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特開2024-168828コネクタユニットおよびコネクタユニットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168828
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】コネクタユニットおよびコネクタユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/71 20110101AFI20241128BHJP
【FI】
H01R12/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085806
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】591236301
【氏名又は名称】ミネベアコネクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】山崎 修司
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AA21
5E223AB45
5E223BA06
5E223BA07
5E223BB12
5E223CB22
5E223CB31
5E223CB38
5E223CD01
5E223DA05
5E223DB25
(57)【要約】
【課題】回路基板の電極とコネクタのコネクタ端子との間に生じる接点摺動量が大きくなるよう構成されたコネクタユニットおよび該コネクタユニットの製造方法を提供すること。
【解決手段】コネクタユニット1は、回路基板2と、回路基板2の第1の面21上に取り付けられるコネクタ3と、を含む。回路基板2は、第1の面21と第2の面22とを貫通するよう形成されたスライド固定孔24を備える。スライド固定孔24は、第1のスリット241と、第1のスリット241の延伸方向の端部と連続する第2のスリット242と、を備える。コネクタ3のコネクタ固定部53は、第1のスリット241内に挿通され、その後、コネクタ固定部53を第1のスリット241から第2のスリット242へ位置させるよう、コネクタ3が回路基板2の第1の面21上でスライドされる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面と、前記第1の面上に形成された電極と、前記第1の面と前記第2の面とを貫通するよう形成されたスライド固定孔と、を備える回路基板と、
前記回路基板の前記電極と電気的に接続されるコネクタ端子と、前記コネクタ端子を内部に収納する絶縁性のハウジングと、を備え、前記回路基板の前記第1の面上に取り付けられるコネクタと、を含み、
前記ハウジングは、
前記回路基板の前記第1の面と対向する底面と、基端面と、を有し、前記コネクタ端子を内部に保持する本体部と、
前記本体部の前記基端面上に形成され、前記コネクタ端子を挿入するための端子挿入孔と、
前記本体部の前記底面から、下方に向かって延伸し、前記回路基板の前記第1の面側から前記スライド固定孔内に挿通され、前記回路基板の前記第2の面と係合するコネクタ固定部と、を備え、
前記スライド固定孔は、前記コネクタ固定部が挿通されスライド可能な第1のスリットと、前記第1のスリットの延伸方向の端部と連続し、かつ、前記第1のスリットの前記延伸方向に直交する横方向の開口幅よりも狭い開口幅を有し、前記コネクタ固定部がスライド可能な第2のスリットと、を備え、
前記コネクタの前記コネクタ固定部は、前記第2のスリットで前記回路基板の前記第2の面と係合し、これにより、前記コネクタが前記回路基板の前記第1の面上で固定されることを特徴とするコネクタユニット。
【請求項2】
前記回路基板および前記コネクタは、前記コネクタの前記コネクタ固定部が、前記第1のスリット内に挿通された際、前記コネクタ端子が前記回路基板の前記電極と接触するよう構成されており、
前記コネクタ固定部を前記第1のスリットから前記第2のスリットへ位置させるよう、前記コネクタが前記回路基板の前記第1の面上でスライドされた際、前記コネクタの前記コネクタ端子と前記回路基板の前記電極との間で接点摺動が生じる請求項1に記載のコネクタユニット。
【請求項3】
前記回路基板および前記コネクタは、前記コネクタが前記回路基板の前記第1の面上で固定された状態において、前記コネクタ端子が前記回路基板の前記電極と接触するよう構成されている請求項2に記載のコネクタユニット。
【請求項4】
前記コネクタ固定部は、
前記コネクタの前記本体部の前記底面から、下方に直線状に延伸する脚部と、
前記脚部の下端部に形成され、前記脚部の前記下端部から前記横方向に延伸する係合部と、を備え、
前記コネクタが前記回路基板の前記第1の面上に固定されている状態において、前記脚部が、前記回路基板の前記第2のスリット内を挿通し、さらに、前記係合部が、前記回路基板の前記第2の面と係合する請求項1に記載のコネクタユニット。
【請求項5】
前記脚部の前記横方向の幅は、上方から下方に向かって一定であり、
前記係合部は、上方から下方に向かって前記横方向の幅が漸減するテーパー形状を有しており、
前記第1のスリットの前記横方向の前記開口幅は、前記コネクタ固定部の前記脚部の前記横方向の前記幅、および、前記係合部の上端部の前記横方向の幅以上であり、
前記第2のスリットの前記横方向の前記開口幅は、前記コネクタ固定部の前記脚部の前記横方向の前記幅以上であり、かつ、前記係合部の前記上端部の前記横方向の前記幅よりも小さい請求項4に記載のコネクタユニット。
【請求項6】
前記コネクタ固定部の前記係合部は、
前記脚部の前記下端部から、前記横方向に延伸する平坦部と、
前記平坦部の外側の端部から下方、かつ、内側に斜めに延伸する傾斜部と、を備え、
前記傾斜部の前記横方向の幅は、上方から下方に向かって漸減し、
前記平坦部は、前記コネクタが前記回路基板の前記第1の面上で固定されている状態において、前記回路基板の前記第2の面と対向する請求項4に記載のコネクタユニット。
【請求項7】
前記回路基板は、前記第2の面上から下方に向かって延伸する環状のフランジ部をさらに備え、
前記コネクタユニットは、前記回路基板の前記第2の面の前記フランジ部に取り付けられ、前記フランジ部の内部空間を液密に封止する防水キャップをさらに含み、
前記防水キャップは、
底板と、
前記底板上から、上方に向かって延伸し、前記回路基板の前記第2の面側から前記スライド固定孔の前記第1のスリット内に挿通される第1の固定爪と、を備え、
前記コネクタが前記回路基板の前記第1の面上で固定されている状態において、前記防水キャップの前記第1の固定爪が、前記第1のスリット内に挿入されることにより、前記防水キャップが前記回路基板の前記第2の面上で固定され、
前記第1のスリット内を挿通する前記防水キャップの前記第1の固定爪が、前記第2のスリット内を挿通する前記ハウジングの前記コネクタ固定部と接触することにより、前記コネクタ固定部を前記第2のスリットから前記第1のスリットへ位置させるための前記回路基板の前記第1の面上での前記コネクタのスライドが防止されている請求項1に記載のコネクタユニット。
【請求項8】
前記防水キャップは、前記底板の外縁部から、前記外縁部を取り囲むように、上方に向かって延伸する環状の壁部をさらに備え、
前記防水キャップが前記第2の面上に固定された状態において、前記回路基板の前記フランジ部の外周面は、前記防水キャップの前記壁部の内周面と対向している請求項7に記載のコネクタユニット。
【請求項9】
前記防水キャップは、前記底板と前記壁部との隣接部分に形成された環状の溝部と、前記溝部の内周面上に取り付けられた環状のパッキンと、をさらに備え、
前記防水キャップが前記回路基板の前記第2の面上に固定されている状態において、前記回路基板の前記フランジ部は、前記防水キャップの前記溝部内に収納され、
前記パッキンは、前記フランジ部の内周面と前記溝部の前記内周面との間で圧迫され、これにより、前記フランジ部の前記内部空間が液密に封止される請求項8に記載のコネクタユニット。
【請求項10】
前記回路基板は、前記防水キャップを前記回路基板の前記第2の面上に固定するための固定孔をさらに備え、
前記防水キャップは、前記底板上から、上方に向かって延伸し、前記回路基板の前記第2の面側から前記固定孔内に挿通され、前記回路基板の前記第1の面と係合する第2の固定爪をさらに備える請求項7に記載のコネクタユニット。
【請求項11】
請求項1に記載のコネクタユニットの製造方法であって、
前記コネクタ固定部を前記第1のスリット内に挿通する工程と、
前記コネクタ固定部を前記第1のスリットから前記第2のスリットに位置させるよう、前記コネクタを前記回路基板の前記第1の面上においてスライドする工程と、を含み、
前記スライドする工程において、前記コネクタの前記コネクタ端子と前記回路基板の前記電極との間で接点摺動が生じ、
