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  • 特開-消火装置 図1
  • 特開-消火装置 図2
  • 特開-消火装置 図3
  • 特開-消火装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168849
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】消火装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 3/04 20060101AFI20241128BHJP
   A62C 2/10 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A62C3/04
A62C2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085857
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 弘紀
(57)【要約】      (修正有)
【課題】資材置き場や産廃置き場で発生した火災を効果的に消火できる消火装置を提供する。
【解決手段】資材又は廃棄物置き場3を囲むように立設された少なくとも3本のガイド部材5と、資材又は廃棄物置き場3を覆うことができる耐火布7と、耐火布7をガイド部材5の上部に保持する保持機構9と、資材又は廃棄物置き場3で発生した火災を感知する火災感知器11と、を備え、保持機構9は、火災感知器11の感知信号を受信することで、耐火布7に対するガイド部材5への保持を解除する保持・解除機能を有してなり、ガイド部材5への保持が解除されると、耐火布7がガイド部材5にガイドされて落下して、資材又は廃棄物置き場3を覆うことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
資材又は廃棄物置き場を囲むように立設された少なくとも3本のガイド部材と、前記資材又は廃棄物置き場を覆うことができる耐火布と、該耐火布を前記ガイド部材の上部に保持する保持機構と、前記資材又は廃棄物置き場で発生した火災を感知する火災感知器と、を備え、
前記保持機構は、前記火災感知器の感知信号を受信することで、前記耐火布に対する前記ガイド部材への保持を解除する保持・解除機能を有してなり、
前記ガイド部材への保持が解除されると、前記耐火布が前記ガイド部材にガイドされて落下して、前記資材又は廃棄物置き場を覆うことを特徴とする消火装置。
【請求項2】
前記耐火布は、傾斜面を有するように配設されており、
前記火災感知器は、前記耐火布の傾斜面における高い位置に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の消火装置。
【請求項3】
前記耐火布は、保持状態において、その周囲が垂れ下がる垂れ下がり部を有し、発生した火災の煙及び/または熱を、前記耐火布の外側に逃がしにくくなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の消火装置。
【請求項4】
前記資材又は廃棄物置き場は、周囲が周壁で囲まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の消火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、資材又は廃棄物置き場で発生する火災を効果的に消火できる消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建築物の解体現場においては、資材置場や、産廃コンテナ等の産廃物置き場が一時的に設けられるが、これらから火災が発生する場合があるので、これらについても防火対象となる。
このような一時的に設けられる防火対象に対する消火装置として、例えば特許文献1の放火検知システムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-303093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係るシステムは、無人の資材置き場において放火等があった場合に、放火信号を携帯端末に通知するというものであり、発生した火災の消火方法までは開示されていない。
もっとも、消火方法としては種々のものが公知であるが、資材置き場や産廃置き場においては、以下のような特殊事情がある。この特殊事情を、産廃コンテナを例に挙げて説明する。
【0005】
産廃コンテナとは、車で産廃場に搬送する前に産廃物を一時的に貯めておくものである。産廃物としては、内装材、断熱材等の種々の可燃物があり、出火する場合がある。
産廃コンテナ内で出火した場合、積まれたゴミが邪魔で燃えている対象物に直接水をかけることができない場合がある。
また、産廃コンテナのように底や周壁がある場合には、水没させることも考えられるが、可燃物によっては水に浮いて流出する恐れがある。
