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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168854
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】射出成形金型及び射出成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/73 20060101AFI20241128BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B29C45/73
B22D17/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085869
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】時川 大佑
(72)【発明者】
【氏名】原 徳佳
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AJ08
4F202AR12
4F202AR13
4F202CA11
4F202CB01
4F202CD27
4F202CN05
4F202CN13
4F202CN21
4F202CN27
(57)【要約】
【課題】より短い時間でより多くの成形品を製造可能な射出成形金型を提供する。
【解決手段】射出成形金型3は、冷却液35が流れる冷却管30を備える。冷却管30の内表面30aの少なくとも一部に、微細凹凸構造31または螺旋溝が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液が流れる冷却管を備え、
前記冷却管の内表面の少なくとも一部に、微細凹凸構造または螺旋溝が形成されている、射出成形金型。
【請求項2】
前記内表面の前記少なくとも一部は、前記内表面の全体である、請求項1に記載の射出成形金型。
【請求項3】
前記内表面の前記少なくとも一部は、前記内表面の一部である、請求項1に記載の射出成形金型。
【請求項4】
キャビティをさらに備え、
前記内表面の前記少なくとも一部は、前記内表面のうち前記キャビティに対向する部分である、請求項3に記載の射出成形金型。
【請求項5】
前記内表面の前記少なくとも一部に、100μm以上の最大高さ粗さを有する前記微細凹凸構造が形成されている、請求項1に記載の射出成形金型。
【請求項6】
前記内表面の前記少なくとも一部に、0.5mm以上の溝深さを有する前記螺旋溝が形成されている、請求項1に記載の射出成形金型。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の前記射出成形金型を備える、射出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形金型及び射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-189075号公報(特許文献1)は、射出成形方法に用いられる金型を開示している。この金型は、熱媒体流路を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-189075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された金型を用いた射出成形では、成形ショット数が増加するにつれて金型の温度が上昇して、成形不良品が発生する。成形不良品を減らすために溶融樹脂の冷却時間を長くすると、一成形ショット当たりのサイクルタイムが延びて、成形品の生産性が低下する。本開示は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、より短い時間でより多くの成形品を製造可能な射出成形金型及び射出成形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の射出成形金型は、冷却液が流れる冷却管を備える。冷却管の内表面の少なくとも一部に、微細凹凸構造または螺旋溝が形成されている。
【0006】
本開示の射出成形装置は、本開示の射出成形金型を備える。
【発明の効果】
【0007】
冷却液が冷却管を流れる際に、微細凹凸構造及び螺旋溝は、冷却液に乱流を発生させる。この乱流は、冷却液と射出成形金型との間の熱交換の効率を向上させる。また、微細凹凸構造及び螺旋溝は、冷却液と冷却管の内表面との間の接触面積を増加させる。そのため、冷却液と射出成形金型との間の熱交換の効率が向上する。こうして、射出成形金型内の溶融樹脂が、より短い時間で冷却及び固化される。本開示の射出成形金型及び射出成形装置によれば、より短い時間でより多くの成形品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1及び実施の形態2の射出成形装置の概略図である。
図2】実施の形態1の射出成形金型の概略断面図である。
図3】実施の形態1の冷却管の一例の概略部分拡大断面図である。
図4】実施の形態1の冷却管の別の例の概略部分拡大断面図である。
図5】実施の形態1の射出成形方法のフローチャートを示す図である。
図6】実施の形態1の変形例の射出成形金型の概略断面図である。
図7】実施の形態2の射出成形金型の概略断面図である。
図8】実施の形態2の冷却管の概略部分拡大断面図である。
図9】実施の形態2の冷却管の、図8に示される断面線IX-IXにおける概略部分拡大断面図である。
図10】実施の形態2の変形例の射出成形金型の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0010】
実施の形態1.
