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  • 特開-打抜き部受支装置 図1
  • 特開-打抜き部受支装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168867
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】打抜き部受支装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/18 20060101AFI20241128BHJP
   B26F 1/44 20060101ALI20241128BHJP
   B26F 1/40 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B26D7/18 F
B26F1/44 G
B26F1/40 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085888
(22)【出願日】2023-05-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】591038521
【氏名又は名称】大創株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】大塚 攘治
【テーマコード(参考)】
3C021
3C060
【Fターム(参考)】
3C021FD02
3C060AA01
3C060AA04
3C060BA03
3C060BD01
3C060BE07
3C060BG06
3C060BG20
3C060BH10
(57)【要約】
【課題】必要な打抜きストロークが大きくなる場合であっても、打抜き部を抜き屑として確実に除去することができる打抜き部受支装置を提供する。
【解決手段】受け部20を有する受支体11と、受け部20の位置が第一段位置から第二段位置及び第三段位置を経て第三段位置よりも下方位置へと変化し得るように受支体11を回動可能に支持する支持体12と、受支体11に装着される可動被吸着片25と、支持体12に配設される磁石体13とを備え、受支体11は、可動被吸着片25を介して磁石体13と吸着可能な被吸着部11bを含み、可動被吸着片25は、磁石体13に吸着された状態で受支体11の回動方向に相対変位可能であるとともに、磁石体13に吸着された状態で受支体11の回動方向に傾動可能であり、受け部20の位置が第三段位置よりも下方へと変化したときに磁石体13から可動被吸着片25が引き離されるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材における、上型によって打ち抜かれる打抜き部を抜き屑として除去可能に受支する打抜き部受支装置であって、
前記打抜き部を受ける受け部を有する受支体と、
前記受け部の位置が第一段位置から当該第一段位置よりも下方の第二段位置及び当該第二段位置よりも下方の第三段位置を経て当該第三段位置よりも下方位置へと変化し得るように前記受支体を回動可能に支持する支持体と、
前記受支体に装着される可動被吸着片と、
前記可動被吸着片と吸着可能に前記支持体に配設される磁石体と、
を備え、
前記受支体は、前記受け部の位置が前記第一段位置であるときに、前記可動被吸着片を介して前記磁石体と吸着可能な被吸着部を含み、
前記可動被吸着片は、前記受け部の位置が前記第一段位置から前記第二段位置へと変化するときに、前記磁石体に吸着された状態で前記受支体に対し当該受支体の回動方向に相対変位可能であるとともに、前記受け部の位置が前記第二段位置から前記第三段位置へと変化するときに、前記磁石体に吸着された状態で前記受支体の回動方向に傾動可能であり、
前記受け部の位置が前記第三段位置よりも下方へと変化したときに前記磁石体から前記可動被吸着片が引き離されるように構成される打抜き部受支装置。
【請求項2】
前記受け部の位置が前記第一段位置であるときにおける前記受支体の上部が前記支持体に回動可能に支持され、
前記受け部の位置が前記第一段位置であるときにおける前記受支体の下部に前記可動被吸着片が配設される請求項1に記載の打抜き部受支装置。
【請求項3】
前記受支体の上部に錘部が形成される請求項2に記載の打抜き部受支装置。
【請求項4】
前記受け部は、
前記第一段位置において水平方向に延在する水平受け面部と、
前記第一段位置において前記受支体の回動中心に近づくように水平下向きに傾斜して延在するとともに、前記第二段位置において水平姿勢となり、且つ前記第三段位置において前記受支体の回動中心から離れるように水平下向きに傾斜する姿勢となる傾斜受け面部と、