【0006】
さらに、一般的にゴミは産廃コンテナの周壁より高く積まれるため、泡で覆うこともできない。もっとも、泡を堰き止めるための仕切りで産廃コンテナを囲むことで泡消火も可能であるが、そのような仕切りは産廃コンテナにゴミを捨てたり、回収したりする際に邪魔になるため、現実的な方法ではない。
【0007】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、資材置き場や産廃置き場で発生した火災を効果的に消火できる消火装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る消火装置は、資材又は廃棄物置き場を囲むように立設された少なくとも3本のガイド部材と、前記資材又は廃棄物置き場を覆うことができる耐火布と、該耐火布を前記ガイド部材の上部に保持する保持機構と、前記資材又は廃棄物置き場で発生した火災を感知する火災感知器と、を備え、
前記保持機構は、前記火災感知器の感知信号を受信することで、前記耐火布に対する前記ガイド部材への保持を解除する保持・解除機能を有してなり、
前記ガイド部材への保持が解除されると、前記耐火布が前記ガイド部材にガイドされて落下して、前記資材又は廃棄物置き場を覆うことを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記耐火布は、傾斜面を有するように配設されており、
前記火災感知器は、前記耐火布の傾斜面における高い位置に配設されていることを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記耐火布は、保持状態において、その周囲が垂れ下がる垂れ下がり部を有し、発生した火災の煙及び/または熱を、前記耐火布の外側に逃がしにくくなっていることを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記資材又は廃棄物置き場は、周囲が周壁で囲まれていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の消火装置においては、火災感知器の感知信号を受信することで、耐火布に対するガイド部材への保持が解除され、耐火布がガイド部材にガイドされて落下して、前記資材又は廃棄物置き場を覆うようにしたので、水や泡での消火が困難な場合にも効果的な消火ができる。
また、水や泡による消火に比較して、作動後の復旧が容易であり、特に誤作動した際には資材や周囲への影響が全くない点も優れている。
さらに、水源や消火剤タンクが不要であり設備が簡単で設置が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る消火装置の正面図である。
図2図1に示した消火装置の右側面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る消火装置の他の態様の正面図である。
図4図3に示した消火装置の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施の形態に係る消火装置1は、図1図2に示すように、廃棄物置き場としての産廃コンテナ3を囲むように立設された4本のガイド部材5と、産廃コンテナ3を覆うことができる耐火布7と、各ガイド部材5の上部に設けられて耐火布7をガイド部材5の上部に保持する保持機構9と、産廃コンテナ3で発生した火災を感知する火災感知器11と、を備えている。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0015】
<産廃コンテナ>
産廃コンテナ3は、本発明の廃棄物置き場の一例であり、車で産廃場に搬送する前に産廃を一時的に貯めておくものである。産廃は、産廃コンテナ3内に一時的に貯留されて車で産廃場に運ばれる。産廃コンテナ3は、図1に示すように、周壁と底部を有する矩形の有底枠体からなるものである。
【0016】
<耐火布>
耐火布7は、産廃コンテナ3を覆うことができる面積を有し、火災が発生した際には産廃コンテナ3上に落下してこれを覆うことで、窒息消火をするためのものである。
本実施の形態の耐火布7は、矩形状であり落下の際に広がった状態を維持する必要があるため、前面側と背面側に左右に亘る棒状の骨部材13を有している。骨部材13は、図1に示す正面側では左右のガイド部材5の手前側に配置され、また背面側ではガイド部材5の奥側に配置されている。
【0017】
耐火布7は、発生した火源に覆いかぶせて窒息消火をできるものであれば、その材質は特に限定されないが、例えば高純度シリカ布等が挙げられる。
【0018】
本実施の形態の耐火布7は、図1に示すように、正面視で右側が高くなるように傾斜した状態で設置されている。
耐火布7を傾斜させて設置することで、雨水が溜まるのを防止できる。また、耐火布7は、火災時に発生する煙を含んだ熱気流を火災感知器11に誘導する機能を備えている。この機能との関係では、図1に示すように、傾斜させて設置した耐火布7の高い位置に火災感知器11を配設することで、煙/熱誘導機能をより効果的に発揮することができる。
