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特開2024-168811ウェルビーイングスコア生成システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168811
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ウェルビーイングスコア生成システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20241128BHJP
   G16H 50/00 20180101ALI20241128BHJP
【FI】
A61B5/16 120
G16H50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085772
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 雅義
(72)【発明者】
【氏名】石井 智之
【テーマコード(参考)】
4C038
5L099
【Fターム(参考)】
4C038PP03
5L099AA21
(57)【要約】
【課題】多様な個人のウェルビーイングを適切に数値化する。
【解決手段】ユーザの身体の活動に関連する特徴量を入力としてウェルビーイングスコアを算出するモデルであって、活動の活発さとポジティブ感情あるいは対人コミュニケーション性との相互の関係に表れる人物タイプを示す活動因子群に対応した推定モデルである複数のウェルビーイングスコア算出モデルを予め記憶し、パーソナリティテストに対するユーザ解答情報を基に、ユーザのパーソナリティの特性を表すスコアを取得し、そのスコアに基づいて、ユーザが該当する活動因子群を特定し、ユーザのセンサデータを取得し、センサデータに基づいてユーザの特徴量を算出し、ユーザが該当する活動因子群に基づいて、ウェルビーイングスコア算出モデルを選択し、選択されたウェルビーイングスコア算出モデルにユーザの特徴量を入力としてウェルビーイングスコアを算出する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの状態を測定したセンサデータから、前記ユーザのウェルビーイングの強度を数値で表すウェルビーイングスコアを生成するウェルビーイングスコア生成システムであって、
記憶装置および処理装置を有し、
前記記憶装置は、
ユーザの身体の活動に関連する特徴量を入力としてウェルビーイングスコアを算出するウェルビーイングスコア算出モデルであって、活動の活発さとポジティブ感情あるいは対人コミュニケーション性との相互の関係に表れる人物タイプを示す活動因子群に対応した推定モデルである複数のウェルビーイングスコア算出モデルを記憶し、
前記処理装置は、
パーソナリティテストに対する前記ユーザの解答が記録されたユーザ解答情報を取得し、
前記ユーザ解答情報を基に、前記ユーザのパーソナリティの特性を表すスコアであるパーソナリティ因子スコアを取得し、
前記パーソナリティ因子スコアに基づいて、前記ユーザが該当する活動因子群を特定し、
前記ユーザのセンサデータを取得し、
前記センサデータに基づいて前記ユーザの特徴量を算出し、
前記ユーザが該当する活動因子群に基づいて、前記ウェルビーイングスコア算出モデルを選択し、
選択された前記ウェルビーイングスコア算出モデルに前記ユーザの特徴量を入力してウェルビーイングスコアを算出する、
ウェルビーイングスコア生成システム。
【請求項2】
前記センサデータは、前記ユーザの身体に装着あるいは前記ユーザに携帯された加速度センサで取得された加速度データである、
請求項1に記載のウェルビーイングスコア生成システム。
【請求項3】
前記ウェルビーイングスコア算出モデルは、活動が活発になるにつれポジティブ感情が強まる人物タイプである動好群と、活動が不活発になるにつれポジティブ感情が強まる人物タイプである静好群と、活動が活発になるにつれ対人コミュニケーション性が強まる人物タイプである動対人群と、活動が不活発になるにつれ対人コミュニケーション性が強まる人物タイプである静対人群とにそれぞれ対応する4つのモデルを含み、
前記記憶装置は、
前記パーソナリティ因子スコアを入力として、活動の活発さとポジティブ感情との相関の度合いを示す活動感情群スコアと、活動の活発さと対人コミュニケーション性との相関の度合いを示す活動対向群スコアとを算出する活動因子群判別モデルを更に記憶し、
前記処理装置は、
前記ユーザのパーソナリティ因子スコアを前記活動因子群判別モデルへの入力として、前記ユーザの活動感情群スコアおよび活動対向群スコアを算出し、
前記活動感情群スコアが所定の閾値より大きければ、前記ユーザは前記動好群に該当すると判定し、前記活動感情群スコアが前記閾値より小さければ、前記ユーザは前記静好群に該当すると判定し、
前記活動対向群スコアが所定の閾値より大きければ、前記ユーザは前記動対人群に該当すると判定し、前記活動感情群スコアが前記閾値より小さければ、前記ユーザは前記静対人群に該当すると判定する、
請求項1に記載のウェルビーイングスコア生成システム。
【請求項4】
前記ウェルビーイングスコア算出モデルは、加速度の大きさを表す加速度強度に関する特徴量と、所定の解析期間における前記加速度強度のゼロクロス点の個数で表される活動量に関する特徴量と、前記活動量により特定される活動状態が連続する期間を表す活動持続時間に関する特徴量と、前記活動量により特定される非活動状態が連続する期間を表す静止持続時間に関する特徴量と、を入力とする、
請求項1に記載のウェルビーイングスコア生成システム。
【請求項5】
前記ウェルビーイングスコア算出モデルは、前記加速度強度、前記活動量、前記活動持続時間、および前記静止持続時間のそれぞれの歪度、尖度、中央値、および、前記解析期間を複数に等分した各期間の確率密度を入力とする、
請求項4に記載のウェルビーイングスコア生成システム。
【請求項6】
前記処理装置が、前記ウェルビーイングスコアを、前記ウェルビーイングスコア算出モデルの入力に基づく値を線形結合した値として算出する、
請求項4に記載のウェルビーイングスコア生成システム。
【請求項7】
前記センサデータは、前記ユーザの周囲の環境の状態を測定した環境因子のデータを含み、
前記ウェルビーイングスコア算出モデルは、前記特徴量と前記環境因子とを入力としてウェルビーイングスコアを算出する、