図1から図4を参照して、実施の形態1の射出成形装置1及び射出成形金型3を説明する。図1を参照して、射出成形装置1は、ホッパー11と、シリンダー12と、射出成形金型3とを備える。
【0011】
ホッパー11は、樹脂材料を貯蔵している。ホッパー11からシリンダー12に樹脂材料が供給される。樹脂材料は、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)またはポリブチレンテレフタレート(PBT)などである。
【0012】
シリンダー12は、樹脂材料を加熱して溶融させる。シリンダー12から射出成形金型3に溶融樹脂が供給される。
【0013】
図1及び図2を参照して、射出成形金型3は、固定金型14と、可動金型20とを含む。
【0014】
固定金型14は、金型本体15と、一次スプルー16と、ランナー17と、二次スプルー18とを含む。一次スプルー16とランナー17と二次スプルー18とは、金型本体15に設けられている。一次スプルー16は、ランナー17に連通している。ランナー17は、二次スプルー18に連通している。
【0015】
可動金型20は、固定金型14に対して移動可能である。可動金型20は、金型本体21と、ゲート22と、キャビティ23と、冷却管30とを含む。射出成形金型3が閉じているとき、ゲート22は二次スプルー18に連通する。キャビティ23は、ゲート22に連通している。ゲート22とキャビティ23とは、金型本体21に設けられている。冷却管30は、金型本体21の内部に設けられている。冷却管30には、水、油またはエチレングリコールなどのような冷却液35が流れる。
【0016】
冷却管30は、温度調整器(図示せず)及びポンプ(図示せず)に接続されている。冷却液35は、温度調整器、ポンプ及び冷却管30を循環する。具体的には、ポンプは、温度調整器で温度が目標温度に調整された冷却液35を、冷却管30に供給する。冷却液35が冷却管30を流れるとき、射出成形金型3と冷却液35との間で熱交換が行われて、射出成形金型3が冷却される。温度調整器は、この熱交換によって上昇した冷却液35の温度を、目標温度に調整する。ポンプは、目標温度に調整された冷却液35を再び冷却管30に供給する。
【0017】
図2を参照して、微細凹凸構造31が、冷却管30の内表面30aに形成されている。微細凹凸構造31は、内表面30aのうち少なくともキャビティ23に対向する部分に形成されてもよい。微細凹凸構造31は、内表面30aの全体に形成されてもよい。微細凹凸構造31は、例えば、100μm以上の最大高さ粗さRzを有する。最大高さ粗さRzは、日本産業規格(JIS) B 0601:2013の最大高さ粗さRzである。
【0018】
微細凹凸構造31は、冷却管30の内表面30aに、エッチング加工またはブラスト加工などのような表面加工を施すことによって形成される。
【0019】
エッチング加工は、酸、アルカリまたはイオンなどによる腐食作用を利用して、金属またはガラスのような素材の表面を溶解する加工法である。エッチング加工に用いられるエッチング方法には、ウェットエッチングと、ドライエッチングとがある。ウェットエッチングでは、酸またはアルカリによる腐食作用を利用して、素材の表面を加工する。ドライエッチングでは、高真空プラズマ(イオンビーム)により素材の表面の原子を除去することによって、素材の表面を加工する。
【0020】
ブラスト加工は、粒子状の研磨材を素材の表面に衝突させて、素材の表面を粗くするまたは研削する加工法である。ブラスト加工には、グリッドブラスト及びショットブラストなどがある。
【0021】
グリッドブラストは、鋭角形状を有する研磨材を素材の表面に吹き付けて、素材の表面を加工する方法である。研磨材の材料として、アルミナなどのセラミック、ガラスもしくは炭化ケイ素のような高硬度材料、または、ポリエステルなどのプラスチックのような低硬度材料が用いられ得る。冷却管30の内表面30aにグリッドブラスト加工を施すことによって、図3に示されるように、冷却管30の内表面30aは尖った凹凸面になる。
【0022】
ショットブラストは、球状の研磨材を素材の表面に吹き付けて、素材の表面を加工する方法である。冷却管30の内表面30aにショットブラスト加工を施すことによって、図4に示されるように、冷却管30の内表面30aは丸みを帯びた凹凸面になる。
【0023】
図5を参照して、本実施の形態の射出成形金型3を用いた本実施の形態の射出成形方法を説明する。本実施の形態の射出成形方法は、型締め工程(S1)と、射出工程(S2)と、冷却工程(S3)と、型開き工程(S4)と、離型工程(S5)とを含む。
【0024】
型締め工程(S1)では、可動金型20を固定金型14に向けて移動させて、射出成形金型3を閉じる。固定金型14と可動金型20とは互いに加圧される。
【0025】
