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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016882
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】サービス情報提供通信システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240201BHJP
   E04H 3/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G08G1/09 F
E04H3/02 C
E04H3/02 D
E04H3/02 B
E04H3/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119152
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】多々良 直久
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181EE10
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181KK01
5H181KK03
5H181KK04
5H181KK06
5H181MC06
(57)【要約】
【課題】自動車に装備された光通信装置を利用してサービス提供所におけるサービス情報を送信することにより、自動車において大容量の情報をリアルタイムで受信するとともに、光通信装置の有効利用を図り、光通信装置を普及させる。
【解決手段】自動車Vに配設された車両側光通信装置1と、サービスを提供するサービス提供所(レストラン)SS1に配設された店舗側光通信装置2とで光通信を行い、店舗側光通信装置2から車両側光通信装置1に光通信によりサービス情報を提供する。店舗側光通信装置2は通信接続された車両側光通信装置1が配設されている車両Vの情報に基づいてサービス提供所SS1に来所する車両Vに対して光通信によりサービス情報を提供する。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配設された車両側光通信装置と、サービスを提供する店舗等のサービス提供所に配設された店舗側光通信装置とで光通信を行い、前記店舗側光通信装置から前記車両側光通信装置に光通信によりサービス情報を提供するように構成され、前記店舗側光通信装置は通信接続された車両側光通信装置が配設されている車両の情報を取得し、取得した情報が所定の条件のときに光通信により当該車両にサービス情報を提供することを特徴とするサービス情報提供通信システム。
【請求項2】
前記店舗側光通信装置は、取得した車両の情報から、当該車両が徐行又は一時停止したとき、あるいはサービス提供所に向けて操舵操作されたときのいずれかのときに、当該車両にサービス情報を送信する請求項1に記載のサービス情報提供通信システム。
【請求項3】
前記店舗側光通信装置と前記車両側光通信装置は通信接続が行われたときに、店舗側光通信装置が車両側光通信装置から車両の情報を取得する請求項1に記載のサービス情報提供通信システム。
【請求項4】
前記店舗側光通信装置は、前記サービス提供所の車両が入所する入口を含む近傍領域に、車両側光通信装置との光通信の通信接続が可能な通信可能領域が設定されている請求項1に記載のサービス情報提供通信システム。
【請求項5】
前記車両側光通信装置と前記店舗側光通信装置は、それぞれ光通信よりも通信可能領域が広い補助通信部を備えており、店舗側の補助通信部は車両側の補助通信部に対して車両を光通信の通信可能領域にまで誘導する情報を送信する請求項4に記載のサービス情報提供通信システム。
【請求項6】
前記補助通信部は、音波を利用して通信を行う音波通信部である請求項5に記載のサービス情報提供通信システム。
【請求項7】
前記音波通信部は前記光通信装置に一体的に設けられている請求項6に記載のサービス情報提供通信システム。
【請求項8】