を有する請求項1~3の何れか一項に記載の打抜き部受支装置。
【請求項5】
前記受支体は、
前記受け部の位置が前記第一段位置であるときにおいて、前記可動被吸着片の一端側に対し所定の隙間をあけて形成される第一係止爪部と、前記可動被吸着片の他端側に対し所定の隙間をあけて形成される第二係止爪部とを有し、
前記受け部の位置が前記第二段位置であるときにおいて、前記可動被吸着片の一端側が前記第一係止爪部に係合され、
前記受け部の位置が前記第三段位置であるときにおいて、さらに前記可動被吸着片の他端側が前記第二係止爪部に係合されるように構成される請求項1~3の何れか一項に記載の打抜き部受支装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材における、上型によって打ち抜かれる打抜き部を抜き屑として除去可能に受支する打抜き部受支装置に関する。
【背景技術】
【0002】
箱体の展開形態であるシート状のブランクを製作する際において、突き押し片を具備する上型と、打抜き部を抜き屑として除去可能に受支する打抜き部受支装置を具備する下型との協働により、型打抜きされたシート材における打抜き部を打ち抜いて抜き屑として除去することが行われている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1には、打抜き部を受支する可動体と、可動体を移動可能に支持する支持体とを備え、支持体に固定された支持体側磁石の磁力により、可動体に装着された2枚の鉄板(固定磁性体、傾動磁性体)を介して可動体を吸着保持するように構成される打抜き部受支装置が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された打抜き部受支装置においては、突き押し片と可動体とによって打抜き部が挟まれた状態で、可動体が突き押し片によって押し下げられると、固定磁性体に対し傾動磁性体が開放され、次いで、支持体側磁石に対し傾動磁性体が開放され、可動体が2段階で下降される。このように、可動体が2段階で下降されることにより、型打抜きされたシート材におけるブランクと打抜き部とを繋ぎ止めている繋ぎ部を引き千切り、その後、打抜き部を抜き屑として除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7070962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、シート材の厚みや材質等によっては、シート材における、上型(突き押し片)によって打ち抜かれる打抜き部を抜き屑として除去するのに必要な打抜きストロークが大きくなる場合がある。この場合、可動体が2段階で下降される上記の打抜き部受支装置では、打抜き部が突き押し片と可動体とによって挟まれた状態で押し下げられる動作が十分に行われず、所要箇所に設けられた繋ぎ部の一部が引き千切られずに、打抜き部がシート材に残留してしまう虞があり、改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、シート材における、上型によって打ち抜かれる打抜き部を抜き屑として除去するのに必要な打抜きストロークが大きくなる場合であっても、打抜き部を抜き屑として確実に除去することができる打抜き部受支装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係る打抜き部受支装置の特徴構成は、
シート材における、上型によって打ち抜かれる打抜き部を抜き屑として除去可能に受支する打抜き部受支装置であって、
前記打抜き部を受ける受け部を有する受支体と、
前記受け部の位置が第一段位置から当該第一段位置よりも下方の第二段位置及び当該第二段位置よりも下方の第三段位置を経て当該第三段位置よりも下方位置へと変化し得るように前記受支体を回動可能に支持する支持体と、
前記受支体に装着される可動被吸着片と、
前記可動被吸着片と吸着可能に前記支持体に配設される磁石体と、
を備え、
前記受支体は、前記受け部の位置が前記第一段位置であるときに、前記可動被吸着片を介して前記磁石体と吸着可能な被吸着部を含み、
前記可動被吸着片は、前記受け部の位置が前記第一段位置から前記第二段位置へと変化するときに、前記磁石体に吸着された状態で前記受支体に対し当該受支体の回動方向に相対変位可能であるとともに、前記受け部の位置が前記第二段位置から前記第三段位置へと変化するときに、前記磁石体に吸着された状態で前記受支体の回動方向に傾動可能であり、
前記受け部の位置が前記第三段位置よりも下方へと変化したときに前記磁石体から前記可動被吸着片が引き離されるように構成されることにある。
