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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168875
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】インダクタ素子
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20241128BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01F37/00 N
H01F37/00 R
H01F37/00 Z
H01F37/00 A
H01F37/00 C
H01F5/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023085898
(22)【出願日】2023-05-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度 文部科学省科学技術試験研究委託事業「磁気異方性軟磁性材料を用いた高周波・電力変換用トランス・インダクタの開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100144130
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 実
(72)【発明者】
【氏名】水野 勉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光秀
(72)【発明者】
【氏名】志村 和大
(57)【要約】
【課題】小型化・薄型化することができ、高い周波数でQ値の高い高性能なインダクタ素子を提供する。
【解決手段】インダクタ素子1は、磁性体で形成されたコア4の内部の収容室5に、平面型のスパイラルインダクタ2が収容されているものであって、スパイラルインダクタ2は巻線21同士が間隔を開けて巻回されており、収容室5はスパイラルインダクタの一側の平面部31a、他側の平面部31b、内周部31c及び外周部31dをコア4で囲む形状に形成されており、収容室5内にスパイラルインダクタ2がコア4から間隔を開けるように配置されていて、スパイラルインダクタ2の巻線21同士の間、及びスパイラルインダクタ2とコア4との間に、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材3が充填されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体で形成されたコアの内部の収容室に、平面型のスパイラルインダクタが収容されているインダクタ素子であって、
前記スパイラルインダクタは、巻線同士が間隔を開けて巻回されており、
前記収容室は、前記スパイラルインダクタの一側の平面部、他側の平面部、内周部及び外周部を前記コアで囲む形状に形成されており、
前記収容室内に、前記スパイラルインダクタが前記コアから間隔を開けるように配置されていて、
前記スパイラルインダクタの巻線同士の間、及び前記スパイラルインダクタと前記コアとの間に、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材が充填されていることを特徴とするインダクタ素子。
【請求項2】
磁性体で形成されたコアの内部の収容室に、平面型のスパイラルインダクタを複数層に積層した構造の積層インダクタが収容されているインダクタ素子であって、
前記スパイラルインダクタは、巻線同士が間隔を開けて巻回されており、
前記積層インダクタは、前記スパイラルインダクタ同士が間隔を開けて積層されていて、
前記収容室は、前記積層インダクタの一側の平面部、他側の平面部、内周部及び外周部を前記コアで囲む形状に形成されており、
前記収容室内に、前記積層インダクタが前記コアから間隔を開けるように配置されていて、
前記スパイラルインダクタの巻線同士の間、積層された前記スパイラルインダクタ同士の間、及び前記スパイラルインダクタと前記コアとの間に、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材が充填されていることを特徴とするインダクタ素子。
【請求項3】
前記収容室における前記スパイラルインダクタの半径方向の長さが、前記収容室における前記積層インダクタの積層方向の長さの少なくとも2倍の長さで形成されていることを特徴とする請求項2に記載のインダクタ素子。
【請求項4】
前記スパイラルインダクタの巻き数が、前記積層インダクタの積層数よりも大きな数で構成されていることを特徴とする請求項2に記載のインダクタ素子。
【請求項5】
磁性体で形成されたコアの内部の収容室に、平面型の巻き数1ターンの1ターンインダクタを複数層に積層した構造の積層インダクタが収容されているインダクタ素子であって、
前記積層インダクタは、前記1ターンインダクタ同士が間隔を開けて積層されていて、
前記収容室は、前記積層インダクタの一側の平面部、他側の平面部、内周部及び外周部を前記コアで囲む形状に形成されており、
前記収容室内に、前記積層インダクタが前記コアから間隔を開けるように配置されていて、
前記1ターンインダクタ同士の間、及び前記1ターンインダクタと前記コアとの間に、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材が充填されていることを特徴とするインダクタ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体で形成されたコアの内部の収容室に、平面型のインダクタ、又は平面型のインダクタを積層した構造の積層インダクタが収容されているインダクタ素子に関する。
【0002】