請求項1に記載のウェルビーイングスコア生成システム。
【請求項8】
ユーザの状態を測定したセンサデータから、前記ユーザのウェルビーイングの強度を数値で表すウェルビーイングスコアを生成するウェルビーイングスコア生成方法であって、
コンピュータが、
ユーザの身体の活動に関連する特徴量を入力としてウェルビーイングスコアを算出するウェルビーイングスコア算出モデルであって、活動の活発さとポジティブ感情あるいは対人コミュニケーション性との相互の関係に表れる人物タイプを示す活動因子群に対応した推定モデルである複数のウェルビーイングスコア算出モデルを記憶し、
パーソナリティテストに対する前記ユーザの解答が記録されたユーザ解答情報を取得し、
前記ユーザ解答情報を基に、前記ユーザのパーソナリティの特性を表すスコアであるパーソナリティ因子スコアを取得し、
前記パーソナリティ因子スコアに基づいて、前記ユーザが該当する活動因子群を特定し、
前記ユーザのセンサデータを取得し、
前記センサデータに基づいて前記ユーザの特徴量を算出し、
前記ユーザが該当する活動因子群に基づいて、前記ウェルビーイングスコア算出モデルを選択し、
選択された前記ウェルビーイングスコア算出モデルに前記ユーザの特徴量を入力してウェルビーイングスコアを算出する、
ウェルビーイングスコア生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、幸福の度合いを数値化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ポジティブ心理学の分野においてウェルビーイングの実現方法が研究されている。しかしながら、ウェルビーイングは人間の感情に関わるので、ある人のウェルビーイングがどれだけであるか、あるいは、ある人のウェルビーイングがどれだけ向上したかを定量的に測定することは容易でない。特許文献1および特許文献2には、各種センサで取得されるデータからユーザの感情を推定する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-138155号公報
【特許文献2】特開2018-139087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、企業等の組織での利用だけでなく、日常生活における個人のウェルビーイングを定量的に測定する技術が求められている。しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示された手法は、組織での活用を主な用途としており、複数の人物の協働活動により醸成される場の感情的な雰囲気であるチーム感情を算出する手法である。これらの手法は、日常生活を含む個人の感情を推定するには不向きである。個人の感情を推定するための技術も存在するが、異なる感情の特性を持った多様な人々のウェルビーイングを適切に数値化できる手法は存在しない。
【0005】
本開示に含まれるひとつの目的は、多様な個人のウェルビーイングを適切に数値化する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に含まれるひとつの態様によるウェルビーイング指標スコア作成システムは、ユーザの状態を測定したセンサデータから、前記ユーザのウェルビーイングの強度を数値で表すウェルビーイングスコアを生成するウェルビーイングスコア生成システムであって、記憶装置および処理装置を有し、前記記憶装置は、ユーザの身体の活動に関連する特徴量を入力としてウェルビーイングスコアを算出するウェルビーイングスコア算出モデルであって、活動の活発さとポジティブ感情あるいは対人コミュニケーション性との相互の関係に表れる人物タイプを示す活動因子群に対応した推定モデルである複数のウェルビーイングスコア算出モデルを記憶し、前記処理装置は、パーソナリティテストに対する前記ユーザの解答が記録されたユーザ解答情報を取得し、前記ユーザ解答情報を基に、前記ユーザのパーソナリティの特性を表すスコアであるパーソナリティ因子スコアを取得し、前記パーソナリティ因子スコアに基づいて、前記ユーザが該当する活動因子群を特定し、前記ユーザのセンサデータを取得し、前記センサデータに基づいて前記ユーザの特徴量を算出し、前記ユーザが該当する活動因子群に基づいて、前記ウェルビーイングスコア算出モデルを選択し、選択された前記ウェルビーイングスコア算出モデルに前記ユーザの特徴量を入力としてウェルビーイングスコアを算出する。
【0007】
本開示に含まれるひとつの態様によるウェルビーイング指標スコア作成方法は、少なくとも記憶装置および処理装置を有するシステムにより、ユーザの状態を測定したセンサデータから、前記ユーザのウェルビーイングの強度を数値で表すウェルビーイングスコアを生成するウェルビーイングスコア生成方法であって、コンピュータが、ユーザの身体の活動に関連する特徴量を入力としてウェルビーイングスコアを算出するウェルビーイングスコア算出モデルであって、活動の活発さとポジティブ感情あるいは対人コミュニケーション性との相互の関係に表れる人物タイプを示す活動因子群に対応した推定モデルである複数のウェルビーイングスコア算出モデルを記憶し、パーソナリティテストに対する前記ユーザの解答が記録されたユーザ解答情報を取得し、前記ユーザ解答情報を基に、前記ユーザのパーソナリティの特性を表すスコアであるパーソナリティ因子スコアを取得し、前記パーソナリティ因子スコアに基づいて、前記ユーザが該当する活動因子群を特定し、前記ユーザのセンサデータを取得し、前記センサデータに基づいて前記ユーザの特徴量を算出し、前記ユーザが該当する活動因子群に基づいて、前記ウェルビーイングスコア算出モデルを選択し、選択された前記ウェルビーイングスコア算出モデルに前記ユーザの特徴量を入力としてウェルビーイングスコアを算出する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に含まれるひとつの態様によれば、ウェルビーイングの適切な数値化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係るウェルビーイングスコア生成システムの構成例を示す概念図である。
図2】本開示の実施形態に係る端末装置の構成例を示すブロック図である。
図3】本開示の実施形態に係る端末装置が行う処理例を示すフローチャートである。