【0009】
本構成の打抜き部受支装置によれば、打抜き部を受ける受け部がその打抜き部を介して上型により相対的に押し下げられて、受け部の位置が第一段位置から第二段位置に変化するように受支体が回動する間においては、受支体に装着された可動被吸着片が、支持体に配設された磁石体に吸着された状態で、受支体に対し当該受支体の回動方向に相対変位する。さらに、受け部が打抜き部を介して上型により相対的に押し下げられて、受け部の位置が第二段位置から第三段位置に変化するように受支体が回動する間においては、受支体に装着された可動被吸着片が、支持体に配設された磁石体に吸着された状態で、受支体の回動方向に傾動する。受支体に対し当該受支体の回動方向に可動被吸着片が相対変位するときには、相対変位する前の状態に戻そうとする磁力が、受支体における被吸着部と可動被吸着片との間に作用する。受支体の回動方向に可動被吸着片が傾動するときには、傾動する前の状態に戻そうとする磁力が、受支体における被吸着部と可動被吸着片との間に作用する。これらの磁力は何れも、受け部を押し上げる方向に受支体を付勢する。こうして、打抜き部が上型によって打ち抜かれる際、上型から打抜き部を介して受け部に作用する押圧力に対抗する反力が確保される。このようにして、上型からの押圧力に対抗する反力が確保され、且つ打抜き部が上型と受け部とに挟まれた状態で、打抜き部が第一段位置から第二段位置に、続いて第二段位置から第三段位置に受け部と共に押し下げられる。そして、受け部の位置が第三段位置よりも下方へと変化するように受支体が回動し、磁石体から可動被吸着片が引き離されると、急速に磁力による吸着力が失われるので、受支体の回動がある回動角度範囲を過ぎると、受け部による抜き屑を受支する作用力が消滅し、その結果、抜き屑は落下して除去される。こうして、受け部を3段階で下降させることにより、シート材における、上型によって打ち抜かれる打抜き部を抜き屑として除去するのに必要な打抜きストロークが大きくなる場合であっても、打抜き部に対し打抜き力を確実に作用させることができ、打抜き前において打抜き部をその周りのシート材部分に繋ぎ止めている所要の繋ぎ部を確実に引き千切ることができ、その後、打抜き部を抜き屑として確実に除去することができる。
【0010】
本発明に係る打抜き部受支装置において、
前記受け部の位置が前記第一段位置であるときにおける前記受支体の上部が前記支持体に回動可能に支持され、
前記受け部の位置が前記第一段位置であるときにおける前記受支体の下部に前記可動被吸着片が配設されることが好ましい。
【0011】
本構成の打抜き部受支装置によれば、受け部が第一段位置であるときにおける受支体の上部が支持体に回動可能に支持される一方で、受け部が第一段位置であるときにおける受支体の下部に可動被吸着片が配設されるので、受支体の回動中心の下方に受支体の重心位置があることになる。このため、受け部の位置が第三段位置よりも下方へと変化するように受支体が回動した後、受け部が第一段位置に復帰するように受支体を速やかに逆転させることができる。そして、受支体の逆転によって可動被吸着片が磁石体の磁力の作用範囲内に入れば、磁力の作用も相俟って、受支体をより速やかに逆転させて受け部の位置を第一段位置へと復帰保持させることができる。
【0012】
本発明に係る打抜き部受支装置において、
前記受支体の上部に錘部が形成されることが好ましい。
【0013】
本構成の打抜き部受支装置によれば、可動被吸着片の重量を加えた受支体の下部全体の重量と、錘部の重量を加えた受支体の上部全体の重量とのバランスにより、受支体の回動動作を安定的に行わせることができる。
【0014】
本発明に係る打抜き部受支装置において、
前記受け部は、
前記第一段位置において水平方向に延在する水平受け面部と、
前記第一段位置において前記受支体の回動中心に近づくように水平下向きに傾斜して延在するとともに、前記第二段位置において水平姿勢となり、且つ前記第三段位置において前記受支体の回動中心から離れるように水平下向きに傾斜する姿勢となる傾斜受け面部と、
を有することが好ましい。
【0015】
本構成の打抜き部受支装置によれば、受け部の位置が第一段位置にあるときには、受け部における水平受け面部が水平姿勢となり、この水平姿勢の水平受け面部によって打抜き部が受け止められる。また、受け部の位置が第二段位置にあるときには、受け部における傾斜受け面部が水平姿勢となり、この水平姿勢の傾斜受け面部によって打抜き部が受け止められる。こうして、受け部の位置が第一段位置及び第二段位置の何れの位置においても、受け部における水平姿勢の部分によって打抜き部が受け止められるので、打抜き部に対する打抜き動作を偏ることなく適切に行うことができる。さらに、受け部の位置が第三段位置にあるときには、受け部における傾斜受け面部が受支体の回動中心から離れる水平方向に向かって下向きに傾斜する姿勢となる。従って、打ち抜いた打抜き部(抜き屑)を傾斜受け面部上からスムーズに滑り落とすことができ、抜き屑をより確実に除去することができる。
