(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168808
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】撮影システム、偏光素子、及び偏光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20241128BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G01N21/88 H
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085766
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】細谷 成紀
(72)【発明者】
【氏名】山根 宏大
【テーマコード(参考)】
2G051
2H149
【Fターム(参考)】
2G051AB01
2G051BA11
2G051BB01
2G051CA04
2G051CB01
2G051CC07
2H149AA00
2H149BA01
2H149EA10
(57)【要約】
【課題】対象物からのハレーションを効率的に低減する。
【解決手段】撮影システム(10)は、対象物(OB)を撮像する撮影システムであって、前記対象物を撮像する撮像装置(15)と、前記対象物と前記撮像装置の間に配置される偏光素子(13)と、を備え、前記偏光素子は、偏光透過軸の方位が互いに異なる複数の領域(A1~A8)を有し、前記複数の領域の偏光透過軸(TS)は、基準点または、基準領域を中心とする径方向、または周方向に沿って配列される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を撮像する撮影システムであって、
前記対象物を撮像する撮像装置と、前記対象物と前記撮像装置の間に配置される偏光素子と、を備え、
前記偏光素子は、偏光透過軸の方位が互いに異なる複数の領域を有し、
前記複数の領域の偏光透過軸は、基準点または、基準領域を中心とする径方向、または周方向に沿って配列される、撮影システム。
【請求項2】
前記対象物に光ビームを照射する光源を備え、
前記光源から前記対象物に照射される前記光ビームは、偏光方位が互いに異なる複数の領域を有し、
前記光ビームの複数の領域の偏光方位は、前記光ビームの光軸に沿う基準軸線またはこの基準軸線を囲む基準領域を中心とする前記光ビームの径方向、または周方向に沿って配列される、請求項1に記載の撮影システム。
【請求項3】
前記対象物に光ビームを照射する光源を備え、
前記光源から前記対象物に照射される前記光ビームは、所定の偏光方位の1以上の領域を有する、請求項1に記載の撮影システム。
【請求項4】
前記偏光素子の前記複数の領域の偏光透過軸の方位は、それぞれ、前記光ビームの前記複数の領域の偏光方位と互いに直交する、請求項2に記載の撮影システム。
【請求項5】
前記対象物に光ビームを照射する光源と、
前記光源と前記対象物との間に配置される第2の偏光素子と、を備え、
前記偏光素子は、偏光透過軸の方位が互いに異なる複数の第2の領域を有し、
前記複数の第2の領域の偏光透過軸は、第2の基準点または第2の基準領域を中心とする第2の径方向、または第2の周方向に沿って配列される、請求項1に記載の撮影システム。
【請求項6】
前記対象物は、前記対象物から前記撮像装置に向かう方向に対して、傾斜する外周面を有し、
前記外周面から反射される光の偏光方位の分布は、前記複数の領域の偏光透過軸の配列に対応する、請求項1~5の何れか1項に記載の撮影システム。
【請求項7】
前記外周面から反射される光の偏光方位は、前記対象物の外周に沿う方向に配列され、前記偏光素子の前記複数の領域の偏光透過軸の方位は、前記径方向に沿って配列される、請求項6に記載の撮影システム。
【請求項8】
前記撮像装置と、
前記偏光素子と前記撮像装置との間に配置されるレンズと、
を備える、請求項1~5の何れか1項に記載の撮影システム。
【請求項9】
対象物を撮像する撮影システムに用いられる偏光素子であって、
偏光透過軸の方位が互いに異なる複数の領域を有し、
前記複数の領域の偏光透過軸は、基準点または、基準領域を中心とする径方向、または周方向に沿って配列される、偏光素子。
【請求項10】
対象物から反射される光の偏光方位の分布を取得する第1の工程と、
前記取得された偏光方位の分布と対応するように、偏光素子の偏光透過軸の方位の分布を設定する第2の工程と、
を含む、偏光素子の製造方法。
【請求項11】
前記対象物から反射される光によって形成される画像上において、光の強度及び偏光度が所定以上の領域を抽出する第3の工程を含み、
前記第1の工程は、前記抽出された領域における光の偏光方位の分布を取得する工程を有し、
前記第2の工程は、前記抽出された領域における光の偏光方位の分布と対応するように、前記偏光素子の偏光透過軸の方位の分布を設定する工程を有する、請求項10に記載の偏光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影システム、偏光素子、及び偏光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外観自動検査に代表されるマシンビジョンの開発が進められている。マシンビジョンは、半導体、食品、薬品検査等の分野で利用され、AIの発達、自動化、無人化の進展によって、今後も利用される分野が拡大してゆくと考えられる。マシンビジョンでは、光が照射される対象物をカメラなどの撮影装置で撮影し、撮影された対象物の画像を機械が処理、判定する。この結果、機械による対象物の位置決め、識別、計測、検査などが可能となる。
【0003】
ここで、対象物からの反射光に起因して、撮影された画像が、白くぼやけて表示される箇所(所謂、ハレーション、グレア、てかり、または、白飛び、以下、纏めて、ハレーションという)を含むことがある。ハレーションは、特に光沢のある対象物で発生しやすく、対象物への照明の映り込みも含まれる。画像中のハレーションの領域では、光が飽和傾向にあり、白くぼやけている。すなわち、この領域内は、明暗の差が乏しい。このため、ハレーションの領域内から情報を得ること、さらに画像全体を処理することが困難となる。
【0004】
ハレーションを除去するために、照明装置と対象物との間、及び対象物と撮像装置との間に、互いに直交する一対の偏光板を配置することが考えられる。第1の偏光板によって、照明装置からの光を偏光光に変換して、対象物に照射する。対象物からの反射光は第2の偏光板を通って、撮像装置に導かれる。この反射光には鏡面反射成分と拡散反射成分を含む。鏡面反射成分は、照射光の偏光が通常維持されるため、第2の偏光板によって、鏡面反射成分が遮断され、拡散反射成分のみを通過させることで、ハレーションを低減した画像を得ることができる。
【0005】
しかしながら、例えば、物品が立体形状を有する場合、直交する一対の偏光板を用いても、ハレーションを低減することは容易ではなかった。
【0006】