【0019】
さらに、図1図2に示すように、耐火布7はガイド部材5に保持された状態において、その周囲が垂れ下がる垂れ下がり部15を有するのが好ましい。垂れ下がり部15を設けることで発生した火災の煙及び熱を、前記耐火布7の外側に逃がしにくくなっており、煙/熱誘導機能をより効果的に発揮することができる。
本実施の形態では、耐火布7の4辺のうち図1における手前側と奥側の2辺に垂れ下がり部15が設けられている。
【0020】
<ガイド部材>
ガイド部材5は、産廃コンテナ3を囲むように立設された4本の柱状の部材である。ガイド部材5の機能は、耐火布7を産廃コンテナ3の上方に保持する機能、耐火布7が落下する際にガイドする機能を有している。
このような機能を発揮するため、ガイド部材5の本数は少なくとも3本あればよく、その形状は特に限定されず、本実施の形態の柱状の部材に限られない。
なお、ガイド部材5の下部にストッパー16を設けて、耐火布7の落下時の最下位置を制御するようにしてもよい。
【0021】
<保持機構>
保持機構9は、平常時には耐火布7をガイド部材5の上部に保持し、火災発生時には、火災感知器11の感知信号を受信することで、耐火布7に対するガイド部材5への保持を解除する保持・解除機能を有してなる。
【0022】
保持機構9の一例として、図1に示すように、耐火布7の骨部材13に取り付けられ、ガイド部材5の上部に設けられた係止穴(図示なし)に抜き差しできるように出没する凸片17と、凸片17を稼動させるソレノイド19と、火災感知器11の信号を受信してソレノイド19を制御する制御部21と、を備えたものが挙げられる。
【0023】
<火災感知器>
火災感知器11は、煙式または熱式の火災感知器が用いられ、火災の際に発生する煙を含んだ熱気流により火災を感知し、感知信号を制御部21に送信する。火災感知器11は、耐火布7の傾斜における高い位置に取付部材23を介して耐火布7の下側に近接配置されている。
なお、本発明の火災感知器の形態は特に限定されず、一般的な火災感知器の他に、屋外や粉塵が多い感環境に適応した特殊な態様のものであってもよい。
【0024】
以上のように構成された本実施の形態の消火装置1の作用・効果について説明する。
平常時は、図1に示すように、産廃コンテナ3は耐火布7のほぼ中央の下方に配置されている。このため、雨が降ったとしても耐火布7が屋根代わりになり、産廃が雨水で濡れたり、産廃コンテナ3内に水が溜まったりするのを防止できる。
【0025】
産廃コンテナ3内で火災が発生すると、煙を含む熱気流が耐火布7によって傾斜の高い方に誘導される。熱気流が火災感知器11に到達し、火災感知器11が火災を感知すると、感知信号が制御部21に送信され、制御部21はソレノイド19を稼動させる。ソレノイド19が稼動することで、凸片17が係止穴から抜け出し係止が解除される。これによって、耐火布7がガイド部材5にガイドされながら落下して産廃コンテナ3を覆い、窒息消火が行われる。
【0026】
以上のように、本実施の形態の消火装置1によれば、水や泡での消火が困難な場合にも効果的な消火ができる。
また、本実施の形態では、耐火布7が傾斜して設置され、また垂れ下がり部15を有していることから、煙を含んだ熱気流を逃がすことなく火災感知器11に効果的に誘導できるので、初期消火が可能である。
また、水や泡による消火に比較して、作動後の復旧が容易であり、特に誤作動した際には資材や周囲への影響がない点も優れている。
さらに、水源や消火剤タンクが不要であり設備が簡単で設置が容易である。
【0027】
なお、上記の実施の形態では、耐火布7を傾斜させて設置したものであったが、発明はこれに限られず、図3図4に示すように、耐火布7を水平に設置するようにしてもよい。この場合には、図3図4に示すように、耐火布7の4辺に垂れ下がり部15を設け、火災感知器11を耐火布7の中央部に設置するようにすればよい。
【0028】
また、上記の実施の形態では、耐火布7における正面視で手前と奥の向かい合う辺部に骨部材13を設けて、骨部材13をガイド部材5でガイドして落下させるものであったが、例えば耐火布7の4隅にリングを設けて、該リングを4本のガイド部材5に挿通するようにしてもよい。
【0029】
また、上記の実施の形態では、廃棄物置き場の例として、産廃コンテナ3を例示したが本発明の廃棄物置き場は産廃コンテナ3に限られず、地面に囲いとなる周壁を設けたものや、囲いがない単なる地面の場合も含まれる。
また、本発明が適用されるのは廃棄物置き場に限られず、建築現場等の資材置き場も対象とされる。
【符号の説明】
【0030】
1 消火装置
3 産廃コンテナ(廃棄物置き場)
5 ガイド部材
7 耐火布
9 保持機構
11 火災感知器
13 骨部材
15 垂れ下がり部
16 ストッパー
17 凸片
19 ソレノイド
21 制御部
23 取付部材
図1
図2
図3
図4