(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168865
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/09 20120101AFI20241128BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B60W30/09
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085884
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富永 健太
(72)【発明者】
【氏名】西脇 和弘
(72)【発明者】
【氏名】大曲 祐子
(72)【発明者】
【氏名】若林 瑞保
(72)【発明者】
【氏名】大倉 優一
(72)【発明者】
【氏名】服部 潤也
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA12
3D241BA33
3D241BA51
3D241BB16
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE01
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3D241CE09
3D241DA55Z
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3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DC50Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB13
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
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5H181FF05
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5H181FF32
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】車線変更の進行度合いを考慮して、変更先車線に存在する障害物を考慮した目標軌道を設定し、乗員の安全性及び快適性を向上することができる車両制御装置を提供する。
【解決手段】障害物の移動予測及び道路情報の少なくとも一方に基づいて進入禁止領域を設定し、進入禁止領域に進入しないという制約の下で目標軌道を演算し、変更元車線から変更先車線に車線変更するための目標軌道を演算する場合に、変更元車線又は変更先車線に対する自車両の横方向に位置に基づいて、進入禁止領域を変更する車両制御装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物の移動予測及び道路情報の少なくとも一方に基づいて、自車両の進入禁止領域を設定する進入禁止領域設定部と、
前記進入禁止領域に進入しないという制約の下で、前記自車両の将来に亘る目標軌道を演算する目標軌道生成部と、
前記目標軌道に基づいて、前記自車両の走行を制御する車両制御部と、
を備え、
前記進入禁止領域設定部は、前記目標軌道生成部が変更元車線から変更先車線に車線変更するための前記目標軌道を演算する場合に、前記変更元車線又は前記変更先車線に対する前記自車両の横方向に位置に基づいて、前記進入禁止領域を変更する車両制御装置。
【請求項2】
前記進入禁止領域設定部は、前記横方向の位置が、前記変更元車線及び前記変更先車線の横方向の範囲内に設定した基準位置を前記変更先車線側に超えた後は、前記変更先車線に存在する前記障害物を、前記自車両が前記変更元車線に戻ることなく衝突回避するような前記進入禁止領域を設定する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記進入禁止領域設定部は、前記横方向の位置が前記基準位置を超えた後は、前記変更先車線に存在する前記障害物を、前記自車両が前記変更元車線に戻ることなく衝突回避するように、前記障害物と前記自車両との車間距離を設定距離以上確保するような前記進入禁止領域を設定する請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記進入禁止領域設定部は、前記横方向の位置が前記基準位置を超えた後は、前記変更先車線において前記自車両の前方に存在する前記障害物である前方障害物を、前記自車両が前記変更元車線に戻ることなく衝突回避するように、前記変更先車線から前記自車両が離脱しないような前記進入禁止領域、および、前記障害物と前記自車両との車間距離を設定距離以上確保するような前記進入禁止領域を設定する請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記基準位置は、前記変更元車線と前記変更先車線との境界を示す区画線である請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記進入禁止領域設定部は、前記自車両に関する例外に該当するか否かを判定し、前記例外に該当すると判定した場合には、前記横方向の位置が前記基準位置を超えた後でも、前記変更先車線に存在する前記障害物を、前記自車両が前記変更元車線に戻って衝突回避するような前記進入禁止領域を設定する請求項2から5のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記例外は、前記障害物を、前記自車両が前記変更元車線に戻ることなく衝突回避するために必要な加速度又は減速度の絶対値が、判定値以上である場合である請求項6に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記例外は、前記変更先車線に、前記自車両が車線変更するための判定値以上のスペースを確保できない場合である請求項6に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記進入禁止領域設定部は、前記横方向の位置が前記基準位置を超えた後は、前記変更先車線に存在する前記障害物よりも前記設定距離以上前記自車両側に、前記変更元車線及び前記変更先車線を横方向に横切る境界線を設定し、前記境界線の前記障害物側に、前記進入禁止領域を設定する請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項10】
前記進入禁止領域設定部は、前記設定距離を、前記横方向の位置が前記基準位置を超えた時点の前記自車両と前記障害物との車間距離以下の距離に設定する請求項3又は9に記載の車両制御装置。
【請求項11】
前記進入禁止領域設定部は、前記横方向の位置が前記基準位置を超える前は、前記障害物の前記変更元車線側に前記変更元車線を自車両が走行できるスペースを残し、前記障害物と前記自車両との車間距離を設定距離以上確保するような前記進入禁止領域を設定する請求項2に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、車両制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の走行を制御する技術が種々提案されている。そのうちの1つとして、現在走行している車線から隣の車線へと車両が移動する車線変更を制御する装置が開発されている。
【0003】
たとえば、特許文献1の車両制御装置は、変更先の車線の2台の障害物の周囲に進入禁止領域を設定し、その間に目標スペースを設定し、目標スペースの移動予測に基づき目標経路を決定して、車線変更を実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、障害物の周辺に進入禁止領域を設定すると、たとえば、自車両がある程度変更先車線に移動したタイミングで前方障害物が減速した場合に、自車両も減速して衝突回避した方が自然な場合でも不自然に前方障害物の側方に回り込んで、つまり、変更元車線に戻って回避する可能性があり、安全性や快適性が低下する。
【0006】
そこで、本願は、車線変更の進行度合いを考慮して、変更先車線に存在する障害物を考慮した目標軌道を設定し、乗員の安全性及び快適性を向上することができる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に係る車両制御装置は、