【0016】
本発明に係る打抜き部受支装置において、
前記受支体は、
前記受け部の位置が前記第一段位置であるときにおいて、前記可動被吸着片の一端側に対し所定の隙間をあけて形成される第一係止爪部と、前記可動被吸着片の他端側に対し所定の隙間をあけて形成される第二係止爪部とを有し、
前記受け部の位置が前記第二段位置であるときにおいて、前記可動被吸着片の一端側が前記第一係止爪部に係合され、
前記受け部の位置が前記第三段位置であるときにおいて、さらに前記可動被吸着片の他端側が前記第二係止爪部に係合されるように構成されることが好ましい。
【0017】
本構成の打抜き部受支装置によれば、受け部の位置が第一段位置であるときには、可動被吸着片の一端側と第一係止爪部との間に所定の隙間が設けられるとともに、可動被吸着片の他端側と第二係止爪部との間に所定の隙間が設けられ、受け部の位置が第二段位置であるときには、可動被吸着片の一端側が第一係止爪部に係合され、受け部の位置が第三段位置であるときには、さらに可動被吸着片の他端側が第二係止爪部に係合される。これにより、受け部の位置が第一段位置から第二段位置に変化するように受支体が回動する間においては、受支体に装着された可動被吸着片が、支持体に固定された磁石体に吸着された状態で、受支体に対し当該受支体の回動方向に相対変位するとともに、受け部の位置が第二段位置から第三段位置に変化するように受支体が回動する間においては、受支体に装着された可動被吸着片が、支持体に固定された磁石体に吸着された状態で、受支体の回動方向に傾動するようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る打抜き部受支装置を具備する打抜き屑除去装置の構造説明図である。
図2図2は、打抜き部受支装置の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0020】
<打抜き屑除去装置の概略構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る打抜き部受支装置10を具備する打抜き屑除去装置1の構造説明図である。図1に示す打抜き屑除去装置1は、固定状態で配設される上型2と、上型2に対し相対移動可能に昇降される下型3とを備え、上型2と下型3との協働により、下型3上に載置されたシート材Sにおける打抜き部Pを打ち抜いて抜き屑として除去するように構成されている。ここで、シート材Sは、例えば、箱体(製品)を展開した所定形状のブランクを得るための型打抜き工程を経たものである。型打抜き工程を経たシート材Sにおいては、ブランクと打抜き部Pとが所要箇所に設けられた繋ぎ部jによって繋ぎ止められている。打抜き部Pは、シート材Sにおける、製品段階において独立孔部分や、細い切込部分等となる箇所に残留する抜き屑となる部分である。
【0021】
<上型>
上型2は、主として、上型基板5、突き押し片6、及びシート押え片7により構成されている。上型基板5は、下型3の上方において上下方向に板面を臨ませて水平方向に延在している。突き押し片6は、上型基板5の下面から下向きに所定長さ突出するように上型基板5に植設されている。シート押え片7は、弾性変形可能な例えば発泡樹脂等からなり、突き押し片6の近傍に位置するように上型基板5の下面に貼着されている。
【0022】
<下型>
下型3は、上型基板5の下方において上下方向に板面を臨ませて水平方向に延在する下型基板8と、下型基板8に取り付けられる打抜き部受支装置10とを備えて構成されている。打抜き部受支装置10は、シート材Sにおける、上型2(突き押し片6)によって打ち抜かれる打抜き部Pを抜き屑として除去可能に受支する装置である。打抜き部受支装置10は、下型基板8の端部に形成されるコの字状の切欠き部8aに、下型基板8の上面と面一となるように組み込まれ、締結具9によって下型基板8に締結・固定されている。
【0023】
<打抜き部受支装置>
図1に示すように、打抜き部受支装置10は、打抜き部Pを受支する受支体11と、受支体11を回動可能に支持する支持体12と、支持体12に配設される磁石体13とを備えている。
【0024】
<受支体、受け部>
