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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168814
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】給紙装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/04 20060101AFI20241128BHJP
   B65H 29/52 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B65H1/04 310A
B65H1/04 326A
B65H29/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085775
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 正広
【テーマコード(参考)】
3F101
3F343
【Fターム(参考)】
3F101FA01
3F101FB01
3F101FC12
3F101LA01
3F101LB03
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC04
3F343FC12
3F343GA02
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA12
3F343HA33
3F343HE11
3F343KB03
3F343KB06
3F343KB20
3F343LB04
(57)【要約】
【課題】シートの供給不良を抑制することができる給紙装置を提供することである。
【解決手段】実施形態の給紙装置は、カセットと、カセット前壁と、を持つ。カセットは、無線タグを有するシートを収容可能なシート収容空間を有する。カセットは、シートを第1方向の第1側に供給する。カセット前壁は、シート収容空間の第1方向の第1側にあるカセットの前壁である。第1方向に直交する水平方向を第2方向とする。シート収容空間に収容されたシートの無線タグが占める第2方向の範囲を第1範囲とする。第1範囲の少なくとも一部を含む第2方向の範囲を第2範囲とする。シート収容空間が占める第2方向の範囲を第3範囲とする。カセット前壁では、第2範囲における鉛直方向の高さより、第2範囲を除く第3範囲における鉛直方向の高さが低い。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグを有するシートを収容可能なシート収容空間を有し、前記シートを第1方向の第1側に供給するカセットと、
前記シート収容空間の前記第1方向の第1側にある前記カセットの側壁であって、前記第1方向に直交する水平方向を第2方向とし、前記シート収容空間に収容された前記シートの前記無線タグが占める前記第2方向の範囲を第1範囲とし、前記第1範囲の少なくとも一部を含む前記第2方向の範囲を第2範囲とし、前記シート収容空間が占める前記第2方向の範囲を第3範囲としたとき、前記第2範囲における鉛直方向の高さより前記第2範囲を除く前記第3範囲における鉛直方向の高さが低い、カセット前壁と、を有する、
給紙装置。
【請求項2】
前記カセットの前記第1方向の第1側にあり、前記カセットから供給された前記シートの下面に当接して前記シートの搬送をガイドする、下面ガイドをさらに有し、
前記第1方向の第1側の反対側を前記第1方向の第2側とし、前記第1範囲の少なくとも一部を含む前記第2方向の範囲を前記下面ガイドの第4範囲としたとき、
前記下面ガイドの前記第1方向の第2側の端部では、前記第4範囲における鉛直方向の高さより、前記第4範囲を除く前記第3範囲における鉛直方向の高さが低い、
請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記下面ガイドの前記第1方向の第1側にあり、前記シートの搬送方向を変化させる屈曲部をさらに有し、
前記下面ガイドの前記第1方向の第1側の端部では、前記第3範囲における鉛直方向の高さが同等である、
請求項2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記第2範囲は、前記第1範囲にある第1位置であり、
前記カセット前壁の前記第1方向の第1側から見て、前記カセット前壁の前記第1位置の形状は弧状である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の給紙装置。
【請求項5】
