(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168831
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】外壁貫通配管ユニット
(51)【国際特許分類】
F16L 5/00 20060101AFI20241128BHJP
F24H 9/13 20220101ALN20241128BHJP
【FI】
F16L5/00 Q
F16L5/00 E
F16L5/00 P
F24H9/13 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085812
(22)【出願日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌野 裕介
【テーマコード(参考)】
3L037
【Fターム(参考)】
3L037DA03
3L037DB03
3L037DB08
(57)【要約】
【課題】外壁貫通配管ユニットにおいて、施工性、及び加工性を改善する。
【解決手段】プレートを貫通するジョイントは、プレートよりも屋内側でかつ屋内管接合部よりもプレート側に、屋内管接合部よりも大径の拡径部を有し、プレートよりも屋外側に、拡径部よりも小径に形成された雄ネジ部、拡径部から雄ネジ部における屋外管接合部側の端部まで形成された平面部、平面部内の拡径部側に形成され径方向外側に突出する突起、及び雄ネジ部よりも屋外管接合部側に形成された六角形部分を有し、プレートは、雄ネジ部の外周部の円弧部分と対向する円弧部、平面部と係合する直線部、及び突起と係合する凹部が形成された貫通孔を有している。雄ネジ部にナットが螺合し、プレートがナットと拡径部との間に挟持されることでジョイントがプレートに固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁材に形成された貫通孔に挿入されて固定される筒状のスリーブ管と、
前記スリーブ管の屋外側の端部を覆うように固定されるプレートと、
前記プレートを貫通して当該プレートに支持され、前記プレートの屋内側に屋内配管を接続可能な屋内管接合部を有し、前記プレートの屋外側に屋外配管を接続可能な屋外管接合部を有し、樹脂で成型されたジョイントと、
を備え、
前記ジョイントは、前記プレートよりも屋内側でかつ前記屋内管接合部よりも前記プレート側に、前記屋内管接合部よりも大径の拡径部を有し、前記拡径部よりも屋外側に、前記拡径部よりも小径に形成された雄ネジ部、前記拡径部から前記雄ネジ部における前記屋外管接合部側の端部まで形成された平面部、前記平面部内の前記拡径部側に形成され径方向外側に突出する突起、及び前記雄ネジ部よりも前記屋外管接合部側に形成された六角形部分を有し、
前記プレートは、前記雄ネジ部の外周部の円弧部分と対向する円弧部、前記平面部と係合する直線部、及び前記突起と係合する凹部が形成された貫通孔を有し、
前記雄ネジ部にナットが螺合し、前記プレートが前記ナットと前記拡径部との間に挟持されることで前記ジョイントが前記プレートに固定されている、
外壁貫通配管ユニット。
【請求項2】
前記ナットには、前記雄ネジ部が螺合する雌ネジ部と、前記雌ネジ部の谷径よりも大径に形成され前記突起が挿入される環状の座グリとが形成されている、
請求項1に記載の外壁貫通配管ユニット。
【請求項3】
前記雄ネジ部の軸方向長さは、前記六角形部分の軸方向長さ、及び前記屋外管接合部の軸方向長さよりも短い、
請求項1に記載の外壁貫通配管ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外壁貫通配管ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
