(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168872
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法、非水電解質二次電池用電極の製造方法および非水電解質二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20241128BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241128BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085894
(22)【出願日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】阪後 貴之
(72)【発明者】
【氏名】西出 大輔
(72)【発明者】
【氏名】井上 一彦
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA09
5H050EA10
5H050EA23
5H050GA05
5H050GA12
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
【課題】 電池特性のばらつきが少ない電池を製造することができる非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.45以上であるカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩と、電極活物質とを混合する第1混合工程と、前記第1混合工程により得られた混合物に炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩又はホウ酸塩を混合する第2混合工程とを含む非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.45以上であるカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩と、電極活物質とを混合する第1混合工程と、
前記第1混合工程により得られた混合物に炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩又はホウ酸塩を混合する第2混合工程と
を含む非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法。
【請求項2】
炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩は、少なくともクエン酸リチウム塩を含むことを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法。
【請求項3】
下記条件(I)を満たすことを特徴とする、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法。
条件(I):前記カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩のカルボキシメチル置換度が0.45以上1.0以下である際に、
前記カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩100重量部に対し、前記炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩が1~100重量部の範囲で含まれること。
【請求項4】
下記条件(II)を満たすことを特徴とする、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法。
条件(II):前記カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩のカルボキシメチル置換度が1.0超である際に、
前記前記カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の100重量部に対し、前記炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩が1~200重量部の範囲で含まれること。
【請求項5】
前記ホウ酸塩が、ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸リチウムから選ばれる少なくとも1つを含む請求項1記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法。
【請求項6】
前記ホウ酸塩は、前記カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の固形分量100重量部に対して0.1~20重量部の範囲で含まれる請求項1または5記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法。
【請求項7】
前記カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の、パウダーテスターを用いて測定した分散度が20~60%である請求項1または2記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法。
【請求項8】
前記カルボキシメチル化セルロース又はその塩が、乾燥質量Bの該カルボキシメチルセルロースまたはその塩の0.3質量%水溶液2リットルを調製して-200mmHgの減圧条件にて250メッシュのフィルターですべて濾過し、濾過後の前記フィルター上の残渣の乾燥質量Aを測定した際に、前記乾燥質量Bに対する乾燥質量Aの比率が50ppm未満である、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法。
【請求項9】
前記カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩が機械的な粉砕処理物である、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法。
【請求項10】
前記電極活物質はケイ素系化合物を含む請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法により製造された非水電解質二次電池用電極組成物を用いて電極を形成する工程を含む非水電解質二次電池用電極の製造方法。
【請求項12】
請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法により製造された非水電解質二次電池用電極組成物を用いて非水電解質二次電池を製造する工程を含む非水電解質二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法、非水電解質二次電池用電極の製造方法および非水電解質二次電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器、特にスマートフォン等の携帯電話、タブレット、ノート型パソコンなどの携帯機器が、小型化、軽量化、薄型化、高性能化し、携帯機器の普及が進んでいる。このような携帯機器の利用範囲の多様化に伴い、これらを駆動させる電池が非常に重要な部品となっている。電池のうち、高いエネルギー密度を有し高容量である、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池が広く利用されている。
【0003】
通常、非水電解質二次電池は以下のようにして作製される。すなわち、リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な炭素材料などからなる負極活物質を含有する負極と、リチウム含有遷移金属複合酸化物(例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4など)からなる正極活物質を含有する正極が、集電基材(集電体)としての金属箔の表面にそれぞれシート状に形成され、シート状正極およびシート状負極を得る。そしてシート状正極及びシート状負極が、同じくシート状に形成されたセパレータを介して、巻回あるいは積層され、ケース内に収納される。シート状正極およびシート状負極は、集電基材(集電体)となる金属箔と、その表面に形成される、活物質を含む合剤層を備える構造であり、負極活物質スラリー(あるいはペースト)または正極活物質スラリー(あるいはペースト)が集電材上に塗布、乾燥され形成される。