図4】本開示の実施形態に係る処理装置の構成例を示すブロック図である。
図5】本開示の実施形態に係る記憶装置に記憶される情報を例示する概念図である。
図6】本開示の実施形態に係る活動因子群に応じたウェルビーイングスコア算出モデルの選択処理を例示するフローチャートである。
図7】本開示の実施形態に係る活動感情群判別パラメータセットを例示する概念図である。
図8】本開示の実施形態に係る活動対向群判別パラメータセットを例示する概念図である。
図9】本開示の実施形態に係る加速度パラメータの特徴量の派生値を示す説明図である。
図10】本開示の実施形態に係るウェルビーイングスコア算出モデルの重みづけのテーブルを示す概念図である。
図11】本開示の実施形態に係るウェルビーイングスコアの算出処理を例示するフローチャートである。
図12】本開示の実施形態に係るウェルビーイングスコア計算処理を例示するフローチャートである。
図13】本開示の実施形態に係るフィードバック内容作成部が作成した、フィードバック情報を例示する概念図である。
図14】本開示の実施形態に係る端末装置の別形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
ウェルビーイングスコア生成システムについての説明の前に、まずは既知の概念であるウェルビーイングについて簡単に説明する。ウェルビーイングは、幸福度とも表現されることがある。ウェルビーイングを計測可能な因子軸として、活動軸と、感情軸と、対向(コミュニケーション)軸とがある。
【0012】
活動軸の一つの因子要素である活動強度因子は、動作強度を内容とするものであり、加速度強度と活動量とに基づいて算出される。活動軸のもう一つの因子要素である静止固定因子は、連続した静止時間を内容とするものであり、静止持続時間に基づいて算出される。
【0013】
感情軸の因子要素である感情強度因子は、ポジティブまたはネガティブな感情強度を内容とするものであり、加速度パラメータに基づいて算出される。
【0014】
対向(コミュニケーション)軸の因子要素である対向性因子は、人間の対向傾向が内面に向かうか外面に向かうかを内容とするものであり、加速度パラメータに基づいて算出される。
【0015】
ウェルビーイングの上記のような数値化において、例えばユーザのウェアラブル端末が備えるセンサ、より具体的には加速度計が取得するデータなどが用いられることがある。
【0016】
ここで、活動に対する感情(ポジティブあるいはネガティブの強さ)は、活発に活動する方がポジティブに感じる傾向がある人(動好群MG)と、静かにしている方がポジティブに感じる人(静好群QG)とに大きく分類できることが分かってきている。さらに、動好群MG、静好群QGといったパーソナリティ特性は、心理学分野でパーソナリティの評価に使用される特性5因子モデルの協調性や誠実性において、優位に差がある。
【0017】
そこで本開示のウェルビーイングスコア生成システムにおいては、活動感情特性群に応じたウェルビーイングスコアを推定することにより、ウェルビーイングスコアを適切に数値化する。
【0018】
図1は、本開示の実施形態に係るウェルビーイングスコア生成システムの構成例を示す概念図である。
【0019】
ウェルビーイングスコア生成システム1は、端末装置10と、処理装置20と、記憶装置30とを有する。端末装置10、処理装置20、および記憶装置30はインターネットなどの通信ネットワーク60を介して互いに通信可能に接続されている。
【0020】
端末装置10の典型例として、スマートフォン、ノートパソコン、およびウェアラブル端末などが挙げられる。端末装置10の種類はこれらには限られない。
【0021】
図2は、本開示の実施形態に係る端末装置の構成例を示すブロック図である。
【0022】
端末装置10は、プロセッサ、メモリ、入力装置、および出力装置などの一般的な構成を有する。端末装置10は、時計11と、センサ12とを更に備えていてよい。端末装置10は、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより、データ送受信部13と、フィードバック部14とを機能的に実現する。端末装置10は、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより、時計11とセンサ12とを機能的に実現してもよい。
【0023】
時計11は、端末装置10における時刻を計測する。センサ12は、ユーザの状態を測定したセンサデータを取得する。データ送受信部13は、処理装置20や記憶装置30などの外部装置との間でデータを送受信する。フィードバック部14は、ユーザに対してウェルビーイングスコアを提示することで、ユーザに対してフィードバックを行う。
【0024】
センサデータは、例えば、ユーザの身体に装着あるいはユーザに携帯された加速度センサで取得された加速度データである。
【0025】
図3は、本開示の実施形態に係る端末装置10が行う処理例を示すフローチャートである。
【0026】
時計11は、測定時刻を取得する(S101)。センサ12は、ユーザのセンサデータを取得する(S102)。データ送受信部13は、測定時刻とセンサデータとを処理装置20に送信する(S103)。端末装置10のプロセッサは、測定処理を終了するか否かを判定する(S104)。例えば、ユーザが端末装置10を操作して処理終了ボタンを押下するなどの外部イベントが発生した場合に、端末装置10のプロセッサは測定処理を終了すると判定する。測定処理を終了しない場合(S104:NO)、ステップS101に処理が戻る。
【0027】
図4は、本開示の実施形態に係る処理装置の構成例を示すブロック図である。
【0028】
処理装置20は、プロセッサ、メモリ、入力装置、および出力装置などの一般的な構成を有するコンピュータである。処理装置20は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより、入力部21と、処理部22と、出力部23とを機能的に実現する。
【0029】
入力部21は、パーソナリティ特性入力部211と、センサデータ入力部212とを有する。処理部22は、パーソナリティ因子スコア算出部221と、活動因子特性判別部222と、ウェルビーイングスコア算出モデル選択部223と、センサパラメータ算出部224と、ウェルビーイングスコア算出部225と、フィードバック内容作成部226とを有する。出力部23は、センサパラメータ出力部231と、ウェルビーイングスコア出力部232と、フィードバック内容出力部233とを有する。