前記車両側光通信装置は車両に設けられた端末装置に接続されており、サービス提供所から提供されたサービス情報を当該端末装置に表示することが可能である請求項1ないし7のいずれかに記載のサービス情報提供通信システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光通信装置を装備した車両に対して各種サービス情報を提供することを可能にした通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両、特に自動車の安全走行を確保するために、自動車の相互間で交通情報通信を行う車々間通信装置や、自動車と道路設備との間での交通情報通信を行う路車間通信装置を装備した自動車が提供されている。特許文献1には、通信装置として、可視光を利用した光通信装置を装備した自動車が提案されている。光通信装置は、いわゆる電波を利用した通信装置に比較して短時間で大容量の情報を送受することができる。しかし、光通信装置を装備するには、それなりのコストがかかるため、現在のように交通情報を取得することにのみ光通信装置が利用されている状況では、当該光通信装置を装備することの必要性とコストとのトレードオフにより光通信装置を普及させることの障害になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-151961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レストランや給油所等の各種店舗、あるいは娯楽施設や駐車場等の各種施設、すなわち自動車に対してある種のサービスを提供する場所(以下、サービス提供所と称する)を利用する際に、事前にサービス提供所におけるサービス情報を確認することがある。このサービス情報は、例えば、商品の在庫状態、駐車場や座席の空き情報、レストランのメニュー情報、等々である。
【0005】
近年では、スマートフォンやタブレット等の携帯端末を用い、インターネット等の通信回線を介してサービス提供所にアクセスしてサービス情報を確認することが行われている。しかし、アクセスするための操作が面倒であり、特に自動車を運転している状況では操作することは難しい。また通信回線の容量に制限があるため、光通信に比較してサービス情報を確認するのに時間がかかり、アクセス時と実際にサービス提供所に到達したときとの時間差(タイムラグ)によってリアルタイムでの情報が得られないことがある。
【0006】
本発明の目的は、自動車に装備された光通信装置を利用してサービス提供所におけるサービス情報を送信することにより、自動車において大容量の情報をリアルタイムで受信するとともに、光通信装置の有効利用を図り、光通信装置の普及に寄与する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は車両に配設された車両側光通信装置と、サービスを提供する店舗等のサービス提供所に配設された店舗側光通信装置とで光通信を行い、店舗側光通信装置から車両側光通信装置に光通信によりサービス情報を提供するように構成されたサービス情報提供通信システムであって、店舗側光通信装置は通信接続された車両側光通信装置が配設されている車両の情報を取得し、取得した情報が所定の条件のときに光通信により当該車両にサービス情報を提供する。
【0008】
本発明の好ましい形態は、店舗側光通信装置は、取得した車両の情報から、当該車両が徐行又は一時停止したとき、あるいはサービス提供所に向けて操舵操作されたときのいずれかのときに、当該車両にサービス情報を送信する。例えば、店舗側光通信装置と車両側光通信装置は通信接続が行われたときに、店舗側光通信装置が車両側光通信装置から車両の情報を取得する。
【0009】
また、本発明の好ましい形態として、店舗側光通信装置は、サービス提供所に車両が入所する入口を含む近傍領域に、車両側光通信装置との光通信の通信接続が可能な通信可能領域が設定される。その上で、車両側光通信装置と店舗側光通信装置は、それぞれ光通信よりも通信可能領域が広い補助通信部を備えており、店舗側の補助通信部は車両側の補助通信部に対して車両を光通信の通信可能領域にまで誘導する情報を送信する。この補助通信部は、例えば、音波を利用して通信を行う音波通信部である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば光通信装置を利用してサービス情報を送信することにより、光通信の特徴である大容量のサービス情報を高速で送信でき、サービス情報を受信する車両側での利便性が高められるとともに、光通信装置の普及に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】サービス提供所をレストランとした実施形態1の概念図。
図2】車両側光通信装置を装備した自動車の外観図。
図3】車両側光通信装置のブロック構成図。
図4】店舗側光通信装置のブロック構成図。
図5】実施形態1の作用を説明するためのフロー図。
図6】実施形態1のサービス情報の一例を示す図。
図7】サービス提供所をドライブスルー店舗とした実施形態2の概念図。
図8】サービス提供所をガソリンスタンドとした実施形態3の概念図。
図9】車両側光通信装置のブロック構成図。
図10】店舗側光通信装置のブロック構成図。
図11】実施形態3の作用を説明するためのフロー図。