図1に示す受支体11は、当該受支体11の主要部分を構成する受支体主要部11aを含む。受支体主要部11aは、樹脂製であり、打抜き部Pを受ける受け部20を有している。図1において、受け部20の位置は、支持体12の前端から突き出して突き押し片6の先端(下端)と対向するような位置であり、且つ突き押し片6によって打ち抜く前の打抜き部Pを下側から接触して受け止める第一段位置にある。
【0025】
本実施形態の受支体主要部11aでは、図1において上部における前半部分に受け部20が形成される一方で、図1において上部における後半部分に枢支軸21がその両端部を左右方向(図1において紙面を垂直に貫く方向)に突き出した状態で挿通されている。また、受支体主要部11aにおける図1において下部は、磁石体13及び後述する可動被吸着片25を受入可能に前方に向けて開放された側面視鉤形状に形成されている。
【0026】
<水平受け面部、傾斜受け面部>
受け部20は、水平受け面部20aと傾斜受け面部20bとを有している。水平受け面部20aは、第一段位置において水平方向に延在する。傾斜受け面部20bは、第一段位置において枢支軸21(受支体11の回動中心)に近づくように水平下向きに傾斜して延在するとともに、第一段位置よりも下方の第二段位置(図2(b)参照)において水平姿勢となり、且つ第二段位置よりも下方の第三段位置(図2(c)参照)において枢支軸21(受支体11の回動中心)から離れるように水平下向きに傾斜する姿勢となる。
【0027】
<錘部>
受支体主要部11aにおける図1において上部には、前方に向かって円弧状に膨出した形状の錘部22が形成されている。こうして、可動被吸着片25及び後述する固定被吸着片26の重量を加えた受支体主要部11aの下部重量と、錘部22の重量を加えた受支体主要部11aの上部重量とのバランスにより、受支体11の回動動作が安定的に行われるようにされている。
【0028】
<支持体>
支持体12は、樹脂製であり、受支体11を収容可能な収容部12aを有している。支持体12は、受支体11に挿通された枢支軸21の両端部を支承している。これにより、受支体11は、枢支軸21の軸中心を回動中心として、受け部20の位置が第一段位置から当該第一段位置よりも下方の第二段位置及び当該第二段位置よりも下方の第三段位置を経て当該第三段位置よりも下方位置へと変化し得るように回動可能とされている。
【0029】
<磁石体>
磁石体13は、左右方向(図1において紙面を垂直に貫く方向)に断面矩形状で延在する外観視直方体形状に形成されている。磁石体13は、支持体12の前部における上下方向中間位置よりも下部寄りの位置に配されている。磁石体13は、その六面のうちの二面を前後方向に臨ませて、その左右方向両端部が支持体12に嵌着・固定されている。磁石体13としては、例えば、その全体を、ネオジム磁石や、フェライト磁石、アルニコ磁石、サマリウム・コバルト磁石等で構成する態様が挙げられる。また、磁石体13としては、例えば、主要部が磁石で構成される本体部分と、本体部分の磁石を保護する保護材としてその表面を覆う強磁性体や樹脂等とを組み合わせて、全体として磁石として機能するように構成する態様が挙げられる。
【0030】
<可動被吸着片>
打抜き部受支装置10は、受支体11に装着される可動被吸着片25をさらに備えている。可動被吸着片25は、受け部20の位置が図1に示すような第一段位置であるときに、磁石体13の後面に吸着可能な板面を有する板状体(本例では鉄板)からなり、受け部20の位置が第一段位置にある受支体11において、受支体主要部11aの下部となる部分に配設されている。可動被吸着片25としては、例えば、その全体を鉄やニッケル、コバルト等の強磁性体の金属で構成する態様を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、強磁性体の金属を主体として、磁石や樹脂等を適宜に組み合わせて構成する態様もある。
【0031】
<被吸着部>
受支体11は、受け部20の位置が図1に示すような第一段位置であるときに、可動被吸着片25を介して磁石体13と吸着可能な被吸着部11bをさらに含む。被吸着部11bは、受支体主要部11aの下部における後部寄りの部分に嵌着・固定される固定被吸着片26によって構成される。固定被吸着片26は、受け部20の位置が第一段位置であるときに、可動被吸着片25の後面に吸着可能な板面を有する板状体(本例では鉄板)からなり、可動被吸着片25を介して磁石体13と吸着可能に受支体主要部11aの下部に配設されている。固定被吸着片26としては、可動被吸着片25と同様に、その全体を鉄やニッケル、コバルト等の強磁性体の金属で構成する態様を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、強磁性体の金属を主体として、磁石や樹脂等を適宜に組み合わせて構成する態様もある。