【0030】
パーソナリティ特性入力部211は、パーソナリティテストに対するユーザの解答が記録されたユーザ解答情報を取得する。センサデータ入力部212は、ユーザのセンサデータを取得する。
【0031】
パーソナリティ因子スコア算出部221は、ユーザ解答情報を基に、ユーザのパーソナリティの特性を表すスコアであるパーソナリティ因子スコアを算出する。活動因子特性判別部222は、算出されたパーソナリティ因子スコアに基づいて、ユーザが該当する活動因子群を特定する。ウェルビーイングスコア算出モデル選択部223は、ユーザが該当する活動因子群に基づいて、ウェルビーイングスコア算出モデルを選択する。センサパラメータ算出部224は、センサデータに基づいてユーザの特徴量(センサパラメータ)を算出する。ウェルビーイングスコア算出部225は、選択されたウェルビーイングスコア算出モデルにユーザの特徴量を入力としてウェルビーイングスコアを算出する。ウェルビーイングスコアとは、ウェルビーイングの強度を数値で表したものを意味する。フィードバック内容作成部226は、ユーザへのフィードバック内容を作成する。
【0032】
センサパラメータ出力部231は、ユーザの特徴量(センサパラメータ)を出力する。ウェルビーイングスコア出力部232は、ウェルビーイングスコアを出力する。フィードバック内容出力部233は、フィードバック内容を出力する。
【0033】
図5は、本開示の実施形態に係る記憶装置に記憶される情報を例示する概念図である。
【0034】
記憶装置30は、ウェルビーイングスコア算出モデル31と、パーソナリティ特性32と、活動因子特性33と、センサパラメータ34と、ウェルビーイングスコア35とを記憶する。
【0035】
ウェルビーイングスコア算出モデル31は、ユーザの身体の活動に関連する特徴量を入力としてウェルビーイングスコアを算出するウェルビーイングスコア算出モデルであって、活動の活発さとポジティブ感情あるいは対人コミュニケーション性との相互の関係に表れる人物タイプを示す活動因子群に対応した推定モデルである複数のウェルビーイングスコア算出モデルである。活動因子群には、活動の活発さとポジティブ感情との関係に表れる動好群および静好群と、活動の活発さと対人コミュニケーション性との関係に動対人群および静対人群とがある。本実施例では、ウェルビーイングスコア算出モデル31には、動好群、静好群、動対人群、および静対人群のそれぞれに対応する4つのモデルが存在する。動好群、静好群、動対人群、および静対人群については後述する。
【0036】
ウェルビーイングスコアの意味については、上述の通りである。パーソナリティ特性および活動因子特性については後述する。センサパラメータとは、センサデータに基づいて算出されたユーザの特徴量を意味する。
【0037】
図6は、本開示の実施形態に係る活動因子群に応じたウェルビーイングスコア算出モデルの選択処理を例示するフローチャートである。
【0038】
パーソナリティ因子スコア算出部221は、パーソナリティテスト結果を取得し、テスト結果に基づいて、パーソナリティ因子スコアを算出する(S201)。なお、ここでは一般的なパーソナリティテストを用いることができる。
【0039】
活動因子特性判別部222は、パーソナリティ因子スコアと、活動因子群判別モデルからユーザの活動因子群を判別する(S202)。
【0040】
ウェルビーイングスコア算出モデル選択部223は、活動因子群によりユーザのウェルビーイングスコア算出モデルを選択する(S203)。
【0041】
ウェルビーイングスコア算出モデルは、加速度の大きさを表す加速度強度に関する特徴量と、所定の解析期間における加速度強度のゼロクロス点の個数で表される活動量に関する特徴量と、活動量により特定される活動状態が連続する期間を表す活動持続時間に関する特徴量と、活動量により特定される非活動状態が連続する期間を表す静止持続時間に関する特徴量と、を入力とする。
【0042】
(加速度強度)
加速度強度とは、センサで計測した3次元ベクトルである3軸の身体加速度生データを下記の式で変換した身体加速度の大きさを言う。
【0043】
【数1】
【0044】
(活動量)
活動量とは、時系列に並べた加速度強度データが単位時間(解析期間)にゼロを交差する回数を言う。単位時間は、例えば1分間などであってよいが、1分間以外の時間であってもよい。
【0045】
(活動・静止持続時間)
活動量を活動量の平均値と比べた大小で二値化し、平均値よりも高い状態を「活動状態」とし、低い状態を「非活動状態」とする。この活動状態が連続する期間を「活動持続時間」とする。「非活動状態」が連続する期間を「静止持続時間」とする。
【0046】
(パーソナリティテスト)
パーソナリティテストとは、心理学分野で人のパーソナリティアセスメントに使用される既知の特性五因子理論の質問テストを言う。既知のパーソナリティテストの例として、NEOなどがある。
【0047】
(パーソナリティ因子およびパーソナリティ因子スコア)
パーソナリティ因子とは、情緒安定性(N)、外向性(E)、開放性(O)、協調性(A)および誠実性(C)の5つの因子を指す。なお、5つの因子の英語表記は以下の通りである。情緒安定性の英語表記はNeuroticismである。外向性の英語表記はExtraversionである。開放性の英語表記はOpennessである。協調性の英語表記はAgreaulenessである。誠実性の英語表記はConscientiousnessである。
【0048】
なお、パーソナリティ因子スコアは、パーソナリティテスト結果から既知の方法で算出される上記のパーソナリティ因子ごとのスコア(PS_N、PS_E、PS_O、PS_A、PS_C)を指す。各スコアはいずれも、0-100点の数値で表現される。
【0049】
(活動因子特性)
活動因子特性とは、ポジティブ感情あるいは対人コミュニケーション性が、活動が活発になるにつれて強くなるか弱くなるかを示す特性である。活動因子特性には、活動感情群と活動対向群とが含まれる。
【0050】
活動感情群は、活動が活発になるにつれてポジティブ感情が強くなる群(動好群)と,活動が不活発になるにつれてポジティブ感情が強くなる群(静好群)とから成る。
【0051】
