、固形肥料に比べて植物が成分を吸収し易いことから、肥料の効果が早期に現れやすい性質を有している。
液体肥料の種類は任意である。例えば、化学肥料を原料とした各種の化学液肥でも、有機肥料を原料にした各種の有機液肥でも、化学原料と有機物の両方を原料とした各種の有機入り液肥でもよい。
【0009】
液体肥料には、色素を含むものでもよい。
ゲル化剤の種類は限定されない。例えば、寒天、ゼラチンの他、カラギーナン、ペクチン等でもよい。
液肥含有ゼリーの形状は任意である。例えば、動物、人形、キャラクタ、乗り物等でもよい。
液肥含有ゼリーのサイズも任意である。例えば、数mmサイズ、数cmサイズのものでもよい。
液肥含有ゼリーのゼリー強度は任意である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記液肥含有ゼリーは、中心側部分ゼリーと、これを層状に被覆する所定数の外側部分ゼリーとからなり、前記中心側部分ゼリー及び前記所定数の外側部分ゼリーにそれぞれ含まれる前記液体肥料は、成分又は濃度が異なっていることを特徴とする請求項1に記載の液肥含有ゼリーである。
【0011】
中心側部分ゼリーを覆う外側部分ゼリーの個数(層数)は任意である。1つでも2つ以上でもよい。
中心側部分ゼリー及び所定数の外側部分ゼリーにそれぞれ含まれる液体肥料は、成分のみが異なっても、濃度のみが異なっても、成分と濃度との両方が異なってもよい。
【0012】
このうち、濃度に関しては、液肥含有ゼリーの外側(最外層の外側部分ゼリー)から中心(中心側部分ゼリー)に向かって徐々に液体肥料の濃度を高めても、その逆でもよい。このうち、前者の場合の各部分ゼリーは、中心側に在るものほど体積が小さくなるものの、液体肥料の濃度を中心側に配置されたものほど高めることで、肥料成分の放出量(緩効性)を、長期間にわたって一定に保持できる。
なお、外側部分ゼリーが複数の場合には、各外側部分ゼリーの間で成分又は濃度を異ならせてもよい。
【0013】
請求項3に記載の発明は、水に寒天及びゼラチンを含むゲル化剤を混合するゲル化剤混合工程と、得られたゲル化剤混合水を、ゲル融解温度以上に加熱しながら撹拌してゲル化剤溶液とする加熱撹拌工程と、加熱された前記ゲル化剤溶液に、液体肥料を添加して撹拌する液肥混合工程と、得られた液肥混合溶液を型に流し込んで冷却することで、液肥含有ゼリーを成型するゼリー成型工程とを備えたことを特徴とする液肥含有ゼリー製造方法である。
【0014】
以下、これらの工程について説明する。
(ゲル化剤混合工程)
寒天やゼラチン等のゲル化剤の性状は任意である。例えばパウダー状、粒状、糸状、固形状等が挙げられるものの、使用しやすいパウダー状が好ましい。
水に対するゲル化剤の添加量は、ゲル化剤の種類や、液肥含有ゼリーの目標とするゼリー強度によって適宜調整される。
【0015】
例えば、ゲル化剤が寒天の場合には、水100重量%に対して寒天1~3重量%でもよい。1重量%未満では、液肥含有ゼリーの型崩れし易くなるとともに、短期間のうちに過剰な分量の液体肥料成分が土中に放出されるおそれがある。また、3重量%を超えれば、土液肥含有ゼリーが硬すぎて長期間放置しても生分解できず、かつ設定された分量の液体肥料成分を土中に除放できないおそれがある。ここで、水に対するゲル化剤の好ましい添加量は、水100重量%に対して寒天1~2重量%前後である。この範囲であれば、緩効性という効果が得られる。これについてはゼラチンも同様な効果が現れる。
【0016】
(加熱撹拌工程)
ゲル融解温度は、ゲル化剤の種類により異なる。例えば、ゼラチンの場合は20℃~30℃、寒天の場合は68℃~84℃、カラギーナンの場合は、40℃~50℃である。
加熱撹拌工程では、このゲル融解温度以上の温度でゲル化剤混合水を加熱する。
【0017】
(液肥混合工程)
ゲル化剤溶液への液体肥料の添加量は任意である。例えば、ゲル化剤溶液100重量%に対して、液体肥料50重量%~200重量%でもよい。10重量%未満では液肥含有ゼリー中の肥料成分量が少な過ぎて、植物の生育不良が生じるおそれがある。また、500重量%を超えれば液肥含有ゼリー中の肥料成分量が多過ぎて、液肥含有ゼリーが固まらないおそれがある。
【0018】
