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特開2024-168816タイヤ空気圧検出システム及びそのボデー側無線機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168816
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】タイヤ空気圧検出システム及びそのボデー側無線機
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/04 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B60C23/04 150K
B60C23/04 170
B60C23/04 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085781
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】渡部 宣哉
(72)【発明者】
【氏名】福田 昌紘
(57)【要約】
【課題】車両への搭載性を向上させたタイヤ空気圧検出システムを提供する。
【解決手段】タイヤ空気圧検出システム100は、ボデー4と、ボデー4に対して取り付けられた複数のタイヤ2を備える車両HVにおいて、各タイヤ2の空気圧を検出する。タイヤ空気圧検出システム100は、タイヤ2にそれぞれ設置され、タイヤ2の空気圧を測定する圧力センサ11と、空気圧データを送信するタイヤ側無線機13と、を有する複数のタイヤ側装置10と、各タイヤ側装置10から送信される空気圧データを受信する1つのボデー側無線機20と、を含む。ボデー側無線機20は、複数のタイヤ側無線機13のうち受信に有利なタイヤ側無線機13が相互に異なる複数のアンテナ21a,21bと、複数のアンテナ21a,21bのうち空気圧データの受信に用いるアンテナを切り替え可能なスイッチ22と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボデー(4)と、前記ボデーに対して取り付けられた複数のタイヤ(2)を備える車両(HV)において、各前記タイヤの空気圧を検出するタイヤ空気圧検出システムであって、
前記タイヤにそれぞれ設置され、前記タイヤの空気圧を測定する圧力センサ(11)と、空気圧データを送信するタイヤ側無線機(13,313)と、を有する複数のタイヤ側装置(10)と、
各前記タイヤ側装置から送信される前記空気圧データを受信する複数の前記タイヤ側装置に対して共通のボデー側無線機(20)と、を含み、
前記ボデー側無線機は、
複数の前記タイヤ側無線機のうち受信に有利な前記タイヤ側無線機が相互に異なる複数のアンテナ(21a,21b)と、
複数の前記アンテナのうち前記空気圧データの受信に用いる前記アンテナを切り替え可能なスイッチ(22)と、を備えるタイヤ空気圧検出システム。
【請求項2】
前記ボデー側無線機は、前記車両の縦中心面(LP)に対して左又は右の一方へ偏心して配置され、
複数の前記アンテナは、
車幅方向(WD)に沿った成分を主偏波とする車幅軸アンテナ(21a)と、
車長方向(LD)に沿った成分を主偏波とする車長軸アンテナ(21b)と、を含む請求項1に記載のタイヤ空気圧検出システム。
【請求項3】
複数の前記タイヤは、
前記縦中心面に対して前記一方に配置された偏心側タイヤと、
前記偏心側タイヤとは前記縦中心面を挟んだ反対側に配置された反対側タイヤと、を含み、
前記ボデー側無線機は、
前記偏心側タイヤの前記タイヤ側装置が前記空気圧データを送信するタイミングでは、受信に用いる前記アンテナを前記車幅軸アンテナとし、
前記反対側タイヤの前記タイヤ側装置が前記空気圧データを送信するタイミングでは、受信に用いる前記アンテナを前記車長軸アンテナとする請求項2に記載のタイヤ空気圧検出システム。
【請求項4】
前記ボデー側無線機は、
初期状態において、複数の前記タイヤ側無線機のうち最も受信条件が悪い悪条件タイヤの前記タイヤ側無線機に対して最も有利な前記アンテナを受信に用い、
複数の前記タイヤのうち前記悪条件タイヤ以外の前記タイヤに対応した前記タイヤ側無線機との通信が不可である場合に、受信に用いる前記アンテナを、前記初期状態で用いた前記アンテナから別の前記アンテナに切り替える請求項1に記載のタイヤ空気圧検出システム。
【請求項5】
前記ボデー側無線機は、
導体パターン(72,82)によって形成された前記車長軸アンテナを含む基板(71,81)と、
前記車幅軸アンテナとして機能する、前記基板に対する垂直方向に沿って伸びる導体エレメント(73,83)と、を有する請求項2に記載のタイヤ空気圧検出システム。
【請求項6】
前記ボデー側無線機は、前記車両のピラー(6)に搭載されている請求項2に記載のタイヤ空気圧検出システム。
【請求項7】
各前記タイヤ側無線機は、
車幅方向(WD)に沿った成分を主偏波とするタイヤ側車幅軸アンテナ(313a)と、
タイヤ円周の法線方向に沿った成分を主偏波とするタイヤ側法線軸アンテナ(313b)と、を含み、
複数の前記タイヤのうち前輪タイヤの前記タイヤ側無線機は、前記前輪タイヤの回転中心に対する前記タイヤ側装置の位置に応じて、通信に用いるアンテナを前記タイヤ側車幅軸アンテナと前記タイヤ側法線軸アンテナとの間で切り替える請求項1に記載のタイヤ空気圧検出システム。