障害物の移動予測及び道路情報の少なくとも一方に基づいて、自車両の進入禁止領域を設定する進入禁止領域設定部と、
前記進入禁止領域に進入しないという制約の下で、前記自車両の将来に亘る目標軌道を演算する目標軌道生成部と、
前記目標軌道に基づいて、前記自車両の走行を制御する車両制御部と、
を備え、
前記進入禁止領域設定部は、前記目標軌道生成部が変更元車線から変更先車線に車線変更するための前記目標軌道を演算する場合に、前記変更元車線又は前記変更先車線に対する前記自車両の横方向の位置に基づいて、前記進入禁止領域を変更するものである。
【発明の効果】
【0008】
本願に係る車両制御装置によれば、車線変更するための目標軌道を演算する場合に、変更元車線又は変更先車線に対する自車両の横方向の位置に基づいて、進入禁止領域が変更されるので、車線変更の進行度合いに応じて、変更先車線に存在する障害物の移動予測に基づいて設定される進入禁止領域を変更することができる。そのため、例えば、車線変更がかなり進行している状態で、変更先車線の障害物を回避するために、変更元車線に戻るような目標軌道が演算されないようにしたり、車線変更があまり進行していない状態で、変更先車線の障害物を回避するために、変更元車線に戻るような目標軌道が演算されるようにしたりすることができる。よって、不自然な車線変更が行われることを抑制し、乗員の安全性及び快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る車両制御装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る自車両の一例を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る座標系の一例を示す図である。
【
図4】実施の形態1に係る経路座標系の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る自車両の自動運転の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態1に係る進入禁止領域の設定手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態1に係る周囲進入禁止領域の一例を示す概略図である。
【
図8】実施の形態1に係る車間進入禁止領域の一例を示す概略図である。
【
図9】実施の形態1に係る車間進入禁止領域の一例を示す概略図である。
【
図10】実施の形態1に係る車間進入禁止領域の一例を示す別の概略図である。
【
図11】実施の形態1に係る車線変更中の進入禁止領域の一例を示す概略図である。
【
図12】実施の形態2に係る進入禁止領域の設定手順の一例を示すフローチャートである。
【
図13】実施の形態2に係る周囲進入禁止領域の一例を示す概略図である。
【
図14】実施の形態2に係る車線進入禁止領域と周囲進入禁止領域の重畳の一例を示す概略図である。
【
図15】実施の形態2に係る車線進入禁止領域と周囲進入禁止領域の重畳の一例を示す別の概略図である。
【
図16】実施の形態3に係る進入禁止領域の設定手順の一例を示すフローチャートである。
【
図17】実施の形態1に係る車両制御ユニット及び車両制御装置の概略ハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
<ブロック図>
図1は、本願の実施の形態1に係る車両制御装置201の一例を示すブロック図である。本実施の形態1に係る車両制御装置201は、車両の車両制御ユニット200に含まれる。以下の説明では、車両制御装置201が設けられた車両を「自車両」と記すこともある。
【0011】
図1の車両制御装置201は、進入禁止領域設定部240と、目標軌道生成部250と、車両制御部260とを備える。車両制御ユニットは、車両の制御を行うユニットであり、たとえば、先進運転支援システム電子制御ユニット(ADAS-ECU)に搭載されている。
【0012】
進入禁止領域設定部240は、障害物の移動予測及び道路情報の少なくとも一方に基づいて、自車両の進入禁止領域を設定する。自車両の周囲に障害物が存在し、障害物移動予測部220から障害物の位置を含む障害物の移動予測情報である障害物移動予測情報が得られた場合は、進入禁止領域設定部240は、予測された障害物の周囲に進入禁止領域を設定する。また、進入禁止領域設定部240は、道路情報に基づいて、自車両の進入禁止領域を設定する。一例として、区画線に基づき、区画線の外側に進入禁止領域が設定される。なお、障害物の移動予測及び道路情報の一方が得られない場合は、進入禁止領域設定部240は、得られた障害物の移動予測及び道路情報の一方に基づいて、自車両の進入禁止領域を設定する。
【0013】
目標軌道生成部250は、道路情報取得部120からの自車両が走行する道路とそれに隣接する道路それぞれの境界部を含む情報である道路情報と、意思決定部230からの自車両が取るべき目標行動と自車両が走行すべき目標車線を含む情報である意思決定情報と、進入禁止領域設定部240からの進入禁止領域とに基づき、自車両が走行すべき目標軌道を生成する。
【0014】
車両制御部260は、目標軌道に自車両が追従するよう操舵制御と車速制御を行うための目標値を演算する。目標値とは、目標舵角及び目標加速度などである。
【0015】
車両制御ユニット200は、外部の入力装置として、障害物情報取得部110と、道路情報取得部120と、車両情報取得部130と接続されている。
【0016】
障害物情報取得部110は、障害物の位置を含む情報である障害物情報を取得する取得部であり、たとえば、前方カメラであってもよいし、LiDAR(Light Detection and Ranging)、レーダ、ソナー、車車間通信装置、及び、路車間通信装置などであってもよい。
【0017】
道路情報取得部120は、自車両が走行する道路の境界部を含む情報である道路情報を取得する取得部であり、たとえば、前方カメラであってもよいし、LiDAR及び地図データ処理装置の組み合わせであってもよいし、全地球衛星測位システム(GNSS)及び地図データ処理装置の組み合わせであってもよい。境界部は、たとえば、区画線であってもよいし、縁石、側溝、ガードレールであってもよい。
【0018】
車両情報取得部130は、自車両の車両情報を取得する取得部である。車両情報取得部130は、たとえば、操舵角センサ、操舵トルクセンサ、ヨーレートセンサ、速度センサ、及び、加速度センサであってもよい。車両情報は、自車両の現在の車両状態量のことであり、たとえばこれらのセンサのうち少なくとも1つを用いて取得される。
【0019】
車両制御ユニット200は、内部の構成要素として、車両制御装置201と接続された車両状態量推定部210と、障害物移動予測部220と、意思決定部230とを備える。
【0020】
車両状態量推定部210は、車両情報に基づき、車両情報取得部130が取得しない自車両の現在の車両状態量を推定する。なお、車両状態量推定部210は、車両情報取得部130が取得した車両情報の一部を推定してもよい。
【0021】
障害物移動予測部220は、障害物情報取得部110からの障害物の位置を含む情報である障害物情報と、道路情報取得部120からの自車両が走行する道路とそれに隣接する道路それぞれの境界部を含む情報である道路情報とに基づき、障害物の移動予測を行う。
【0022】
意思決定部230は、障害物情報、道路情報、車両情報に基づき、自車両が取るべき目標行動と、自車両が走行すべき目標車線を決定する。目標行動は、たとえば、車線維持や車線変更である。目標車線は、たとえば、自車線、左車線、右車線である。
【0023】
車両制御ユニット200は、外部の出力装置として、アクチュエータ制御部310と接続されている。アクチュエータ制御部310は、車両制御装置201からの目標値に基づいてアクチュエータの制御を行う制御部であり、たとえば、EPS-ECU(Electric Power Steering - Electric Control Unit)であってもよいし、パワートレインECU、ブレーキECU、電気自動車ECUであってもよい。本実施の形態では、車両制御ユニットは操舵制御と車速制御を行うものとし、アクチュエータ制御部310はEPS-ECU、パワートレインECU、ブレーキECUで構成されるものとするが、これに限ったものではない。