【0004】
負極活物質スラリー(ペースト)は、リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な炭素材料などからなる負極活物質のほかに結合剤(バインダー)を含む。結合剤として、スチレン/ブタジエンラテックス(SBR)を主成分とする負極用の結合剤が特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1によると、水溶性増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースを水に溶解させて水溶液を調製し、これにSBRと負極活物質を混合してスラリーが製造される。当該スラリーは塗工液として基材上に塗布、乾燥されることによって、シート状負極が形成される。
【0006】
一方、非水電解質二次電池の正極の製造では、溶剤には従来N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の有機系溶剤が用いられてきた。しかし、取り扱いに要するコストの低減や排出時の環境負荷への影響から、近年、溶剤として水が使用されてきている。
【0007】
正極活物質スラリー(ペースト)は、正極活物質としてのリチウム含有遷移金属複合酸化物(例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4など)、導電材としてのカーボン等のほかに、結合剤を含む。結合剤としては、カルボキシメチルセルロースなどの、1%水溶液における粘度が4000mPa・s以上のセルロースが特許文献2に記載されている。特許文献2には、カルボキシメチルセルロースを、導電材やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などとともに純水に投入し、活物質ペーストを調製することが記載されている。
【0008】
しかし、特許文献1及び特許文献2ともに、結合剤として用いられるカルボキシメチルセルロースの未溶解物がスラリー中に残存し、スラリーを塗布した集電基材上に筋状の欠陥(ストリーク)を生じたり、スラリーを集電基材上に塗布した際のフィルム強度が弱く、耐久性に劣る懸念があり、その結果、良好な電池特性を得ることができない傾向にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5-74461号公報
【特許文献2】特開2003-157847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明者らが電池特性の向上を図るために検討を行ったところ、特定の物質を添加することにより電池特性が向上したが、電池特性(特に容量維持率)のばらつきが大きかった。
【0011】
本発明の目的は、電池特性のばらつきが少ない電池を製造することができる非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法、また、この非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法により得られた非水電解質二次電池用電極組成物を用いた非水電解質二次電池用電極の製造方法および非水電解質二次電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の(1)~(12)により上記を解決できることを見出した。
すなわち、本発明によれば、
(1) 無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.45以上であるカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩と、電極活物質とを混合する第1混合工程と、前記第1混合工程により得られた混合物に炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩又はホウ酸塩を混合する第2混合工程とを含む非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法、
(2) 炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩は、少なくともクエン酸リチウム塩を含むことを特徴とする(1)記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法、
(3) 下記条件(I)を満たすことを特徴とする、(1)または(2)に記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法;
条件(I):前記カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩のカルボキシメチル置換度が0.45以上1.0以下である際に、前記カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩100重量部に対し、前記炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩が1~100重量部の範囲で含まれること、
(4) 下記条件(II)を満たすことを特徴とする、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法;
条件(II):前記カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩のカルボキシメチル置換度が1.0超である際に、前記前記カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の100重量部に対し、前記炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩が1~200重量部の範囲で含まれること、
(5) 前記ホウ酸塩が、ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸リチウムから選ばれる少なくとも1つを含む(1)記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法、
(6) 前記ホウ酸塩は、前記カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の固形分量100重量部に対して0.1~20重量部の範囲で含まれる(1)または(5)記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法、
(7) 前記カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の、パウダーテスターを用いて測定した分散度が20~60%である(1)または(2)記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法、
(8) 前記カルボキシメチル化セルロース又はその塩が、乾燥質量Bの該カルボキシメチルセルロースまたはその塩の0.3質量%水溶液2リットルを調製して-200mmHgの減圧条件にて250メッシュのフィルターですべて濾過し、濾過後の前記フィルター上の残渣の乾燥質量Aを測定した際に、前記乾燥質量Bに対する乾燥質量Aの比率が50ppm未満である、(1)または(2)に記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法、
(9) 前記カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩が機械的な粉砕処理物である、(1)または(2)に記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法、
(10) 前記電極活物質はケイ素系化合物を含む(1)または(2)に記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法
(11) (1)または(2)に記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法により製造された非水電解質二次電池用電極組成物を用いて電極を形成する工程を含む非水電解質二次電池用電極の製造方法、
(12) (1)または(2)に記載の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法により製造された非水電解質二次電池用電極組成物を用いて非水電解質二次電池を製造する工程を含む非水電解質二次電池の製造方法
