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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168807
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】タンクシステム
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/02 20060101AFI20241128BHJP
   F17C 3/04 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F17C13/02 302
F17C3/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085765
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】株式会社IHIプラント
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】田附 英幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 英晃
(72)【発明者】
【氏名】山田 寿一郎
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB20
3E172BA06
3E172BB04
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD05
3E172CA32
3E172DA13
3E172DA23
3E172DA47
3E172JA05
3E172KA22
(57)【要約】
【課題】メンブレンを有する地上式貯蔵タンクへ大気中の水分が侵入することを長期間抑止可能とする。
【解決手段】地上式貯蔵タンク10は、コンクリート壁とメンブレン4との間に介装される樹脂製ライナと、保冷空間に充填配置される保冷パネルとを備え、保冷空間環境調整部20は、保冷空間Kに調湿ガスを供給する調湿ガス供給部21と、保冷空間Kの圧力が大気圧以上かつ低温液化ガスXの貯蔵空間の気層部Rの圧力を超えない規定値となるように少なくとも調湿ガス供給部21を制御する制御部26とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メンブレンとコンクリート壁との間に形成された保冷空間を有すると共に低温液化ガスを貯蔵する地上式貯蔵タンクと、
前記保冷空間の環境を調整する保冷空間環境調整部と
を備え、
前記地上式貯蔵タンクは、
前記コンクリート壁と前記メンブレンとの間に介装される樹脂製ライナと、
前記保冷空間に充填配置される断熱材と
を備え、
前記保冷空間環境調整部は、
前記保冷空間に調湿ガスを供給する調湿ガス供給部と、
前記保冷空間の圧力が大気圧以上かつ低温液化ガスの貯蔵空間の気層部の圧力を超えない規定値となるように少なくとも前記調湿ガス供給部を制御する制御部と
を備える
ことを特徴とするタンクシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記保冷空間の圧力と大気圧と前記貯蔵空間の気層部の圧力とに基づいて、少なくとも前記調湿ガス供給部を制御することを特徴とする請求項1記載のタンクシステム。
【請求項3】
前記保冷空間環境調整部は、前記保冷空間から前記調湿ガスを排出する調湿ガス排出部を備えることを特徴とする請求項1または2記載のタンクシステム。
【請求項4】
前記保冷空間環境調整部は、前記保冷空間の前記低温液化ガス成分を検出するガス検出部を備えることを特徴とする請求項1または2記載のタンクシステム。
【請求項5】
非常時に前記低温液化ガスの気化ガスを前記地上式貯蔵タンクから排出する安全弁システムと、
前記安全弁システムによって前記地上式貯蔵タンクから排出された前記気化ガスを除害する除害設備と
を備え、
前記保冷空間環境調整部は、前記ガス検出部にて前記低温液化ガス成分が検出された場合に、前記安全弁システムを介して前記保冷空間のガスを前記除害設備に供給する