特許文献1は、ハレーションを除去する画像処理装置の技術を開示する。この画像処理装置は、P種類の偏光透過軸を有する偏光板とPチャンネルの発光素子を配置した分割光源を用いて、P個以上の異なる方向に偏光した光によって撮像されたP種類以上の偏光画像を取得する。その結果、P種類の偏光に対応する光によって撮像されたP種の画像の画素ごとの最小値を算出するハレーション除去直交ニコル画像のいずれかを得る(請求項1参照)。しかし、この技術では、分割光源を順次に点灯して得られた複数の画像を画素単位で処理しており、煩雑な処理が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様は、対象物からのハレーションを効率的に低減する撮影システム、偏光素子、及び偏光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る撮影システムは、対象物を撮像する撮影システムであって、前記対象物を撮像する撮像装置と、前記対象物と前記撮像装置の間に配置される偏光素子と、を備え、前記偏光素子は、偏光透過軸の方位が互いに異なる複数の領域を有し、前記複数の領域の偏光透過軸は、基準点または、基準領域を中心とする径方向、または周方向に沿って配列される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、対象物からのハレーションを効率的に低減する撮影システム、偏光素子、及び偏光素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る撮影システムを表す模式図である。
【
図2】偏光素子をZ軸正方向から見た状態を表す模式図である。
【
図3】偏光素子をZ軸正方向から見た状態の一例を表す模式図である。
【
図4】偏光素子をZ軸正方向から見た状態の他の例を表す模式図である。
【
図5】光源から出射され、偏光素子を通過した光が対象物によって反射されて撮像装置に入射する状態を表す模式図である。
【
図6】
図1、
図5において、撮像装置15の代わりに偏光カメラを設置した場合において、偏光カメラの撮像面上に形成される対象物の画像の一例を示す写真である。
【
図7】偏光カメラの撮像面上に形成される対象物の画像の一例を示す模式図である。
【
図8】比較例1、2、実施例に係る対象物の画像を表す図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る撮影システムを表す模式図である。
【
図11】偏光素子をX軸正方向から見た状態を表す模式図である。
【
図12】対象物が、光源から出射され、偏光素子を通過した光ビームによって照射される照射領域を表す模式図である。
【
図13】偏光素子をZ軸正方向から見た状態を表す模式図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態に係る撮影システムを表す模式図である。
【
図15】第3の実施形態に係る偏光素子をZ軸正方向から見た状態を表す模式図である。
【
図16】本発明の第4の実施形態に係る撮影システムを表す模式図である。
【
図17】本発明の第4の実施形態に係るレーザー発光素子と、ビームホモジナイズ素子との対応関係を表す模式図である。
【
図18】複数のレーザー発光素子及びビームホモジナイズ素子を円弧形状に配置した状態を表す模式図である。
【
図19】本発明の第5の実施形態に係る撮影システムを表す模式図である。
【
図20】対象物上のラッピング・フィルムのしわの状態を表す模式図である。フロー図である。
【
図21】本発明の第6の実施形態に係る偏光素子の製造方法S1の処理の流れを表すフロー図である。
【
図22】製造方法において処理される画像を表す図である。
【
図23】製造方法において処理される画像を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る撮影システム10を表す模式図である。
【0013】
撮影システム10は、対象物OBを撮像する撮影システムであって、光源11、偏光素子12、偏光素子13、レンズ14、撮像装置15を有し、設置板B上に載置される対象物OBを撮像する。ここでは、対象物OBを載置する設置板Bが平面を有するとして、この平面に平行な方向にX、Y軸を、平面に垂直な方向にZ軸を設定する。撮像装置15と対象物OBとは、Z軸方向の中心線C上に対向して配置される。
【0014】
対象物OBは、撮影システム10の処理対象であり、設置板B上に載置されて、撮像装置15の直下、Z軸負方向に配置される。対象物OBは、例えば、光沢を有する立体形状、一例として、球形状を有する。ここでは、対象物OBが、立体形状を有するものを例として説明を進めるが、立体形状を有しない対象物OBであっても、撮影システム10に有効に適用できる。
【0015】
撮像装置15は、対象物OBの画像を形成する装置である。撮像装置15は、その内部にイメージセンサを有し、イメージセンサの撮像面上に形成された対象物OBの画像のデータを出力する。この対象物OBの画像のデータは、対象物OBの検査等に用いられる。
【0016】
光源11から出射された光(光ビーム)Lは、偏光素子12を通過して、対象物OBに照射される。対象物OBに照射された光Lは、対象物OBによって鏡面反射または拡散反射されて、偏光素子13、レンズ14を通過し、撮像装置15に入射する。この結果、撮像装置15の撮像面上に対象物OBの画像が形成される。この画像のデータは、撮像装置15から出力され、外観検査(例えば、対象物OBの外観汚れの確認)、外形寸法の計測に用いられる。
【0017】
光源11は、対象物OBに向かって光L、すなわち、光ビームを照射する。ここでは、光源11として、リング形状の発光領域を有する、リング光源を用いている。例えば、複数のLEDを円周上に配列させることで、リング光源を形成できる。なお、光源11の形状及び個数は適宜に選択することができる。すなわち、光源11は、対象物OBへの光の照射に適切な範囲で、適宜に変更することができる。
【0018】
光源11から出射される光Lの軸(光軸)は、中心線Cに対して傾いている。撮像装置15から見た対象物OBの明るさを均一化するためである。球体などの立体形状を有する対象物OBに真上から光Lを照射した場合、対象物OBの中央部は明るく、外周部は暗くなる傾向がある。すなわち、中央部は中心線Cに略垂直な面を有する一方、外周部は中心線Cに傾斜する面を有する。この傾きの相違によって、対象物OBの中央部と外周部とで、明るさが異なってくる。このため、光源11から出射する光Lの軸を中心線Cに対して傾けることで、対象物OBの明るさの均一化を図っている。なお、他の手法によって、対象物OBの明るさの均一化を図ってもよい。
【0019】
偏光素子12、13は、入射した光L中の所定の偏光を通過させる素子であり、この詳細は後述する。なお、対象物OBから反射された光は、偏光素子12の内周122内を通過して、撮像装置15に至る。
【0020】
レンズ14は、撮像装置15の撮像面上に対象物OBの画像を形成する光学素子である。レンズ14には、画角の小さいレンズ(例えば、焦点距離が50mmのレンズ)、またはテレセントリック・レンズを用いることが好ましい。これらのレンズは、偏光素子13に略垂直に入射した光Lを撮像装置15の撮像面上に結像させることを容易とする。光Lを偏光素子13垂直に入射させることで、偏光素子13の機能が発揮され、ハレーションの効率的な除去が容易となる。一般に、偏光素子に光が斜めに入射すると、偏光の遮断特性、例えば、消光比は低下する。
【0021】
レンズ14は、ある程度大きな絞り値の絞りを有することが好ましい。レンズ14から出射される光を絞ることで、ハレーションの効率的な除去が容易となる。後述のように、偏光素子13は、偏光透過軸TSの方位が互いに異なる複数の領域に区分される。このため、偏光素子13を通ってレンズ14に入射する光束は、偏光方位が異なる複数の光束成分を有する。レンズ14の絞り値が小さいと、レンズ14から出射する光束が太くなり、これらの光束成分が、撮像装置15の撮像面上に重なって結像され、偏光が混ざり合い易くなる。この結果、ハレーションの除去が不十分となり得る。この点から、例えば、レンズ14の絞り値をf8以上とすることが好ましい。
【0022】