ゲル化剤溶液に対する液体肥料の好ましい添加量は、50重量%~300重量%である。この範囲であれば、緩効性という更に好適な効果が得られる。
なお、液体肥料が窒素を含まない場合には、脱窒現象を回避するための寒天溶液の冷却が不要になることから、水とゲル化剤との撹拌混合時に液体肥料も混合すれば、液肥混合工程を省略できる。
【0019】
(ゼリー成型工程)
液肥混合溶液が流し込まれる型の種類は任意である。例えば、プラスチック型、金属型等でもよい。
また、型の形状やサイズも任意である。
さらに、液肥混合溶液を注型した後の冷却は、自然冷却でも、冷却装置による強制冷却でもよい。
【0020】
請求項4に記載の発明は、前記液肥含有ゼリーは、中心側部分ゼリーと、これを層状に被覆する所定数の外側部分ゼリーとからなるもので、まず、請求項3の液肥含有ゼリー製造方法に則って前記中心側部分ゼリーを成型し、その後、該中心側部分ゼリーを被覆するように、それぞれ請求項3の液肥含有ゼリー製造方法に則って前記所定数の外側部分ゼリーを順次層状に成型して液肥含有ゼリーとし、前記中心側部分ゼリー及び前記所定数の外側部分ゼリーにそれぞれ含まれる前記液体肥料の濃度は、異なっていることを特徴とする請求項3に記載の液肥含有ゼリー製造方法である。
【0021】
ここで、外側部分ゼリーを成型する際には、型内に中心側部分ゼリーを入れた状態で、請求項3に記載されたゲル化剤混合工程と、加熱撹拌工程と、液肥混合工程と、ゼリー成型工程とを順次行う。
外側部分ゼリーを複数有する場合には、中心側部分ゼリーを被覆した所定の外側部分ゼリーを型内に入れた状態で、それぞれ上述した工程を順に行う。
【0022】
請求項5に記載の発明は、前記液体肥料は、窒素を含んだ窒素含有液肥で、前記液肥混合工程では、加熱された前記ゲル化剤溶液を30℃以下に冷却し、その後、該ゲル化剤溶液に前記窒素含有液肥を添加して撹拌することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の液肥含有ゼリー製造方法である。
【0023】
窒素を含んだ窒素含有液肥の種類は任意である。例えば、リン安液肥などを採用できる。
液肥混合工程において、ゲル化剤溶液が30℃を超えれば、アンモニア態から硝酸態となって、窒素化合物を分子状窒素として大気中に放散する脱窒現象が発生する。
【0024】
請求項6に記載の発明は、前記ゲル化剤は前記寒天及び前記ゼラチンで、これらの寒天とゼラチンとの配合比を変更することで、前記液体肥料の肥料成分の徐放期間を調整することを特徴とする請求項3に記載の液肥含有ゼリー製造方法である。
【0025】
寒天とゼラチンとの配合比は任意である。寒天の配合を多くすれば、灌水による液肥含有ゼリーの溶解がしにくくなるため、液体肥料の肥料成分の徐放期間が長くなる。一方、ゼラチンの配合を多くすれば、灌水による液肥含有ゼリーの溶解がし易くなるため、液体肥料の肥料成分の徐放期間が短くなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の液肥含有ゼリーによれば、液体肥料を、寒天及びゼラチンを含むゲル化剤によりゼリー状に固めたため、液肥含有ゼリーの取り扱いが容易で、使用後に生分解されるとともに、液体肥料の肥料成分の効果を長期間にわたって持続できる。
【0027】
特に、請求項2に記載の本発明によれば、液肥含有ゼリーを、中心側部分ゼリーと所定数の外側部分ゼリーとからなり、かつこれらの中心側部分ゼリー及び外側部分ゼリーに含まれる液体肥料の成分又は濃度を異ならせたため、例えば、液肥含有ゼリーが内外2重構造で、外側部分ゼリーが溶解するのに30日間かかり、更に内側部分ゼリーが溶解するのに60日間かかる場合には、2つのシグモイド曲線に応じて液肥含有ゼリーの肥料効果を長期間にわたり持続できる。
【0028】
さらに、請求項3に記載の本発明によれば、水に寒天及びゼラチンを含むゲル化剤を混合するゲル化剤混合工程と、得られたゲル化剤混合水を、ゲル融解温度以上に加熱しながら撹拌してゲル化剤溶液とする加熱撹拌工程と、加熱されたゲル化剤溶液に、液体肥料を添加して撹拌する液肥混合工程と、得られた液肥混合溶液を型に流し込んで冷却することで、液肥含有ゼリーを成型するゼリー成型工程とを備えている。
