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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168795
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/02 20060101AFI20241128BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20241128BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20241128BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20241128BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20241128BHJP
   B60W 10/30 20060101ALI20241128BHJP
   B60W 20/15 20160101ALI20241128BHJP
   F02N 15/10 20060101ALI20241128BHJP
   F16H 63/46 20060101ALI20241128BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20241128BHJP
   F16H 59/36 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B60W10/02 900
B60K6/40 ZHV
B60K6/48
B60K6/52
B60W10/06 900
B60W10/30 900
B60W20/15
F02N15/10 A
F16H63/46
F16H61/02
F16H59/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085745
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】加地 史弥
(72)【発明者】
【氏名】戸井田 一宣
(72)【発明者】
【氏名】浅浦 慎也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 倫生
(72)【発明者】
【氏名】能川 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】鴛海 恭弘
(72)【発明者】
【氏名】難波 陽大
(72)【発明者】
【氏名】院田 恵太
(72)【発明者】
【氏名】迫間 充宏
(72)【発明者】
【氏名】高木 航
【テーマコード(参考)】
3D202
3J552
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB01
3D202BB37
3D202BB46
3D202CC24
3D202DD18
3D202DD38
3D202DD39
3D202EE00
3D202EE23
3D202FF02
3J552MA01
3J552MA06
3J552MA12
3J552NA01
3J552NB08
3J552PA21
3J552PA51
3J552RC01
3J552RC06
3J552UA01
3J552VA32W
3J552VA41W
3J552VC01W
(57)【要約】
【課題】エンジン始動時での駆動力の不足を抑制したハイブリッド車両を提供することを課題とする。
【解決手段】エンジンと、モータと、駆動輪と、前記エンジンから前記駆動輪までの間の動力伝達経路に設けられたトルクコンバータと、前記トルクコンバータにオイルを圧送するオイルポンプと、前記トルクコンバータと前記駆動輪との間の動力伝達を遮断可能な遮断機構と、前記遮断機構が前記動力伝達を遮断し前記エンジンが停止した前記モータによる走行中において、前記オイルポンプを駆動して前記トルクコンバータ内にオイルを供給する供給処理を開始する供給制御装置と、を備えたハイブリッド車両。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
モータと、
駆動輪と、
前記エンジンから前記駆動輪までの間の動力伝達経路に設けられたトルクコンバータと、
前記トルクコンバータにオイルを圧送するオイルポンプと、
前記トルクコンバータと前記駆動輪との間の動力伝達を遮断可能な遮断機構と、
