(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168764
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】自動焼き嵌め装置
(51)【国際特許分類】
B23P 11/02 20060101AFI20241128BHJP
B23B 31/117 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B23P11/02 A
B23B31/117 610F
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085695
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】523195566
【氏名又は名称】東海理化SmartCraft株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150533
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 雅登
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 誠
【テーマコード(参考)】
3C032
【Fターム(参考)】
3C032BB13
3C032DD00
(57)【要約】
【課題】ツールのホルダからの所定の突出量を正確に確保することができる自動焼き嵌め装置を提供すること。
【解決手段】水平方向に回転自在に設けられた円形の回転テーブル11と、回転テーブル11にホルダ12を支持するために設けられた十二個のホルダ台13と、回転テーブル11にツール14を支持するために設けられた十二個のツール台15と、ホルダ12を加熱するための加熱装置16と、ツールチャック装置17と、ツール14のホルダ12からの所定の突出量を確保するために位置決め棒を昇降自在に設けた位置決め装置と、ホルダ12を一次冷却するための一次冷却装置と、加熱と一次冷却を終えたホルダ12を二次冷却するための二次冷却装置20と、を有する自動焼き嵌め装置10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に回転自在に設けられた回転テーブルと、
回転テーブルにホルダを支持するために設けられた複数のホルダ台と、
回転テーブルにツールを支持するために設けられた複数のツール台と、
ホルダを加熱するための加熱装置と、
ツールをツール台から抜き出してホルダに挿入するための、及びホルダからツールを抜き出してツール台に挿入するためのツールチャック装置と、
加熱したホルダにツールを挿入した際に、ツールの下端を支持して、ツールのホルダからの所定の突出量を確保するための位置決め棒を昇降自在に設けた位置決め装置と、
ツールのホルダからの所定の突出量を確保した加熱直後のホルダを一次冷却するための一次冷却装置と、
加熱と一次冷却を終えたホルダを二次冷却するための二次冷却装置と、
を有する自動焼き嵌め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動焼き嵌め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、回転テーブルを水平方向に回転させ、順次、加熱装置によって、ホルダを加熱して挿入孔を膨張させ、ツールチャック装置によって、ツールをホルダのツール挿入孔に所定の高さでもって、ゲージを使って挿入し、加圧装置の叩打部材によって、ホルダに挿入したツールを上から加圧して高さを矯正し、冷却装置によって、ホルダを冷却してツール挿入孔を収縮させてツールを焼き嵌めし、測定装置のレーザセンサによって、ツールのホルダからの突出量が許容範囲か否かを測定し、ホルダへのツールの焼き嵌めを行うことができる自動焼き嵌め装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来の自動焼き嵌め装置では、ツールのホルダからの所定の突出量を確保するために、ツールチャック装置によって、ツールをホルダの挿入孔に所定の高さでもって、ゲージを使って挿入し、更に加圧装置の叩打部材によって、ホルダに挿入したツールを上から加圧して高さを矯正する必要があるため、工程が二工程となり、かつ、装置も複雑なものになるといった問題があった。