これらの工程を順次行うことにより、請求項1の液肥含有ゼリーの製造が可能となる。
【0029】
また、請求項4に記載の本発明によれば、中心側部分ゼリーを成型した後、これを被覆するように所定数の外側部分ゼリーをそれぞれ層状に成型して液肥含有ゼリーとする。その際、中心側部分ゼリーと所定数の外側部分ゼリーとにそれぞれ含まれる液体肥料の濃度を異ならせた。これにより、請求項4に記載の液肥含有ゼリーを安定して製造できる。
【0030】
さらにまた、請求項5に記載の本発明によれば、液肥混合工程では、加熱されたゲル化剤溶液を30℃以下に冷却し、その後、ゲル化剤溶液に窒素含有液肥を添加して撹拌する。これにより、温度による放散作用という窒素化合物を分子状窒素として大気中に放散する脱窒現象の発生を防止できる。その結果、設計通りの窒素成分を含む液肥含有ゼリーが得られる。
【0031】
また、請求項6に記載の本発明によれば、ゲル化剤として寒天とゼラチンとの混合剤を採用し、寒天とゼラチンとの配合比を適宜変更することで、液肥含有ゼリーに含まれる液体肥料の肥料成分の徐放期間を調整できる。
すなわち、実際に、ゲル化剤に寒天、ゼラチンを使った液肥含有ゼリーの溶解試験を行ったところ、寒天で固めた液肥含有ゼリーの場合、水にはほとんど溶解せず加水分解は生じなかったものの、土壌に対しては微生物分解して溶解した。一方、ゼラチンで固めた液肥含有ゼリーの場合は、土壌だけでなく水に対しても時間経過とともに溶解し、加水分解して水に和む状態となった。
【0032】
この試験結果から、寒天、ゼラチンの双方の混合比率を変更することで、液肥含有ゼリーの経時的な肥効をコントロールできることが判明した。例えば、寒天とゼラチンとの配合比が1:1のゲル化剤を採用した液肥含有ゼリーの場合より、ゼラチンの配合を多くしたものの方が、灌水時(屋外栽培の雨天時を含む)にゼリーが溶解するため、液体肥料の肥料成分の徐放期間が短くなる。一方、ゼラチンの配合を少なくすれば、この肥料成分の徐放期間を長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施例1に係る液肥含有ゼリーの斜視図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る液肥含有ゼリー製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施例2に係る液肥含有ゼリーの断面図である。
【
図4】本発明の実施例2に係る液肥含有ゼリー製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例0035】
図1に示すように、10は本発明の実施例1に係る液肥含有ゼリーで、この液肥含有ゼリー10は、液体肥料を寒天(ゲル化剤)によりゼリー状に固めたものである。
寒天(天草)は、赤藻類テングサ科の海藻である。
液体肥料は、アンモニア態及び硝酸態(窒素)を含んだ窒素含有液肥である。
【0036】
次に、
図2のフローチャートを参照して、実施例1の液肥含有ゼリー10の製造方法を説明する。
まず、ステップ101において、水100重量%に対して寒天パウダー1重量%を添加し、約2分間だけ撹拌混合する(ゲル化剤混合工程)。
ステップ102において、得られたゲル化剤混合水を、寒天のゲル融解温度(68℃~84℃)以上となる85℃で加熱しながら約2分間だけ撹拌してゲル化剤溶液とする(加熱撹拌工程)。
【0037】
ステップ103において、その後、加熱されたゲル化剤溶液の粗熱を自然冷却により30℃まで冷やす(プレ冷却工程)。
ステップ104において、プレ冷却したゲル化剤溶液100重量%に対して、窒素を含んだ窒素含有液肥(液体肥料)50重量%を添加して2分間だけ撹拌混合する(液肥混合工程)。
ステップ105において、得られた液肥混合溶液をプラスチック製の成形型に流し込み、その後、これを冷蔵庫に入れて0℃で30分間~1時間だけ冷却することで、液肥含有ゼリー10を成型する(ゼリー成型工程)。
ステップ106において、その後は、成形型から液肥含有ゼリー10を取り出し、梱包して出荷する。
【0038】
また、この液肥含有ゼリー10の使用時には、例えば、ベランダで植物を栽培しているコンテナの土の上に、所定数の液肥含有ゼリー10を撒く。