前記スライドする工程の後、前記コネクタ固定部が、前記回路基板の前記第2の面と係合し、これにより、前記コネクタが前記回路基板の前記第1の面上で固定されることを特徴とするコネクタユニットの製造方法。
【請求項12】
前記回路基板は、前記第2の面上から下方に向かって延伸する環状のフランジ部をさらに備え、
前記コネクタユニットは、前記回路基板の前記第2の面の前記フランジ部に取り付けられ、前記フランジ部の内部空間を液密に封止する防水キャップをさらに含み、
前記防水キャップは、
底板と、
前記底板上から、上方に向かって延伸し、前記回路基板の前記第2の面側から前記スライド固定孔の前記第1のスリット内に挿通される第1の固定爪と、を備え、
前記製造方法は、前記スライドする工程の後、前記第1の固定爪を、前記第1のスリット内に挿通する工程と、をさらに含み、
前記第1のスリット内を挿通する前記防水キャップの前記第1の固定爪が、前記第2のスリット内を挿通する前記ハウジングの前記コネクタ固定部と接触することにより、前記コネクタ固定部を前記第2のスリットから前記第1のスリットへ位置させるための前記回路基板の前記第1の面上での前記コネクタのスライドが防止されている請求項11に記載のコネクタユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、回路基板と、該回路基板の面上に取り付けられるコネクタを含むコネクタユニットおよび該コネクタユニットの製造方法に関し、より具体的には、回路基板の面上にコネクタを取り付ける際の、回路基板の電極とコネクタのコネクタ端子との間に生じる接点摺動量が大きくなるよう構成されたコネクタユニットおよび該コネクタユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等に搭載される電子制御ユニットと、車載用ヘッドライト等の対象の電子機器との間の電気的接続を提供するための、回路基板と、回路基板上に取り付けられ、回路基板上に形成された端子と電気的に接続されるコネクタと、を含むコネクタユニットが知られている。例えば、特許文献1は、図1(a)に示されているような、回路基板600と、回路基板600上に取り付けられるコネクタ700と、を含むコネクタユニット500を開示している。
【0003】
回路基板600は、回路基板600の上面に形成された1つ以上の電極601(図示の形態では、4つ)と、回路基板600の上面と下面とを貫通するよう形成された1つ以上の固定孔602(図示の形態では、2つ)と、を備えている。1つ以上の電極601は、回路基板600上に形成された配線を介して、電子制御ユニットに接続されている。
【0004】
コネクタ700は、回路基板600上に弾性変形可能なコネクタ端子800を押し付けることで回路基板600上の電極601とコネクタ端子800とを接触させる、いわゆるコンプレッションコネクタである。コネクタ700は、回路基板600の電極601と電気的に接続される弾性変形可能な1つ以上のコネクタ端子800と、コネクタ端子800を内部に収納する絶縁性のハウジング900と、を備えている。コネクタ端子800は、電気ケーブルの端部に接続されており、コネクタ端子800を回路基板600の電極601に接触させることにより、電気ケーブルと電極601との間の電気的接続が提供される。
【0005】
コネクタ端子800は、薄い金属板に対して打ち抜き加工および曲げ加工を施すことにより得られ、弾性変形が可能な部材である。コネクタ端子800は、ハウジング900から下方に向けて露出し、回路基板600の対応する電極601と接触する接点部801を備えている。ハウジング900は、1つ以上のコネクタ端子800を互いに絶縁した状態で内部に保持する機能を有している。ハウジング900は、絶縁性材料(樹脂等)により形成され、略直方体形状の本体部901と、本体部901の1つの面(先端面または基端面)上に形成された1つ以上の挿入孔902と、本体部901の底面から下方に延伸する1つ以上のコネクタ固定部903と、を備えている。
【0006】
挿入孔902は、その内部においてコネクタ端子800を保持する機能を有している。また、挿入孔902は、本体部901の下面に開口している。そのため、挿入孔902内にコネクタ端子800が保持されている状態において、本体部901の下面から、コネクタ端子800の接点部801がハウジング900の外部に露出している。コネクタ固定部903は、本体部901の底面から下方に直線状に延伸する脚部904と、脚部904の下端部に形成され、脚部904の下端部から外側に向かって延伸する係合部905と、を備えている。
【0007】
図1(a)は、回路基板600に対してコネクタ700を取り付ける前の状態を示している。回路基板600の上方から固定孔602内にコネクタ700のコネクタ固定部903を挿入し、コネクタ固定部903の係合部905(具体的には、係合部905の上端面)がスナップフィットによって回路基板600の下面と係合すると、回路基板600に対するコネクタ700の取り付けが完了し、図1(b)に示す状態に移行する。また、コネクタ固定部903を固定孔602内に挿入する過程において、コネクタ端子800の接点部801が回路基板600の対応する電極601に接触すると、コネクタ端子800は、弾性変形しながら電極601に押し付けられる。
【0008】
図1(b)は、回路基板600に対するコネクタ700の取り付けが完了した状態を示している。図1(b)に示す状態において、コネクタ端子800の接点部801が、回路基板600の対応する電極601に、所定の接触圧力で接触した状態で固定されている。このように、回路基板600上でコネクタ700が固定され、かつ、所定の接触圧力で接点部801が電極601に接触するので、振動環境下であっても、コネクタ端子800と電極601との間の接触を確実に維持することができる。
【0009】
一般的に、コネクタ端子800としては、導電信頼性を向上させるために耐酸化性に優れる金メッキ処理が施されている金メッキ端子が用いられる。しかしながら、近年、Sn(スズ)メッキ処理が施されたSnメッキ端子を、コネクタ端子800として用いたいというニーズが強い。Snメッキ端子は、従来の金メッキ端子よりもコストの面で優れている。しかしながら、Snメッキは、金メッキと比較して、メッキ表面が酸化腐食しやすく、Snメッキ処理を施した表面には、金メッキ処理を施した表面と比較して、酸化被膜が形成されやすい。コネクタ端子800の接点部801の表面に形成された酸化被膜は、回路基板600の電極601とコネクタ端子800の接点部801の間の電気伝導性を低下させ、コネクタ700の接触信頼性を低下させてしまう。
【0010】
このような酸化被膜に起因する接触信頼性低下の問題に対し、回路基板600の電極601とコネクタ端子800の接点部801とを擦り合わせる(「ワイピング」または「接点摺動」ともいう)ことで、コネクタ端子800の接点部801の表面に形成された酸化被膜を除去する方法が知られている。
【0011】
特許文献1の構成では、回路基板600の電極601に対して上方からコネクタ端子800の接点部801を押し付けた際のコネクタ端子800の弾性変形によって、接点部801が電極601上をわずかにスライドする。このようなスライドによって、回路基板600の電極601とコネクタ端子800の接点部801との間における接点摺動が生じる。しかしながら、コネクタ端子800の弾性変形は、わずかな量であるため、接点摺動の量もわずかなものとなり、接点部801の表面上に形成された酸化被膜を十分に除去することができない。そのため、特許文献1の構成において、Snメッキ端子をコネクタ端子800として用いた場合、回路基板600の電極601とコネクタ端子800の接点部801との間の電気伝導性が低下し、コネクタ700の接触信頼性が損なわれてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005-19305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、回路基板にコネクタを取り付ける際の回路基板の電極とコネクタ端子との間の接点摺動の量が大きいコネクタユニットおよび該コネクタユニットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的は、以下の(1)および(2)によって規定される本発明により達成される。
【0015】
(1)第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面と、前記第1の面上に形成された電極と、前記第1の面と前記第2の面とを貫通するよう形成されたスライド固定孔と、を備える回路基板と、
前記回路基板の前記電極と電気的に接続されるコネクタ端子と、前記コネクタ端子を内部に収納する絶縁性のハウジングと、を備え、前記回路基板の前記第1の面上に取り付けられるコネクタと、を含み、
前記ハウジングは、
前記回路基板の前記第1の面と対向する底面と、基端面と、を有し、前記コネクタ端子を内部に保持する本体部と、
前記本体部の前記基端面上に形成され、前記コネクタ端子を挿入するための端子挿入孔と、