【0004】
さらに、加圧装置には、ツールのホルダからの所定の突出量を正確に確保するための具体的な手段が設けられていないため、叩打部材による加圧の加減を調整することが困難となり、ツールのホルダからの所定の突出量を正確に確保することが期待できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するため、ツールのホルダからの所定の突出量を正確に確保することができる自動焼き嵌め装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題解決手段は、水平方向に回転自在に設けられた回転テーブルと、回転テーブルにホルダを支持するために設けられた複数のホルダ台と、回転テーブルにツールを支持するために設けられた複数のツール台と、ホルダを加熱するための加熱装置と、ツールをツール台から抜き出してホルダに挿入するための、及びホルダからツールを抜き出してツール台に挿入するためのツールチャック装置と、加熱したホルダにツールを挿入した際に、ツールの下端を支持して、ツールのホルダからの所定の突出量を確保するための位置決め棒を昇降自在に設けた位置決め装置と、ツールのホルダからの所定の突出量を確保した加熱直後のホルダを一次冷却するための一次冷却装置と、加熱と一次冷却を終えたホルダを二次冷却するための二次冷却装置と、を有する自動焼き嵌め装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の課題解決手段は、位置決め棒を昇降自在に設けた位置決め装置によって、加熱したホルダにツールを挿入した際に、ツールのホルダからの所定の突出量を確保することができる高さまで、位置決め棒が上昇し、位置決め棒の上端がツールの下端を支持して、ツールのホルダからの所定の突出量を確保することができる。
よって、一工程、かつ、簡易な装置でもって、ツールのホルダからの所定の突出量を正確に確保することができる。
【0009】
さらに、一次冷却装置によって、ツールのホルダからの所定の突出量を確保した加熱後のホルダを一次冷却することができるため、例え、位置決め棒を降ろして、ツールの下端の支持を解除したとしても、一次冷却によって収縮が始まったツール挿入孔からツールが落ちることがない。
よって、ツールのホルダからの所定の突出量を正確に確保することができる。
【0010】
したがって、本発明の課題解決手段は、回転テーブルを水平方向に回転させ、加熱装置によって、ホルダを加熱して挿入孔を膨張させ、ツールチャック装置によって、ツールをツール台から抜き出してホルダに挿入し、位置決め棒を昇降自在に設けた位置決め装置によって、加熱したホルダにツールを挿入した際に、ツールのホルダからの所定の突出量を確保することができる高さまで、位置決め棒が上昇し、位置決め棒の上端がツールの下端を支持して、ツールのホルダからの所定の突出量を確保し、一次冷却装置によって、ツールのホルダからの所定の突出量を確保した加熱直後のホルダを一次冷却し、二次冷却装置によって、加熱と一次冷却を終えたホルダを二次冷却し、順次、ホルダへのツールの焼き嵌めを自動的に行うことができる。
【0011】
さらに、本発明の課題解決手段は、ホルダへのツールの焼き嵌めを、順次、自動的に行うことができるだけではなく、回転テーブルを水平方向に回転させ、順次、ツールの焼き嵌めがされたホルダに対して、加熱装置によって、ツールが挿入されたホルダを加熱して挿入孔を膨張させ、位置決め棒を昇降自在に設けた位置決め装置によって、位置決め棒の上端が、加熱したホルダに挿入されたツールの下端を支持して、ツールのホルダからの所定の突出量から更にツールを突き出し、ツールチャック装置によって、ホルダからツールを抜き出してツール台に挿入し、二次冷却装置によって、加熱を終えたホルダを冷却し、順次、ホルダからのツールの焼き抜きを自動的に行うことができる。
