(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168810
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】低温貯蔵タンク
(51)【国際特許分類】
F17C 9/00 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
F17C9/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085769
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】株式会社IHIプラント
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】田附 英幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 英晃
(72)【発明者】
【氏名】山田 寿一郎
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB20
3E172BA06
3E172BB04
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC07
3E172BC10
3E172BD05
3E172CA07
3E172CA10
3E172DA90
3E172GA01
3E172KA02
(57)【要約】
【課題】低温貯蔵タンクにて開放点検が可能な状態となるまでの期間を短縮し、また高温ガスの使用量を低減可能とする。
【解決手段】低温液化ガスXを貯蔵する地上式貯蔵タンク10であって、コンクリート壁と、コンクリート壁の内壁面側に配置されると共に、低温液化ガスXの貯蔵空間Kに向けて突出する中空のコルゲーション4aを有するメンブレン4と、コルゲーション4aの内部に配置されるヒータ9とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスを貯蔵する低温貯蔵タンクであって、
コンクリート壁と、
前記コンクリート壁の内壁面側に配置されると共に、低温液化ガスの貯蔵空間に向けて突出する中空のコルゲーションを有するメンブレンと、
前記コルゲーションの内部に配置されるヒータと
を備える低温貯蔵タンク。
【請求項2】
前記コンクリート壁によって形成されたコンクリート側壁と、
前記コンクリート側壁の内壁面側に配置された前記メンブレンである側部メンブレンと
を備え、
複数の前記側部メンブレンの前記コルゲーションが連続することで、平面視にて前記貯蔵空間を囲むように形成された側部環状コルゲーションを有し、
前記ヒータは、前記側部環状コルゲーションの内部に前記配置され、前記側部環状コルゲーションに沿って環状に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の低温貯蔵タンク。
【請求項3】
上下方向に配列された複数の前記側部環状コルゲーションを有し、
内部に前記ヒータが配置されたヒータ内蔵側部環状コルゲーションと、内部に前記ヒータが設置されていないヒータ非内蔵側部環状コルゲーションとを有し、
前記ヒータ内蔵側部環状コルゲーションは、前記ヒータ非内蔵側部環状コルゲーションよりも下方に位置する
ことを特徴とする請求項2記載の低温貯蔵タンク。
【請求項4】
前記コンクリート壁によって形成されたコンクリート基礎版と、
前記コンクリート基礎版の内壁面側に配置された前記メンブレンである底部メンブレンと
を備え、
前記ヒータは、前記底部メンブレンの前記コルゲーションの内部に配置されている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の低温貯蔵タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温貯蔵タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、コンクリート壁とメンブレンとを備える低温タンクが開示されている。特許文献1に開示された低温タンクは、メンブレンに囲まれた貯蔵空間を有しており、貯蔵空間にLNG(Liquefied Natural Gas)等の低温液化ガスを貯留する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような低温液化ガスを貯蔵する低温貯蔵タンクは、メンテナンス等のために開放点検を行う場合がある。