活動対向群は、活動が活発になるにつれて対人活動が強くなる群(動対人群)と、活動が不活発になるにつれて対人活動が強くなる群(静対人群)とから成る。
【0052】
(パーソナリティ特性)
パーソナリティ特性とは、個人を特徴づける思考、感情、行為に関する、種々の状況を越えて比較的持続的に見られるパターンや傾向性のことを言う。上述の活動感情群および活動対向群は、パーソナリティ特性の一例である。
【0053】
(活動因子群判別モデル)
活動因子群判別モデルとは、パーソナリティ因子スコアを入力として、活動の活発さとポジティブ感情との相関の度合いを示す活動感情群スコアと、活動の活発さと対人コミュニケーション性との相関の度合いを示す活動対向群スコアとを算出するモデルである。活動因子群判別モデルは、記憶装置30等に記憶される。活動感情群スコアおよび活動対向群スコアは、パーソナリティ因子スコアの線形結合式AFSとして、以下のように定義することができる。
【0054】
AFS=PS_N*kf_N+PS_E*kf_E+PS_O*kf_O+PS_A*kf_A+PS_C*kf_C
【0055】
Xは任意の一文字のアルファベットであるとする。kf_Xは各パーソナリティ因子スコアに対する重み係数のセットを示している。重み係数には、活動感情群についてのAFSを算出するための重み係数のセットke_Xと、活動対向群についてのAFSを算出するための重み係数のセットkc_Xとがある。
【0056】
処理装置20は、ユーザのパーソナリティ因子スコアを活動因子群判別モデルへの入力として、ユーザの活動感情群スコアおよび活動対向群スコアを算出する。
【0057】
図7は、本開示の実施形態に係る活動感情群判別パラメータセットを例示する概念図である。活動感情群判別パラメータセットには、上述の活動感情群についての重み係数のセットke_Xと、活動感情群閾値AESthとが値として含まれる。
【0058】
図8は、本開示の実施形態に係る活動対向群判別パラメータセットを例示する概念図である。活動対向群判別パラメータセットには、上述の活動対向群についての重み係数のセットkc_Xと、活動対向群閾値ACSthとが値として含まれる。
【0059】
図6のステップS202において活動因子特性判別部222は、パーソナリティ因子スコア(PS_N、PS_E、PS_O、PS_A、PS_C)と、活動因子群判別モデルから、ユーザの活動因子群を判別する。
【0060】
例えば、活動因子特性判別部222は活動感情群について、上記の計算式を用いて算出した活動感情群についてのAFS(活動感情群スコア)が閾値AESthより大きい場合は動好群であると判別し、小さい場合は静好群であると判別する。すなわち、処理装置20の活動因子特性判別部222は、活動感情群スコアが所定の閾値より大きければ、ユーザは、活動が活発になるにつれポジティブ感情が強まる人物タイプである動好群に該当すると判定し、活動感情群スコアが閾値より小さければ、ユーザは、活動が不活発になるにつれポジティブ感情が強まる人物タイプである静好群に該当すると判定する。
【0061】
また、活動因子特性判別部222は活動対向群について、上記の計算式を用いて算出した活動対向群についてのAFS(活動対向群スコア)が閾値ACSthより大きい場合は動対人群であると判別し、小さい場合は静対人群であると判別する。すなわち、処理装置20の活動因子特性判別部222は、活動対向群スコアが所定の閾値より大きければ、ユーザは、活動が活発になるにつれ対人コミュニケーション性が強まる人物タイプである動対人群に該当すると判定し、活動感情群スコアが閾値より小さければ、ユーザは、活動が不活発になるにつれ対人コミュニケーション性が強まる人物タイプである静対人群に該当すると判定する。
【0062】
(加速度パラメータの特徴量の派生値)
図9は、本開示の実施形態に係る加速度パラメータの特徴量の派生値を示す説明図である。ウェルビーイングスコア算出モデルに入力される加速度パラメータの特徴量として、加速度強度、活動量、活動持続時間、および静止持続時間がある。これらの特徴量の派生値もまた、ウェルビーイングスコア算出モデルに入力される特徴量となり得る。より具体的には、ウェルビーイングスコア算出モデルは、加速度強度、活動量、活動持続時間、および静止持続時間のそれぞれの歪度、尖度、中央値、および、解析期間を複数に等分した各期間の確率密度を入力とする。なお、図中のd1-dnについて説明する。dnとはノイズを除去した加速度パラメータ強度の全区間に対し、n等分となるような区間幅の階級幅に対する確率密度を意味する。
【0063】
(ウェルビーイングスコア算出モデル)
ウェルビーイングスコアを算出するためのウェルビーイングスコア算出モデルは、線形モデル、非線形モデル、または機械学習モデルとして実装されてよい。本実施形態においては、線形モデルに基づくウェルビーイングスコア算出モデルの実施例を示す。
【0064】
図10は、本開示の実施形態に係るウェルビーイングスコア算出モデルの重みづけのテーブルを示す概念図である。線形モデルの場合、特徴量に係数を乗算した値を足し合わせたもの、つまり線形結合に基づいて、ウェルビーイングスコアを算出する。
【0065】
特徴量の種類として、加速度強度、活動量、活動持続時間および静止持続時間の4種類が挙げられる。これらの種類ごとに、上述の歪度、尖度、中央値、およびd1-dnの値を算出することができ、算出値を加速度パラメータの特徴量として扱うことができる。ウェルビーイングスコア算出部225は、線形モデルであるウェルビーイングスコア算出モデルを用いて、特徴量に重み係数を乗算したものを足し合わせることにより、ウェルビーイングスコアWBSを算出する。すなわち、処理装置20はウェルビーイングスコアを、ウェルビーイングスコア算出モデルの入力に基づく値を線形結合した値として算出する。
【0066】
例えば、加速度パラメータの種類を添え字pで、特徴量の種類を添え字fでそれぞれ表現した場合、加速度パラメータpの特徴量fの値Vpfとその重み係数kgpfを用いて,ウェルビーイングスコアWBSを下記の数式で表現することができる。
【数2】
【0067】
重み係数kgpfの値は活動因子群ごとに異なる。すなわち、動好群、静好群、動対人群、および静対人群ごとに固有の重み係数セットkmppfセット,kqppfセット,kmopfセット、およびkmipfセットが与えられ、図10に示した重みづけのテーブルに各係数の値が記憶される。
【0068】