以下、偏光方位が異なる光束成分の混合を低減する手法として、絞り以外の手法につき説明する。まず、対象物OBと偏光素子13の間(偏光素子13の前)に、対象物OBからの光Lを平行光化(コリメート化)するレンズ(コリメートレンズ)を追加することが考えられる。このコリメートレンズによって、対象物OBからの光Lを平行光に変換して偏光素子13を通過させ、その後、レンズ14によって、撮像装置15の撮像面上に対象物OBの画像を形成する。このようにすることによって、撮像装置15の撮像面上で、偏光方位が異なる複数の光束成分が混じり合うことを低減できる。ここでは、偏光素子13の前のみにレンズを追加したが、偏光素子13の前及び後(撮像装置15の前)それぞれにレンズを追加してもよい。
【0023】
レンズ14の絞り値を大きくすると、撮像装置15に入射する光量は少なくなり、撮像装置15の撮像面上の画像が暗くなる。これに対して、対象物OBからの光Lを平行光化(コリメート化)することによって、画像を暗くせずに、偏光方位が異なる光束成分の混合を低減することができる。
【0024】
また、他の手法として、レンズ14に、テレセントリック・レンズを用いることが挙げられる。テレセントリック・レンズでは、レンズの光軸に平行な光がレンズを通して撮像装置15に入射するため、偏光方位が異なる光束成分の混合が低減される。また、テレセントリック・レンズは、被写界深度が深いため、立体物のような高さ方向に差がある対象物OBであっても、フォーカスの位置を移動させずに、良好な解像度を得ることができる。
【0025】
偏光素子13をレンズ14の前(対象物OBとレンズ14の間)ではなく、撮像装置15の前(レンズ14と撮像装置15の間)に配置することによって、偏光方位が異なる光束成分の混合を低減してもよい。この場合、偏光素子13を撮像装置15に近づけることによって、偏光方位が異なる光束成分の混合をより低減できる。例えば、レンズ14の鏡筒部の像面側端(レンズ14の後側)に偏光素子13を配置する。
【0026】
(偏光素子12)
図2は、偏光素子12をZ軸正方向(撮像装置15側)から見た状態を表す模式図である。リング形状の光源11に対応して、偏光素子12は、リング形状をなし、外周121、内周122を有する。偏光素子12は、光源11と対象物OBとの間に配置される第2の偏光素子として機能する。偏光素子12は、光源11からの光Lを直線偏光に変換する素子であり、X軸に沿う偏光透過軸TSを有し、偏光透過軸TSに沿う偏光方位の光を通過させる。偏光素子13と異なり、偏光素子12は、偏光透過軸TSの方位が異なる複数の領域を有しない。
【0027】
(偏光素子13)
図3は、偏光素子13をZ軸正方向(撮像装置15側)から見た状態の一例を表す模式図である。
図4は、偏光素子13をZ軸正方向(撮像装置15側)から見た状態の他の例を表す模式図である。偏光素子13は、対象物OBと撮像装置15との間に配置される偏光素子として機能する。
図3に示すように、偏光素子13は、中央部の領域A0、外周部の領域A1~A8に区分される。偏光素子13は、偏光透過軸TSの方位が互いに異なる複数の領域A1~A8を有する。なお、
図4に示すように、外周側の領域を領域A1~A4に区分してもよい。すなわち、区分の数は適宜に定めることができる。なお、この詳細は後述する。
【0028】
領域A0は、Y軸に沿う(すなわち、偏光素子12の偏光透過軸TSに直交する)偏光透過軸TSを有し、この偏光透過軸TSに沿う偏光方位の光を通過させる。領域A1~A8は、領域A0を中心として区分(分割)されている。そして、複数の領域A1~A8の偏光透過軸TSは、領域A0(基準領域)を中心とする径方向に沿って配列される。ここで、領域A0が円形であるため、この偏光透過軸TSの配列の基準を、「領域A0(基準領域)」から「領域A0の中心(基準点)」に置き換えてもよい。このように考えると、「複数の領域A1~A8の偏光透過軸TSは、『領域A0の中心(基準点)または領域A0(基準領域)』を中心とする径方向に沿って配列される」ということができる。
【0029】
以下、このような偏光透過軸TSの配列をラジアル方向の配列と表現することがある。なお、複数の領域A1~A8の偏光透過軸TSは、後述の第5の実施形態及び
図9に示すように、基準点または、基準領域を中心とする「周方向」に沿って配列されてもよい。以下、このような偏光透過軸TSの配列をアジマス方向の配列と表現することがある。
【0030】
ここでは、基準領域(領域A0)は、円形であり、基準点(領域A0の中心)と実質的に一致している。これに対して、基準領域の形状を、対象物OBの形状等に対応して適宜に変更してもよい。本実施形態では、対象物OBは球形であり、撮像装置15から見て円形の外周を有する。後述のように、本実施形態の対象物OBの外周付近からの反射光は、球形状の中心点を中心とする周方向に沿う(すなわち、円周に沿う)偏光方位TPを有する(後述の
図7参照)。円周に沿う偏光方位TPに対応して、偏光素子13の偏光透過軸TSの方位を径方向に配列することによって、円周に沿う偏光方位TPの反射光Le、すなわち、ハレーションを解消できる。このように、光透過軸TSの基準領域の形状は、撮像装置15から見た対象物OBの形状(円形)に対応させることが好ましい。例えば、対象物0Bが回転楕円体であれば、偏光透過軸TSの基準領域は、円形よりも、楕円形であることがより好ましいことになる。但し、立体形状の外周は、中心を囲むように配置されるので、基準点、または円形の基準領域を基準とすることは、汎用性があり、一般的な形状の対象物0Bに対して有効となる。さらに、領域A0は、正八角形などの正多角形としてもよい。
【0031】
ここで、偏光素子13は、撮像装置15の撮像面に対して略平行であることが好ましい。また、対象物OB、偏光素子13、及び撮像装置15の中心は、直線上に配置されることが好ましい。ハレーションの効率的な除去が容易となる。
【0032】
(ハレーションの除去)
以下、撮影システム10において、対象物OBの画像上のハレーションを低減できる理由を説明する。
図5は、光源11から出射され、偏光素子12を通過した光Lc0、Le0が対象物OBによって反射されて、偏光素子13を通って、撮像装置15に入射する状態を表す模式図である。ここでは、見易さのために、レンズ14を除外した状態を表している。
【0033】
光Lc0は、対象物0Bの中央付近で反射され、この反射光Lcが偏光素子13を通って、撮像装置15に入射する。光Le0は、設置板B、さらに対象物0Bの外周付近で反射され、この反射光Leが偏光素子13を通って、撮像装置15に入射する。
【0034】
図6は、
図1、
図5において、撮像装置15の代わりに、後述の偏光カメラを設置した場合において、偏光カメラの撮像面上に形成される対象物OBの画像の一例を示す写真である。
図7は、偏光カメラの撮像面上に形成される対象物OBの画像の一例を模式的に表す模式図である。
【0035】
偏光カメラは偏光情報を可視化し、画像化するものであり、例えば、
図6に示される光強度I、偏光度ρ、及び、偏光方位φの画像を出力する。光強度Iは、偏光カメラに入射される光量である。光強度Iの画像において、光強度Iが大きいほど白く表示される。偏光度ρは、DOP(Degree of Polarization)と呼ばれ、偏光度合いを示す0~1の値である。偏光度ρが1に近いほど直線偏光に近く、0に近いほど無偏光に近くなる。偏光度ρの画像において、偏光度ρが1に近いほど白く表示される。偏光方位φは、対象物OBを表す画像の各位置での偏光の方位を示すー90~90度までの値である。偏光方位φの画像において、偏光方位φが90度ないし-90度に近いほど白く、0度に近いほど黒く表示される。
【0036】
図6の光強度Iの画像及び
