(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168858
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】すべり軸受構造及びターボ式流体機械
(51)【国際特許分類】
F16C 27/02 20060101AFI20241128BHJP
F16C 33/20 20060101ALI20241128BHJP
F04D 29/056 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F16C27/02 A
F16C33/20 Z
F04D29/056 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085877
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】筒井 琢仁
(72)【発明者】
【氏名】樋口 毅
(72)【発明者】
【氏名】福壽 快斗
【テーマコード(参考)】
3H130
3J011
3J012
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB07
3H130AB27
3H130AB42
3H130AC13
3H130BA24E
3H130DA02Z
3H130DB03X
3H130DD03Z
3H130EC06E
3H130EC17E
3H130EC18E
3J011AA20
3J011BA02
3J011BA15
3J011DA01
3J011KA02
3J011MA01
3J011MA21
3J011QA05
3J011SA03
3J011SC03
3J011SC04
3J011SC05
3J012AB12
3J012AB20
3J012BB01
3J012DB07
3J012EB07
(57)【要約】
【課題】軸受の軸受面又は回転体の被軸受面に形成されたコーティング層の耐久性を向上させて、軸受構造の寿命を向上させることができるすべり軸受構造及びターボ式流体機械を提供する。
【解決手段】ターボ式流体機械は、被軸受面24gを有する回転体24と、回転体24と一体的に回転して外部流体を圧送する作動体と、被軸受面24gに対向する軸受面60aを有し、回転体24をハウジング11に対して回転可能に支持するフォイル軸受60とを備える。被軸受面24g及び軸受面60aの一方にコーティング層61が形成されている。コーティング層61は、樹脂バインダ61aとしてのポリアミドイミドと、固体潤滑剤61bとしての二硫化モリブデンとを含有する。被軸受面24g及び軸受面60aの他方に硬質クロムめっき膜62が形成されている。コーティング層61と硬質クロムめっき膜62とは対向している
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、前記回転体を支持するすべり軸受と、を備えるすべり軸受構造であって、
前記すべり軸受の軸受面及び前記回転体の被軸受面の一方にコーティング層が形成され、
前記コーティング層は、樹脂バインダとしてのポリアミドイミドと、固体潤滑剤としての二硫化モリブデンと、を含有し、
前記軸受面及び前記被軸受面の他方に硬質クロムめっき膜が形成され、
前記コーティング層と前記硬質クロムめっき膜とは対向していることを特徴とするすべり軸受構造。
【請求項2】
前記ポリアミドイミドの含有量に対する前記二硫化モリブデンの含有量の質量百分率が42質量%以上127質量%以下である請求項1記載のすべり軸受構造。
【請求項3】
前記コーティング層は、固体潤滑剤としてのポリテトラフルオロエチレンをさらに含有する請求項1又は2記載のすべり軸受構造。
【請求項4】
前記軸受面に前記コーティング層が形成され、前記被軸受面に前記硬質クロムめっき膜が形成されている請求項1又は2記載のすべり軸受構造。
【請求項5】
前記軸受面及び前記被軸受面の間隙には気体の潤滑剤が導入され、前記間隙に発生する動圧によって荷重を支える請求項1又は2記載のすべり軸受構造。
【請求項6】
回転体と、
前記回転体と一体的に回転して外部流体を圧送する作動体と、
前記回転体及び前記作動体を収容するハウジングと、
前記回転体を前記ハウジングに対して回転可能に支持するフォイル軸受と、を備えるターボ式流体機械であって、
前記フォイル軸受の軸受面及び前記回転体の被軸受面の一方にコーティング層が形成され、
前記コーティング層は、樹脂バインダとしてのポリアミドイミドと、固体潤滑剤としての二硫化モリブデンと、を含有し、
前記軸受面及び前記被軸受面の他方に硬質クロムめっき膜が形成され、
前記コーティング層と前記硬質クロムめっき膜とは対向していることを特徴とするターボ式流体機械。
【請求項7】
前記ポリアミドイミドの含有量に対する前記二硫化モリブデンの含有量の質量百分率が42質量%以上127質量%以下である請求項6記載のターボ式流体機械。
【請求項8】
車載燃料電池へ空気を圧送するためのターボ式流体機械であって、
10万rpm以上で回転しつつ前記回転体を駆動する電動モータを備える請求項6又は7記載のターボ式流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はすべり軸受構造及びターボ式流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のターボ式流体機械が開示されている。このターボ式流体機械は、回転体と、回転体と一体的に回転して外部流体を圧送する作動体と、回転体及び作動体を収容するハウジングと、回転体をハウジングに対して回転可能に支持するフォイル軸受とを備えている。
【0003】
回転体は被軸受面を有する一方、回転体を支持するフォイル軸受は被軸受面に対向する軸受面を有する。フォイル軸受は、低速回転する回転体を接触支持し、高速回転する回転体を非接触支持する。すなわち、フォイル軸受は、回転体の低速回転時には、軸受面と被軸受面とが接触した状態で相対回転する回転体を支持し、回転体が高速回転すれば、軸受面と被軸受面とが非接触な状態となり、軸受面と被軸受面との間の軸受隙間に生じる流体膜で回転体を支持する。
【0004】
フォイル軸受が回転体を接触支持する低速回転時には、軸受面と被軸受面とが摺動し、この摺動面に焼付きや損傷の問題が起こりやすい。このため、摺動面における焼付きや損傷を抑えるべく、軸受面や被軸受面にコーティング層を形成することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フォイル軸受では、その製品寿命を向上させるために、コーティング層の耐久性を向上させることが重要である。
【0007】
発明者らは、コーティング層の耐久性を向上させるべく、コーティング層の材料に高硬度のポリアミドイミドを用いてコーティング層の耐摩耗性を向上させることを指向した。しかし、発明者らの試験によれば、フォイル軸受の軸受面に耐摩耗性の高いポリアミドイミドをコーティングしても、期待するほどコーティング層の耐久性が向上しないことが判明した。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、軸受の軸受面又は回転体の被軸受面に形成されたコーティング層の耐久性を向上させて、軸受構造の寿命を向上させることができるすべり軸受構造及びターボ式流体機械を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のすべり軸受構造は、回転体と、前記回転体を支持するすべり軸受と、を備えるすべり軸受構造であって、