【0024】
<システム構成図>
図2は、実施の形態1の車両制御装置の概略構成を示すシステム構成図である。自車両1は、ステアリングホイール2と、ステアリング軸3と、操舵ユニット4と、EPSモータ5と、パワートレインユニット6と、ブレーキユニット7と、前方カメラ111と、レーダセンサ112と、GNSS121と、ナビゲーション装置122と、操舵角センサ131と、操舵トルクセンサ132と、ヨーレートセンサ133と、速度センサ134と、加速度センサ135と、車両制御ユニット200と、EPSコントローラ311と、パワートレインコントローラ312と、ブレーキコントローラ313とを備える。なお、EPSコントローラ311と、パワートレインコントローラ312と、ブレーキコントローラ313は、上述したアクチュエータ制御部310に対応する。
【0025】
ドライバが自車両1を操作するために設置されているステアリングホイール2は、ステアリング軸3に結合されている。ステアリング軸3には操舵ユニット4が連接されている。操舵ユニット4は、操舵輪としての前輪を回動自在に支持すると共に、車体フレームに転舵自在に支持されている。従って、ドライバのステアリングホイール2の操作によって発生したトルクはステアリング軸3を回転させ、操舵ユニット4によって前輪を左右方向へ転舵する。これによって、ドライバは車両が前進・後進する際の車両の横移動量を操作することができる。なお、ステアリング軸3はEPSモータ5によって回転させることも可能であり、EPSコントローラ311でEPSモータ5に流れる電流を制御することで、ドライバのステアリングホイール2の操作と独立して、前輪を自在に転舵させることができる。
【0026】
例えば、
図17に示すように、車両制御ユニット200は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置90、記憶装置91、演算処理装置90に外部の信号を入出力する入出力装置92等を備えている。
【0027】
演算処理装置90として、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、IC(Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、AI(Artificial Intelligence)チップ、各種の論理回路、及び各種の信号処理回路等が備えられてもよい。また、演算処理装置90として、同じ種類のもの又は異なる種類のものが複数備えられ、各処理が分担して実行されてもよい。記憶装置91として、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ハードディスク、DVD(Digital Versatile Disc)装置等の各種の記憶装置が用いられる。
【0028】
入出力装置92には、通信装置、A/D変換器、入出力ポート、駆動回路等が備えられる。入出力装置92には、前方カメラ111、レーダセンサ112、GNSS121、ナビゲーション装置122、操舵角を検出する操舵角センサ131、操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ132、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ133、自車両の速度を検出する速度センサ134、自車両の加速度を検出する加速度センサ135、EPSコントローラ311、パワートレインコントローラ312、ブレーキコントローラ313が接続されている。
【0029】
車両制御ユニット200は、接続されているセンサから入力された情報を、ROMに格納されたプログラムに従って処理し、EPSコントローラ311に目標舵角を送信し、パワートレインコントローラ312とブレーキコントローラ313に目標加速度を送信する。
【0030】
前方カメラ111は、車両前方の区画線が画像として検出できる位置に設置され、画像情報を基に、車線情報や障害物の位置などの自車両の前方環境を検出する。なお、本実施の形態では、前方環境を検出するカメラのみを例に挙げたが、後方や側方の環境を検出するカメラも設置してよい。
【0031】
レーダセンサ112は、レーダを照射し、その反射波を検出することで、自車両1と障害物との相対距離と相対速度を出力する。このレーダセンサとしては、ミリ波レーダ、LiDAR、レーザーレンジファインダ、超音波レーダなど周知の方式のものを用いることができる。
【0032】
GNSSセンサ121は測位衛星からの電波をアンテナで受信し、測位演算することによって自車両の絶対位置、絶対方位を出力する。
【0033】
ナビゲーション装置122は、ドライバが設定した行き先に対する最適な走行ルートを演算する機能と、走行ルート上の道路情報を記録している。道路情報は道路線形を表現する地図ノードデータであり、各地図ノードデータは各ノードでの絶対位置(緯度、経度、標高)、車線幅、カント角、傾斜角情報などが組み込まれている。
【0034】
EPSコントローラ311は、車両制御ユニット200から送信された目標舵角に基づいて、EPSモータ5を制御する。
【0035】
パワートレインコントローラ312は、車両制御ユニット200から送信された目標加速度を実現するように、パワートレインユニット6を制御する。なお、本実施の形態では、エンジンのみを駆動力源とする車両を例に挙げたが、電動モータのみを駆動力源とする車両や、エンジンと電動モータの両方を駆動力源とする車両等に適用してもよい。
【0036】
ブレーキコントローラ313は、車両制御ユニット200から送信された目標加速度を実現するように、ブレーキユニット7を制御する。
【0037】
<座標系>
図3は、実施の形態1で用いる座標系を模式的に表した図である。
図3のX,Yは慣性座標系を表し、Xg、Yg、θは慣性座標系での自車両の重心位置と車体方位を表す。x,yは自車両の重心を原点とし、自車両の前方向にx軸、左方向にy軸を取った自車両座標系である。
【0038】
なお、本実施の形態では、実行周期ごとに車両の重心位置Xg、Ygと車体方位θを0に初期化する。すなわち、慣性座標系と自車両座標系を実行周期ごとに一致させる。
【0039】
また、本実施の形態では、ある経路χにおいて、経路χの接線方向sと法線方向wで表現される経路座標系も用いる。
図4は実施の形態1で用いる経路座標系を模式的に表した図である。
図4の点列は経路χを示す点列であり、この場合は車線中央である。ただし経路は位置の点列であれば車線中央に限らない。
図4のs、wは経路座標系で、sg、wg、φは経路座標系での自車両の重心位置と車体方位である。
【0040】
<最適化問題の設定>
本実施の形態では、目標軌道生成部250は、車両の運動を数学的に表した車両モデルfを用いて、現在の時刻0から予測間隔Tsで予測期間Th未来まで車両状態量xを予測し、制約gの下、自車両の望ましい動作を表現する評価関数Jを最小化する制御入力uの系列データを求めるための最適化問題を解く。そして、最適化問題から求めた最適化された制御入力uと車両モデルfとに基づいて、現在の時刻0から予測間隔Tsで予測期間Th未来までの最適化された車両状態量xの系列データを予測する。そして、最適化された制御入力uの系列データと車両状態量xの系列データとに基づき、自車両の位置を含む系列データである軌道ξを生成する。また、以下の説明では、現在の時刻から予測期間Thまでの時間をホライズンと略記することもある。
【0041】
<最適化問題の定式化>
上述のように、本実施の形態では、制約付き最適化問題を一定期間ごとに解く。最適化問題は以下のように定式化される。
【数1】
【0042】
ここで、Jは評価関数、xは車両状態量,uは制御入力、fは動的車両モデルに関するベクトル値関数、x0は初期値、すなわち現在の車両状態量である。gは制約に関するベクトル値関数であり、最適化は制約g(x,u)≦0の下で実行される。なお、本実施の形態では上記の最適化問題を最小化問題として扱っているが、評価関数の符号を反転させることで最大化問題として扱うこともできる。
【0043】
本実施の形態では、評価関数Jには次式を用いる。
【数2】
【0044】
ここで、x(k)は予測点k(k=0、・・・、N)における車両状態量,u(k)は予測点k(k=0、・・・、N-1)における制御入力である。hは評価項目に関するベクトル値関数、hNは終端(予測点N)における評価項目に関するベクトル値関数で、r(k)は予測点k(k=0、・・・、N)における参照値である。W、WNは重み行列で、各評価項目に対する重みを対角成分に有する対角行列であり、パラメータとして適宜変更可能である。