図7の模式図に示されるように、対象物OBの画像は、中央付近及び外周付近それぞれに、反射光Lc、Leが出射する比較的明るい領域Rc、Re(すなわち、中央付近の中央ハレーションHLc、周辺付近の周辺ハレーションHLe)が形成され得る。ここで、周辺ハレーションHLeは、対象物OB(ここでは、電球)上の縁近傍で光強度が実質的に飽和している領域のみならず、その周辺で、比較的明るい。このため、例えば、電球の先端部を検査領域とした際に、この検査領域内での明暗差が均一では無いので、異物を検出しようとして、検査領域内の画像を2値化した際に、異物の検出不足や過検出が起こり易くなる。
【0037】
中央ハレーションHLcは、偏光度ρの画像から判るように、偏光度が高く(直線偏光に近く)、偏光方位φの画像から判るように、偏光の方位は0度に近い。周辺ハレーションHLeは、偏光度ρの画像から判るように、偏光度が高く(直線偏光に近く)、偏光方位φの画像から判るように、偏光の方位は、場所によって異なり、円周状に分布している。このため、対象物OBの前後に、互いに直交する一対の偏光素子を配置した場合、中央ハレーションHLcは解消できても、周辺ハレーションHLeは部分的にしか解消できない。
【0038】
ここで、中央付近からの反射光Lcは、反射角が比較的小さい(正反射に近い)のに対して、外周付近からの反射光Leは、反射角θo(=入射角θi)が比較的大きく、例えば、55°以上となる。対象物0Bの中央付近の面は、Z軸方向(対象物0Bから撮像装置15に向かう方向)に対して、略垂直である一方、対象物0Bの外周付近の面(対象物OBから撮像装置15に向かう方向に対して、傾斜する外周面)は、Z軸方向に対して、平行に近いためである。
【0039】
このように、反射角θoが大きい場合、偏光の反射強度の角依存性のため、入射時(反射前)には偏光性を有しなかった光が、出射時(反射後)に偏光を帯びることになる。
一般に、反射光Leは、p偏光よりもs偏光が優位となり、ランダム偏光(自然光)にs偏光が混じった光となる。入射時の光が偏光性を有する場合、反射光Leは入射前とは異なる偏光方位を有することになる。このため、対象物OBの前後に、互いに直交する一対の偏光素子を配置しても、反射光Leを解消することは困難となる。
【0040】
ここで、反射光Leの偏光方位TPは、
図6に示すように、対象物OBの円形の外周に沿って配列される。これは、偏光透過軸TSの配列と同様、アジマス方向の配列と表現することができる。
【0041】
以下、偏光素子13によって反射光Lc、Le、結局は、中央ハレーションHLc、周辺ハレーションHLeが解消させることを説明するが、その前に、反射光Lc、Le以外の光(すなわち、拡散反射光)につき説明する。
【0042】
一般に対象物0Bの面は、完全に平滑な面ではなく、ある程度の凹凸があるのが通例である。面が平滑であったとしても塗装等の表面処理がなされているのが通例である。このため、対象OBに入射した光の一部は鏡面反射され、一部は拡散反射される。このように、対象物OBが光を拡散反射する場合、入射光が偏光を帯びていても、拡散反射された光は偏光が解消され、自然光(ランダム偏光)に近くなる。このため、対象物OBによって拡散反射された部分の光は、偏光素子13を通過して、撮像装置15において対象物OBの像を形成することができる。
【0043】
以下、偏光素子13による中央ハレーションHLc、及び、周辺ハレーションHLeの低減を説明する。中央付近からの反射光Lcのうちの鏡面反射成分は、入射される光Lc0の偏光状態をほぼそのまま維持するため(
図6、
図7の領域Rc)、偏光素子13の領域A0によって減光され、反射光Lcに起因する中央ハレーションHLcは低減される。偏光素子12の偏光透過軸TSと偏光素子13の領域A0の偏光透過軸TSとは、光軸を基準として直交する、いわゆるクロスニコルの状態にある。
【0044】
一方、外周付近からの反射光Le(特に、鏡面反射成分)の偏光方位TPは、
図6、
図7に示すように対象物OBの円形の外周に沿って配列される。反射光Leは偏光素子13に入射するが、反射光Leの偏光方位TPの周に沿う配列は、領域A1~A8の偏光透過軸TSの径方向に沿う配列と、いわば広義のクロスニコルの関係にある。この結果、反射光Leに起因する周辺ハレーションHLeも低減される。
【0045】
以上のように、対象物OBの背景(例えば、設置板B)で反射された光が、対象物OBの外周面で、さらに反射され、ハレーションの原因となり得る。この反射光Leは、対象物OBの外周(周方向)に沿って、偏光方位TPが分布する偏光光を含む。このため、撮像装置15の前に、径方向に沿って偏光透過軸TSの方位が分布する偏光素子を配置することで、反射光Leによる外周付近のハレーションを低減できる。
【0046】
以上では、背景と対象物OB間での反射によって発生するハレーションを低減している。これに対して、対象物OB自体での反射がハレーションの原因となることもある。例えば、対象物OBが段差状の立体形状を有する場合、その段差の面間(例えば、段差の側面と下面間)での反射によって、ハレーションが生じ得る。本実施形態では、このようなハレーションをも低減できる。
【0047】
また、撮影システム10では、測定時において、照明の順次点灯や、撮像装置の照明との時間同期等の複雑な処理を必要とせず、ハレーションを速やかに除去できる。
【0048】
以上のように第1の実施形態に係る撮影システム10では、偏光素子13の領域A1~A8によって、周辺付近からの反射光Leによる周辺ハレーションHLeを低減できる。また、クロスニコルの偏光素子12と偏光素子13の領域A0との組み合わせによって、中央付近からの反射光Lcによる中央ハレーションHLcを低減できる。
【0049】
(実施例)
以下、実施例を説明する。ここでは、比較例1、2、及び実施例での対象物OBの像を比較して説明する。実施例では、
図2、
図4に示す偏光素子12、13を用いた場合の像を示す。比較例1は、偏光素子12、13を用いなかった場合、比較例2は、偏光素子12、13を領域が区分されず、透過軸方位TSが一定の偏光素子12’、13’(いわゆる直線偏光子)に入れ替えた場合である。偏光素子12’、13’の透過軸方位TSは、それぞれ、X軸、Y軸に平行とし、偏光素子12’、13’は、クロスニコルとした。
【0050】
図8は、比較例1、2、実施例に係る対象物OBの画像SA1~SA3を表す図である。画像SA1に示すように、比較例1では、対象物OBでの光源の映り込みに起因する中央ハレーションHLcと、対象物OBの周辺付近の周辺ハレーションHLeが見られる。
【0051】
画像SA2に示すように、比較例2では、中央ハレーションHLcは、消光されている。これは、偏光素子12’、13’がクロスニコルであるためと考えられる。しかし、周辺ハレーションHLeの一部は、消光されていない。すなわち、
図8の上下方向での周辺ハレーションHLeは消光されているが、右側の周辺ハレーションHLeは消光されていない。これは、左右方向の周辺ハレーションHLeが、偏光素子13’の透過軸方位TSと近い偏光方位の偏光成分を有しているためと考えられる。なお、画像SA2の中央付近に見られるやや明るい領域DLは、拡散反射によるものであり、ハレーションの要因とはならない。この点は、画像SA3でも同様である。
【0052】
画像SA3に示すように、実施例では、中央ハレーションHLc、及び、周辺ハレーションHLeの双方が消光されている。中央ハレーションHLcは、偏光素子12と偏光素子13の領域A0がクロスニコルであることで、消光される。周辺ハレーションHLeは、周辺ハレーションHLeが対象物OBの外周(ここでは、円周)に沿った偏光方位の偏光成分を有し、この偏光成分がラジアル方向の偏光透過軸TSの配列を有する偏光素子13によって消光される。
【0053】
以上のように、比較例1、2では、ハレーションの全部または一部が残っている。このため、この画像を画像処理で2値化し、異物を検出する際や、外周の輪郭を抽出して、寸法を計測する場合に誤検出が生じる恐れがある。一方、実施例では、ハレーションが無く、全体として適切な明暗を有する画像が得られている。このため、この画像を画像処理で2値化し、異物を検出する際や、外周の輪郭を抽出して寸法を計測する場合に誤検出の恐れが低減される。