射出工程(S2)は、充填工程と、保圧工程とを含む。充填工程では、樹脂材料がホッパー11からシリンダー12に供給される。シリンダー12は、樹脂材料を加熱して溶融させる。シリンダー12から射出成形金型3に溶融樹脂が供給される。具体的には、溶融樹脂は、一次スプルー16、ランナー17、二次スプルー18及びゲート22を通って、キャビティ23に供給される。例えば、キャビティ23の体積の約95%から約99%が溶融樹脂で充填されるまで、溶融樹脂はキャビティ23に供給される。充填工程後に、保圧工程が実行される。保圧工程では、ゲート22からの溶融樹脂の注入を一定圧力で一定時間継続する。こうして、ゲート22にある溶融樹脂が固化して、ゲート22から溶融樹脂が逆流することが防止され得る。
【0026】
冷却工程(S3)では、キャビティ23内に充填された溶融樹脂の温度が金型温度に近づくように溶融樹脂を冷却して、溶融樹脂を固化させる。こうして、キャビティ23の形状に整合した成形品が得られる。
【0027】
型開き工程(S4)では、可動金型20を固定金型14から離れるように移動させて、射出成形金型3を開く。離型工程(S5)では、エジェクタピン(図示せず)を用いて成形品を射出成形金型3から押し出す。成形品が射出成形金型3から取り出される。こうして、成形品が製造される。
【0028】
比較例と対比しながら、本実施の形態の作用を説明する。比較例の射出成形金型は本実施の形態の射出成形金型3と同様の構成を備えているが、冷却管30の内表面30aに微細凹凸構造31が形成されておらず、冷却管30の内表面30aが滑らかな面である点において、本実施の形態の射出成形金型3と異なっている。
【0029】
40℃の設定金型温度、210℃の溶融樹脂の温度、10秒の冷却時間及び30秒のサイクルタイムで、比較例の射出成形金型を用いて20ショットの連続成形を行うと、設定金型温度よりも高い42.6℃まで金型温度が上昇する。金型温度が設定金型温度を超えると、射出成形金型3内の溶融樹脂が冷却時間内に十分に冷却及び固化されず、成形不良品が発生する。成形不良品を減らすために溶融樹脂の冷却時間を長くすると、一成形ショット当たりのサイクルタイムが延びて、成形品の生産性が低下する。
【0030】
これに対し、本実施の形態の射出成形金型3では、冷却管30の内表面30aに微細凹凸構造31が形成されている。冷却液35が冷却管30を流れる際に、微細凹凸構造31は、冷却液35に乱流を発生させる。この乱流は、冷却液35と射出成形金型3との間の熱交換の効率を向上させる。また、微細凹凸構造31は、冷却液35と冷却管30の内表面30aとの間の接触面積を増加させる。そのため、冷却液35と射出成形金型3との間の熱交換の効率が向上する。40℃の設定金型温度、210℃の溶融樹脂の温度、10秒の冷却時間及び30秒のサイクルタイムで、本実施の形態の射出成形金型3を用いて20ショットの連続成形を行うと、金型温度を設定金型温度以下に保つことができる。こうして、射出成形金型3内の溶融樹脂が、より短い時間で冷却及び固化される。本実施の形態の射出成形金型3及び射出成形装置1によれば、より短い時間でより多くの成形品が製造され得る。
【0031】
(変形例)
図6を参照して、本実施の形態の変形例では、微細凹凸構造31は、冷却管30の内表面30aの一部に形成されてもよい。微細凹凸構造31が形成される内表面30aの一部は、内表面30aのうちキャビティ23に対向する部分であってもよい。
【0032】
本実施の形態の別の変形例では、冷却管30は、固定金型14に設けられてもよいし、可動金型20及び固定金型14の両方に設けられてもよい。
【0033】
本実施の形態の射出成形金型3及び射出成形装置1の効果を説明する。
本実施の形態の射出成形金型3は、冷却液35が流れる冷却管30を備える。冷却管30の内表面30aの少なくとも一部に、微細凹凸構造31が形成されている。
【0034】
冷却液35が冷却管30を流れる際に、微細凹凸構造31は、冷却液35に乱流を発生させる。この乱流は、冷却液35と射出成形金型3との間の熱交換の効率を向上させる。また、微細凹凸構造31は、冷却液35と冷却管30の内表面30aとの間の接触面積を増加させる。そのため、冷却液35と射出成形金型3との間の熱交換の効率が向上する。こうして、射出成形金型3内の溶融樹脂が、より短い時間で冷却及び固化される。本実施の形態の射出成形金型3によれば、より短い時間でより多くの成形品を製造することができる。
【0035】
本実施の形態の射出成形金型3では、内表面30aの少なくとも一部は、内表面30aの全体である。
【0036】
そのため、冷却液35に発生する乱流と、冷却液35と冷却管30の内表面30aとの間の接触面積とが増加する。冷却液35と射出成形金型3との間の熱交換の効率が向上する。射出成形金型3内の溶融樹脂が、より短い時間で冷却及び固化される。本実施の形態の射出成形金型3によれば、より短い時間でより多くの成形品を製造することができる。