【0045】
<車両モデル>
本実施の形態では、制御量演算部で用いる車両状態量xと制御入力uを以下のように設定する。
【数3】
【0046】
ここで、βは横滑り角、γはヨーレート、axは縦加速度、δは舵角、axtは目標縦加速度、δtは目標舵角である。jtは目標縦躍度、ωtは目標舵角速度である。なお、車両状態量xに位置に関する変数が含まれていれば、車両状態量xと制御入力uはどのように設定してもよい。また、位置の変数は直交座標系に限らず、たとえば、経路座標系で定義してもよい。
【0047】
車両モデルfは以下に示す二輪モデルを用いる。
【数4】
【0048】
ここで、Mは車両質量、Iは車両のヨー慣性モーメントである。lf、lrは前後輪の車軸から車両重心までの距離である。Tax、Tδは縦加速度と舵角の目標値に対する追従性を1次遅れ系で表現したときの時定数である。Yf、Yrは前後輪のコーナリングフォースであり、前後輪のコーナリングスティフネスCf、Crを用いて、次の2式で表現される。
【数5】
【0049】
なお、車両モデルfには二輪モデル以外の車両モデルを用いてもよい。
【0050】
<車両制御装置の手順>
図5は、実施の形態1に係る自車両の自動運転の手順の一例を示すフローチャートである。
【0051】
図5のS110において、障害物情報取得部110で障害物情報が取得される。障害物情報は、障害物の位置を含む情報であり、本実施の形態では、障害物が自車両に対して左前方に存在する場合には、自車両座標系での障害物の右前端PFR、右後端PRR、左後端PRLの位置が取得され、障害物が自車両に対して右前方に存在する場合には、自車両座標系での障害物の左前端PFL、左後端PRL、右後端PRRの位置が取得されるものとする。さらに、障害物情報取得部で、それらの位置情報に基づき、障害物の左前端PFLあるいは右前端PFRの位置、中心PCの位置Xo、Yo、車体方位θo、速度Vo、長さlo、幅woが推定されるものとする。
【0052】
次に、
図5のS120において、道路情報取得部120で道路情報が取得される。道路情報は、自車両が走行する道路とそれに隣接する道路(以降、自車線、左車線、右車線と記す)それぞれの境界部を含む情報であり、本実施の形態では、自車線、左車線、右車線の左右の区画線を3次の多項式で表現した際の係数が取得されるものとする。すなわち、自車線の左の区画線(左車線の右の区画線でもある)に対しては、次式のcel0~cel3の値が取得される。
【数6】
【0053】
自車線の右の区画線(右車線の左の区画線でもある)に対しては、次式のcer0~cer3の値が取得される。
【数7】
【0054】
左車線の左の区画線に対しては、次式のcll0~cll3の値が取得される。
【数8】
【0055】
右車線の右の区画線に対しては、次式のcrr0~crr3の値が取得される。
【数9】
【0056】
このとき、自車線中央、左車線中央、右車線中央は、それぞれ、式(205)、式(206)、式(207)で表現される。
【数10】
【0057】
ここで、各係数は、式(208)、式(209)、式(210)で表される。
【数11】
【0058】
なお、区画線の情報は3次の多項式に限らず、いかなる関数で表現されていてもよい。また、本実施の形態において、自車両が走行する道路は、自車両の重心が存在する道路と定義する。ただし、自車両が走行する道路の定義はこの定義に限らない。
【0059】
図5のS130において、車両情報取得部130で車両情報が取得される。車両情報は、自車両の舵角、ヨーレート、速度、加速度などの情報であり、本実施の形態では、舵角δ、ヨーレートγ、速度V、縦加速度axが取得されるものとする。
【0060】
次に、
図5のS210において、車両状態量推定部210で車両状態量xを推定する。車両状態量の推定には、ローパスフィルタ、オブザーバ、カルマンフィルタ、粒子フィルタ等の公知の技術を用いる。
【0061】
次に、
図5のS220において、障害物移動予測部220で障害物の移動予測を行う。移動予測では、各予測点k(k=0,・・・,N)における障害物の中心位置Xo(k),Yo(k)、車体方位θo(k)、速度Vo(k)を予測する。本実施の形態では、障害物が車線に沿って等速で移動すると予測する。障害物が複数存在する場合には、各障害物に対して上記の予測を行う。予測はこれ以外にも、任意の予測を行ってよく、たとえば、ドライバモデルを用いて予測を行ってもよい。
【0062】
次に、
図5のS230において、意思決定部230で意思決定を行う。意思決定は、障害物情報、道路情報、車両情報に基づき、自車両が取るべき目標行動と、自車両が走行すべき目標車線を決定する。本実施の形態では、目標行動の選択肢には、車線維持と車線変更が存在するものとする。なお、それ以外に、停止、緊急停止等が含まれてもよい。
【0063】
意思決定には、有限状態機械、オントロジー、決定木、強化学習、マルコフ決定過程等の公知の技術を用いる。本実施の形態では、意思決定には有限状態機械を用いるものとし、自動運転開始時は目標行動が車線維持であり、目的地と現在の自車両の走行車線から車線変更の要否を判断し、目標行動を車線変更にするものとする。それ以外にも、移動予測情報から自車両の追い越しの要否を判断し、追い越しが必要である場合に目標行動を車線変更にしてもよい。なお、目標行動が車線変更である場合には、右への車線変更なのか、左への車線変更なのかも決定されるものとする。この決定は、たとえば、追い越し車線の位置等に基づいて行われる。
【0064】
目標車線は、たとえば、目標行動が車線維持である場合には、自車線を目標車線とする。目標行動が右への車線変更である場合には、右車線を目標車線とする。ただし、車線変更中に、自車両が区画線を跨いで右車線へ移動した瞬間に、目標車線は元の車線から見た右車線、すなわち、跨いだ後の自車線になるものとする。左への車線変更も同様である。
【0065】
次に、
図5のS240において、進入禁止領域設定部240で進入禁止領域Sを設定する。本実施の形態では、進入禁止領域設定部240は、目標軌道生成部250が変更元車線から変更先車線に車線変更するための目標軌道を演算する場合に、変更元車線又は変更先車線に対する自車両の横方向の位置に基づき進入禁止領域を変更する。
【0066】
この構成によれば、車線変更の進行度合いに応じて、変更先車線に存在する障害物の移動予測に基づいて設定される進入禁止領域を変更することができる。そのため、例えば、車線変更がかなり進行している状態で、変更先車線の障害物を回避するために、変更元車線に戻るような目標軌道が演算されないようにしたり、車線変更があまり進行していない状態で、変更先車線の障害物を回避するために、変更元車線に戻るような目標軌道が演算されるようにしたりすることができる。よって、不自然な車線変更が行われることを抑制し、乗員の安全性及び快適性を向上させることができる。
【0067】
例えば、自車両が変更先車線にある程度移動する前は、障害物の側方を走行でき、かつ、障害物に設定距離以上接近しないよう、障害物の周りを囲むような進入禁止領域(以降、周囲進入禁止領域)を設定し、自車両が変更先車線にある程度移動した後は、変更先車線に存在する障害物と自車両との車間距離を設定距離以上確保するような進入禁止領域(以降、車間進入禁止領域)を設定する。これにより、ある程度変更先車線に移動すると変更先車線の障害物を変更元車線に戻ることなく回避するため、変更先車線の障害物が加減速した場合でも不自然に変更元車線に戻ることがなくなり、安全性や快適性が向上する。なお、自車両が変更先車線に移動する前に、障害物の側方を走行できるような進入禁止領域を設定するのは、車線変更開始時に障害物が自車両のほぼ真横にいるケースや、障害物を追い抜いたり、追い抜かれたりしながら車線変更するケースにも対応するためである。
【0068】
次に、
図5のS250において、目標軌道生成部250で式(101)の最適化問題を解くことで、目標軌道ξを生成する。目標軌道ξは自車両の目標位置を含む系列データであり、本実施の形態では、式(104)の車両状態量xの系列データとする。
【0069】
次に、