【0054】
(変形例)
撮影システム10は、偏光素子12を有しなくてもよい。すなわち、対象物OBを自然光で照明してもよい。偏光素子13を有すれば、偏光素子12を有しなくても、周辺ハレーションHLeを除去可能である。
【0055】
この場合、中央ハレーションHLcは残存するが、例えば、外寸計測のように、対象物OBの外周付近の画像を利用する場合には、この中央ハレーションHLcは大きな問題とはならない。また、中央ハレーションHLcは、画像処理など、他の手段を用いて、除去してもよい。
【0056】
偏光素子12を用いない場合、偏光素子12と偏光素子13の中央部の領域A0との間のクロスニコルの調整が不要となる。すなわち、クロスニコル調整のばらつきによる検査結果のばらつきを回避できる。
【0057】
図9は、変形例に係る偏光素子13である偏光素子13a、13b、13cを表す模式図である。偏光素子13aに示すように、偏光素子13は、中央の領域A0を有せず、中心から領域A1~A8に区分されていてもよい。
【0058】
偏光素子13bに示すように、偏光素子13は、同一形状の領域に区分されていなくともよい。すなわち、領域は、均等ではなく、不均等に区分されてもよい。ここでは、領域A30は、領域A1、A2、A7、A8を合わせた大きさを有する。また、偏光素子13cに示すように、偏光素子13は、領域A0の偏光透過軸がX軸に沿っていてもよい。
【0059】
以上のように、複数の領域(例えば、A1~A8)の偏光透過軸が、基準点または、基準領域を中心とする径方向に沿って配列されれば、領域の区分の数、大きさ、及び形状は適宜に変更できる。ここで、区分の数は、ある程度多い方が、対象物OBから反射される偏光方位の分布に対応し、ハレーションのより確実な除去が容易となる。一方、区分の数が多いと、偏光素子13の作製が煩雑となる。このため、得たい画像の精度に合わせて、区分の数、大きさ、及び形状を適宜に決めることができる。
【0060】
以下、区分の数に関して、より詳細に説明する。偏光素子13が均等に区分された領域を有する場合、ハレーション除去の誤差(除去しきれないハレーションの量I’)は、以下の式によって表される。
I‘∝cos2(2π/n)
n:区分の数
【0061】
この式からも判るように、区分の数nが多い方が、対象物OBから反射される偏光方位の分布に対応し、ハレーションのより確実な除去が容易となる。しかし、区分の数nが大きくなるにつれて、ハレーション低減の効果は、飽和する傾向となる。すなわち、4分割から8分割にしたときより、8分割から16分割にしたときの方が、ハレーションの低減量は小さい。このため、得たい画像の精度に合わせて、区分の数、大きさ等を適宜に決めることが望ましい。
【0062】
ここで、周辺ハレーションHLeの偏光方位は、対象物OBの外周付近での傾斜方向に依存する。第1の実施形態で例示した対象物OBは、外周付近での傾斜方向が等方的であったため、径方向に均一なアジマス配列の偏光素子13を用いて、周辺ハレーションHLeを効果的に除去できる。しかし、対象物OBが、外周付近での傾斜方向が等方的でないこともあり得る。この場合でも、径方向に均一なアジマス配列の偏光素子13を用いて、一定のハレーション低減効果を得ることができる。さらに、例えば、
図9に示す偏光素子13bのように、対象物OBが、外周付近での傾斜方向に合わせて、不均一な区分とすることで、さらなるハレーションの低減を図ることができる。
【0063】
撮影システム10は、撮像装置15を有せず、光源11、偏光素子13、及び、レンズ14が一体となった形態でもよい。この場合、ユーザーが撮像装置15を適宜に選択できる。
【0064】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について、詳細に説明する。
図10は、本発明の第2の実施形態に係る撮影システム10aを表す模式図である。
【0065】
第2の実施形態に係る撮影システム10aは、第1の実施形態に係る撮影システム10の光源11、偏光素子12に替えて、光源16、偏光素子17、ハーフミラー18を有する。この撮影システム10aは、いわゆる同軸落射照明であり、対象物OBに、撮像装置15と同軸の光Lを照射する。すなわち、光源16からの光はハーフミラー18で反射されて、対象物OBに照射され、対象物OBからの反射光は、ハーフミラー18、偏光素子13、レンズ14を通過して、撮像装置15において対象物OBの像を形成する。
【0066】
光源16は、コリメート性の高い光を照射することが好ましい。偏光素子17の複数の領域を通過する光ビーム同士が混ざり合い、ランダム偏光化することを防止するためである。
【0067】
偏光素子17は、光源16の前(光源16とハーフミラー18の間)に配置される。偏光素子17は、光源16と対象物OBとの間に配置される第2の偏光素子として機能する。
図11は、偏光素子17をX軸正方向から見た状態を表す模式図である。
図11に示すように、偏光素子17(第2の偏光素子)は、偏光透過軸TSの方位が互いに異なる複数の領域A1~A16(第2の領域)を有する。複数の領域A1~A16(第2の領域)の偏光透過軸TSの方位は、第2の基準点(光源16からの光ビームの光軸)または第2の基準領域を中心とする第2の径方向に沿って配列される。この結果、光源16から出射され、偏光素子17を通過し、対象物OBに照射される光ビームは、偏光方位が互いに異なる複数の領域を有する。光ビームの複数の領域の偏光方位は、光ビームの光軸に沿う基準軸線またはこの基準軸線を囲む基準領域を中心とする光ビームの径方向に沿って配列される(偏光方位のアジマス配列)。なお、後述の第4の実施形態に示されるように、偏光素子17を用いなくても、偏光方位のアジマス配列は可能である。
【0068】
後述の第5の実施形態に示されるように、偏光素子17(第2の偏光素子)において、複数の領域A1~A16(第2の領域)の偏光透過軸TSは、第2の基準点(光源16からの光ビームの光軸)または第2の基準領域を中心とする「第2の周方向」に沿って配列されてもよい。この場合、光源16から出射され、偏光素子17を通過し、対象物OBに照射される光ビームは、偏光方位が互いに異なる複数の領域を有する。光ビームの複数の領域の偏光方位は、光ビームの光軸に沿う基準軸線またはこの基準軸線を囲む基準領域を中心とする光ビームの周方向に沿って配列される(偏光方位のアジマス配列)。以下、このように偏光方位がアジマスに配列される偏光をアジマス偏光と称することがある。なお、後述の第4の実施形態に示されるように、偏光素子17を用いなくても、アジマス偏光は可能である。
【0069】
図12は、対象物0Bが光源16から出射され、偏光素子17を通過した光ビームによって照射される照射領域RLを表す模式図である。ここでは、偏光素子17は、
図11の16の領域A1~A6に替えて、16個の領域A1~A16を有する。
図12に示されるように、照射領域RL内において、光源16から対象物OBに照射される光ビームは、対象物OB上において、領域A1~A16と対応し、偏光方位φが異なる照射領域B1~B16を形成する。
【0070】
図12は、照射領域B1~B16が区分された状態を表している。照射領域B1~B16は、その境界付近において重なり合うこともあり得る。すなわち、偏光素子17を通過した、互いに隣接する光ビームの一部が重なり合うことがある。この重なった領域においては、偏光方位が異なる光ビームが混ざり合い、後述の偏光素子17、13の広義のクロスニコルの状態は満たされなくなる。後述のように、第4の実施形態では、このような偏光方位が異なる光ビームの重なり合いを低減することができる。
【0071】