前記すべり軸受の軸受面及び前記回転体の被軸受面の一方にコーティング層が形成され、
前記コーティング層は、樹脂バインダとしてのポリアミドイミドと、固体潤滑剤としての二硫化モリブデンと、を含有し、
前記軸受面及び前記被軸受面の他方に硬質クロムめっき膜が形成され、
前記コーティング層と前記硬質クロムめっき膜とは対向していることを特徴とする。
【0010】
本発明のすべり軸受構造では、軸受面及び被軸受面の一方にコーティング層が形成されている。このコーティング層では、樹脂バインダとしてのポリアミドイミドに対して、固体潤滑剤としての二硫化モリブデンが配合されている。このため、コーティング層の表面においては、ポリアミドイミド中に二硫化モリブデンが分散している。
【0011】
樹脂バインダとしてのポリアミドイミドは、高硬度であり耐摩耗性が高い。その一方で、ポリアミドイミドは、靭性が高くて粘り強い。このため、何ら対策を施さなければ、相手材との摺動による初期摩耗の際、コーティング層表面からポリアミドイミドの移着粒子(摩耗粉)が大きくもぎ取られ易い。コーティング層表面から大きな移着粒子が脱落すると、コーティング層表面が荒らされて、初期摩耗後にコーティング層の表面粗さが大きくなってしまい、摺動抵抗の増加やコーティング層の摩耗量の増加につながる。
【0012】
この点、本発明におけるコーティング層には、ポリアミドイミド中に二硫化モリブデンが分散している。二硫化モリブデンは、Mo層をS層が挟んだ形のサンドイッチ構造の結晶構造を有する層状固体潤滑剤である。この二硫化モリブデンが相手材と摺動すると、結合力の弱いS層同士の間で滑りが容易に起こり、低摩擦を発現する。また、初期摩耗において、相手材表面の微小突起を潰したり、削ったり、溝を埋めたりして早期になじみ面を形成させる。このため、コーティング層の表面に二硫化モリブデンが分散していると、摺動抵抗を低下させることができる。
【0013】
また、二硫化モリブデンは、ポリアミドイミドと比べて、靭性が低くて硬い。このため、初期摩耗によってコーティング層表面からもぎ取られるポリアミドイミドの移着粒子が、ポリアミドイミドよりも硬い二硫化モリブデンによって分断される。すなわち、二硫化モリブデンが、ポリアミドイミドの移着粒子を細分化する。その結果、初期摩耗の際のポリアミドイミドの移着粒子が小さくなる。ポリアミドイミドの移着粒子が小さくなれば、コーティング層表面が大きく荒らされることが抑えられるので、コーティング層の表面粗さが大きくなることを抑えることができる。
【0014】
さらに、本発明のすべり軸受構造では、軸受面及び被軸受面の他方に硬質クロムめっき膜が形成されている。そして、コーティング層と硬質クロムめっき膜とが対向している。発明者らの試験によれば、硬質クロムめっき膜の形成により、硬質クロムめっき膜と摺動するコーティング層の摩耗量を大幅に減らすことができる。このメカニズムとして、他の金属と異なり硬質クロムめっき膜の表面に形成される自然酸化皮膜が潤滑の作用を持つと考えられる。その他には、ポリアミドイミドに二硫化モリブデンが分散したコーティング層と、硬質クロムめっき膜との相性の良さによるものと考えられる。
【0015】
したがって、このすべり軸受構造によれば、軸受の軸受面又は回転体の被軸受面に形成されたコーティング層の耐久性を向上させて、軸受構造の寿命を向上させることができる。
【0016】
ポリアミドイミドの含有量に対する二硫化モリブデンの含有量の質量百分率は42質量%以上127質量%以下であることが好ましい。
【0017】
発明者らの試験によれば、ポリアミドイミドの含有量に対する二硫化モリブデンの含有量の質量百分率が42質量%以上127質量%であるときに(ポリアミドイミドの質量に対する二硫化モリブデンの質量の比が0.42以上1.27以下であるときに)、上述した二硫化モリブデンによる効果が顕著になる。
【0018】
コーティング層は、固体潤滑剤としてのポリテトラフルオロエチレンをさらに含有することが好ましい。
【0019】
コーティング層の表面にポリテトラフルオロエチレンが存在すると、相手材との摺動による初期摩耗の際、ポリテトラフルオロエチレンの移着粒子が相手材に付着して被膜を形成する。ポリテトラフルオロエチレンの被膜は滑りやすく低摩擦であるため、ポリテトラフルオロエチレンの被膜はコーティング層に対する相手材の攻撃性が低い。そのため、コーティング層からポリアミドイミドや二硫化モリブデンの移着粒子がもぎ取られることが抑えられ、その結果、コーティング層表面における摩耗量を低減させることができると考えられる。
【0020】
本発明のすべり軸受構造において、軸受面にコーティング層が形成され、被軸受面に硬質クロムめっき膜が形成されていることが好ましい。
【0021】
この場合、コーティング層の耐久性の向上により、コーティング層が形成された軸受面を有するすべり軸受の製品寿命を向上させることができる。
【0022】
本発明のすべり軸受構造において、軸受面及び被軸受面の間隙には気体の潤滑剤が導入され、間隙に発生する動圧によって荷重を支えることが好ましい。
【0023】
この場合、すべり軸受が動圧型の気体軸受になるところ、高速回転する回転体を低摩擦で支持するのに有利になるため、そのすべり軸受をフォイル軸受に好適に利用することができる。
【0024】
本発明のターボ式流体機械は、回転体と、
前記回転体と一体的に回転して外部流体を圧送する作動体と、
前記回転体及び前記作動体を収容するハウジングと、
前記回転体を前記ハウジングに対して回転可能に支持するフォイル軸受と、を備えるターボ式流体機械であって、
前記フォイル軸受の軸受面及び前記回転体の被軸受面の一方にコーティング層が形成され、
前記コーティング層は、樹脂バインダとしてのポリアミドイミドと、固体潤滑剤としての二硫化モリブデンと、を含有し、
前記軸受面及び前記被軸受面の他方に硬質クロムめっき膜が形成され、
前記コーティング層と前記硬質クロムめっき膜とは対向していることを特徴とする。
【0025】
本発明らは、フォイル軸受を備えるターボ式流体機械において、コーティング層の耐久性を如何にして向上させるかについて鋭意検討し、発想の転換により、フォイル軸受の浮上能力を向上させることによって、コーティング層が相手材と摺動する時間を短縮すること、すなわちコーティング層が摩耗する機会を減らすことを指向した。フォイル軸受の浮上能力を向上させるには、コーティング層の平滑性を向上させること、特に相手材との摺動による初期摩耗後においてもその平滑性を維持することが重要であると考え、試行錯誤を重ねて本発明を完成させた。
【0026】
本発明のターボ式流体機械では、フォイル軸受の軸受面及び回転体の被軸受面の一方にコーティング層が形成され、軸受面及び被軸受面の他方に硬質クロムめっき膜が形成されている。そして、コーティング層と硬質クロムめっき膜とが対向している。
【0027】
上述のとおり、コーティング層における樹脂バインダとしてのポリアミドイミドは、高靭性で粘り強い。このため、何ら対策を施さなければ、初期摩耗の際、ポリアミドイミドの大きな摩耗粉が脱落し、コーティング層の表面粗さが大きくなってしまう。そうすると、フォイル軸受において、流体潤滑の限界膜厚、すなわち接触支持から非接触支持に移行する時の流体膜の膜厚、言い換えればフォイル軸受により回転体が浮上する浮上回転数に達した時の流体膜の膜厚が大きくなり、フォイル軸受の浮上能力が低下する。フォイル軸受の浮上能力が低下すれば、コーティング層が相手材との摺動により摩耗する機会が増えてしまうので、コーティング層の耐久性の低下につながる。