また、上記の焼き嵌めと焼き抜きとを混在させて、自動的に行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明の自動焼き嵌め装置の別の斜視図である。
【
図3】本発明の自動焼き嵌め装置の加熱装置と一次冷却装置との斜視図である。
【
図4】本発明の自動焼き嵌め装置の加熱装置と一次冷却装置との別の斜視図である。
【
図5】本発明の自動焼き嵌め装置のツールチャック装置の一部拡大斜視図である。
【
図6】本発明の自動焼き嵌め装置の位置決め装置の一部拡大側面図である。
【
図7】本発明の自動焼き嵌め装置の二次冷却装置の一部拡大斜視図である。
【
図8】本発明の自動焼き嵌め装置の位置決め装置の一部断面図である(焼き嵌め)。
【
図9】本発明の自動焼き嵌め装置の位置決め装置の別の一部断面図である(焼き嵌め)。
【
図10】本発明の自動焼き嵌め装置の位置決め装置の更に別の一部断面図である(焼き嵌め)。
【
図11】本発明の自動焼き嵌め装置の位置決め装置の更にまた別の一部断面図である(焼き嵌め)。
【
図12】本発明の自動焼き嵌め装置の位置決め装置の一部断面図である(焼き抜き)。
【
図13】本発明の自動焼き嵌め装置の位置決め装置の別の一部断面図である(焼き抜き)。
【
図14】本発明の自動焼き嵌め装置の位置決め装置の更に別の一部断面図である(焼き抜き)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の自動焼き嵌め装置10を説明する(
図1、2参照)。
なお、付随するプログラム制御、エア配管、電気配線等の説明は、省略する。
【0014】
本発明の自動焼き嵌め装置10は、主に、水平方向に回転自在に設けられた円形の回転テーブル11と、回転テーブル11にホルダ12を支持するために設けられた十二個のホルダ台13と、回転テーブル11にツール14を支持するために設けられた十二個のツール台15と、ホルダ12を加熱するための加熱装置16と、ツールチャック装置17と、ツール14のホルダ12からの所定の突出量を確保するための位置決め装置18と、ホルダ12を一次冷却するための一次冷却装置19と、加熱と一次冷却を終えたホルダ12を二次冷却するための二次冷却装置20と、を有するものである。
【0015】
回転テーブル11は、回転式の電動アクチュエータ(例えば、CKD株式会社の「アブソデックス」(登録商標))を用いることにより、水平方向に回転自在に設けられている。
なお、回転テーブル11は、水平方向に回転自在に設けられるのであれば、どのような駆動手段を用いても良い。
【0016】
十二個の各ホルダ台13は、回転テーブル11の周方向の端側に、一定間隔の距離を開けて設けられている。
十二個の各ホルダ台13には、回転テーブル11を垂直方向に貫通した、ホルダ12を支持するための孔が設けられている。
【0017】
十二個の各ツール台15は、回転テーブル11の周方向のホルダ台13より中心側に、かつ、十二個の各ホルダ台13に対向して同一線上に一対の配置となるように、一定間隔の距離を開けて設けられている。
十二個の各ツール台15には、ツール14を支持するための孔が設けられている。
回転テーブル11を、一方向に回転させることで、ホルダ台13に支持されたホルダ12とツール台15に支持されたツール14とを、一対ごとに移動させることができる。
【0018】
加熱装置16は、回転テーブル11の加熱・一次冷却ステーションXに設けられている(
図1~4参照)。
加熱装置16は、主に、ホルダ12のツール挿入孔Hが備えられた上部を通すための孔が設けられた、電磁誘導式の加熱リングからなる。
【0019】
なお、加熱装置16は、電磁誘導式の加熱リングからなるものに限定されることなく、その他の温風式の加熱部材からなるものであっても良い。
加熱装置16は、サーボ式の直動ガイド(例えば、株式会社アイエイアイの「ロボシリンダー」(登録商標))を用いることにより、昇降自在に設けられている。
【0020】