インダクタ(コイル)は種々の電気回路に用いられている。例えば、電気回路として直流-直流(DC-DC)コンバータなどの電源回路が挙げられる。炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)パワーデバイスの高速スイッチングと低オン抵抗特性は、スイッチング電源の駆動周波数を高め、DC-DCコンバータの小型化を可能にする。DC-DCコンバータの小型化及び高周波数化に伴い、小型化や薄型化が可能であり、高い周波数でQ値(品質係数)の高い高性能なインダクタの開発が求められている。
【0003】
Q値は以下の式(1)で算出される。
Q値=2πfL/R ・・・・(1)式
ここで、fは周波数(Hz)、Lはインダクタンス(H)、Rは抵抗(Ω)である。
インダクタのQ値を高くするためには、インダクタの巻き数が同じであれば、インダクタンスをより大きくすることや、抵抗をより小さくすることが必要である。
【0004】
小型化や薄型化できるインダクタとして平面型インダクタがある。平面型インダクタの巻線構造には、巻線を平面上に1ターンずつ巻いて多段に積み上げる積層構造(例えば、特許文献1)、巻線を同一平面上に並べるスパイラル構造(例えば、特許文献2)、積層構造とスパイラル構造を組み合わせたハイブリッド構造(例えば、特許文献3)がある。
【0005】
積層構造の場合、巻線は1ターンあたりのインダクタンスが同じなので、巻線間に発生する漏れ磁束は相殺される。そのため、漏れ磁束による近接効果の影響を受けにくいため、積層構造の交流抵抗は小さくなる。また、巻線が多段に配置されているため、すべての巻線が同一平面上にあるスパイラル構造よりも、積層構造の方が熱放散が少なくなる。
【0006】
スパイラル構造は放熱性に優れているが、1ターンあたりのインダクタンスが異なるため、巻線間に発生する漏れ磁束を打ち消すことができない。そのため、巻線に鎖交する漏れ磁束による渦電流が各巻線内部で発生し、交流抵抗が増加する。つまり、スパイラル構造は近接効果の影響を受けやすく、交流抵抗が大きくなる。近接効果による交流抵抗は、周波数が高くなるにつれて大きくなるため、高い周波数で使用する場合、近接効果を低減する必要がある。
【0007】
磁性体で形成されたコアでインダクタを覆う構造(例えば、特許文献1)とすることで、漏れ磁束をコアに回避させ、近接効果による渦電流の発生を抑制することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-022581号公報
【特許文献2】特開2010-153416号公報
【特許文献3】特開2014-023324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、小型化や薄型化することができ、高い周波数でQ値の高い高性能なインダクタ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載のインダクタ素子は、磁性体で形成されたコアの内部の収容室に、平面型のスパイラルインダクタが収容されているインダクタ素子であって、前記スパイラルインダクタは、巻線同士が間隔を開けて巻回されており、前記収容室は、前記スパイラルインダクタの一側の平面部、他側の平面部、内周部及び外周部を前記コアで囲む形状に形成されており、前記収容室内に、前記スパイラルインダクタが前記コアから間隔を開けるように配置されていて、前記スパイラルインダクタの巻線同士の間、及び前記スパイラルインダクタと前記コアとの間に、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材が充填されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載のインダクタ素子は、磁性体で形成されたコアの内部の収容室に、平面型のスパイラルインダクタを複数層に積層した構造の積層インダクタが収容されているインダクタ素子であって、前記スパイラルインダクタは、巻線同士が間隔を開けて巻回されており、前記積層インダクタは、前記スパイラルインダクタ同士が間隔を開けて積層されていて、前記収容室は、前記積層インダクタの一側の平面部、他側の平面部、内周部及び外周部を前記コアで囲む形状に形成されており、前記収容室内に、前記積層インダクタが前記コアから間隔を開けるように配置されていて、前記スパイラルインダクタの巻線同士の間、積層された前記スパイラルインダクタ同士の間、及び前記スパイラルインダクタと前記コアとの間に、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材が充填されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載のインダクタ素子は、請求項2に記載のものであり、前記収容室における前記スパイラルインダクタの半径方向の長さが、前記収容室における前記積層インダクタの積層方向の長さの少なくとも2倍の長さで形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載のインダクタ素子は、請求項2に記載のものであり、前記スパイラルインダクタの巻き数が、前記積層インダクタの積層数よりも大きな数で構成されていることを特徴とする請求項2に記載のインダクタ素子。
【0014】
請求項5に記載のインダクタ素子は、磁性体で形成されたコアの内部の収容室に、平面型の巻き数1ターンの1ターンインダクタを複数層に積層した構造の積層インダクタが収容されているインダクタ素子であって、前記積層インダクタは、前記1ターンインダクタ同士が間隔を開けて積層されていて、前記収容室は、前記積層インダクタの一側の平面部、他側の平面部、内周部及び外周部を前記コアで囲む形状に形成されており、前記収容室内に、前記積層インダクタが前記コアから間隔を開けるように配置されていて、前記1ターンインダクタ同士の間、及び前記1ターンインダクタと前記コアとの間に、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材が充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明を適用するインダクタ素子は、コアの内部の収容室に平面型のスパイラルインダクタが収容されていて、収容室に磁性複合材が充填され、巻線の周囲に磁性複合材が配置されている。磁性複合材は高周波での損失が少なく透磁率が低いため、巻線の周囲に磁路長の短い磁気回路が構成され、インダクタンスを大きくできる。スパイラル構造は近接効果の影響を受けやすいが、漏れ磁束が磁性複合材に誘導されるため、近接効果が抑制されて交流抵抗を小さくできる。このため、高い周波数でQ値の高い高性能なインダクタ素子とすることができる。また、交流抵抗を小さくできるため、低損失で発熱の小さなインダクタ素子とすることができる。平面型のスパイラルインダクタの使用により、小型化・薄型化が可能であると共に、放熱性に優れたインダクタ素子とすることができる。