【0028】
この点、本発明におけるコーティング層においては、上述の通り、二硫化モリブデンの働きにより、初期摩耗の際、摺動抵抗や表面粗さが大きくなることを抑制できる。そして、初期摩耗後におけるコーティング層の平滑性が向上すれば、フォイル軸受における流体潤滑の限界膜厚を小さくすることができ、浮上能力を向上させることができる。フォイル軸受の浮上能力が向上すれば、相手材との摺動によりコーティング層が摩耗する機会が減るので、コーティング層の耐久性を向上させることができる。
【0029】
また上述の通り、硬質クロムめっき膜により、コーティング層の摩耗量を大幅に減らすことができる。
【0030】
したがって、このターボ式流体機械によれば、軸受の軸受面又は回転体の被軸受面に形成されたコーティング層の耐久性を向上させて、軸受構造の寿命を向上させることができる。
【0031】
本発明のターボ式流体機械においても、ポリアミドイミドの含有量に対する二硫化モリブデンの含有量の質量百分率は42質量%以上127質量%以下であることが好ましい。
【0032】
本発明のターボ式流体機械は、車載燃料電池へ空気を圧送するためのものであって、10万rpm以上で回転しつつ前記回転体を駆動する電動モータを備えることが好ましい。
【0033】
車載燃料電池へ空気を圧送するターボ式流体機械には、小型な体格と大流量のガス移送能力が求められる。このため、回転体を駆動するモータには、10万rpm以上の高回転で駆動することが求められる。また、燃料電池に求められる発電量の変動に応じて、回転数を変動できるよう、電動モータで回転体を駆動するのが好ましい。10万rpm以上の高回転からモータ駆動を停止すると、吸入ガスの慣性が回転体に作用し、その結果、軸受面と被軸受面が大きな荷重を伴いつつ接触することがある。何ら対策を施さなければ、接触荷重が大きいときに、コーティング層表面からポリアミドイミドの移着粒子(摩耗粉)が大きくもぎ取られてしまい、コーティング層表面が大きく荒らされ、摩耗後にコーティング層の表面粗さが大きくなってしまう恐れがある。
【0034】
この点、本発明におけるコーティング層は表面粗さが大きくなることを抑えることができるので、本発明のターボ式流体機械は車載燃料電池へ空気を圧送するのに適している。
【0035】
本発明のターボ式流体機械においても、コーティング層は、固体潤滑剤としてのポリテトラフルオロエチレンをさらに含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0036】
本発明のすべり軸受構造及び本発明のターボ式流体機械によれば、軸受の軸受面又は回転体の被軸受面に形成されたコーティング層の耐久性を向上させて、軸受構造の寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は実施例のターボ式圧縮機の断面図である。
【
図2】
図2は実施例のターボ式圧縮機の一部を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は実施例のターボ式圧縮機の一部を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は実施例のターボ式圧縮機に係り、回転体の硬質クロムめっき膜とフォイル軸受のコーティング層の一部を拡大して示す模式断面図である。
【
図5】
図5は実施例のターボ式圧縮機に係り、フォイル軸受のコーティング層が摩耗する様子を説明する模式断面図である。
【
図6】
図6は摩擦摩耗試験1を模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図7は摩擦摩耗試験1の試験条件イメージを説明する図である。
【
図8】
図8は摩擦摩耗試験1後のコーティング層の表面粗さと二硫化モリブデンの含有量との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は摩擦摩耗試験2を模式的に示す斜視図である。
【
図10】
図10は発明例及び比較例に係り、摩擦摩耗試験2後のコーティング層の摩耗量の測定結果を示すグラフである。
【
図11】
図11は発明例に係り、摩擦摩耗試験2後のコーティング層の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を示す図面代用写真である。
【
図12】
図12は発明例に係り、
図11の四角で囲った領域についてSEM-EDX分析結果を示し、左上の写真はSEM像(反射電子像)、右上の写真はC(炭素)のマッピング像、左下の写真はMo(モリブデン)のマッピング像である。
【
図13】
図13は比較例に係り、摩擦摩耗試験2後のコーティング層の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を示す図面代用写真である。
【
図14】
図14は比較例に係り、
図13の四角で囲った領域についてSEM-EDX分析結果を示し、左上の写真はSEM像(反射電子像)、右上の写真はC(炭素)のマッピング像、左下の写真はMo(モリブデン)のマッピング像、右下の写真はTi(チタン)のマッピング像である。
【
図15】
図15は発明例に係り、摩擦摩耗試験2前の硬質クロムめっき膜の表面を、光学顕微鏡を用いて観察した結果を示す図面代用写真である。
【
図16】
図16は発明例に係り、摩擦摩耗試験2後の硬質クロムめっき膜の表面を、光学顕微鏡を用いて観察した結果を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を具体化した実施例について図面を参照しつつ説明する。
【0039】
(実施例)
この実施例では、本発明のターボ式流体機械をターボ式圧縮機10に具体化した。ターボ式圧縮機10は、燃料電池システムが搭載された燃料電池車に搭載されている。燃料電池システムは、酸素及び水素を車載燃料電池に供給して発電させる。ターボ式圧縮機10は、車載燃料電池に供給される酸素を含む空気を圧縮する。
【0040】
図1に示すように、ターボ式流体機械であるターボ式圧縮機10はハウジング11を備えている。ハウジング11は金属材料製であり、例えばアルミニウム合金製である。ハウジング11は、モータハウジング12と、コンプレッサハウジング13と、タービンハウジング14と、第1プレート15と、第2プレート16と、第3プレート17とを有している。
【0041】
モータハウジング12は、板状の端壁12aと、周壁12bとを有している。周壁12bは、端壁12aの外周部から筒状に延びている。第1プレート15は、モータハウジング12の周壁12bの開口側の端部に連結され、周壁12bの開口を閉塞している。
【0042】
モータハウジング12の端壁12aの内面121a、周壁12bの内周面121b、及び第1プレート15におけるモータハウジング12側の端面15aによってモータ室S1が区画されている。モータ室S1内には、電動モータ18が収容されている。
【0043】
第1プレート15は第1軸受保持部20を有している。第1軸受保持部20は、第1プレート15の端面15aの中央部から電動モータ18に向けて突出している。第1軸受保持部20は円筒状である。
【0044】