【0037】
本実施の形態の射出成形金型3では、内表面30aの少なくとも一部は、内表面30aの一部である。
【0038】
微細凹凸構造31が形成される領域が減少するため、射出成形金型3の製造コストが低下する。
【0039】
本実施の形態の射出成形金型3は、キャビティ23をさらに備える。内表面30aの少なくとも一部は、内表面30aのうちキャビティ23に対向する部分である。
【0040】
射出成形金型3のうちキャビティ23の近くの部分は、射出成形金型3のうち射出成形時に最も高温になる部分である。そして、微細凹凸構造31は、冷却管30の内表面30aのうち、射出成形金型3のうち射出成形時に最も高温になる部分に対向する部分に形成されている。そのため、射出成形金型3のうち射出成形時に最も高温になる部分が効率的に冷却される。射出成形金型3内の溶融樹脂が、より短い時間で冷却及び固化される。本実施の形態の射出成形金型3によれば、より短い時間でより多くの成形品を製造することができる。
【0041】
本実施の形態の射出成形金型3では、内表面30aの少なくとも一部に、100μm以上の最大高さ粗さを有する微細凹凸構造31が形成されている。
【0042】
そのため、冷却液35に発生する乱流が増加する。冷却液35と射出成形金型3との間の熱交換の効率が向上する。射出成形金型3内の溶融樹脂が、より短い時間で冷却及び固化される。本実施の形態の射出成形金型3によれば、より短い時間でより多くの成形品を製造することができる。
【0043】
本実施の形態の射出成形装置1は、本実施の形態の射出成形金型3を備える。
冷却液35が冷却管30を流れる際に、微細凹凸構造31は、冷却液35に乱流を発生させる。この乱流は、冷却液35と射出成形金型3との間の熱交換の効率を向上させる。また、微細凹凸構造31は、冷却液35と冷却管30の内表面30aとの間の接触面積を増加させる。そのため、冷却液35と射出成形金型3との間の熱交換の効率が向上する。こうして、射出成形金型3内の溶融樹脂が、より短い時間で冷却及び固化される。本実施の形態の射出成形装置1によれば、より短い時間でより多くの成形品を製造することができる。
【0044】
実施の形態2.
図1及び図7から図9を参照して、実施の形態2の射出成形装置1及び射出成形金型3を説明する。本実施の形態の射出成形装置1及び射出成形金型3は、実施の形態1の射出成形装置1及び射出成形金型3と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
【0045】
図7から図9を参照して、螺旋溝32が、冷却管30の内表面30aに形成されている。螺旋溝32は、内表面30aのうち少なくともキャビティ23に対向する部分に形成されてもよい。螺旋溝32は、内表面30aの全体に形成されてもよい。螺旋溝32は、凹部32aと、凸部32bとを含む。螺旋溝32の溝深さは、例えば、0.5mm以上である。螺旋溝32の溝深さは、凹部32aの最底部と凸部32bの最頂部との間の高さの差である。螺旋溝32は、冷却管30の内表面30aを、切削、研磨またはエッチングすることによって形成される。
【0046】
冷却液35が冷却管30を流れる際に、螺旋溝32は、冷却液35に乱流を発生させる。この乱流は、冷却液35と射出成形金型3との間の熱交換の効率を向上させる。また、螺旋溝32は、冷却液35と冷却管30の内表面30aとの間の接触面積を増加させる。そのため、冷却液35と射出成形金型3との間の熱交換の効率が向上する。こうして、射出成形金型3内の溶融樹脂が、より短い時間で冷却及び固化される。本実施の形態の射出成形金型3及び射出成形装置1によれば、より短い時間でより多くの成形品が得られる。
【0047】
(変形例)
図10を参照して、本実施の形態の変形例では、螺旋溝32は、冷却管30の内表面30aの一部に形成されてもよい。螺旋溝32が形成される内表面30aの一部は、内表面30aのうちキャビティ23に対向する部分であってもよい。
【0048】
本実施の形態の別の変形例では、冷却管30は、固定金型14に設けられてもよいし、可動金型20及び固定金型14の両方に設けられてもよい。
【0049】
本実施の形態の射出成形金型3及び射出成形装置1は、実施の形態1の射出成形金型3及び射出成形装置1の効果と同様の以下の効果を奏する。
【0050】
本実施の形態の射出成形金型3は、冷却液35が流れる冷却管30を備える。冷却管30の内表面30aの少なくとも一部に、螺旋溝32が形成されている。
【0051】
冷却液35が冷却管30を流れる際に、螺旋溝32は、冷却液35に乱流を発生させる。この乱流は、冷却液35と射出成形金型3との間の熱交換の効率を向上させる。また、螺旋溝32は、冷却液35と冷却管30の内表面30aとの間の接触面積を増加させる。そのため、冷却液35と射出成形金型3との間の熱交換の効率が向上する。こうして、射出成形金型3内の溶融樹脂が、より短い時間で冷却及び固化される。本実施の形態の射出成形金型3によれば、より短い時間でより多くの成形品を製造することができる。