よって、加熱・一次冷却ステーションXに、移動されたホルダ台13に支持されたホルダ12に対して、加熱装置16を昇降させることにより、ホルダ12の上部を通した加熱リングによって、ホルダ12の上部を加熱し、ホルダ12のツール挿入孔Hを膨張させることができる。
【0021】
さらに、加熱・一次冷却ステーションXに移動された、ホルダ台13に支持され、ツール14が挿入された(焼き嵌め後)ホルダ12に対して、加熱装置16を昇降させることにより、ホルダ12の上部を通した加熱リングによって、ホルダ12の上部を加熱し、ホルダ12のツール14が挿入されたツール挿入孔Hを膨張させることができる。
【0022】
なお、加熱装置16は、昇降自在に設けられるのであれば、どのような駆動手段を用いても良い。
また、加熱装置16は、昇降自在に設けるのではなく、回転テーブル11上に固定又は内蔵させたその他の加熱手段としても良い。
【0023】
ツールチャック装置17は、回転テーブル11の加熱・一次冷却ステーションXに設けられている(
図1、2、5参照)。
ツールチャック装置17は、ツール14をツール台15から抜き出してホルダ台13に支持されたホルダ12に挿入するための、及びホルダ台13に支持されたホルダ12からツール14を抜き出してツール台15に挿入するためのものである。
【0024】
ツールチャック装置17は、主に、水平方向に設けられた一対のチャック21、21からなる。
ツールチャック装置17は、サーボ式の直動ガイド(例えば、株式会社アイエイアイの「ロボシリンダー」(登録商標))を用いることにより、昇降自在に設けられている。
【0025】
一対のチャック21、21のそれぞれは、ツール14を把持及び解除することができるように、シリンダ制御によって、水平方向に開閉自在に設けられている。
一対のチャック21、21は、電動式のロータリテーブルを用いることにより、水平方向に反転自在に設けられている。
【0026】
よって、加熱・一次冷却ステーションXに移動された、ホルダ台13に支持された加熱後のホルダ12に対して、ツールチャック装置17を昇降させることにより、ツール台15からツール14を一方のチャック21によって把持して抜き出し、一対のチャック21、21を反転させ、一方のチャック21によって把持したツール14をホルダ12のツール挿入孔Hに挿入することができる。
【0027】
さらに、加熱・一次冷却ステーションXに移動された、ホルダ台13に支持され、ツール14が挿入された(焼き嵌め後)加熱後のホルダ12に対して、ツールチャック装置17を昇降させることにより、ホルダ12からツール14を他方のチャック21によって把持して抜き出し、一対のチャック21、21を反転させ、他方のチャック21によって把持したツール14をツール台15に挿入して戻すことができる。
【0028】
なお、ツールチャック装置17は、昇降自在に設けられるのであれば、どのような駆動手段を用いても良い。
また、一対のチャック21、21は、水平方向に開閉自在、及び水平方向に反転自在に設けられるのであれば、どのような駆動手段を用いても良い。
なお、ツールチャック装置17は、チャックを備えたマニピュレータ(ロボットハンド、ロボットアーム、六軸垂直多関節型ロボットなど)としても良い。
【0029】
位置決め装置18は、回転テーブル11の加熱・一次冷却ステーションXの下側に設けられている(
図1、2、6参照)。
位置決め装置18は、ホルダ台13に支持された加熱直後のホルダ12にツール14を挿入した際に、ツール14の下端を上端で支持して、ツール14のホルダ12からの所定の突出量を確保するための位置決め棒22を、サーボ式の直動ガイド(例えば、株式会社アイエイアイの「ロボシリンダー」(登録商標))を用いることにより、昇降自在に設けたものである。
【0030】
位置決め棒22は円柱の棒であり、その直径は、ツール14の直径よりも小さく設けられている。
なお、位置決め棒22は、丸棒に限定されることなく、角柱の棒、平板状の棒、断面十字の棒など、ツール14の下端を支持することができる形状の棒であれば、どのようなものであっても良い。
【0031】