第1プレート15におけるモータハウジング12とは反対側の端面15bには、底面15dを有する凹部15cが形成されている。凹部15cは円孔状である。第1軸受保持部20の筒内は、第1プレート15を貫通して凹部15cの底面15dに開口している。凹部15cの軸心と第1軸受保持部20の軸心とは一致している。
【0045】
モータハウジング12は第2軸受保持部22を有している。第2軸受保持部22は、モータハウジング12の端壁12aの内面121aの中央部から電動モータ18に向けて突出している。第2軸受保持部22は円筒状である。第2軸受保持部22の筒内は、モータハウジング12の端壁12aを貫通して端壁12aの外面122aに開口している。第1軸受保持部20の軸心と第2軸受保持部22の軸心とは一致している。
【0046】
図2に示すように、第2プレート16は、第1プレート15の端面15bに連結されている。第2プレート16の中央部にはシャフト挿通孔16aが形成されている。シャフト挿通孔16aは凹部15c内に連通している。シャフト挿通孔16aの軸心は、凹部15cの軸心及び第1軸受保持部20の軸心と一致している。第2プレート16における第1プレート15側の端面16bと第1プレート15の凹部15cとによって、スラスト軸受収容室S2が区画されている。
【0047】
コンプレッサハウジング13は、空気が吸入される円孔状の吸入口13aを有する筒状である。コンプレッサハウジング13は、第2プレート16における第1プレート15とは反対側の端面16cに連結されている。コンプレッサハウジング13の吸入口13aの軸心と、第2プレート16のシャフト挿通孔16aの軸心と、第1軸受保持部20の軸心とは一致している。吸入口13aは、コンプレッサハウジング13における第2プレート16とは反対側の端面に開口している。
【0048】
コンプレッサハウジング13と第2プレート16の端面16cとの間には、第1羽根車室13bと、吐出室13cと、ディフューザ流路13dとが形成されている。第1羽根車室13bは吸入口13aに連通している。吐出室13cは、第1羽根車室13bの周囲で吸入口13aの軸心周りに延びている。ディフューザ流路13dは、第1羽根車室13bと吐出室13cとを連通している。第1羽根車室13bは、第2プレート16のシャフト挿通孔16aに連通している。
【0049】
図3に示すように、第3プレート17は、モータハウジング12の端壁12aの外面122aに連結されている。第3プレート17の中央部にはシャフト挿通孔17aが形成されている。シャフト挿通孔17aは、第2軸受保持部22の筒内に連通している。シャフト挿通孔17aの軸心は第2軸受保持部22の軸心と一致している。
【0050】
タービンハウジング14は、空気を吐出する円孔状の吐出口14aを有する筒状である。タービンハウジング14は、第3プレート17におけるモータハウジング12とは反対側の端面17bに連結されている。タービンハウジング14の吐出口14aの軸心と、第3プレート17のシャフト挿通孔17aの軸心と、第2軸受保持部22の軸心とは一致している。吐出口14aは、タービンハウジング14における第3プレート17とは反対側の端面に開口している。
【0051】
タービンハウジング14と第3プレート17の端面17bとの間には、第2羽根車室14bと、吸入室14cと、連通流路14dとが形成されている。第2羽根車室14bは吐出口14aに連通している。吸入室14cは、第2羽根車室14bの周囲で吐出口14aの軸心周りに延びている。連通流路14dは、第2羽根車室14bと吸入室14cとを連通している。第2羽根車室14bは、第3プレート17のシャフト挿通孔17aに連通している。
【0052】
図1に示すように、ハウジング11内には回転体24が収容されている。回転体24は、軸部としての回転軸24aと、第1支持部24bと、第2支持部24cと、スラストカラーとしての第3支持部24dとを有している。回転軸24aは、コンプレッサハウジング13側の端部である第1端部24eと、タービンハウジング14側の端部である第2端部24fとを有している。第1支持部24bは、回転軸24aの外周面240aにおける第1端部24e寄りの部位に設けられるとともに第1軸受保持部20の筒内に配置されている。第1支持部24bは、回転軸24aに一体的に形成されるとともに回転軸24aの外周面240aから環状に突出している。
【0053】
回転体24を構成する回転軸24aと、第1支持部24bと、第2支持部24cと、第3支持部24dとは、いずれもチタン合金よりなる。なお、回転体24を構成する回転軸24aと、第1支持部24bと、第2支持部24cと、第3支持部24dとは、いずれもチタン合金とは異なる金属であってもよい。
【0054】
第2支持部24cは、回転軸24aの外周面240aにおける第2端部24f寄りの部位に設けられるとともに第2軸受保持部22の筒内に配置されている。第2支持部24cは、円筒状をなし、回転軸24aの外周面240aから環状に突出した状態で、回転軸24aの外周面240aに固定されている。第2支持部24cは、回転軸24aと一体的に回転可能である。
【0055】
第3支持部24dはスラスト軸受収容室S2に配置されている。第3支持部24dは、円板状をなし、回転軸24aの外周面240aから環状に突出した状態で、回転軸24aの外周面240aに固定されている。第3支持部24dは、回転軸24aと一体的に回転可能である。第3支持部24dは、電動モータ18に対して回転体24の軸心方向で離隔した位置に配置されている。以下の説明において、軸心方向とは、回転体24の軸心方向を意味する。
【0056】
回転軸24aの第1端部24eには、作動体としての第1羽根車25が連結されている。第1羽根車25は、回転軸24aにおける第3支持部24dよりも第1端部24e寄りに配置されている。第1羽根車25は第1羽根車室13bに収容されている。回転軸24aの第2端部24fには、第2羽根車26が連結されている。第2羽根車26は、回転軸24aにおける第2支持部24cよりも第2端部24f寄りに配置されている。第2羽根車26は第2羽根車室14bに収容されている。ハウジング11は、第1羽根車25、第2羽根車26及び回転体24を収容している。
【0057】
第2プレート16のシャフト挿通孔16aと回転体24との間には、第1シール部材27が設けられている。第1シール部材27は、第1羽根車室13bからモータ室S1に向かう空気の洩れを抑制する。第3プレート17のシャフト挿通孔17aと回転体24との間には、第2シール部材28が設けられている。第2シール部材28は、第2羽根車室14bからモータ室S1に向かう空気の洩れを抑制する。第1シール部材27及び第2シール部材28は、例えばシールリングである。
【0058】
電動モータ18は、筒状のロータ31及び筒状のステータ32を備えている。ロータ31は回転軸24aに固定されている。ステータ32はハウジング11に固定されている。ロータ31は、ステータ32の径方向内側に配置されるとともに回転体24と一体的に回転する。ロータ31は、回転軸24aに止着された円筒状のロータコア31aと、ロータコア31aに設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。ステータ32は、ロータ31を取り囲んでいる。ステータ32は、モータハウジング12の周壁12bの内周面121bに固定された円筒状のステータコア33と、ステータコア33に巻回されたコイル34と、を有している。回転体24は、図示しないバッテリからコイル34に電流が流れることによって、ロータ31と一体的に回転する。電動モータ18は、およそ10万rpmから12万rpmの範囲で回転する。