図12】実施形態3のサービス情報の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態1の概念図であり、車両としての自動車Vがサービス提供所としての郊外型のレストランSS1を利用する形態を示している。自動車Vには光通信装置(以下、車両側光通信装置)1が装備されており、レストランSS1に配備された光通信装置(以下、店舗側光通信装置)2と相互に光通信が可能とされている。これらの光通信装置1,2は、特許文献1にも記載されているような従来から提供されている交通情報通信用の光通信装置をそのまま利用することも可能であり、本実施形態では、この光通信によってレストランSS1から自動車Vに向けて駐車場情報、空席情報、メニュー情報等の種々のサービス情報が送信される。自動車Vの乗員はこのサービス情報を確認し、適切な対応をとることができる。
【0013】
図2図3は自動車Vに装備された車両側光通信装置1を説明する図である。図2に示すように、車両側光通信装置1は自動車Vの車室内のフロントウインドFWに臨む位置に配設されている。あるいは、車両側光通信装置1は、その一部が図2に破線で示すように、自動車Vのフロントランプ(ヘッドランプ、クリアランスランプ等)FL内に配設されてもよい。そして、この車両側光通信装置1は自動車Vの前方に向けて所要の角度範囲を通信可能領域とする指向性を備えており、この指向性の範囲内において相手方となる他の光通信装置と光通信が可能とされている。
【0014】
図3は車両側光通信装置1のブロック構成図であり、相手側光通信装置、ここでは前記店舗側光通信装置2との間で光信号を送受する光通信部11を備えている。この光通信部11は、概略の断面構成を示すように、前面が光透過性の保護カバー10aで構成されたケーシング10内に組み込まれている。光通信部11はケーシング10内に固定支持された基板110を備えており、この基板110の前方の面、すなわち前記保護カバー10aに向けられた面に、発光面が前方に向けられた送光素子としてのLD(レーザダイオード)111と、受光面が前方に向けられた受光素子としてのPD(フォトダイオード)112が搭載されている。
【0015】
また、前記光通信部11は、それぞれ多群構成の送光レンズ113と受光レンズ114を備えており、前記ケーシング10内に支持されている。送光レンズ113はレンズ光軸が前記LD111の発光光軸と一致され、受光レンズ114はレンズ光軸が前記PD112の受光光軸に一致されている。そして、LD111から出射された光は送光レンズ113により所要の角度領域に向けて送光される。また、受光レンズ114で受光した所要の角度領域の光はPD112により受光される。これらの送光、受光の角度領域はこの車両側光通信装置1の指向性領域、すなわち通信可能領域となる。
【0016】
LD111とPD112が搭載されている前記基板110は、光通信部11と別体に構成されている制御装置12に電気接続され、さらにCAN(Controller Area Network)等の制御ラインを介して自動車に装備されているナビゲーション装置やモニター装置等のディスプレイを有する端末装置13に電気接続されている。制御装置12は、端末装置13に入力された情報をLD111において光信号に変換する光変調部121と、PD112で受光した光信号を情報に変換して端末装置13のディスプレイに表示させるための光復調部122と、これら光変調部121と光復調部122を制御する制御部120を備えている。これにより、自動車Vの乗員が端末装置13を操作することにより情報をLD111から光信号として送光し、PD112で受光した光信号に含まれる情報を端末装置13のディスプレイに表示させることができる。
【0017】
なお、端末装置13がナビゲーション装置で構成されている場合には、制御装置12においては、端末装置13から得られる自動車の情報としての車速情報と操舵情報を送光する光信号に含ませることができる。端末装置13がナビゲーション機能を有していないモニター装置で構成されている場合には、自動車Vに設けられている車速センサー14や操舵センサー15が制御装置12に接続され、これらのセンサーからの車速情報と操舵情報を光信号に含ませるようにしてもよい。操舵センサー15に代えて、自動車の方向指示器を駆動する方向指示信号を利用してもよい。
【0018】
一方、図1に示したレストランSS1に配備された店舗側光通信装置2は、図4に示す構成であり、基本的には車両側光通信装置1と同じ構成である。図4において、図3と等価な構成の詳細は省略するが、保護カバー20aを有するケーシング20内に光通信部21と制御装置22を備えている。光通信部21は、基板210にLD211とPD212が搭載され、LD211は送光レンズ213を介して光信号を送光し、PD212は受光レンズ214を介して光信号を受光する。また、制御装置22は、光変調部221と光復調部222と制御部220を備えている。
【0019】
