(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168848
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ケーブルエミュレータ
(51)【国際特許分類】
H04B 3/46 20150101AFI20241128BHJP
G06F 30/18 20200101ALI20241128BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20241128BHJP
G06F 113/16 20200101ALN20241128BHJP
【FI】
H04B3/46
G06F30/18
G06F30/20
G06F113:16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085851
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝亦 克哉
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 則広
(72)【発明者】
【氏名】玉井 康弘
(72)【発明者】
【氏名】藤井 学
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA21
5B146GL12
(57)【要約】
【課題】ケーブルの品質評価を効率的に実施することができるケーブルエミュレータを提供する。
【解決手段】ケーブルエミュレータ1は、第1A/D変換器11と、第1デジタル処理部12と、第1D/A変換器13とを含んで構成される第1処理部10を備える。第1A/D変換器11は、第1通信ユニットP1から出力される通信用のアナログ信号をデジタル信号に変換する。第1デジタル処理部12は、第1A/D変換器11により変換されたデジタル信号を、第1通信ユニットP1と第2通信ユニットP2との間でアナログ信号を伝送するケーブルの特性を表す特性データに基づいて劣化させる劣化処理を実施する。第1D/A変換器13は、第1デジタル処理部12により劣化処理を実施したデジタル信号をアナログ信号に変換し変換後のアナログ信号を第2通信ユニットP2に出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信ユニットから出力される通信用の第1アナログ信号を第1デジタル信号に変換する第1A/D変換器、前記第1A/D変換器により変換された前記第1デジタル信号を、前記第1通信ユニットと第2通信ユニットとの間で前記第1アナログ信号を伝送するケーブルの特性を表す特性データに基づいて劣化させる第1劣化処理を実施する第1デジタル処理部、及び、前記第1デジタル処理部により前記第1劣化処理を実施した前記第1デジタル信号を第1アナログ信号に変換し変換後の前記第1アナログ信号を前記第2通信ユニットに出力する第1D/A変換器、を含んで構成される第1処理部を備えることを特徴とするケーブルエミュレータ。
【請求項2】
前記第2通信ユニットから出力される通信用の第2アナログ信号を第2デジタル信号に変換する第2A/D変換器、前記第2A/D変換器により変換された前記第2デジタル信号を、同一の前記ケーブルの特性を表す前記特性データに基づいて劣化させる第2劣化処理を実施する第2デジタル処理部、及び、前記第2デジタル処理部により前記第2劣化処理を実施した前記第2デジタル信号を第2アナログ信号に変換し変換後の前記第2アナログ信号を前記第1通信ユニットに出力する第2D/A変換器、を含んで構成される第2処理部と、
前記第1通信ユニットから前記第1A/D変換器に出力される前記第1アナログ信号と、前記第2D/A変換器から前記第1通信ユニットに出力される前記第2アナログ信号とを分離する第1方向性結合器と、
前記第2通信ユニットから前記第2A/D変換器に出力される前記第2アナログ信号と、前記第1D/A変換器から前記第2通信ユニットに出力される前記第1アナログ信号とを分離する第2方向性結合器と、を備える請求項1に記載のケーブルエミュレータ。
【請求項3】
それぞれ異なる前記ケーブルの特性を表す複数の特性データを記憶する記憶部を備え、
前記第1デジタル処理部は、前記記憶部に記憶された前記複数の特性データの中から、前記第1劣化処理を実施する対象となる前記ケーブルの種類に応じて前記特性データを変更可能である請求項1又は2に記載のケーブルエミュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルエミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルエミュレータとして、例えば、特許文献1には、ケーブルの品質を簡易な処理で精度良く評価するケーブル評価装置が記載されている。