ことを特徴とする請求項4記載のタンクシステム。
【請求項6】
前記調湿ガスは、窒素ガスであることを特徴とする請求項1または2記載のタンクシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、コンクリート壁とメンブレンとを備える低温タンクが開示されている。特許文献1に開示された低温タンクは、コンクリート壁とメンブレンとの間に充填される保冷パネルを備える。このような低温タンクは、メンブレンに囲まれた空間にLNG(Liquefied Natural Gas)等の低温液化ガスを貯留する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59-125698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、低温液化ガスを貯蔵する貯蔵タンクは、様々な種類がある。特許文献1に開示されたようなメンブレンを備える貯蔵タンクは、地下に埋設された状態で形成されるものが多い。このような地下式の低温タンクの周囲には、地盤を凍結することで生じる凍土が存在する。このような凍土によって、外部の水分がコンクリート壁を透過して低温タンクの内部に侵入することが防止される。しかしながら、近年、メンブレンを備える大型の貯蔵タンクを地上に形成することが提案されている。このようなメンブレンを備える地上式の貯蔵タンクにおいては、外部から大気中の水分が侵入することを防止するために、コンクリート壁とメンブレンとの間にライナを配置することが考えられる。ところが、貯蔵する低温液化ガスの種類によっては、樹脂製のライナが採用される場合がある。このような樹脂製ライナは、完全なガス密性を有するものではない。このため、長期間の使用により大気中の水分が僅かであってもコンクリート壁とメンブレンとの間に侵入する可能性がある。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、メンブレンを有する地上式貯蔵タンクへ大気中の水分が侵入することを長期間抑止可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
本発明の第1の態様は、タンクシステムであって、メンブレンとコンクリート壁との間に形成された保冷空間を有すると共に低温液化ガスを貯蔵する地上式貯蔵タンクと、上記保冷空間の環境を調整する保冷空間環境調整部とを備え、上記地上式貯蔵タンクが、上記コンクリート壁と上記メンブレンとの間に介装される樹脂製ライナと、上記保冷空間に充填配置される断熱材とを備え、上記保冷空間環境調整部が、上記保冷空間に調湿ガスを供給する調湿ガス供給部と、上記保冷空間の圧力が大気圧以上かつ上記低温液化ガスの貯蔵空間の気層部の圧力を超えない規定値となるように少なくとも上記調湿ガス供給部を制御する制御部とを備えるという構成を採用する。
【0008】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、上記制御部が、上記保冷空間の圧力と大気圧と上記貯蔵空間の気層部の圧力とに基づいて、少なくとも上記調湿ガス供給部を制御するという構成を採用する。
【0009】
本発明の第3の態様は、上記第1または第2の態様において、上記保冷空間環境調整部が、上記保冷空間から上記調湿ガスを排出する調湿ガス排出部を備えるという構成を採用する。
【0010】
本発明の第4の態様は、上記第1~第3のいずれかの態様において、上記保冷空間環境調整部が、上記保冷空間の上記低温液化ガス成分を検出するガス検出部を備えるという構成を採用する。
【0011】
本発明の第5の態様は、上記第1~第4のいずれかの態様において、非常時に上記低温液化ガスの気化ガスを上記地上式貯蔵タンクから排出する安全弁システムと、上記安全弁システムによって上記地上式貯蔵タンクから排出された上記気化ガスを除害する除害設備とを備え、上記保冷空間環境調整部が、上記ガス検出部にて上記低温液化ガス成分が検出された場合に、上記安全弁システムを介して上記保冷空間のガスを上記除害設備に供給するという構成を採用する。
【0012】