図5のS260において、車両制御部260で自車両が目標軌道ξに追従するよう操舵制御と車速制御を行うための目標値を演算する。本実施の形態では、操舵に関する目標値である目標舵角δt、車速に関する目標値である目標縦加速度axtを演算する。本実施の形態では、目標軌道ξが各予測点k(k=0,・・・,N)における目標舵角δt(k)の最適値と目標縦加速度axt(k)の最適値を含んでいるため、各アクチュエータの制御周期に応じて、目標舵角δt(k)の最適値と目標縦加速度axt(k)の最適値をそれぞれ時間方向に補間することで目標舵角δtと目標縦加速度axtをそれぞれ演算する。
【0070】
次に、
図5のS310において、アクチュエータ制御部310で制御量に基づきアクチュエータを制御する。本実施の形態では、舵角δが目標舵角δtに追従するようにEPSモータ5を、縦加速度axが目標縦加速度axtに追従するようにパワートレインユニット6とブレーキユニット7を制御する。
【0071】
<進入禁止領域の設定手順>
図6は、進入禁止領域の設定手順を示すフローチャートである。この処理は
図5のS240内で行われる。
【0072】
なお、本実施の形態では前方障害物に進入禁止領域を設定する場合を例に説明するが、後方障害物に関しても同様である。
【0073】
まず、
図6のS241において、目標行動が車線変更かどうかを判定する。目標行動が車線変更であると判定された場合、S242の処理を行う。目標行動が車線変更でないと判定された場合、S245の処理を行う。
【0074】
図6のS241において目標行動が車線変更であると判定された場合、
図6のS242において、変更先車線において自車両の前方に存在する障害物である前方障害物が存在するかどうかを判定する。変更先車線に前方障害物が存在すると判定された場合、S243の処理を行うとともに、対象障害物として変更先車線の前方障害物を選択する。変更先車線に前方障害物が存在しないと判定された場合、S247の処理を行う。
【0075】
図6のS242において変更先車線に前方障害物が存在すると判定された場合、
図6のS243において、自車両の横方向の位置に基づいた判定を行う。本実施の形態では、自車両の横方向の位置が、変更元車線及び変更先車線の横方向の範囲内に設定した基準位置を変更先車線側に超える前かどうかを判定する。また、基準位置には、変更元車線と変更先車線との境界を示す区画線を用いる。基準位置を超える前と判定された場合、S244の処理を行う。基準位置を超えた後と判定された場合、S246の処理を行う。なお、本実施の形態では、区画線を基準位置に設定したが、それ以外にも変更元車線及び変更先車線の横方向の範囲内の任意の位置に基準位置を設定してよい。たとえば、自車両全体が変更先車線に入ったと判定できるように基準位置を設定してもよいし、車線中央までの距離が所定の値以下となったかを判定できるように基準位置を設定してもよい。
【0076】
図6のS243において自車線が変更先車線でないと判定された場合、
図6のS244において、
図6のS242で対象障害物として選択した障害物の変更元車線側に変更元車線を自車両が走行できるスペースを残し、障害物と自車両との車間距離を設定距離以上確保するような周囲進入禁止領域Ssurrを設定する。障害物の周囲に周囲進入禁止領域Ssurrを設定する。周囲進入禁止領域Ssurrの障害物に対する縦方向の長さは、設定距離に応じて設定され、障害物に対する横方向の長さは、車線幅に応じて設定される。
【0077】
本実施の形態では、楕円状の周囲進入禁止領域Ssurrを設定するものとする。このとき、周囲進入禁止領域Ssurrは楕円の方程式ζellps(X,Y)=0の内部で表現される。ここで、ζellps(X,Y)は次式で表される。
【数12】
【0078】
da(k)、db(k)はそれぞれ予測点kにおいて障害物に設定する楕円の長軸と短軸の長さである。da(k)、db(k)は自車両の速度や障害物の速度に応じて大きさを調整してよい。たとえば、自車両と障害物の速度差が大きいほどda(k)、db(k)を大きくしてよい。また、楕円の中心が障害物の中心位置Xo(k),Yo(k)に一致する必要はない。また、障害物に設定する進入禁止領域は楕円形である必要はなく、障害物の側方を走行でき、かつ、障害物に設定距離以上接近しないような形状であれば任意の形状の進入禁止領域を設定してよい。また、慣性座標系ではなく、経路座標系で設定してもよい。
【0079】
図7は楕円状の周囲進入禁止領域Ssurrを示す概略図である。障害物の中心位置Xo(k),Yo(k)を中心とする楕円ζellps(X,Y)=0の内側が周囲進入禁止領域Ssurrとなっている。
【0080】
図6のS241において目標行動が車線変更でないと判定された場合、
図6のS245において、自車線に前方障害物が存在するかどうかを判定する。自車線に前方障害物が存在すると判定された場合、S246の処理を行うとともに、対象障害物として自車線の前方障害物を選択する。自車線に前方障害物が存在しないと判定された場合、S247の処理を行う。なお、本実施の形態では、目標行動は車線維持と車線変更のみを考えているので、S245は車線維持の場合の処理である。
【0081】
図6のS245において自車線に前方障害物が存在すると判定された場合、あるいは、
図6のS243において基準位置を超えた後であると判定された場合、障害物と自車両との車間距離を設定距離以上確保できるよう、
図6のS246で、対象障害物として選択した障害物に車間進入禁止領域SIVDを設定する。本実施の形態では、障害物よりも設定距離以上自車両側に変更元車線及び変更先車線を横方向に横切る境界線を設定し、境界線の障害物側が、車間進入禁止領域SIVDに設定される。本例では、境界線は直線状とされている。
【0082】
例えば、車間進入禁止領域SIVDは経路座標系において、直線の方程式ζstrght(s)=0を境界とする障害物側の領域で表現される。ここで、前方障害物に対しては、ζstrght(s)は次式で表される。
【数13】
【0083】
so(k)、dc(k)はそれぞれ予測点kにおける、障害物の接線方向の位置と、確保したい重心間距離である。後方障害物に対しては、次式で表される。
【数14】
【0084】
dc(k)は自車両の速度や障害物の速度に応じて大きさを調整してよい。たとえば、自車両と障害物の速度差が大きいほどdc(k)を大きくしてよい。また、障害物に設定する進入禁止領域は直線状である必要はなく、障害物と自車両との車間距離を設定距離以上確保できるような形状であれば任意の形状の進入禁止領域を設定してよい。また、経路座標系ではなく、慣性座標系で設定してもよい。
【0085】
図8は直線状の車間進入禁止領域SIVDを示す概略図である。χrで表される点群は後述する参照経路である。
図8において、経路座標系における障害物の中心位置so(k),wo(k)から、接線方向にdc(k)離れたところに直線ζstrght(s)=0が存在し、ζstrght(s)=0を境界として障害物側の領域が車間進入禁止領域SIVDとなっている。
【0086】
da(k)とdc(k)の大きさは、最終的に確保したい車間距離ddと一致するように設定してもよい。これにより、基準位置を超える前後で一貫した車間距離を確保できる。ただし、基準位置を超えたときの自車両と周囲進入禁止領域の位置関係によっては、単にdc(k)=da(k)=ddとすると、自車両が現在の時刻(k=0)車間進入禁止領域に進入してしまう可能性がある。本実施の形態では、最適化問題として軌道を演算するので、自車両がk=0時点で車間進入禁止領域に進入していない方が、つまり、初期値が制約に違反していない方が求解しやすい。k=0時点で自車両が車間進入禁止領域に進入してしまうことを防ぐために、dc(k)の大きさは現在の車間距離に応じて設定してもよい。
【0087】
図9はdc(k)の大きさを現在の車間距離に応じて設定する方法を示す概略図である。
図9において、自車両は車線変更中で、区画線を超えた直後のシーンである。自車両はζellps(X,Y)=0の後端よりも進行方向前方に存在するので、dc(0)=da(0)=ddとするとζ’strght(s)=0のような境界が設定され、k=0時点で自車両は車間進入禁止領域内に存在することになる。k=0時点で自車両は車間進入禁止領域内に存在しない方が望ましいので、
図9のようなシーンでは、区画線を超えた時点の車間距離に基づきdc(k)を設定する。たとえば、dc(0)=so(0)-s0とすれば、