このケーブル評価装置は、接続されているケーブルのアイダイアグラムの開口高さおよび開口幅と、時間軸方向に発生する伝送信号の揺らぎ成分の1つであるジッタとを取得する伝送特性情報取得部と、伝送特性情報取得部により取得された、複数のケーブルの開口高さ、開口幅、又はジッタを用いて、複数のケーブルのうちいずれか1つのケーブルを選択する比較部とを備えることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載のケーブル評価装置は、実際のケーブルを用いてケーブルの品質を評価しており、このため、通信規格がそれぞれ異なるケーブルの品質を評価する際に、通信規格ごとにケーブルを用意する必要があり、非効率であった。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ケーブルの品質評価を効率的に実施することができるケーブルエミュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るケーブルエミュレータは、第1通信ユニットから出力される通信用の第1アナログ信号を第1デジタル信号に変換する第1A/D変換器、前記第1A/D変換器により変換された前記第1デジタル信号を、前記第1通信ユニットと第2通信ユニットとの間で前記第1アナログ信号を伝送するケーブルの特性を表す特性データに基づいて劣化させる第1劣化処理を実施する第1デジタル処理部、及び、前記第1デジタル処理部により前記第1劣化処理を実施した前記第1デジタル信号を第1アナログ信号に変換し変換後の前記第1アナログ信号を前記第2通信ユニットに出力する第1D/A変換器、を含んで構成される第1処理部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るケーブルエミュレータは、ソフトウェアによって実際のケーブルと同等の劣化処理を実施することができるので、実際のケーブルを使用しなくても、例えば、ケーブルの通信規格に適合していることを確認するコンプライアンステストを実施することができる。この結果、ケーブルエミュレータは、ケーブルの品質評価を効率的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るケーブルエミュレータの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るケーブルの特性を表す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るアイパターンを示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るケーブルエミュレータの動作例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態の変形例に係るケーブルエミュレータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0010】
図面を参照しながら実施形態に係るケーブルエミュレータ1について説明する。ケーブルエミュレータ1は、実際のケーブルを使用せずに、ソフトウェアによって実際のケーブルと同等の劣化処理を通信用のアナログ信号に実施することで、ケーブルの品質を評価するものである。
【0011】
ケーブルエミュレータ1は、例えば、
図1に示すように、第1処理部10と、記憶部30とを備える。
【0012】
記憶部30は、第1処理部10等で実行するプログラムや各種データ等を記憶するものである。記憶部30は、例えば、第1通信ユニットP1と第2通信ユニットP2との間でアナログ信号を伝送するケーブルの特性を表す特性データを記憶している。ここで、特性データは、例えば、Sパラメータや、ケーブルの特性を表す各種パラメータ(例えば、インダクタンス、キャパシタンス、抵抗値)等である。Sパラメータは、高周波伝送路等の特性を表すために用いられるパラメータの1つであり、高周波伝送路を通過するアナログ信号の伝送特性や、高周波伝送路で反射するアナログ信号の反射特性によってアナログ信号の減衰を表すものである。これらの特性データは、ケーブルの特性を実際に測定した実測値、ケーブルの特性を理論的に算出した計算値、電磁界シミュレータによって得られた特性値等である。記憶部30は、それぞれ異なるケーブルの特性を表す複数の特性データを予め記憶する。記憶部30は、例えば、劣化処理を実施する対象となるケーブルの種類に応じて、通信規格や通信方式がそれぞれ異なる複数の特性データを記憶する。特性データMは、例えば、
図2に示すように、アナログ信号が最も減衰することを表す規格の閾値Thを超えない範囲で設定される。記憶部30は、第1処理部10等によってこれらの情報が必要に応じて読み出される。
【0013】
第1処理部10は、記憶部30に記憶された特性データに基づいて、通信用のアナログ信号(第1アナログ信号)を劣化させる劣化処理(第1劣化処理)を実施するものである。第1処理部10は、CPU、メモリを構成するRAM及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路を含んで構成される。第1処理部10は、