本発明の第6の態様は、上記第1~第5のいずれかの態様において、上記調湿ガスが、窒素ガスであるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保冷空間環境調整部によって、メンブレンとコンクリート壁との間の保冷空間の圧力が大気圧以上に保たれる。このため、本発明は、メンブレンを有する地上式貯蔵タンクへ大気中の水分が侵入することを長期間抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態のタンクシステムの概略構成を示す模式図である。
図2図1のA部分の模式的な拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係るタンクシステムの一実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態のタンクシステム100の概略構成を示す模式図である。本実施形態のタンクシステム100は、LNGや液化アンモニア等の低温液化ガスXを貯蔵するものであり、図1に示すように、地上式貯蔵タンク10と、保冷空間環境調整部20と、安全弁システム30と、除害設備40とを備える。
【0017】
地上式貯蔵タンク10は、低温液化ガスXを貯蔵するメンブレン式タンクである。例えば、地上式貯蔵タンク10は、10万t以上の低温液化ガスXを貯蔵可能な大型タンクである。ただし、地上式貯蔵タンク10の低温液化ガスXの貯蔵量は特に限定されるものではない。図2は、図1のA部分の模式的な拡大断面図である。図1及び図2に示すように、地上式貯蔵タンク10は、コンクリート基礎版1(コンクリート壁)と、コンクリート側壁2(コンクリート壁)と、屋根部3と、メンブレン4と、保冷パネル5(断熱材)と、樹脂製ライナ6と、液化ガス供給部7と、液化ガス排出部8とを備える。
【0018】
コンクリート基礎版1は、コンクリートによって形成された地上式貯蔵タンク10の底部である。このコンクリート基礎版1は、地面上に設けられており、コンクリート側壁2、屋根部3、メンブレン4、保冷パネル5、及び樹脂製ライナ6等を直接的にあるいは間接的に支持する。なお、コンクリート基礎版1は、地中に埋設された複数の基礎杭に支持されてもよい。このようなコンクリート基礎版1は、例えば鉄筋コンクリートによって形成されている。また、コンクリート基礎版1は、例えば平面視が円形状となるように形成されている。
【0019】
コンクリート側壁2は、コンクリート基礎版1上に立設されている。例えば、コンクリート側壁2は、平面視において円形となるような円筒状に形成されている。例えば、コンクリート側壁2は、プレストレストコンクリートによって形成されている。このようなコンクリート側壁2は、メンブレン4が万が一破損して内部の低温液化ガスXがメンブレン4の外側に漏出した場合には、防液堤として機能する。つまり、コンクリート側壁2は、低温液化ガスXがメンブレン4の外側に漏出した場合には、地上式貯蔵タンク10の外部に低温液化ガスXが流れ出ることを防止する。
【0020】
屋根部3は、地上式貯蔵タンク10の上部を形成しており、コンクリート側壁2の上端に接続されている。この屋根部3は、低温液化ガスXの貯蔵空間を上方から覆っており、低温液化ガスXが蒸発することを抑止する。屋根部3は、低温液化ガスXに対して耐性のある材料によって形成される。なお、本実施形態においては、屋根部3は、吊下げ支持されたデッキを備えていない。しかしながら、屋根部3は、デッキを備えてもよい。
【0021】
メンブレン4は、低温液化ガスXに対して直接的に接触する金属製の薄板部材であり、地上式貯蔵タンク10の内壁面を形成する。メンブレン4は、保冷パネル5を介してコンクリート側壁2あるいはコンクリート基礎版1に対して支持されている。メンブレン4は不図示のアンカーを用いてコンクリート側壁2あるいはコンクリート基礎版1に固定されている。メンブレン4は、コンクリート側壁2あるいはコンクリート基礎版1の内側面に沿って敷き詰められるように複数設けられており、隣接される他のメンブレン4に対して溶接されている。
【0022】
このようなメンブレン4は、数mm程度の厚さにて形成されている。また、各々のメンブレンには、熱変形に形状変化を抑制するためのコルゲーションが形成されている。例えば、低温液化ガスXがLNGである場合には、メンブレン4は例えばステンレス鋼によって形成される。また、低温液化ガスXが液化アンモニアである場合には、メンブレン4は炭素鋼やステンレス鋼によって形成される。