図9のζstrght(s)=0のような、自車両が車間進入禁止領域に含まれないような境界が設定される。これにより、初期値が制約に違反することはなくなり、求解しやすくなる。ただし、最終的に確保したい車間距離ddがdd≠so(k)-s(k)である場合、全予測点k(k=0,・・・,N)でdc(k)=so(k)-s(k)とすると、車間距離をddに収束させることができない。そこで、最終的には車間距離をddに収束させられるよう、dc(k)=w・dd+(1-w)・(so(k)-s(k))と、ddとso(k)-s(k)の加重平均として設定してもよい。ここで、重みwはkの関数で、k=0でw=0、k=Nでw=1となるような単調増加関数である。これにより、初期値が制約に違反せず、かつ、車間距離を確保したい車間距離ddに収束させることができる。
【0088】
次に、
図6のS247において、
図6のS242かS245で選択した対象障害物以外にも障害物が存在する場合には、各障害物に周囲進入禁止領域Ssurrを設定する。各障害物に設定する周囲進入禁止領域Ssurrは、障害物の側方を走行でき、かつ、障害物に設定距離以上接近しないような形状であれば任意の形状としてよい。なお、S242~S246で説明した処理を後方障害物に対して行う場合は、その後方障害物に対しては条件分岐に応じて周囲進入禁止領域あるいは車間進入禁止領域を設定する。
【0089】
以上のように、車線変更中は自車両の横方向の位置に基づき進入禁止領域を変更するので、ある程度変更先車線に移動すると変更先車線の障害物を変更元車線に戻ることなく回避するため、変更先車線の障害物が加減速した場合でも不自然に変更元車線に戻ることがなくなり、乗員の安全性や快適性が向上する。
【0090】
<目標軌道の生成手順>
図10は、目標軌道の生成手順を示すフローチャートである。この処理は
図5のS250内で行われる。
【0091】
まず、
図10のS251において、参照点群を演算する。ここで、参照点群は現在の時刻0から時間間隔Tsで予測期間Th未来までの参照位置Xr、Yr、参照経路方位ψr、参照車速Vrの系列データである。なお、以降、参照位置Xr(k),Yr(k)(k=0,・・・,N)の系列データを参照経路χrと呼ぶ。
【0092】
各時刻の参照位置Xr(k),Yr(k)、参照経路方位ψr(k)、参照車速Vr(k)(k=0,・・・,N)は以下のように決定する。まず、参照車速Vr(k)は走行車線の制限速度Vlや、先行車の車速Vpに基づき決定され、たとえば、Vr(k)=Vlとする。なお、Vr(k)はホライズン内で一定値である必要はない。
【0093】
次に、目標行動が車線維持である場合、自車両が目標車線中央を走行できるよう、参照位置Xr(k),Yr(k)、参照経路方位ψr(k)を車線中央のX位置、Y位置、経路方位に基づき決定する。同時に、参照位置Xr(k),Yr(k)と参照車速Vr(k)が整合するよう、参照位置Xr(k),Yr(k)と参照車速Vr(k)の関係に条件を設定する。つまり、以下2つの式を満たすように、参照位置Xr(k),Yr(k)を決定する。
【数15】
【0094】
式(401)は、参照位置Xr(k),Yr(k)が自車線中央を表現する関数Y=le(X)(式(205))上に存在するための条件、式(402)は、隣接する参照位置Xr(k-1),Yr(k-1)とXr(k),Yr(k)同士の間隔が、時間間隔Tsにおける自車両の移動量に等しくなるための条件である。これらにより決定した参照位置Xr(k),Yr(k)での自車線中央Y=le(X)の方位を計算することで、参照経路方位ψr(k)も決定できる。また、以降、車線維持のための参照経路を参照車線維持経路χrLKと呼ぶ。
【0095】
目標行動が車線変更である場合、たとえば、現在の車線中央から目標車線の中央までを連続かつ滑らかになるように接続することで、車線変更のための参照経路(参照車線変更経路χrLC)を表現する関数Y=lLC(X)を生成する。接続には、スプライン曲線や5次関数など公知の手法を用いる。そして、式(401)の代わりに以下の式を用いて、参照位置Xr(k),Yr(k)を決定する。
【数16】
【0096】
これらにより決定した参照位置Xr(k),Yr(k)での参照車線変更経路Y=lLC(X)の方位を計算することで、参照経路方位ψr(k)も決定できる。なお、接続の際は、車線変更の目標所要時間tLCで車線変更が完了するような参照車線変更経路χrLCを生成できるよう、たとえば、目標所要時間tLC間に自車両が縦方向に移動する距離dで目標車線への横方向の移動が完了するように接続する。距離dの算出には、参照車速Vrを時間で積分して算出してもよいし、現在車速V0と目標所要時間tLCの積によって算出してもよい。また、走行車線がカーブの場合、経路座標系で接続してもよい。また、車線変更の目標所要時間を指定する必要がなく、予測期間Thが十分に長い場合には、参照車線変更経路χrLCを生成せずに、単に式(401)の代わりに以下の式を用いて、参照位置Xr(k),Yr(k)を決定してもよい。
【数17】
【0097】
ここで、Y=lt(X)は目標車線中央を表現する関数で、式(205)、式(206)、式(207)より、目標車線が自車線、左車線、右車線の場合でそれぞれ、lt=le,ll,lrとなる。
【0098】
以上のように演算した参照位置Xr(k),Yr(k)、参照経路方位ψr(k)、参照車速Vr(k)(k=0,・・・,N)を参照点群とする。
【0099】
次に、
図10のS252において、制約g(x,u)≦0を設定する。本実施の形態では、S240で設定した周囲進入禁止領域Ssurrと車間進入禁止領域SIVDに各予測点k(k=0,・・・,N)での自車両の重心位置Xg(k)、Yg(k)が進入せず、制御入力u(k)が一定の範囲に収まるよう、関数gを以下のように設定する。
【0100】
【0101】
ここで、jHxt、jLxt、ωHt、ωLtは各制御入力の上限値と下限値である。各制御入力の上限値と下限値は予測点k毎に変更してもよい。なお、周囲進入禁止領域Ssurrや車間進入禁止領域SIVDを設定した障害物が存在しない場合には、それに対応する要素を式(405)、式(406)から削除する。本実施の形態では、制御入力uにのみ制約を設定したが、乗り心地向上のために、ヨーレートや横加速度などに制約を設定してもよい。また、目標行動に応じて制約を変更してもよい。
【0102】
次に、
図10のS253において、評価関数J(式(103))を設定する。本実施の形態では、自車両がS251で演算した参照点群(参照位置Xr(k),Yr(k)、参照経路方位ψr(k)、参照車速Vr(k) (k=0,・・・,N))に追従するための目標軌道ξを生成でき、かつ、そのときの制御入力が小さくなるよう、評価項目に関するベクトル値関数h、hNを以下のように設定する。
【数19】
【0103】
ew(k)は予測点k(k=0,・・・,N)における参照位置Xr(k),Yr(k)に対する横偏差であり、予測点k(k=0,・・・,N)における参照位置Xr(k),Yr(k)と参照経路方位ψr(k)を用いて、次式になる。
【数20】
【0104】
参照値r(k)、r(N)は以下のように設定する。
【数21】
【0105】
ここで、Vr(k)は参照車速である。これにより、目標軌道生成部250が、小さな制御入力で自車両が参照点群に追従するような目標軌道を生成できる。なお、参照点群に対する追従性や乗り心地を向上させるために、経路方位、ヨーレート、縦加速度、横加速度などを評価項目に加えてもよい。また、目標行動に応じて評価関数を変更してもよい。
【0106】
次に、
図10のS254において、評価関数(式(103))と制約(式(102))を用いた制約付き最適化問題(式(101))を解くことにより、最適制御入力u*を演算する。最適制御入力u*の演算には、K.U.Leuven大学により開発された、ACADO(Automatic Control And Dynamic Optimization)や、C/GMRES法ベースとして最適化問題を解く自動コード生成ツールであるAutoGenなど、公知の手段を用いる。ACADOやAutoGenを用いた場合、各予測点k(k=0,・・・,N-1)での最適化された制御入力の時系列(最適制御入力)u*が出力される。すなわち、S254の出力は、次式になる。
【数22】
【0107】
ここで、jxt*(k)、ωt*(k) (k=0,・・・,N-1)は目標縦躍度と目標舵角速度の最適値である。なお、解に関して、評価関数が所定の閾値を下回るような値を解としてもよく、所定の反復回数内で閾値を下回らなかった場合には、反復回数内で評価関数を最小化する値を解としてもよい。