このような開放点検を行う場合には、内部の貯留した低温液化ガス及び気化ガスを排出して常温に戻す必要がある。このため、低温貯蔵タンクに屋根部から懸架された液化ガス払出管内に備え付けられた液中ポンプを用いて低温液化ガスを排出する。しかしながら、液中ポンプを用いて低温液化ガスの全てを排出することはできず、一定量の低温液化ガスが底部に残ることになる。このような底部に残った低温液化ガスは、例えば低温貯蔵タンクの内部に高温ガスを供給し、このガスの熱容量により低温ガスを気化させて排出する必要がある。ところが、液化アンモニア等の毒性が高い低温液化ガスは、残留濃度が極めて低いレベルになるまで排出する必要がある。このため、低温液化ガスの排出に極めて長い期間を要することになり、稼働を停止していから開放点検が可能な状態となるまでの期間が長期化してしまう。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、低温貯蔵タンクにて開放点検が可能な状態となるまでの期間を短縮可能とし、また高温ガスの使用量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
本発明の第1の態様は、低温液化ガスを貯蔵する低温貯蔵タンクであって、コンクリート壁と、上記コンクリート壁の内壁面側に配置されると共に、低温液化ガスの貯蔵空間に向けて突出する中空のコルゲーションを有するメンブレンと、上記コルゲーションの内部に配置されるヒータとを備えるという構成を採用する。
【0008】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、上記コンクリート壁によって形成されたコンクリート側壁と、上記コンクリート側壁の内壁面側に配置された上記メンブレンである側部メンブレンとを備え、複数の上記側部メンブレンの上記コルゲーションが連続することで、平面視にて上記貯蔵空間を囲むように形成された側部環状コルゲーションを有し、上記ヒータが、上記側部環状コルゲーションの内部に上記配置され、上記側部環状コルゲーションに沿って環状に設けられているという構成を採用する。
【0009】
本発明の第3の態様は、上記第2の態様において、上下方向に配列された複数の上記側部環状コルゲーションを有し、内部に上記ヒータが配置されたヒータ内蔵側部環状コルゲーションと、内部に上記ヒータが設置されていないヒータ非内蔵側部環状コルゲーションとを有し、上記ヒータ内蔵側部環状コルゲーションが、上記ヒータ非内蔵側部環状コルゲーションよりも下方に位置するという構成を採用する。
【0010】
本発明の第4の態様は、上記第1~第3のいずれかの態様において、上記コンクリート壁によって形成されたコンクリート基礎版と、上記コンクリート基礎版の内壁面側に配置された上記メンブレンである底部メンブレンとを備え、上記ヒータが、上記底部メンブレンの上記コルゲーションの内部に配置されているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、メンブレンのコルゲーションの内部に配置されるヒータを備える。このため、高温ガスのみを貯蔵空間に供給する場合よりも、ヒータを発熱させることで直接残存した低温液化ガスに熱量を与えることができ、低温液化ガスを気化させる速度を向上させることができる。したがって、本発明によれば、低温貯蔵タンクにて開放点検が可能な状態となるまでの期間を短縮し、また高温ガスの使用量を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態の地上式貯蔵タンクの概略構成を示す模式図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の地上式貯蔵タンクの製造工程を示す模式図である。
【
図4】本発明の第2実施形態の地上式貯蔵タンクの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る低温貯蔵タンクの一実施形態について説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の地上式貯蔵タンク10(低温貯蔵タンク)の概略構成を示す模式図である。本実施形態の地上式貯蔵タンク10は、LNGや液化アンモニア等の低温液化ガスXを貯蔵するメンブレン式タンクである。例えば、地上式貯蔵タンク10は、10万t以上の低温液化ガスXを貯蔵可能な大型タンクである。ただし、地上式貯蔵タンク10の低温液化ガスXの貯蔵量は特に限定されるものではない。
【0015】
図2は、
図1のA部分の模式的な拡大断面図である。