【0016】
本発明を適用する別のインダクタ素子は、コアの内部の収容室に平面型のスパイラルインダクタを積層した積層インダクタが収容されていて、収容室に磁性複合材が充填され、巻線の周囲に磁性複合材が配置されている。磁性複合材は高周波での損失が少なく透磁率が低いため、巻線の周囲に磁路長の短い磁気回路が構成されてインダクタンスを大きくできる。このため、高い周波数でQ値の高い高性能なインダクタ素子とすることができる。平面型のスパイラルインダクタを積層して使用するため、小型化・薄型化が可能であると共に、放熱性に優れたインダクタ素子とすることができる。
同一平面内のターン数の少ないスパイラルインダクタを用いる場合、積層インダクタの層間で漏れ磁束が相殺されるため、磁性複合材を巻線の周囲に配置しても交流抵抗の低減効果が小さく逆に交流抵抗が増加する場合がある。
一方、収容室におけるスパイラルインダクタの半径方向の長さが収容室における積層インダクタの積層方向の長さの少なくとも2倍の長さで形成されている場合や、スパイラルインダクタの巻き数が積層インダクタの積層数よりも大きな数で構成されている場合には、同一平面内のスパイラルインダクタのターン数が多くなり、積層インダクタの層間の漏れ磁束の相殺効果が小さくなる。このため、漏れ磁束が磁性複合材に誘導されて近接効果が抑制されるので、交流抵抗を小さくできる。したがって、高い周波数でよりQ値の高い高性能なインダクタ素子とすることができる。また、交流抵抗を小さくできるため、低損失で発熱の小さなインダクタ素子とすることができる。
【0017】
本発明を適用するさらに別のインダクタ素子は、コアの内部の収容室に巻き数1ターンの1ターンインダクタを複数層に積層した構造の積層インダクタが収容されていて、収容室に磁性複合材が充填され、巻線の周囲に磁性複合材が配置されている。磁性複合材は高周波での損失が少なく透磁率が低いため、巻線の周囲に磁路長の短い磁気回路が構成されてインダクタンスを大きくできる。このため、高い周波数でQ値の高い高性能なインダクタ素子とすることができる。平面型の1ターンインダクタを積層して使用するため、小型化・薄型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を適用するインダクタ素子の部分断面図及びその一部拡大図である。
図2】本発明を適用する別のインダクタ素子の部分断面図である。
図3】本発明を適用するさらに別のインダクタ素子の部分断面図である。
図4】本発明を適用するさらに別のインダクタ素子の部分断面図である。
図5図1図4に示すインダクタ素子(実施例1~4)のシミュレーション結果を示すインダクタンスの周波数特性である。
図6】比較例1~4のシミュレーション結果を示すインダクタンスの周波数特性である。
図7】実施例1及び比較例1のシミュレーション結果を示す抵抗の周波数特性である。
図8】実施例2及び比較例2のシミュレーション結果を示す抵抗の周波数特性である。
図9】実施例3及び比較例3のシミュレーション結果を示す抵抗の周波数特性である。
図10】実施例4及び比較例3のシミュレーション結果を示す抵抗の周波数特性である。
図11図11(a)は実施例1のシミュレーション結果を示す電流密度図であり、図11(b)は比較例1のシミュレーション結果を示す電流密度図である。
図12図12(a)は実施例1のシミュレーション結果を示す磁束分布図であり、図12(b)は比較例1のシミュレーション結果を示す磁束分布図である。
図13】比較例5のインダクタ素子の部分断面図である。
図14】実施例1、比較例1及び比較例5のシミュレーション結果を示すインダクタンスの周波数特性である。
図15】実施例1、比較例1及び比較例5のシミュレーション結果を示す抵抗の周波数特性である。
図16】実施例5のインダクタ素子の外観写真である。
図17】実施例5のインダクタ素子の製造方法を示す模式図である。
図18】実施例5及び比較例6のインダクタンスの周波数特性(実測値)、並びに実施例1及び比較例1のインダクタンスの周波数特性(計算値)である。
図19】実施例5及び比較例6の抵抗の周波数特性(実測値)、並びに実施例1及び比較例1の抵抗の周波数特性(計算値)である。
図20】実施例5及び比較例6のQ値の周波数特性(実測値)、並びに実施例1及び比較例1の抵抗の周波数特性(計算値)である。
図21】実施例5及び比較例6の直流重畳インダクタンスの周波数特性である。
図22】実施例6のDC-DCコンバータ試作機の回路図と外観写真である。
図23】実施例6のDC-DCコンバータの電圧・電流波形である。
図24】比較例7のDC-DCコンバータの電圧・電流波形である。
図25】実施例6及び比較例7のインダクタ素子の温度上昇特性である。
図26】実施例6及び比較例7のDC-DCコンバータの熱画像である
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分については、同一のまたは対応する符号を付して説明を省略する場合がある。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本発明を適用するインダクタ素子1の縦断面のうち、スパイラルインダクタ2の中心(z軸)から半径r方向の半分(右半分)を模式的に示す部分断面図である。同図には、インダクタ素子1の破線丸枠で囲んだ2つの部位の部分拡大図も示している。