【0059】
この実施例における燃料電池システムは、車載燃料電池としての燃料電池スタック100と、ターボ式圧縮機10と、供給流路L1と、吐出流路L2と、分岐流路L3とを備えている。燃料電池スタック100は、複数の燃料電池から構成されている。供給流路L1は、吐出室13cと、燃料電池スタック100とを接続する。吐出流路L2は、燃料電池スタック100と、吸入室14cとを接続する。供給流路L1から分岐する分岐流路L3の途中には、インタークーラ110が設けられている。インタークーラ110は、分岐流路L3を流れる空気を冷却する。
【0060】
回転体24がロータ31と一体的に回転すると、第1羽根車25及び第2羽根車26が回転体24と一体的に回転する。すると、吸入口13aから吸入された空気が第1羽根車室13b内で第1羽根車25によって圧縮されるとともにディフューザ流路13dを通過して吐出室13cから吐出される。吐出室13cから吐出された空気は、供給流路L1を介して燃料電池スタック100に供給される。燃料電池スタック100に供給された空気は、燃料電池スタック100を発電するために使用された後、燃料電池スタック100の排気として吐出流路L2へ吐出される。燃料電池スタック100の排気は、吐出流路L2を介して吸入室14cに吸入される。吸入室14cに吸入された燃料電池スタック100の排気は、連通流路14dを通じて第2羽根車室14bに吐出される。第2羽根車室14bに吐出される燃料電池スタック100の排気により第2羽根車26が回転する。回転体24は、電動モータ18の駆動による回転に加え、燃料電池スタック100の排気により回転する第2羽根車26の回転によっても回転する。よって、作動体としての第1羽根車25は回転体24と一体的に回転するとともに、外部流体としての空気を圧送する。第2羽根車室14bに吐出された燃料電池スタック100の排気は、吐出口14aから外部へ吐出される。
【0061】
ターボ式圧縮機10は、回転体24をハウジング11に対して回転可能に支持する複数のフォイル軸受60を有している。各フォイル軸受60は、後述する軸受面60a及び後述する被軸受面24gの間隙に気体の潤滑剤としての空気が導入され、間隙に発生する動圧によって荷重を支える動圧型の空気軸受である。フォイル軸受60は、本発明における「すべり軸受」の一例である。回転体24及びフォイル軸受60は、本発明における「すべり軸受構造」の一例である。複数のフォイル軸受60は、一対のスラストフォイル軸受30、30と、一対のラジアルフォイル軸受40、40とを含む。一対のスラストフォイル軸受30、30は、回転体24の第3支持部24dをハウジング11に対して回転可能に回転体24の軸心方向に支持する。一対のラジアルフォイル軸受40、40は、回転体24の第1支持部24b、第2支持部24cをハウジング11に対して回転可能に回転体24の軸心方向に直交する方向に支持する。
【0062】
一対のスラストフォイル軸受30、30は、スラスト軸受収容室S2に配置されている。一対のスラストフォイル軸受30、30は、スラストカラーとしての第3支持部24dを挟み込むように配置されている。一対のスラストフォイル軸受30、30は、第3支持部24dに対して、回転体24の軸心方向で対向している。一方のスラストフォイル軸受30は、第3支持部24dに対して、回転軸24aの第1端部24e側に配置されている。他方のスラストフォイル軸受30は、第3支持部24dに対して、回転軸24aの第2端部24f側に配置されている。
【0063】
図2に示すように、第3支持部24dにおける回転軸24aの第1端部24e側の端面が、一方のスラストフォイル軸受30に軸心方向に支持される被軸受面24gとされる。一方のスラストフォイル軸受30は、この被軸受面24gに対面する軸受面60aを有する。同様に、第3支持部24dにおける回転軸24aの第2端部24f側の端面が、他方のスラストフォイル軸受30に軸心方向に支持される被軸受面24gとされる。他方のスラストフォイル軸受30は、この被軸受面24gに対面する軸受面60aを有する。
【0064】
図2及び
図3に示すように、一方のラジアルフォイル軸受40は第1軸受保持部20内に配置されており、他方のラジアルフォイル軸受40は第2軸受保持部22内に配置されている。第1軸受保持部20内において、回転体24の第1支持部24bが一方のラジアルフォイル軸受40に回転可能に支持される。第1支持部24bの外周面が、一方のラジアルフォイル軸受40に軸心方向と直交する方向に支持される被軸受面24gとされる。一方のラジアルフォイル軸受40は、この被軸受面24gに対面する軸受面60aを有する。同様に、第2軸受保持部22内において、回転体24の第2支持部24cが他方のラジアルフォイル軸受40に回転可能に支持される。第2支持部24cの外周面が、他方のラジアルフォイル軸受40に軸心方向と直交する方向に支持される被軸受面24gとされる。他方のラジアルフォイル軸受40は、この被軸受面24gに対面する軸受面60aを有する。
【0065】
図4に示すように、各フォイル軸受60の軸受面60a、すなわち各スラストフォイル軸受30、30の軸受面60a及び各ラジアルフォイル軸受40、40の軸受面60aには、それぞれコーティング層61が形成されている。各コーティング層61は、基本的には同一の構成を有している。コーティング層61は、樹脂バインダ61aとしてのポリアミドイミド(PAI)と、固体潤滑剤61bとしての二硫化モリブデン(MoS
2 )と、同じく固体潤滑剤としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを含有している。コーティング層61においては、樹脂バインダ61aとしてのポリアミドイミドに対して、固体潤滑剤61bとしての二硫化モリブデンとポリテトラフルオロエチレンとがそれぞれ所定の配合比で含有されている。各コーティング層61は、スプレー、刷毛、ナイフ、またはアプリケータなどによる塗布や、スクリーン印刷など様々な工法にて形成される。各コーティング層61の形成は、フォイル軸受60の成形加工の前後どちらでなされてもよい。また、各コーティング層61は、形成後に研磨されてもされなくてもよい。
【0066】
一対のスラストフォイル軸受30、30が回転可能に支持する第3支持部24dにおける両被軸受面24gと、一方のラジアルフォイル軸受40が回転可能に支持する第1支持部24bにおける被軸受面24gと、他方のラジアルフォイル軸受40が回転可能に支持する第2支持部24cにおける被軸受面24gとには、硬質クロムめっき膜62がそれぞれ形成されている。
【0067】
各硬質クロムめっき膜62は、いずれも同じ構成を有しており、高速浴を用いた電気めっきにより形成することができる。硬質クロムめっき膜62の膜厚は、1~15μm程度とすることができ、硬質クロムめっき膜62のビッカース硬さは、HV500~1200程度とすることができる。この実施例では、硬質クロムめっき膜62の膜厚は3μmであり、硬質クロムめっき膜62のビッカース硬さはHV900である。
【0068】