給湯給水配管や追い焚き配管を壁に通す場合、給湯給水配管や追い焚き配管を通す穴を接近させて配置すると、壁が割れる場合があり、それを防ぐために、4つの継手を一つのユニットに集約した外壁貫通配管構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の外壁貫通配管構造では、金属材料を加工して形成された複数の継手が1枚のプレートに纏まって配置されおり、各継手には、レンチ、スパナ等の工具の掴み部として2つの平面部、いわゆる2面幅が設けられている。
【0005】
しかしながら、継手には掴み部としての2面幅が一つしかなく、2面幅を工具で掴む場合、工具の向きが一方向しかないため施工性に改善の余地がある。また、掴み部を増やそうとすれば金属材料の加工費の増加につながるため、加工性に改善の余地がある。
【0006】
本開示は上記事実を考慮し、施工性、及び加工性を改善可能な外壁貫通配管ユニットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る外壁貫通配管ユニットは、外壁材に形成された貫通孔に挿入されて固定される筒状のスリーブ管と、前記スリーブ管の屋外側の端部を覆うように固定されるプレートと、前記プレートを貫通して当該プレートに支持され、前記プレートの屋内側に屋内配管を接続可能な屋内管接合部を有し、前記プレートの屋外側に屋外配管を接続可能な屋外管接合部を有し、樹脂で成型されたジョイントと、を備え、前記ジョイントは、前記プレートよりも屋内側でかつ前記屋内管接合部よりも前記プレート側に、前記屋内管接合部よりも大径の拡径部を有し、前記拡径部よりも屋外側に、前記拡径部よりも小径に形成された雄ネジ部、前記拡径部から前記雄ネジ部における前記屋外管接合部側の端部まで形成された平面部、前記平面部内の前記拡径部側に形成され径方向外側に突出する突起、及び前記雄ネジ部よりも前記屋外管接合部側に形成された六角形部分を有し、前記プレートは、前記雄ネジ部の外周部の円弧部分と対向する円弧部、前記平面部と係合する直線部、及び前記突起と係合する凹部が形成された貫通孔を有し、前記雄ネジ部にナットが螺合し、前記プレートが前記ナットと前記拡径部との間に挟持されることで前記ジョイントが前記プレートに固定されている。
【0008】
第1の態様に係る外壁貫通配管ユニットによれば、ジョイントの雄ネジ部がプレートの貫通孔に挿入された状態でナットを雄ネジ部に螺合し、プレートをナットと拡径部との間に挟持されることでジョイントがプレートに固定されている。
【0009】
第1の態様に係る外壁貫通配管ユニットのジョイントは、樹脂で成形されているので、金属材料を加工して得られたジョイントと比較して、加工性に優れたものとなる。
【0010】
プレートの貫通孔にジョイントの雄ネジ部を挿入したときに、雄ネジ部に形成された平面部を貫通孔の直線部に係合させ、かつ突起を凹部に係合させることで、雄ネジ部に螺合したナットを締め付ける際のジョイントの供回りを抑制できる。
【0011】
ところで、ジョイントを樹脂の成形品にすると、金属製にした場合に比較して供回りに対する強度が低くなってしまう。しかし、ジョイントに平面部、及び突起を設け、プレートのプレート貫通孔に平面部、及び突起と係合する直線部、及び凹部を設けることで、ジョイントの平面部に突起を設けず、貫通孔に該突起と係合する凹部を設けない場合に比較して、プレートからジョイントに作用する応力を分散でき、供回りの耐強度を向上させることができる。これにより、ナットを締め付ける際のジョイントの損傷を抑制することができる。
【0012】
ジョイントは、六角形部分をレンチで掴むことができる。六角形部分をレンチで掴むことで、ジョイントが回転しないように押えることができる。例えば、ジョイントの屋外管接合部と屋外配管の袋ナットとをネジで接合する場合、袋ナットを締め付ける際のジョイントの供回りを抑制することができる。ジョイントは、レンチで掴む部分が六角形となっているので、レンチで掴む方向を少なくとも3方から選択することができ、レンチが他のジョイントに干渉し難く、レンチの操作性、即ち、施工性が向上する。
【0013】