【0021】
最初に、本発明を適用するインダクタ素子1の主要構成を記載する。
本発明を適用するインダクタ素子1は、磁性体で形成されたコア4の内部の収容室5に、平面型のスパイラルインダクタ2が収容されているものである。スパイラルインダクタ2は、巻線21同士が間隔を開けて巻回されている。収容室5は、スパイラルインダクタ2の一側の平面部31a、他側の平面部31b、内周部31c及び外周部31dをコア4で囲む形状に形成されている。収容室5内には、スパイラルインダクタ2がコア4から間隔を開けるように配置されている。スパイラルインダクタ2の巻線21同士の間、及びスパイラルインダクタ2とコア4との間に、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材3が充填されている。
以下、詳細に説明する。
【0022】
スパイラルインダクタ2は、平面型のスパイラル形状(渦巻形状)に巻線21が巻回されて形成されている。同図には、一例として、巻き数が8ターンのスパイラルインダクタ2を図示している。スパイラルインダクタ2の巻き数は、複数であれば任意である。インダクタ素子1では、1層のスパイラルインダクタ2が用いられる。スパイラルインダクタ2の巻き数が大きくなるほど磁性複合材3による近接効果の抑制効果が大きくなるため、交流抵抗をより低減できるので好ましい。
【0023】
同図中の拡大図(a)に示すように、スパイラルインダクタ2は、巻線21同士が間隔kを開けるように巻回されている。同図には、全ての巻線21間が同じ間隔kで巻回されている例を示している。なお、間隔kが部位により異なるように巻線21を巻回してもよい。
【0024】
スパイラルインダクタ2は、平面内で巻線21が旋回するにつれて円の半径が中心から遠ざかるように、略円形状の渦巻形状に巻回されたものである。本発明に用いるスパイラルインダクタ2の渦巻形状は任意であり、例えば、略楕円形状、略方形状、略多角形状などの渦巻形状であってもよい。スパイラルインダクタ2の中央部側、つまりスパイラルインダクタ2の内周部31cよりも内側にはコア4(コア中央脚)が配置されるため、スパイラルインダクタ2は、中央部にスペースが出来るよう巻線21が巻回されている。
【0025】
巻線21は、一例として、断面が矩形の導体線である。このような形状の巻線21は、断面が円形の導体線よりも取り得る表面積を大きくできる。そのため、周波数が高くなると導体表面を電流が流れるようになる表皮効果の観点から、交流抵抗を小さくできるため好ましい。このような巻線21として、平角線、リボン線と呼ばれるものを使用してもよい。巻線21は、複数本の線を撚り合わせたリッツ線を略矩形断面の形状としたものであってもよい。同図に示すように、巻線21の矩形断面の長辺方向は、z軸方向に垂直方向、すなわち半径方向(r方向)に一致するように巻回されている。なお、巻線21の矩形断面の短辺方向がz軸方向に垂直方向、すなわち半径方向(r方向)に一致するように巻回されていてもよい。巻線21の断面形状は任意の形状にすることができる。例えば、巻線21は、断面が円形、楕円形、方形又は多角形の導体線であってもよい。巻線21は、アルミニウム、銅又はマンガニン(登録商標)(銅、マンガン及びニッケルの合金)の金属からなる。巻線21は、絶縁性の被膜を有していてもよい。
【0026】
コア4は、内部に収容室5を有しており、全体的に薄い平型に形成されている。コア4の平面形状(図の上部側から見た全体的な形状)は、どのような形状であってもよい。例えば、コア4の平面形状は、円形、方形又は多角形であってもよい。コア4は、スパイラルインダクタ2の外周部31dよりも外側にコア4(コア外脚)が設けられるため、スパイラルインダクタ2よりも大きな形状に形成されている。コア4は、スパイラルインダクタ2を収容室5に収容するために、一例として、上下に2分割可能である。コア4の分割箇所は任意である。
【0027】
収容室5は、スパイラルインダクタ2を収容可能に、スパイラルインダクタ2の形状に合わせて、コア4内を周回する中空の環状形状に形成されている。収容室5は、同図中の拡大図(a)に示すように、スパイラルインダクタ2の一側(上側)の平面部31aとコア4(収容室5の天井部)との間に間隔aを有し、スパイラルインダクタ2の他側(下側)の平面部31bとコア4(収容室5の床部)との間に間隔bを有し、スパイラルインダクタ2の内周部31cとコア4(収容室5の内周壁部)との間に間隔cを有すると共に、同図中の拡大図(b)に示すように、スパイラルインダクタ2の外周部31dとコア4(収容室5の外周壁部)との間に間隔dを有するサイズで形成されている。つまり、収容室5は、収容室5の内壁(コア4)にスパイラルインダクタ2に接触せず、収容室5の内壁(コア4)とスパイラルインダクタ2とが所定間隔を開けられるサイズで形成されている。
【0028】
スパイラルインダクタ2の上下方向の間隔a及び間隔bは等しい。なお、スパイラルインダクタ2とコア4との間隔a,b,c,dは任意であり、適宜設定可能である。
【0029】
コア4は、公知の磁性材料で形成されており、例えば、FeSiCrB等の鉄系アモルファス磁性粉を含有する磁性コンポジット材やフェライト、電磁鋼板、センダスト、パーマロイ、Ni系、Fe系の強磁性材料等で構成することができる。コア4は、例えば、公知の磁性材料を圧縮成形し熱処理を施して製造される。コア4は、軟磁性金属粉末の周囲に絶縁層を形成して、それを加圧成形した圧粉磁心であってもよい。
【0030】
収容室5内には、巻線21同士の間、及び巻線21とコア4との間に磁性複合材(磁性コンポジット材)3が充填されている。つまり、収容室5内を満たす磁性複合材3によって巻線21が封止されている。
【0031】
磁性複合材3は、マトリックス材中に磁性紛が分散している混合部材である。磁性複合材3は、高周波での損失が少なく、透磁率が低く、飽和磁束密度が高いという特徴がある。
【0032】