【0032】
本実施形態では、受支体11において、樹脂製の受支体主要部11aに強磁性体の金属板からなる固定被吸着片26を嵌着・固定することにより、本発明における「被吸着部」を構成する例を挙げたが、これに限定されるものではない。その他の例としては、樹脂製の受支体主要部11aの内部に、インサート成形等によって強磁性体を埋め込むことで構成されるものや、強磁性体が練り込まれた樹脂を含む二色成形等によって少なくとも受支体11の下部を強磁性体が含有された樹脂で形成することで構成されるもの、受支体主要部11aの表面に強磁性体を溶射等によって被覆することで構成されるもの、受支体11の少なくとも下部そのものを強磁性体で形成することで構成されるもの等が挙げられる。
【0033】
図2は、打抜き部受支装置10の作動説明図である。図2(a)は、受け部20の位置が第一段位置に、同図(b)は、受け部20の位置が第二段位置に、同図(c)は、受け部20の位置が第三段位置に、同図(d)は、受け部20の位置が第三段位置よりも下方位置に、それぞれ位置している状態図である。
【0034】
可動被吸着片25は、受け部20の位置が第一段位置(図2(a)参照)から第二段位置(図2(b)参照)へと変化するときに、磁石体13に吸着された状態で受支体11に対し当該受支体11の回動方向(R)に相対変位可能に装着されている。本例の場合、磁石体13に吸着されて一定位置で一定姿勢に保たれた状態の可動被吸着片25に対し、受支体11が回動方向(R)に沿って回動することで受支体11に対し可動被吸着片25が受支体11の回動方向(R)に相対変位する。また、可動被吸着片25は、受け部20の位置が第二段位置(図2(b)参照)から第三段位置(図2(c)参照)へと変化するときに、磁石体13に吸着された状態で受支体11の回動方向(R)に傾動可能に受支体11に装着されている。
【0035】
すなわち、受支体11において、受支体主要部11aには、受け部20の位置が第一段位置(図2(a)参照)にあるときにおいて、可動被吸着片25の一端側(下端側)に対し所定の隙間をあけて第一係止爪部23が形成されるとともに、可動被吸着片25の他端側(上端側)に対し所定の隙間をあけて第二係止爪部24が形成されている。そして、受け部20の位置が第二段位置(図2(b)参照)にあるときに、可動被吸着片25の一端側(下端側)が第一係止爪部23に係合され、受け部20の位置が第三段位置(図2(c)参照)にあるときに、さらに可動被吸着片25の他端側(上端側)が第二係止爪部24に係合されるように、受支体主要部11aに可動被吸着片25が装着されている。
【0036】
このような構成により、図2(a)~(b)に示すように、受け部20の位置が第一段位置から第二段位置に変化するように受支体11が回動する間において、受支体11に装着された可動被吸着片25は、その前側板面が磁石体13の後面に面接触で吸着された状態で、受け部20の位置が第一段位置のときにおいて可動被吸着片25の一端側(下端側)と第一係止爪部23との間に設けられた隙間の分だけ受支体11に対し当該受支体11の回動方向(R)に相対変位する。また、図2(b)~(c)に示すように、受け部20の位置が第二段位置から第三段位置に変化するように受支体11が回動する間において、受支体11に装着された可動被吸着片25は、その前側板面が、磁石体13の後面と上面との交わりの角部に線接触で吸着された状態で、当該角部を支点として、可動被吸着片25の一端側(下端側)と、可動被吸着片の他端側(上端側)とが互いに逆向きに相対変位するように受支体11の回動方向(R)に傾動する。
【0037】
<打抜き屑除去動作>
次に、打抜き部受支装置10を具備する打抜き屑除去装置1を用いて、打抜き部Pを抜き屑として打抜き、除去する動作について、図1及び図2を用いて説明する。
【0038】
図1において、下型3における下型基板8の上面には、前工程で型抜きされたシート材Sが、突き押し片6の下方に打抜き部Pが位置するように送り込まれる。これにより、打抜き部Pは、受支体11における受け部20の水平受け面部20aによって受支される。
【0039】
図1に示す上型2に対し下型3を上昇させると、図2(a)に示すように、シート押え片7がシート材Sに接触し、シート材Sがシート押え片7によって押圧されて、シート材Sが固定される。図2(a)において、受け部20の位置は、支持体12の前端から突き出して突き押し片6の先端(下端)と対向するような位置であり、且つ突き押し片6によって打ち抜く前の打抜き部Pを下側から接触して受け止める第一段位置にある。