前記本体部の前記底面から、下方に向かって延伸し、前記回路基板の前記第1の面側から前記スライド固定孔内に挿通され、前記回路基板の前記第2の面と係合するコネクタ固定部と、を備え、
前記スライド固定孔は、前記コネクタ固定部が挿通されスライド可能な第1のスリットと、前記第1のスリットの延伸方向の端部と連続し、かつ、前記第1のスリットの前記延伸方向に直交する横方向の開口幅よりも狭い開口幅を有し前記コネクタ固定部がスライド可能な第2のスリットと、を備え、
前記コネクタの前記コネクタ固定部は、前記第2のスリットで前記回路基板の前記第2の面と係合し、これにより、前記コネクタが前記回路基板の前記第1の面上で固定されることを特徴とするコネクタユニット。
【0016】
(2)上記(1)に記載のコネクタユニットの製造方法であって、
前記コネクタ固定部を前記第1のスリット内に挿通する工程と、
前記コネクタ固定部を前記第1のスリットから前記第2のスリットに位置させるよう、前記コネクタを前記回路基板の前記第1の面上においてスライドする工程と、を含み、
前記スライドする工程において、前記コネクタの前記コネクタ端子と前記回路基板の前記電極との間で接点摺動が生じ、
前記スライドする工程の後、前記コネクタ固定部が、前記回路基板の前記第2の面と係合し、これにより、前記コネクタが前記回路基板の前記第1の面上で固定されることを特徴とするコネクタユニットの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明のコネクタユニットにおいては、回路基板上に形成されたスライド固定孔は、第1のスリットと、第1のスリットの一方の端部と連続する第2のスリットを有している。そのため、回路基板にコネクタを取り付ける際に、コネクタのコネクタ固定部を回路基板上の第1のスリットに挿通し、その後、コネクタ固定部を第1のスリットから第2のスリットへ位置させるようにコネクタを回路基板上でスライドさせるスライド操作が実行される。このようなスライド操作の際、コネクタのコネクタ端子と回路基板の電極との間の接点摺動が生じる。そのため、回路基板にコネクタを取り付ける際に生じる接点摺動の量を大幅に増大させることができる。この結果、コネクタ端子の接点部分の表面に形成された酸化被膜を十分に除去できるため、コネクタ端子としてSnメッキ端子を用いた場合であっても、コネクタ端子の接触信頼性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)は、従来のコネクタユニットにおいて、コネクタを回路基板に取り付ける前の状態を示す図である。図1(b)は、図1(a)に示す回路基板にコネクタの取り付けが完了した状態を示す図である。
図2】本発明のコネクタユニット、および本発明のコネクタユニットのコネクタに接続された電子制御ユニットを示す斜視図である。
図3図2に示すコネクタユニットの斜視図である。
図4図2に示すコネクタユニットの分解斜視図である。
図5図4に示す回路基板を別の角度から見た斜視図である。
図6図4に示すコネクタを別の角度から見た斜視図である。
図7図4に示すコネクタの分解斜視図である。
図8図7に示すコネクタ端子の断面図である。
図9図3中に示すA-A線に沿ったコネクタユニットの断面図である。
図10図3中に示すB-B線に沿ったコネクタユニットの断面図である。
図11】本発明のコネクタユニットの製造方法を示すフローチャートである。
図12】回路基板へのコネクタの取り付けを説明するための図である。
図13】回路基板のスライド固定孔の第1のスリットにコネクタのコネクタ固定部を挿入した状態の下面図である。
図14】回路基板上でのコネクタのスライドを説明するための図である。
図15】回路基板へのコネクタの取り付けが完了した状態の下面図である。
図16】回路基板への防水キャップの取り付けを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のコネクタユニットを、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて、説明する。なお、以下で参照する各図は、本発明の説明のために用意された模式的な図である。図面に示された各構成要素の寸法(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法を反映したものではない。また、各図において、同一または対応する要素には、同じ参照番号が付されている。以下の説明において、各図のZ軸の正方向を「上側」といい、Z軸の負方向を「下側」といい、Y軸の正方向を「基端側」または「後側」といい、Y軸の負方向を「先端側」または「前側」といい、X軸の正方向を「手前側」といい、X軸の負方向を「奥側」ということがある。また、Z方向を「高さ方向」または「コネクタの挿通方向」といい、Y方向を「スライド方向」といい、X方向を「横方向」ということがある。
【0020】
図2は、本発明のコネクタユニット、および本発明のコネクタユニットのコネクタに接続された電子制御ユニットを示す斜視図である。図3は、図2に示すコネクタユニットの斜視図である。図4は、図2に示すコネクタユニットの分解斜視図である。図5は、図4に示す回路基板を別の角度から見た斜視図である。図6は、図4に示すコネクタを別の角度から見た斜視図である。図7は、図4に示すコネクタの分解斜視図である。図8は、図7に示すコネクタ端子の断面図である。図9は、図3中に示すA-A線に沿ったコネクタユニットの断面図である。図10は、図3中に示すB-B線に沿ったコネクタユニットの断面図である。
【0021】
図2および図3に示す本発明のコネクタユニット1は、回路基板2と、回路基板2の上面(第1の面)21に取り付けられたコネクタ3と、回路基板2の下面(第2の面)22に取り付けられた防水キャップ6と、を含んでいる。図2に示すように、電気ケーブル100は、コネクタ3から+Y方向に延伸しており、図示しない対象の電子機器に接続される。さらに、回路基板2の導線200は、上面21上において-Y方向に延伸し、電子制御ユニット300に接続されている。コネクタ3を回路基板2の上面21上に取り付けることにより、コネクタ3および電気ケーブル100を介して、対象の電子機器と電子制御ユニット300との間の電気的接続が提供される。典型的には、コネクタユニット1は、車載用デバイス(例えば、車載用ヘッドライト)の筐体内に設けられ、1つ以上の電気ケーブル100に接続された車載用デバイスと自動車用の電子制御ユニット300との間の電気的接続を提供するために用いられる。
【0022】
以下、添付の図面を参照して、コネクタユニット1の各コンポーネントについて詳述する。図4および図5に示されているように、回路基板2は、上面21と、上面21と対向する下面22と、回路基板2の上面21において露出している1つ以上(図示の形態では10個、すなわち、-X方向側に位置する5つから構成されるグループと、+X方向側に位置する5つから構成されるグループ)の電極23と、上面21と下面22とを貫通するよう形成された1つ以上(図示の形態では3つ)のスライド固定孔24と、防水キャップ6を回路基板2の下面22上に固定するための1つ以上(図示の形態では3つ)の固定孔25と、防水キャップ6を回路基板2に取り付ける際の位置決めに用いられる1つ以上(図示の形態では2つ)の位置決め孔26と、回路基板2の下面22上から下方に向かって延伸する環状(筒状)のフランジ部27と、を備えている。
【0023】
回路基板2は、板状のリジット回路基板またはFPC(Flexible Printed Circuit)に補強板(ポリイミド等)を張り付けて所定の厚みにした回路基板である。このような回路基板2は、例えば、フォトエッチング加工等のエッチング加工により、絶縁材料により構成された配線板上に導体の配線パターンを形成し、さらに、導線200上にソルダーレジスト層を形成することにより得られる。回路基板2の配線板上に形成された配線パターンのうち、導線200がソルダーレジスト層によって覆われており、電極23が、回路基板2の上面21上において露出している。
【0024】
スライド固定孔24は、上面21と下面22とを貫通するよう形成されている、Y方向に長尺の開口である。スライド固定孔24は、コネクタ3および防水キャップ6を回路基板2上に固定するために設けられている。スライド固定孔24は、Y方向に延伸するよう形成されており、Z方向からの平面視において、+Y方向に突出する略凸形状を有している。スライド固定孔24は、第1のスリット241と、第1のスリット241の+Y方向の端部から+Y方向に延伸する第2のスリット242と、回路基板2の下面22上から、第2のスリット242を取り囲むように下方に突出する補強部243と、を備えている。
【0025】