図1及び
図2に示すように、地上式貯蔵タンク10は、コンクリート基礎版1(コンクリート壁)と、コンクリート側壁2(コンクリート壁)と、屋根部3と、メンブレン4と、保冷パネル5(断熱材)と、樹脂製ライナ6と、供給部7と、液化ガス排出部8と、ヒータ9とを備える。
【0016】
コンクリート基礎版1は、コンクリートによって形成された地上式貯蔵タンク10の底部である。このコンクリート基礎版1は、地面上に設けられており、コンクリート側壁2、屋根部3、メンブレン4、保冷パネル5、及び樹脂製ライナ6等を直接的にあるいは間接的に支持する。なお、コンクリート基礎版1は、地中に埋設された複数の基礎杭に支持されてもよい。このようなコンクリート基礎版1は、例えば鉄筋コンクリートによって形成されている。また、コンクリート基礎版1は、例えば平面視が円形状となるように形成されている。
【0017】
コンクリート側壁2は、コンクリート基礎版1上に立設されている。例えば、コンクリート側壁2は、平面視において円形となるような円筒状に形成されている。例えば、コンクリート側壁2は、プレストレストコンクリートによって形成されている。このようなコンクリート側壁2は、メンブレン4が万が一破損して内部の低温液化ガスXがメンブレン4の外側に漏出した場合には、防液堤として機能する。つまり、コンクリート側壁2は、低温液化ガスXがメンブレン4の外側に漏出した場合には、地上式貯蔵タンク10の外部に低温液化ガスXが流れ出ることを防止する。
【0018】
屋根部3は、地上式貯蔵タンク10の上部を形成しており、コンクリート側壁2の上端に接続されている。この屋根部3は、低温液化ガスXの貯蔵空間を上方から覆っており、低温液化ガスXが蒸発することを抑止する。屋根部3は、低温液化ガスXに対して耐性のある材料によって形成される。なお、本実施形態においては、屋根部3は、吊下げ支持されたデッキを備えていない。しかしながら、屋根部3は、デッキを備えてもよい。
【0019】
メンブレン4は、低温液化ガスXに対して直接的に接触する金属製の薄板部材であり、地上式貯蔵タンク10の内壁面を形成する。メンブレン4は、保冷パネル5を介してコンクリート側壁2あるいはコンクリート基礎版1に対して支持されている。メンブレン4は不図示のアンカーを用いてコンクリート側壁2あるいはコンクリート基礎版1に固定されている。メンブレン4は、コンクリート側壁2あるいはコンクリート基礎版1の内側面に沿って敷き詰められるように複数設けられており、隣接される他のメンブレン4に対して溶接されている。
【0020】
このようなメンブレン4は、数mm程度の厚さにて形成されている。また、各々のメンブレン4には、熱変形に形状変化を抑制するためのコルゲーション4aが形成されている。例えば、低温液化ガスXがLNGである場合には、メンブレン4は例えばステンレス鋼によって形成される。また、低温液化ガスXが液化アンモニアである場合には、メンブレン4は炭素鋼やステンレス鋼によって形成される。
【0021】
図1に示すように、メンブレン4としては、コンクリート側壁2に対向配置されるものと、コンクリート基礎版1に対向配置されるものがある。コンクリート側壁2に対向配置されるメンブレン4を側部メンブレン41と称する。コンクリート基礎版1に対向されるメンブレン4を底部メンブレン42と称する。
【0022】
側部メンブレン41には、上述のようなコルゲーション4aとして、鉛直方向に延伸するコルゲーション4aと、水平方向に延伸するコルゲーション4aとが設けられている。また、複数の側部メンブレン41のうち少なくとも一部には、鉛直方向に延伸するコルゲーション4aが水平方向に延伸するコルゲーション4aとクロスするように設けられている。同一の高さに配置される側部メンブレン41の水平方向に延伸するコルゲーション4aは、互いに連結されている。これらのコルゲーション4aによって、1つの側部環状コルゲーション4bが形成されている。
【0023】
側部環状コルゲーション4bは、低温液化ガスXが貯蔵される貯蔵空間Kを平面視にて囲むように形成されている。地上式貯蔵タンク10は、
図1に示すように、このような側部環状コルゲーション4bが上下方向に配列されて複数設けられている。
【0024】
底部メンブレン42には、上述のようなコルゲーション4aとして、平面視にて円形の貯蔵空間Kの径方向に沿うように設けられたコルゲーション4aと、平面視にて円形の貯蔵空間Kの周方向に沿うように設けられたコルゲーション4aが設けられている。また、複数の底部メンブレン42のうち少なくとも一部には、平面視にて貯蔵空間Kの径方向に沿うように設けられたコルゲーション4aが周方向に延びるコルゲーション4aとクロスするように設けられている。貯蔵空間Kの中心位置から径方向に同距離に配置される底部メンブレン42の周方向に沿うように設けられたコルゲーション4aは、互いに連結されている。これらのコルゲーション4aによって、1つの底部環状コルゲーション4cが形成されている。