位置決め棒22は、予めデータ入力されて設定された、ツール14のホルダ12からの所定の突出量に基づき、ホルダ12の下部中央の開口部23内からツール挿入孔H内に向かって上昇し、ツール14のホルダ12からの所定の突出量を確保することができる高さで停止して、ツール14の下端を位置決め棒22の上端で支持し、そして、下降して、ツール14の下端の支持を解除することができる。
なお、位置決め装置18は、昇降自在に設けられるのであれば、どのような駆動手段を用いても良い。
【0032】
一次冷却装置19は、回転テーブル11の加熱・一次冷却ステーションXに設けられている(
図1~4参照)。
一次冷却装置19は、位置決め装置18の位置決め棒22によって、ツール14の下端が支持されて、ツール14のホルダ12からの所定の突出量が確保された加熱直後のホルダ12の上部を冷却し、ホルダ12のツール挿入孔Hを収縮させ始めるためのものである。
【0033】
一次冷却装置19による加熱直後のホルダ12の上部の冷却は、焼き嵌めを完了させるための本格的な冷却ではなく、位置決め棒22によるツール14の下端の支持が解除された際に、ツール14が落ちない程度に、ツール挿入孔Hを収縮させ始める程度のものである。
【0034】
一次冷却装置19は、主に、加熱装置16の加熱リングの下に設けられた一対のエアノズル24、24と、エアノズル24、24にエアを送り込むための公知の送風手段とからなる。
一次冷却装置19は、昇降自在に設けられた加熱装置16に同期して、昇降自在に設けられている。
【0035】
なお、一次冷却装置19は、回転テーブル11上に固定又は内蔵させたその他の冷却手段としても良い。
また、一次冷却装置19は、ツール14のホルダ12からの所定の突出量が確保された加熱直後のホルダ12の上部を一時的に冷却することができるものであれば、どのような冷却手段(例えば、送風ファン、冷媒を通したパイプ状の冷却リングなど)であっても良い。
【0036】
二次冷却装置20は、加熱・一次冷却ステーションXの隣の二次冷却ステーションYに設けられている(
図1、2、7参照)。
二次冷却装置20は、加熱と一次冷却を終えたホルダ12を、焼き嵌めを完了させるための本格的な冷却として、二次冷却するためのものである。
【0037】
二次冷却装置20は、主に、上下が開口された筒体25と、筒体25の上部とチューブを介して接続された、エアを送り込むための公知の送風手段と、からなる。
筒体25は、内側スリーブ26と外側スリーブ27とから二重に設けられ、内側スリーブ26内を内空間28とし、内側スリーブ26と外側スリーブ27との間を外空間29とし、内側スリーブ26に上方斜めに貫通して備えられたエアの吹出孔30が、周方向に複数設けられたものである。
【0038】
よって、二次冷却装置20は、接続された送風手段によって、筒体25の外空間29内にエアを送り込み、複数の吹出孔30から、内空間28内にエアを吹き付けることができる。
なお、複数の吹出孔30から内空間28内に吹き付けられたエアは、上方の開口部に流れ抜け出て行く。
二次冷却装置20の筒体25は、サーボ式の直動ガイド(例えば、株式会社アイエイアイの「ロボシリンダー」(登録商標))を用いることにより、昇降自在に設けられている。
【0039】
よって、加熱・一次冷却ステーションXを経た後、二次冷却ステーションYに移動された、ホルダ台13に支持された加熱と一次冷却を終えた、ツール14が挿入されたホルダ12に対して、二次冷却装置20の筒体25を昇降させることにより、ホルダ12の上部を筒体25で覆い、複数の吹出孔30から、内空間28内にエアを吹き付けることによって、ホルダ12の上部を二次冷却し、ホルダ12のツール挿入孔Hを収縮させ、焼き嵌めを完了させることができる。
【0040】
なお、二次冷却装置20は、上記の構造に限定されることなく、送風手段に接続された単なる筒体を昇降自在に設け、ホルダ12の上部を筒体で覆い、上方からエアを吹き付けることによって、ホルダ12の上部を二次冷却するものであっても良い。
【0041】
また、二次冷却装置20の筒体25は、昇降自在に設けられるのであれば、どのような駆動手段を用いても良い。