例えば、感情強度因子のウェルビーイングスコア(ウェルビーイング感情強度スコア)を、動好群のユーザに対して求める場合、当該スコアの計算式は以下の通りである。
【0069】
【数3】
【0070】
同様に、対向性因子のウェルビーイングスコア(ウェルビーイング対向性スコア)を、動対人群のユーザに対して求める場合、当該スコアの計算式は以下の通りである。
【数4】
【0071】
図11は、本開示の実施形態に係るウェルビーイングスコアの算出処理を例示するフローチャートである。
【0072】
ウェルビーイングスコア算出部225は、ウェルビーイングスコア算出モデル選択部223が選択したウェルビーイングスコア算出モデルを読み込む(S301)。ウェルビーイングスコア算出部225は、端末装置10から測定時刻およびセンサデータを取得する(S302)。
【0073】
ウェルビーイングスコア算出部225は、ウェルビーイングスコア計算処理を行う(S303)。ウェルビーイングスコア計算処理の詳細については、図12を参照して後述する。ウェルビーイングスコア算出部225は、計算済みのウェルビーイングスコアを記憶装置30に記録する(S304)。
【0074】
ウェルビーイングスコア算出部225は、ウェルビーイングスコアの算出処理を終了するか否かを判定する(S305)。例えば、ユーザが端末装置10を操作して処理終了ボタンを押下し、処理終了を示す外部イベントが発生した場合に、ウェルビーイングスコア算出部225はウェルビーイングスコアの算出処理を終了すると判定する。処理を終了しない場合(S305:NO)、ステップS302に処理が戻る。
【0075】
図12は、本開示の実施形態に係るウェルビーイングスコア計算処理を例示するフローチャートである。
【0076】
ウェルビーイングスコア算出部225は、加速度パラメータを計算する(S401)。例えばウェルビーイングスコア算出部225は、図11のステップS302で取得したセンサデータに基づいて、加速度パラメータの特徴量である、歪度、尖度、中央値、およびd1-dnを計算する。
【0077】
ウェルビーイングスコア算出部225は、上述の加速度パラメータと、ウェルビーイングスコア算出モデルとを用いて、ウェルビーイングスコアを計算する(S402)。
【0078】
図13は、本開示の実施形態に係るフィードバック内容作成部226が作成した、フィードバック情報を例示する概念図である。
【0079】
フィードバック情報には、測定日と、測定時間と、ウェルビーイングスコアとが含まれる。測定日および測定時間は、図3のステップS103で端末装置10が処理装置20に送信した測定時刻に基づく値である。ウェルビーイングスコアは、ウェルビーイング感情強度スコアと、ウェルビーイング対向性スコアとが含まれる。
【0080】
処理装置20のフィードバック内容出力部233は、フィードバック内容作成部226が作成したフィードバック情報を出力する。出力されたフィードバック情報を端末装置10のデータ送受信部13が受信して、フィードバック部14がユーザに対してフィードバック情報を提示する。
【0081】
図14は、本開示の実施形態に係る端末装置の別形態を示すブロック図である。図2に示した端末装置10の構成要素のうち、センサ12が端末装置10から見た外部装置であるセンサ端末50として、端末装置10に接続される。
【0082】
(ユーザ入力情報に基づく精度向上)
上記では、センサ12が取得したセンサデータに基づく加速度データに基づいてウェルビーイングスコアを算出した。ユーザの状況や気持ちなどを更に取得して、ウェルビーイングスコアの精度をさらに向上させてもよい。
【0083】
例えば、端末装置10に入力機能を付加する。端末装置10は、データ入力部をさらに備える。ユーザは、1週間などの任意の期間ごとに、ウェルビーイングスコアの体感スコアを入力する。端末装置10のデータ送受信部13は、入力された体感スコアの情報を処理装置20へと送信する。
【0084】
処理装置20は、端末装置10から取得した体感スコアと、使用しているウェルビーイングスコア算出モデルを用いて算出したウェルビーイングスコアとの差が最小になるように、ウェルビーイングスコア算出モデルを修正する。例えば、線形モデルであるウェルビーイングスコア算出モデルの場合、現在使用している重み係数セットを初期値とする。そして、最小最適化アルゴリズムを用いて体感スコアとの差が最小になるように重み係数セットを更新する。ウェルビーイングスコア算出モデルが機械学習モデルである場合、体感スコアを教師データとした誤差逆伝搬に基づく追加学習を行って、体感スコアとの差が最小になるように重み係数セットを更新する。
【0085】
これにより、ユーザに合わせて調整された精度の高いウェルビーイングスコアを算出することができる。
【0086】
(バイタルセンサ情報の活用)
上記では、センサ12が取得したセンサデータに基づく加速度データに基づいてウェルビーイングスコアを算出した。加速度データに加えて、バイタルセンサ情報(心拍、表面皮膚電導度)を活用してもよい。
【0087】
端末装置10がバイタルセンサを更に備えるか、端末装置10がバイタルセンサと通信可能に接続される。バイタルセンサが取得したユーザの心拍や表面皮膚電導度などのバイタルセンサ情報を、データ送受信部13が処理装置20へと送信する。
【0088】
処理装置20に、活動因子特性判別部222と同様の、心拍因子群判別部と発汗因子群判別部を設ける。心拍因子群判別部は、心拍因子群判別モデルを用いて判別を行う。発汗因子群判別部は、発汗因子群判別モデルを用いて判別を行う。心拍因子群判別モデルおよび発汗因子群判別モデルは、それぞれ、パーソナリティ因子スコアの線形結合式AFSによって定義される。ただし、重み係数のセットは、モデルに固有のものが用いられる。活動因子特性判別部222と同様に、算出されたAFSの値が閾値より大きいか否かで、心拍因子群および発汗因子群の判別をそれぞれ行う。
【0089】
そして処理装置20のプロセッサは、加速度と同様に、心拍因子群に固有のウェルビーイングスコア算出モデルを使用して、バイタルセンサで計測した心拍から、心拍ごとのウェルビーイングスコアを算出する。同様に、処理装置20のプロセッサは、発汗因子群に固有のウェルビーイングスコア算出モデルを使用して、バイタルセンサで計測した表面皮膚電導度から、発汗因子ごとのウェルビーイングスコアを算出する。
【0090】