前記無線タグと通信可能な無線タグ通信装置をさらに有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の給紙装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、給紙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、シートに画像を形成する。画像形成装置は、シートを供給する給紙装置を有する。シートの供給不良を抑制することができる給紙装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-95029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、シートの供給不良を抑制することができる給紙装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の給紙装置は、カセットと、カセット前壁と、を持つ。カセットは、無線タグを有するシートを収容可能なシート収容空間を有する。カセットは、シートを第1方向の第1側に供給する。カセット前壁は、シート収容空間の第1方向の第1側にあるカセットの前壁である。第1方向に直交する水平方向を第2方向とする。シート収容空間に収容されたシートの無線タグが占める第2方向の範囲を第1範囲とする。第1範囲の少なくとも一部を含む第2方向の範囲を第2範囲とする。シート収容空間が占める第2方向の範囲を第3範囲とする。カセット前壁では、第2範囲における鉛直方向の高さより、第2範囲を除く第3範囲における鉛直方向の高さが低い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】画像形成装置の構成の一例を示す説明図。
図2】画像形成装置のハードウエア構成図。
図3】無線タグを有するシートの平面図。
図4】給紙装置の正面断面図。
図5】給紙カセットおよびピックアップローラの側面図。
図6】搬送ガイドの下面ガイドおよび屈曲部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の給紙装置を、図面を参照して説明する。
先ず、図1を用いて、実施形態の画像形成装置10の構成について説明する。図1は、画像形成装置10の構成の一例を示す説明図である。例えば、画像形成装置10は、オフィスなどのワークプレイスに配置される。
【0008】
本願において、直交座標系のZ方向、X方向およびY方向が以下のように定義される。Z方向は画像形成装置10の上下方向であり、+Z方向は上方向である。X方向は画像形成装置10の左右方向であり、+X方向は右方向である。Y方向(第2方向)は画像形成装置10の前後方向である。Y方向において、給紙カセット51の中央に近い側を内側と呼び、中央から遠い側を外側と呼ぶ場合がある。例えば、Z方向は鉛直方向であり、X方向およびY方向は水平方向である。
【0009】
図1において、画像形成装置10は、コントロールパネル13、無線タグ通信装置90、及びプリンタ部18を有する。プリンタ部18は、制御部100、給紙カセット51等を備える。制御部100は、コントロールパネル13、無線タグ通信装置90、及びプリンタ部18を制御する。制御部100は、プリンタ部18におけるシートの搬送を制御する。シートの搬送の制御とは、シートの搬送タイミング、シートの停止位置、シートの搬送速度等を制御することである。
【0010】
コントロールパネル13は、入力キーと、表示部とを備える。例えば、入力キーは、ユーザによる入力を受け付ける。例えば、表示部は、タッチパネル式である。表示部は、ユーザによる入力を受け付け、ユーザへの表示を行う。例えば、コントロールパネル13は、画像形成装置10の動作に関する項目を設定可能に表示部に表示する。コントロールパネル13は、ユーザによって設定された項目を制御部100に通知する。
【0011】
給紙カセット51は、無線タグが設けられたシートを収納する。なお、給紙カセット51は、無線タグが設けられていないシートももちろん収納できる。以下の説明において、特に断らない限り、シートは、無線タグが設けられたシートとする。シートには、例えば、紙やプラスチックフィルム等の素材が用いられる。
【0012】
プリンタ部18は、画像を形成する動作を行う。例えば、プリンタ部18は、画像データが示す画像をシートに形成する。以下の説明では、シートに画像を形成することを「印刷」とも言う。なお、本実施形態において、プリンタ部18は、トナー像を定着させる装置であるが、これに限らず、インクジェット式の装置であってもよい。
【0013】