磁性紛の形状は任意である。磁性紛として、例えば、球状、塊状および扁平状の粉体から選ばれる1種または複数種を混合したものを用いることができる。また、磁性紛として、異なる形状、異なるサイズの粉体を混合して用いることができる。磁性紛の形状に限定はないが、球状や立方体のような形状磁気異方性のない形状のものが好ましい。磁性紛のサイズに限定はないが、一例として、数百nmから100um程度のサイズのものが好ましい。
【0033】
磁性紛は、軟磁性体であれば材質は限定されない。磁性紛として、例えば、鉄粉、Si-Fe紛、アモルファス粉、フェライト粉(Mn-Zn、Ni-Zn)、ファインメット(登録商標)粉、センダスト紛、Fe-Si-Al紛から選ばれる1種または複数種を用いることができる。磁性紛として、表面を絶縁材で覆われた被覆付き磁性粉を用いてもよい。磁性紛の量に限定はないが、一例として、磁性複合材3中に60~80体積%程度含まれていることが好ましい。
【0034】
マトリックス材は、複合材料における母材であり、非磁性で絶縁性を有する材料であって、液状(スラリー状)から硬化する材料であれば特に限定されない。マトリックス材は、例えば、シリコーン、エポキシ、アクリル等の樹脂材料、水ガラス等の無機材料を用いることができる。これらの中でも、機械的強度を向上させる点で、樹脂材料が好ましい。樹脂として、液状態から硬化する樹脂であって、例えば熱可塑性樹脂、シリコーンエラストマなどの熱硬化性樹脂、又は硬化剤により架橋可能な樹脂等を用いることができる。例えば、樹脂材料の中では、シリコーン、エポキシを好ましく使用できる。
【0035】
磁性紛と液状のマトリックス材とを混合して、マトリックス材中に磁性紛を均一に分散させ、液状のマトリックス材を硬化させることで磁性複合材3になる。混合する際に、必要性に応じて溶剤、添加剤、結合剤等を適宜加えてもよい。
【0036】
インダクタ素子1の製造方法の一例を説明する。先ず、上下2分割可能なコア4のうち、下側のコア4の収容室5内に、スパイラルインダクタ2をコア4との間隔が前述した間隔b,c,dになるように、特性に影響の無い小さなスペーサーを使って位置決めする。次に下側のコア4に上側のコア4を接合する。これでスパイラルインダクタ2の上側とコア4とが間隔aになる。続いて、上下のコア4の隙間(又はコア4に予め開けた小さな孔)から、磁性紛とマトリックス材とを混合した液状(スラリー状)の磁性複合材3を圧入し、収容室5内に磁性複合材3を充填する。コア4には空気抜き孔も開けておいてもよい。最後に、磁性複合材3を硬化させて、必要であればコア4の隙間や孔を塞ぎ、インダクタ素子1の製造が完成する。
【0037】
インダクタ素子1の製造方法の別の一例を説明する。先ず、上下2分割可能なコア4のうち、下側のコア4の収容室5内に、インダクタ2をコア4との間隔が前述した間隔b,c,dになるような位置に保持用の治具(又はスペーサー)などで位置決めする。次に、磁性紛と液状のマトリックス材とを混合した液状(スラリー状)の磁性複合材3を、下側のコア4の収容室5内を満たすように注入して硬化させる。これで下側のコア4の所定の位置にインダクタ2が固定されるため、インダクタ2の保持用の治具を外す。上側のコア4になるはずのものを上下反転させて、収容室5内に液状の磁性複合材3を所定量注入し、インダクタ2の固定された下側のコア4を上下反転させて、上下のコア4同士を接合する。最後に、収容室5内の液状の磁性複合材3を硬化させて、インダクタ素子1の製造が完成する。
【0038】
インダクタ素子1の製造方法はこれらに限られず任意である。コア4の分割箇所を変更してもよい。例えば、収容室5の天井板が着脱できるようにコア4を分割可能としてもよい。
【0039】
本発明を適用するインダクタ素子1は、収容室5に磁性複合材3が充填され、スパイラルインダクタ2の巻線21の周囲に磁性複合材3が配置されているため、巻線21の周囲に磁路長の短い磁気回路が構成される。これにより、インダクタンスを大きくできる。スパイラル構造は近接効果の影響を受けやすいが、漏れ磁束が磁性複合材3に誘導されるため、近接効果が抑制されて交流抵抗を小さくできる。このため、高い周波数でQ値の高い高性能なインダクタ素子1とすることができる。また、交流抵抗を小さくできるため、低損失で発熱の小さなインダクタ素子1とすることができる。平面型のスパイラルインダクタ2の使用により、小型化・薄型化が可能であると共に、放熱性に優れたインダクタ素子1とすることができる。
【0040】
インダクタ素子1の電磁界シミュレーションの結果や、試作品の測定結果については後述する。
【0041】
[第2実施形態]
図2は、本発明を適用する別のインダクタ素子1aの縦断面のうち、積層インダクタ6aの中心(z軸)から半径r方向の半分(右半分)を模式的に示す部分断面図である。第1実施形態のインダクタ素子1は1層のスパイラルインダクタ2を有していたが、この第2実施形態のインダクタ素子1aは、複数層に積層したスパイラルインダクタ2a(積層インダクタ6a)を有している。各部を構成する材質等は第1実施形態のインダクタ素子1と同様であるため、説明を省略する。
【0042】
本発明を適用するインダクタ素子1aの主要構成を記載する。
本発明を適用するインダクタ素子1aは、磁性体で形成されたコア4aの内部の収容室5aに、平面型のスパイラルインダクタ2a(一例として2a,2a)を複数層(一例として2層)に積層した構造の積層インダクタ6aが収容されているものである。スパイラルインダクタ2aは、巻線21同士が間隔を開けて巻回されている。積層インダクタ6aは、スパイラルインダクタ2a同士が間隔を開けて積層されている。収容室5aは、積層インダクタ6aの一側の平面部32a、他側の平面部32b、内周部32c及び外周部32dをコア4aで囲む形状に形成されている。収容室5a内に、積層インダクタ6aがコア4aから間隔を開けるように配置されている。スパイラルインダクタ2aの巻線21同士の間、積層されたスパイラルインダクタ2a同士の間、及びスパイラルインダクタ2aとコア4aとの間に、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材3が充填されている。