【0108】
次に、
図10のS255において、最適状態量x*を演算する。最適状態量x*の演算では、最適制御入力u*と車両モデルfを用いて、各予測点k(k=0,・・・,N)での最適化された車両状態量の時系列(最適状態量)x*を演算する。したがって、S255の出力は、次式となる。
【数23】
【0109】
ここで、Xg*(k),Yg*(k)、θ*(k)、β*(k)、γ*(k)、V*(k)、ax*(k)、axt*(k)、δ*(k)、δt*(k) (k=0,・・・,N)はそれぞれ重心位置、車体方位、横滑り角、ヨーレート、車速、縦加速度、目標縦加速度、舵角、目標舵角の最適値である。
【0110】
次に、
図10のS256において、目標軌道ξを生成する。目標軌道ξは最適状態量x*と最適制御入力u*に基づき生成される。本実施の形態では、最適状態量x*を目標軌道ξとする。したがって、S256の出力は、次式となる。
【数24】
【0111】
なお、目標行動が車線維持の場合の目標軌道ξを目標車線維持軌道ξLK、目標行動が車線変更の場合は目標軌道ξを目標車線変更軌道ξLCと呼ぶ。S251で説明したように、目標行動が異なる場合、少なくとも参照経路χrが異なる。ただし、それ以外にも、S252で制約の項目や値を変更したり、S253で評価関数の項目や値を変更したりしてもよい。
【0112】
<車線変更中に前方障害物が減速した場合の目標車線変更軌道の比較>
車線変更中に前方障害物が減速した場合の、比較例と本実施の形態での自車両の挙動の違いを説明する。
【0113】
図11は、車線変更中に前方障害物が減速した場合の、比較例と本実施の形態での自車両の挙動の違いを示す概略図である。自車両が左車線に車線変更中で、左車線には前方障害物が存在している。それぞれの図は、ある時刻における各予測点k(k=0,・・・,N)の障害物の中心位置Xo(k),Yo(k)と、目標車線変更軌道ξLCに含まれる自車両の最適重心位置Xg*(k),Yg*(k)を示している。
【0114】
図11(A)は自車両が区画線を超える直前の図で、比較例と本実施の形態で共通している。
図11(A)では区画線を超える前なので、前方障害物に周囲進入禁止領域Ssurrを設定している。
図11(A)において、予測最終点には変更先車線の中央まで移動が完了する予測をしている。
【0115】
ここで、
図11(A)の直後に前方障害物が減速を開始した場合を考える。
図11(B)は、比較例において、
図11(A)から時間が経過し、自車両が区画線を超えた直後の図である。前方障害物が減速したため、前方障害物を回避する必要がある。比較例において、自車両が変更元車線に戻ることは禁止されていないので、評価関数の重みに依っては、
図11(B)のように変更元車線に戻って前方障害物の側方に回り込むことで前方障害物との衝突を回避する軌道を生成がされる。しかし、余程の減速度(たとえば、3.0m/ss以上)が必要な場合を除き、自車両が変更先車線に移動した後に変更元車線に戻ることは不自然で、安全性や快適性が低下する。また、目標行動である車線変更も達成できない。
【0116】
図11(C)は、本実施の形態において、
図11(A)から時間が経過し、自車両が区画線を超えた直後の図である。自車両が区画線を超えているので、車間進入禁止領域SIVDが設定されている。前方障害物が減速したため、前方障害物を回避する必要があるが、車間進入禁止領域SIVDを設定したことにより、変更元車線に戻って前方障害物の側方に回り込んで前方障害物との衝突を回避することができなくなっている。減速によってのみ前方障害物との衝突を回避することができるので、
図11(C)のように、変更元車線に戻ることなく、減速しながら前方障害物との衝突を回避する軌道が生成されている。これは、
図11(B)に比べて自然な挙動であり、安全性や快適性が向上する。また、そして、
図11(A)と同じく、予測最終点には変更先車線の中央まで移動が完了する予測をしているため、目標行動である車線変更も達成できる。
【0117】
<実施の形態1のまとめ>
このような構成によれば、車線変更中は自車両の横方向の位置に基づき進入禁止領域を変更するので、ある程度変更先車線に移動すると変更先車線の障害物を変更元車線に戻ることなく回避するため、変更先車線の障害物が加減速した場合でも不自然に変更元車線に戻ることがなくなり、乗員の安全性や快適性が向上する。
【0118】
実施の形態2.
実施の形態1では、自車両が変更先車線に移動した後は、自車両が障害物を変更元車線に戻ることなく衝突回避するために、車間進入禁止領域を設定したが、代わりに変更先車線から離脱しないような進入禁止領域(以降、車線進入禁止領域)と周囲進入禁止領域を設定してもよい。これにより、実施の形態1同様、ある程度変更先車線に移動すると変更先車線の障害物を変更元車線に戻ることなく回避するため、変更先車線の障害物が加減速した場合でも不自然に変更元車線に戻ることがなくなり、乗員の安全性や快適性が向上する。
【0119】
以下に実施の形態2について説明する。実施の形態1と重複する説明はここでは省略する。実施の形態2と実施の形態1との違いは、
図12のS246のみである。
【0120】
<進入禁止領域の設定手順>
実施の形態2における、
図12のS246について説明する。実施の形態1同様、
図12のS245において自車線に前方障害物が存在すると判定された場合、あるいは、
図12のS243において所定の基準位置を超えた後と判定された場合、変更先車線から離脱せず、かつ、障害物と自車両との車間距離を設定距離以上確保するよう、
図12のS246で、対象障害物として選択した障害物に車線進入禁止領域Slaneと周囲進入禁止領域Ssurrを重畳して設定する。本実施の形態では、車線進入禁止領域Slaneは変更先車線の区画線の外側の領域とする。ただし、
図12のS243で基準位置に区画線以外を選択した場合、それと整合が取れるよう、車線進入禁止領域Slaneの境界を横方向に調整する。また、本実施の形態では、スーパー楕円状の周囲進入禁止領域Ssurrを設定するものとする。このとき、周囲進入禁止領域Ssurrはスーパー楕円の方程式ζsup(X,Y)=0の内部で表現される。ここで、ζsup(X,Y)は次式で表される。
【数25】
【0121】
da(k)、db(k)はそれぞれ予測点kにおいて障害物に設定するスーパー楕円の長軸と短軸の長さである。nは楕円の次数で、4以上の偶数であればよい。本実施の形態ではn=8とする。da(k)、db(k)は自車両の速度や障害物の速度に応じて大きさを調整してよい。たとえば、自車両と障害物の速度差が大きいほどda(k)、db(k)を大きくしてよい。また、スーパー楕円の中心が障害物の中心位置Xo(k),Yo(k)に一致する必要はない。また、障害物に設定する進入禁止領域はスーパー楕円形である必要はなく、障害物の側方を走行でき、かつ、縦方向に障害物に設定距離以上接近しないような形状であれば任意の形状の進入禁止領域を設定してよい。また、慣性座標系ではなく、経路座標系で設定してもよい。
【0122】
図13はスーパー楕円状の周囲進入禁止領域Ssurrを示す概略図である。障害物の中心位置Xo(k),Yo(k)を中心とするスーパー楕円ζsup(X,Y)=0の内側が周囲進入禁止領域Ssurrとなっている。
【0123】
図14は車線進入禁止領域Slaneとスーパー楕円状の周囲進入禁止領域Ssurrを重畳した結果を示す概略図である。重畳した結果、コの字型の進入禁止領域となる。これにより、変更先車線に移動してから前方障害物が減速しても、変更元車線に戻ることなく、減速しながら前方障害物との衝突を回避するようになる。また、周囲進入禁止領域Ssurrをスーパー楕円状としたのは、進行方向に対して領域の境界をフラットに近い形状にするためである。周囲進入禁止領域Ssurrが楕円状のように凸形状になっていると、
図15のように自車両がくぼみ部分から抜けられなくなり、変更先車線中央まで到達できない可能性がある。周囲進入禁止領域Ssurrがスーパー楕円状だと、そのような可能性はなくなり、変更先車線中央まで到達できる。
【0124】
<実施の形態2まとめ>
このような構成によれば、自車両がある程度変更先車線に移動した後は、車線進入禁止領域と周囲進入禁止領域を設定することで、変更先車線の障害物を変更元車線に戻ることなく回避するため、変更先車線の障害物が加減速した場合でも不自然に変更元車線に戻ることがなくなり、乗員の安全性や快適性が向上する。
【0125】
実施の形態3.