【0023】
図2に示すように、メンブレン4は、コンクリート側壁2(あるいはコンクリート基礎版)に対して一定の間隔で離間して配置されている。このようなメンブレン4とコンクリート側壁2との隙間は、保冷パネル5が充填されるものの、気体が流動可能な空間である。このようなメンブレン4とコンクリート側壁2(あるいはコンクリート基礎版)との隙間の空間は、貯蔵される低温液化ガスXの冷熱が地上式貯蔵タンク10の外部に放出されることを抑制する保冷空間Kとして機能する。つまり、本実施形態において地上式貯蔵タンク10は、メンブレン4とコンクリート側壁2(あるいはコンクリート基礎版)との間に形成された保冷空間Kを有する。
【0024】
保冷パネル5は、保冷空間Kに充填される断熱材である。保冷パネル5は、保冷空間Kを充填するように複数設けられている。各々の保冷パネル5は、例えばポリウレタンフォーム(PUF)等の発泡材によって形成されている。図2に示すように、保冷空間Kには、メンブレン4とコンクリート側壁2との配列方向に重なるようにして保冷パネル5が2層となるように設けられている。各々の層の厚さは、例えば数十mm程度である。
【0025】
樹脂製ライナ6は、ガス密性を有する薄膜であり、低温液化ガスXの気化ガスが保冷空間Kを通過することを防止する。また、樹脂製ライナ6は、外部の大気に含まれる水分が保冷空間Kを通過することを防止する。本実施形態において樹脂製ライナ6は、コンクリート基礎版1の上面と保冷パネル5との間、コンクリート側壁2の内壁面(メンブレン4側の面)と保冷パネル5との間に設けられている。つまり、本実施形態において樹脂製ライナ6は、コンクリート壁(コンクリート基礎版1及びコンクリート側壁2)とメンブレン4との間に介装されている。
【0026】
液化ガス供給部7は、地上式貯蔵タンク10に対して低温液化ガスXを供給するための設備である。液化ガス供給部7は、例えば外部から供給される低温液化ガスXを案内する供給配管を有している。この供給配管は、例えば屋根部3を上方から下方に向けて貫通するように設けられている。
【0027】
液化ガス排出部8は、地上式貯蔵タンク10に貯蔵された低温液化ガスXを外部に排出するための設備である。液化ガス排出部8は、例えば、低温液化ガスXの貯蔵空間の底部近くまで上方から延びる排出配管と、低温液化ガスXを汲み上げる液中ポンプとを備えている。
【0028】
保冷空間環境調整部20は、保冷空間Kの環境を調整するための設備である。具体的には、保冷空間環境調整部20は、保冷空間Kの圧力を大気圧以上に調整する。また、保冷空間環境調整部20は、保冷空間Kの湿度を調整し、保冷空間Kを乾燥した環境に保持する。本実施形態において、このような保冷空間環境調整部20は、図1に示すように、調湿ガス供給部21と、調湿ガス排出部22と、圧力検出部23と、ガス検出部24と、漏出ガス排出部25と、制御部26とを備える。
【0029】
調湿ガス供給部21は、保冷空間Kに対して調湿ガスYを供給する設備である。調湿ガス供給部21は、例えば、地上式貯蔵タンク10の外部から保冷空間Kに接続された調湿ガス供給配管21aと、調湿ガス供給配管21aの途中部位に設けられた制御弁21bとを備える。このような調湿ガス供給部21は、例えば、大気圧よりも高圧の調湿ガスYを生成する供給源と接続されており、制御弁21bを開放することで調湿ガスYを保冷空間Kに供給する。なお、調湿ガス供給部21が供給源を備える場合には、制御弁21bを省略することも可能である。
【0030】
なお、調湿ガスとしては、保冷空間Kが乾燥した状態となるように湿度が調整された窒素ガスを用いることができる。窒素ガスを調湿ガスとして用いることによって、安価に保冷空間Kの環境を調整することが可能となる。ただし、調湿ガスとして、他の気体を用いることも可能である。
【0031】
調湿ガス排出部22は、保冷空間Kから調湿ガスYを排出する設備である。調湿ガス排出部22は、例えば、保冷空間Kから地上式貯蔵タンク10の外部(大気中)に引き出された調湿ガス排出配管22aと、調湿ガス排出配管22aの途中部位に設けられた制御弁22bとを備える。このような調湿ガス排出部22は、例えば、制御弁22bを開放することで調湿ガスYを保冷空間Kから排出する。