プリンタ部18は、中間転写ベルト21を備える。プリンタ部18は、従動ローラ41、及びバックアップローラ40等で中間転写ベルト21を支持する。プリンタ部18は、中間転写ベルト21を矢印m方向に回転させる。プリンタ部18は、4組の画像形成ステーション22Y、22M、22C及び22Kを備える。各画像形成ステーション22Y、22M、22C及び22Kは、各々Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)及びK(ブラック)に対応する。画像形成ステーション22Y、22M、22C及び22Kは、中間転写ベルト21の下側で、中間転写ベルト21の回転方向に沿って配置される。
【0014】
以下、各画像形成ステーション22Y、22M、22C及び22Kのうち、Y(イエロー)の画像形成ステーション22Yを例に挙げて説明する。なお、画像形成ステーション22M、22C及び22Kについては、画像形成ステーション22Yと同様の構成を備えるため、詳細な説明を省略する。
【0015】
画像形成ステーション22Yは、1次転写ローラ30を備える。1次転写ローラ30は、中間転写ベルト21を介して感光体ドラム24と対向して配置される。
【0016】
画像形成ステーション22Yは、帯電チャージャ26、露光走査ヘッド27、現像装置28及び感光体クリーナ29を備える。帯電チャージャ26、露光走査ヘッド27、現像装置28及び感光体クリーナ29は、矢印n方向に回転する感光体ドラム24の周囲に配置される。
【0017】
帯電チャージャ26は、感光体ドラム24を一様に帯電させる。露光走査ヘッド27は、一様に帯電された感光体ドラム24を露光し、感光体ドラム24上に静電潜像を形成する。現像装置28は、トナーとキャリアとにより形成される二成分の現像剤を用い、感光体ドラム24上の静電潜像を現像する。
【0018】
1次転写ローラ30は、感光体ドラム24に形成されるトナー像を中間転写ベルト21に1次転写する。画像形成ステーション22Y、22M、22C及び22Kのそれぞれの1次転写ローラ30が中間転写ベルト21上にトナー像を1次転写することにより、中間転写ベルト21上には、カラートナー像が形成される。カラートナー像は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)及びK(ブラック)のトナー像を順次重ねて形成されたトナー像である。感光体クリーナ29は、感光体ドラム24に残留するトナーを1次転写後に除去する。
【0019】
プリンタ部18は、2次転写ローラ32を備える。2次転写ローラ32は、中間転写ベルト21を介してバックアップローラ40と対向して配置される。2次転写ローラ32は、シートに、中間転写ベルト21上のカラートナー像を一括して2次転写する。なお、以下の説明において「トナー像」という場合、カラートナー像と1色のみのトナー像のいずれであってもよいものとする。また、トナー像は、消色トナーを用いたトナー像であってもよい。
【0020】
搬送路33は、複数の搬送ローラ(例えば、搬送ローラ330等)によってシートが搬送される経路である。搬送路33は、第1搬送路33aと、第2搬送路33bと、第3搬送路33cとを含む。第1搬送路33aは、合流部44aから分岐部44bまでの搬送路である。第2搬送路33bは、両面印刷装置38内を通過する搬送路であり、分岐部44bから合流部44aまでの、第1搬送路33aとは異なる搬送路である。第3搬送路33cは、分岐部44bから排紙トレイ20までの搬送路である。
【0021】
シートは、給紙カセット51及び手差しトレイ16cのいずれかのシート載置部16から取り出される。シート載置部16から取り出されたシートは、停止している2本のレジストローラ31が接触している部分で一時停止される。このとき、シートの先端がレジストローラ31に突き当てられ、シートの傾きが修正される。制御部100は、回転する中間転写ベルト21のトナー像の位置に合せてレジストローラ31の回転を開始させてシートを2次転写ローラ32の位置に移動させる。
【0022】
中間転写ベルト21上に形成されたトナー像は、2次転写ローラ32によってシートに2次転写される。さらに、2次転写されたトナー像は、定着装置34によってシートに定着される。このようにして、制御部100の制御によって、シートに画像が形成される。制御部100は、定着装置34によってトナー像が定着されたシートを第3搬送路33cに搬送し、当該シートを排紙する。
【0023】
無線タグ通信装置90は、図示しない演算装置、記憶装置およびアンテナを備える。本実施形態における無線タグは、例えばRFID(Radio Frequency Identifier)タグである。無線タグ通信装置90は、例えば、矢印k方向に電波を送信する。無線タグ通信装置90は、アンテナを介して、シートに設けられた無線タグと交信する。具体的には、無線タグ通信装置90は、無線タグから情報を読み、また、無線タグに情報を書く。