【請求項8】
複数の前記タイヤのうち後輪タイヤの前記タイヤ側無線機は、前記後輪タイヤの回転中心に対する前記タイヤ側装置の位置に関わらず、通信に用いるアンテナを前記タイヤ側法線軸アンテナに維持する請求項7に記載のタイヤ空気圧検出システム。
【請求項9】
前記ボデー側無線機は、
前記車両のドアを開閉するスマートシステム(90)と通信可能に構成され、
複数の前記タイヤのうちいずれかのタイヤに対応した前記タイヤ側無線機との通信が不可である場合に、前記スマートシステムに設けられた無線機であるスマート無線機(91L,91R)に、通信不可の前記タイヤ側無線機から送信される前記空気圧データの受信待ちを指示し、
受信待ちを指示された前記スマート無線機が前記空気圧データを受信した場合に、前記空気圧データを前記スマートシステムから取得する請求項1に記載のタイヤ空気圧検出システム。
【請求項10】
複数の前記タイヤは、前輪左タイヤ(2FL)、後輪左タイヤ(2RL)、前輪右タイヤ(2FR)及び後輪右タイヤ(2RR)を含み、
前記ボデー側無線機は、
前記車両のドアを開閉するスマートシステムであって、デジタルキーと通信する無線機であるスマート無線機(91L,91R)を車両の左右に一対備えるスマートシステム(90)と通信可能に構成され、
前記空気圧データの送信元である前記タイヤ側無線機に対応しているタイヤが、複数の前記タイヤのうちどの位置のタイヤであるかを特定するタイヤ特定機能を有し、
前記タイヤ特定機能において、前記ボデー側無線機と各前記タイヤ側無線機との間の通信における前記ボデー側無線機の受信レベルに基づき、前後輪を判定し、一対の前記スマート無線機と各前記タイヤ側無線機との間の通信における各前記スマート無線機の受信レベルに基づき、左右輪を判定する請求項1に記載のタイヤ空気圧検出システム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のボデー側無線機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書による開示は、車両におけるタイヤの空気圧を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両における各タイヤの位置を特定し、各タイヤの空気圧を車両の乗員に提示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-196007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、空気圧データ信号を受信する受信手段が、タイヤ毎にそれぞれ個別に対応して設置されている。このため、例えば受信手段の製造コストが増大したり、車両への設置作業が煩雑になる等、車両への搭載に適しているとはいえなかった。
【0005】
この明細書の開示による目的のひとつは、車両への搭載に適したタイヤ空気圧検出システム及びそのボデー側無線機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された態様のひとつは、ボデー(4)と、ボデーに対して取り付けられた複数のタイヤ(2)を備える車両(HV)において、各タイヤの空気圧を検出するタイヤ空気圧検出システムであって、
タイヤにそれぞれ設置され、タイヤの空気圧を測定する圧力センサ(11)と、空気圧データを送信するタイヤ側無線機(13,313)と、を有する複数のタイヤ側装置(10)と、
各タイヤ側装置から送信される空気圧データを受信する複数のタイヤ側装置に対して共通のボデー側無線機(20)と、を含み、
ボデー側無線機は、
複数のタイヤ側無線機のうち受信に有利なタイヤ側無線機が相互に異なる複数のアンテナ(21a,21b)と、
複数のアンテナのうち空気圧データの受信に用いるアンテナを切り替え可能なスイッチ(22)と、を備える。
【0007】
また、開示された態様の他のひとつは、上記のタイヤ空気圧検出システムにおけるボデー側無線機である。
【0008】
これらの態様によると、ボデー側無線機に、スイッチによって切り替え可能なアンテナであって、複数のタイヤ側無線機のうち受信に有利なタイヤ側無線機が相互に異なる複数のアンテナが設けられている。こうしてタイヤ側無線機から送信される空気圧データを極力受信可能となるようにアンテナを切り替える。これにより、タイヤ毎に個別に受信手段を設けることを抑制しつつ、空気圧データの伝搬レベルを維持できる。したがって、車両への搭載に適したタイヤ空気圧検出システムないしボデー側無線機を実現することが可能となる。
【0009】
なお、特許請求の範囲等に含まれる括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】空気圧検出システムの車両への搭載状態を模式的に示す上面図。
図2】タイヤ側装置の概略的構成を示す構成図。
図3】ボデー側無線機の概略的構成を示す構成図。
図4】複数のアンテナの構成例を示す斜視図。
図5】複数のアンテナの構成例を示す斜視図。
図6】前輪右タイヤからの受信レベルを示すグラフ。
図7】後輪右タイヤからの受信レベルを示すグラフ。
図8】前輪左タイヤからの受信レベルを示すグラフ。
図9】後輪左タイヤからの受信レベルを示すグラフ。
図10】制御ユニットの機能的構成を示す構成図。
図11】アンテナの切り替え例を説明する図。
図12】ボデー側無線機による処理の例を示すフローチャート。