その後、植物への灌水を行うと、液肥含有ゼリー10にも水がかかることで、ゼリーの濡れた表面から液体肥料の肥料成分が染み出して、ゼリー表面の水の中に取り込まれる。
次いで、この肥料成分は水とともに液肥含有ゼリー10の表面を伝ってコンテナの土へと流れ落ち、そのまま土の中へ徐放される。これにより、長期間にわたって肥料効果を持続できる。
【0039】
このように、液体肥料を寒天によってゼリー状に固めたため、液肥含有ゼリー10の取り扱いが容易である。しかも、主原料が寒天であるため、肥料としての機能を終えた液肥含有ゼリー10は、生分解される。
【0040】
さらに、上述したゲル化剤混合工程(ステップ101)と、加熱撹拌工程(ステップ102)と、液肥混合工程(ステップ104)と、ゼリー成型工程(ステップ105)とを順次行うことにより、実施例1の液肥含有ゼリー10の製造が可能となる(ステップ106)。
【0041】
さらにまた、この液肥混合工程(ステップ104)の前に、加熱されたゲル化剤溶液を30℃に冷却し、その後、ゲル化剤溶液に窒素含有液肥を添加して撹拌するプレ冷却工程(ステップ103)を配したため、窒素化合物を分子状窒素として大気中へ放散する脱窒現象の発生を防止できる。その結果、設計通りの窒素成分を含む液肥含有ゼリー10が得られる。
【0042】
また、ゲル化剤として寒天とゼラチンとの混合剤を採用し、これらの寒天とゼラチンとの配合比を適宜変更することで、液体肥料の肥料成分の徐放期間を調整してもよい。
実際に、ゲル化剤に寒天、ゼラチンを使った液肥含有ゼリーの溶解試験を行ったところ、寒天で固めた液肥含有ゼリーの場合、水には3ヵ月経っても溶解せず加水分解は生じなかったものの、土壌に対しては微生物分解して溶解した。一方、ゼラチンで固めた液肥含有ゼリーの場合は、土壌だけでなく水に対しても時間経過とともに溶解し、3ヵ月が経った時点で加水分解して水に和む状態となった。
【0043】
この試験結果から、寒天、ゼラチンの双方の混合比率を変更することで、液肥含有ゼリーの経時的な肥効をコントロールできることが判明した。例えば、寒天とゼラチンとの配合比が1:1のゲル化剤を採用した液肥含有ゼリーの場合より、ゼラチンの配合を多くしたものの方が、灌水時(屋外栽培の雨天時を含む)にゼリーが溶解するため、液体肥料の肥料成分の徐放期間を短くできる。一方、ゼラチンの配合を少なくすれば、この肥料成分の徐放期間を長くできる。
【0044】
次に、
図3及び
図4を参照して、本発明の実施例2に係る液肥含有ゼリーについて説明する。
図3に示すように、実施例2の液肥含有ゼリー10Aの特長は、中心側部分ゼリー11と、これを層状に被覆する1つの外側部分ゼリー12とからなり、中心側部分ゼリー11及び外側部分ゼリー12にそれぞれ含まれる液体肥料の濃度が異なっている点である。
【0045】
ここでは、液肥含有ゼリー10Aに含まれる肥料成分の放出量(緩効性)を、長期間にわたって略一定に保持できるように、外側部分ゼリー12の液体肥料の濃度より中心側部分ゼリー11の液体肥料の濃度の方を高くしている。
【0046】
なお、外側部分ゼリー12が複層式の場合でも、隣接する内外層の外側部分ゼリー12…のうち、内層となる方の液体肥料の濃度を高めれば、同様の効果が得られる。
また、濃度ではなく、外側部分ゼリー12と中心側部分ゼリー11の成分(例えば液体肥料だけでなく農薬も添加等)を異ならせてもよい。
【0047】
次に、
図4に示すフローチャートを参照して、本発明の実施例2の液肥含有ゼリー10Aの製造方法について説明する。
まず、ステップ201において、実施例1の液肥含有ゼリー10の製造方法に則って中心側部分ゼリー11を成型する(中心側部分ゼリー成型工程)。
その後、ステップ202において、中心側部分ゼリー11を、中心側部分ゼリー11用に比べて大型の別の成形型に収納する(中心側部分ゼリーの金型セット工程)。
【0048】
次いで、ステップ203において、実施例1の液肥含有ゼリー製造方法に則って、中心側部分ゼリー11を被覆するように外側部分ゼリー12を成型する(外側部分ゼリー成型工程)。
これにより、内外2層構造の液肥含有ゼリー10Aを安定して製造できる(ステップ204)。
その他の構成、作用及び効果は、実施例1から推測可能であるため、説明を省略する。