図示の形態では、スライド固定孔24は、回路基板2上に3つ形成されている。具体的には、3つのスライド固定孔24は、-X方向側に位置する5つの電極23のグループと+X方向側に位置する5つの電極23のグループとの間、10個の電極23よりも-Y方向側かつ+X方向側の箇所、および10個の電極23よりも-Y方向側かつ-X方向側の箇所にそれぞれ形成されているが、コネクタ3を回路基板2上に固定する機能を提供することができれば、スライド固定孔24の数および位置はこれに限られない。
【0026】
第1のスリット241は、Y方向に直線状に延伸する矩形開口である。第1のスリット241の延伸方向(Y方向)に直交する横方向(X方向)の開口幅は、後述するコネクタ3のコネクタ固定部53の横方向の幅(具体的には、脚部531の横方向の幅、および、係合部532の上端部の横方向の幅)以上であり、かつ、後述する防水キャップ6の第1の固定爪65のフック部652の下端部の横方向の幅以上である。また、第1のスリット241のY方向の長さは、防水キャップ6の第1の固定爪65の延伸部651のY方向の長さと略等しい。
【0027】
第2のスリット242は、第1のスリット241の延伸方向(Y方向)の+Y方向の端部と連続し、Y方向に直線状に延伸する矩形開口である。第2のスリット242の横方向(X方向)の中心線は、第1のスリット241の横方向の中心線と一致している。また、第2のスリット242は、第1のスリット241の横方向の開口幅よりも狭い開口幅を有する。第2のスリット242の横方向の開口幅は、コネクタ固定部53の脚部531の横方向の幅以上であり、かつ、コネクタ固定部53の係合部532の上端部の横方向の幅未満である。第2のスリット242のY方向の長さは、脚部531のY方向の長さと略等しい。
【0028】
補強部243は、-Z方向からの平面視において略U字形状を有しており、第2のスリット242の-Y方向の縁部を除く縁部を取り囲むように、回路基板2の下面22上から下方に向かって突出する突部である。補強部243の内側面および外側面は、Z方向に直線状に延伸する平坦面である。また、補強部243の下面は、Z方向に対して直交する平坦面である。また、補強部243のZ方向の長さは、コネクタ固定部53の脚部531の回路基板2の下面22からの下方への突出量と略等しい。そのため、コネクタ3が、回路基板2上に取り付けられた状態において、補強部243の下面は、後述するコネクタ固定部53の係合部532の上端面と接触している。このように、回路基板2の係合部532の上端面と接触する部分に補強部243を設け、部分的に厚さを増加させることにより、回路基板2上でのコネクタ3の固定を安定化させることができる。
【0029】
固定孔25は、回路基板2の上面21と下面22とを貫通するよう形成されている矩形開口である。固定孔25は、防水キャップ6を回路基板2の下面22上に固定し、防水キャップ6のガタつきを防止するために設けられている。固定孔25内には、後述する防水キャップ6の第2の固定爪66が挿通される。なお、図示の形態では、固定孔25は、回路基板2上に4つ形成されている。具体的には、4つの固定孔25は、10個の電極23よりも-Y方向側、10個の電極23よりも+Y方向側、10個の電極23よりも+Y方向側かつ+X方向側の箇所、および10個の電極23よりも+Y方向側かつ-X方向側の箇所にそれぞれ形成されているが、防水キャップ6を回路基板2上に固定する機能を提供することができれば、固定孔25の数および位置はこれに限られない。
【0030】
位置決め孔26は、回路基板2の上面21と下面22とを貫通するよう形成されている、Y方向に長尺の矩形開口である。位置決め孔26内には、防水キャップ6の位置決め突起67が挿通される。これにより防水キャップ6の位置決めが実行される。なお、図示の形態では、位置決め孔26は、回路基板2上に2つ形成されており、10個の電極23よりも+X方向側の箇所、および、10個の電極23よりも-X方向側の箇所にそれぞれ形成されているが、防水キャップ6の位置決めを実行することができれば、位置決め孔26の数および位置はこれに限られない。
【0031】
図5に示されているように、フランジ部27は、回路基板2の下面22上から下方に向かって延伸する環状(筒状)部である。フランジ部27は、スライド固定孔24、固定孔25、および位置決め孔26を外側から囲むよう形成されている。したがって、スライド固定孔24、固定孔25、および位置決め孔26は、フランジ部27の内部空間内に位置している。コネクタユニット1が組み立てられた状態において、フランジ部27の下側が、防水キャップ6により覆われるため、フランジ部27の内部空間が、液密に封止される。このような構成により、フランジ部27の内部空間に位置するスライド固定孔24、固定孔25、および位置決め孔26を介して、水等の液体が回路基板2の上面21側に侵入することを防止できる。
【0032】
図4図6および図7に示されているコネクタ3は、1つ以上の電極23が形成された回路基板2の上面21上に取り付けられる電気コネクタである。回路基板2の上面21上にコネクタ3が取り付けられることにより、コネクタ3を介して、回路基板2上の1つ以上の電極23と、回路基板2の極数(電極23の数)に応じた数の電気ケーブル100との間の電気的接続が提供される。図7に示されているように、コネクタ3は、回路基板2の電極23と電気的に接続される1つ以上(図示の形態では、10個)のコネクタ端子4と、コネクタ端子4を内部に収納する絶縁性のハウジング5と、を備えている。なお、図示の形態では、コネクタ3を介して回路基板2に電気的に接続される電気ケーブル100の数は10であるが、本発明はこれに限られない。コネクタ3は、必要とされる電気的接続の数に応じて、1つ以上の電気ケーブル100を回路基板2の対応する電極23に電気的に接続するよう構成されていてもよい。
【0033】
コネクタ3は、弾性変形可能なコネクタ端子4を回路基板2上の電極23に押し付けることで、コネクタ端子4を回路基板2上の電極23に接触させるコンプレッションコネクタである。コネクタ3が、回路基板2の上面21上に取り付けられた状態において、コネクタ端子4が、回路基板2の対応する電極23に、所定の接触圧力で接触した状態で固定されている。このように、回路基板2の上面21上でコネクタ3が固定され、かつ、所定の接触圧力でコネクタ端子4が電極23に接触するので、振動環境下であっても、コネクタ端子4と電極23との間における接触を確実に維持することができる。以下、添付の図面を参照して、コネクタ3の各コンポーネントについて詳述する。
【0034】
図7および図8に示されているコネクタ端子4は、電気ケーブル100の芯線110(図9参照)に接続されるワイヤバレル部41と、電気ケーブル100の絶縁被覆部120(図9参照)を保持するインシュレーションバレル部42と、回路基板2の対応する電極23との間の電気的接続を確保するための接続部43と、接続部43を側方(X方向)から覆う一対の壁部44と、接続部43を先端側から覆う先端部45と、を備えている。コネクタ端子4は、Snメッキが全面に施された金属板に対して、打ち抜き加工および折り曲げ可能を施すことにより得られる。そのため、コネクタ端子4の表面上には、Snメッキ層が存在している。また、ワイヤバレル部41、インシュレーションバレル部42、および接続部43は、一体的に形成されている。
【0035】
ワイヤバレル部41は、接続部43の+Y方向側に位置し、圧着等により電気ケーブル100の芯線110に接続される部分である。ワイヤバレル部41に芯線110が接触するので、コネクタ端子4と芯線110とが電気的に接続される。インシュレーションバレル部42は、ワイヤバレル部41の+Y方向側に位置し、圧着等により電気ケーブル100の絶縁被覆部120を保持する部分である。接続部43は、回路基板2の対応する電極23との間の電気的接続を確保するための部分である。前述のように、ワイヤバレル部41に芯線110が接触しているので、接続部43が対応する電極23に接触すると、対応する電極23と電気ケーブル100との間の電気的接続が提供される。
【0036】
図8に示されているように、接続部43は、コネクタ端子4の挿入方向(Y方向)に直線状に延伸する基部431と、基部431の先端部(-Y方向側の部分)に設けられ、基部431の先端部から基端側(+Y方向)に向かって湾曲する第1の折り返し部432と、第1の折り返し部432から、基端側であって、かつ、基部431から離間する方向(-Z方向)に斜めに延伸する第1の延伸部433と、第1の延伸部433の基端部から基端側に延伸する円弧上の接点部434と、接点部434から、基端側であって、かつ、基部431に接近する方向(+Z方向)に斜めに延伸する第2の延伸部435と、第2の延伸部435の基端部に設けられた自由端436と、自由端436の下側において、基端側(+Y方向)に向かって直線状に延伸する支持板437と、第1の延伸部433の略中間部から自由端436の基端部まで延伸するスリット438(図6および図7参照)と、を備えている。
【0037】