【0024】
無線タグに書く情報は、例えば、シートが物流等に用いられる場合は、内容物を示す情報、宛先を示す情報、シートに印刷される内容などを含む。本実施形態において、無線タグ通信装置90は、例えば、900MHz帯の電波方式(UHF)が用いられる。ただし、RFIDの方式および周波数帯は、これに限らず、他の方式および周波数帯を採用することも可能である。
【0025】
制御部100は、画像形成装置10の各部の制御を行う。
図2は、画像処理装置のハードウエア構成図である。画像形成装置10は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)91、メモリ92、補助記憶装置93などを備え、プログラムを実行する。画像形成装置10は、プログラムの実行によってプリンタ部18、コントロールパネル13、無線タグ通信装置90を備える装置として機能する。
【0026】
CPU91は、メモリ92および補助記憶装置93に記憶されたプログラムを実行することによって制御部100として機能する。制御部100は、画像形成装置10の各機能部の動作を制御する。
補助記憶装置93は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。補助記憶装置93は、情報を記憶する。
【0027】
図3は、無線タグTを有するシートSの平面図である。図3には、給紙カセット51に収容された状態のシートSが示される。図3では、シートSの厚さ方向がZ方向に一致し、幅方向がY方向に一致している。
【0028】
例えば、シートSは定形シートである。画像形成装置10は、様々なサイズの定形シートに画像を形成する。定形シートのサイズのうち、A4などのAシリーズのサイズは、紙の寸法を規定する国際規格ISO216に規定されている。B5などのBシリーズのサイズは、ISO216または日本産業規格JIS-Bシリーズに規定されている。LTはレターサイズであり、米国国家規格協会ANSI/ASME Y14.1にANSI Aとして規定されている。LGはリーガルサイズである。本願では、画像形成装置10において画像形成が可能な定形シートのうち、Y方向の幅が最大である定形シートが、最大定形シートと定義される。
【0029】
シートSは、無線タグTを有する。
無線タグTは、シートSの厚さ方向の内部に配置される。無線タグTは、シートSの表面に装着されてもよい。例えば、無線タグTは、シートSのY方向の中央部における+X方向の端部に配置される。無線タグTは、図3とは異なる位置に配置されてもよい。無線タグTは、Z方向から見て長方形状である。例えば、無線タグは、長手方向をX方向に一致させ、短手方向をY方向に一致させた姿勢で、シートSに配置される。無線タグTは、図3とは異なる姿勢でシートSに配置されてもよい。
【0030】
無線タグTは、アンテナAと、ICチップCと、を有する。アンテナAは、無線タグ通信装置90との間で電波等を送信および受信する。ICチップCは、情報を記録および処理する。無線タグTは、Z方向に厚さを有する。無線タグTが配置される部分のシートSの厚さは、他の部分に比べて厚い。特に、ICチップCが配置される部分のシートSの厚さは、他の部分に比べて厚い。
【0031】
図4は、図5のIV-IV線における給紙装置50の正面断面図である。図5は、給紙カセット51およびピックアップローラ71の側面図である。図6は、搬送ガイド60の下面ガイド62および屈曲部65の斜視図である。図4に示されるように、給紙装置50は、給紙カセット(カセット)51を有する。
給紙カセット51は、+Z方向が開口する箱状である。給紙カセット51は、カセット前壁52を有する。カセット前壁52は、給紙カセット51の+X方向の側壁である。
【0032】
図5に示されるように、給紙カセット51は、サイドガイド54と、シート収容空間55と、給紙トレイ56と、を有する。
サイドガイド54は、給紙カセット51の内側に配置される。サイドガイド54は、板状であり、XZ面と平行である。一対のサイドガイド54が、Y方向に離れて配置される。一対のサイドガイド54は、同期して、Y方向の内側および外側に移動可能である。一対のサイドガイド54は、シートSのY方向の両端部に当接して、シートSをY方向に整合する。シートSのY方向の中央が、給紙カセット51のY方向の中央に配置される。
【0033】
シート収容空間55は、一対のサイドガイド54のY方向の内側の空間である。シート収容空間55は、最大定形シートを収容可能である。シート収容空間55は、無線タグTを有するシートSを収容可能である。