第2の態様に係る外壁貫通配管ユニットは、第1の態様に係る外壁貫通配管ユニットにおいて、前記ナットには、前記雄ネジ部が螺合する雌ネジ部と、前記雌ネジ部の谷径よりも大径に形成され前記突起が挿入される環状の座グリとが形成されている。
【0014】
第2の態様に係る外壁貫通配管ユニットでは、ナットに、突起が挿入される環状の座グリが形成されているため、ジョイントの突起がプレートの屋外側に突出した際に、プレートから突出した突起に干渉することなく、ナットを締め付けることができる。これにより、ナットの軸方向側面をプレートに密着させることが可能となり、プレートを拡径部とナットとの間に挟持し、ジョイントをプレートに確実に固定することができる。
【0015】
第3の態様に係る外壁貫通配管ユニットは、第1の態様に係る外壁貫通配管ユニットにおいて、前記雄ネジ部の軸方向長さは、前記六角形部分の軸方向長さ、及び前記屋外管接合部の軸方向長さよりも短い。
【0016】
第3の態様に係る外壁貫通配管ユニットでは、雄ネジ部の軸方向長さを、六角形部分の軸方向長さ、及び屋外管接合部の軸方向長さよりも短くしたので、雄ネジ部に螺合したナットの締込量(軸方向の移動量。言い換えれば、ナットの回転量)を小さくすることができ、ナットの締め付け作業時間を短縮できる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本開示の外壁貫通配管ユニットによれば、施工性、及び加工性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の一実施形態に係る外壁貫通配管ユニットを示す断面図である。
【
図2】外壁貫通配管ユニットの屋外配管が接続される給湯器の構成を示す正面図である。
【
図3】外壁貫通配管ユニットを示す分解斜視図である。
【
図4】プレート貫通孔とジョイントの位置関係を示すジョイントの断面図である。
【
図6】プレートに固定されたジョイントを示す断面図である。
【
図7】(A)はスパナの向きを示す本開示の一実施形態に係る外壁貫通配管ユニットの正面図であり、(B)はスパナの向きを示す比較例に係る外壁貫通配管ユニットの正面図である。
【
図8】(A)は比較例に係る外壁貫通配管ユニットを示す側面図であり、(B)は本開示の一実施形態に係る外壁貫通配管ユニットを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1乃至
図8にしたがって、本開示の一実施形態としての外壁貫通配管ユニット1を説明する。
図1に示すように、外壁貫通配管ユニット1は、屋内と屋外との間で外壁材5を貫通して配管する構造であり、例えば、
図2に示す建物の屋外側に設けられる給湯器2に配管を接続する構造である。給湯器2は、本実施形態においては、給湯機能と、風呂の追い炊き機能と、床暖房や温水ルームヒータなどの温水暖房用端末機器に温水を供給する暖房機能とを有する給湯器2である。なお、本開示における外壁貫通配管ユニット1は、例えば給湯機能のみを有する給湯器2の配管構造であってもよい。
【0020】
給湯器2は、給湯器本体21と、給湯器本体21の下部に形成される配管カバー22とを有している。配管カバー22の内部には各種の配管及び配線がなされているが、
図2においては、図示の都合上、外壁の屋外面から給湯器2まで繋がる配管及び配線の記載は省略する。
【0021】
図1、及び
図2に示すように、給湯器2は、建物の屋内から冷水が供給される給水管、内部で温められた温水を建物の屋内に供給する給湯管、及び浴槽に貯留されている温水を給湯器2の内部で加熱しつつ循環させる2本の追い炊き管の合計4本の屋外配管4が接続される。また、配管カバー22内には給水管、給湯管、及び追い炊き管の屋外配管4の他に、ガス配管、電源配線などの給湯器2を動作させるために必要な配管、配線(図示省略)も形成されており、これらの配線や配管はそれぞれ給湯器2に接続されている。
【0022】
以下に、給水管、給湯管、及び追い炊き管の屋内配管3及び屋外配管4を、外壁材5を貫通させて接続する外壁貫通配管ユニット1について説明する。