基部431は、Y方向に延伸し、かつ、Z方向に直交する板状部分であり、コネクタ端子4の上板としても機能する。基部431は、ハウジング5内でのコネクタ端子4のロックのために、ハウジング5のランス523(図9参照)と係合する開口4311を備えている。開口4311は、基部431の基端部分を横方向(X方向)に横断している。開口4311より先端側の部分と、開口4311より基端側の部分とは、開口4311により分断されているが、一対の壁部44によって互いに接続されている。
【0038】
第1の折り返し部432は、基部431の先端部に設けられ、基部431の先端部から基端側(+Y方向)に向かって湾曲し、先端側(-Y方向)に突出する円弧部分を有するU字状の円弧状部分である。第1の折り返し部432は、第1の折り返し部432より基端側に位置する部分の変位(弾性変形)の支点として機能する。第1の折り返し部432の一方の端部は、基部431の先端部と連続している。第1の折り返し部432の他方の端部は、基端側であって、基部431から離間する方向、すなわち、図8中の右斜め下方向に向いている。
【0039】
第1の延伸部433は、第1の折り返し部432から、基端側であって、かつ、基部431から離間する方向、すなわち、図8中の右斜め下方向に直線状に延伸する板状部分である。接点部434は、第1の延伸部433の基端部から基端側に円弧状に延伸し、基部431から離間する方向に突出するよう設けられた突起である。接点部434は、コネクタ3が回路基板2に取り付けられた際、回路基板2の対応する電極23と接触する。
【0040】
第2の延伸部435は、接点部434から、基端側(+Y方向側)であって、かつ、基部431に接近する方向、すなわち、図8中の右斜め上方向に直線状に延伸する板状部分である。自由端436は、第2の延伸部435の基端部に設けられ、基端方向(+Y方向)に直線状に延伸する板状部分である。自由端436の先端部は、第2の延伸部435の基端部と連続している。自由端436の基端部は、いずれの部材または部分にも接続されていない非固定端となっている。
【0041】
支持板437は、自由端436よりも下方かつ基端側に位置し、+Y方向に向かって直線状に延伸し、かつ、Z方向に直交する板状部分である。支持板437は、一対の壁部44の第2の延伸部435よりも基端側(+Y方向側)に位置する部分の下端部を内側に折り曲げることにより形成されており、接続部43に対して外力が付与されていない自然状態において、自由端436を下方から支持する。支持板437は、基部431の開口4311よりも基端側の部分と間隙を介して対向している。図8に示されているように、支持板437の先端側(-Y方向)の上面は、自然状態において、自由端436の下面と接触しており、下方から自由端436を支持している。一方、図9に示されているように、コネクタ3が回路基板2上に取り付けられている状態においては、接点部434が回路基板2の電極23と接触し、接続部43が上方に弾性変形するため、自由端436は上方に変位する。そのため、支持板437の先端側(-Y方向)の上面は、自由端436の下面と接触していない。
【0042】
図6および図7に示されているように、スリット438は、第1の延伸部433の略中間部から自由端436の基端部まで延伸する細い間隙である。スリット438が形成されているため、接続部43は、第1の延伸部433の略中間部から自由端436の基端部にかけて二股に分かれている。
【0043】
図7に戻り、一対の壁部44は、基部431のX方向の両端部から互いに間隙を介して-Z方向に向かって直線状に延伸し、かつ、X方向に直交する板状部分である。接続部43の第1の折り返し部432、第1の延伸部433、接点部434、第2の延伸部435、および自由端436、支持板437、およびスリット438は、一対の壁部44の間の間隙内に位置している。また、第1の延伸部433の基端部、接点部434、および第2の延伸部435は、一対の壁部44間の間隙から外部(-Z方向)に突出している。したがって、一対の壁部44は、第1の折り返し部432、第1の延伸部433の基端部を除く部分、および自由端436、支持板437、およびスリット438を側方(X方向)から覆い、保護している。先端部45は、一対の壁部44の先端部をそれぞれ内側に向かって折り曲げて、互いに接触するようにして形成された部分である。先端部45は、第1の折り返し部432を先端側から覆い、保護している。
【0044】
図6および図7に示されている、ハウジング5は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の絶縁性材料の射出成形加工によって形成された絶縁性部材であり、電気ケーブル100の端部に接続されたコネクタ端子4を内部に収納する機能を有している。ハウジング5は、上面511、底面512、一対の側面513、先端面514、および基端面515を有する略直方体状の本体部51と、本体部51の基端面515上に形成された10個の端子挿入孔52と、本体部51の底面512から下方に向かって延伸する3つのコネクタ固定部53と、本体部51の底面512上に形成された3つのスペーサー54と、を備えている。
【0045】
本体部51は、上面511、底面512、一対の側面513、先端面514、および基端面515により規定される略直方体状の全体形状を有しており、内部においてコネクタ端子4を収納保持する機能を有している。本体部51の底面512は、コネクタ3が回路基板2の上面21上に取り付けられている状態において、回路基板2の上面21と対向している。
【0046】
本体部51は、底面512上に形成された10個の開口516を備えている。開口516は、底面512と端子挿入孔52の下面とを貫通するよう形成され、コネクタ端子4の挿通方向に直線状に延伸する開口部分である。開口516は、コネクタ端子4が、ハウジング5の端子挿入孔52の内部に収納されている状態において、コネクタ端子4の第1の延伸部433の基端部、接点部434、および第2の延伸部435を、本体部51から下方に露出させるために設けられている。また、開口516は、基端側(+Y方向側)において外部に対して解放されているが、先端側(-Y方向側)において閉鎖されている。
【0047】
コネクタ端子4を端子挿入孔52内に挿入する際、コネクタ端子4の第1の延伸部433の基端部、接点部434、および第2の延伸部435が、開口516内を前進する。開口516のX方向の開口幅は、コネクタ端子4の第1の延伸部433の基端部、接点部434、および第2の延伸部435のX方向の幅以上、かつ、一対の壁部44の間の間隙の幅未満となるように形成されている。このような構成により、一対の壁部44が端子挿入孔52の下面により支持され、端子挿入孔52内においてコネクタ端子4を保持することができる。さらに、開口516から第1の延伸部433の基端部、接点部434、および第2の延伸部435が、本体部51から下方に露出するため、端子挿入孔52内にコネクタ端子4を収納した状態で、接点部434を回路基板2の電極23と接触させることが可能となる。
【0048】
図6および図7に示されているように、10個の端子挿入孔52は、横方向(X方向)に並列しており、複数のパーティション521を介して互いに離間して、本体部51の基端面515から先端面514まで直線状に延伸している。端子挿入孔52は、Y方向からの平面視において略矩形の形状を有している。10個の端子挿入孔52のそれぞれは、ハウジング5の本体部51をY方向に貫通している。10個の端子挿入孔52内に10個のコネクタ端子4がそれぞれ挿入され、端子挿入孔52内において保持される。
【0049】
図9に示されているように、端子挿入孔52は、端子挿入孔52の基端部に位置するガイド部522と、ガイド部522の先端部から先端方向(-Y方向)に延伸するランス523と、ランス523よりも先端側であって、端子挿入孔52の先端部において、両側の一対のパーティション521のそれぞれから内側に突出する一対の突部528(図7参照)と、ガイド部522よりも先端側に位置し、かつ、ランス523の下方に位置する端子保持部529と、を備えている。
【0050】
ガイド部522は、端子挿入孔52の基端部に位置し、コネクタ端子4の端子挿入孔52内への挿入をガイドするための部位である。ガイド部522は、一対のパーティション521と、本体部51の上面511および底面512の内側面とによって規定される矩形状の開口部分である。ガイド部522のZ方向(高さ方向)の長さは、図8に示した壁部44の高さh1よりも大きい。そのため、容易にコネクタ端子4をガイド部522内に挿入することができる。
【0051】
ランス523は、端子挿入孔52の+Z方向の内側面上であって、ガイド部522の先端部から先端方向(-Y方向)に延伸する部分である。ランス523は、基端部が本体部51と一体化しており、先端部が自由端となっている片持ち梁構造を有している。ランス523は、先端部の下側面から下方に向かって突出するロック部524と、ロック部524の先端面である平坦面525と、ランス523の先端部に形成された先端突出部526と、を備えている。ロック部524は、ランス523の先端部の下側面から先端方向かつ下方に向かって傾斜して突出する突部である。平坦面525は、ロック部524の先端面であって、Y方向と略直交している。先端突出部526は、ランス523の先端部から先端側に突出する突部である。また、ランス523の上側面と本体部51の上面の内側面の間には、逃げ部527が形成されている。