が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電池特性のばらつきが少ない電池を製造することができる非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法、また、この非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法により得られた非水電解質二次電池用電極組成物を用いた非水電解質二次電池用電極の製造方法および非水電解質二次電池の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の非水電解質二次電池用電極組成物の製造方法について説明する。本発明の非水電解質二次電池用電極組成物(以下、「電極組成物」ということがある。)の製造方法は、無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.45以上であるカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩と、電極活物質とを混合する第1混合工程と、前記第1混合工程により得られた混合物に炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩又はホウ酸塩を混合する第2混合工程とを含む。
【0015】
(第1混合工程)
本発明の電極組成物の製造方法の第1混合工程においては、無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.45以上であるカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩と、電極活物質とを混合する。混合方法としては特に限定されないが、公知の装置、公知の手法を用いることができる。
【0016】
<カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩>
本発明において用いるカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩は、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基がカルボキシメチルエーテル基に置換された構造を持つ。カルボキシメチルセルロースは、塩の形態であってもよい。カルボキシメチルセルロースの塩としては、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム塩などの金属塩などを挙げ得る。
【0017】
本発明においてセルロースとは、D-グルコピラノース(単に「グルコース残基」、「無水グルコース」とも言う。)がβ,1-4結合で連なった構造の多糖を意味する。セルロースは、一般に起源、製法等から、天然セルロース、再生セルロース、微細セルロース、非結晶領域を除いた微結晶セルロース等に分類される。
【0018】
天然セルロースとしては、晒パルプまたは未晒パルプ(晒木材パルプまたは未晒木材パルプ);リンター、精製リンター;酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース、等が例示される。晒パルプ又は未晒パルプの原料は特に限定されず、例えば、木材、木綿、わら、竹等が挙げられる。また、晒パルプ又は未晒パルプの製造方法も特に限定されず、機械的方法、化学的方法、あるいはその中間で二つを組み合わせた方法でもよい。製造方法により分類される晒パルプまたは未晒パルプとしては例えば、メカニカルパルプ、ケミカルパルプ、砕木パルプ、亜硫酸パルプ、クラフトパルプ等が挙げられる。さらに、製紙用パルプの他に溶解パルプを用いてもよい。溶解パルプとは、化学的に精製されたパルプであり、主として薬品に溶解して使用され、人造繊維、セロハンなどの主原料となる。
【0019】
再生セルロースとしては、セルロースを銅アンモニア溶液、セルロースザンテート溶液、モルフォリン誘導体など何らかの溶媒に溶解し、改めて紡糸されたものが例示される。
【0020】
微細セルロースとしては、上記天然セルロースや再生セルロースをはじめとする、セルロース系素材を、解重合処理(例えば、酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル処理等)して得られるものや、前記セルロース系素材を、機械的に処理して得られるものが例示される。
【0021】
本発明のカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩は、その無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度が、0.45以上であることが重要であり、0.5以上であることがより好ましい。カルボキシメチル置換度が0.45未満であると、水への溶解が十分でなくなるおそれがある。
【0022】
また、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度の上限は、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
【0023】
本発明において無水グルコース単位とは、セルロースを構成する個々の無水グルコース(グルコース残基)を意味する。また、カルボキシメチル置換度(エーテル化度ともいう)とは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基(-OH)のうちカルボキシメチルエーテル基(-OCH2COOH)に置換されているものの割合を示す。なお、カルボキシメチル置換度はDSまたはCM-DSと略すことがある。
【0024】
なお当該カルボキシメチル置換度は、試料中のカルボキシメチルセルロースを中和するのに必要な水酸化ナトリウム等の塩基の量を測定して確認することができる。この場合、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩のカルボキシメチルエーテル基が塩の形態である場合には、測定前に予めカルボキシメチルセルロースに変換しておく。測定の際には、塩基、酸を用いた逆滴定、フェノールフタレイン等の指示薬を適宜組み合わせることができる。
【0025】
なお、カルボキシメチル基の置換度の測定方法は以下の通りである:
試料約2.0gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振盪して、カルボキシメチルセルロースの塩(CMC)をH-CMC(水素型カルボキシメチルセルロース)に変換する。その絶乾H-CMCを1.5~2.0g精秤し、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。80%メタノール15mLでH-CMCを湿潤し、0.1N-NaOHを100mL加え、室温で3時間振盪する。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N-H2SO4で過剰のNaOHを逆滴定し、次式によってカルボキシメチル置換度(DS値)を算出する。
A=[(100×F’-0.1N-H2SO4(mL)×F)×0.1]/(H-CMCの絶乾質量(g))
カルボキシメチル置換度=0.162×A/(1-0.058×A)
F’:0.1N-H2SO4のファクター
F:0.1N-NaOHのファクター
【0026】
本発明において、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩は、25℃でのB型粘度計(30rpm)で測定された1質量%水溶液の粘度が1,000~20,000mPa・sのものが好ましく、1,500~15,000mPa・sのものがより好ましく、2,000~10,000mPa・sのものがさらにより好ましい。粘度が上記範囲にあることで沈降しにくく、塗工性も良好な電極スラリーを作製することができるため非水電解質二次電池に適する。
【0027】
なお、粘度の測定方法は以下の通りである:
カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩を、1000mL容ガラスビーカーに測りとり、蒸留水900mLに分散し、固形分1%(w/v)となるように水分散体を調製する。水分散体を25℃で撹拌機を用いて600rpmで3時間撹拌する。その後、JIS-Z-8803の方法に準じて、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、回転数30rpmで3分後の粘度を測定する。