【0052】
本実施の形態の射出成形金型3では、内表面30aの少なくとも一部は、内表面30aの全体である。
【0053】
そのため、冷却液35に発生する乱流と、冷却液35と冷却管30の内表面30aとの間の接触面積とが増加する。冷却液35と射出成形金型3との間の熱交換の効率が向上する。射出成形金型3内の溶融樹脂が、より短い時間で冷却及び固化される。本実施の形態の射出成形金型3によれば、より短い時間でより多くの成形品を製造することができる。
【0054】
本実施の形態の射出成形金型3では、内表面30aの少なくとも一部は、内表面30aの一部である。
【0055】
螺旋溝32が形成される領域が減少するため、射出成形金型3の製造コストが低下する。
【0056】
本実施の形態の射出成形金型3は、キャビティ23をさらに備える。内表面30aの少なくとも一部は、内表面30aのうちキャビティ23に対向する部分である。
【0057】
射出成形金型3のうちキャビティ23の近くの部分は、射出成形金型3のうち射出成形時に最も高温になる部分である。そして、螺旋溝32は、冷却管30の内表面30aのうち、射出成形金型3のうち射出成形時に最も高温になる部分に対向する部分に形成されている。そのため、射出成形金型3のうち射出成形時に最も高温になる部分が効率的に冷却される。射出成形金型3内の溶融樹脂が、より短い時間で冷却及び固化される。本実施の形態の射出成形金型3によれば、より短い時間でより多くの成形品を製造することができる。
【0058】
本実施の形態の射出成形金型3では、内表面30aの少なくとも一部に、0.5mm以上の溝深さを有する螺旋溝32が形成されている。
【0059】
そのため、冷却液35に発生する乱流が増加する。冷却液35と射出成形金型3との間の熱交換の効率が向上する。射出成形金型3内の溶融樹脂が、より短い時間で冷却及び固化される。本実施の形態の射出成形金型3によれば、より短い時間でより多くの成形品を製造することができる。
【0060】
本実施の形態の射出成形装置1は、本実施の形態の射出成形金型3を備える。
冷却液35が冷却管30を流れる際に、螺旋溝32は、冷却液35に乱流を発生させる。この乱流は、冷却液35と射出成形金型3との間の熱交換の効率を向上させる。また、螺旋溝32は、冷却液35と冷却管30の内表面30aとの間の接触面積を増加させる。そのため、冷却液35と射出成形金型3との間の熱交換の効率が向上する。こうして、射出成形金型3内の溶融樹脂が、より短い時間で冷却及び固化される。本実施の形態の射出成形装置1によれば、より短い時間でより多くの成形品を製造することができる。
【0061】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
冷却液が流れる冷却管を備え、
前記冷却管の内表面の少なくとも一部に、微細凹凸構造または螺旋溝が形成されている、射出成形金型。
(付記2)
前記内表面の前記少なくとも一部は、前記内表面の全体である、付記1に記載の射出成形金型。
(付記3)
前記内表面の前記少なくとも一部は、前記内表面の一部である、付記1に記載の射出成形金型。
(付記4)
キャビティをさらに備え、
前記内表面の前記少なくとも一部は、前記内表面のうち前記キャビティに対向する部分である、付記3に記載の射出成形金型。
(付記5)
前記内表面の前記少なくとも一部に、100μm以上の最大高さ粗さを有する前記微細凹凸構造が形成されている、付記1から付記4のいずれか一項に記載の射出成形金型。
(付記6)
前記内表面の前記少なくとも一部に、0.5mm以上の溝深さを有する前記螺旋溝が形成されている、付記1から付記4のいずれか一項に記載の射出成形金型。
(付記7)
付記1から付記6のいずれか一項に記載の前記射出成形金型を備える、射出成形装置。
【0062】
今回開示された実施の形態1及び実施の形態2並びにそれらの変形例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 射出成形装置、3 射出成形金型、11 ホッパー、12 シリンダー、14 固定金型、15 金型本体、16 一次スプルー、17 ランナー、18 二次スプルー、20 可動金型、21 金型本体、22 ゲート、23 キャビティ、30 冷却管、30a 内表面、31 微細凹凸構造、32 螺旋溝、32a 凹部、32b 凸部、35 冷却液。
図1
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図7
図8
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図10