【0023】
図1、及び
図3に示すように、外壁貫通配管ユニット1は、外壁材5に形成された外壁貫通孔50に挿入されて固定される筒状のスリーブ管6と、スリーブ管6の屋外側の端部を覆うように固定されるプレート7と、プレート7を貫通して当該プレート7に支持されるジョイント8を備えている。ジョイント8の屋内側には屋内配管3が接続され、ジョイント8の屋外側には屋外配管4が接続される。外壁材5の外壁貫通孔50は円形貫通孔であり、屋外側に拡径されるように掘り込まれた掘込部51が形成されている。掘込部51は、底面が鉛直な平坦面を形成している。
【0024】
なお、本実施形態のジョイント8は、樹脂の成形品である。屋内配管3は、一例としてポリブデン管又は架橋ポリエチレン管であり、屋外配管4は、一例としてステンレスフレキ管であるが、他の材料で形成されていてもよい。なお、屋外配管4の端部には、袋ナット4Aが設けられている。
【0025】
スリーブ管6は、外壁材5に形成された外壁貫通孔50に挿入されて固定されている。スリーブ管6は、樹脂製の円筒形状で屋外側端部が拡径してフランジ61が形成されている。当該スリーブ管6は、外周面にネジ部62が形成されており、ネジ部62にリング状の固定リング63を螺着させて締め付けることで、フランジ61と固定リング63とで外壁材5を挟んで当該外壁材5の外壁貫通孔50に固定されている。固定リング63は、外壁材5の屋内側で外壁材5の屋内面に当接しており、フランジ61は、外壁材5の外壁貫通孔50の屋外側の周縁に掘り込んで形成された掘込部51の底面に、例えば合成ゴムなどの弾性体からなる円環状の屋外側シール材65を挟んで接近している。
【0026】
図1、及び
図3に示すように、外壁貫通孔50とスリーブ管6との間には、不織布製の環状の二次防水材64が設けられている。外壁材5の屋外面は意匠性のための凹凸が設けられているが、掘込部51の底面が平坦に形成されているので、屋外側シール材65を挟んで、フランジ61と掘込部51との間の水密性を保つことができる。フランジ61はその全体が掘込部51内に収納される大きさである。スリーブ管6の内側には、等間隔で4箇所にビス貫通孔66が形成されており、スリーブ管6のそれぞれのビス貫通孔66の屋内側にビス固定ナット67が埋設されている。
【0027】
プレート7はステンレススチール製であり、円形平板状に形成されている。また、プレート7をスリーブ管6の屋外側の端部を覆うように配置したときに、当該プレート7の、スリーブ管6のビス貫通孔66に整合する位置には、それぞれ挿入孔71が形成されている。
【0028】
プレート7は、フランジ61の屋外面に当接する円環状のプレート用シール材72を挟んで、フランジ61に近接している。プレート7を、スリーブ管6の屋外側の端部を覆うように配置して、プレート7の挿入孔71及びフランジ61のビス貫通孔66を通してビス固定ナット67に固定ビス9を螺着させることで、当該プレート7がフランジ61の屋外側に固定されている。
【0029】
プレート7には、ジョイント8を挿入可能なプレート貫通孔73が形成されている。本実施形態のプレート貫通孔73は、1つのプレート7に例えば4つ形成されており、それぞれのプレート貫通孔73にジョイント8が挿入されて固定される。
【0030】
図4に示すように、プレート貫通孔73は、後述するジョイント8に形成された雄ネジ部82の外周部の円弧部分と対向する2つの円弧部75と、当該2つの円弧部75を繋ぐ直線部76と、直線部76の中央部分に形成される略矩形の凹部77とを有している。各プレート貫通孔73は、その中心がプレート7の中心から等しい距離を開けて形成されている。
【0031】
図5、及び
図6に示すように、ジョイント8は、プレート7から屋内側に突出する屋内管接合部80と、プレート7から屋外側に突出する部分の先端側に形成される屋外管接合部の一例としての屋外管接合ネジ部81とを備えている。さらに、ジョイント8は、プレート7から屋外側に突出する部分のプレート7側に形成される雄ネジ部82と、雄ネジ部82と屋内管接合部80との間に形成され屋内側に配置されるフランジ状に広がり、屋内管接合部80よりも大径に形成された拡径部84と、屋外管接合ネジ部81と雄ネジ部82との間に形成される六角形部分87とを有している。