【0028】
またカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩は、0.3質量%の該カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の水溶液2リットルを-200mmHgの減圧条件にて250メッシュのフィルターですべて濾過した際のフィルター上の残渣の乾燥質量を質量Mとし、前記水溶液に溶解したカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の質量を質量mとした場合に、質量mに対する質量Mの比率が50ppm未満であることが好ましい。50ppm以上であると、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩を用いて電極を形成した際に、電極にストリークやピンホールなどの外観不良が発生し、電池の品質が低下するおそれがある。前記質量mに対する前記質量Mの比率の下限は特に限定されず、少なければ少ないほどよい。
【0029】
(分散度)
本発明のカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩は、パウダーテスターを用いて測定した分散度が20~60%であり、好ましくは25~55%であり、より好ましくは30~50%である。分散度が上記範囲内であると、CMCを負極組成物中のバインダーや分散剤として用いた際に良好な分散性を示すため、電気抵抗値が向上する。
【0030】
一方、分散度が大きすぎると粉舞いが多くなり、所定量のカルボキシメチルセルロースを溶解することが出来ず、負極中でのバインダーや分散剤としての機能が低下するため、電気抵抗が高くなるという問題があり、小さすぎると他の材料と上手く混合できず、電気抵抗が高くなるという問題がある。
【0031】
ここで分散度の測定方法は、粉体性試験装置(パウダテスタPT-X(ホソカワミクロン社製))を用い、PT-Xの分散ユニットに10gのサンプルを仕込んで落下させた際、ウォッチグラス上に落下した粉体量から分散度を次式により算出した。
分散度(%)=(10(g)-ウォッチグラス上に落下した粉体量(g))/10(g)
【0032】
本発明において、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の製法は限定されず、公知のカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の製法を適用することができる。即ち、原料であるセルロースをマーセル化剤(アルカリ)で処理してマーセル化セルロース(アルカリセルロース)を調製した後に、エーテル化剤を添加してエーテル化反応させることで本発明におけるカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩を製造することができる。
【0033】
原料のセルロースとしては、上述のセルロースであれば特に制限なく用いることができるが、セルロース純度が高いものが好ましく、特に、溶解パルプ、リンターを用いることが好ましい。これらを用いることにより、純度の高いカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩を得ることができる。
【0034】
マーセル化剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属塩等を使用することができる。エーテル化剤としてはモノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ソーダ等を使用することができる。
【0035】
水溶性の一般的なカルボキシメチルセルロースの製法の場合のマーセル化剤とエーテル化剤のモル比は、エーテル化剤としてモノクロロ酢酸を使用する場合では2.00~2.45が一般的に採用される。その理由は、2.00未満であるとエーテル化反応が不十分に行われない可能性があるため、未反応のモノクロロ酢酸が残って無駄が生じる可能性があること、及び2.45を超えると過剰のマーセル化剤とモノクロロ酢酸による副反応が進行してグリコール酸アルカリ金属塩が生成するおそれがあるため、不経済となる可能性があることにある。
【0036】
本発明において、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩は、市販のものをそのまま、或いは必要に応じて処理してから用いてもよい。市販品としては、例えば、日本製紙(株)製の商品名「サンローズ」(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩)が挙げられる。
【0037】
[粉砕処理]
本発明において、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩は、上述したようなカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩をそのまま用いてもよいが、さらに粉砕処理が施されたもの(粉砕処理物)であってもよい。粉砕処理は、通常は機械を用いて行われる機械的粉砕処理である。カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の粉砕処理の方法としては、粉体の状態で処理する乾式粉砕法と、液体に分散、あるいは溶解させた状態で処理する湿式粉砕法との両方法が例示される。本発明においてはこれらのいずれを選択してもよい。
【0038】
カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の水溶液を調製すると、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩に由来するゲル粒子が未溶解物として、水溶液中に残存する。カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩を機械的に乾式あるいは湿式粉砕処理することで、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の機械的な粉砕処理物の水溶液においては、上記のゲル粒子が微細化される。その結果、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の機械的な粉砕処理物の水溶液を用いて電極を形成すると、電極の表面に発生するスジ状の欠陥(ストリーク)や剥がれ、ピンホール等の原因となる粗大な未溶解物を、さらに抑制することができると考えられる。
本発明で機械的な粉砕処理のために使用可能な粉砕装置としては以下の様な乾式粉砕機および湿式粉砕機が挙げられる。
【0039】
乾式粉砕機は、カッティング式ミル、衝撃式ミル、気流式ミル、媒体ミルが例示される。これらは単独あるいは併用して、さらには同機種で数段処理することができるが、気流式ミルが好ましい。
【0040】
カッティング式ミルとしては、メッシュミル((株)ホーライ製)、アトムズ((株)山本百馬製作所製)、ナイフミル(パルマン社製)、グラニュレータ(ヘルボルト製)、ロータリーカッターミル((株)奈良機械製作所製)、等が例示される。
【0041】
衝撃式ミルとしては、パルペライザ(ホソカワミクロン(株)製)、ファインイパクトミル(ホソカワミクロン(株)製)、スーパーミクロンミル(ホソカワミクロン(株)製)、サンプルミル((株)セイシン製)、バンタムミル((株)セイシン製)、アトマイザー((株)セイシン製)、トルネードミル(日機装(株))、ターボミル(ターボ工業(株))、ベベルインパクター(相川鉄工(株))等が例示される。
【0042】
気流式ミルとしては、CGS型ジェットミル(三井鉱山(株)製)、ジェットミル(三庄インダストリー(株)製)、エバラジェットマイクロナイザ((株)荏原製作所製)、セレンミラー(増幸産業(株)製)、超音速ジェットミル(日本ニューマチック工業(株)製)等が例示される。
媒体ミルとしては、振動ボールミル等が例示される。
【0043】
湿式粉砕機としては、マスコロイダー(増幸産業(株)製)、高圧ホモジナイザー(三丸機械工業(株)製)、媒体ミルが例示される。媒体ミルとしては、ビーズミル(アイメックス(株)製)等を例示できる。
【0044】
[カルボキシメチルセルロースの粒径]