収容室5におけるスパイラルインダクタ2の半径方向(r方向)の長さが、収容室5における積層インダクタ6の積層方向(z方向)の長さの少なくとも2倍の長さ(図2は一例として5倍)で形成されている。
スパイラルインダクタ2の巻き数(図2の例では4)が、積層インダクタ6の積層数(図2の例では2)よりも大きな数で構成されている。
以下、詳細に説明する。
【0043】
スパイラルインダクタ2aは、第1実施形態のスパイラルインダクタ2と同様に、平面型のスパイラル形状に巻線21が巻回されて形成されている。同図には、一例として、巻き数が4ターンのスパイラルインダクタ2aを図示している。スパイラルインダクタ2aは、巻線21同士が間隔を開けるように巻回されている。スパイラルインダクタ2aとスパイラルインダクタ2aは、ほぼ同様に形成されている。
【0044】
積層インダクタ6aは、複数のスパイラルインダクタ2a(この例ではスパイラルインダクタ2aとスパイラルインダクタ2a)が互いに接触することなく平行に対向するように、間隔を開けて積層されている。複数のスパイラルインダクタ2aは、直列接続されるように、対向するスパイラルインダクタ2aの端部をz軸方向に平行な導体線で適宜連結されている(図示省略)。つまり、積層インダクタ6aは、積層した複数のスパイラルインダクタ2aが直列接続されて構成されている。
【0045】
この第2実施形態のインダクタ素子1aは、スパイラルインダクタ2aの巻き数が、積層インダクタ6aの積層数よりも大きな数で構成されている例を示している。この例では、スパイラルインダクタ2aの巻き数は4、積層数は2である。この例のように、スパイラルインダクタ2aの巻き数が、積層インダクタ6aの積層数の少なくとも2倍の巻き数(2倍以上の巻き数)で構成されているほうがより好ましく、積層数の少なくとも3倍の巻き数(3倍以上の巻き数)で構成されていることがさらにより好ましい。積層インダクタ6aを使用する場合、スパイラルインダクタ2aの巻き数が、積層インダクタ6aの積層数(スパイラルインダクタ2aの積層数)に比べて大きくなるほど、後述するように磁性複合材3による近接効果の抑制効果が大きくなり、交流抵抗を小さくできる。そのため、Q値をより高くすることができる。また、交流抵抗を小さくできるため、損失を低減でき、発熱を少なくすることができる。また、全体的に薄型の平型形状に形成できるため、放熱性に優れたものとすることができる。
【0046】
コア4aは、内部に収容室5aを有しており、全体的に薄い平型に形成されている。収容室5aは、積層インダクタ6aを収容可能に、積層インダクタ6aの形状に合わせて、コア4a内を周回するように中空の環状形状に形成されている。収容室5aは、積層インダクタ6aの一側(上側)の平面部32a、他側(下側)の平面部32b、内周部32c及び外周部32dをコア4aで囲み、積層インダクタ6aがコア4aから間隔を開けられるサイズで形成されている。ここで、積層インダクタ6aの一側(上側)の平面部32aとは、一方の最外側(上側)に配置されたスパイラルインダクタ2aの外側(上側)の平面部である。積層インダクタ6aの他側(下側)の平面部32bとは、他方の最外側(下側)に配置されたスパイラルインダクタ2aの外側(下側)の平面部である。
【0047】
収容室5aは、積層インダクタ6aの一側(上側)の平面部32aとコア4a(収容室5aの天井部)との間に間隔(例えば、図1の例の間隔a)を有し、積層インダクタ6aの他側(下側)の平面部32bとコア4a(収容室5aの床部)との間に間隔(例えば、図1の例の間隔b)を有し、積層インダクタ6aの内周部32cとコア4a(収容室5aの内周壁部)との間に間隔(例えば、図1の例の間隔c)を有し、積層インダクタ6aの外周部32dとコア4a(収容室5aの外周壁部)との間に間隔(例えば、図1の例の間隔d)を有するサイズで形成されている。つまり、収容室5aは、収容室5aの内壁(コア4a)に積層インダクタ6aに接触せず、収容室5aの内壁(コア4a)と積層インダクタ6aとが所定間隔を開けられるサイズで形成されている。積層インダクタ6aとコア4aとの間隔は任意であり、適宜設定すればよい。
【0048】
この第2実施形態のインダクタ素子1aは、収容室5aにおけるスパイラルインダクタ2aの半径方向(平面方向)の長さA1が、収容室5aにおける積層インダクタ6aの積層方向(厚さ方向)の長さB1の少なくとも2倍の長さ(2倍以上の長さ)で形成されている例を示している。同図には、長さA1が長さB1の5倍の長さの例を示している。このような条件で収容室5aを形成すると、磁性複合材3による近接効果の抑制効果が大きくなり、交流抵抗を小さくできる。そのため、Q値をより高くすることができる。また、交流抵抗を小さくできるため、損失を低減でき、発熱を少なくすることができる。また、全体的に平型形状になるため、放熱性に優れたものとすることができる。収容室5aの長さA1は、長さB1の少なくとも3倍の長さで形成されている方がより好ましく、少なくとも4倍の長さで形成されている方がさらに好ましい。要は、収容室5aの長さA1が長さB1に対して長いほど交流抵抗を小さくできるため好ましい。
【0049】
収容室5a内には、スパイラルインダクタ2aの巻線21同士の間、積層されたスパイラルインダクタ2a同士の間、及びスパイラルインダクタ2aとコア4aとの間に磁性複合材3が充填されている。つまり、収容室5a内を満たす磁性複合材3によって巻線21が封止されている。
【0050】
インダクタ素子1aは、既に説明したインダクタ素子1と同様に製造することができる。
【0051】