なお、二次冷却装置20は、回転テーブル11上に固定又は内蔵させたその他の冷却手段としても良い。
【0042】
また、二次冷却装置20は、ホルダ12のツール挿入孔Hを収縮させ、焼き嵌めを完了させることができるものであれば、どのような冷却手段(例えば、送風ファン、冷媒を通したパイプ状の冷却リングなど)であっても良い。
【0043】
また、本発明の自動焼き嵌め装置10には、上記の各装置のほかに、焼き嵌めするホルダ12の種類に間違いがないかをQRコード(登録商標)でもって識別するためのホルダ識別装置と、ツール14の長さを計測するための計測用シリンダ装置と、ツール台15に適切なツール14の種類(例えば、Φ4、Φ6のツール)が支持されているかをレーザセンサでもって識別するためのツール識別装置と、が設けられている(図示しない)。
また、加熱・一次冷却ステーションXと二次冷却ステーションYとを、必要な数だけ増設させた自動焼き嵌め装置10としても良い。
【0044】
本発明の自動焼き嵌め装置10の作用を説明する。
なお、本発明の自動焼き嵌め装置10は、入力されたデータに基づくプログラム制御によって自動運転されるものである。
【0045】
焼き嵌めの作用は、以下のとおりである(
図1~11参照)。
予め、人手によって、ツール14をツール台15に、ホルダ12をホルダ台13に、適合するツール14とホルダ12とが対向して一対となるように、必要な数を置く。
【0046】
自動焼き嵌め装置10を運転させると、回転テーブル11が一方向に回転し、一つ目のツール台15に支持されたツール14と、ホルダ台13に支持されたホルダ12とが、加熱・一次冷却ステーションXに運ばれ、停止する。
【0047】
続いて、上方で待機していた加熱装置16の加熱リングが、ホルダ12に向けて下降し、ホルダ12の上部が加熱リングによって通され、ホルダ12の上部が加熱される(
図8参照)。
同時に、上方で待機していたツールチャック装置17が、下降し、ツール台15からツール14を一方のチャック21によって把持して抜き出し、上昇し、一対のチャック21、21を反転させ、一方のチャック21によってツール14を把持しながら、ホルダ12の上方で待機する。
【0048】
同時に、位置決め装置18の位置決め棒22が、予めデータ入力されて設定された、ツール14のホルダ12からの所定の突出量に基づき、ホルダ12の下部中央の開口部23内からツール挿入孔H内に向かって上昇し、ツール14のホルダ12からの所定の突出量を確保することができる高さで停止する。
【0049】
加熱リングによってホルダ12の上部が加熱されると、ホルダ12のツール挿入孔Hが膨張する。
続いて、上方で待機していたツールチャック装置17が、ホルダ12に向けて下降し、一方のチャック21によって把持したツール14を、ホルダ12の膨張したツール挿入孔Hに、把持を解除して落として挿入し、再び上昇し、待機する(
図9参照)。
【0050】
このとき、ホルダ12のツール挿入孔Hに挿入されたツール14の下端が、待機していた位置決め棒22の上端によって支持されることにより、ツール14のホルダ12からの所定の突出量が確保される。
このため、ツール14のホルダ12からの所定の突出量を正確に確保することができる。
続いて、ホルダ12の上部の加熱を終えた加熱装置16が、予め設定された、一次冷却装置19の一対のエアノズル24、24がホルダ12の上部を間にすることができる位置となる高さまで上昇する(
図10参照)。
【0051】
加熱リングの上昇に同期して上昇した一次冷却装置19は、一対のエアノズル24、24が、ホルダ12の上部を間にする位置にて停止する。
続いて、一次冷却装置19は、一対のエアノズル24、24から、ホルダ12の上部に向けてエアを吹きつけ、ホルダ12の上部を一次冷却する。
一対のエアノズル24、24によってホルダ12の上部が一次冷却されると、ホルダ12のツール挿入孔Hが収縮し始める。
【0052】
続いて、ホルダ12の上部を一次冷却し終えた一次冷却装置19が、加熱装置16の加熱リングと共に上昇し、上方で待機する。