本発明において、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の粒径は、小さい方が好ましい。すなわち、メタノールを分散媒としてレーザー回折・散乱式粒度分布計で測定される体積累積100%粒子径の値(本明細書においては、以降「最大粒子径」ということがある)が100μm未満であることが望ましく、50μm未満であることがより望ましく、45μm未満であることがさらに望ましい。カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の最大粒子径が大きすぎるとカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の水溶液中の未溶解物が増加する傾向がある。
【0045】
また、本発明においてカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩は、造粒処理が施されていてもよい。これにより、取り扱いが容易となる。造粒処理を施すことによりカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の最大粒子径は上記の値以上となることがあるが、造粒処理前のカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の最大粒子径は上記の値未満であることが好ましい。
なお、最大粒子径の下限は特には限定されない。小さければ小さいほど好ましく、0を超えていればよい。
【0046】
カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の、メタノールを分散媒としてレーザー回折・散乱式粒度分布計で測定される体積累積50%粒子径(以下、平均粒子径という。)は、通常は30μm以下であり、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。また、平均粒子径の下限は特に限定されないが、通常は5μm以上であり、10μm以上であることが好ましく、12μm以上であることがより好ましい。
【0047】
本発明においては、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩を粒子径の大きさ(好ましくは最大粒子径の大きさ)に基づき分級し得る。分級とは、分級の対象である粒子を、ある粒子径の大きさ以上のものとそれ以下のものとを篩い分けする処理を意味する。
【0048】
分級は、最大粒子径が上記の値未満であるか上記の値以上であるかを基準として行うことが好ましい。これにより、最大粒子径が上記の値未満のカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩を選択的に収集することができる。
【0049】
カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩として、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の粉砕処理物を用いる場合、上記の分級の時期は特に限定されず、粉砕処理の途中に設けてもよいし、粉砕処理の終了後に設けてもよい。
【0050】
分級の方法は、公知の方法、例えば乾式分級機、湿式分級機を用いる方法を用いればよい。乾式分級機としては、サイクロン式分級機、DSセパレーター、ターボクラシフィア、ミクロセパレータ、エアーセパレータ等が挙げられる。一方、湿式分級機としては、液体サイクロン方式の分級機、遠心沈降機、ハイドロッシレーター等が挙げられる。このうち乾式分級機が好ましく、サイクロン式分級機がより好ましい。
【0051】
<電極活物質>
電極活物質としては、負極活物質および正極活物質が挙げられる。負極活物質としては、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、コ-クス、炭素繊維のような黒鉛質材料;リチウムと合金を形成することが可能な元素、すなわち例えばAl、Si、Sn、Ag、Bi、Mg、Zn、In、Ge、Pb、Tiなどの元素を含む化合物;前記リチウムと合金を形成することが可能な元素及び前記化合物と、炭素及び/又は前記黒鉛質材料との複合化物;リチウムを含む窒化物が使用できる。このうち黒鉛質材料及び又はケイ素系化合物が好ましく、黒鉛及び又はケイ素系化合物を含むことがより好ましく、ケイ素系化合物を少なくとも含むことが好ましい。
【0052】
正極活物質としては、LiMexOy(MeはNi、Co、Mnの少なくとも1種を含む遷移金属を意味する。x、yは任意の数を意味する。)系の正極活物質が好ましい。LiMexOy系の正極活物質は、特に限定されるものではないが、LiMn2O4系、LiCoO2系、LiNiO2系の正極活物質が好ましい。LiMn2O4系、LiCoO2系、LiNiO2系の正極活物質としては、たとえば、LiMnO2、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、を主骨格として、各種金属元素が置換した化合物が例示される。LiMn2O4系、LiCoO2系、LiNiO2系の正極活物質は、電子とリチウムイオンの拡散性能に優れるなど正極活物質としての性能に優れているため、高い充放電効率と良好なサイクル特性とを有するリチウムイオン二次電池が得られる。このうちLiCoO2系の正極活物質が好ましく、LiCoO2がより好ましい。一方、材料コストの低さからは、LiMn2O4系の正極活物質を用いることが好ましい。
【0053】
さらに、電極活物質に加え、導電材を用いることが好ましい。電極組成物が導電材を有することで、製造される電極の特性が向上する。また、導電材は、電極の電気伝導性を確保し得る。導電材としては、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質の1種または2種以上を混合したものが挙げられる。このうちカーボンブラックが好ましい。導電材を添加するタイミングは特に限定されないが、第1混合工程にて混合することが好ましい。
【0054】
(第2混合工程)
本発明の電極組成物の製造方法の第2混合工程においては、前記第1混合工程により得られた混合物に炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩又はホウ酸塩を混合する。この順序で炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩又はホウ酸塩を混合することにより、得られる非水電解質二次電池の容量維持率等の電池特性のばらつきを抑えることができる。第2混合工程における混合方法は特に限定されないが、公知の装置、公知の手法を用いることができる。
【0055】
<炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩又はホウ酸塩>
本発明においては、炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩又はホウ酸塩を第2混合工程において混合することが重要である。
【0056】
本発明における炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩とは、炭素数が6以下の脂肪族ヒドロキシ酸や芳香族ヒドロキシ酸、飽和脂肪酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸などのリチウム塩を表し、炭素数6以下の脂肪族ヒドロキシ酸のリチウム塩がより好ましい。そのような脂肪族ヒドロキシ酸とは、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、コハク酸などのリチウム塩を挙げることができ、さらにその中でもクエン酸リチウム塩であることが好ましい。
【0057】
そのような炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩を、カルボキシメチルセルロースとともに電極用結合剤として用いると、炭素数6以下の飽和カルボン酸中のヒドロキシ基またはカルボキシ基は、カルボキシメチルセルロースのカルボキシ基と水素結合を介して架橋構造体を形成する。この架橋構造体ではカルボキシメチルセルロース単体よりもヒドロキシ基及びカルボキシル基が分子中に多く含まれているため、負極スラリー中で分散するSiOx等の負極材と水素結合を介しての反応性が高くなる。その結果、SiOx等の負極材との表面に安定的な酸化被膜を形成でき、電解液の分解が抑制され、電極表面上でSEI膜(Solid Electrolyte. Interface)が過度な厚さにならないことで電池特性向上効果へとつながると推測される。
【0058】