前記遮断機構が前記動力伝達を遮断し前記エンジンが停止した前記モータによる走行中において、前記オイルポンプを駆動して前記トルクコンバータ内にオイルを供給する供給処理を開始する供給制御装置と、を備えたハイブリッド車両。
【請求項2】
前記供給制御装置は、前記トルクコンバータ内のオイルの量に相関する相関値に応じて前記供給処理を開始する、請求項1のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記相関値は、前記トルクコンバータの回転速度が所定速度以下となってからの経過時間であり、
前記所定速度は、前記エンジンのアイドル回転速度よりも低い、請求項2のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記供給制御装置は、前記経過時間が所定時間以上となった場合に前記供給処理を開始する、請求項3のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記トルクコンバータを回転させる駆動装置を備え、
前記供給制御装置は、前記供給処理において前記トルクコンバータの回転速度を前記所定速度よりも高くなるように、前記駆動装置を制御する、請求項4のハイブリッド車両。
【請求項6】
前記トルクコンバータは、前記エンジンと一体的に回転し、
前記駆動装置は、前記エンジンを回転させることにより、前記トルクコンバータを回転させる、請求項5のハイブリッド車両。
【請求項7】
前記オイルポンプは、前記トルクコンバータと一体的に回転する機械式オイルポンプである、請求項1乃至6の何れかのハイブリッド車両。
【請求項8】
前記モータは、前記遮断機構と前記駆動輪との間に設けられている、請求項1乃至6の何れかのハイブリッド車両。
【請求項9】
前記遮断機構は、変速機である、請求項1乃至6の何れかのハイブリッド車両。
【請求項10】
前記オイルポンプは、電動式オイルポンプである、請求項1乃至6の何れかのハイブリッド車両。
【請求項11】
前記モータは、前記エンジンにより駆動される前記駆動輪とは異なる駆動輪を駆動する、請求項1乃至6の何れかのハイブリッド車両。
【請求項12】
前記エンジンと前記トルクコンバータとの間の動力伝達を遮断可能なクラッチを備え、
前記供給制御装置は、前記クラッチが解放した状態で、前記駆動装置を駆動する、請求項5のハイブリッド車両。
【請求項13】
前記オイルポンプは、前記トルクコンバータと一体的に回転する機械式オイルポンプと、電動式オイルポンプとを含む、請求項1乃至6の何れかのハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
システム起動時にトルクコンバータを回転させてオイルポンプを駆動して、トルクコンバータ内にオイルを供給する技術がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0079350号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジン及びトルクコンバータが停止したモータによる走行中において、トルクコンバータ内のオイルの量が低下するおそれがある。これにより、エンジン始動時にトルクコンバータのトルク伝達効率が低下して、車両の駆動力が不足するおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、エンジン始動時での駆動力の不足を抑制したハイブリッド車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、エンジンと、モータと、駆動輪と、前記エンジンから前記駆動輪までの間の動力伝達経路に設けられたトルクコンバータと、前記トルクコンバータにオイルを圧送するオイルポンプと、前記トルクコンバータと前記駆動輪との間の動力伝達を遮断可能な遮断機構と、前記遮断機構が前記動力伝達を遮断し前記エンジンが停止した前記モータによる走行中において、前記オイルポンプを駆動して前記トルクコンバータ内にオイルを供給する供給処理を開始する供給制御装置と、を備えたハイブリッド車両によって達成できる。
【0007】
前記供給制御装置は、前記トルクコンバータ内のオイルの量に相関する相関値に応じて前記供給処理を開始してもよい。
【0008】
前記相関値は、前記トルクコンバータの回転速度が所定速度以下となってからの経過時間であり、前記所定速度は、前記エンジンのアイドル回転速度よりも低くてもよい。
【0009】