図1に示すように、送信側の第1通信ユニットP1及び受信側の第2通信ユニットP2に接続されている。ここで、送信側の第1通信ユニットP1は、高周波のアナログ信号を送信するものであり、例えば、100Mbpsのアナログ信号を送信する(ファスト・イーサネット(登録商標))。受信側の第2通信ユニットP2は、高周波のアナログ信号を受信するものであり、例えば、100Mbpsのアナログ信号を受信する。第1処理部10は、一方向に伝送されるアナログ信号を劣化処理するものであり、例えば、第1通信ユニットP1から出力される通信用のアナログ信号を劣化させる劣化処理を実施し、劣化処理後のアナログ信号を第2通信ユニットP2に出力する。第1処理部10は、例えば、
図1に示すように、第1A/D変換器11と、第1デジタル処理部12と、第1D/A変換器13とを含んで構成される。
【0014】
第1A/D変換器11は、アナログ信号をデジタル信号(第1デジタル信号)に変換するものである。第1A/D変換器11は、高周波のアナログ信号をデジタル信号に変換可能なものであり、例えば、100Mbpsのアナログ信号をデジタル信号に変換可能である。第1A/D変換器11は、第1通信ユニットP1及び第1デジタル処理部12に接続され、第1通信ユニットP1から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、当該デジタル信号を第1デジタル処理部12に出力する。
【0015】
第1デジタル処理部12は、評価対象のケーブルの特性を表す特性データに基づいて、アナログ信号を劣化させる劣化処理を実施するものである。第1デジタル処理部12は、第1A/D変換器11に接続され、第1A/D変換器11により変換されたデジタル信号を、記憶部30に記憶された特性データ(例えばSパラメータ)に基づいて劣化させる劣化処理を実施する。第1デジタル処理部12は、例えば、評価対象のケーブルのSパラメータが表す反射特性及び伝送特性に基づいて、デジタル信号を劣化させる劣化処理を実施する。この場合に、第1デジタル処理部12は、記憶部30に記憶された複数の特性データの中から、ケーブルの種類(通信規格、通信方式)に応じて特性データを変更可能である。第1デジタル処理部12は、例えば、ケーブルの種類毎に特性データを変更して、ケーブルの種類毎にデジタル信号を劣化させる劣化処理を実施することができる。第1デジタル処理部12は、第1D/A変換器13に接続され、劣化処理後のデジタル信号を第1D/A変換器13に出力する。
【0016】
第1D/A変換器13は、デジタル信号をアナログ信号に変換するものである。第1D/A変換器13は、例えば、デジタル信号を高周波のアナログ信号に変換可能なものであり、例えば、デジタル信号を100Mbpsのアナログ信号に変換可能である。第1D/A変換器13は、第1デジタル処理部12及び第2通信ユニットP2に接続され、第1デジタル処理部12により劣化処理されたデジタル信号をアナログ信号に変換し、変換後のアナログ信号を第2通信ユニットP2に出力する。
【0017】
次に、ケーブルエミュレータ1の動作例について説明する。ケーブルエミュレータ1は、
図4に示すように、第1A/D変換器11によりA/D変換を実施する(ステップS1)。第1A/D変換器11は、例えば、第1通信ユニットP1から出力される100Mbpsのアナログ信号をデジタル信号に変換し、当該デジタル信号を第1デジタル処理部12に出力する。次に、ケーブルエミュレータ1は、第1デジタル処理部12により劣化処理を実施する(ステップS2)。第1デジタル処理部12は、例えば、記憶部30に記憶された特性データ(Sパラメータ)が表す反射特性及び伝送特性に基づいて、デジタル信号を劣化させる劣化処理を実施する。次に、ケーブルエミュレータ1は、第1D/A変換器13によりD/A変換を実施する(ステップS3)。第1D/A変換器13は、例えば、第1デジタル処理部12から出力されるデジタル信号を100Mbpsのアナログ信号に変換し、変換後のアナログ信号を第2通信ユニットP2に出力して処理を終了する。
【0018】
以上のように、実施形態に係るケーブルエミュレータ1は、第1A/D変換器11と、第1デジタル処理部12と、第1D/A変換器13とを含んで構成される第1処理部10を備える。第1A/D変換器11は、第1通信ユニットP1から出力される通信用のアナログ信号をデジタル信号に変換する。第1デジタル処理部12は、第1A/D変換器11により変換されたデジタル信号を、第1通信ユニットP1と第2通信ユニットP2との間でアナログ信号を伝送するケーブルの特性を表す特性データに基づいて劣化させる劣化処理を実施する。第1D/A変換器13は、第1デジタル処理部12により劣化処理を実施したデジタル信号をアナログ信号に変換し変換後のアナログ信号を第2通信ユニットP2に出力する。
【0019】
この構成により、ケーブルエミュレータ1は、ソフトウェアによって実際のケーブルと同等の劣化処理を通信用のアナログ信号に実施することができる。ケーブルエミュレータ1は、例えば、