スラストフォイル軸受30及びラジアルフォイル軸受40の基本的な構成は特に限定されず、所謂流体軸受の基本構成を採用することができる。すなわち、スラストフォイル軸受30及びラジアルフォイル軸受40は、軸受面60aを有するトップフォイルと、波板形状をなしてトップフォイルを弾性支持するバンプフォイルとを有している。フォイル軸受60としてのスラストフォイル軸受30及びラジアルフォイル軸受40は、回転体24の回転数が浮上回転数に達するまでの低速回転時には、軸受面60aと被軸受面24gとが接触した状態で相対回転する回転体24を支持し、回転体24が高速回転して浮上回転数に達すれば、軸受面60aと被軸受面24gとが非接触な状態で、軸受面60aと被軸受面24gとの間の軸受隙間60bに生じる流体膜で回転体24を支持する。ここに、軸受面60aと被軸受面24gとが接触した状態とは、軸受面60aに形成されたコーティング層61と、被軸受面24gに形成された硬質クロムめっき膜62とが接触した状態を意味する。このことは、以下の説明においても同様である。
【0069】
図1~
図3に示すように、ハウジング11には冷却通路50が形成されている。冷却通路50には流体としての空気が流れる。冷却通路50は、第2プレート16、第1プレート15、モータハウジング12、及び第3プレート17に亘って形成されている。冷却通路50は、第1通路51及び第2通路52を有している。
【0070】
第1通路51は第2プレート16に設けられている。第1通路51は、第2プレート16の側壁面に設けられた流入口51aを有している。分岐流路L3は、供給流路L1と、第1通路51の流入口51aとを接続する。第1通路51は、スラスト軸受収容室S2及び一方のラジアルフォイル軸受40を介してモータ室S1に連通している。
【0071】
第2通路52は、第3プレート17に設けられている。第2通路52は、第3プレート17の側端面に設けられた排出口52aを有している。第2通路52は、他方のラジアルフォイル軸受40を介してモータ室S1に連通している。
【0072】
第1通路51には、燃料電池スタック100に向かって供給流路L1を流れる空気の一部が分岐流路L3を介して流入される。なお、第1通路51に流入される空気は、分岐流路L3を流れる途中でインタークーラ110によって冷却空気とされている。第1通路51に流入した冷却空気は、スラスト軸受収容室S2に流入する。
【0073】
スラスト軸受収容室S2に流入した冷却空気は、主に一方のスラストフォイル軸受30を介して内周側から外周側に向かって流れる。その後、第3支持部24dの径方向外側を通過した冷却空気は、主に他方のスラストフォイル軸受30を介して外周側から内周側に向かって流れる。
【0074】
スラスト軸受収容室S2を通過した冷却空気は一方のラジアルフォイル軸受40を介してモータ室S1に流入する。モータ室S1内に流れ込んだ空気は、例えば、ロータ31とステータ32との間を通過し、他方のラジアルフォイル軸受40を介して第2通路52に流れ込み、排出口52aから排出される。
【0075】
このように、冷却空気が冷却通路50を流れることにより、電動モータ18、一対のスラストフォイル軸受30、30、及び一対のラジアルフォイル軸受40、40が冷却空気によって直接冷却される。
【0076】
このターボ式圧縮機10では、フォイル軸受60の軸受面60aにコーティング層61が形成されている。このコーティング層61では、樹脂バインダ61aとしてのポリアミドイミドに対して、固体潤滑剤61bとしての二硫化モリブデンが所定量配合されている。このため、コーティング層61の表面においては、ポリアミドイミド中に所定量の二硫化モリブデンが分散している。
【0077】
樹脂バインダ61aとしてのポリアミドイミドは、高硬度であり耐摩耗性が高い。その一方で、ポリアミドイミドは、靭性が高くて粘り強い。このため、コーティング層61の表面に所定の固体潤滑剤が存在しないと、相手材との摺動による初期摩耗の際、コーティング層61の表面からポリアミドイミドの移着粒子(摩耗粉)が大きくもぎ取られてしまう。その結果、コーティング層61の表面が大きく荒らされて、初期摩耗後にコーティング層61の表面粗さが大きくなってしまう。そうすると、フォイル軸受60において、流体潤滑の限界膜厚が大きくなり、フォイル軸受60の浮上能力が低下する。フォイル軸受60の浮上能力が低下すれば、コーティング層61が相手材との摺動により摩耗する機会が増えてしまうので、コーティング層61の耐久性の低下につながる。
【0078】
この点、このターボ式圧縮機10におけるコーティング層61には、ポリアミドイミド中に所定量の二硫化モリブデンが分散している。二硫化モリブデンは、Mo層をS層が挟んだ形のサンドイッチ構造の結晶構造を有する層状固体潤滑剤である。この二硫化モリブデンが相手材と摺動すると、結合力の弱いS層同士の間で滑りが容易に起こり、低摩擦を発現する。また、初期摩耗において、相手材表面の微小突起を潰したり、削ったり、溝を埋めたりして早期になじみ面を形成させる。このため、コーティング層61の表面に二硫化モリブデンが分散していると、摺動抵抗を低下させることができる。
【0079】
さらに、二硫化モリブデンは、ポリアミドイミドと比べて、靭性が低くて硬い。このため、
図5に示すように、初期摩耗によってコーティング層61の表面からもぎ取られるポリアミドイミドの移着粒子61cが、ポリアミドイミドよりも硬い二硫化モリブデンによって分断される。すなわち、二硫化モリブデンが、ポリアミドイミドの移着粒子61cを細分化する。その結果、初期摩耗の際のポリアミドイミドの移着粒子61cが小さくなる。ポリアミドイミドの移着粒子61cが小さくなれば、コーティング層61の表面が大きく荒らされることが抑えられるので、コーティング層61の表面粗さが大きくなることを抑えることができる。
【0080】
このように初期摩耗後におけるコーティング層61の平滑性が向上すれば、フォイル軸受60における流体潤滑の限界膜厚を小さくすることができ、浮上能力を向上させることができる。フォイル軸受60の浮上能力が向上すれば、相手材との摺動によりコーティング層61が摩耗する機会が減るので、コーティング層61の耐久性を向上させることができる。
【0081】
さらに、このターボ式圧縮機10では、回転体24の被軸受面24gに硬質クロムめっき膜62が形成されている。これにより、硬質クロムめっき膜62と摺動するコーティング層61の摩耗量を大幅に減らすことができる。このメカニズムとして、他の金属と異なり硬質クロムめっき膜の表面に形成される自然酸化皮膜が潤滑の作用を持つと考えられる。その他には、ポリアミドイミドに二硫化モリブデンが分散したコーティング層61と、硬質クロムめっき膜62との相性の良さによるものと考えられる。
【0082】
また、回転体24の回転駆動時において、バンプフォイルの波板形状にならってトップフォイルが変形すると、トップフォイルの軸受面60aに形成されたコーティング層61も同様に変形して、その表面が波板形状になる。これにより、摺動相手の硬質クロムめっき膜62よりもかなり軟らかいコーティング層61において、硬質クロムめっき膜62と当接する波板形状の凸部分が摩耗することによって、コーティング層61の摺動表面が均されると考えられる。その結果、軸受面60aがコーティング層61を介して被軸受面24gをより広い面で受けることができ、軸受面60aによる被軸受面24gの保持能力が高まると考えられる。
【0083】
したがって、このターボ式圧縮機10によれば、フォイル軸受60の軸受面60aに形成されたコーティング層61の耐久性を向上させて、フォイル軸受60の製品寿命を向上させることができる。
【0084】