【0052】
後述するように、端子挿入孔52内にコネクタ端子4が挿入された際、ランス523のロック部524がコネクタ端子4によって上方に押圧され、ランス523の基端部を支点として、ランス523が上方に弾性変形(変位)し、逃げ部527内に移動する。その後、接続部43が端子保持部529に到達すると、ランス523が弾性復元し、ロック部524がコネクタ端子4の開口4311内に挿入され、端子挿入孔52内においてコネクタ端子4がロックされる。また、端子挿入孔52内においてコネクタ端子4がロックされた状態において、本体部51の先端側(-Y方向側)から、端子挿入孔52内にマイナスドライバー等の任意のツールを挿入し、先端突出部526の下側に引掛けて、ランス523を上方に弾性変形させることにより、端子挿入孔52内でのコネクタ端子4のロックを解除し、コネクタ端子4を端子挿入孔52から引き抜くことが可能となる。
【0053】
突部528は、ランス523よりも先端側の一対のパーティション521の内側面上のそれぞれに形成された平坦な部分である。突部528は、一対のパーティション521の内側面のそれぞれから端子挿入孔52の内側(X方向)に向かって突出し、コネクタ端子4の挿入方向(Y方向)に直線状に延伸している。コネクタ端子4が端子挿入孔52内に収納されている状態において、突部528の下面は、一対の壁部44の上面と接触し、さらに、本体部51の底面512の内側面が、一対の壁部44の下面と接触している。このような構成により、端子挿入孔52内におけるコネクタ端子4のガタつきを防止することができる。
【0054】
端子保持部529は、一対のパーティション521と、ランス523の下面と、一対の突部528の下面によって規定される矩形状の開口部分である。端子保持部529の高さ(底面512の内側面から突部528の下面までのZ方向の長さ)は、ガイド部522の高さ(底面512の内側面から上面511の内側面までのZ方向の長さ)よりも小さい。端子保持部529とガイド部522との間は、Z方向の長さが基端側から先端側に向かって漸減する傾斜部によって接続されている。
【0055】
また、図6に示されているように、ガイド部522の下面および端子保持部529の先端側の部分を除く下面には、前述の開口516が形成されている。そのため、コネクタ端子4が端子挿入孔52内に収納されている状態において、第1の延伸部433の基端側の部分、接点部434、および第2の延伸部435は、開口516から下方に露出している。
【0056】
図6および図7に戻り、3つのコネクタ固定部53のそれぞれは、ハウジング5の本体部51の底面512から下方に向かって延伸し、回路基板2のスライド固定孔24内に挿通される部分である。3つのコネクタ固定部53のそれぞれは、コネクタ3を回路基板2の上面21上に固定するために設けられている。3つのコネクタ固定部53は、具体的には、本体部51の底面512のX方向の両端部かつ先端部、および、底面512のX方向の略中央部かつY方向の略中央部から下方に向かってそれぞれ延伸している。3つのコネクタ固定部53は、形成されている箇所が異なる点を除き、互いに同様の構成を有している。そのため、以下、代表して、図7において、本体部51の底面512の+X方向側の端部上に形成されたコネクタ固定部53の構成について詳述する。
【0057】
コネクタ固定部53は、本体部51の底面512から、下方に直線状に延伸する板状の脚部531と、脚部531の下端部に形成され、脚部531の下端部の両側面(X方向の面)から横方向(X方向)に延伸する係合部532と、を備えている。脚部531は、コネクタ3が回路基板2の上面21に取り付けられた状態において、回路基板2の第2のスリット242内を挿通する部分である。脚部531の横方向の幅は、上方から下方に向かって略一定であり、第2のスリット242の横方向の幅以下である。また、脚部531のY方向の長さは、第2のスリット242のY方向の長さと略等しい。
【0058】
係合部532は、上方から下方に向かって横方向の幅が漸減するテーパー形状を有している。係合部532の上端部の横方向(X方向)の幅は、第1のスリット241の横方向の幅以下であり、かつ、第2のスリット242の横方向の幅よりも大きい。そのため、コネクタ3が回路基板2の上面21上に取り付けられた状態において、係合部532は、回路基板2の下面22(具体的には、補強部243の下面)と係合し、回路基板2上からのコネクタ3の抜け落ちが防止される。係合部532は、脚部531の下端部の両側面のそれぞれから横方向に延伸する平坦部533と、平坦部533の外側端部から下方、かつ、脚部531に接近する方向(内側)に斜めに延伸する傾斜部534と、を備えている。
【0059】
平坦部533は、脚部531の下端部の両側面のそれぞれから外側に直線状に延伸する部分である。平坦部533の上面は、Z方向に対して垂直な平坦面となっている。平坦部533の上面は、コネクタ3が回路基板2の上面21において固定されている状態において、回路基板2の下面22(具体的には、補強部243の下面)と対向し、接触する。
【0060】
傾斜部534は、上方から下方に向かって横方向(X方向)の幅が漸減するテーパー形状を有する部分である。傾斜部534の外側面は、上方から下方に向かって、内側方向に傾斜する傾斜面となっている。回路基板2の第1のスリット241内にコネクタ固定部53を挿通する際、第1のスリット241の縁部が、傾斜部534の外側面上をスライドするので、コネクタ固定部53を第1のスリット241内にスムーズに挿通することができる。
【0061】
コネクタ3の回路基板2の上面21上への取り付けの際、コネクタ固定部53が、回路基板2の上面21側から第1のスリット241内に挿通される。回路基板2およびコネクタ3は、コネクタ固定部53が第1のスリット241内に挿通された際、コネクタ端子4の接点部434が、回路基板2の電極23と接触するよう構成されている。その後、コネクタ固定部53の脚部531を第1のスリット241から第2のスリット242へ位置させるよう、コネクタ3を回路基板2の上面21上でスライドさせることで、コネクタ固定部53の係合部532の平坦部533の上面が、回路基板2の下面22(具体的には、補強部243の下面)と係合する。これにより、コネクタ3の+Z方向への移動が制限され、コネクタ3が回路基板2の上面21上で固定される。また、回路基板2およびコネクタ3は、コネクタ3が回路基板2の上面21上で固定された状態においても、コネクタ端子4の接点部434が、電極23と接触するよう構成されている。
【0062】
また、上述のスライド操作の際、コネクタ端子4と電極23の間に接点摺動が生じる。これにより、コネクタ端子4の接点部434の表面(下面)と電極23の上面とが擦り合され(ワイピングされ)、接点部434と電極23との間の接点摺動が生じる。このような接点摺動によって、コネクタ端子4の接点部434の表面に形成されたSnメッキの酸化被膜が除去される。そのため、コネクタ端子4としてSnメッキ端子を用いた場合であっても、コネクタ3の接触信頼性の低下を防止することができる。
【0063】
図6に示されているスペーサー54は、ハウジング5の底面512が回路基板2の上面21と接触しないようにするための筋状の突出部である。スペーサー54は、底面512上から下方に突出し、かつ、Y方向に直線状に延伸している。コネクタ3が回路基板2上に取り付けられた状態において、スペーサー54の下面が、回路基板2の上面21と接触するが、ハウジング5の底面512は、回路基板2の上面21と接触しない。
【0064】
図4に戻り、防水キャップ6は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の絶縁性材料の射出成形加工によって形成された部材である。防水キャップ6は、回路基板2の下面22のフランジ部27に取り付けられ、フランジ部27の内部空間を液密に封止する機能を有している。防水キャップ6は、フランジ部27のZ方向の平面形状に対応し、かつ、Z方向からの平面視において角部が面取りされた略矩形の平面形状を有している。防水キャップ6は、回路基板2の下面22と対向する底板61と、底板61の縁部上から上方に向かって延伸する壁部62と、底板61と壁部62との隣接部分に形成された環状の溝部63と、溝部63の内側面上に取り付けられた環状のパッキン64と、底板61上から上方に向かって延伸し、スライド固定孔24の第1のスリット241内に挿通される1つ以上(図示の形態では、2つ)の第1の固定爪65と、底板61上から上方に向かって延伸し、固定孔25内に挿通される1つ以上(図示の形態では、4つ)の第2の固定爪66と、底板61の上面から上方に突出し、位置決め孔26内に挿通される1つ以上(図示の形態では、2つ)の位置決め突起67と、を備えている。
【0065】