図3に示すように、実際のケーブルを伝送したアナログ信号のアイパターンEP1と同形状のアイパターンEP2(ケーブルエミュレータ1により劣化処理を実施したアナログ信号の波形)を実現できていることが分かる。これにより、ケーブルエミュレータ1は、実際のケーブルを使用しなくても、例えば、ケーブルの通信規格に適合していることを確認するコンプライアンステストを実施することができる。この結果、ケーブルエミュレータ1は、ケーブルの品質評価を効率的に実施することができる。
【0020】
上記ケーブルエミュレータ1は、それぞれ異なるケーブルの特性を表す複数の特性データを記憶する記憶部30を備える。第1デジタル処理部12は、記憶部30に記憶された複数の特性データの中から、劣化処理を実施する対象となるケーブルの種類に応じて特性データを変更可能である。この構成により、ケーブルエミュレータ1は、複数種類の実際のケーブルを用意しなくても、ケーブルの種類毎に特性データを変更することで、ケーブルの種類毎にデジタル信号を劣化させる劣化処理を実施することができる。この結果、ケーブルエミュレータ1は、複数種類のケーブルの品質評価を効率的に実施することができる。
【0021】
次に、実施形態の変形例について説明する。なお、変形例では、実施形態と同等の構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。変形例に係るケーブルエミュレータ1Aは、双方向に伝送されるアナログ信号を劣化処理する点で実施形態に係るケーブルエミュレータ1とは相違する。
【0022】
変形例に係るケーブルエミュレータ1Aは、
図5に示すように、第1処理部10と、第2処理部20と、記憶部30と、第1方向性結合器40と、第2方向性結合器50とを備える。
【0023】
第1処理部10は、記憶部30に記憶された特性データに基づいて、通信用の第1アナログ信号を劣化させる第1劣化処理を実施するものである。第1処理部10は、第1方向性結合器40を介して第1通信ユニットP1に接続され、かつ、第2方向性結合器50を介して第2通信ユニットP2に接続されている。ここで、第1通信ユニットP1は、高周波のアナログ信号(第1アナログ信号及び第2アナログ信号)を送受信するものであり、例えば、100Mbpsのアナログ信号を送受信する(ファスト・イーサネット(登録商標))。第2通信ユニットP2は、高周波のアナログ信号を送受信するものであり、例えば、100Mbpsのアナログ信号を送受信する(ファスト・イーサネット(登録商標))。
【0024】
第2処理部20は、記憶部30に記憶された特性データに基づいて、通信用の第2アナログ信号を劣化させる第2劣化処理を実施するものである。第2処理部20は、CPU、メモリを構成するRAM及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路を含んで構成される。第2処理部20は、
図5に示すように、第1方向性結合器40を介して第1通信ユニットP1に接続され、かつ、第2方向性結合器50を介して第2通信ユニットP2に接続されている。第2処理部20は、一方向に伝送される第2アナログ信号を劣化処理するものであり、例えば、第2通信ユニットP2から出力される通信用の第2アナログ信号を劣化させる第2劣化処理を実施し、第2劣化処理後の第2アナログ信号を第1通信ユニットP1に出力する。第2処理部20は、例えば、
図5に示すように、第2A/D変換器21と、第2デジタル処理部22と、第2D/A変換器23とを含んで構成される。
【0025】
第2A/D変換器21は、第2アナログ信号を第2デジタル信号に変換するものである。第2A/D変換器21は、高周波の第2アナログ信号を第2デジタル信号に変換可能なものであり、例えば、100Mbpsの第2アナログ信号を第2デジタル信号に変換可能である。第2A/D変換器21は、第1通信ユニットP1及び第2デジタル処理部22に接続され、第2方向性結合器50を介して第2通信ユニットP2から出力される第2アナログ信号を第2デジタル信号に変換し、当該第2デジタル信号を第2デジタル処理部22に出力する。
【0026】
第2デジタル処理部22は、評価対象のケーブルの特性を表す特性データに基づいて、第2アナログ信号を劣化させる第2劣化処理を実施するものである。第2デジタル処理部22は、第2A/D変換器21に接続され、第2A/D変換器21により変換された第2デジタル信号を、記憶部30に記憶された特性データ(例えばSパラメータ)に基づいて劣化させる第2劣化処理を実施する。第2デジタル処理部22は、例えば、第1処理部10と同じ評価対象のケーブルのSパラメータが表す反射特性及び伝送特性に基づいて、第2デジタル信号を劣化させる第2劣化処理を実施する。この場合に、第2デジタル処理部22は、記憶部30に記憶された複数の特性データの中から、ケーブルの種類(通信規格、通信方式)に応じて特性データを変更可能である。第2デジタル処理部22は、例えば、第1処理部10と同じ評価対象のケーブルの種類毎に特性データを変更して、当該ケーブルの種類毎に第2デジタル信号を劣化させる第2劣化処理を実施することができる。第2デジタル処理部22は、第2D/A変換器23に接続され、第2劣化処理後の第2デジタル信号を第2D/A変換器23に出力する。