【0025】
底部環状コルゲーション4cは、貯蔵空間Kの中心位置を囲うように環状に形成されている。地上式貯蔵タンク10は、
図1に示すように、このような底部環状コルゲーション4cが、貯蔵空間Kの径方向に配列されて複数設けられている。
【0026】
図2に示すように、メンブレン4は、コンクリート側壁2(あるいはコンクリート基礎版)に対して一定の間隔で離間して配置されている。このようなメンブレン4とコンクリート側壁2との隙間は、保冷パネル5が充填されている。このようなメンブレン4とコンクリート側壁2(あるいはコンクリート基礎版)との隙間の空間は、貯蔵される低温液化ガスXの冷熱が地上式貯蔵タンク10の外部に放出されることを抑制する保冷空間として機能する。
【0027】
保冷パネル5は、保冷空間に充填される断熱材である。保冷パネル5は、保冷空間を充填するように複数設けられている。各々の保冷パネル5は、例えばポリウレタンフォーム(PUF)等の発泡材によって形成されている。
図2に示すように、保冷空間には、メンブレン4とコンクリート側壁2との配列方向に重なるようにして保冷パネル5が2層となるように設けられている。各々の層の厚さは、例えば数十mm程度である。この保冷空間は、窒素ガスが充填されている。
【0028】
樹脂製ライナ6は、ガス密性を有する薄膜であり、保冷空間から外部へ窒素ガスが散逸することを防止する。また、樹脂製ライナ6は、外部の大気に含まれる水分が保冷空間を通過することを防止する。本実施形態において樹脂製ライナ6は、コンクリート基礎版1の上面と保冷パネル5との間、コンクリート側壁2の内壁面(メンブレン4側の面)と保冷パネル5との間、メンブレン4の背面(コンクリート基礎版1またはコンクリート側壁2側の面)と保冷パネル5との間に設けられている。
【0029】
供給部7は、地上式貯蔵タンク10に対して低温液化ガスXを供給するための設備である。供給部7は、例えば外部から供給される低温液化ガスXを案内する供給配管を有している。この供給配管は、例えば屋根部3を上方から下方に向けて貫通するように設けられている。また、供給部7は、開放点検を行う場合には、高温ガスを貯蔵空間Kに供給する。ただし、低温液化ガスXを供給する供給部と、高温ガスを供給する供給部とは別に設けてもよい。
【0030】
液化ガス排出部8は、地上式貯蔵タンク10に貯蔵された低温液化ガスXを外部に排出するための設備である。液化ガス排出部8は、例えば、低温液化ガスXの貯蔵空間Kの底部近くまで上方から延びる排出配管と、低温液化ガスXを汲み上げる液中ポンプとを備えている。
【0031】
液化ガス排出部8は、貯蔵空間Kに貯留された低温液化ガスXを汲み上げるが、全ての低温液化ガスXを排出することはできない。つまり、液化ガス排出部8で可能な限り、低温液化ガスXを排出した後にも、一定量の低温液化ガスXが貯蔵空間Kに残留する。このような液化ガス排出部8で排出できる最低の液面高さを排出限界液面位置Hとする。
【0032】
ヒータ9は、メンブレン4のコルゲーション4aの内部に配置されており、外部の制御部Cの制御に基づいて発熱する。このようなヒータ9は、通電により発熱される電熱線である。本実施形態においては、ヒータ9は、排出限界液面位置Hよりも下方に位置する側部環状コルゲーション4bの内部に配置されている。なお、ヒータ9が内部に配置された側部環状コルゲーション4bをヒータ内蔵側部環状コルゲーション4dと称する。また、ヒータ9が内部に配置されていない側部環状コルゲーション4bをヒータ非内蔵側部環状コルゲーション4eと称する。つまり、本実施形態においては、ヒータ内蔵側部環状コルゲーション4dは、排出限界液面位置Hよりも下方に位置する。また、ヒータ非内蔵側部環状コルゲーション4eは、排出限界液面位置Hよりも下方に位置する。
【0033】
側部環状コルゲーション4bの内部に位置するヒータ9は、側部環状コルゲーション4bに沿って、平面視にて貯蔵空間Kを囲う環状に巻かれている。本実施形態では、ヒータ9は、貯蔵空間Kを1周に亘って囲うように設けられている。ただし、1つの側部環状コルゲーション4bにて、ヒータ9は、貯蔵空間Kを複数周に亘って囲うように設けられてもよい。
【0034】