図13】タイヤ側無線機の概略的構成を示す構成図。
図14】アンテナの切り替え例を説明する図。
図15】空気圧検出システム及びスマートシステムの車両への搭載状態を模式的に示す上面図。
図16】処理の例を示すフローチャート。
図17】処理の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態によるタイヤ空気圧検出システム100は、複数のタイヤ2を備える車両HVにおいて用いられる。例えば車両HVは、導体層を含むボデー4に対して取り付けられる、前輪左タイヤ2FL、後輪左タイヤ2RL、前輪右タイヤ2FR、後輪右タイヤ2RRの合計4つのタイヤ2で走行する四輪自動車であってよい。これらのタイヤ2は、消耗度合いを相互に均一化すること等のために、ローテーションされることがある。
【0013】
このような車両HVにおいては、JIS D0102に従って縦中心面LPが定義され得る。縦中心面LPは、直進姿勢にある自動車(車両HV)の左右車輪間の中点を通る鉛直面として定義される。なお、本実施形態において、前、後、上、下、左及び右が示す各方向は、水平面上の車両を基準として定義される。ここで、前後方向は車長方向LD、左右方向は車幅方向WD、上下方向は車高方向HDと言い換えることができる。
【0014】
タイヤ空気圧検出システム100は、車両HVの各タイヤ2の空気圧を検出する。タイヤ空気圧検出システム100は、検出情報を集約し、車両HVの警報システム、運転システム等へ出力することが可能である。例えば、警報システムは、空気圧が経時的に低下した場合や、タイヤ2がパンクした場合などに、その旨を車両HVのドライバに警報するようにしてもよい。あるいは、運転システムは、空気圧が経時的に低下した場合や、タイヤ2がパンクした場合などに、車両HVを安全な場所に自動停止させるようにしてもよい。タイヤ空気圧検出システム100は、複数のタイヤ側装置10及び1つのボデー側無線機20を含む構成である。
【0015】
タイヤ側装置10は、車両HVのタイヤ2に対してそれぞれ1つずつ個別に対応するように、各タイヤ2に設置されている。各タイヤ側装置10FL,10RL,10FR,10RRの構成は、各タイヤ2FL,2RL,2FR,2RRに対して共通の構成であるため、以下、タイヤ2及びタイヤ側装置10の1つのペアについて代表して説明する。
【0016】
タイヤ側装置10は、例えば検出対象のタイヤ2のタイヤバルブと一体的に構成され、タイヤ2のサイドウォール部分に取り付けられる。図2に示すように、タイヤ側装置10は、圧力センサ11、マイコン12及びタイヤ側無線機13を含む構成である。圧力センサ11は、検出対象のタイヤの空気圧を測定する。
【0017】
マイコン12は、電池14から電力を供給されて動作し、タイヤ側装置10を制御するマイクロコンピュータである。マイコン12は、圧力センサ11から出力される空気圧を、タイヤ側装置10ないしタイヤ2に関連付けられたタイヤIDと共に、タイヤ側無線機13の送信に好適な形式の空気圧データに変換する。マイコン12は、この空気圧データをボデー側無線機20へ向けて、タイヤ側無線機13に送信させる。また、マイコン12は、空気圧データの送信に対するボデー側無線機20の応答を、ボデー側無線機20を通じて受信し、ボデー側無線機20との通信状態を識別する。
【0018】
タイヤ側無線機13は、ボデー側無線機20とのコネクションを確立し、マイコン12から提供される空気圧データを、例えばBLEの近距離通信規格に沿って2.4GHz帯の電波にのせて送信する通信機である。BLEは、Bluetooth Low Energy(Bluetoothは登録商標)の略である。こうしてタイヤ側無線機13は、一定の周期で空気圧データを送信する(すなわち、定期送信する)。第1実施形態のタイヤ側無線機13は、1つのアンテナを有するものとする。
【0019】
ボデー側無線機20は、複数のタイヤ2FL,2RL,2FR,2RRないしタイヤ側装置10FL,10RL,10FR,10RRに対して共通に設けられ、車両HVのボデー4側に搭載される通信機である。ボデー側無線機20は、車両HVの縦中心面LPに対して左又は右の一方へ偏心して配置される。例えばボデー側無線機20は、車両HVのピラー(Aピラー、Bピラー、Cピラー6)等の車両HVのボデー側面部5に搭載されている。ここでのピラーとは、車両HVのボデー天井部7を支える柱を示している。Aピラーは前から1番目のピラーを、Bピラーは前から2番目のピラーを、Cピラー6は前から3番目(換言すると後から1番目)のピラーを、それぞれ示している。
【0020】
特に本実施形態では、ボデー側無線機20は、車両HVのCピラー6のうち、右側のCピラー6に搭載されている。すなわち、ボデー側無線機20は、車両HVの縦中心面LPに対して右側へ偏心して配置されている。つまり、複数のタイヤ2のうち前輪右タイヤ2FR及び後輪右タイヤ2RRが、ボデー側無線機20の偏心側に位置する偏心側タイヤに相当する。複数のタイヤ2のうち前輪左タイヤ2FLと後輪左タイヤ2RLが、偏心側タイヤとは縦中心面LPを挟んだ反対側に位置する反対側タイヤに相当する。また、右側のCピラー6への搭載の結果、複数のタイヤ2のうち、後輪右タイヤ2RRがボデー側無線機20に対して最も近い位置に配置されている。そして、前輪左タイヤ2FLがボデー側無線機20に対して最も遠い位置に配置されている。
【0021】