実施の形態1では、車線変更中に自車両が基準位置を超えた後は、変更先車線の障害物を自車両が変更元車線に戻ることなく衝突回避するような進入禁止領域を設定したが、例外的に変更先車線の障害物を変更元車線に戻って衝突回避した方がよい場合もある。そのような場合は、基準位置を超えた後でも、変更先車線の障害物を変更元車線に戻って衝突回避するような進入禁止領域を設定してもよい。ここでいう変更先車線の障害物を変更元車線に戻って衝突回避した方がよい場合とは、たとえば、障害物との衝突を回避するために必要な加速度または減速度の絶対値が判定値以上である場合である。これにより、そのような例外時には、変更元車線に戻って衝突回避できるため、安全性や快適性が向上する。
【0126】
以下に実施の形態3について説明する。実施の形態1と重複する説明はここでは省略する。実施の形態3と実施の形態1との違いは、
図16のS248のみである。
【0127】
<進入禁止領域の設定手順>
実施の形態3における、
図16のS248について説明する。
図16のS243において所定の基準位置を超えた後と判定された場合、
図16のS248において、例外に該当するか判定する。例外に該当すると判定された場合、
図16のS244の処理を行う。例外に該当しないと判定された場合、
図16のS246の処理を行う。ここでの例外とは、変更先車線の障害物を変更元車線に戻って衝突回避した方がよい場合のことであり、たとえば、変更先車線の前方障害物が急減速し、車間を保つために必要な自車両の減速度の絶対値が判定値(たとえば、3.0m/ss)以上の場合や、変更先車線の後方障害物が急加速し、車間を保つために必要な自車両の加速度の絶対値が判定値(たとえば、3.0m/ss)以上の場合である。このような場合に変更元車線に戻らずに衝突回避しようとすると急減速や急加速が必要となり危険であるため、変更元車線に戻って衝突回避した方がよい。
図16のS248の処理により、例外時には
図16のS244で周囲進入禁止領域を設定するため、変更元車線に戻っての衝突回避が可能となる。
【0128】
なお、例外は上記に限らず、他にも、変更先車線に判定値以上のスペースを確保できなくなった場合など、変更元車線に戻って衝突回避した方がいい任意の場合を例外としてよい。ここでの判定値以上のスペースを確保できなくなったとは、たとえば、変更先車線の縦方向に関して、自車両からの相対位置が所定の判定範囲(たとえば、自車両が0.8sに走行する距離)内に他の障害物が存在する場合であり、変更先車線の前方障害物と後方障害物の車間距離が狭くなった場合や、変更先車線のさらに奥の車線から別の障害物が変更先車線に進入してきた場合が当てはまる。
【0129】
<実施の形態3のまとめ>
このような構成によれば、例外的に変更先車線の障害物を変更元車線に戻って衝突回避した方がよい場合には、変更元車線に戻って衝突回避できるため、安全性や快適性が向上する。
【0130】
<本願の諸態様のまとめ>
以下、本願の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
障害物の移動予測及び道路情報の少なくとも一方に基づいて、自車両の進入禁止領域を設定する進入禁止領域設定部と、
前記進入禁止領域に進入しないという制約の下で、前記自車両の将来に亘る目標軌道を演算する目標軌道生成部と、
前記目標軌道に基づいて、前記自車両の走行を制御する車両制御部と、
を備え、
前記進入禁止領域設定部は、前記目標軌道生成部が変更元車線から変更先車線に車線変更するための前記目標軌道を演算する場合に、前記変更元車線又は前記変更先車線に対する前記自車両の横方向に位置に基づいて、前記進入禁止領域を変更する車両制御装置。
【0131】
(付記2)
前記進入禁止領域設定部は、前記横方向の位置が、前記変更元車線及び前記変更先車線の横方向の範囲内に設定した基準位置を前記変更先車線側に超えた後は、前記変更先車線に存在する前記障害物を、前記自車両が前記変更元車線に戻ることなく衝突回避するような前記進入禁止領域を設定する付記1に記載の車両制御装置。
【0132】
(付記3)
前記進入禁止領域設定部は、前記横方向の位置が前記基準位置を超えた後は、前記変更先車線に存在する前記障害物を、前記自車両が前記変更元車線に戻ることなく衝突回避するように、前記障害物と前記自車両との車間距離を設定距離以上確保するような前記進入禁止領域を設定する付記2に記載の車両制御装置。
【0133】
(付記4)
前記進入禁止領域設定部は、前記横方向の位置が前記基準位置を超えた後は、前記変更先車線において前記自車両の前方に存在する前記障害物である前方障害物を、前記自車両が前記変更元車線に戻ることなく衝突回避するように、前記変更先車線から前記自車両が離脱しないような前記進入禁止領域、および、前記障害物と前記自車両との車間距離を設定距離以上確保するような前記進入禁止領域を設定する付記2に記載の車両制御装置。
【0134】
(付記5)
前記基準位置は、前記変更元車線と前記変更先車線との境界を示す区画線である付記2から4のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【0135】
(付記6)
前記進入禁止領域設定部は、前記自車両に関する例外に該当するか否かを判定し、前記例外に該当すると判定した場合には、前記横方向の位置が前記基準位置を超えた後でも、前記変更先車線に存在する前記障害物を、前記自車両が前記変更元車線に戻って衝突回避するような前記進入禁止領域を設定する付記2から5のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【0136】
(付記7)
前記例外は、前記障害物を、前記自車両が前記変更元車線に戻ることなく衝突回避するために必要な加速度又は減速度の絶対値が、判定値以上である場合である付記6に記載の車両制御装置。
【0137】
(付記8)
前記例外は、前記変更先車線に、前記自車両が車線変更するための判定値以上のスペースを確保できない場合である付記6又は7に記載の車両制御装置。
【0138】
(付記9)
前記進入禁止領域設定部は、前記横方向の位置が前記基準位置を超えた後は、前記変更先車線に存在する前記障害物よりも前記設定距離以上前記自車両側に、前記変更元車線及び前記変更先車線を横方向に横切る境界線を設定し、前記境界線の前記障害物側に、前記進入禁止領域を設定する請求項3に記載の車両制御装置。
【0139】
(付記10)
前記進入禁止領域設定部は、前記設定距離を、前記横方向の位置が前記基準位置を超えた時点の前記自車両と前記障害物との車間距離以下の距離に設定する請求項3又は9に記載の車両制御装置。
【0140】
(付記11)
前記進入禁止領域設定部は、前記横方向の位置が前記基準位置を超える前は、前記障害物の前記変更元車線側に前記変更元車線を自車両が走行できるスペースを残し、前記障害物と前記自車両との車間距離を設定距離以上確保するような前記進入禁止領域を設定する請求項2から10のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【0141】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0142】
1 車両、2 ステアリングホイール、3 ステアリング軸、4 操舵ユニット、5 EPSモータ、6 パワートレインユニット、7 ブレーキユニット、111 前方カメラ、112 レーダセンサ、121 GNSS、122 ナビゲーション装置、131 操舵角センサ、132 操舵トルクセンサ、133 ヨーレートセンサ、134 速度センサ、135 加速度センサ、200 車両制御ユニット、311 EPSコントローラ、312 パワートレインコントローラ、313 ブレーキコントローラ