【0027】
第2D/A変換器23は、第2デジタル信号を第2アナログ信号に変換するものである。第2D/A変換器23は、例えば、第2デジタル信号を高周波の第2アナログ信号に変換可能なものであり、例えば、第2デジタル信号を100Mbpsの第2アナログ信号に変換可能である。第2D/A変換器23は、第2デジタル処理部22及び第2通信ユニットP2に接続され、第2デジタル処理部22により第2劣化処理された第2デジタル信号を第2アナログ信号に変換し、変換後の第2アナログ信号を、第1方向性結合器40を介して第2通信ユニットP2に出力する。
【0028】
第1方向性結合器40は、第1アナログ信号と第2アナログ信号とを分離するものである。第1方向性結合器40は、例えば、第1通信ユニットP1から第1A/D変換器11に出力される第1アナログ信号と、第2D/A変換器23から第1通信ユニットP1に出力される第2アナログ信号とを分離する。具体的には、第1方向性結合器40は、第1通信ユニットP1から出力される第1アナログ信号を第2アナログ信号とは分離して第1A/D変換器11に出力する。また、第1方向性結合器40は、第2D/A変換器23から出力される第2アナログ信号を第1アナログ信号とは分離して第1通信ユニットP1に出力する。
【0029】
第2方向性結合器50は、第1アナログ信号と第2アナログ信号とを分離するものである。第2方向性結合器50は、例えば、第2通信ユニットP2から第2A/D変換器21に出力される第2アナログ信号と、第1D/A変換器13から第2通信ユニットP2に出力される第1アナログ信号とを分離する。具体的には、第2方向性結合器50は、第2通信ユニットP2から出力される第2アナログ信号を第1アナログ信号とは分離して第2A/D変換器21に出力する。また、第2方向性結合器50は、第1D/A変換器13から出力される第1アナログ信号を第2アナログ信号とは分離して第2通信ユニットP2に出力する。
【0030】
以上のように、変形例に係るケーブルエミュレータ1Aは、第1処理部10と、第2処理部20と、記憶部30と、第1方向性結合器40と、第2方向性結合器50とを備える。第2処理部20は、第2A/D変換器21と、第2デジタル処理部22と、第2D/A変換器23とを含んで構成される。第2A/D変換器21は、第2通信ユニットP2から出力される通信用の第2アナログ信号を第2デジタル信号に変換する。第2デジタル処理部22は、第2A/D変換器21により変換された第2デジタル信号を、第1処理部10と同一のケーブルの特性を表す特性データに基づいて劣化させる第2劣化処理を実施する。第2D/A変換器23は、第2デジタル処理部22により第2劣化処理を実施した第2デジタル信号を第2アナログ信号に変換し変換後の第2アナログ信号を第1通信ユニットP1に出力する。第1方向性結合器40は、第1通信ユニットP1から第1A/D変換器11に出力される第1アナログ信号と第2D/A変換器23から第1通信ユニットP1に出力される第2アナログ信号とを分離する。第2方向性結合器50は、第2通信ユニットP2から第2A/D変換器21に出力される第2アナログ信号と第1D/A変換器13から第2通信ユニットP2に出力される第1アナログ信号とを分離する。
【0031】
この構成により、ケーブルエミュレータ1Aは、ソフトウェアによって双方向の実際のケーブルと同等の劣化処理をアナログ信号に実施することができる。これにより、ケーブルエミュレータ1Aは、双方向のケーブルを使用しなくても、例えば、双方向のケーブルの通信規格に適合していることを確認するコンプライアンステストを実施することができる。この結果、ケーブルエミュレータ1Aは、双方向のケーブルの品質評価を効率的に実施することができる。
【0032】
なお、上記説明では、ケーブルエミュレータ1,1Aは、それぞれ異なるケーブルの特性を表す複数の特性データを予め記憶する記憶部30を備える例について説明したが、これに限定されず、例えば、記憶部30を備えずに、複数の特性データを、通信回線を介して取得する構成としてもよい。また、ケーブルエミュレータ1,1Aは、複数種類のケーブルの特性に対応せずに、1種類のケーブルの特性を表す特性データに基づいて劣化処理を実施する構成としてもよい。
【0033】
第1デジタル処理部12及び第2デジタル処理部22は、それぞれを別々の構成としたが、これに限定されず、これらを統合したデジタル処理部としてもよい。
【0034】
第1デジタル処理部12及び第2デジタル処理部22は、第1方向性結合器40及び第2方向性結合器50によって減衰するアナログ信号を増幅してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1,1A ケーブルエミュレータ
10 第1処理部
11 第1A/D変換器
12 第1デジタル処理部
13 第1D/A変換器
20 第2処理部
21 第2A/D変換器
22 第2デジタル処理部
23 第2D/A変換器
30 記憶部
40 第1方向性結合器
50 第2方向性結合器
P1 第1通信ユニット
P2 第2通信ユニット