ボデー側無線機20は、各タイヤ側無線機13FL,13RL,13FR,13RRに対応して、例えばBLEの近距離通信規格に沿って2.4GHz帯の電波にのせて、空気圧データを受信することが可能である。図3に示すように、ボデー側無線機20は、複数のアンテナ21a,21b、スイッチ22、無線IC23及び制御ユニット24を含む構成である。
【0022】
複数のアンテナ21a,21bは、車幅軸アンテナ21a及び車長軸アンテナ21bを含む。車幅軸アンテナ21aは、車幅方向WDに沿った成分の偏波を主偏波とするアンテナである。車幅方向WDに沿った成分は、前後方向(車両HVの進行方向)に対して垂直かつ、地面(水平面)に対して水平な方向に沿った成分と言い換えることができる。
【0023】
車長軸アンテナ21bは、車長方向LDに沿った成分の偏波を主偏波とするアンテナである。車長方向LDに沿った成分は、前後方向(車両HVの進行方向)に対して水平かつ、地面(水平面)に対して水平な方向に沿った成分と言い換えることができる。
【0024】
複数のアンテナ21a,21bは、例えば基板71,81及び導体エレメント73,83を用いて一体的に形成されている。例えば基板71,81は、ガラスエポキシ樹脂等により形成された絶縁層と、当該絶縁層の表面にプリントされた導体パターン72,82とを有する平板状の板部材である。導体エレメント73,83は、基板71,81と接合された導体により形成された棒状部材である。
【0025】
より詳細に、図4に示す構成例では、車長軸アンテナ21bは、車長方向LD及び車高方向HDに沿って配置される基板71表面において給電点から車長方向LDに沿って直線状に伸びる導体パターン72として形成されている。車幅軸アンテナ21aは、基板71の別の給電点に接続され、基板71に対する垂直方向、すなわち車幅方向WDに沿って当該基板71から直線状に伸びる導体エレメント73として形成されている。
【0026】
また、図5に示す構成例では、車長軸アンテナ21bは、車長方向LD及び車高方向HDに沿って配置される基板81表面において給電点から車長方向LDに沿って直線状に伸びる第1部位と、第1部位の先端から車高方向HDに沿って直線状に延びる第2部位とからなる、T字状の導体パターン82として形成されている。車幅軸アンテナ21aは、基板81の別の給電点に接続され、基板81に対する垂直方向、すなわち車幅方向WDに沿って当該基板81から直線状に伸びる第1部位と、第1部位の先端から車長方向LDに沿って直線状に延びる第2部位とからなる、T字状の導体エレメント83として形成されている。
【0027】
ここで、右側のCピラー6から送信される各偏波の伝搬特性について、本発明者らが検証した結果について説明する。まず、車幅軸の偏波は、ボデー側面部5の反射が小さいため、車両HV左側に対して、車両右側の伝搬が強い特性をもつ。また、車幅軸の偏波は、ボデー天井部7の反射が大きいため、車両HV下側への伝搬が強い特性をもつ。
【0028】
次に、車長軸の偏波は、ボデー側面部5の反射が大きいため、車両右側に対して、車両左側の伝搬が強い特性をもつ。また、車幅軸の偏波は、ボデー天井部7の反射が大きいため、車両下側への伝搬が強い特性をもつ。
【0029】
さらに、車幅軸の偏波及び車長軸の偏波の他、車高方向HDに沿った成分をもつ車高軸の偏波が考えられる。車高軸の偏波は、ボデー側面部5の反射が大きいため、車両右側に対して、車両左側の伝搬が強い特性をもつ。また、車幅軸の偏波は、ボデー天井部7の反射が小さいため、車両下側の伝搬が弱い特性をもつ。
【0030】
このような伝搬特性の結果、図6に示すように、前輪右タイヤ2FRのタイヤ側無線機13FRにおける全周平均の受信レベルは、車長軸及び車高軸よりも、車幅軸の偏波の方が良好である。また、図7に示すように、後輪右タイヤ2RRのタイヤ側無線機13RRにおける全周平均の受信レベルは、車長軸及び車高軸よりも、車幅軸の偏波の方が良好である。また、図8に示すように、前輪左タイヤ2FLのタイヤ側無線機13FLにおける全周平均の受信レベルは、車幅軸及び車高軸よりも、車長軸の偏波の方が良好である。また、図9に示すように、後輪左タイヤ2RLのタイヤ側無線機13RLにおける全周平均の受信レベルは、車幅軸及び車高軸よりも、車長軸の偏波の方が良好である。
【0031】
故に、ボデー側無線機20において車幅軸アンテナ21aと車長軸アンテナ21bとは、複数のタイヤ側無線機13のうち、受信に有利なタイヤ側無線機が相互に異なる設計となっている。具体的に、車幅軸アンテナ21aは、車長軸アンテナ21bよりも、前輪右タイヤ2FRのタイヤ側無線機13FR及び後輪右タイヤ2RRのタイヤ側無線機13RR(すなわち偏心側タイヤのタイヤ側無線機)からの受信に有利である。車長軸アンテナ21bは、前輪左タイヤ2FLのタイヤ側無線機13FL及び後輪左タイヤ2RLのタイヤ側無線機13RL(すなわち反対側タイヤのタイヤ側無線機)からの受信に有利である。
【0032】
スイッチ22は、無線IC23のアンテナ接続端子に電気的に接続されるアンテナを切り替えるためのスイッチ回路である。スイッチ22は、制御ユニット24からの電気信号に基づき、送信ないし受信に用いるアンテナを、車幅軸アンテナ21aと車長軸アンテナ21bとの間で切り替えることができる。なお、スイッチ22は、無線IC23に内蔵されていてもよい。
【0033】