【0032】
なお、本実施形態の屋外管接合ネジ部81は、雄ネジ部82よりも小径の雄ネジであり、屋外配管4の端部に設けた袋ナット4Aが螺合する部位である。また、雄ネジ部82は、後述するジョイント固定ナット83が螺合する部位である。
【0033】
ジョイント8には、屋内管接合部80に屋内配管3の端部が固定されている。また、屋外管接合ネジ部81には、屋外配管4の袋ナット4Aが螺合して屋外配管4が固定されている。屋内配管3と屋外配管4とはジョイント8の内部通路8Aで互いに連通しており、冷水又は温水を屋内外にやり取りしている。
【0034】
屋内管接合部80は、屋内配管3を差し込むだけで接続が行われるいわゆるワンタッチ式継手であるが、他の形式の継手であってもよい。屋外管接合ネジ部81の雄ネジは、屋外管接合部の一例であるが、屋外管接合部は、他の形式の継手であってもよい。
【0035】
雄ネジ部82には、雄ネジ部82をプレート貫通孔73に挿入した際に、円弧部75と対向しネジが切られていない円柱部88と、円柱部88の屋外管接合ネジ部81側に形成されたネジ形成部85(外径は、円柱部88と同径)とが設けられている。さらに、雄ネジ部82には、プレート貫通孔73の2つの直線部76と夫々対向し、ネジが切られていない2つの平面部86が設けられている。平面部86は、拡径部84からネジ形成部85における屋外側(屋外管接合ネジ部81側)の端部まで軸方向に沿って延びるように形成されている。2つの平面部86は、ジョイント8の軸線を挟んで両側に設けられ、かつ互いに平行に設けられている。なお、互いに平行とされた2つの平面部86のことを、二面幅と言い換えることもできる。
【0036】
さらに、平面部86の周方向中央部には、径方向外側へ突出する突起89が拡径部84に隣接して形成されている。突起89は、ジョイント8の外周側から見て略矩形に形成されている。突起89は、ジョイント8の軸方向の寸法が、一例として、プレート7の厚さ寸法と後述する止水パッキン90(
図6参照)の厚さ寸法との和と同等(または同等以上であってもよい)である。また、突起89は、幅寸法(ジョイント8の軸方向とは直交する方向の寸法)が、平面部86の幅方向(ジョイント8の軸方向とは直交する方向)の寸法よりも短い。一例として、突起89の幅寸法は、平面部86の幅方向の寸法の1/2程度である。なお、突起89の径方向外側の輪郭形状は円弧形状であり、円柱部88の外輪郭線の延長線上にある。ジョイント8の軸直角断面における突起89の断面形状は、プレート7に形成されたプレート貫通孔73の凹部77と相似形である。言い換えれば、突起89は、凹部77に嵌合する形状に形成されている。
【0037】
ジョイント8の六角形部分87の外径は、ネジ形成部85の谷径以下であり、六角形部分87における6個の平面部分87Aのうちの2つは、平面部86と軸方向に連続するように形成されている。また、六角形部分87の外径(外接円の径)は、ジョイント固定ナット83の内径よりも小さく、六角形部分87は、ジョイント固定ナット83を挿通可能とされている。また、プレート貫通孔73の内接円の径は、六角形部分87の外接円の径よりも大径であるため、六角形部分87は、プレート貫通孔73を挿通可能である。
【0038】
雄ネジ部82が以上のように形成されているので、
図4に示すように、プレート貫通孔73にジョイント8の雄ネジ部82を挿入したときに、雄ネジ部82の平面部86がプレート貫通孔73の直線部76に係合し、かつ突起89が凹部77に嵌り込んで嵌合するので、ジョイント8がプレート貫通孔73内で回転することが防止される。
言い換えれば、プレート貫通孔73にジョイント8の雄ネジ部(平面部86、及び突起8が形成されている部分)82が嵌合するので、雄ネジ部82にジョイント固定ナット83を締め付ける際のジョイント8の供回りを抑制できる。