同時に、ホルダ12のツール挿入孔Hに挿入されたツール14の下端を支持していた位置決め棒22が、ツール14の下端の支持を解除し、下降し、待機する(
図11参照)。
【0053】
なお、位置決め棒22の直径は、ツール14の直径よりも小さく設けられているため、ホルダ12のツール挿入孔Hが収縮し始めても、ツール14の存在によって締め付けられることなく、下降することができる。
【0054】
このとき、例え、位置決め棒22によるツール14の下端の支持が解除されたとしても、一次冷却装置19の一次冷却によって、ホルダ12のツール挿入孔Hが収縮し始めているため、ツール14が落ちることはない。
【0055】
続いて、再び回転テーブル11が回転し、加熱と一次冷却を終えた、ツール14が挿入されたホルダ12が、加熱・一次冷却ステーションXから隣の二次冷却ステーションYに運ばれ、停止する。
なお、同時に、二つ目のツール台15に支持されたツール14と、ホルダ台13に支持されたホルダ12とが、加熱・一次冷却ステーションXに新たに運ばれ、停止し、上記の作用が繰り返される。
つまり、加熱・一次冷却ステーションXの作業と二次冷却ステーションYの作業とが同時進行で行われることとなる(
図2参照)。
【0056】
続いて、上方で待機していた二次冷却装置20の筒体25が、二次冷却ステーションYに運ばれた、ツール14が挿入されたホルダ12に向けて下降し、ホルダ12の上部を覆い、複数の吹出孔30から、内空間28内にエアを吹き付けることによって、ホルダ12の上部を二次冷却し、ホルダ12のツール挿入孔Hを収縮させ、焼き嵌めが完了する。
【0057】
続いて、ホルダ12の上部を覆っていた二次冷却装置20の筒体25が上昇し、上方で待機する。
続いて、再び回転テーブル11が回転し、焼き嵌めが完了した、ツール14が挿入されたホルダ12が隣に移動し、同時に、加熱と一次冷却を終えた、二つ目のツール14が挿入されたホルダ12が、加熱・一次冷却ステーションXから二次冷却ステーションYに運ばれ、停止し、上記の作用が繰り返される。
なお、ホルダ12へツール14を挿入する全ての数の焼き嵌め作業が終了すると、回転テーブル11の回転が停止し、全てのツール14が挿入されたホルダ12が、自動焼き嵌め装置10から取り出される。
【0058】
焼き抜きの作用は、以下のとおりである(
図1~7、12~14参照)。
予め、人手によって、対向するツール台15を空にして、ツール14が挿入されたホルダ12をホルダ台13に、必要な数を置く。
【0059】
自動焼き嵌め装置10を運転させると、回転テーブル11が一方向に回転し、一つ目の空のツール台15と、ホルダ台13に支持された、ツール14が挿入されたホルダ12とが、加熱・一次冷却ステーションXに運ばれ、停止する。
【0060】
続いて、上方で待機していた加熱装置16の加熱リングが、ツール14が挿入されたホルダ12に向けて下降し、ホルダ12の上部が加熱リングによって通され、ホルダ12の上部が加熱される(
図12参照)。
【0061】
同時に、位置決め装置18の位置決め棒22が、予めデータ入力された、ツール14のホルダ12からの所定の突出量に基づき、ホルダ12の下部中央の開口部23内からツール挿入孔H内に向かって上昇し、ツール14の下端の1mm手前の高さで、位置決め棒22の上端が停止する。
【0062】
なお、位置決め棒22の上端が、ツール14の下端の1mm手前の高さで停止するのは、万一、位置決め棒22が上昇した際に、ツール14の下端に位置決め棒22の上端が衝突することがないように、万全を期すためである。
【0063】
加熱リングによってホルダ12の上部が加熱されると、ツール14が挿入されたホルダ12のツール挿入孔Hが膨張し、ツール14が落ちて、ツール14の下端が、位置決め棒22の上端によって支持される。
【0064】
続いて、位置決め装置18の位置決め棒22が、予め設定された高さまで更に上昇して停止する(
図13参照)。
位置決め棒22が、更に上昇することによって、ツール14の下端が位置決め棒22の上端に支持されながら上昇し、ツール14が、ホルダ12からの所定の突出量よりも高く突き出る。