前記供給制御装置は、前記経過時間が所定時間以上となった場合に前記供給処理を開始してもよい。
【0010】
前記トルクコンバータを回転させる駆動装置を備え、
前記供給制御装置は、前記供給処理において前記トルクコンバータの回転速度を前記所定速度よりも高くなるように、前記駆動装置を制御してもよい。
【0011】
前記トルクコンバータは、前記エンジンと一体的に回転し、前記駆動装置は、前記エンジンを回転させることにより、前記トルクコンバータを回転させてもよい。
【0012】
前記オイルポンプは、前記トルクコンバータと一体的に回転する機械式オイルポンプであってもよい。
【0013】
前記モータは、前記遮断機構と前記駆動輪との間に設けられていてもよい。
【0014】
前記遮断機構は、変速機であってもよい。
【0015】
前記オイルポンプは、電動式オイルポンプであってもよい。
【0016】
前記モータは、前記エンジンにより駆動される前記駆動輪とは異なる駆動輪を駆動してもよい。
【0017】
前記エンジンと前記トルクコンバータとの間の動力伝達を遮断可能なクラッチを備え、前記供給制御装置は、前記クラッチが解放した状態で、前記駆動装置を駆動してもよい。
【0018】
前記オイルポンプは、前記トルクコンバータと一体的に回転する機械式オイルポンプと、電動式オイルポンプとを含んでもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エンジン始動時での駆動力の不足を抑制したハイブリッド車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ハイブリッド車両の概略構成図である。
図2】供給制御を例示したフローチャートである。
図3】供給制御を例示したタイミングチャートである。
図4】第1変形例であるハイブリッド車両の概略構成図である。
図5】第2変形例であるハイブリッド車両の概略構成図である。
図6】第3変形例であるハイブリッド車両の概略構成図である。
図7】第4変形例であるハイブリッド車両の概略構成図である。
図8】第5変形例であるハイブリッド車両の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[ハイブリッド車両の概略構成]
図1は、ハイブリッド車両1の概略構成図である。ハイブリッド車両1は、エンジン10、トルクコンバータ12、自動変速機14、モータ15、ディファレンシャルギヤ16、後輪17、及び前輪18を備える。エンジン10及びモータ15は走行動力源として機能する。エンジン10は、複数の気筒を有したガソリンエンジンであるが、ディーゼルエンジンであってもよい。エンジン10から後輪17への動力伝達経路上には、トルクコンバータ12、自動変速機14、モータ15、及びディファレンシャルギヤ16が順に設けられている。後輪17は駆動輪の一例であり、前輪18は従動輪である。尚、前輪18が駆動輪であり、後輪17が従動輪であってもよい。
【0022】
エンジン10には、スタータ11が設けられている。スタータ11は、バッテリ30から電力が供給されて駆動する。スタータ11は、エンジン10をモータリングする。スタータ11は、エンジン10のクランクシャフトを介してトルクコンバータ12に連結されている。即ち、エンジン10とトルクコンバータ12とは、一体的に回転する。従って、スタータ11は、トルクコンバータ12を駆動する駆動装置の一例である。尚、スタータ11は、エンジン10からの動力により発電する。スタータ11で発電された電力は、バッテリ30に充電される。
【0023】
モータ15は、バッテリ30から電力が供給されて駆動する。モータ15は、バッテリ30からの給電に応じて車両の駆動力を発生する。モータ15は、エンジン10や後輪17からの動力により発電する。モータ15で発電された電力は、バッテリ30に充電される。
【0024】
トルクコンバータ12は、トルク増幅機能を有した流体継ぎ手である。機械式オイルポンプ21は、回転することによりトルクコンバータ12及び自動変速機14にオイルを圧送する。機械式オイルポンプ21は、トルクコンバータ12と一体的に回転する。
【0025】
自動変速機14は、変速比を多段階に切替える有段式の変速機である。自動変速機14は、トルクコンバータ12に接続された入力軸と、モータ15に接続された出力軸とを連結又は解放する。入力軸と出力軸との解放は、自動変速機14の複数の係合要素を解放したニュートラル状態により実現できる。自動変速機14が入力軸と出力軸とを解放することにより、トルクコンバータ12とモータ15との間の動力伝達が遮断される。自動変速機14は、遮断機構の一例である。