本発明を適用するインダクタ素子1aは、収容室5aに磁性複合材3が充填され、スパイラルインダクタ2aの巻線21の周囲に磁性複合材3が配置されているため、巻線21の周囲に磁路長の短い磁気回路が構成される。これにより、インダクタンスを大きくできる。積層構造の場合、1ターンのコイルの積層構造では巻線間に発生する漏れ磁束は相殺されるが、収容室5aの半径方向の長さが積層方向の長さの少なくとも2倍の長さで形成されている場合や、スパイラルインダクタ2aの巻き数が積層数よりも大きな数で構成されている場合には、同一平面内のスパイラルインダクタ2aのターン数が多くなり、積層インダクタ6aの層間の漏れ磁束の相殺効果が小さくなる。つまり、漏れ磁束が磁性複合材3に誘導されてスパイラルインダクタ2aの近接効果が抑制されるので、交流抵抗を小さくできる。したがって、高い周波数でQ値の高い高性能なインダクタ素子とすることができる。また、交流抵抗を小さくできるため、低損失で発熱の小さなインダクタ素子1aとすることができる。
【0052】
インダクタ素子1aの電磁界シミュレーションの結果については後述する。
【0053】
[第3実施形態]
図3は、本発明を適用するさらに別のインダクタ素子1bの縦断面のうち、積層インダクタ6bの中心(z軸)から半径r方向の半分(右半分)を模式的に示す部分断面図である。第3実施形態のインダクタ素子1bは、第2実施形態のインダクタ素子1aのスパイラルインダクタ2aのターン数及び積層数を変更したものである。この変更に合わせてコア4b及び収容室5aの形状も変更している。他の構成は同様である。
【0054】
本発明を適用するインダクタ素子1bの主要構成を記載する。
本発明を適用するインダクタ素子1bは、磁性体で形成されたコア4bの内部の収容室5bに、平面型のスパイラルインダクタ2b(一例として2b~2b)を複数層(一例として4層)に積層した構造の積層インダクタ6bが収容されているものである。スパイラルインダクタ2bは、巻線21同士が間隔を開けて巻回されている。積層インダクタ6bは、スパイラルインダクタ2b同士が間隔を開けて積層されている。収容室5bは、積層インダクタ6bの一側の平面部33a、他側の平面部33b、内周部33c及び外周部33dをコア4bで囲む形状に形成されている。収容室5b内に、積層インダクタ6bがコア4bから間隔を開けるように配置されている。スパイラルインダクタ2bの巻線21同士の間、積層されたスパイラルインダクタ2b同士の間、及びスパイラルインダクタ2bとコア4bとの間に、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材3が充填されている。
以下、詳細に説明する。
【0055】
先に説明した実施形態2のインダクタ素子1aは、スパイラルインダクタ2aの巻き数が積層インダクタ6aの積層数よりも大きく構成されているものであった。第2実施形態のインダクタ素子1aの方が交流抵抗を小さくでき、Q値をより高くできると共に損失を小さくできる。しかしながら、第3実施形態のインダクタ素子1bのように、スパイラルインダクタ2bの巻き数(一例として2ターン)と積層インダクタ6bの積層数(一例として4層)との関係に限定を設けず、例えば巻き数≦積層数の関係であったとしても、磁性複合材3が巻線21の周囲に存在することでインダクタンスを大きくできることからQ値が高くなる。
【0056】
また、先に説明した実施形態2のインダクタ素子1aは、収容室5aのスパイラルインダクタの半径方向の長さA1が、収容室5aの積層インダクタ6aの積層方向の長さB1の少なくとも2倍の長さで形成されているものであった。第2実施形態のインダクタ素子1aの方が交流抵抗を小さくでき、Q値をより高くできると共に損失を小さくできるが、第3実施形態のインダクタ素子1bのように収容室5bの寸法に限定を設けなくても、インダクタンスを大きくできることからQ値が高くなる。
【0057】
インダクタ素子1bの電磁界シミュレーションの結果については後述する。
【0058】
[第4実施形態]
図4は、本発明を適用するさらに別のインダクタ素子1cの縦断面のうち、積層インダクタ6cの中心(z軸)から半径r方向の半分(右半分)を模式的に示す部分断面図である。
【0059】
本発明を適用するインダクタ素子1cの主要構成を記載する。
本発明を適用するインダクタ素子1cは、磁性体で形成されたコア4cの内部の収容室5cに、平面型の巻き数1ターンの1ターンインダクタ2cを複数層(一例として8層)に積層した構造の積層インダクタ6cが収容されている。積層インダクタ6cは、1ターンインダクタ2c同士が間隔を開けて積層されていて、収容室5cは、積層インダクタ6cの一側の平面部34a、他側の平面部34b、内周部34c及び外周部34dをコア4cで囲む形状に形成されている。収容室5c内に、積層インダクタ6cがコア4cから間隔を開けるように配置されている。1ターンインダクタ2c同士の間、及び1ターンインダクタ2cとコア4cとの間に、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材3が充填されている。
以下、詳細に説明する。
【0060】
第4実施形態のインダクタ素子1cは、第2、第3実施形態のインダクタ素子1a、1bのスパイラルインダクタ2a,2bを1ターンインダクタ2cに替えたものである。複数の1ターンインダクタ2cは、直列接続されるように、z軸方向に平行な導体線で連結されている(図示省略)。つまり、積層インダクタ6cは、積層した複数の1ターンインダクタ2cが直列接続されて構成されている。
【0061】
他の構成は同様であり、収容室5c内を満たす磁性複合材3によって巻線21が封止されている。これにより、巻線21の周囲に磁路長の短い磁気回路が構成され、インダクタンスを大きくできるため、Q値を高くすることができる。
【0062】
インダクタ素子1cの電磁界シミュレーションの結果については後述する。
【0063】
[電磁界解析によるシミュレーション]
実施例1として図1に示した8ターン・1層のインダクタ素子1、実施例2として図2に示した4ターン・2層のインダクタ素子1a、実施例3として図3に示した2ターン・8層のインダクタ素子1b、実施例4として図4に示した1ターン・4層のインダクタ素子1cに対して、電磁界解析によるシミュレーションを行った。シミュレーションは、インダクタンス、抵抗について実施した。シミュレーション結果から(1)式を用いてQ値を算出した。