【0034】
給紙トレイ56は、シート収容空間55の底部に配置される。図4に示されるように、給紙トレイ56は、回動軸の周りを回動可能である。回動軸は、Y方向と平行であり、給紙トレイ56の-X方向の端部に配置される。給紙トレイ56の回動により、給紙トレイ56の+X方向の端部がZ方向に移動する。複数のシートSが厚さ方向に積層されたシート束SSが、給紙トレイ56の上面に載置される。給紙トレイ56の回動により、シート束SSの+X方向の端部がZ方向に移動する。
【0035】
給紙装置50は、ピックアップローラ71を有する。
ピックアップローラ71は、給紙カセット51の+Z方向に配置される。ピックアップローラ71は、給紙カセット51のY方向の中央部における+X方向の端部に相当する位置に配置される。ピックアップローラ71は、Y方向に平行な回転軸の周りを回転する。ピックアップローラ71は、モータ等により回転駆動される。ピックアップローラ71は、Z方向に移動可能である。
【0036】
ピックアップローラ71の給紙動作について説明する。画像形成装置10の休止状態では、給紙トレイ56が給紙カセット51の底面まで下降し、ピックアップローラ71が+Z方向に上昇している。画像形成装置10のユーザは、給紙カセット51を画像形成装置10から引き出す。ユーザは、給紙カセット51のシート収容空間55にシート束SSを充填する。
【0037】
ユーザは、給紙カセット51を画像形成装置10に押し込む。ピックアップローラ71が下降する。給紙トレイ56が回動して、シート束SSの+X方向の端部を上昇させる。ピックアップローラ71が、上昇したシート束SSにおける最上層のシートSの上面に当接する。ピックアップローラ71が所定位置まで上昇すると、ピックアップローラ71の回転スイッチがオンになる。給紙トレイ56の回動が停止する。図4および図5には、この状態が示されている。ピックアップローラ71が回転して、最上層のシートSを+W方向に供給する。
【0038】
シートSが供給される度に、ピックアップローラ71が少しずつ下降する。ピックアップローラ71が所定位置まで下降すると、ピックアップローラ71の回転スイッチがオフになる。ピックアップローラ71の回転が停止する。給紙トレイ56が回動して、シート束SSの+X方向の端部およびピックアップローラ71を上昇させる。ピックアップローラ71が所定位置まで上昇すると、ピックアップローラ71の回転スイッチがオンになる。ピックアップローラ71が回転して、シートSの供給が再開される。
【0039】
本願において、W方向(第1方向)は、給紙カセット51からシートSが供給される方向である。+W方向(第1方向の第1側)は、シートSが供給される方向の下流側である。-W方向(第1方向の第2側)は、シートSが供給される方向の上流側であり、+W方向の反対側である。給紙カセット51は、シートSを+W方向に供給する。カセット前壁52は、シート収容空間55の+W方向にある給紙カセット51の側壁である。
【0040】
給紙装置50は、図4に示されるように、搬送ガイド60と、給紙ローラ72および分離ローラ73と、搬送ローラ75と、を有する。
搬送ガイド60は、給紙カセット51の+W方向に配置される。搬送ガイド60は、給紙カセット51から+W方向に供給されたシートSの搬送をガイドする。搬送ガイド60は、樹脂材料等により形成される。
【0041】
搬送ガイド60は、上面ガイド61と、下面ガイド62と、を有する。上面ガイド61および下面ガイド62は、WY平面に沿った板状である。上面ガイド61および下面ガイド62は、WY平面の法線方向に離れて配置される。上面ガイド61は、給紙カセット51から+W方向に供給されたシートSの上面に当接可能である。下面ガイド62は、シートSの下面に当接可能である。
【0042】
搬送ガイド60は、屈曲部65を有する。屈曲部65は、上面ガイド61および下面ガイド62の+W方向に配置される。屈曲部65は、シートSの搬送方向を変化させる。例えば、屈曲部65は、シートSの搬送方向を+W方向から+Z方向に変化させる。
【0043】
給紙ローラ72および分離ローラ73は、搬送ガイド60のW方向の中間部に配置される。給紙ローラ72および分離ローラ73は、WY平面の法線方向に並んで配置される。給紙ローラ72および分離ローラ73は、相互に当接してニップNを形成する。ニップNは、上面ガイド61と下面ガイド62との間に配置される。給紙ローラ72はニップNの上面ガイド61側に配置され、分離ローラ73はニップNの下面ガイド62側に配置される。
【0044】