底板61は、角部が面取りされた略矩形の平面形状を有する板状部分であり、防水キャップ6の底部である。底板61の上面は、Z方向に直交する平坦面であり、防水キャップ6が回路基板2の下面22上に取り付けられた状態において、フランジ部27の内部空間を下方から覆っており、回路基板2の下面22と間隙を介して対向している。
【0066】
壁部62は、底板61の外縁部から、外縁部を取り囲むように上方に向かって延伸する部分であり、回路基板2のフランジ部27の形状に対応した環状(筒状)の形状を有している。防水キャップ6が下面22上に固定された状態において、壁部62は、フランジ部27の外側に位置しており、壁部62の内周面は、フランジ部27の外周面と対向している。
【0067】
溝部63は、底板61と壁部62との隣接部分に形成された環状の凹部である。溝部63は、フランジ部27を収納する上段部631と、上段部631よりも内側かつ下方(-Z方向)に形成された、パッキン64を収納するための下段部632(図9および図10参照)と、を備えている。
【0068】
上段部631は、壁部62と同心の環状凹部であり、防水キャップ6が回路基板2の下面22上に固定されている状態において、フランジ部27の下端部が上段部631と対向する。上段部631は、壁部62の内周面と隣接する箇所に形成されている。上段部631の上面は、壁部62の内周面から内側に延伸し、高さ方向(Z方向)に直交する平坦面となっている。また、上段部631の上面は、底板61の上面よりも下方に位置している。また、図9に示されているように、防水キャップ6が回路基板2の下面22上に固定されている状態において、上段部631の上面は、フランジ部27の下端面と間隙を介して対向しており、接触していない。
【0069】
下段部632は、後述のパッキン64を収納するために設けられている。図9に示されているように、下段部632は、上段部631の内側部分から下方に陥没するよう形成された、上段部631と同心の環状の凹部である。下段部632の上面は、上段部631の上面よりも下方に位置し、高さ方向(Z方向)に直交する平坦面となっている。下段部632内にパッキン64が収納され、下段部632の内周面に、パッキン64が取り付けられている。
【0070】
パッキン64は、環状の弾性部材であり、防水キャップ6とフランジ部27との間の隙間を塞ぎ、フランジ部27の内部空間を液密に封止する機能を有している。パッキン64は、軟質の樹脂材料、例えば、シリコンゴムから構成されている。パッキン64は、溝部63の下段部632内に位置し、溝部63の内周面上(下段部632の内周面上)に取り付けられている。パッキン64の外側面の下側部分は、下段部632の外周面と接触している。溝部63の上段部631内にフランジ部27が挿入されると、パッキン64の外側面の上側部分が、フランジ部27の内周面と接触し、パッキン64は、フランジ部27の内周面と溝部63の内周面との間で圧迫される。これにより、パッキン64が弾性変形し、フランジ部27と溝部63との間の隙間を液密に封止する。この結果、フランジ部27の内部空間が液密に封止され、コネクタユニット1に防水機能を提供する。
【0071】
第1の固定爪65は、底板61から上方に向かって直線状に延伸する突部である。第1の固定爪65は、コネクタ3が回路基板2の上面21上で固定されている状態(コネクタ固定部53が第2のスリット242内に挿通されている状態)において、回路基板2の下面22側から、第1のスリット241内に挿通される。第1の固定爪65は、回路基板2の下面22上に防水キャップ6を固定する機能を有している。さらに、第2のスリット242内に挿通された第1の固定爪65は、第2のスリット242内に挿通されたコネクタ固定部53にコネクタ固定部53の先端側(+Y方向側)から接触するため、コネクタ固定部53の脚部531を第2のスリット242から第1のスリット241へ位置させるためのコネクタ3の回路基板2の上面21上でのスライド移動を制限する。これにより、第1の固定爪65は、回路基板2の上面21上からコネクタ3が離脱することを防止する機能を提供している。第1の固定爪65は、底板61の上面から上方に向かって直線状に延伸する延伸部651と、延伸部651の上端部の外側面から外側に延伸するフック部652と、を備えている。
【0072】
延伸部651は、略角柱形状を有しており、延伸部651のY方向の長さおよびX方向の長さは、下方から上方に向かって略一定である。延伸部651のY方向の長さは、第1のスリット241のY方向の長さと略等しい。第1の固定爪65が回路基板2の第1のスリット241に挿通されると、延伸部651の+Y方向の面は、第2のスリット242に挿通されたコネクタ固定部53の脚部531の-Y方向の面と接触する(図10参照)。このような構成により、コネクタ固定部53の脚部531を第2のスリット242から第1のスリット241へ移動させるような、回路基板2の上面21上でのコネクタ3のスライド移動を制限することができる。その結果、コネクタ3の回路基板2上からの離脱を防止することができる。
【0073】
フック部652は、延伸部651の上端部から外側に延伸する部分である。フック部652は、回路基板2の上面21と係合し、防水キャップ6を回路基板2の下面22上に固定するため設けられている。フック部652は、内側から外側に向かって高さ(Z方向の長さ)が漸減する傾斜構造を有している。フック部652の外側面は、下方から上方に向かうにつれて外側から内側に向かって傾斜する傾斜面となっている。フック部652の下端面は、Z方向に対して直交する平坦面となっている。フック部652の外側面が上述のように傾斜しているため、第1の固定爪65を、回路基板2の下面22側から第1のスリット241内に挿入する際に、第1のスリット241の縁部がフック部652の外側面上をスライドし、第1の固定爪65が内側に向かって弾性変形する。その後、フック部652の下端面が第1のスリット241を乗り越えると、第1の固定爪65が外側に弾性復元する。このようなスナップフィットにより、フック部652の下端面が回路基板2の上面21と係合し、防水キャップ6が回路基板2の下面22上に固定される。
【0074】
第2の固定爪66は、底板61の上面から上方に向かって直線状に延伸する突部である。第2の固定爪66は、回路基板2の下面22側から、固定孔25内に挿通され、回路基板2の下面22上に防水キャップ6を固定する機能を有している。第1の固定爪65が回路基板2の上面21と係合することで提供される係合力に加えて、第2の固定爪66が回路基板2の上面21と係合することで提供される係合力によって、さらに安定的に回路基板2の下面22上に防水キャップ6を固定することができる。第2の固定爪66は、底板61の上面から上方に向かって直線状に延伸する延伸部661と、延伸部661の上端部の外側面から外側に延伸するフック部662と、を備えている。
【0075】
延伸部661は、略角柱形状を有しており、延伸部661のY方向の長さおよびX方向の長さは、下方から上方に向かって略一定である。また、延伸部661のY方向の長さおよび横方向の幅は、固定孔25のY方向の長さおよび横方向の幅以下となるよう形成されている。フック部662は、延伸部661の上端部から外側に延伸する部分である。フック部662は、回路基板2の上面21と係合し、防水キャップ6を回路基板2の下面22上に固定するため設けられている。フック部662は、内側から外側に向かって高さ(Z方向の長さ)が漸減する傾斜構造を有している。フック部662の外側面は、下方から上方に向かうにつれて外側から内側に向かって傾斜する傾斜面となっている。フック部662の下端面は、Z方向に対して直交する平坦面となっている。フック部662の外側面が傾斜面となっているため、第2の固定爪66を、回路基板2の下面22側から固定孔25内に挿入する際に、フック部662の外側面上を、固定孔25の縁部がスライドし、第2の固定爪66が内側に向かって弾性変形する。その後、フック部662の下端面が固定孔25を乗り越えると、第2の固定爪66が外側に弾性復元する。このようなスナップフィットにより、フック部662の下端面が回路基板2の上面21と係合し、防水キャップ6が回路基板2の下面22上に固定される。
【0076】
位置決め突起67は、底板61の上面から上方に向かって直線状に延伸し、かつ、Y方向に長尺の板状の突部である。位置決め突起67は、回路基板2の下面22側から、位置決め孔26内に挿通され、防水キャップ6を回路基板2の下面22上に取り付ける際に、防水キャップ6の回路基板2に対する位置決めを行うために設けられている。防水キャップ6を回路基板2の下面22上に取り付ける際には、第1の固定爪65、第2の固定爪66、および位置決め突起67の対応する第1のスリット241、固定孔25、および位置決め孔26へのそれぞれの挿通工程は略同時に行われるが、位置決め突起67の底板61からの高さ(Z方向の長さ)は、第1の固定爪65および第2の固定爪66の底板61からの高さよりも高いため、最初に位置決め突起67が位置決め孔26へ挿通される。これにより、防水キャップ6の回路基板2に対する位置決めが実行されるため、容易に防水キャップ6を回路基板2の下面22上に取り付けることができる。