【0026】
ハイブリッド車両1には、同ハイブリッド車両としてECU(Electronic Control Unit)50が設けられている。ECU50は、車両の走行制御に係る各種演算処理を行う演算処理回路と、制御用のプログラムやデータが記憶されたメモリと、を備える電子制御ユニットである。ECU50は供給制御装置の一例である。ECU50は、エンジン10、スタータ11、自動変速機14、モータ15の駆動を制御する。
【0027】
ECU50には、イグニッションスイッチ61及び回転速度センサ62が接続されている。イグニッションスイッチ61は、イグニッションのオンオフを検出する。回転速度センサ62は、スタータ11の回転速度を検出する。上述したように、スタータ11とトルクコンバータ12とは、一体的に回転する。従って、スタータ11の回転速度はトルクコンバータ12の回転速度と同じである。
【0028】
ECU50は、モータ走行モード及びハイブリッド走行モードの何れかでハイブリッド車両1を走行させる。モータ走行モードでは、自動変速機14がトルクコンバータ12とモータ15との間の動力伝達を遮断した状態で、モータ15によりハイブリッド車両1が走行する。ハイブリッド走行モードでは、自動変速機14が上記の動力伝達を確保した状態で、少なくともエンジン10によりハイブリッド車両1が走行する。例えばハイブリッド車両1に対する要求駆動力が閾値以上となると、モータ走行モードからハイブリッド走行モードへと切り替えられる。バッテリ30の充電量が閾値以下となると、モータ走行モードからハイブリッド走行モードへと切り替えられる。
【0029】
[供給制御]
図2は、供給制御を例示したフローチャートである。本供給制御はイグニッションがオンの場合に繰り返し実行される。最初にECU50は、回転速度センサ62に基づいてトルクコンバータ12の回転速度を取得する(ステップS1)。
【0030】
次にECU50は、トルクコンバータ12の回転速度が所定速度V以下であるか否かを判定する(ステップS2)。所定速度Vは、トルクコンバータ12内のオイルの量が低下し始める回転速度に設定されている。トルクコンバータ12の回転速度が所定速度Vよりも高い場合には、トルクコンバータ12内のオイルは遠心力の作用によりトルクコンバータ12内に保持される。トルクコンバータ12の回転速度が所定速度V以下の場合には、トルクコンバータ12内のオイルへの遠心力の作用が低下する。これによりトルクコンバータ12内のオイルは、トルクコンバータ12に接続されているオイル循環経路へと流出する。尚、所定速度Vは、エンジン10のアイドル回転速度よりも低い。アイドル回転速度は、エンジン10がアイドル運転状態での回転速度である。アイドル回転速度は、エンジン10が駆動中での最低回転速度に相当する。ステップS2でNoの場合には、詳しくは後述するがECU50は経過時間をリセットする(ステップS8)。
【0031】
ステップS2でYesの場合、ECU50はステップS2でYesと判定されてからの経過時間の計測中であるか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3でNoの場合には、ECU50はステップS2でYesと判定されてからの経過時間の計測を開始する(ステップS4)。この経過時間が長いほど、トルクコンバータ12内のオイルの量が低下する。従って経過時間は、トルクコンバータ12内のオイルの量に相関する相関値の一例である。また、経過時間の計測は、イグニッションがオフとなったソーク状態でも継続される。
【0032】
ステップS3でYesの場合、又はステップS4の実行後、ECU50は経過時間が所定時間T以上であるか否かを判定する(ステップS5)。所定時間Tは、ステップS2でYesと判定されてからオイルの量が所定量Aにまで低下する時間に設定されている。トルクコンバータ12内のオイルの量が所定量A以下にまで低下すると、トルクコンバータ12のトルク伝達効率が低下してエンジン10の始動時でのハイブリッド車両1の駆動力が不足する。
【0033】
ステップS5でNoの場合には、ECU50は再度ステップS1以降の処理を実行する。ステップS5でYesの場合には、ECU50はモータ走行モードでの走行中であるか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6でNoの場合には、ECU50は再度ステップS1以降の処理を実行する。