処理装置20のプロセッサが上記の処理を行うことにより、加速度に基づくウェルビーイングスコアと、心拍因子群に基づくウェルビーイングスコアと、発汗因子群に基づくウェルビーイングスコアが併存することとなる。処理装置20のプロセッサは、算出された複数のウェルビーイングスコアに対して加重平均を行い、加重平均値を最終的なウェルビーイングスコアとして算出する。
【0091】
これにより、加速度だけでなく心拍や発汗の状態も加味して、精度の高いウェルビーイングスコアを算出することができる。
【0092】
(睡眠状態に基づく補正)
睡眠の状態は、ウェルビーイングに有意な影響があると考えられる。そこで処理装置20のプロセッサは、算出対象となるウェルビーイングスコアに、睡眠状態に基づく補正を行ってよい。
【0093】
端末装置10がデータ入力部を備える。ユーザが端末装置10のデータ入力部に睡眠状態を示す情報を入力する。睡眠状態を示す情報として、例えば前日の睡眠時間が考えられる。端末装置10のデータ送受信部13は、ユーザから取得した睡眠時間の情報を処理装置20へと送信する。
【0094】
処理装置20のプロセッサは、受信した睡眠時間をと平均睡眠時間との間の比を算出する。睡眠時間をと平均睡眠時間との間の比を、睡眠状態を示す睡眠状態情報SSとして用いる。
【0095】
処理装置20のプロセッサは、睡眠補正係数を下記の数式に基づいて算出する。
睡眠補正係数=SS×ksleep
なお、ksleepは、睡眠補正係数に対する睡眠補正定数である。
【0096】
処理装置20のプロセッサは、図12のステップS402で算出したウェルビーイングスコアに睡眠補正係数を乗算して、ユーザの睡眠状態の影響を加味したウェルビーイングスコアを算出する。
【0097】
なお、睡眠状態情報SSの算出処理は、端末装置10のプロセッサが行ってもよい。処理装置20のプロセッサは、睡眠補正係数を心拍因子群に基づくウェルビーイングスコアまたは発汗因子群に基づくウェルビーイングスコアに乗算してもよく、複数のウェルビーイングスコアの加重平均値に対して睡眠補正係数を乗算してもよい。
【0098】
これにより、睡眠状態を加味した精度の高いウェルビーイングスコアを算出することができる。
【0099】
(環境因子)
センサデータは、ユーザの周囲の環境の状態を測定した環境因子のデータを含み、ウェルビーイングスコア算出モデルは、特徴量と環境因子とを入力としてウェルビーイングスコアを算出してもよい。
【0100】
環境情報センサは、例えば温度、湿度、気圧、および照度などの、ユーザの周囲の環境の状態を測定する。環境情報センサは、端末装置10または処理装置20が備える。または、環境情報センサは、端末装置10または処理装置20と通信可能に接続される。
【0101】
処理装置20のプロセッサは、環境情報センサから直接または間接的に、環境情報を取得する。処理装置20のプロセッサは、取得した環境情報に基づいて、下記の値を算出する。
Pressnow:計測時の大気圧
Humnow:計測時の湿度
Tempnow:計測時の温度
Press24hAgo:計測時から24時間前の大気圧
Hum24hAgo:計測時から24時間前の湿度,
Temp24hAgo:計測時から24時間前の温度
Illummean:その日の日照時間
【0102】
処理装置20のプロセッサは、下記の数式に基づいて、補正係数ESweather、ESheatstroke、およびESSADを算出する。
【0103】
ESweather=(Pressnow/Press24hAgo)×kpress
ESheatstroke=(Humnow/Hum24hAgo)×khum+(Tempnow/Temp24hAgo)×ktemp
ESSAD=Illummean×killum
【0104】
pressは、大気圧に対する補正定数である。
humは、湿度に対する補正定数である。
tempは、温度に対する補正定数である。
illumは、平均日照時間補正係数に対する補正定数である。
【0105】
ESweatherは、気象病への該当性を示す補正係数である。
ESheatstrokeは、熱中症のなりやすさを示す補正係数である。
ESSADは、季節性感情障害への該当性を示す補正係数である。
【0106】
処理装置20のプロセッサは、図12のステップS402で算出したウェルビーイングスコアに、補正係数ESweather、ESheatstroke、およびESSADを乗算して、ユーザ環境の影響を加味したウェルビーイングスコアを算出する。
【0107】
なお、処理装置20のプロセッサは、補正係数ESweather、ESheatstroke、およびESSADを、心拍因子群に基づくウェルビーイングスコアまたは発汗因子群に基づくウェルビーイングスコアに乗算してもよく、複数のウェルビーイングスコアの加重平均値に対してこれらを乗算してもよい。
【0108】
これにより、ユーザ環境を加味した精度の高いウェルビーイングスコアを算出することができる。
【0109】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の範囲を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。また、上記実施形態の技術的範囲には以下の付記に示される事項が含まれている。ただし、本発明が以下の付記に限定されるものではない。ただし、上記実施形態に含まれる事項が付記されたものに限定されることはない。
【0110】
以上のように、ユーザの状態を測定したセンサデータから、ユーザのウェルビーイングの強度を数値で表すウェルビーイングスコアを生成するウェルビーイングスコア生成システムが、
記憶装置および処理装置を有し、
記憶装置は、
ユーザの身体の活動に関連する特徴量を入力としてウェルビーイングスコアを算出するウェルビーイングスコア算出モデルであって、活動の活発さとポジティブ感情あるいは対人コミュニケーション性との相互の関係に表れる人物タイプを示す活動因子群に対応した推定モデルである複数のウェルビーイングスコア算出モデルを記憶し、
処理装置は、
パーソナリティテストに対するユーザの解答が記録されたユーザ解答情報を取得し、
ユーザ解答情報を基に、ユーザのパーソナリティの特性を表すスコアであるパーソナリティ因子スコアを取得し、
パーソナリティ因子スコアに基づいて、ユーザが該当する活動因子群を特定し、
ユーザのセンサデータを取得し、