給紙ローラ72および分離ローラ73は、Y方向に平行な回転軸の周りを回転する。給紙ローラ72は、モータ等により回転駆動される。分離ローラ73は、トルクリミッタを有する。給紙カセット51から複数のシートSが重なって供給される場合がある。複数のシートSがニップNに到達する。下側のシートSは、分離ローラ73のトルクリミッタの作用により、分離ローラ73の位置で停止する。上側のシートSは、給紙ローラ72により+W方向に搬送される。上側のシートSが搬送された後に、停止していた下側のシートSが、給紙ローラ72により+W方向に搬送される。給紙ローラ72および分離ローラ73は、給紙カセット51から重なって供給された複数のシートSを分離して+W方向に搬送する。
【0045】
図3に示されるシートSが、図5に示されるシート収容空間55に収容される。図3に示されるシートSは、Y方向の中央部における+X方向の端部に無線タグTを有する。無線タグTが配置される部分のシートSの厚さは、他の部分に比べて厚い。図5に示されるように、複数のシートSが厚さ方向に積層されたシート束SSが、給紙トレイ56の上面に載置される。図5の例では、Y方向の中央部におけるシート束SSのZ方向の高さが、他の部分に比べて高くなる。シート束SSの高さは、Y方向の中央部から端部にかけて低くなる。
【0046】
ピックアップローラ71は、Y方向の中央部にある。ピックアップローラ71は、シート束SSのZ方向の高さが最も高い、シート束SSのY方向の中央部に当接する。ピックアップローラ71は、シート束SSの最上層のシートSを、給紙カセット51から+W方向に供給する。
【0047】
第1範囲RA、第2範囲RBおよび第3範囲RCが、以下のように定義される。
第1範囲RAは、シート収容空間55に収容されたシートSの、無線タグTが占めるY方向の範囲である。一対のサイドガイド54がシート束SSのY方向の両端部に当接して、シート束SSがY方向に整合される。この状態において、シートSの無線タグTが占めるY方向の範囲が、第1範囲RAである。Y方向において、第1範囲RAの幅は、無線タグTの幅に一致する。図5の例では、第1範囲RAが、シートSおよびシート収容空間55のY方向の中央部にある。
【0048】
第2範囲RBは、カセット前壁52の一部分が占めるY方向の範囲である。第2範囲RBは、第1範囲RAの少なくとも一部を含むY方向の範囲である。第2範囲RBの全体が第1範囲RAに含まれてもよく、第1範囲RAの全体が第2範囲RBに含まれてもよい。第1範囲RAおよび第2範囲RBが、それぞれの一部のみで重なってもよい。図5の例では、第2範囲RBの全体が第1範囲RAに含まれる。第2範囲RBは、第1範囲RAにある第1位置PAである。第1位置PAは、Y方向において第1範囲RAに含まれる任意の位置である。例えば、第1位置PAは、第1範囲RAのY方向の中央の位置である。
【0049】
第3範囲RCは、シート収容空間55が占めるY方向の範囲である。シート収容空間55は、最大定形シートを収容可能である。最大定形シートは、画像形成装置10において画像形成が可能な定形シートのうち、Y方向の幅が最大の定形シートである。最大定形シートのY方向の両端部に、一対のサイドガイド54が当接する。この位置にある一対のサイドガイド54のY方向の内側の空間が、シート収容空間55である。第3範囲RCは、給紙カセット51の内側におけるY方向の幅より少し狭い。
カセット前壁52の端部位置PBは、第3範囲RCのY方向の両端部の位置である。
【0050】
カセット前壁52のZ方向の高さは以下の通りである。第2範囲RBにおけるZ方向の高さより、第2範囲RBを除く第3範囲RCにおけるZ方向の高さが低い。図5の例では、第1位置PAにおけるZ方向の高さより、第1位置PAを除く第3範囲RCにおけるZ方向の高さが低い。第3範囲RCの中では、第1位置PAにおけるZ方向の高さが最も高い。端部位置PBにおけるZ方向の高さが、第1位置PAにおけるZ方向の高さより低い。第1位置PAから端部位置PBにかけて、Z方向の高さが直線状に低下する。
【0051】
無線タグTが配置される第1範囲RAのシートSの厚さは、他の部分に比べて厚い。シート束SSの最上層のシートSのZ方向の高さは、第1範囲RAにおいて高く、第1範囲RAを除く第3範囲RCにおいて低い。ピックアップローラ71が回転して、最上層のシートSが+W方向に供給される。カセット前壁52は、給紙カセット51の+W方向にある。カセット前壁52のZ方向の高さは、第1範囲RAの少なくとも一部を含む第2範囲RB(第1位置PA)において高く、第2範囲RBを除く第3範囲RCにおいて低い。シートSが+W方向に供給されるとき、シートSがカセット前壁52に衝突しにくい。シートSの供給不良が抑制される。給紙トレイ56に多量のシートSを積載しても、シートSの供給不良が抑制される。少量のシートSを多数回に分けて補充する必要がなくなり、ユーザの負担が軽減される。