一方、店舗側光通信装置2において車両側光通信装置1と相違する構成として、制御装置22は有線又は無線の信号線、例えばLAN(Local Area Network)を介してパソコン等の入出力端末23に接続されている。レストランの係員は、この入出力端末23を操作することにより、所要のサービス情報を店舗側光通信装置2から光信号として送光し、あるいは車両側光通信装置1からの光信号を受光して自動車Vの情報を取得することができる。
【0020】
また、ここではサービス情報の一部として、レストランSS1の外部、例えば駐車場を撮像する外部撮像装置24と、レストランSS1の内部の座席を撮像する内部撮像装置25が接続されている。各撮像装置24,25で撮像した画像は制御装置22において信号処理され、送受光部21から送光することが可能とされている。
【0021】
以上の構成の光通信装置1,2を備えた図1の自動車V及びレストランSS1で構成されるサービス情報提供システムにおいて、自動車Vに対するレストランSS1のサービスの形態例を図5のフロー図を参照して説明する。レストランSS1では、図1に示したように、入口に面した道路の所要領域、特に自動車Vが入口に向けて走行して来る道路の一部領域が通信可能領域A1となるように店舗側光通信装置2を設定している。そして、ステップS11において店舗側光通信装置2を常時稼働状態とし、通信可能領域A1に走行してきた自動車Vの車両側光通信装置1との間で光通信接続ができるように通信接続要求を継続する。
【0022】
車両側光通信装置1を備えた自動車Vが通信可能領域A1まで走行してくると、店舗側光通信装置2からの通信接続要求を受けて通信接続応答を送信する。この通信接続応答がない場合には通信接続は行われないので、店舗側光通信装置2は、当該自動車は車両側光通信装置1を備えていないと判断し、サービスの対象車ではないと判断する。あるいは、当該自動車は入店する意志がないと判断する。一方、自動車Vからの通信接続応答があり、車両側光通信装置1との間で光通信の接続が行われると、当該自動車Vはサービスの対象候補車であると判断する(S12)。通常、これらの通信接続要求と通信接続応答は自動的に行われるように構成されている。
【0023】
次いで、店舗側光通信装置2は、当該自動車Vの車両側光通信装置1からの車速情報と操舵情報を光信号で受光し、当該自動車Vの車速と走行方向を検出する(S13)。これらの車速情報と操舵情報は、自動車Vの端末装置13がナビゲーション装置で構成されている場合には当該端末装置13から得られる。また、端末装置13がモニターで構成されている場合には車速センサー14、操舵センサー15から得られる。
【0024】
そして、店舗側光通信装置2において、対象候補車の車速が低減しないとき、すなわち対象候補車が徐行しあるいは一時停止しないとき、さらに左方向への操舵信号(ステアリング信号又は方向指示信号)が出ていないときには、当該対象候補車はレストランSS1に入店しない自動車であると判断する。一方、対象候補車が減速して徐行し、あるいは一時停止したとき、あるいは左方向への操舵信号が出ているときには、当該対象候補車はレストランSS1に入店する自動車であると判断する(S14)。前者の場合にはサービス情報の送信は行わず、後者の場合には直ちにサービス情報の送信を実行する(S15)。
【0025】
このサービス情報は、前記したように、レストランの駐車場情報、空席情報、飲食メニュー情報等であり、店舗側光通信装置2からこれらのサービス情報を車両側光通信装置1に送信する。送信されたサービス情報は、車両側光通信装置1で受信され、端末装置13のディスプレイに表示される。例えば、図6(a)に示すように、「いらっしゃいませ」のメッセージをと共に、「□駐車場情報」、「□客席情報」、「□メニュー」の項目が表示される。
【0026】
自動車Vの乗員は、端末装置13に表示された任意の項目を選択することにより、その項目の詳細な情報が表示される。例えば、図6(b)の「□駐車場情報」の場合には、現在の駐車場の空き状態を示す駐車場マップが表示される。また、図6(c)の「□客席情報」の場合には現在の店内の空席が分かる客席マップが表示される。また、図6(d)の「□メニュー」の場合には、特別メニューが表示される。
【0027】
これらのサービス情報の送信・表示に際しては、駐車場情報や客席情報の場合には、光通信による高速・大容量データ通信を利用することによって、店舗側光通信装置2に接続されている外部撮像装置24や内部撮像装置25で撮像した駐車場や店内の動画を表示することができる。同様に光通信による高速・大容量データ通信を利用することによって、多種類の飲食メニューを高速に、かつ鮮明な画像で切り換えながら順次表示させることができる。
【0028】