【0040】
下型3をさらに上昇させると、図2(b)に示すように、突き押し片6によって打抜き部Pが相対的に押し下げられ、打抜き部Pを介して受け部20が突き押し片6によって相対的に押し下げられる。これにより、受け部20の位置が第一段位置(図2(a)参照)から第二段位置(図2(b)参照)に変化する。こうして、受け部20の位置が第一段位置から第二段位置に変化するように受支体11が回動する間においては、可動被吸着片25が磁石体13に吸着された状態で、受支体11に対し当該受支体11の回動方向(R)に相対変位する。このとき、相対変位する前の状態に戻そうとする磁力が、受支体11における固定被吸着片26(被吸着部11b)と可動被吸着片25との間に作用する。この磁力は、受け部20を押し上げる方向に受支体11を付勢する。これにより、受け部20の位置が第一段位置から第二段位置に変化して、打抜き部Pが突き押し片6によって打ち抜かれる際、突き押し片6から打抜き部Pを介して受け部20に作用する押圧力に対抗する反力が確保される。
【0041】
下型3をさらに上昇させると、図2(c)に示すように、突き押し片6によって打抜き部Pが相対的にさらに押し下げられ、打抜き部Pを介して受け部20が突き押し片6によって相対的にさらに押し下げられる。これにより、受け部20の位置が第二段位置(図2(b)参照)から第三段位置(図2(c)参照)に変化する。こうして、受け部20の位置が第二段位置から第三段位置に変化するように受支体11が回動する間においては、可動被吸着片25が磁石体13に吸着された状態で、受支体11の回動方向(R)に傾動する。受支体11の回動方向(R)に可動被吸着片25が傾動するときには、傾動する前の状態に戻そうとする磁力が、受支体11における固定被吸着片26(被吸着部11b)と可動被吸着片25との間に作用する。この磁力は、受け部20を押し上げる方向に受支体11を付勢する。これにより、受け部20の位置が第二段位置から第三段位置に変化して、打抜き部Pが突き押し片6によって打ち抜かれる際、突き押し片6から打抜き部Pを介して受け部20に作用する押圧力に対抗する反力が確保される。
【0042】
こうして、突き押し片6からの押圧力に対抗する反力が確保され、且つ打抜き部Pが突き押し片6と受け部20とに挟まれた状態で、打抜き部Pが第一段位置(図2(a)参照)から第二段位置(図2(b)参照)に、続いて第二段位置(図2(b)参照)から第三段位置(図2(c)参照)に受け部20と共に押し下げられる。
【0043】
そして、図2(d)に示すように、受け部20の位置が第三段位置(図2(c)参照)よりも下方へと変化するように受支体11が回動し、磁石体13から可動被吸着片25が引き離されると、急速に磁力による吸着力が失われるので、受支体11の回動がある回動角度範囲を過ぎると、受け部20による抜き屑(打抜き部P)を受支する作用力が消滅し、その結果、抜き屑は落下して除去される。
【0044】
こうして、受け部20を3段階で下降させることにより、シート材Sにおける打抜き部Pを抜き屑として除去するのに必要な打抜きストロークが大きくなる場合であっても、打抜き部Pに対し打抜き力を確実に作用させることができ、打抜き前において打抜き部Pをその周りのシート材部分に繋ぎ止めている所要の繋ぎ部jを確実に引き千切ることができ、その後、打抜き部Pを抜き屑として確実に除去することができる。
【0045】
上記の打抜き屑除去動作において、受け部20の位置が図2(a)に示す第一段位置にあるときには、受け部20における水平受け面部20aが水平姿勢となり、この水平姿勢の水平受け面部20aによって打抜き部Pが受け止められる。また、受け部20の位置が図2(b)に示す第二段位置にあるときには、受け部20における傾斜受け面部20bが水平姿勢となり、この水平姿勢の傾斜受け面部20bによって打抜き部が受け止められる。こうして、受け部20の位置が第一段位置及び第二段位置の何れの位置においても、受け部20における水平姿勢の部分によって打抜き部Pが受け止められるので、打抜き部Pに対する打抜き動作を偏ることなく適切に行うことができる。さらに、受け部20の位置が図2(c)に示す第三段位置にあるときには、受け部20における傾斜受け面部20bが受支体11の回動中心から離れるように水平下向きに傾斜する姿勢となる。従って、打ち抜いた打抜き部P(抜き屑)を傾斜受け面部20b上からスムーズに滑り落とすことができ、抜き屑をより確実に除去することができる。
【0046】