センサデータに基づいてユーザの特徴量を算出し、
ユーザが該当する活動因子群に基づいて、ウェルビーイングスコア算出モデルを選択し、
選択されたウェルビーイングスコア算出モデルにユーザの特徴量を入力してウェルビーイングスコアを算出する。
これにより、予め活動因子群ごとにウェルビーイングスコア算出モデルを準備しておき、活動因子群に基づいて選択したウェルビーイングスコア算出モデルを用いてウェルビーイングスコアを算出するので、多様な個人のウェルビーイングを適切に数値化することが可能となる。
【0111】
センサデータは、ユーザの身体に装着あるいはユーザに携帯された加速度センサで取得された加速度データである。
これにより、加速度データを基にウェルビーイングを算出するので、ユーザが装着あるいは携帯しやすい加速度センサにより一般の日常生活における個人のウェルビーイングを測定することが可能となる。
【0112】
ウェルビーイングスコア算出モデルは、活動が活発になるにつれポジティブ感情が強まる人物タイプである動好群と、活動が不活発になるにつれポジティブ感情が強まる人物タイプである静好群と、活動が活発になるにつれ対人コミュニケーション性が強まる人物タイプである動対人群と、活動が不活発になるにつれ対人コミュニケーション性が強まる人物タイプである静対人群とにそれぞれ対応する4つのモデルを含み、
記憶装置は、
パーソナリティ因子スコアを入力として、活動の活発さとポジティブ感情との相関の度合いを示す活動感情群スコアと、活動の活発さと対人コミュニケーション性との相関の度合いを示す活動対向群スコアとを算出する活動因子群判別モデルを更に記憶し、
処理装置は、
ユーザのパーソナリティ因子スコアを活動因子群判別モデルへの入力として、ユーザの活動感情群スコアおよび活動対向群スコアを算出し、
活動感情群スコアが所定の閾値より大きければ、ユーザは動好群に該当すると判定し、活動感情群スコアが閾値より小さければ、ユーザは静好群に該当すると判定し、
活動対向群スコアが所定の閾値より大きければ、ユーザは動対人群に該当すると判定し、活動感情群スコアが閾値より小さければ、ユーザは静対人群に該当すると判定する。
これにより、ユーザの活動感情群および活動対向群に応じた、より適切なウェルビーイングスコアを算出することができる。
【0113】
ウェルビーイングスコア算出モデルは、加速度の大きさを表す加速度強度に関する特徴量と、所定の解析期間における加速度強度のゼロクロス点の個数で表される活動量に関する特徴量と、活動量により特定される活動状態が連続する期間を表す活動持続時間に関する特徴量と、活動量により特定される非活動状態が連続する期間を表す静止持続時間に関する特徴量と、を入力とする。
これにより、加速度強度に加えて活動量、活動持続時間、および静止持続時間も加味してより適切なウェルビーイングスコアを算出することができる。
【0114】
ウェルビーイングスコア算出モデルは、加速度強度、活動量、活動持続時間、および静止持続時間のそれぞれの歪度、尖度、中央値、および、解析期間を複数に等分した各期間の確率密度を入力とする。
これにより、特徴量の派生値である歪度、尖度、中央値、および、解析期間を複数に等分した各期間の確率密度も加味したより適切なウェルビーイングスコアを算出することができる。
【0115】
処理装置が、ウェルビーイングスコアを、ウェルビーイングスコア算出モデルの入力に基づく値を線形結合した値として算出する。
これにより、上述の様々な特徴量を線形結合することにより、様々な要因を考慮したウェルビーイングスコアを算出することができる。
【0116】
センサデータは、ユーザの周囲の環境の状態を測定した環境因子のデータを含み、
ウェルビーイングスコア算出モデルは、特徴量と環境因子とを入力としてウェルビーイングスコアを算出する。
これにより、ユーザ環境を加味した精度の高いウェルビーイングスコアを算出することができる。
【0117】
少なくとも記憶装置および処理装置を有するシステムにより、ユーザの状態を測定したセンサデータから、ユーザのウェルビーイングの強度を数値で表すウェルビーイングスコアを生成するウェルビーイングスコア生成方法において、
コンピュータが、
ユーザの身体の活動に関連する特徴量を入力としてウェルビーイングスコアを算出するウェルビーイングスコア算出モデルであって、活動の活発さとポジティブ感情あるいは対人コミュニケーション性との相互の関係に表れる人物タイプを示す活動因子群に対応した推定モデルである複数のウェルビーイングスコア算出モデルを記憶し、
パーソナリティテストに対するユーザの解答が記録されたユーザ解答情報を取得し、
ユーザ解答情報を基に、ユーザのパーソナリティの特性を表すスコアであるパーソナリティ因子スコアを取得し、
パーソナリティ因子スコアに基づいて、ユーザが該当する活動因子群を特定し、
ユーザのセンサデータを取得し、
センサデータに基づいてユーザの特徴量を算出し、
ユーザが該当する活動因子群に基づいて、ウェルビーイングスコア算出モデルを選択し、
選択されたウェルビーイングスコア算出モデルにユーザの特徴量を入力としてウェルビーイングスコアを算出する。
これにより、予め活動因子群ごとにウェルビーイングスコア算出モデルを準備しておき、活動因子群に基づいて選択したウェルビーイングスコア算出モデルを用いてウェルビーイングスコアを算出するので、多様な個人のウェルビーイングを適切に数値化することが可能となる。
【符号の説明】
【0118】
1…ウェルビーイングスコア生成システム、10…端末装置、11…時計、12…センサ、13…データ送受信部、14…フィードバック部、20…処理装置、21…入力部、211…パーソナリティ特性入力部、212…センサデータ入力部、22…処理部、221…パーソナリティ因子スコア算出部、222…活動因子特性判別部、223…ウェルビーイングスコア算出モデル選択部、224…センサパラメータ算出部、225…ウェルビーイングスコア算出部、226…フィードバック内容作成部、23…出力部、231…センサパラメータ出力部、232…ウェルビーイングスコア出力部、233…フィードバック内容出力部、30…記憶装置、31…ウェルビーイングスコア算出モデル、32…パーソナリティ特性、33…活動因子特性、34…センサパラメータ、35…ウェルビーイングスコア、50…センサ端末、60…通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14