このように、光通信装置での光通信を利用することにより、レストランに入店しようとする自動車を的確に判断し、迅速にサービス情報を提供することができる。したがって、スマートフォンやタブレット等の携帯端末を用いた通信回線を介してサービス情報を得る場合に比較して、携帯端末からのアクセス及びその他の操作は不要であり、自動車の安全な運転が確保される。また、レストランにおけるリアルタイムのサービス情報を得ることができる。さらに、光通信装置を装備することにより、これまでのように交通情報を取得することに加えて、好適なサービスを受けることが可能になれば、光通信装置のコストに見合う利便性が得られることになり、この種の光通信装置の普及が図られる。
【0029】
また、このような光通信装置の光通信によるサービス情報と、携帯端末を用いた従来の通信回線を介してレストランに接続した場合のサービス情報との間に差を持たせることにより、レストランの集客効果を高めることができる。例えば、お得情報(割引き情報やイベント情報等)をサービス情報に加えてもよい。あるいは実際にレストランに来店した客限定の情報、特に客のIDを設定することで、来店回数に伴うポイントの増額等のサービス情報も可能である。
【0030】
(実施形態2)
図7はサービス提供所がハンバーガー、コーヒー、ピザ店等の、いわゆるドライブスルー店舗SS2の実施形態である。店舗の入口からドライブスルー窓口に至る通路に通信可能領域A1を設定した店舗側光通信装置2が配設されている。自動車Vが入口を通ってドライブスルー窓口SWの手前で徐行したときに、店舗側光通信装置2において車両側光通信装置1に通信接続する。あるいは、図示は省略するが、当該窓口SWに接近した際に通信接続するようにしてもよい。このドライブスルー店舗SS2の場合には、入口から走行してくる自動車は来店目的の自動車である確率が高いので、図5のフローにおけるステップS13においては、通信接続された自動車に対して、当該自動車の車速が低減したか否か、すなわち徐行か一時停止のみを判断すればよい。
【0031】
このドライブスルー店舗SS2においても、図示は省略するが、通信接続が行われた上で、店舗側から車両側にメニュー情報、支払方法等のサービス情報を送信する。その際、お得な情報(割引きやイベント情報等)を車両側に送信してもよい。このサービス情報の送信は高速・大容量データ通信の光通信に基づくものであるので、多種類のメニューを高速に、かつ鮮明な画像で切り換えながら順次表示させることができることは前記したレストラントの場合と同じである。また、自動車の乗員は送信されたメニューを車両側光通信装置1で確認し、店舗側に注文や支払方法を送信してもよい。このドライブスルー店舗SS2の場合には、例えば、昼食時や夕食時など、混雑する時間帯を避けて来店した客に特別割引やグッズ等のインセンティブを与えることで、ドライブスルー車両による店舗周辺の渋滞緩和を図ることもできる。
【0032】
(実施形態3)
図8は入所して来る自動車の位置や方向が特定されないサービス提供所に本発明を適用した実施形態3を示している。実施形態1のレストランや実施形態2のドライブスルー店舗のように入口が相対的に狭い店舗では自動車が入店する際の位置や方向が特定されるため、店舗側光通信装置と車両側光通信装置との通信接続は容易である。図8に示したガソリンスタンドのように広い入出口を有するサービス提供所SS3では、入店する自動車の位置や方向が特定され難い。1つの店舗側光通信装置2のみでは通信可能領域が限定されるため、異なる位置や方向から入店して来る自動車の車両側光通信装置と通信接続を行うことが難しく、車両側光通信装置1を備えている全ての自動車に対して確実にサービス情報を送信できなくなることが生じる。これに対処するには、店舗側光通信装置を複数台配設して通信可能領域を拡大すればよいが、複数の店舗側光通信装置を連係させるためのソフトが複雑になり、また設備コストの増大につながる。
【0033】
実施形態3においては、自動車とサービス提供所のそれぞれに補助通信部を備えた車両側光通信装置1A,2Aを配設している。図9(a)は車両側光通信装置1Aのブロック構成図であり、図9(b)はその光通信部11の正面図である。実施形態1,2の車両側光通信装置1と相違する構成は、光通信部11のケーシング10に補助通信部16が一体的に配設されている。この補助通信部16は、ここでは音波で通信を行う音波通信部として構成されており、音波での通信を行うためのマイクロフォン161とスピーカ162を備えている。マイクロフォン161は音波を電気信号に変換する圧電素子マイクロフォンで構成され、スピーカ162は電気信号を音波に変換する圧電素子スピーカで構成されている。
【0034】