ここで炭素数6以下の飽和カルボン酸がリチウム塩であることにより、飽和カルボン酸は電極組成物に添加されたときに、中性又は弱アルカリ性を示すことができる。飽和カルボン酸がリチウム塩の状態ではない場合、水溶液となる電極組成物は強い酸性となるために、電極組成物の粘度の低下や、極性の偏在が起こるために集電体に電極組成物を塗布する際にムラができてしまうため好ましくない。さらに炭素数6以下の飽和カルボン酸がリチウム塩であることにより、リチウム系活物質を用いるさいに不純物の混入が少なくなるため、電気的な性能を発揮しやすくなる。
【0059】
また、本発明におけるホウ酸塩とは、ホウ酸カリウム塩、ホウ酸ナトリウム塩、ホウ酸カルシウム塩、ホウ酸リチウム塩などを挙げることができる。これらのうち、ホウ酸ナトリウム塩、ホウ酸リチウム塩が好ましい。
【0060】
そのようなホウ酸塩を、カルボキシメチルセルロースとともに電極用結合剤として用いると、ホウ酸塩中のヒドロキシ基は、カルボキシメチルセルロースのカルボキシ基と水素結合を介して架橋構造体を形成する。この架橋構造体ではカルボキシメチルセルロース単体よりも結合剤としての強度が優れるため、充放電中に生じる活物質の膨張収縮による塗工層の構造破壊を抑制でき、電池特性向上効果へとつながると推測される。
【0061】
また、ホウ酸リチウム塩を用いる場合、ホウ酸は電極用結合剤に添加されたときに、中性又は弱アルカリ性を示すことができる。ホウ酸がリチウム塩の状態ではない場合、水溶液となる電極組成物は強い酸性となるために、電極組成物の粘度の低下や、極性の偏在が起こるために集電体に電極組成物を塗布する際にムラができてしまうため好ましくない。さらにホウ酸がリチウム塩であることにより、リチウム系活物質を用いる際に不純物の混入が少なくなるため、電気的な性能を発揮しやすくなる。
炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩を用いる場合、下記条件(I)又は条件(II)を満たすことが好ましい。
【0062】
条件(I):カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩のカルボキシメチル置換度が0.45以上1.0以下である際に、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩100重量部に対し、炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩が1~100重量部の範囲で含まれること。
【0063】
条件(II):カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩のカルボキシメチル置換度が1.0超である際に、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩100重量部に対し、炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩が1~200重量部の範囲で含まれること。
【0064】
カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩のカルボキシメチル置換度が高くなると、カルボキシメチルセルロース中の架橋点が多くなるために、炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩の添加量が多くなっても凝集などは引き起こさない。
【0065】
よって、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩がカルボキシメチル置換度0.45以上1.0以下のカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩である場合、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩100重量部に対して、炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩が1~100重量部の範囲で含まれることが好ましく、炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩が1~80重量部の範囲で含まれることがより好ましく、炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩が10~50重量部の範囲で含まれることがさらに好ましい。
【0066】
また、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩がカルボキシメチル置換度1.0超のカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩である場合、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩100重量部に対して、炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩が1~200重量部の範囲で含まれることが好ましく、炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩が1~180重量部の範囲で含まれることがより好ましく、炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩が10~150重量部の範囲で含まれることがさらに好ましく、炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩が100重量部超150重量部以下含まれることが特に好ましい。
【0067】
配合比が上記範囲であると、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩と炭素数6以下の飽和カルボン酸リチウム塩との架橋構造体の形成がより効果的に発生する推測される。
【0068】
また、ホウ酸塩を用いる場合、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩に対し、ホウ酸塩が、0.1~20質量%の範囲で含まれることが好ましく、0.5~15質量%の範囲がより好ましく、1~10質量%の範囲がさらに好ましい。配合比が本範囲であると、前述するカルボキシメチルセルロースとホウ酸塩との架橋構造体の形成がより効果的に発生すると推測される。
【0069】
本発明において、電極組成物中のカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の含有量は、電極組成物の全体に対して、好ましくは0.1~4.0質量%である。
【0070】
電極組成物中の活物質の含有量は、通常は90~99質量%、好ましくは91~99質量%、より好ましくは92~99質量%である。
【0071】
また、電極組成物には、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の水溶液以外の結合剤(以下、「その他の結合剤」ということがある。)が含まれ得る。負極用の電極組成物の場合の結合剤としては、合成ゴム系結合剤が例示される。合成ゴム系結合剤としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエンゴム、メチルメタクリレートブタジエンゴム、クロロプレンゴム、カルボキシ変性スチレンブタジエンゴム及びこれら合成ゴムのラテックスよりなる群から選択された1種以上が使用できる。このうち、スチレンブタジエンゴム(SBR)が好ましい。
【0072】
ここで、SBRを用いる場合には、SBRの平均粒子径(D50)が50~300nmであることが好ましく、50~200nmであることがより好ましい。SBRの平均粒子径(D50)が大きすぎるとSBRが活物質に均一に付着せず、バインダー機能が低下するため、電気抵抗が高くなるという問題があり、小さすぎるとSRBが活物質を覆ってしまい、電気抵抗が高くなってしまうという問題がある。
【0073】
また、SBRのガラス転移温度(Tg)は、-50℃~50℃であることが好ましい。SBRが上記範囲内であると、本発明のカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩とよく混ざり合い、かつ負極層とした際に適切な柔軟性を有するため、電気抵抗が高くなりにくい。
【0074】