【0034】
ステップS6でYesの場合には、ECU50は供給処理を開始する(ステップS7)。具体的にはECU50は、スタータ11を制御してトルクコンバータ12を上述した所定速度Vよりも高い回転速度で回転させる。これにより、トルクコンバータ12内に残留していたオイルは、遠心力の作用によりトルクコンバータ12内に保持される。即ち、トルクコンバータ12からのオイルの流出が抑制される。また、トルクコンバータ12からのオイルの流出が抑制された状態で、機械式オイルポンプ21が駆動してトルクコンバータ12にオイルが圧送される。このようにしてモータ走行モードでの走行中にトルクコンバータ12内にオイルが供給される。尚、供給処理でのスタータ11の駆動時間は、トルクコンバータ12内のオイルが所望の量となる駆動時間に予め定められている。次にECU50は経過時間をリセットする(ステップS8)。
【0035】
図3は、供給制御を例示したタイミングチャートである。図3には、車両状態と、トルクコンバータ12の回転速度と、トルクコンバータ12内のオイルの量とが例示されている。ハイブリッド走行モードでは、トルクコンバータ12内のオイルの量は上限量に維持される(時刻t0)。イグニッションがオフにされて車両状態がソーク状態になると、トルクコンバータ12の回転速度が低下し始める(時刻t1)。トルクコンバータ12の回転速度が所定速度V以下になると、トルクコンバータ12内のオイルの量が低下し始め、上述した経過時間の計測が開始される(時刻t2)。イグニッションがオンされてモータ走行モードでの走行が開始されても、トルクコンバータ12の回転速度は所定速度V以下である。このため、経過時間の計測が継続される(時刻t3)。経過時間が所定時間T以上になると、スタータ11によりトルクコンバータ12が回転して機械式オイルポンプ21が駆動する。これにより、トルクコンバータ12内のオイルの量が増大し始める(時刻t4)。スタータ11の回転速度は一定に維持されるため、トルクコンバータ12の回転速度も一定に維持される(時刻t5)。その後にトルクコンバータ12内のオイルの量は、上限量にまで上昇する(時刻t6)。
【0036】
以上のようにして、モータ走行モードでの走行中にトルクコンバータ12内にオイルを供給することができる。これにより、エンジン10の始動時でのトルクコンバータ12のトルク伝達効率が確保される。従って、エンジン10の始動時でのハイブリッド車両1の駆動力の不足を解消することができる。
【0037】
図1に示したように、トルクコンバータ12と機械式オイルポンプ21とは一体的に回転する。このため、単一のスタータ11により、トルクコンバータ12を回転させ機械式オイルポンプ21を駆動することができる。これにより、トルクコンバータ12を回転させるモータと機械式オイルポンプ21を駆動するモータとを個別に設ける場合と比較して、本実施例では部品点数が削減されている。
【0038】
図1に示したように、トルクコンバータ12とモータ15との間の動力伝達を遮断する遮断機構は、自動変速機14である。このため、自動変速機14とは別にこのような遮断機構とを設ける場合と比較して、本実施例では部品点数が削減されている。尚、自動変速機14の代わりに、無段変速機とクラッチとを設けてもよい。クラッチは、トルクコンバータ12と無段変速機との間の動力伝達経路上に設けられる。この場合、クラッチが遮断機構に相当する。
【0039】
図1に示したように、モータ15は、自動変速機14と駆動輪である後輪17との間に設けられている。このためモータ走行モードでは、モータ15はトルクコンバータ12や機械式オイルポンプ21から切り離された状態で回転する。従って、モータ15の回転負荷が低減されている。このため、モータ走行モードでの走行距離を確保することができる。
【0040】
上記実施例では、所定速度Vはトルクコンバータ12内のオイルの量が低下し始める回転速度に設定されている。しかしながら、所定速度Vはこの回転速度に限定されない。上述したように、所定速度Vは、エンジン10のアイドル回転速度より低ければよい。エンジン10のアイドル回転速度よりも所定速度Vが低ければ、エンジン10が停止することを予測できるからである。従って、例えば所定速度Vは、オイルの量が低下し始める直前のトルクコンバータ12の回転速度であってもよい。所定速度Vは、オイルの量が低下し始めてからのトルクコンバータ12の回転速度であってもよい。
【0041】