図2に示すように、側部環状コルゲーション4bの内部に位置するヒータ9は、樹脂製ライナ6を介して保冷パネル5によって支持されている。このようなヒータ9は、メンブレン4に対して直接的に接触することなく配置されている。このため、ヒータ9とメンブレン4とが干渉し、いずれかあるいは両方が損傷することを防止できる。
図3は、地上式貯蔵タンク10を組み立てる場合の模式図である。この図に示すように、ヒータ9は、メンブレン4が他のメンブレン4と溶接される前に、保冷パネル5に支持される。例えば、不図示の接着剤や締結部材等を用いて、ヒータ9は、樹脂製ライナ6を介して保冷パネル5に固定される。
【0035】
このヒータ9は、地上式貯蔵タンク10の管理を行う管理室等に設けられた制御部Cによって制御可能とされている。ヒータ9は、制御部Cの制御の下で、地上式貯蔵タンク10を開放点検する場合に、貯蔵空間Kの底部に残留した低温液化ガスXを加熱して気化を促進させる。
【0036】
なお、地上式貯蔵タンク10の開放点検を行わない期間は、制御部Cをヒータ9に対して接続しなくてもよい。つまり、制御部Cは、開放点検を行う場合のみ、ヒータ9に接続するようにしてもよい。このような構成を採用することで、開放点検を行わない期間にヒータ9と制御部Cとを接続する経路を確保する必要がなく、地上式貯蔵タンク10の液密性をより向上させることが可能となる。
【0037】
このような本実施形態の地上式貯蔵タンク10で開放点検を行う場合には、まず液化ガス排出部8を用いて、貯蔵空間Kに貯留された低温液化ガスXを地上式貯蔵タンク10の外部に排出する。液化ガス排出部8で可能な限り低温液化ガスXを排出した後に、地上式貯蔵タンク10の底部に溜まった低温液化ガスXをヒータ9によって加温し気化させる。なお、ヒータ9で低温液化ガスXを加温する場合に、合わせて高温ガスを供給部7から貯蔵空間Kに供給する。低温液化ガスXが気化することで生じた気化ガスは、ボイルオフガスの排出設備等を介して、地上式貯蔵タンク10の外部に排出する。
【0038】
以上のような本実施形態の地上式貯蔵タンク10は、低温液化ガスXを貯蔵する。また、本実施形態の地上式貯蔵タンク10は、コンクリート壁(コンクリート側壁2またはコンクリート基礎版1)と、メンブレン4と、ヒータ9とを備える。メンブレン4は、コンクリート壁(コンクリート側壁2またはコンクリート基礎版1)の内壁面側に配置される。また、メンブレン4は、低温液化ガスXの貯蔵空間Kに向けて突出する中空のコルゲーション4aを有する。ヒータ9は、コルゲーション4aの内部に配置されている。
【0039】
このような本実施形態の地上式貯蔵タンク10によれば、メンブレン4のコルゲーション4aの内部に配置されるヒータ9を備える。このため、高温ガスのみを貯蔵空間Kに供給する場合よりも、ヒータ9を発熱させることで直接残存した低温液化ガスに熱量を与えることができ、低温液化ガスXを気化させる速度を向上させることができる。したがって、本実施形態の地上式貯蔵タンク10によれば、低温貯蔵タンクにて開放点検が可能な状態となるまでの期間を短縮し、また高温ガスの使用量を低減することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態の地上式貯蔵タンク10は、コンクリート壁であるコンクリート側壁2を備える。また、本実施形態の地上式貯蔵タンク10は、コンクリート側壁2の内壁面側に配置されたメンブレン4である側部メンブレン41を備える。また、本実施形態の地上式貯蔵タンク10は、側部環状コルゲーション4bを有している。側部環状コルゲーション4bは、複数の側部メンブレン41のコルゲーション4aが連続することで、平面視にて貯蔵空間Kを囲むように形成されている。さらにヒータ9は、側部環状コルゲーション4bの内部に配置され、側部環状コルゲーション4bに沿って環状に設けられている。
【0041】
このような本実施形態の地上式貯蔵タンク10によれば、ヒータ9が貯蔵空間Kを平面視にて囲うように配置されている。このため、貯蔵空間Kに残留する低温液化ガスXを貯蔵空間Kの全体において均等に加温することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態の地上式貯蔵タンク10は、上下方向に配列された複数の側部環状コルゲーション4bを有する。また、本実施形態の地上式貯蔵タンク10は、内部にヒータ9が配置されたヒータ内蔵側部環状コルゲーション4dと、内部にヒータ9が設置されていないヒータ非内蔵側部環状コルゲーション4eとを有する。さらにヒータ内蔵側部環状コルゲーション4dは、ヒータ非内蔵側部環状コルゲーション4eよりも下方に位置する。