【0077】
次に、図11図16を参照して、回路基板2と、コネクタ3と、防水キャップ6と、を含むコネクタユニット1の製造方法S100を詳述する。図11は、本発明のコネクタユニットの製造方法を示すフローチャートである。図12は、回路基板へのコネクタの取り付けを説明するための図である。図13は、回路基板のスライド固定孔の第1のスリットにコネクタのコネクタ固定部を挿入した状態の下面図である。図14は、回路基板上でのコネクタのスライドを説明するための図である。図15は、回路基板へのコネクタの取り付けが完了した状態の下面図である。図16は、回路基板への防水キャップの取り付けを説明するための図である。
【0078】
図11に示す製造方法S100は、コネクタユニット1の組み立てロボットまたは組み立て作業者によって実行される。最初に、工程S110において、図12に示されているように、コネクタ3のコネクタ固定部53を回路基板2の第1のスリット241に挿通する。コネクタ固定部53の第1のスリット241への挿通が完了すると、図13に示されているように、コネクタ固定部53の係合部532が回路基板2の下面22から下方に向かって突出する。この状態において、コネクタ端子4の接点部434は、回路基板2上の電極23と接触した状態となる。
【0079】
次に、工程S120において、図14に示されているように、コネクタ固定部53の脚部531を第1のスリット241から第2のスリット242に位置させるよう、コネクタ3を回路基板2の上面21上でスライドする。このようなスライド操作により、接点部434と電極23との間の接点摺動が生じる。前述のように、コネクタ端子4の表面上には、Snメッキ層が存在しており、メッキ表面が酸化腐食することでコネクタ端子4の表面にSnメッキの酸化被膜が形成されてしまうという問題がある。この問題に対して、上述のように工程S120において、コネクタ3を回路基板2上でスライドさせることで、接点部434の表面と電極23の上面が擦り合され、接点部434と電極23との間の接点摺動が生じ、これにより、接点部434の表面に形成された酸化被膜を効果的に除去することができる。この結果、コネクタ端子4としてSnメッキ端子を用いた場合であっても、コネクタ端子の接触信頼性の低下を防止することができる。
【0080】
また、図15に示されているように、工程S120のスライド操作が完了すると、コネクタ固定部53の係合部532が、回路基板2の下面22上から下方に突出する補強部243の下側(-Z方向)に位置し、係合部532の平坦部533の上面が補強部243の下面と接触する(図9参照)。これにより、係合部532と補強部243とが強固に係合し、回路基板2の上面21上でのコネクタ3の固定が安定化される。
【0081】
最後に、工程S130において、図16に示されているように、位置決め突起67を回路基板2の位置決め孔26に挿通し、防水キャップ6の回路基板2に対する位置決めを実行しながら、防水キャップ6の第1の固定爪65を、回路基板2の第1のスリット241内に挿通する。第1の固定爪65の第1のスリット241内への挿通が完了すると、第1の固定爪65の基端面(+Y方向の面)と第2のスリット242内に挿通されたコネクタ固定部53の脚部531の先端面(-Y方向の面)とが接触する(図10参照)。そのため、コネクタ固定部53の脚部531を第2のスリット242から第1のスリット241へ位置させるための回路基板2の上面21上でのコネクタ3のスライド(-Y方向のスライド)が防止される。このような構成により、コネクタ3の回路基板2上からの離脱を防止することができる。
【0082】
なお、第1の固定爪65が、第1のスリット241内に挿通されるのと略同時に、第2の固定爪66が回路基板2の固定孔25内に挿通される。第2の固定爪66を回路基板2の固定孔25内に挿通することで、防水キャップ6が回路基板2の下面22上にさらに強固に保持される。以上のように、防水キャップ6が回路基板2の下面22上に取り付けられると、コネクタユニット1の製造方法S100が終了する。
【0083】
上述のように、本発明のコネクタユニット1およびコネクタユニット1の製造方法S100では、コネクタ固定部53の脚部531を第1のスリット241から第2のスリット242へ位置させるよう、コネクタ3を回路基板2上でスライドさせるスライド操作によって、接点部434と電極23との間に接点摺動を生じさせることができる。そのため、従来技術と比較して、回路基板2にコネクタ3を取り付ける際に生じる接点摺動の量を大幅に長くすることができる。電極23と接点部434との間の接点摺動により、接点部434の表面に形成されたSnメッキの酸化被膜を十分に除去できるため、コネクタ端子4としてSnメッキ端子を用いた場合であっても、コネクタ端子4の接触信頼性の低下を防止することができる。
【0084】
また、本発明のコネクタユニット1およびコネクタユニット1の製造方法S100では、コネクタ固定部53の脚部531を第1のスリット241から第2のスリット242に位置させるよう、回路基板2の上面21上でコネクタ3をスライドした後、防水キャップ6の第1の固定爪65を第1のスリット241内に挿入する。第1の固定爪65の第1のスリット241内への挿通が完了すると、第1の固定爪65の+Y方向側の面がコネクタ固定部53の-Y方向側の面と接触する。これにより、コネクタ固定部53の脚部531を第2のスリット242から第1のスリット241へ位置させるための、回路基板2の上面21上でのコネクタ3のスライドが防止される。このような構成により、コネクタ3の回路基板2上からの離脱を防止することができる。
【0085】
以上、本発明のコネクタユニット1およびコネクタユニット1の製造方法S100を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、本発明の各構成に任意の構成のものを付加することができる。
【0086】
本発明の属する分野および技術における当業者であれば、本発明の原理、考え方、および範囲から有意に逸脱することなく、記述された本発明のコネクタユニット1の構成およびコネクタユニット1の製造方法S100の変更を実行可能であろうし、変更された構成を有するコネクタユニット1およびコネクタユニット1の製造方法S100もまた、本発明の範囲内である。
【0087】
また、図2図10、および、図12図16に示されたコネクタユニット1の構成要素の数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意の構成要素が追加若しくは組み合わされ、または任意の構成要素が削除された態様も、本発明の範囲内である。また、図11に示されたコネクタユニット1の製造方法S100の工程の数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意の工程が、任意の目的で追加若しくは組み合わされ、または、任意の工程が削除される態様も、本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0088】
1…コネクタユニット 2…回路基板 21…上面(第1の面) 22…下面(第2の面) 23…電極 24…スライド固定孔 241…第1のスリット 242…第2のスリット 243…補強部 25…固定孔 26…位置決め孔 27…フランジ部 3…コネクタ 4…コネクタ端子 41…ワイヤバレル部 42…インシュレーションバレル部 43…接続部 431…基部 4311…開口 432…第1の折り返し部 433…第1の延伸部 434…接点部 435…第2の延伸部 436…自由端 437…支持板 438…スリット 44…壁部 45…先端部 5…ハウジング 51…本体部 511…上面 512…底面 513…側面 514…先端面 515…基端面 516…開口 52…端子挿入孔 521…パーティション 522…ガイド部 523…ランス 524…ロック部 525…平坦面 526…先端突出部 527…逃げ部 528…突部 529…端子保持部 53…コネクタ固定部 531…脚部 532…係合部 533…平坦部 534…傾斜部 54…スペーサー 6…防水キャップ 61…底板 62…壁部 63…溝部 631…上段部 632…下段部 64…パッキン 65…第1の固定爪 651…延伸部 652…フック部 66…第2の固定爪 661…延伸部 662…フック部 67…位置決め突起 100…電気ケーブル 110…芯線 120…絶縁被覆部 200…導線 300…電子制御ユニット 500…コネクタユニット 600…回路基板 601…電極 602…固定孔 700…コネクタ 800…コネクタ端子 801…接点部 900…ハウジング 901…本体部 902…挿入孔 903…コネクタ固定部 904…脚部 905…係合部 S100…製造方法 S110、S120、S130…工程 h1…高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16