また、正極用の電極組成物の場合の結合剤としては、前記負極用の結合剤として挙げた合成ゴム系結合剤のほか、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が例示され、このうちポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。その他の結合剤を添加するタイミングは、特に限定されないが、第2混合工程の後に添加することが好ましい。
【0075】
電極組成物中のその他の結合剤の含有量は、通常は1~10質量%、好ましくは1~6質量%、より好ましくは1~2質量%である。
【0076】
電極組成物の性状も特に限定されない。例えば、液状、ペースト状、スラリー状などが挙げられ、いずれであってもよい。
【0077】
本発明の製造方法により製造される非水電解質二次電池用電極組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の電極組成物を構成する成分を添加することもできる。そのような添加成分としては、例えば水溶液中で陽イオン化する無機塩などを挙げることができる。陽イオンが混在することで、カルボキシメチルセルロースの架橋構造が補強されるため電気特性に優れた効果を発揮することができる。そのような陽イオンとしては、1価、2価、3価などの陽イオンを適宜使用することができ、具体的にはFeイオン等を含むものが好ましい。その他の電極組成物を構成する成分を添加するタイミングは、本発明の効果を阻害しない限り、特に限定されない。
【0078】
電極組成物は、非水電解質二次電池のための電極の製造に用いられる。非水電解質二次電池用の電極の製造は、前記電極組成物を集電基材(集電体)上に積層する方法によればよい。積層の方法としては例えば、ブレード塗工、バー塗工、ダイ塗工が挙げられ、ブレード塗工が好ましい。例えばブレード塗工の場合には、ドクターブレードなどの塗工装置を用いて電極組成物を集電基材上にキャスティングする方法が例示される。また、積層の方法は上記具体例に限定されず、バックアップロールに巻回して走行する集電基材上に、スロットノズルを有するエクストルージョン型注液器より前記電極組成物を吐出させ塗布する方法も例示される。ブレード塗工においては、キャスティング後さらに必要に応じて加熱(温度は例えば80~120℃、加熱時間は例えば4~12時間)などによる乾燥、ロールプレスなどによる加圧を行い得る。
集電基材としては、構成された電池において致命的な化学変化を起こさない電気伝導体であれば何れも使用可能である。
【0079】
負極用の集電基材としては、ステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、炭素、銅や前記ステンレス鋼の表面にカ-ボン、ニッケル、チタンまたは銀を付着処理させたもの等が利用できる。これらのうち、銅または銅合金が好ましいが、銅が最も好ましい。
【0080】
正極用の集電基材の材料としては、たとえば、アルミニウム、ステンレスなどの金属が例示され、アルミニウムが好ましい。集電基材の形状としては、網、パンチドメタル、フォームメタル、板状に加工された箔などを用いることができ、板状に加工された箔が好ましい。
【0081】
電極組成物により形成された非水電解質二次電池用電極の形状は特に限定されないが、通常はシート状である。シート状の極板の場合の厚さ(集電基材部分を除く、電極組成物から形成される合剤層の厚さ)は、組成物の組成や製造条件などにもより適宜選択するため一義的に規定することは困難であるが、通常は30~150μmである。
【0082】
前記組成物により形成される電極は非水電解質二次電池の電極として用いられる。すなわち本発明は、前記組成物により形成される電極を備える、また、この電極を用いて非水電解質二次電池を製造することができる。非水電解質二次電池は、正電極及び負電極が交互に、セパレータを介して積層され、多数回巻回された構造を取りうる。前記セパレータは通常、非水電解質で含浸される。
【0083】
この負電極および/または正電極として、前記した電極組成物により形成された負電極および/または正電極が用いられうる。かかる非水電解質二次電池は、溶解性に優れるカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩が用いられ、フィルターによる濾過などの工程を省略できるので生産性に優れると共に、初期不可逆容量が顕著に改善され、高い電池特性を発揮しうるものである。
【実施例0084】
以下、本発明の実施の形態を実施例により説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0085】
本実施例および比較例において、カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩についての各指標の測定は以下の方法による。
【0086】
<カルボキシメチル置換度(CM-DS)の測定方法>
カルボキシメチルセルロース粉砕処理物の試料約2.0gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れた。メタノール(メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液)100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(CMC塩)をH-CMC(カルボキシメチルセルロース)にした。絶乾したH-CMCを1.5~2.0g精秤し、300mL共栓付き三角フラスコに入れた。80%メタノール15mLでH-CMCを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうした。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定した。CM-DSを、次式1によって算出した。
(式1)
A=[(100×F-(0.1NのH2SO4(mL))×F’)×0.1]/(H-CMCの絶乾重量(g))
カルボキシメチル置換度(CM-DS)=0.162×A/(1-0.058×A)
A:1gのH-CMCの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F’:0.1NのH2SO4のファクター
F:0.1NのNaOHのファクター
【0087】
<粘度>
カルボキシメチル化セルロース又はその塩を、1000mL容ガラスビーカーに測りとり、蒸留水900mLに分散し、固形分1%(w/v)となるように水分散体を調製した。水分散体を25℃で撹拌機を用いて600rpmで3時間撹拌した。その後、JIS-Z-8803の方法に準じて、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、No.1ローター/回転数30rpmで3分後の粘度を測定した。
【0088】
<分散度>
実施例および比較例で用いたカルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の分散度を、パウダーテスター(パウダテスタPT-X、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて測定した。具体的には、PT-Xの分散ユニットに10gのサンプルを仕込んで落下させた際、ウォッチグラス上に落下した粉体量から分散度を次式により算出した。
分散度(%)=(10(g)-ウォッチグラス上に落下した粉体量(g))/10(g)
【0089】
<水溶液に溶解させたカルボキシメチルセルロースの乾燥質量に対する濾過残渣の質量の質量比の測定>
カルボキシメチルセルロースおよび/又はその塩の0.3質量%(カルボキシメチルメチルセルロース又はその塩の乾燥質量を基準とした質量%)水溶液2リットルを調製した。この水溶液2リットルを-200mmHgの減圧条件にて、濾過器(「セパロート」桐山製作所製)を用いて、250メッシュのフィルター(ステンレス製、目開き63μm)にて濾過した。250メッシュのフィルターに残存した残渣を、温度105℃で、16時間送風乾燥させた後、乾燥した残渣の質量を測定し、カルボキシメチルセルロース水溶液中のカルボキシメチルセルロースの質量に対する質量パーセント(ppm)で表示した。
また、実施例および比較例において電池の評価は以下のように行った。
【0090】
<電池評価>
(放電容量(充放電レート試験))
実施例及び比較例で得られたコイン型非水電解質二次電池の充放電レート試験は株式会社ナガノのBTS2004を用い、25℃の恒温槽にて、コイン型非水電解質二次電池を用いて、充電処理-放電処理の順で行う充放電を1サイクルとして、52サイクルを実施した。なお、充電処理の条件としては、すべてのサイクルで、定電流定電圧(CC-CV)方式(CC電流0.2C、CV電圧4.2V、終止電流0.02C)とした。