無線IC23は、送信信号及び受信信号に対する信号処理を実施するための集積回路モジュールである。無線IC23は、例えば変調、復調、周波数変換、増幅等を行う。無線IC23は、接地端子、アンテナ接続端子、及び入出力端子を備える。接地端子は、ボデー側無線機20の地板と電気的に接続される端子である。アンテナ接続端子は、高周波信号を送受信するための端子である。入出力端子は、送受信対象となる情報を無線IC23の外部に対して入力及び出力するための端子である。
【0034】
制御ユニット24は、例えばメモリ及びプロセッサを少なくとも1つずつ備えたマイクロコンピュータを主体として構成されている。メモリは、プロセッサにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも1種類の非遷移的実体的記憶媒体であってよい。さらにメモリとして、例えばRAM(Random Access Memory)等の書き換え可能な揮発性の記憶媒体が設けられていてもよい。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち、少なくとも1種類をコアとして含む。
【0035】
制御ユニット24は、プロセッサがプログラムを実行することにより実現される複数の機能部を有する。図10に示すように、制御ユニット24は、タイヤ特定部24a及び切替制御部24bを有する。
【0036】
タイヤ特定部24aは、無線IC23から空気圧データの受信情報を取得し、空気圧データの送信元であるタイヤ側無線機13に対応しているタイヤが、車両HVの複数のタイヤ2のうちどの位置のタイヤであるかを特定する。換言すると、タイヤIDとタイヤの位置とを紐づけて、メモリに非一時的に記憶する。こうしたタイヤの特定処理は、タイヤ2がローテーションされた可能性がある場合に実行されることが好ましい。例えば、車両HVのエンジンスイッチがオフ状態となった場合に、ローテーションが実施される可能性がある。このため、タイヤ特定部24aは、エンジンスイッチがオフ状態からオン状態となった直後に、タイヤの特定処理を実行する。
【0037】
切替制御部24bは、タイヤの特定処理の完了後、状況に応じて通信に使用するアンテナが切り替わるように、スイッチ22を制御する。具体的に図11に示すように、切替制御部24bは、偏心側タイヤのタイヤ側装置10FR,10RRが空気圧データを送信するタイミングでは、受信に用いるアンテナを車幅軸アンテナ21aとする。また、切替制御部24bは、反対側タイヤのタイヤ側装置10FL,10RLが空気圧データを送信するタイミングでは、受信に用いるアンテナを車長軸アンテナ21bとする。
【0038】
より詳細に、切替制御部24bは、アンテナの切り替えタイミングを決定すべく、各タイヤ側無線機13FL,13RL,13FR,13RRから空気圧データが送信されるタイミングを予測する。切替制御部24bは、予測を行うために、無線IC23から取得される空気圧データと、タイヤ特定部24aが特定したタイヤIDとタイヤの位置関係とに基づき、偏心側タイヤのタイヤ側無線機13FR,13RRにおける送信タイミングと、反対側タイヤのタイヤ側無線機13FL,13RLにおける送信タイミングとを特定する。さらに、切替制御部24bは、複数回に亘って送信タイミングを特定することにより、各タイヤ側無線機13FL,13RL,13FR,13RRから定期送信される空気圧データの送信間隔を、特定する。
【0039】
切替制御部24bは、各タイヤ側無線機13FL,13RL,13FR,13RRについて、送信タイミング及び送信間隔を特定することにより、次の送信タイミングを予測することができる。そして、切替制御部24bは、予測した送信タイミングに合わせて、受信に用いるアンテナを周期的に切り替える。
【0040】
なお、図11では、説明の簡略化のため、前輪右タイヤ2FR及び後輪右タイヤ2RRのタイミングが同じであるかのように、また、前輪左タイヤ2FL及び後輪左タイヤ2RLのタイミングが同じであるかのように、図示がなされている。しかし実際は、前輪右タイヤ2FRのタイミングと後輪右タイヤ2RRとのタイミングは異なっており、また、前輪左タイヤ2FLのタイミングと後輪左タイヤ2RLとのタイミングは異なっている。このため、切替制御部24bは、4つのタイヤ側無線機13FL,13RL,13FR,13RRの送信タイミングにそれぞれ合わせて、受信に用いるアンテナを切り替えればよい。例えば、4つのタイヤ側無線機13FL,13RL,13FR,13RRの送信間隔が同じで、前輪右タイヤ2FR、前輪左タイヤ2FL、後輪右タイヤ2RR、後輪左タイヤ2RLの順に送信がなされる場合では、切替制御部24bは、定期送信の1周期の間で4回アンテナの切り替えを実行する。
【0041】
以上説明した第1実施形態によると、ボデー側無線機20に、スイッチ22によって切り替え可能なアンテナであって、複数のタイヤ側無線機13のうち受信に有利なタイヤ側無線機13が相互に異なる複数のアンテナ21a,21bが設けられている。こうしてタイヤ側無線機13から送信される空気圧データを極力受信可能となるようにアンテナを切り替える。これにより、タイヤ2毎に個別に受信手段を設けることを抑制しつつ、空気圧データの伝搬レベルを維持できる。したがって、車両HVへの搭載に適したタイヤ空気圧検出システム100ないしボデー側無線機20を実現することが可能となる。
【0042】