【0052】
下面ガイド62の第4範囲RDが、以下のように定義される。
第4範囲RDは、第1範囲RAの少なくとも一部を含むY方向の範囲である。第4範囲RDの全体が第1範囲RAに含まれてもよく、第1範囲RAの全体が第4範囲RDに含まれてもよい。第1範囲RAおよび第4範囲RDが、それぞれの一部のみで重なってもよい。図5の例では、第4範囲RDの全体が第1範囲RAに含まれる。Y方向において、第4範囲RDは、第1範囲RAの中央にある。
下面ガイド62の端部位置PEは、第3範囲RCのY方向の両端部の位置である。
【0053】
下面ガイド62の-W方向の端部におけるZ方向の高さは以下の通りである。第4範囲RDにおけるZ方向の高さは同等である。第4範囲RDにおけるZ方向の高さより、第4範囲RDを除く第3範囲RCにおけるZ方向の高さが低い。第3範囲RCの中では、第4範囲RDにおけるZ方向の高さが最も高い。図5の例では、端部位置PEにおけるZ方向の高さが、第4範囲RDにおけるZ方向の高さより低い。第4範囲RDの両端部から端部位置PEにかけて、Z方向の高さが直線状に低下する。
【0054】
第3範囲RCの全体で、下面ガイド62の-W方向の端部におけるZ方向の高さは、カセット前壁52のZ方向の高さより低い。下面ガイド62の第4範囲RDにおけるZ方向の高さは、カセット前壁52の第1位置PAにおけるZ方向の高さより低い。下面ガイド62の端部位置PEにおけるZ方向の高さは、カセット前壁52の端部位置PBにおけるZ方向の高さより低い。
【0055】
シート束SSの最上層のシートSが、給紙カセット51から供給されて、搬送ガイド60に受け渡される。最上層のシートSのZ方向の高さは、第1範囲RAにおいて高く、第1範囲RAを除く第3範囲RCにおいて低い。搬送ガイド60の下面ガイド62のZ方向の高さは、第1範囲RAの少なくとも一部を含む第4範囲RDにおいて高く、第4範囲RDを除く第3範囲RCにおいて低い。下面ガイド62の-W方向の端部におけるZ方向の高さは、カセット前壁52のZ方向の高さより低い。給紙カセット51から供給されたシートSが、下面ガイド62の-W方向の端部に衝突しにくい。シートSの供給不良が抑制される。
【0056】
図6に示されるように、下面ガイド62の第4範囲RDに開口部63が形成される。分離ローラ73が、開口部63を通って下面ガイド62の+Z方向に突出する。Y方向において、第4範囲RDの幅は、分離ローラ73の幅より大きい。分離ローラ73の全体が第4範囲RDの内側に収容される。下面ガイド62のZ方向の高さは、第4範囲RDの全体で同等である。下面ガイド62から+Z方向への分離ローラ73の突出高さが、Y方向の全体で同等になる。
【0057】
図4に示されるように、下面ガイド62の+W方向に、搬送ガイド60の屈曲部65がある。下面ガイド62の+W方向の端部では、第3範囲RCにおけるZ方向の高さが同等である。下面ガイド62の+W方向の端部では、Y方向の中央部および両端部におけるZ方向の高さが同等である。
【0058】
給紙カセット51から搬送ガイド60に受け渡されるシートSのZ方向の高さは、第1範囲RAにおいて高く、第1範囲RAを除く第3範囲RCにおいて低い。シートSが下面ガイド62に沿って搬送される過程で、シートSの姿勢が矯正される。下面ガイド62の+W方向の端部において、シートSのZ方向の高さが、Y方向の全体で同等になる。この姿勢で、シートSが屈曲部65に進入する。シートSは、屈曲部65に沿って滑らかに変形しながら、屈曲部65を通過する。屈曲部65において、シートSが詰まりにくく、シートSにシワが発生しにくく、シートSから異音が発生しにくい。シートSの供給不良が抑制される。
【0059】
図5に示されるように、カセット前壁52のZ方向の高さは、第1位置PAにおいて高い。シートSが給紙カセット51から供給されるとき、シートSの下面とカセット前壁52の第1位置PAとが接触する可能性がある。
カセット前壁52の+W方向から見て、カセット前壁52の第1位置PAの形状は、円弧状などの弧状である。カセット前壁52の第1位置PAには、丸面取り等が施される。シートSがカセット前壁52に引っ掛かりにくい。シートSの供給不良が抑制される。
【0060】
図3に示されるシートSは、図5に示される給紙装置50において使用が推奨される正規シートである。正規シートは、Y方向の中央部における+X方向の端部に無線タグTを有するシートSである。正規シートの情報が、給紙トレイ56の上面等に表示される。画像形成装置10のユーザは、正規シートの表示を確認して、正規シートを給紙トレイ56の上面に充填する。給紙トレイ56の上面に載置されたシート束SSの高さは、Y方向の中央部において最も高くなる。