なお、「雄ネジ部82の平面部86がプレート貫通孔73の直線部76に係合」とは、「平面部86と直線部76とが互いに対向して互いに接触している」と言い換えることができ(但し、実質的に接触していればよく、両者の間に僅かな隙間があってもよい。)、また、「雄ネジ部82の平面部86がプレート貫通孔73の直線部76に当接」と言い換えることもできる。
【0039】
なお、ジョイント8において、ネジ形成部85の軸方向長さは、六角形部分87の軸方向長さ、及び屋外管接合ネジ部81の軸方向長さよりも短くなっている。
【0040】
図6に示すように、ジョイント固定ナット83は、雄ネジ部82に螺合できる薄型の六角ナットである。屋外側からジョイント固定ナット83を雄ネジ部82に螺合して締め付けることで、拡径部84とジョイント固定ナット83との間に、環状に形成された止水パッキン90、プレート7、及び環状に形成された滑りパッキン91を挟み込んで、ジョイント8をプレート7に固定することができる。
【0041】
本実施形態のジョイント固定ナット83には、屋内側には、内周に形成された雌ネジの谷径よりも大径とされた環状の座グリ83Aが形成されている。この座グリ83Aは、円柱部88、及びプレート7の屋外側に突出した突起89、及び円柱部88が、ジョイント固定ナット83の内周部(雌ネジ)に干渉しないようにするための逃げとて形成されている。
【0042】
図2に示すように、ジョイント8は、例えば1つのプレート7に4つ配置されている。ジョイント8は、屋内側から給湯器2に冷水を供給する屋内配管3及び屋外配管4を接続する給水用のジョイント8a、給湯器2から屋内側に温水を供給する屋内配管3及び屋外配管4を接続する給湯用のジョイント8b、浴槽と給湯器2との間で温水を循環させるそれぞれ2つずつの屋内配管3及び屋外配管4を接続する追い炊き用の2つのジョイント8cが含まれる。
【0043】
なお、ジョイント8は、1つのプレート7に4つ配置されるものに限定されるものではなく、必要に応じて増減できる。
【0044】
(組立、作用、効果)
以上のような外壁貫通配管ユニット1において、当該外壁貫通配管ユニット1を組み立てる工程を説明する。
(1) 先ず、プレート7のプレート貫通孔73に、屋内側からジョイント8を挿入する。この際、止水パッキン90が拡径部84とプレート7との間に配置されるように、そして、ジョイント8の突起89がプレート7に形成されたプレート貫通孔73の凹部77に係合するようにプレート貫通孔73にジョイント8を挿入する。
【0045】
(2) プレート7の屋外側に突出したジョイント8の雄ネジ部82に滑りパッキン91を取り付け、次に、雄ネジ部82にジョイント固定ナット83を螺合し、図示しない工具(一例として、
図7(A)に示すレンチ92等)を用いてジョイント固定ナット83を締め付ける。なお、ジョイント固定ナット83は、座グリ83A側を雄ネジ部82に向けて締め付ける。これにより、ジョイント8の拡径部84とジョイント固定ナット83との間に止水パッキン90、プレート7、及び滑りパッキン91が挟持され、ジョイント8がプレート7に固定される。
【0046】
ところで、ジョイント固定ナット83を締め付けると、弾性材料からなる止水パッキン90が圧縮され、ジョイント8の円柱部88、及び突起89の一部がプレート7の屋外側に突出する場合があるが、ジョイント固定ナット83に突起89を逃げる座グリ83Aが形成されているので、円柱部88、及び突起89がジョイント固定ナット83に干渉することなくジョイント固定ナット83を締め付けることができる。
【0047】
図4に示すように、ジョイント8の平面部(二面幅)86、及び突起89と、プレート7のプレート貫通孔73の直線部76、及び凹部77とが係合した状態でジョイント固定ナット83を締め付けるので、ジョイント固定ナット83を締め付ける際のジョイント8の供回りが抑制される。
【0048】