また、第1実施形態によると、ボデー側無線機20は、車両HVの縦中心面LPに対して左又は右の一方へ偏心して配置される。そして、複数のアンテナは、車幅方向WDに沿った成分を主偏波とする車幅軸アンテナ21aと、車長方向LDに沿った成分を主偏波とする車長軸アンテナ21bと、を含む。ボデー4側の無線機20を偏心して配置させることにより、ボデー4での反射等を利用して、車幅軸の偏波と車長軸の偏波とで、相互に異なる伝搬特性、すなわち各タイヤ側無線機13FL,13RL,13FR,13RRに対して異なる優位性を生じさせることができる。
【0043】
また、第1実施形態によると、複数のタイヤ2は、縦中心面LPに対してボデー側無線機20の偏心側に配置された偏心側タイヤと、偏心側タイヤとは縦中心面LPを挟んだ反対側に配置された反対側タイヤと、を含む。そして、ボデー側無線機20は、偏心側タイヤのタイヤ側装置10FR,10RRが空気圧データを送信するタイミングでは、受信に用いるアンテナを車幅軸アンテナ21aとする。反対側タイヤのタイヤ側装置10FL,10RLが空気圧データを送信するタイミングでは、受信に用いるアンテナを車長軸アンテナ213bとする。これにより、偏心側タイヤの空気圧データも反対側タイヤの空気圧データも高い受信レベルで受信することができる。
【0044】
また、第1実施形態によると、ボデー側無線機20は、導体パターン72,82によって形成された車長軸アンテナ21bを含む基板71,81と、車幅軸アンテナ21aとして機能する、基板71,81に対する垂直方向に沿って伸びる導体エレメント73,83と、を有する。2つのアンテナ21a,21bを一体的に構成することができるので、車両HVへの搭載性はさらに高まる。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態は第1実施形態の変形例である。第2実施形態について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。第2実施形態の切替制御部は、初期状態において、複数のタイヤ側無線機13のうち、最も受信条件が悪い悪条件タイヤのタイヤ側無線機13FLに対して最も有利なアンテナを受信に用いる。
【0046】
ここで、図6~9に示すように、各タイヤ2FL,2RL,2FR,2RR毎の受信レベルを比較すると、ボデー側無線機20に対して最も遠い位置に配置されている前輪左タイヤ2FLのタイヤ側無線機13FLの受信レベルが平均的に低い。このため、本実施形態では、前輪左タイヤ2FLが最も受信条件が悪い悪条件タイヤであるといえる。このため、図12に示すように、切替制御部24bは、初期状態において、前輪左タイヤ2FLのタイヤ側無線機13FLに対して最も有利な車長軸アンテナ21bを受信に用いる(S201)。
【0047】
そして、切替制御部24bは、所定の周期ないし所定のトリガに基づき、各タイヤ2のタイヤ側無線機13との通信状況を確認する(S202)。悪条件タイヤ以外のタイヤ2RL,2FR,2RRにおいて通信不可のタイヤ側無線機13が存在しない場合(S202のNoの場合)、切替制御部24bは、初期条件を維持する(S203)。すなわち、切替制御部24bは、アンテナを切り替えずに、車長軸アンテナ21bを受信に用いる。
【0048】
悪条件タイヤ以外のタイヤ2RL,2FR,2RRにおいて通信不可のタイヤ側無線機13が存在する場合(S202のYesの場合)、切替制御部24bは、初期条件のアンテナを変更する。すなわち、切替制御部24bは、受信に用いるアンテナを車幅軸アンテナ21aに切り替えて、通信状況の改善を試みる。
【0049】
以上説明した第2実施形態によると、ボデー側無線機20は、初期状態において、複数のタイヤ側無線機13のうち最も受信条件が悪い悪条件タイヤのタイヤ側無線機13FLに対して最も有利なアンテナ21bを受信に用いる。そして、ボデー側無線機20は、複数のタイヤ2のうち悪条件タイヤ以外のタイヤ2FR,2RR,2RLに対応したタイヤ側無線機13FR,13RR,13RLとの通信が不可である場合に、受信に用いるアンテナを、初期状態で用いたアンテナ21bから別のアンテナ21aに切り替える。実際の通信状況に応じて切り替えが実施されるので、通信の継続性を高めることができる。
【0050】
(第3実施形態)
図13,14に示すように、第3実施形態は第1実施形態の変形例である。第3実施形態について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0051】
第3実施形態のタイヤ側無線機313は、図13に示すように、複数のアンテナ313a,313b、スイッチ313c、無線IC313d及び制御ユニット313eを含む構成である。複数のアンテナ313a,313bは、車幅軸の偏波を主偏波とするタイヤ側車幅軸アンテナ313aと、タイヤ円周方向の法線方向(換言すると径方向)の偏波を主偏波とするタイヤ側法線軸アンテナ313bと、を含んでいる。スイッチ313c及び無線IC313dは、第1実施形態にて説明したボデー側無線機20の構成と同様である。
【0052】
制御ユニット313eは、タイヤ2の回転中心CRに対するタイヤ側装置10ないしタイヤ側無線機313の位置に応じて、複数のアンテナ313a,313bのうち、ボデー側無線機20との通信に有利なアンテナに切り替える。タイヤ側装置10ないしタイヤ側無線機313の位置は、ジャイロセンサ等のセンサを用いて判定してもよく、ボデー側無線機20からの応答信号の受信レベルの変化に基づいて判定してもよい。
【0053】