【0032】
なお、例えば保冷空間Kに対して、調湿ガスYを徐々に外部に排出する流路が設けられている場合には、調湿ガス排出部22を設けないことも可能である。ただし、調湿ガス排出部22を設けることで、保冷空間Kの調湿ガスYを強制的に保冷空間Kの外部に排出することができる。
【0033】
圧力検出部23は、保冷空間Kと大気との圧力差を検出するセンサである。また、圧力検出部23は、保冷空間Kと貯蔵空間の気層部Rとの圧力差を検出する。例えば、圧力検出部23は、保冷空間Kの圧力と大気圧と貯蔵空間の気層部Rの圧力との各々を検出し、これらの検出結果に基づいて上記圧力差を求めることができる。また、圧力検出部23は、上記圧力差を直接検出してもよい。圧力検出部23は、制御部26と電気的に接続されており、上記圧力差を制御部26に向けて出力する。なお、ここでの貯蔵空間とは、低温液化ガスXを貯蔵可能な空間であり、地上式貯蔵タンク10の内部空間である。さらに、気層部Rとは、貯蔵空間のうち、低温液化ガスXの気化ガスが存在する部分であり、低温液化ガスXの液面よりも上方の空間を示す。
【0034】
ガス検出部24は、保冷空間Kに含まれる低温液化ガス成分(低温液化ガスXあるいは気化ガス)を検出する。ガス検出部24は、制御部26と電気的に接続されており、検出結果(低温液化ガス成分の有無を示す信号)を制御部26に向けて出力する。なお、ガス検出部24は、保冷空間Kに直接的に接続されていてもよいし、調湿ガス排出部22の調湿ガス排出配管22aに接続されていてもよい。
【0035】
漏出ガス排出部25は、保冷空間Kに低温液化ガスXが万が一漏出した場合に、保冷空間Kのガスを排出するための設備である。例えば漏出ガス排出部25は、保冷空間Kに接続された漏出ガス排出配管25aと、漏出ガス排出配管25aの途中部位に設けられた開閉弁25bとを備える。このような漏出ガス排出部25は、開閉弁25bを開放することで、保冷空間Kのガスを排出する。
【0036】
本実施形態においては、漏出ガス排出部25の漏出ガス排出配管25aは、安全弁システム30と接続されている。また、安全弁システム30は、除害設備40に接続されている。つまり、漏出ガス排出部25を備える保冷空間環境調整部20は、保冷空間Kのガスを、安全弁システム30を介して除害設備40に供給する。
【0037】
制御部26は、上述の圧力差(保冷空間Kと大気との圧力差、及び、保冷空間Kと貯蔵空間の気層部Rとの圧力差)に基づき、保冷空間Kの圧力が大気圧以上かつ低温液化ガスXの貯蔵空間の気層部Rの圧力を超えない規定値となるように少なくとも調湿ガス供給部21を制御する。このように、本実施形態では、制御部26は、保冷空間Kの圧力と大気圧と貯蔵空間の気層部Rの圧力とに基づいて、調湿ガス供給部21を制御する。
【0038】
また、本実施形態において制御部26は、保冷空間Kの圧力が大気圧以上かつ低温液化ガスXの貯蔵空間の気層部Rの圧力を超えない規定値となるように調湿ガス排出部22を制御する。制御部26は、圧力検出部23の検出結果に基づいて、調湿ガス排出部22を制御する。
【0039】
具体的には、制御部26は、圧力検出部23の検出結果が示す圧力値が、一定の範囲を有する規定値を下回った場合に、調湿ガス供給部21の制御弁21bを開放し、保冷空間Kに調湿ガスYを供給することで保冷空間Kを昇圧する。また、制御部26は、圧力検出部23の検出結果が示す圧力値が、一定の範囲を有する規定値を上回った場合に、調湿ガス排出部22の制御弁22bを開放し、保冷空間Kから調湿ガスYを排出することで保冷空間Kを降圧する。
【0040】
また、制御部26は、ガス検出部24にて低温液化ガス成分が検出された場合に、安全弁システム30を介して保冷空間Kのガスを除害設備40に供給する。具体的には、制御部26は、ガス検出部24にて低温液化ガス成分が検出された場合に、漏出ガス排出部25の開閉弁25bを開放することで保冷空間Kのガスを安全弁システム30に対して供給する。
【0041】