これらマイクロフォン161とスピーカ162は、LD111及びPD112と共に基板110に接続されており、さらに制御装置12に接続されている。制御装置12は、実施形態1の車両側光通信装置1と同様の構成に加えて、送信する情報を所要の電気信号に変調する音変調部123を備えている。音変調部123は送信する情報に基づいてスピーカ162に供給する電圧を例えばパルス符号(PCM)変調し、この変調信号に基づいた音波を出力する。スピーカ162は圧電素子スピーカで構成されているので、所要の周波数の音波を出力する。例えば、周波数が人間の可聴周波数の場合には、「ピッ、ピー、ピー、ピッ・・・」のような音波である。好ましくは、人間がうるさく感じないように、人間の可聴周波数を越える20KHz以上の音波を出力する。また、制御装置12は、この音波を圧電素子マイクロフォン161で受波して電気信号に変換されたパルス符号信号を復調し、復調した情報を端末装置13に表示させるための音復調部124を備えている。
【0035】
一方、図8のサービス提供所としてのガソリンスタンドSS3には、図10に示すように、車両側光通信装置1Aと同様の光通信部21を備えた店舗側光通信装置2Aが配設されている。この光通信部21の構成は、基本的には車両側光通信装置1Aの光通信部11と同じ構成である。すなわち、光通信部21にはマイクロフォン261とスピーカ262を有する補助通信部としての音波通信部26が一体的に設けられており、この音波通信部26は車両側光通信装置1Aの音波通信部16との間で音波での通信を行うことが可能とされている。また、光通信部21には制御装置22と入出力端末23が接続されている。制御装置22の構成は図4に示した店舗側光通信装置2の構成と同様であるが、車両側光通信装置1Aと同様に、音変調部223と音復調部224を備えている。
【0036】
この店舗側光通信装置2Aには、図8に示すように、ガソリンスタンドSS3の入口のほぼ全領域A3を撮像することが可能な撮像装置24が接続されている。この撮像装置24は図4の店舗側光通信装置2の外部撮像装置24と同じである。そして、店舗側光通信装置2Aの制御装置22は、この撮像装置24で撮像した画像を解析して、撮像された自動車を検出することが可能とされている。また、自動車を検出したときには、後述するような所定のメッセージ情報を音変調部223で変調し、スピーカ262から音波として出力することが可能とされている。
【0037】
この店舗側光通信装置2Aは車両側光通信装置1Aとで光通信ができる通信可能領域A1がガソリンスタンドSS3の入口の特定の一部の領域となるように設定されている。また、ガソリンスタンドSS3の地面には、この通信可能領域A1に含まれる一部に所要の停止マーク、ここでは斜線マークXが記載されており、入店しようとする自動車の乗員が視認できるようになっている。その一方で、車両側光通信装置1Aの音波通信部16との間で音波での通信が可能な音波通信領域A2は、ガソリンスタンドSS3の入口を含む道路側にまで拡大された広い領域となるように設定されている。この音波での通信可能領域A2は、少なくとも撮像装置24で撮像する撮像領域A3を含む広い領域に設定されている。
【0038】
以上の光通信装置を備えた自動車及びガソリンスタンドにおいて、自動車Vに対するガソリンスタンドSS3のサービスの形態例を図11のフロー図を参照して説明する。自動車がガソリンスタンドSS3の入口の近傍に接近してくると、ガソリンスタンドSS3の撮像装置26は当該自動車を撮像し、その走行状態、特に走行方向を検出する(S21)。検出した自動車V1が入口の斜線マークX、すなわち光通信の通信可能領域A1にまで走行してきたときには(S22)、実施形態1と同様に店舗側光通信装置2Aから車両側光通信装置1Aに対して光通信による通信接続要求を行う(S23)。当該自動車が車両側光通信装置1Aを備えている場合には、通信接続応答が行われて通信接続される(S24)。
【0039】
以降は、実施形態1と同様に、店舗側光通信装置2Aは車両側光通信装置1Aとの通信により自動車の車速を検出し(S25)、検出した車速から当該自動車が徐行、一時停止したことを検出し(S26)、店舗側光通信装置2Aから車両側光通信装置1Aに向けてサービス情報が送信される(S27)。なお、ステップS21において検出した自動車との間に通信接続ができない場合、またステップS26において自動車が徐行、一時停止しない場合には、いずれの場合も給油目的の自動車ではないと判断して車両側光通信装置1Aに向けてのサービス情報の送信は行わない。
【0040】
一方、店舗側光通信装置2Aにおいて検出した自動車V2が斜線マークXに向けて走行して来ないと判断した場合には、光通信装置1A,2Aによる光通信ができなくなるため、音波通信部を利用する。すなわち、店舗側光通信装置2Aの音波通信部26から車両側光通信装置1Aの音波通信部16に向けて所要のメッセージの音波を送信する(S28)。例えば、「斜線マークまで進んでください」のメッセージを音変調部223において変調し、変調された音波をスピーカ262から送信する。
【0041】