具体的に図14に示すように、前輪については、タイヤ側装置10ないしタイヤ側無線機313の位置が回転中心CRに対して前方及び下方に位置する場合には、法線軸アンテナ313bを通信に用いる(状態C1)。また、タイヤ側装置10ないしタイヤ側無線機313の位置が回転中心CRに対して後方及び上方に位置する場合には、車幅軸アンテナ313aを通信に用いる(状態C2)。
【0054】
後輪については、タイヤ2の回転中心CRに対するタイヤ側装置10ないしタイヤ側無線機313の位置に関わらず、常に法線軸アンテナ313bを通信に用いればよい。
【0055】
以上説明した第3実施形態によると、各タイヤ側無線機313は、車幅方向WDに沿った成分を主偏波とするタイヤ側車幅軸アンテナ313aと、タイヤ円周の法線方向に沿った成分を主偏波とするタイヤ側法線軸アンテナ313bと、を含む。複数のタイヤ2のうち前輪タイヤのタイヤ側無線機313は、前輪タイヤの回転中心CRに対するタイヤ側装置10の位置に応じて、通信に用いるアンテナをタイヤ側車幅軸アンテナ313aとタイヤ側法線軸アンテナ313bとの間で切り替える。また、複数のタイヤ2のうち後輪タイヤのタイヤ側無線機313は、後輪タイヤの回転中心CRに対するタイヤ側装置10の位置に関わらず、通信に用いるアンテナをタイヤ側法線軸アンテナ313bに維持する。このように、タイヤ側無線機313のアンテナ放射軸を最適化することにより、伝搬レベルの維持はさらに容易なものとなる。
【0056】
(第4実施形態)
図15,16に示すように、第4実施形態は第1実施形態の変形例である。第4実施形態について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0057】
第4実施形態のタイヤ空気圧検出システム100は、システム間の通信によってスマートシステム90と連携可能に構成されている。ここでの通信は、例えばController Area Network(CANは登録商標)等の車内LANを用いて行われる。
【0058】
図15に示すようにスマートシステム90は、タイヤ空気圧検出システム100と同様にBLEの近距離通信規格を用いて、車両HVのドアを開閉するデジタルキーシステムである。スマートシステム90は、複数のスマート無線機91R,91L及び制御装置92を含む構成である。スマート無線機91R,91Lは、左右の各ドアハンドルにそれぞれ内蔵され、スマートキーとの通信を行う。制御装置92は、各スマート無線機91R,91Lを制御し、また、スマート無線機91R,91Lとスマートキーとの通信信号に応じて車両HVのドアの開閉を制御する。
【0059】
タイヤ空気圧検出システム100においてボデー側無線機20の制御ユニット24は、スマートシステム90の制御装置92と通信可能となっている。図16に示すように、このような構成において、所定の周期ないし所定のトリガに基づいて、制御ユニット24の切替制御部24bは、通信不可のタイヤ側無線機13が存在するか否かを判断する(S401)。S401でNoの場合、切替制御部24bは、スマートシステム90と連携しないことを決定する(S402)。
【0060】
S401でYesの場合、切替制御部24bは、通信不可のタイヤ側無線機13が前輪右タイヤ2FR又は後輪右タイヤ2RRのものであるか否かを判断する(S403)。S403でYesの場合、切替制御部24bは、制御装置92に対して、右ドアハンドルに搭載されたスマート無線機91Rによる通信不可のタイヤ側無線機13から送信される空気圧データの受信待ちを指示する(S404)。S404でNoの場合、すなわち通信不可のタイヤ側無線機13が前輪左タイヤ2FL又は後輪左タイヤ2RLのものである場合、切替制御部24bは、制御装置92に対して、左ドアハンドルに搭載されたスマート無線機91Lによる通信不可のタイヤ側無線機13から送信される空気圧データの受信待ちを指示する(S405)。
【0061】
そして、制御装置92が受信待ち状態のスマート無線機91R,91Lが空気圧データを受信したか否かを判断する(S406)。空気圧データを受信できた場合、切替制御部24bは、制御装置92から空気圧データを取得する(S407)。
【0062】
以上説明した第4実施形態によると、ボデー側無線機20は、車両HVのドアを開閉するスマートシステム90と通信可能に構成される。ボデー側無線機20は、複数のタイヤ2のうちいずれかのタイヤに対応したタイヤ側無線機13との通信が不可である場合に、スマートシステム90に設けられた無線機であるスマート無線機91L又は91Rに、通信不可のタイヤ側無線機13から送信される空気圧データの受信待ちを指示する。ボデー側無線機20は、受信待ちを指示されたスマート無線機91L又は91Rが空気圧データを受信した場合に、空気圧データをスマートシステム90から取得する。スマートシステム90の無線機91L又は91Rも活用することにより、空気圧データの取得率を高めることができる。
【0063】
(第5実施形態)
図17に示すように、第5実施形態は第4実施形態の変形例である。第5実施形態について、第4実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0064】