また、メンブレン4の背面の圧力(保冷空間Kの圧力)と、地上式貯蔵タンク10の内圧とを差圧を検出し、制御部26は、差圧が一定の範囲を超えないように調湿ガス供給部21及び調湿ガス排出部22を制御してもよい。
【0042】
安全弁システム30は、地上式貯蔵タンク10の内圧が予め定められた圧力を超えた場合に、地上式貯蔵タンク10の内部に溜まった気化ガスを地上式貯蔵タンク10の外部に排出する設備である。例えば、安全弁システム30は、地上式貯蔵タンク10の屋根部3と接続された排ガス配管31と、排ガス配管31の途中部位に設けられた安全弁32とを備える。
【0043】
除害設備40は、安全弁システム30と接続されており、安全弁システム30から供給される気化ガスに対して、無害化処理を施す設備である。除害設備40によって無害化された気化ガスは、例えば大気開放される。例えば、除害設備40は、漏出ガス排出部25から安全弁システム30を介してガスが供給された場合には、このガスに含まれる気化ガスを無害化する。
【0044】
このような本実施形態のタンクシステム100では、制御部26によって保冷空間Kの圧力が長期にわたって常に大気圧以上(好ましくは大気圧より高い圧力)となるように制御される。このように保冷空間Kが高い圧力に保持されることで、保冷空間Kに外部から気体が侵入することを防止できる。例えば、地上式貯蔵タンク10の内部の気化ガスが保冷空間Kに侵入することが防止される。また、コンクリート側壁2を通過した大気中の水分が保冷空間Kに侵入することが防止される。
【0045】
また、このような本実施形態のタンクシステム100では、メンブレン5から低温液化ガスXが万が一漏出した場合には、制御部26の制御の下、漏出ガス排出配管25aの開閉弁25bを開放する。この結果、メンブレン5から漏出した低温液化ガスXの気化ガスは、漏出ガス排出部25を介して除害設備40に供給される。除害設備40に供給された気化ガスは、除害されて後に大気等に放出される。
【0046】
また、メンブレン5から低温液化ガスXが万が一漏出した場合には、調湿ガス供給部21から保冷空間Kへの調湿ガスYの供給量を増加し、保冷空間Kにおける低温液化ガスX成分の濃度を低下させるようにしてもよい。例えば、制御部26は、低温液化ガスX成分の濃度が、保冷パネル5に悪影響が生じない程度となるように、保冷空間Kにおける低温液化ガスX成分の濃度を低下させる。
【0047】
このようにメンブレン5から低温液化ガスXが万が一漏出し、保冷空間Kにおける低温液化ガスX成分の濃度を低下させる場合には、制御部26は、ガス検出部24の検出結果に基づいて、保冷空間Kへの調湿ガスYの供給量を調整する。さらに、制御部26は、漏出ガス排出配管の開閉弁25bの開度を調整することで、保冷空間Kの圧力が定められた範囲に保たれるように排出するガスの流量を調整するようにしてもよい。
【0048】
以上のような本実施形態のタンクシステム100は、地上式貯蔵タンク10と、保冷空間環境調整部20とを備える。地上式貯蔵タンク10は、メンブレン4とコンクリート壁(コンクリート基礎版1またはコンクリート側壁2)との間に形成された保冷空間Kを有すると共に低温液化ガスXを貯蔵する。保冷空間環境調整部20は、保冷空間Kの環境を調整する保冷空間環境調整部20を備える。
【0049】
さらに、地上式貯蔵タンク10は、樹脂製ライナ6と、保冷パネル5とを備える。また、樹脂製ライナ6は、コンクリート壁(コンクリート基礎版1またはコンクリート側壁2)とメンブレン4との間に介装される。また、保冷パネル5は、保冷空間Kに充填配置される。また、保冷空間環境調整部20は、調湿ガス供給部21と、制御部26とを備える。調湿ガス供給部21は、保冷空間Kに調湿ガスYを供給する。制御部26は、保冷空間Kの圧力が大気圧以上かつ低温液化ガスXの貯蔵空間の気層部Rの圧力を超えない規定値となるように少なくとも調湿ガス供給部21を制御する。
【0050】
本実施形態のタンクシステム100によれば、保冷空間環境調整部20によって、メンブレン4とコンクリート壁(コンクリート基礎版1またはコンクリート側壁2)との間の保冷空間Kの圧力が大気圧以上に保たれる。このため、本実施形態のタンクシステム100は、メンブレン4を有する地上式貯蔵タンク10へ大気中の水分が侵入することを長期間抑止することができる。