本実施形態の打抜き部受支装置10においては、受け部20が図2(a)に示す第一段位置であるときにおける受支体11(受支体主要部11a)の上部が枢支軸21を介して支持体12に回動可能に支持される一方で、受け部11が図2(a)に示す第一段位置であるときにおける受支体11(受支体主要部11a)の下部に可動被吸着片25及び固定被吸着片26が配設されるので、受支体11の回動中心の下方に受支体11の重心位置があることになる。このため、受け部20の位置が図2(c)に示す第三段位置よりも下方へと変化するように受支体が回動した後(図2(d)参照)、受け部20が図2(c)に示す第三段位置、及び図2(b)に示す第二段位置を経て、図2(a)に示す第一段位置に復帰するように受支体11を速やかに逆転させることができる。そして、受支体11の逆転によって可動被吸着片25が磁石体13の磁力の作用範囲内に入れば(図2(c)~図2(b)参照)、磁力の作用も相俟って、受支体11をより速やかに逆転させて受け部の位置を図2(a)に示す第一段位置へと復帰保持させることができる。
【0047】
以上、本発明の打抜き部受支装置について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の打抜き部受支装置は、例えば、箱体を展開した所定形状のブランクを得るための型打抜き加工が施されたシート材における、上型によって打ち抜かれる打抜き部を抜き屑として除去可能に受支する用途において利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
3 上型
10 打抜き部受支装置
11 受支体
12 支持体
13 磁石体
20 受け部
20a 水平受け面部
20b 傾斜受け面部
22 錘部
23 第一係止爪部
24 第二係止爪部
25 可動被吸着片
26 固定被吸着片(被吸着部)
P 打抜き部
S シート材
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-05-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材における、上型によって打ち抜かれる打抜き部を抜き屑として除去可能に受支する打抜き部受支装置であって、
前記打抜き部を受ける受け部を有する受支体と、
前記受け部の位置が第一段位置から当該第一段位置よりも下方の第二段位置及び当該第二段位置よりも下方の第三段位置を経て当該第三段位置よりも下方位置へと変化し得るように前記受支体を回動可能に支持する支持体と、
前記受支体に装着される可動被吸着片と、
前記可動被吸着片と吸着可能に前記支持体に配設される磁石体と、
を備え、
前記受支体は、前記受け部の位置が前記第一段位置であるときに、前記可動被吸着片を介して前記磁石体と吸着可能な被吸着部を含み、
前記可動被吸着片は、前記受け部の位置が前記第一段位置から前記第二段位置に変化するように前記受支体が回動する間において、前記磁石体に面接触で吸着された状態で前記受支体に対し当該受支体の回動方向に相対変位可能であるとともに、前記受け部の位置が前記第二段位置から前記第三段位置へと変化するときに、前記磁石体に吸着された状態で前記受支体の回動方向に傾動可能であり、
前記受け部の位置が前記第三段位置よりも下方へと変化したときに前記磁石体から前記可動被吸着片が引き離されるように構成される打抜き部受支装置。
【請求項2】
前記受け部の位置が前記第一段位置であるときにおける前記受支体の上部が前記支持体に回動可能に支持され、
前記受け部の位置が前記第一段位置であるときにおける前記受支体の下部に前記可動被吸着片が配設される請求項1に記載の打抜き部受支装置。
【請求項3】
前記受支体の上部に錘部が形成される請求項2に記載の打抜き部受支装置。
【請求項4】
前記受け部は、
前記第一段位置において水平方向に延在する水平受け面部と、
前記第一段位置において前記受支体の回動中心に近づくように水平下向きに傾斜して延在するとともに、前記第二段位置において水平姿勢となり、且つ前記第三段位置において前記受支体の回動中心から離れるように水平下向きに傾斜する姿勢となる傾斜受け面部と、
を有する請求項1~3の何れか一項に記載の打抜き部受支装置。
【請求項5】
前記受支体は、
前記受け部の位置が前記第一段位置であるときにおいて、前記可動被吸着片の一端側に対し所定の隙間をあけて形成される第一係止爪部と、前記可動被吸着片の他端側に対し所定の隙間をあけて形成される第二係止爪部とを有し、
前記受け部の位置が前記第二段位置であるときにおいて、前記可動被吸着片の一端側が前記第一係止爪部に係合され、
前記受け部の位置が前記第三段位置であるときにおいて、さらに前記可動被吸着片の他端側が前記第二係止爪部に係合されるように構成される請求項1~3の何れか一項に記載の打抜き部受支装置。