上記実施例では、所定時間Tは、ステップS2でYesと判定されてからオイルの量が所定量Aにまで低下する時間に設定されている。しかしながら所定時間Tは、この時間に限定されない。例えば所定時間Tは、ステップS2でYesと判定されてからオイルの量が所定量Aにまで低下する直前の時間であってもよい。オイルの量が所定量Aにまで低下する直前に供給処理が実行されることにより、エンジン10の始動時でのハイブリッド車両1の駆動力の不足を解消することができるからである。
【0042】
[第1変形例]
図4は、第1変形例であるハイブリッド車両1aの概略構成図である。ハイブリッド車両1aでは、機械式オイルポンプ21の代わりに電動式オイルポンプ22が用いられる。電動式オイルポンプ22は、エンジン10の駆動によらずにバッテリ30からの電力供給に基づいて、ECU50からの指令により駆動する。
【0043】
供給処理では、ECU50は、スタータ11を制御してトルクコンバータ12を回転させて、且つ電動式オイルポンプ22を駆動する。従って、ECU50は、スタータ11の回転速度と電動式オイルポンプ22の回転速度とを独立して制御できる。例えばECU50は、供給処理でスタータ11の回転速度をできるだけ低く設定する。これにより、エンジン10の回転に起因した振動を抑制して供給処理が実行される。
【0044】
[第2変形例]
図5は、第2変形例であるハイブリッド車両1bの概略構成図である。ハイブリッド車両1bにはモータ15は設けられていない。後輪17は、エンジン10のみにより駆動する。またハイブリッド車両1bには、モータ25が設けられている。モータ25は前輪18を駆動する。ハイブリッド車両1やハイブリッド車両1aでは、モータ15は自動変速機14の出力軸に連結されている。ハイブリッド車両1bでは、モータ25は前輪18を直接駆動する。このため、モータ走行モードでのモータ25の回転負荷が低減される。前輪18は、後輪17とは別の駆動輪の一例である。
【0045】
尚、エンジン10が前輪18を駆動し、モータ25が後輪17を駆動してもよい。また、機械式オイルポンプ21に代えて、又は機械式オイルポンプ21に加えて、電動式オイルポンプ22を設けてもよい。
【0046】
[第3変形例]
図6は、第3変形例であるハイブリッド車両1cの概略構成図である。エンジン10とスタータ11との間の動力伝達経路上には、クラッチ13が設けられている。供給処理では、ECU50は、クラッチ13を解放してスタータ11を駆動する。従ってスタータ11は、エンジン10を回転させることなくトルクコンバータ12を回転させることができる。これにより、エンジン10の回転に伴う振動の増大が抑制される。また、スタータ11の消費電力も低減される。
【0047】
[第4変形例]
図7は、第4変形例であるハイブリッド車両1dの概略構成図である。ハイブリッド車両1dは、機械式オイルポンプ21と電動式オイルポンプ22とを備えている。供給処理では、ECU50は機械式オイルポンプ21及び電動式オイルポンプ22の双方を駆動する。これにより、より早期にトルクコンバータ12内にオイルが供給される。
【0048】
[第5変形例]
図8は、第5変形例であるハイブリッド車両1eの概略構成図である。ハイブリッド車両1eは、トルクコンバータ12内でのオイルの面の位置を検出する液面センサ63を備えている。液面センサ63は、ECU50に接続されている。ECU50は、液面センサ63の検出値がトルクコンバータ12内のオイルの量が所定量A以下であることを示した場合に、供給処理を開始する。液面センサ63の検出値は相関値の一例である。尚、第5変形例では、回転速度センサ62は設けられていなくてもよい。
【0049】
上記実施例及び変形例では、供給処理においてスタータ11を制御してトルクコンバータ12を所定速度Vよりも高い回転速度で回転させていたが、これに限定されない。即ち、供給処理においてスタータ11を駆動せずに機械式オイルポンプ21及び電動式オイルポンプ22の少なくとも一方により、トルクコンバータ12内にオイルを供給してもよい。
【0050】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1、1a、1b、1c、1d、1e ハイブリッド車両
10 エンジン
11 スタータ
12 トルクコンバータ
13 クラッチ
14 自動変速機
15、25 モータ
17 後輪
18 前輪
21 機械式オイルポンプ
22 電動式オイルポンプ
50 ECU(供給制御装置)
62 回転速度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8