【0051】
また、本実施形態のタンクシステム100は、保冷空間Kの圧力を検出する圧力検出部23を備える。また、制御部26は、圧力検出部23の検出結果に基づいて、少なくとも調湿ガス供給部21を制御する。このような本実施形態のタンクシステム100によれば、実際の保冷空間Kの圧力に基づいて、調湿ガス供給部21を制御することができる。このため、より確実に保冷空間Kの圧力を大気圧以上の規定値に保持することができる。
【0052】
また、本実施形態のタンクシステム100において保冷空間環境調整部20は、保冷空間Kから調湿ガスYを排出する調湿ガス排出部22を備える。このような本実施形態のタンクシステム100によれば、調湿ガス排出部22を用いて保冷空間Kの調湿ガスYを強制的に排出することができる。したがって、本実施形態のタンクシステム100によれば、保冷空間Kを降圧することも可能となる。
【0053】
また、本実施形態のタンクシステム100において保冷空間環境調整部20は、保冷空間Kの低温液化ガスX成分を検出するガス検出部24を備える。このような本実施形態のタンクシステム100によれば、保冷空間Kに低温液化ガスXに漏出したことを検知することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態のタンクシステム100は、安全弁システム30と、除害設備40とを備える。安全弁システム30は、非常時に低温液化ガスXの気化ガスを地上式貯蔵タンク10から排出する。除害設備40は、安全弁システム30によって地上式貯蔵タンク10から排出された気化ガスを除害する。また、保冷空間環境調整部20は、ガス検出部24にて低温液化ガスX成分が検出された場合に、安全弁システム30を介して保冷空間Kのガスを除害設備40に供給する。
【0055】
このような本実施形態のタンクシステム100によれば、保冷空間Kに漏出した低温液化ガスXを無害化する設備を別に設けなくても、保冷空間Kに漏出した低温液化ガスXを無害化することが可能となる。
【0056】
また、本実施形態のタンクシステム100において調湿ガスYは、窒素ガスを用いることができる。窒素ガスを調湿ガスとして用いることによって、安価に保冷空間Kの環境を調整することが可能となる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態においては、樹脂製ライナ6をコンクリート基礎版1の上面と保冷パネル5との間、コンクリート側壁2の内壁面(メンブレン4側の面)と保冷パネル5との間に設ける構成について説明した。
【0059】
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、樹脂製ライナ6をコンクリート基礎版1の上面と保冷パネル5との間、及び、コンクリート側壁2の内壁面(メンブレン4側の面)と保冷パネル5との間に設け、樹脂製ライナ6をメンブレン4の背面(コンクリート基礎版1またはコンクリート側壁2側の面)と保冷パネル5との間に設けない構成を採用することも可能である。
【0060】
また、例えば、樹脂製ライナ6をコンクリート基礎版1の上面と保冷パネル5との間、及び、コンクリート側壁2の内壁面(メンブレン4側の面)と保冷パネル5との間に設けず、樹脂製ライナ6をメンブレン4の背面(コンクリート基礎版1またはコンクリート側壁2側の面)と保冷パネル5との間に設ける構成を採用することも可能である。さらに、保冷パネル5と保冷パネル5との間に樹脂製ライナ6を設けることも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1……コンクリート基礎版(コンクリート壁)、2……コンクリート側壁(コンクリート壁)、3……屋根部、4……メンブレン、5……保冷パネル(断熱材)、6……樹脂製ライナ、7……液化ガス供給部、8……液化ガス排出部、10……地上式貯蔵タンク、20……保冷空間環境調整部、21……調湿ガス供給部、22……調湿ガス排出部、23……圧力検出部、24……ガス検出部、25……漏出ガス排出部、26……制御部、30……安全弁システム、40……除害設備、100……タンクシステム、K……保冷空間、X……低温液化ガス、Y……調湿ガス
図1
図2