図13は、偏光素子13をZ軸正方向から見た状態を表す模式図である。
図10に示すように、偏光素子13は、偏光透過軸TSの方位が異なる領域A1~A16を有する。領域A1~A16の偏光透過軸TSは、基準点または基準領域を中心とする径方向に沿って配列される。すなわち、偏光素子17、13は、双方の領域A1~A16同士の偏光透過軸TSが直交する広義のクロスニコルの状態にある。
【0072】
このとき、偏光素子17、13の中心が、光軸に対して合っていれば、中心に対する回転は大きな問題とはならない。例えば、第1の実施形態では、偏光素子12、13は、偏光素子12の偏光透過軸TSと偏光素子13の領域A0での偏光透過軸TSが直交するように偏光素子12、13間の角度を合わせる必要がある。これに対して、本実施形態では、偏光素子17、13間の角度を合わせる必要性が大きくない。この結果、撮影システム10aの使用時における角度調節が不要となり、迅速な処理が可能となる。
なお、偏光素子17、13の領域の数を増加することで、偏光素子17、13間での角度差に起因する問題をより低減できる。
【0073】
以上のように第2の実施形態に係る撮影システム10aでは、偏光素子13によって、外周付近からの反射光Leによる周辺ハレーションHLeを低減できる。また、広義のクロスニコルの状態の偏光素子17、13によって、反射光Lcによる中央ハレーションHLcを低減できる。
【0074】
第2の実施形態において、偏光素子17を通して、対象物OBに照射される偏光の方位は、
図5、
図6に示される周辺ハレーションHLeの偏光方位TPと略同一である。偏光素子13は、対象物OB全域において、偏光素子17とクロスニコルの状態となり、より均一にハレーションを除去できる。
【0075】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について、詳細に説明する。
図14は、本発明の第3の実施形態に係る撮影システム10bを表す模式図である。この撮影システム10bは、光源11、偏光素子13によるリング照明機構と、光源16、偏光素子17、ハーフミラー18による同軸落射照明機構を有する。リング照明機構と同軸落射照明機構を有することで、対象物OBに照射される光の均一性を向上できる。
【0076】
図15は、第3の実施形態に係る偏光素子12をZ軸正方向から見た状態を表す模式図である。リング形状の光源11に対応して、この偏光素子12は、リング形状をなし、外周121、内周122を有する。偏光素子12は、偏光透過軸TSの方位が周方向に沿って配列されている複数の領域A1~A18を有する。
【0077】
本実施形態に係る偏光素子17は、第2の実施形態に係る偏光素子17と同様、
図11の構成とすることができる。すなわち、本実施形態に係る撮影システム10bでは、光源11から出射され、偏光素子12を通過した光L1、光源16から出射され、偏光素子17を通過した光L2のいずれもがアジマス偏光である。
【0078】
本実施形態に係る偏光素子13では、例えば、
図13に示すように、偏光透過軸TSが径方向に沿って配列されている。すなわち、本実施形態に係る偏光素子13は、偏光素子12、17の双方と、広義のクロスニコルの状態にある。
【0079】
このとき、光源11、16の双方は、コリメート性の高い光を照射することが好ましい。前述のように偏光素子12(または偏光素子17)の各領域の光同士が混ざり合い、ランダム偏光化することが防止される。
【0080】
以上のように第3の実施形態に係る撮影システム10bでは、偏光素子13によって、周辺付近からの反射光Leによる周辺ハレーションHLeを低減できる。また、広義のクロスニコルの状態にある偏光素子13と偏光素子12、17とによって、反射光Lcによる中央ハレーションHLcを低減できる。
【0081】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態について、詳細に説明する。
図16は、本発明の第4の実施形態に係る撮影システム10cを表す模式図である。第4の実施形態に係る撮影システム10cは、第1の実施形態の光源11、偏光素子12に替えて、レーザー光源19、ビームホモジナイズ素子20を用いることで、アジマス偏光(光ビームの光軸に沿う基準軸線またはこの基準軸線を囲む基準領域を中心とする光ビームの周方向に沿って配列される偏光)を得ている。
【0082】
レーザー光源19は、例えば、リング状に配列される複数のレーザー発光素子191を有し、複数のレーザー発光素子191からのレーザビームの束を照射する。ビームホモジナイズ素子20は、複数のレーザー発光素子191それぞれに対応するレーザビームを均一化するビームホモジナイズ素子201を有し、複数のレーザー発光素子191からのレーザー光を束にして、照射する。
【0083】
図17は、レーザー発光素子191と、ビームホモジナイズ素子201との対応関係を表す模式図である。
図18は、複数のレーザー発光素子191及びビームホモジナイズ素子201をリング状に配置した状態を表す模式図である。
【0084】
図14に示すように、レーザー発光素子191から出射された光ビームは、ビームホモジナイズ素子201によって、均一化され、扇型形状の断面を有する光ビームLPとなる。この光ビームLP中の光は、扇型の周に沿う偏光方位TPを有する。
【0085】
図18に示すように、複数のレーザー発光素子191から出射され、対応する複数のビームホモジナイズ素子201を通ったレーザビームLは、偏光方位TPが異なる複数の光ビームLPの束として、対象物OBに照射される。この複数の光ビームLPは、全体として円形状の領域に均一に照射される。光ビームLPの偏光方位TPは、レーザビームLの光軸を中心とする周方向に配列される(アジマス偏光)。このようにして、レーザー光源19、ビームホモジナイズ素子20を用いて、アジマス偏光を得ることができる。
【0086】
図12に関して説明したように、偏光素子17を通過した、互いに隣接する光ビームの一部が重なり合うことが有り得る。これに対して、ビームホモジナイズ素子20を用いることで、互いに隣接する光ビームLP間の重なりを低減できる。すなわち、光ビームLPの境界間でランダム偏光になる領域を小さくすることができ、より良好なアジマス偏光を形成できる。この結果、ハレーションの除去の均一性が向上する。なお、ビームホモジナイズ素子20は、回折光学素子やメタサーフェスから構成できる。
【0087】
以上では、複数のレーザー発光素子191と複数のビームホモジナイズ素子201からアジマス偏光を形成する例を示している。これに対して、単一のレーザー発光素子191と単一のビームホモジナイズ素子201からアジマス偏光を形成してもよい。この場合、ビームホモジナイズ素子201は、入射光をアジマス偏光に変換する機能を有し、例えば、回折光学素子やメタサーフェスから構成できる。
【0088】
以上のように第4の実施形態に係る撮影システム10cでは、偏光素子13によって、周辺付近からの反射光Leによる周辺ハレーションHLeを低減できる。また、広義のクロスニコルの状態にある光源(レーザー光源19、ビームホモジナイズ素子20)及び偏光素子13によって、反射光Lcによる中央ハレーションHLcを低減できる。
【0089】
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態について、詳細に説明する。
図19は、本発明の第5の実施形態に係る撮影システム10dを表す模式図である。
【0090】
第5の実施形態の対象物OBは、例えば、食品であり、トレイST上に載置され、透明なラッピング・フィルムFで包装されたパッケージPKとなっている(いわゆるラップ包装)。撮影システム10dは、ラッピング・フィルムF内の対象物OBの外観の検査に用いることができる。このような場合、ラッピング・フィルムFのしわに起因して、ハレーションが起きる可能性がある。ラッピング・フィルムFからの反射光は、比較的強度が大きく、ハレーションの要因になり得る。