同時に、加熱リングが、予め設定された高さまで下がる。
その結果、加熱リングによってホルダ12の上部が通された状態のツール14であっても、ツール14の上部が加熱リングに隠れることなく、高く突き出た状態となる。
【0065】
続いて、上方で待機していたツールチャック装置17が、ツール14が挿入されたホルダ12に向けて下降し、一方のチャック21によってツール14を把持し、ホルダ12の膨張したツール挿入孔Hから抜き出し、再び上昇し、一対のチャック21、21を反転させ、再びツールチャック装置17が、空のツール台15に向けて下降し、一方のチャック21によって把持したツール14を、ツール台15の孔に挿入し、把持を解除して、再び上昇し、待機する。
【0066】
同時に、位置決め装置18の位置決め棒22が下降し、待機する(
図14参照)。
なお、ツール14の上部が加熱リングに隠れることなく、高く突き出た状態となっているため、加熱リングが邪魔になることなく、ツールチャック装置17は、支障なくツール14を把持し、ホルダ12の膨張したツール挿入孔Hからツール14を抜き出すことができる。
【0067】
続いて、ホルダ12の上部の加熱を終えた加熱装置16が上昇し、上方で待機する。
続いて、再び回転テーブル11が回転し、加熱を終え、ツール14が抜き出されたホルダ12が、加熱・一次冷却ステーションXから隣の二次冷却ステーションYに運ばれ、停止する。
【0068】
なお、同時に、二つ目の空のツール台15と、ホルダ台13に支持された、ツール14が挿入されたホルダ12とが、加熱・一次冷却ステーションXに新たに運ばれ、停止し、上記の作用が繰り返される。
つまり、加熱・一次冷却ステーションXの作業と二次冷却ステーションYの作業とが同時進行で行われることとなる(
図2参照)。
【0069】
続いて、上方で待機していた二次冷却装置20の筒体25が、二次冷却ステーションYに運ばれた、ツール14が抜き出されたホルダ12に向けて下降し、ホルダ12の上部を覆い、複数の吹出孔30から、内空間28内にエアを吹き付けることによって、ホルダ12の上部を冷却する。
なお、二次冷却装置20によってホルダ12の上部を冷却するのは、後の工程にて、人手によってホルダ12を取り出す際に、火傷しない程度にホルダ12を冷却させるためである。
【0070】
続いて、ホルダ12の上部を覆っていた二次冷却装置20の筒体25が上昇し、上方で待機する。
続いて、再び回転テーブル11が回転し、冷却が完了した、ツール14が抜き出されたホルダ12が隣に移動し、同時に、二つ目のツール14が挿入されたホルダ12が、加熱・一次冷却ステーションXから二次冷却ステーションYに運ばれ、停止し、上記の作用が繰り返される。
なお、ホルダ12からツール14を抜く全ての数の焼き抜き作業が終了すると、回転テーブル11の回転が停止し、全てのツール14とホルダ12とが、自動焼き嵌め装置10から取り出される。
【0071】
なお、本発明の自動焼き嵌め装置10は、入力されたデータに基づくプログラム制御によって、焼き嵌めと焼き抜きとを混在させて行うことができる。
その場合は、予め、人手によって、焼き嵌めを行うツール14をツール台15に、焼き嵌めを行うホルダ12をホルダ台13に、ツール14とホルダ12とが対向して一対となるように、必要な数を置く。
加えて、予め、人手によって、対向するツール台15を空にして、焼き抜きを行うツール14が挿入されたホルダ12をホルダ台13に一対となるように、必要な数を置く。
そして、回転テーブル11を回転させ、上記の作用を混在させて自動的に行う。
【符号の説明】
【0072】
10 自動焼き嵌め装置
11 回転テーブル
12 ホルダ
13 ホルダ台
14 ツール
15 ツール台
16 加熱装置
17 ツールチャック装置
18 位置決め装置
19 一次冷却装置
20 二次冷却装置
21 チャック
22 位置決め棒
23 開口部
24 エアノズル
25 筒体
26 内側スリーブ
27 外側スリーブ
28 内空間
29 外空間
30 吹出孔
H ツール挿入孔
X 加熱・一次冷却ステーション
Y 二次冷却ステーション