第5実施形態のタイヤ空気圧検出システム100においてタイヤ特定部24aは、スマートシステム90と連携してタイヤ2を特定する。具体的に、タイヤ特定部24aは、ボデー側無線機20と各タイヤ側無線機13FL,13RL,13FR,13RRとの通信における、ボデー側無線機20の受信レベルのタイヤID毎の全周平均値を取得する(S501)。受信レベルの全周平均値とは、回転するタイヤ2において回転中心CRに対するタイヤ側装置10の位置に依存して変化してしまう受信レベルを、全周平均とみなせる程度に平均化した値である。全周平均値は、例えば車両HVの走行中に測定した受信レベルデータを平均化することにより得られる。
【0065】
次に、タイヤ特定部24aは、前後輪判定を実行する(S502)。具体的に、タイヤ特定部24aは、空気圧データに含まれるタイヤID間で、全集平均値を比較する。図6~9に示すように、ボデー側無線機20の受信レベルは、前輪に対して後輪が高い傾向がある。この傾向を利用して、4つの全集平均値のうち受信レベルが高い2つのタイヤIDが、後輪タイヤとして特定される。
【0066】
次に、タイヤ特定部24aは、スマートシステム90と各タイヤ側無線機13FL,13RL,13FR,13RRとの通信における、右のスマート無線機91R,91Lの受信レベルのタイヤID毎の全周平均値及び左のスマート無線機91R,91Lの受信レベルのタイヤID毎の全周平均値を取得する(S503)。
【0067】
次に、タイヤ特定部24aは、左右輪判定を実行する(S504)。具体的に、タイヤ特定部24aは、同じタイヤIDについて、右のスマート無線機91Rの全集平均値と、左のスマート無線機91Lの全集平均値とを比較する。左の全集平均値よりも右の全集平均値が大きなタイヤIDは、右側タイヤのものとして特定される。右の全集平均値よりも左の全集平均値が大きなタイヤIDは、左側タイヤのものとして特定される。
【0068】
タイヤ特定部24aは、このような前後輪判定と左右輪判定とを組み合わせることで、4つのタイヤ2FL,2RL,2FR,2RRをすべて特定する。タイヤ特定部24aは、この結果をメモリに非一時的に記憶させる(S505)。
【0069】
以上説明した第5実施形態によると、ボデー側無線機20は、車両HVのドアを開閉するスマートシステムであって、デジタルキーと通信する無線機であるスマート無線機91L,91Rを車両HVの左右に一対備えるスマートシステム90と通信可能に構成される。ボデー側無線機20は、空気圧データの送信元であるタイヤ側無線機13に対応しているタイヤが、複数のタイヤ2のうちどの位置のタイヤであるかを特定するタイヤ特定機能を有する。ボデー側無線機20は、タイヤ特定機能において、ボデー側無線機20と各タイヤ側無線機13FL,13RL,13FR,13RRとの間の通信におけるボデー側無線機20の受信レベルに基づき、前後輪を判定する。さらにボデー側無線機20は、一対のスマート無線機91L,91Rと各タイヤ側無線機13FL,13RL,13FR,13RRとの間の通信における各スマート無線機91L,91Rの受信レベルに基づき、左右輪を判定する。スマートシステム90を活用してタイヤの特定精度を高めることにより、空気圧の検出精度を向上させることができる。
【0070】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0071】
他の実施形態として、タイヤ空気圧検出システム100及びスマートシステム90に用いられる通信に、BLE以外の別の通信規格が用いられてもよく、別の周波数帯が用いられてもよい。
【0072】
他の実施形態として、タイヤ空気圧検出システム100が検出するタイヤ2の個数は、4つ以外であってもよい。例えば、前輪が1輪であり、後輪が2輪である3輪の車両にタイヤ空気圧検出システム100を適用してもよい。また例えば、大型トラック等の6輪又は8輪の車両にタイヤ空気圧検出システム100を適用してもよい。また、車両が備えるタイヤ2のうち、2つ以上のタイヤ2にタイヤ空気圧検出システムが適用されていればよく、全てのタイヤ2に対してタイヤ空気圧検出システム100が適用されていなくてもよい。
【0073】
他の実施形態として、ボデー側無線機20は、Cピラー6以外に配置されてもよく、また、車両左側に配置されてもよい。
【0074】
他の実施形態として、ボデー側無線機20にて切り替え可能となるアンテナは、3つ以上であってもよい。例えば、車幅軸アンテナ21a及び車長軸アンテナ21bに加えて、車高方向HDに沿った偏波を主偏波とする車高軸アンテナが追加されてもよい。
【0075】
他の実施形態として、ボデー側無線機20にて切り替え可能となる複数のアンテナは、ボデー4の形状に対して最適化された、車長方向LD、車幅方向WD及び車高方向HDに対する斜め方向成分を主偏波とするアンテナを含んでいてもよい。
【0076】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウエア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウエア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0077】
2:タイヤ、4:ボデー、10:タイヤ側装置、11:圧力センサ、13,313:タイヤ側無線機、20:ボデー側無線機、21a,21b:アンテナ、22:スイッチ、HV:車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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