【0091】
ここで、偏光素子17は、例えば、
図10に示すように、偏光透過軸TSが径方向に配置される複数の領域Aを有する(偏光透過軸TSがラジアル配列)。一方、偏光素子13は、例えば、
図11に示すように、偏光透過軸TSが周方向に配置される複数の領域Aを有する(偏光透過軸TSがアジマス配列)。この偏光素子17、13の偏光透過軸TSの配置は、第2の実施形態とは逆の関係にある。後述のように、この結果、ラッピング・フィルムFからの反射光Lc、Leに起因するハレーションを低減することができる。
【0092】
図20は、対象物OB上のラッピング・フィルムFのしわの状態を表す模式図である。
図20のパッケージPK上に、対象物OBをZ軸正方向から見たときのラッピング・フィルムFのしわが表わされる。
図17のグラフGは、ラッピング・フィルムFをS1~S2に沿って切断した状態を表す。ラッピング・フィルムFのしわは、山Mと谷Vが交互に配置されて構成される。対象物OBが凸形状の場合、パッケージPK上において、しわの山Mは、対象物OBの中央部から外周部に向かって放射状に配置される傾向となる。
【0093】
しわの山Mの面、谷Vの面、山Mと谷Vの中間の斜面は、光を反射する。このとき、撮像装置15に到達する反射光は、しわの山M(しわの上面)からの反射光Lc、しわの谷(しわの底面)、さらに山Mと谷Vの中間の斜面で反射された反射光Leに区分できる。
図20のパッケージPK上に示すように、反射光Lcは、山M上から、反射光Leは、山Mの両脇から生じる。これらの反射光Lc、Leは対象物OBの画像上にハレーションとして現れ得る。
【0094】
反射光Lcは、反射角が比較的小さく、光源16、偏光素子17から出射され、対象物OBに照射される光の偏光状態は保持される傾向となる。この反射光Lcは、偏光素子17によるアジマス偏光状態が維持されているため、ラジアル偏光を通過させ、アジマス偏光を遮断する偏光素子17によって、遮断される。
【0095】
反射光Leは、斜面での反射角θoが比較的大きいため、例えば、S偏光が優位となり、斜面、すなわち、偏光方位TPが山Mに沿う方向となる。この結果、対象物OBの中央付近を中心として、偏光方位TPが径方向に配列される偏光(ラジアル偏光)となる傾向となる。このラジアル偏光の反射光Leも、偏光素子17によって、遮断される。
【0096】
このように、アジマス偏光を通過させる(ラジアル偏光を遮断する)偏光素子17、ラジアル偏光を通過させる(アジマス偏光を遮断する)偏光素子13を組み合わせることで、ラッピング・フィルムFのしわからの反射光Lc、Leに起因するハレーションを低減することができる。
【0097】
以上のように第5の実施形態に係る撮影システム10dでは、偏光素子13によって、ラッピング・フィルムFの山Mの両脇からの反射光Leによるハレーションを低減できる。また、広義のクロスニコル状態の偏光素子17、13によって、山Mの上部からの反射光Lcによるハレーションを低減できる。
【0098】
(第6の実施形態)
以下、本発明の第6の実施形態について、詳細に説明する。
図21は、本発明の第6の実施形態に係る偏光素子の製造方法S1の処理の流れを表すフロー図である。
図22及び
図23は、製造方法S1において処理される画像を表す図である。なお、ここで、設計される偏光素子は、撮像装置15側の偏光素子13である。
【0099】
以下、製造方法S1の処理の流れの詳細を説明する。
A.対象物OBの反射像上の光強度I、偏光度ρ、及び偏光方位φの分布を導出する(ステップS11~S13)。
図22は、光強度I、偏光度ρ、I∩ρ(光強度Iと偏光度ρの乗算)、及び偏光方位φそれぞれの分布、及び偏光方位φに応じて区分された領域φ1を表す。ここで、ステップS13は、対象物OBから反射される光の偏光方位φの分布を取得する第1の工程に対応する。
【0100】
ここでは、光強度Iの分布、偏光度ρの分布、及び偏光方位φの分布の順に導出しているが、この順序は適宜に変更できる。また、複数の分布を一度に求めてもよい。これらの導出には、例えば、対象物OBの画像上での光の偏光状態を測定する偏光カメラを用いることができる。
【0101】
この偏光カメラは、例えば、撮像素子と偏光素子の組み合わせから構成できる。3つ以上の偏光素子は、それぞれ、少なくとも0度、45度、及び、90度の方位の透過軸を有し、各撮像素子の前に配置される。この結果、3つ以上の偏光方位での測定結果に基づく、光強度、偏光度、及び偏光方位の分布を一度に算出することが可能となる。対象物OBを照明する光源として、直線偏光(例えば、X軸に平行な直線偏光)を出射する光源を用いることができる。
【0102】
光強度I、偏光度ρ、及び、偏光方位φについては、第1の実施形態において説明済みなので、ここでは説明を省略する。
【0103】
B.取得された偏光方位の分布と対応するように、偏光素子の偏光透過軸の方位の分布を設定する(ステップS14~S16)。
ステップS14~S16は、取得された偏光方位の分布と対応するように、偏光素子の偏光透過軸の方位の分布を設定する第2の工程に対応する。以下、ステップS14~S16の詳細を説明する。
【0104】
(1)対象物OBの反射像上において、光強度及び偏光度が大きい領域Aを抽出する(ステップS14)。
このステップS14は、対象物OBから反射される光によって形成される画像上において、光の強度I及び偏光度ρが所定以上の領域を抽出する第3の工程に対応する。例えば、光強度が所定値Th1より大きく、偏光度が所定値Th2より大きい領域Aを抽出する。画像上で、領域A以外の領域(残された領域)を領域Bとする。なお、
図22の「I∩ρ」は、既述のように、光の強度Iと偏光度ρの乗算を意味し、この乗算が所定以上の領域を、光の強度I及び偏光度ρが所定以上の領域として、抽出することができる。
【0105】
(2)抽出された領域Aの偏光透過軸方位を設定する(ステップS15)。
すなわち、抽出された領域A、及び、当該抽出された領域Aにおける偏光方位φの分布(φ‘)とそれぞれ対応するように、偏光素子の領域、及び、当該領域における偏光透過軸の方位の分布を設定する(
図23参照)。偏光方位φの分布φ‘は、
図22の「I∩ρ」に偏光方位φを乗算することで得られる(φ‘=(I∩ρ)∩φ)。
【0106】
画像上の領域Aと偏光素子の領域とは、位置において対応する。また、領域Aでの偏光方位の分布と偏光素子の領域での偏光方位の分布とは、例えば、互いの偏光方位が直交するように分布することを意味する。
【0107】
ここで、抽出された領域Aを偏光方位が近接する複数の領域Aiに区分し、区分された各領域Aiの偏光透過軸TSの方位を設定してもよい。例えば、各領域Aiでの偏光方位の変化幅が所定範囲に収まるように、領域Aを複数の領域Aiに区分する。例えば、各領域Aiでの平均的な偏光方位と直交する方位を領域Aiの偏光透過軸TSの方位とする。
【0108】
図23のφ1は、このようにして設定された偏光透過軸TSを示す。偏光方位φの分布と対応するように、対象物OBに対応する領域A0~A6に区分され、これらの領域A0~A6それぞれでの平均的な偏光方位TPに直交するように偏光透過軸TSが設定される。ここでは、判り易さのために、偏光透過軸TS、偏光方位TPを偏光方位の分布φ‘と重ねて示している。
【0109】
(3)対象物OBの反射像において、残された領域Bの少なくとも一部の偏光透過軸方位を設定する(ステップS16)。