また、このターボ式圧縮機10におけるコーティング層61は、固体潤滑剤としてのポリテトラフルオロエチレンをさらに含有している。コーティング層61の表面にポリテトラフルオロエチレンが存在すると、相手材との摺動による初期摩耗の際、ポリテトラフルオロエチレンの移着粒子が相手材に付着して被膜を形成する。ポリテトラフルオロエチレンの被膜は滑りやすく低摩擦であるため、この被膜の形成によりコーティング層61に対する相手材の攻撃性が低下する。そのため、コーティング層61からポリアミドイミドや二硫化モリブデンの移着粒子がもぎ取られることが抑えられる。その結果、コーティング層61の表面における摩耗量を低減させることができる。
【0085】
このターボ式圧縮機10のように車載燃料電池としての燃料電池スタック100へ空気を圧送するターボ式流体機械には、小型な体格と大流量のガス移送能力が求められる。このため、回転体24を駆動する電動モータ18には、10万rpm以上の高回転で駆動することが求められる。10万rpm以上の高回転から電動モータ18の駆動を停止すると、吸入ガスの慣性が回転体24に作用し、その結果、フォイル軸受60の軸受面60aとその相手方の被軸受面24gとが大きな荷重を伴いつつ接触することがある。何ら対策を施さなければ、接触荷重が大きいときに、コーティング層61の表面からポリアミドイミドの移着粒子(摩耗粉)が大きくもぎ取られてしまい、コーティング層61の表面が大きく荒らされ、摩耗後にコーティング層61の表面粗さが大きくなってしまう恐れがある。
【0086】
この点、このターボ式圧縮機10におけるコーティング層61は表面粗さが大きくなることを抑えることができる。このため、このターボ式圧縮機10は、燃料電池スタック100へ空気を圧送するのに適している。
【0087】
(摩擦摩耗試験1)
表1に示す試験No.1~5の評価材を準備した。すなわち、固体潤滑剤としての二硫化モリブデンが表1に示す配合比で樹脂バインダとしてのポリアミドイミドに含有されたコーティング層をSUS基材の摺動面に形成して、試験No.1~5の評価材とした。表1において、試験No.2はポリアミドイミドの質量に対する二硫化モリブデンの質量の比が0.42であることを示しており、試験No.5はポリアミドイミドの質量に対する二硫化モリブデンの質量の比が1.27であることを示している。他の評価材についても同様である。
【0088】
【0089】
試験No.1~5の評価材については、樹脂バインダ61aとしてのポリアミドイミドがポリアミドイミドの中でも硬く高強度のものである。試験No.1、No.2、No.4、No.5の評価材におけるコーティング層61のビッカース硬さはいずれも20MHV以上である。試験No.1~5の評価材における二硫化モリブデンの平均粒子径は1.6μmである。
【0090】
試験No.1~5の評価材について、以下に示す条件で、ブロックオンリングの摩擦摩耗試験1を実施した。この試験は、
図6に示すように、相手材としてのリング71を回転させ、そのリング71の外周面に所定の荷重で評価材としてのブロック72のコーティング層を摺動させることにより行った。
【0091】
図7に示すように、リングの回転数を5秒かけて5000rpmまで上昇させた後、5秒かけて0rpmまで下降させるGo-Stopを20分間繰り返した。
【0092】
<試験機>
UMT-3(Bruker製)
<試験モード>
ブロックオンリング(Go-Stop繰り返し)
<評価材>
ブロック形状:16.5×6.2×10.2mm(横×縦×高さ)
材質:SUS304基材上に各コーティング層を形成(スプレー塗装/焼成/研磨)
<相手材>
リング形状:Φ35×8.77mm
材質:64チタン
<荷重>
約0.5N(50gf)
<面圧>
0.04MPa@摩耗幅2mm時
<回転速度>
5000rpm
<最大摺動速度>
9.16m/sec(フォイル軸受の浮上時に相当する摺動速度)
<昇速/降速時間>
5sec/5sec
<潤滑環境>
無潤滑
<試験開始温度>
常温なりゆき
<試験時間>
20min
<備考>
エア強制吹付(目的:摺動による昇温を抑制)
【0093】
(二硫化モリブデン含有量と表面粗さとの関係)
試験No.1~5の評価材について、摩擦摩耗試験1後のコーティング層の表面粗さを測定した。すなわち、JIS B 0633:2001に準拠する測定条件で、触針式の粗さ計を用いてリング71の回転方向に沿うようにコーティング層の表面粗さを測定した。結果を
図8に示す。
【0094】
図8に示すように、二硫化モリブデンが含有されていない試験No.1の評価材では、初期摩耗後のコーティング層の表面が大きく荒らされていたのに対し、ポリアミドイミドの含有量に対して二硫化モリブデンを42質量%以上127質量%以下含有する試験No.2~5の評価材では、初期摩耗後のコーティング層の表面が大きく荒らされることが抑えられた。これにより、ポリアミドイミドに対して42質量%以上127質量%以下の二硫化モリブデンを含有させることによる顕著な効果が実証された。
【0095】
(摩擦摩耗試験2)
摩擦摩耗試験2をする評価材として、
図9に示すように、15.8×6.2×10.2mm(横×縦×高さ)のブロック74を準備した。ブロック74はステンレス鋼(SUS304)よりなり、ブロック74の上面(15.8×6.2の一面)にはΦ35の凹面74aが設けられている。そして、凹面74aの表面にコーティング層が形成されている。このコーティング層は、厚さ40μmを狙って、スプレー塗装、焼成及び研磨の各処理を施すことにより形成した。このコーティング層におけるポリアミドイミドの質量に対する二硫化モリブデンの質量の比は1.17とした。
【0096】
摩擦摩耗試験2をする相手材として、
図9に示すように、Φ35×8.77mmのリング73を準備した。発明例におけるリング73はステンレス鋼(SUS630)よりなり、リング73の外周面73aに硬質クロムめっき膜が形成されている。この硬質クロムめっき膜は、研削による仕上げ加工で仕上げ面粗さがRa0.1μmとされた外周面73aに対して、高速浴を用いた電気めっきにより形成し、再度研削による仕上げ加工で仕上げ面粗さをRa0.1μmとした。この硬質クロムめっき膜の膜厚は3μmであり、この硬質クロムめっき膜のビッカース硬さはHV900である。
【0097】
また、比較例におけるリング73は64チタン合金よりなる。比較例におけるリング73の外周面73aは、研削による仕上げ加工により、仕上げ面粗さがRa0.1μmとされており、この外周面73aには皮膜処理が施されていない。比較例におけるリング73のビッカース硬さはHV350である。
【0098】
これらの評価材及び相手材を用いて、以下に示す条件で、摩擦摩耗試験2を実施した。この試験は、
図9に示すように、相手材としてのリング73を回転させ、そのリング73の外周面73aに所定の荷重で評価材としてのブロック74の凹面74aを摺動させることにより行った。
【0099】
この試験は、リング73の回転数を5秒かけて2930rpmまで上昇させた後、5秒かけて0rpmまで下降させるGo-Stopを繰り返した。
【0100】
<試験機>
UMT-TriboLab(Bruker製)
<荷重>
14N
<回転速度>
2930rpmの起動及び停止の繰り返し
<昇速/降速時間>
5sec/5sec
<潤滑環境>
無潤滑
<試験開始温度>
常温なりゆき
<試験時間>
発明例:20min、比較例:5min
【0101】