【0091】
放電処理の条件としては、終止電圧を3.0Vに設定した。最初の1サイクルは、放電処理の定電流を0.2Cで行い、放電後に1サイクル後の放電容量(mAh/g)を計測した。
その後の52サイクル目までは、下記の通り放電処理の定電流を設定し、各サイクルの放電後に放電容量(mAh/g)の計測を行った。
[各サイクルにおける放電処理の定電流]
2~10サイクル :放電処理の定電流0.2C
11~20サイクル:放電処理の定電流1C
21サイクル :放電処理の定電流0.2C
22~31サイクル:放電処理の定電流2C
32サイクル :放電処理の定電流0.2C
33~42サイクル:放電処理の定電流3C
43~52サイクル:放電処理の定電流0.2C
【0092】
(容量維持率)
容量維持率は、前述される各サイクル試験での放電容量(mAh/g)から、
「容量維持率=1サイクル後の放電容量(mAh/g)/52サイクル後の放電容量(mAh/g)×100」
の式より算出した。
また、実施例および比較例にて製造したコイン型非水電解質二次電池の容量維持率について、平均値、標準偏差及び変動係数を求めた。
【0093】
<CMCの作製>
実施例および比較例にて用いるCMCは以下の製造例1および2により作製した。
(製造例1)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、イソプロピルアルコール2720gとモノクロロ酢酸Na170gと水酸化ナトリウム58gを水480gに溶解したものとを加え、リンターパルプを30℃、60分間乾燥した際の乾燥重量で160g仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。反応終了後、酢酸でpH7程度になるよう中和し、脱液、乾燥、粉砕して、カルボキシメチル置換度0.70であり、25℃でのB型粘度計で測定された1質量%水溶液の粘度が7,900mPa・s、水溶液に溶解させたカルボキシメチルセルロースの乾燥質量に対する濾過残渣が48ppmである、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(以下、「CMC1」ということがある。)を得た。また、CMC1の分散度は、36.1%であった。
【0094】
(製造例2)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、イソプロピルアルコール1000gとモノクロロ酢酸Na240gと水酸化ナトリウム83gを水120gに溶解したものとを加え、リンターパルプを30℃、60分間乾燥した際の乾燥重量で160g仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。反応終了後、酢酸でpH7程度になるよう中和し、脱液、乾燥、粉砕して、カルボキシメチル置換度1.34であり、25℃でのB型粘度計で測定された1質量%水溶液の粘度が4,220mPa・s、水溶液に溶解させたカルボキシメチルセルロースの乾燥質量に対する濾過残渣が46ppmである、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(以下、「CMC2」ということがある。)を得た。また、CMC2の分散度は、16.3%であった。
【0095】
<電極組成物の作製>
実施例および比較例においては以下の方法1または方法2により電極組成物の作製を行った。
【0096】
(方法1)
方法1では、以下の手順(1)~(4)を順に行うことにより、電極組成物を作製した。
(1) クエン酸三リチウム(富士フィルム和光純薬株式会社製;以下、「クエン酸Li」ということがある。)の固形分濃度が1%かつCMCの固形分濃度が2%の電極用結合剤1を調製した。
(2) 負極活物質としてのSiOx 100部に対して、アセチレンブラック(Stream Chemical社製)が0.5部、上記で調製した電極用結合剤1中のCMCが固形分量にて1部、クエン酸Liの固形分量が0.5部となるようにそれぞれ混合し、攪拌した。
(3) (2)にて得られた混合物に、さらに最終スラリー濃度が45.6%になるように水を添加し、攪拌した。
(4) (3)にて得られたスラリーに、SBR(ENEOSマテリアル社製、品番TRD-104A)をSiOx100部に対して1.5部となるように添加・攪拌して電極組成物を得た。
【0097】
<方法2>
方法2では、以下の手順(1)~(4)を順に行うことにより、電極組成物を作製した。
(1) CMCの固形分濃度が2%の電極結合剤2を調整した。
(2) 負極活物質としてのSiOx100部に対して、アセチレンブラック(Stream Chemical社製)が0.5部、上記にて作製した電極用結合剤2中のCMCが固形分量で1部となるようにそれぞれ混合し、攪拌した。
(3) (2)にて得られた混合物に、さらに35wt%のクエン酸Li水溶液をクエン酸LiがSiOx100部に対して固形分量で0.5部、かつ、最終スラリー濃度が45.6%になるように添加して攪拌した。
(4) (3)にて得られたスラリーに、SBR(ENEOSマテリアル社製 、品番TRD-104A)をSiOx100部に対して1.5部となるように添加・攪拌して電極組成物を得た。
【0098】
<コイン型非水電解質二次電池の作製>
方法1または方法2により得られた電極組成物をアプリケーターで縦320mm×横170mm×厚さ17μmの銅箔(古河電気工業社製、NC-WS)に塗工して30分風乾した後、乾燥機にて60℃で30分間乾燥した。更に小型卓上ロールプレス(テスター産業社製、SA-602)を用いて、5kN、ロール周速50m/minの条件でプレスし、目付量19.7g/m2、放電実効容量2100mAh/gの負極板を得た。
【0099】
上記にて得られた負極板と、LiCoO2正極板(宝泉社製、目付量110.2g/m2、放電実効容量145mAh/g)を直径16mmの円形になるように打ち抜き、打ち抜いた負極板と正極板を120℃で12時間真空乾燥を行った。
【0100】
同様に直径17mmの円形となるようにセパレータ(CS Tech社製、厚み20μmのポリプロピレンセパレータ)を打ち抜き、60℃で12時間真空乾燥を行った。
【0101】
その後、直径20.0mmのステンレス製円形皿型容器に負極板1を置き、次いで、セパレータ、正極板、スペーサー(直径15.5mm、厚さ1mm)、ステンレス製のワッシャー(宝泉株式会社製)をこの順で積層し、その後円形皿型容器に電解液(1mol/LのLiPF6、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの体積比1:1)を300μL添加した。これにポリプロピレン製のパッキンを介してステンレス製のキャップを被せ、コイン電池用かしめ機(宝泉株式会社)で密封し、コイン型の非水電解質二次電池を得た。
【0102】
実施例および比較例における電極組成物およびコイン型非水電解質二次電池の作製は以下のように行った。
【0103】
(実施例1:T4~T7)
CMCとしてCMC1を用い、方法2により電極組成物を作製した。また、この電極組成物を用いて上記の手順に従いコイン型非水電解質二次電池の作製を行った。
【0104】
(実施例2:T12~T15)
CMCとしてCMC2を用い、方法2により電極組成物を作製した。また、この電極組成物を用いて上記の手順に従いコイン型非水電解質二次電池の作製を行った。
【0105】
(比較例1:T2~T3)
CMCとしてCMC1を用い、方法1により電極組成物を作製した。また、この電極組成物を用いて上記の手順に従いコイン型非水電解質二次電池の作製を行った。
【0106】
(比較例2:T8~T11)
CMCとしてCMC2を用い、方法1により電極組成物を作製した。また、この電極組成物を用いて上記の手順に従いコイン型非水電解質二次電池の作製を行った。
【0107】
(参考例:T1)
CMCとしてCMC1を用い、方法2の(3)においてクエン酸Li水溶液を用いずに水を添加した以外は、方法2の手順に従って、電極組成物を作製した。また、この電極組成物を用いて上記の手順に従いコイン型非水電解質二次電池の作製を行った。
実施例1~2、比較例1~2および参考例の結果を下記表1に示す。
【0108】
【0109】
表1に示すように、電極組成物の作製にあたり、方法1を用いた比較例1(T2~T3)および比較例2(T12~T15)と比較して電極組成物の作製にあたり、方法2を用いた実施例1(T4~T7)および実施例2(T12~T15)では容量維持率の標準偏差および変動係数が小さく、ばらつきが少ないことが示された。