領域Bは、光強度及び偏光度の少なくとも一方が小さい。すなわち、領域Bから発する光は、主として、ランダム偏光の拡散反射光であると考えられる。このため、偏光透過軸TSの方位を変化させても、偏光素子を通過する光の強度が大きく変化することはない。このため、領域Bは、偏光素子13の設計上は大きな影響を与えることはない。但し、画像の明るさの均一化の観点から、偏光素子において、この領域Bに対応する領域にも、偏光素子としての機能を持たせることが考えられる。また、領域Bに対応する領域において、偏光素子としての機能を持たせず、光の透過率を適宜に設定することで、画像の明るさの均一化を図ってもよい。
【0110】
例えば、各領域Aiと連続するように、残された領域Bの偏光透過軸TSの方位を設定する。例えば、領域Ai、Ajが離間し、その間には領域Aが存在しないとする。この場合、領域Ai、Ajの間に、領域Ai、Ajの中間的な偏光透過軸TSの方位を有する領域Bkを設定する。
【0111】
以上のように、偏光透過軸TSの方位が設定された複数の領域Ai、Bkが規定される。この区分された領域Ai、Bkに基づき、例えば、
図3、
図7、
図9、
図10に示すような、偏光素子を作成することができる。このようにして作製された偏光素子を偏光素子13として用いることができる。一方、偏光素子12、17には、この偏光素子13の各領域Ai、Bkの偏光透過軸TSと直交する偏光透過軸TSの領域Ai、Bkを有する偏光素子を用いることができる。このとき、偏光素子12、13は、偏光素子12の領域Aiを通った偏光が偏光素子12の領域Aiによって遮断される広義のクロスニコルの状態にある。
【0112】
以上のように、対象物OBから反射される光の偏光方位の分布と対応するように、偏光素子の偏光透過軸の方位の分布を設定することで、ハレーションを効果的に低減できる偏光素子を作成できる。
【0113】
本発明は、多様な分野、例えば、産業用、医療用(皮膚観察や内視鏡観察など)の画像において、ハレーションを低減し、画像処理の有効性を向上できる。
【0114】
(上記実施形態から把握される発明)
以下、上記実施形態から把握される発明を示す。
(1)本発明の第1の態様に係る撮影システム(10)は、対象物(OB)を撮像する撮影システムであって、前記対象物を撮像する撮像装置(15)と、前記対象物と前記撮像装置の間に配置される偏光素子(13)と、を備え、前記偏光素子は、偏光透過軸の方位が互いに異なる複数の領域(A1~A8)を有し、前記複数の領域の偏光透過軸は、基準点(中心線C)または、基準領域(領域A0)を中心とする径方向、または周方向に沿って配列される。これにより、対象物から比較的大きな反射角で反射された反射光(Le)に起因するハレーションを低減できる。
【0115】
(2)本発明の第2の態様に係る撮影システム(10)は、第1の態様において、前記対象物に光ビームを照射する光源(11)を備え、前記光源から前記対象物に照射される前記光ビームは、偏光方位が互いに異なる複数の領域を有し、前記光ビームの複数の領域の偏光方位は、前記光ビームの光軸に沿う基準軸線またはこの基準軸線を囲む基準領域を中心とする前記光ビームの径方向、または周方向に沿って配列される。これにより、対象物から比較的大きな反射角で反射された反射光(Le)及び比較的小さな反射角で反射された反射光(Lc)の双方に起因するハレーションを低減できる。
【0116】
(3)本発明の第3の態様に係る撮影システム(10)は、第1の態様において、前記対象物に光ビームを照射する光源を備え、前記光源から前記対象物に照射される光ビームは、所定の偏光方位の1以上の領域を有する。これにより、対象物上に1以上の照明領域を形成できる。
【0117】
(4)本発明の第4の態様に係る撮影システム(10)は、第2の態様において、前記偏光素子の前記複数の領域の偏光透過軸の方位は、それぞれ、前記光ビームの前記複数の領域の偏光方位と互いに直交する。これにより、対象物から比較的大きな反射角で反射された反射光(Le)及び比較的小さな反射角で反射された反射光(Lc)の双方に起因するハレーションを低減できる。
【0118】
撮影システム(10)は、第2の態様において、前記偏光素子の前記複数の領域の偏光透過軸の方位は、前記周方向に沿って配列され、前記光ビームの前記複数の領域の偏光方位は、前記光ビームの径方向に沿って配列され、前記偏光素子の前記複数の領域の偏光透過軸の方位は、それぞれ、前記光ビームの前記複数の領域の偏光方位と互いに直交してもよい。これにより、対象物から比較的大きな反射角で反射された反射光(Le)及び比較的小さな反射角で反射された反射光(Lc)の双方に起因するハレーションを低減できる。
【0119】
(5)本発明の第5の態様に係る撮影システム(10)は、第1の態様において、前記対象物に光ビームを照射する光源と、前記光源と前記対象物との間に配置される第2の偏光素子と、を備え、前記第2の偏光素子は、偏光透過軸の方位が互いに異なる複数の第2の領域を有し、前記複数の第2の領域の偏光透過軸(TS)は、第2の基準点または第2の基準領域を中心とする第2の径方向、または第2の周方向に沿って配列される。これにより、対象物から比較的大きな反射角で反射された反射光(Le)及び比較的小さな反射角で反射された反射光(Lc)の双方に起因するハレーションを低減できる。
【0120】
(6)本発明の第6の態様に係る撮影システム(10)は、第1~5の態様の何れかにおいて、前記対象物は、前記対象物から前記撮像装置に向かう方向に対して、傾斜する外周面を有し、前記外周面から反射される光の偏光方位の分布は、前記複数の領域の偏光透過軸の配列に対応する。これにより、外周面から反射される光に起因するハレーションを低減できる。
【0121】
(7)本発明の第7の態様に係る撮影システム(10)は、第6の態様において、前記外周面から反射される光の偏光方位は、前記対象物の外周に沿う方向に配列され、前記偏光素子の前記複数の領域の偏光透過軸の方位は、前記径方向に沿って配列される。これにより、外周面から反射される光に起因するハレーションを低減できる。
【0122】
(8)本発明の第8の態様に係る撮影システム(10)は、第1~5の態様のいずれかにおいて、前記撮像装置と、前記偏光素子と前記撮像装置との間に配置されるレンズと、を備える。
【0123】
(9)本発明の第9の態様に係る偏光素子(13)は、対象物を撮像する撮影システムに用いられる偏光素子であって、偏光透過軸の方位が互いに異なる複数の領域を有し、前記複数の領域の偏光透過軸は、基準点または、基準領域を中心とする径方向、または周方向に沿って配列される。これにより、対象物から比較的大きな反射角で反射された反射光(Le)に起因するハレーションを低減できる。
【0124】
(10)本発明の第10の態様に係る偏光素子の製造方法(S1)は、対象物から反射される光の偏光方位の分布を取得する工程と、前記取得された偏光方位の分布と対応するように、偏光素子の偏光透過軸の方位の分布を設定する工程と、を含む。これにより、計測された偏光方位の分布と対応する偏光素子を作成し、この偏光分布の光に起因するハレーションを低減できる。
【0125】
(11)本発明の第11の態様に係る偏光素子の製造方法は、第10の態様において、前記対象物から反射される光によって形成される画像上において、光の強度及び偏光度が所定以上の領域を抽出する第3の工程を含み、前記第1の工程は、前記抽出された領域における光の偏光方位の分布を取得する工程を有し、前記第2の工程は、前記抽出された領域における光の偏光方位の分布と対応するように、前記偏光素子の偏光透過軸の方位の分布を設定する工程を有する。
【0126】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0127】
10 撮影システム
11、16 光源
12、13、12、17 偏光素子
14 レンズ
15 撮像装置
18 ハーフミラー
19 レーザー光源
20 ビームホモジナイズ素子
191 レーザー発光素子
201 ビームホモジナイズ素子