そして、評価材について、ブロック74の凹面74aに形成されたコーティング層の摩耗量を測定した。これは、摩擦摩耗試験2の前後において、触針式の形状測定器で凹面74aの形状を測定することで凹面74aの断面積を算出し、断面積の増加量をコーティング層の摩耗量とした。その結果を
図10に示す。
【0102】
図10から明らかなように、比較例においては、試験時間が5分と短いにもかかわらずコーティング層の摩耗量が極めて多かった。これに対し、発明材においては、20分の試験時間では、測定下限未満の摩耗量だった。これにより、硬質クロムめっき膜を形成することによって、コーティング層の摩耗量が極端に低減することが明らかとなった。
【0103】
発明例におけるリング73を用いた摩擦摩耗試験2を実施した後に、コーティング層の表面をSEMで観察した結果を
図11に示すとともに、
図11の四角で囲った領域についてSEM-EDX分析を行った結果を
図12に示す。
【0104】
また、比較例におけるリング73を用いた摩擦摩耗試験2を実施した後に、コーティング層の表面をSEMで観察した結果を
図13に示すとともに、
図13の四角で囲った領域についてSEM-EDX(エネルギー分散型X線分光法)分析を行った結果を
図14に示す。
【0105】
図12及び
図14において、左上の写真はSEM像(反射電子像)であり、この写真において金属系は白っぽく見え、有機物系は黒っぽく見える。
図12及び
図14において、右上の写真はC(炭素)のマッピング像であり、この写真において薄い色の部位がCであり、このCは主にポリアミドイミド由来のものと考えられる。
図12及び
図14において、左下の写真はMo(モリブデン)のマッピング像であり、この写真において薄い色の部位がMoであり、このMoは主に二硫化モリブデン由来のものと考えられる。
図14において、右下の写真はTi(チタン)のマッピング像であり、この写真において薄い色の部位がTiであり、このTiは主にチタン合金由来のものと考えられる。発明材を用いた摩擦摩耗試験2後のコーティング層においては、SEM-EDX分析によるSUSの検出は認められなかった。
【0106】
図12と
図14との比較から、比較例における摩擦摩耗試験2後のコーティング層の表面には、チタンが多く存在しているのに対して、発明例における摩擦摩耗試験2後のコーティング層の表面には、SUS及びクロムの存在が認められなかった。このことから、比較例においては、硬質クロムめっき膜が形成されていないため、チタン合金よりなるリング73の外周面73aにおいてチタンが摩耗し、そのチタン摩耗粉がコーティング層を攻撃したことによってコーティング層の摩耗量が大きくなったと考えられる。これに対し、発明例においては、硬質クロムめっき膜によりリング73の外周面73aにおいてSUS及びクロムの摩耗が抑えられ、SUS摩耗粉あるいはクロム摩耗粉によるコーティング層の攻撃が無かったため、樹脂コーティング層の摩耗量が極端に小さかったと考えられる。
【0107】
さらに、発明例におけるリング73を用いた摩擦摩耗試験2の実施の前後に、リング73の摺動面である外周面73aを光学顕微鏡で観察した。摩擦摩耗試験2の実施前の光学顕微鏡像を
図15に示し、摩擦摩耗試験2の実施後の光学顕微鏡像を
図16に示す。
【0108】
図16において、LIBS(レーザ励起発光分光分析法)分析の結果、黒っぽく見える部位はCとMoであることが判明した。これにより、リング73の外周面73aにコーティング層が移着していることが確認できた。また、
図15と
図16との比較により、リング73の外周面73aには大きな縦キズが認められなかった。これによっても、硬質クロムめっき膜が形成された外周面73aは摩耗しなかったことが明らかとなった。
【0109】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0110】
例えば、上記実施例では、フォイル軸受60の軸受面60aにコーティング層61を形成するとともに、回転体24の被軸受面24gに硬質クロムめっき膜62を形成するが、本発明はこれに限定されず、フォイル軸受60の軸受面60aに硬質クロムめっき膜を形成するとともに、回転体24の被軸受面24gにコーティング層61を形成してもよい。
【0111】
上記実施例では、コーティング層61に固体潤滑剤としての二硫化モリブデンとポリテトラフルオロエチレンを含有させるが、本発明はこれに限定されず、固体潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレンを含有させることなく二硫化モリブデンのみを含有させたり、あるいは必要に応じて、他の固体潤滑剤、各種の添加剤や充填剤を加えたりしてもよい。
【0112】
(付記1)
回転体と、前記回転体を支持するすべり軸受と、を備えるすべり軸受構造であって、
前記すべり軸受の軸受面及び前記回転体の被軸受面の一方にコーティング層が形成され、
前記コーティング層は、樹脂バインダとしてのポリアミドイミドと、固体潤滑剤としての二硫化モリブデンと、を含有し、
前記軸受面及び前記被軸受面の他方に硬質クロムめっき膜が形成され、
前記コーティング層と前記硬質クロムめっき膜とは対向していることを特徴とするすべり軸受構造。
【0113】
(付記2)
前記ポリアミドイミドの含有量に対する前記二硫化モリブデンの含有量の質量百分率が42質量%以上127質量%以下である付記1記載のすべり軸受構造。
【0114】
(付記3)
前記コーティング層は、固体潤滑剤としてのポリテトラフルオロエチレンをさらに含有する付記1又は2記載のすべり軸受構造。
【0115】
(付記4)
前記軸受面に前記コーティング層が形成され、前記被軸受面に前記硬質クロムめっき膜が形成されている付記1~3のいずれか1項記載のすべり軸受構造。
【0116】
(付記5)
前記軸受面及び前記被軸受面の間隙には気体の潤滑剤が導入され、前記間隙に発生する動圧によって荷重を支える付記1~4のいずれか1項記載のすべり軸受構造。
【0117】
(付記6)
回転体と、
前記回転体と一体的に回転して外部流体を圧送する作動体と、
前記回転体及び前記作動体を収容するハウジングと、
前記回転体を前記ハウジングに対して回転可能に支持するフォイル軸受と、を備えるターボ式流体機械であって、
前記フォイル軸受の軸受面及び前記回転体の被軸受面の一方にコーティング層が形成され、
前記コーティング層は、樹脂バインダとしてのポリアミドイミドと、固体潤滑剤としての二硫化モリブデンと、を含有し、
前記軸受面及び前記被軸受面の他方に硬質クロムめっき膜が形成され、
前記コーティング層と前記硬質クロムめっき膜とは対向していることを特徴とするターボ式流体機械。
【0118】
(付記7)
前記ポリアミドイミドの含有量に対する前記二硫化モリブデンの含有量の質量百分率が42質量%以上127質量%以下である付記6記載のターボ式流体機械。
【0119】
(付記8)
車載燃料電池へ空気を圧送するためのターボ式流体機械であって、
10万rpm以上で回転しつつ前記回転体を駆動する電動モータを備える付記6又は7記載のターボ式流体機械。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、燃料電池システムに用いられる空気圧縮機等に利用可能である。
【符号の説明】
【0121】
24…回転体(すべり軸受構造)
24g…被軸受面
60…フォイル軸受(すべり軸受構造)
60a…軸受面
61…コーティング層
61a…樹脂バインダ
61b…固体潤滑剤
62…硬質クロムめっき膜