音波通信部16を有する車両側光通信装置1Aを備えている自動車の場合には、この音波をマイクロフォン161で受信し、音復調部124において復調することにより端末装置13にこのメッセージが表示される。当該自動車V2は、このメッセージを受けて斜線マークXにまで進むことにより、通信可能領域A1に進入し、店舗側光通信装置2Aとの光通信が可能になる。以降は、店舗側光通信装置2Aは、自動車V2が斜線マークXにおいて一時停止又は徐行したことを検出し、サービス情報の送信を行う。なお、ステップS28において、店舗側光通信装置2Aからメッセージの音波を出力しても、このメッセージに従って斜線マークXに進まない自動車は、実施形態3の車両側光通信装置1Aを備えていないと判断されるため、サービス情報の送信は行わない。
【0042】
このガソリンスタンドSS3でのサービス情報の送信に際しては、自動車からガソリンスタンドSS3に対して自車のユーザID、車種、油種、給油量を店舗の店舗側光通信装置2Aに送信する。一方、店舗側光通信装置2Aは、受信したユーザIDに基づいて当該自動車にかかわる情報をサービス情報として送信する。これにより、図12(a)のように、当該自動車にかかわる情報とサービス情報が端末装置13に表示される。また、図12(b)のように、店舗側光通信装置2Aにおいて、ユーザIDに基づいて当該自動車の過去の給油記録を検索し、検索した給油記録を車両側光通信装置に送信するようにしてもよい。また、この送信時に、今回のお薦めの油種、給油量を加えてもよい。
【0043】
自動車においては車両側光通信装置1Aで受信したこれらの情報について、可否の応答をする。あるいは、変更してもよい。店舗側光通信装置2Aはこの応答に基づいて給油を自動設定する。その上で、図12(c)のように、自動車に対して設定した給油ブースに誘導するサービス情報を送信する。これにより、自動車の乗員がこれまでのように給油ブースに停車した後に給油ブースでの画面操作を行い、油種や給油量、支払方法を指定する煩わしさが解消できる。しかも給油を短時間に終了させることができ、ガソリンスタンドの稼働率が高められる。
【0044】
このように、入口が広く、自動車が入店する際の位置が特定できないサービス提供所の場合には、音波を利用して自動車を光通信が可能な位置に誘導することにより、ガソリンスタンドと車両の間で確実に光通信を実行することができる。また、店舗側あるいは車両側の光通信装置において、光通信部に障害が生じたような場合には、音波通信部によるサービス情報の送信を行うことも可能となる。
【0045】
なお、補助通信部としては、音波を用いた音波通信部に代えて無線LANを利用してもよい。この場合には車両側と店舗側の各光通信装置にそれぞれ音波通信部に代えて無線LAN通信部を設けるようにすればよい。
【0046】
以上の実施形態1~3は、本発明にかかるサービス提供所の例としてレストラン、ドライブスルー店舗、ガソリンスタンドの例を掲げたが、それ以外のサービス提供所に適用できる。例えば高速道路のサービスエリア、公共施設、病院等のようなサービス提供所に自動車で来所する際に、当該自動車にリアルタイムで各種の情報を提供することが自動車側及びサービス提供所側において有利になるような場合に適用することが好ましい。特に、本発明の光通信システムの光通信装置を標準化して車両やサービス提供所のそれぞれに装備させることにより、自動車でサービス提供所をする際の利便性を高めることができる。
【0047】
また、実施形態1~3では、店舗側光通信装置から車両側光通信装置に対して通信接続要求を行っているが、車両側光通信装置から店舗側光通信装置に対して通信接続要求を行ってもよい。この場合には、通信接続要求と同時に自動車の車速や操舵方向等の情報を送信することにより、店舗側光通信装置は通信接続と同時に自動車の車速や操舵方向を確認し、当該自動車が来所するか否かの判断をすることも可能になる。
【0048】
さらに、実施形態1~3では、車両側光通信装置から店舗側光通信装置に光通信して車両の情報を検出しているが、店舗側光通信装置において独自に車両の情報を取得することができる場合には、その取得した情報に基づいて車両が来所するか否かを判断するようしてもよい。例えば、店舗側光通信装置にレーダー機能を備えている場合には、そのレーダーで検出した情報により車両の一時停止、徐行、操舵方向を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1, 1A 車両側光通信装置
2, 2A 店舗側光通信装置
11 光通信部
12 制御装置
13 端末装置
14 車速センサー
15 操舵センサー
16 音波通信部(補助通信部)
21 光通信部
22 制御装置
23 端末装置
24 撮像装置
25 撮像装置
26 音波通信部(補助通信部)
SS1,SS2,SS3 サービス提供所
V,V1,V2 自動車(車両)

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