ここで、本実施形態のように、ジョイント8に2つの平面部86(二面幅)、及び突起89を設け、プレート7のプレート貫通孔73に平面部86、及び突起89と係合する直線部76、及び凹部77を設けることで、ジョイント8の供回りを抑制することができる。
【0049】
さらに、平面部86に突起89を設けているので、平面部86に突起89を設けない場合に比較して、プレート7からジョイント8に作用する応力を分散でき、ジョイント8を樹脂で成形しても供回りの耐強度を向上させることができ、また、樹脂で成形されたジョイント8の損傷を抑制することができる。
【0050】
(3) ジョイント8がプレート7に固定された後、ジョイント8の屋外管接合ネジ部81に、屋外配管4の接続を行う。
屋外配管4を屋外管接合ネジ部81に接続する際には、
図7(A)に示すように、六角形部分87の何れか2つの平面部分87Aをレンチ92で挟んでジョイント8を押え、屋外管接合ネジ部81に屋外配管4の袋ナット4Aを螺合して締め込む。なお、レンチ92でジョイント8を押えているので、屋外管接合ネジ部81に屋外配管4の袋ナット4A強く締め込むことができる。これにより、ジョイント8の屋外管接合ネジ部81に屋外配管4を確実に接続することができる。
【0051】
図7(B)には、本実施形態の六角形部分87が設けられておらず、レンチ92で掴む部分としては平面部186が2つ、即ち、二面幅が一つしかない比較例に係るジョイント108が示されている。
図7(B)に示すように、他のジョイント108に干渉しないように二面幅を掴むには、レンチ92で掴む方向が1方しかない。
【0052】
一方、本実施形態のジョイント8では、レンチ92で掴む部位が六角形部分87であるため、
図7(A)に示すように、他のジョイント8に干渉しないように、レンチ92で掴む方向を少なくとも3方から選択することができ、レンチ92の操作性が向上する。言い換えれば、本実施形態のジョイント8では、レンチ92等の工具のアプローチ方向が多く、比較例に比較してレンチ92の操作性が良好である。
【0053】
また、
図8(A)には、六角形部分87が設けられていない比較例に係るジョイント108が固定された外壁貫通配管ユニット100が示されている。なお、
図8(A)において、本実施形態と同一構成には同一符号を付している。
比較例に係るジョイント108は、実施形態のジョイント8と全長が同じであり、屋外管接合ネジ部81の長さも同じである。比較例に係るジョイント108では、ジョイント固定ナット83の締め込み量(軸方向の移動量)が、プレート7から突出している雄ネジ部182の長さL0となる。
【0054】
図8(B)に示すように、本実施形態のジョイント8は、ジョイント固定ナット83を挿通可能な六角形部分87が設けられているため、ジョイント固定ナット83の締め込み量L1は、比較例の雄ネジ部182の長さ-六角形部分87の厚さとなり、締め込み量L1は、比較例の締め込み量L0よりも短くなるため、ジョイント8をプレート7に組み付け固定する際の組立性が向上する。
【0055】
なお、ジョイント8は、樹脂の成形品であるため、金属素材を切削加工して形成する場合に比較して、加工性、言い換えれば製造が容易である。
また、本実施形態のジョイント8は樹脂製であるため、金属製である場合に比較して結露し難くなる。
【0056】
[その他の実施形態]
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0057】
上記実施形態では、プレート7とジョイント固定ナット83との間に滑りパッキン91を設けたが、滑りパッキン91は必要に応じて設ければよく、無くてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…外壁貫通配管ユニット、6…スリーブ管、7…プレート、8…ジョイント、73…プレート貫通孔、75…円弧部、76…直線部、77…凹部、83…ジョイント固定ナット、83A…座グリ、84…拡径部、82…雄ネジ部、86…平面部、89…突起、87…六角形部分