【0061】
ピックアップローラ71が、Y方向の中央部に配置される。ピックアップローラ71は、シート束SSの高さが最も高い部分に当接して、シートSを給紙カセット51から供給する。カセット前壁52の第2範囲RBは、無線タグTが占める第1範囲RAの少なくとも一部を含む。カセット前壁52のZ方向の高さは、第2範囲RBにおける高さより、第2範囲RBを除く第3範囲RCにおける高さが低い。シートSがカセット前壁52に衝突しにくい。下面ガイド62の第4範囲RDは、無線タグTが占める第1範囲RAの少なくとも一部を含む。下面ガイド62の-W方向の端部におけるZ方向の高さは、第4範囲RDにおける高さより、第4範囲RDを除く第3範囲RCにおける高さが低い。シートSが下面ガイド62に衝突しにくい。以上により、シートSの供給不良が抑制される。
【0062】
この給紙装置50において、Y方向の中央部以外に無線タグTを有する非正規シートを使用することも可能である。例えば、非正規シートとして、+Y方向の端部における+X方向の端部に無線タグTを有する第2シートを使用する場合がある。給紙トレイ56の上面に載置された第2シート束のZ方向の高さは、+Y方向の端部において高く、-Y方向の端部において低い。
【0063】
画像形成装置10のサービスマンが、給紙装置50の構成を変更する。
ピックアップローラ71は、Y方向に移動可能に形成される。サービスマンは、ピックアップローラ71を+Y方向の端部に移動させる。ピックアップローラ71は、第2シート束のZ方向の高さが最も高い部分に当接して、第2シートを給紙カセット51から+W方向に供給する。
【0064】
カセット前壁52は、給紙カセット51に対して着脱可能に形成される。サービスマンは、実施形態のカセット前壁52を、第2カセット前壁に置換する。第2カセット前壁の第2範囲は、無線タグTが占める第1範囲の少なくとも一部を含む。第2カセット前壁のZ方向の高さは、第2範囲における高さより、第2範囲を除く第3範囲RCにおける高さが低い。第2カセット前壁のZ方向の高さは、+Y方向の端部において高く、-Y方向の端部において低い。第2シートが第2カセット前壁に衝突しにくい。シートSの供給不良が抑制される。
【0065】
図4に示される下面ガイド62は、搬送ガイド60に対して着脱可能に形成される。サービスマンは、実施形態の下面ガイド62を、第2下面ガイドに置換する。第2下面ガイドの第4範囲は、無線タグが占める第1範囲の少なくとも一部を含む。第2下面ガイドの-W方向の端部におけるZ方向の高さは、第4範囲における高さより、第4範囲を除く第3範囲RCにおける高さが低い。第2下面ガイドの-W方向の端部におけるZ方向の高さは、+Y方向の端部において高く、-Y方向の端部において低い。第2シートが第2下面ガイドに衝突しにくい。シートSの供給不良が抑制される。
【0066】
サービスマンが給紙装置50の構成を変更する代わりに、制御部100が給紙装置50の構成を自動的に変更してもよい。給紙装置50は、シートSの無線タグTの位置を検知するセンサを有する。制御部100は、無線タグTのY方向の位置に合わせて、ピックアップローラ71をY方向に移動させる。制御部100は、無線タグTのY方向の位置に合わせて、カセット前壁52の第3範囲RCにおけるZ方向の高さを変化させる。制御部100は、無線タグTのY方向の位置に合わせて、下面ガイド62の第3範囲RCにおけるZ方向の高さを変化させる。これにより、シートSの供給不良が抑制される。
【0067】
前述された実施形態では、Y方向において第1範囲RAの中央部に、第2範囲RB(第1位置PA)および第4範囲RDがある。これに対して、第1範囲RAの中央部以外の位置に、第2範囲RBおよび第4範囲RDがあってもよい。第2範囲RBおよび第4範囲RDは、相互に異なる位置でもよい。
【0068】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、第1範囲RAの少なくとも一部を含む第2範囲RBにおけるZ方向の高さより第2範囲RBを除く第3範囲RCにおけるZ方向の高さが低い、カセット前壁52を持つ。これにより、シートSの供給不良を抑制することができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
PA…第1位置、RA…第1範囲、RB…第2範囲、RC…第3範囲、RD…第4範囲、S…シート、T…無線タグ、50…給紙装置、51…給紙カセット(カセット)、52…カセット前壁、55…シート収容空間、62…下面ガイド、65…屈曲部、90…無線タグ通信装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6