【0043】
開放点検の場合に、液化ガス排出部8によって排出できない低温液化ガスXは、底部に溜まる。このため、本実施形態の地上式貯蔵タンク10のように、ヒータ内蔵側部環状コルゲーション4dを下方に配置することで、確実に低温液化ガスXを加温できる。また、上方に位置する側部環状コルゲーション4bは、液化ガス排出部8によって排出できない低温液化ガスXと接触しない。このため、本実施形態の地上式貯蔵タンク10のように、このような上方に位置する側部環状コルゲーション4bをヒータ非内蔵側部環状コルゲーション4eとすることで、エネルギの消費を抑制することができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、
図4を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0045】
図4は、本実施形態の地上式貯蔵タンク20(低温貯蔵タンク)の概略構成を示す模式図である。この図に示すように、本実施形態の地上式貯蔵タンク20は、底部メンブレン42によって形成された底部環状コルゲーション4cの内部に対してヒータ9が設けられている。なお、ヒータ9は、底部環状コルゲーション4cの各々の内部に対して設けられている。
【0046】
本実施形態の地上式貯蔵タンク20は、コンクリート壁であるコンクリート基礎版1を備える。また、本実施形態の地上式貯蔵タンク20はコンクリート基礎版1の内壁面側に配置されたメンブレン4である底部メンブレン42を備える。また、ヒータ9は、底部メンブレン42のコルゲーション4aの内部に配置されている。
【0047】
このような本実施形態の地上式貯蔵タンク20によれば、メンブレン4のコルゲーション4aの内部に配置されるヒータ9を備える。このため、上記第1実施形態の地上式貯蔵タンク10と同様に、高温ガスのみを貯蔵空間Kに供給する場合よりも、ヒータ9を発熱させることで貯蔵空間Kを昇温させることができ、低温液化ガスXを気化させる速度を向上させることができる。したがって、本実施形態の地上式貯蔵タンク20によれば、低温貯蔵タンクにて開放点検が可能な状態となるまでの期間を短縮することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態の地上式貯蔵タンク20によれば、貯蔵空間Kに残留する低温液化ガスXと接触するコルゲーション4aの内部に多くのヒータ9を設置することができる。このため、地上式貯蔵タンク20にて開放点検が可能な状態となるまでの期間をより短縮することが可能となる。また、貯蔵空間Kに残留する低温液化ガスXを貯蔵空間Kの全体において均等に加温することが可能となる。
【0049】
なお、本実施形態においては、
図4に示すように、側部環状コルゲーション4bの内部にもヒータ9が設置されている。しかしながら、本実施形態において、側部環状コルゲーション4bにヒータ9を設置しない構成としてもよい。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態においては、本発明の低温貯蔵タンクを地上式貯蔵タンクに適用した例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、地下式の低温貯蔵タンクに本発明を適用することも可能である。このような場合には、例えば樹脂製ライナ6の全てあるいは一部を省略することも可能である。
【0052】
なお、上記実施形態においては、排出限界液面位置Hよりも下方にヒータ9が配置された構成について説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。ヒータ9が排出限界液面位置Hよりも上方であっても低温液化ガスXを加熱できればよい。ただし、より高い効果を得るためには、ヒータ9は排出限界液面位置Hよりも下方であることが好ましい。
【符号の説明】
【0053】
1……コンクリート基礎版(コンクリート壁)、2……コンクリート側壁(コンクリート壁)、3……屋根部、4……メンブレン、4a……コルゲーション、4b……側部環状コルゲーション、4c……底部環状コルゲーション、4d……ヒータ内蔵側部環状コルゲーション、4e……ヒータ非内蔵側部環状コルゲーション、5……保冷パネル、6……樹脂製ライナ、7……供給部、8……液化ガス排出部、9……ヒータ、10……地上式貯蔵タンク(低温貯蔵タンク)、20……地上式貯蔵タンク(低温貯蔵タンク)、41……側部メンブレン、42……底部メンブレン、C……制御部、H……排出限界液面位置、K……貯蔵空間、X……低温液化ガス