【0064】
また、比較例1として磁性複合材の無い図1に示した8ターン・1層のインダクタ素子1、比較例2として磁性複合材の無い図2に示した4ターン・2層のインダクタ素子1a、比較例3として磁性複合材の無い図3に示した2ターン・8層のインダクタ素子1b、比較例4として磁性複合材の無い図4に示した1ターン・4層のインダクタ素子1cに対して、同様のシミュレーションを行った。比較例1~4では実施例1~4の磁性複合材を空気に代えた。
【0065】
シミュレーションには、JMAG-Designer ver.19.1.01x (JSOL Corp.)を使用した。シミュレーション方法は、2次元軸対称周波数応答磁場シミュレーションを用いた。シミュレーションモデルとして、zr平面をz軸を中心に回転させた円筒座標モデルを使用した。共通条件として、コア中央脚の半径(z軸から収容部の内周壁までの距離。収容部内周半径)4.5mm、コア外脚幅(収容部の外周壁からコア外界壁までの幅)1.5mm、積層インダクタの層間距離(積層インダクタを構成するインダクタ同士の間隔)0.2mm、巻線同士の間隔(間隔k)0.5mm、収容部の内周壁と巻線との間隔(間隔c)0.5mm、収容部の外周壁と巻線との間隔(間隔d)0.5mm、収容部の天井部と巻線との間隔(間隔a)0.2mm、収容部の床部と巻線との間隔(間隔b)0.2mm、導体幅1.5mm、導体厚0.5mmとした。インダクタは、図1図4に示したようにトータルの巻き数を8ターンとした。コアは、鉄系アモルファス球体粉(平均直径:3.5、10μm)とエポキシ樹脂を20:80:1の重量比で混合した粉末磁心とした。加熱時に883MPaの圧力をかけてコアを硬化させたものとした。巻線構造に合わせて図1図4のようにコア形状を変更した。表1に解析の諸条件を示す。
【0066】
【表1】
【0067】
図5に、実施例1~4のインダクタンスのシミュレーション結果を示す。図6に、比較例1~4のインダクタンスのシミュレーション結果を示す。同様の構造で比較した場合、磁性複合材を有する実施例1~4は、磁性複合材を有さない比較例1~4に比して、インダクタンスの値が大きくなった。この結果は、導体線(巻線21)の外周に磁性複合材が存在することで、磁路長の短い磁気回路が構成されたためである。
【0068】
図7に、実施例1及び比較例1の抵抗のシミュレーション結果を示す。1MHzの抵抗値は、実施例1が247mΩ、比較例1が515mΩであった。磁性複合材を有することで、抵抗値は52%減少した。磁性複合材の無いスパイラル構造は巻線が同一平面上にレイアウトされているため、漏れ磁束による交流抵抗の増加が顕著であったが、磁性複合材を有することで交流抵抗の低減効果が顕著に表れた。抵抗値の低減効果は、実施例1~4中で実施例1が最も高くなった。
【0069】
図8に、実施例2及び比較例2の抵抗のシミュレーション結果を示す。1MHzの抵抗値は、実施例2が273mΩ、比較例2が302mΩであった。磁性複合材を有することで、抵抗値は10%減少した。スパイラルインダクタを積層するこのモデルでは、1層あたりの巻数が増加し、層数が少なくなるにつれて、同じ層の巻線間に発生する漏れ磁束の影響が大きくなる。磁性複合材を有することで、近接効果の原因となる漏洩磁束が磁性複合材に誘導されるため、交流抵抗が減少した。抵抗値の低減効果は、実施例1~4中で実施例2が2番目に高くなった。
【0070】
図9に、実施例3及び比較例3の抵抗のシミュレーション結果を示す。1MHzの抵抗値は、実施例3が280mΩ、比較例3が262mΩであった。磁性複合材を有することで、抵抗値は7%増加した。これは、磁性複合材による漏れ磁束誘導による交流抵抗の低減よりも、磁性複合材の鉄損による交流抵抗の増加の方が大きくなったためである。つまり、積層インダクタの層間の漏洩磁束が小さかったためである。
【0071】
図10に、実施例4及び比較例4の抵抗のシミュレーション結果を示す。1MHzの抵抗値は、実施例4が269mΩ、比較例3が256mΩであった。磁性複合材を有することで、抵抗値が5%増加した。これは、磁性複合材による漏れ磁束誘導による交流抵抗の低減よりも、磁性複合材料の鉄損による交流抵抗の増加の方が大きくなったためである。つまり、積層インダクタの層間の漏洩磁束が小さかったためである。
【0072】
表2に、周波数1MHzにおけるインダクタンス、抵抗の値から算出したQ値を示す。算出には(1)式を用いた。
【0073】
【表2】
【0074】
同様の構造で比較した場合、磁性複合材を有する実施例1~4は、磁性複合材を有さない比較例1~4に比して、いずれもQ値が高くなった。特に、比較例1のQ値は78と最も低かったが、実施例1では192と最も高いQ値が得られた。複数層にスパイラルインダクタを積層した実施例2、3は、スパイラルインダクタの巻回数が積層数よりも多い実施例2の方がQ値の改善効果が高くなった。このように、磁性複合材は巻線を同一平面上にレイアウトしたスパイラルインダクタの交流抵抗を効果的に低減させることができる。
【0075】
図11(a)は磁性複合材を有する実施例1の電流密度と磁束分布を示し、図11(b)は磁性複合材の無い比較例1の電流密度と磁束分布を示している。比較例1の巻線の端部が実施例1の巻線よりも色が濃くなっており、電流密度の偏り(渦電流の発生)が分かる。つまり、実施例1のように磁性複合材を導体線の周囲に配置することで漏れ磁束が誘導され、近接効果が抑制されるため、巻線の電流密度の偏りが減少していることが分かる。この電流密度の偏りの減少は、導体の有効断面積の増大を意味する。
【0076】
図12(a)は磁性複合材を有する実施例1の磁束密度分布を示し、図12(b)は磁性複合材の無い比較例1の磁束密度分布を示している。実施例1の磁性複合材の部位が色が濃くなっており、磁束が通っていることが分かる。つまり、実施例1のように磁性複合材を導体線の周囲に配置することで、主磁路とは異なる漏洩磁気回路が構成され、主磁路の磁束密度の偏りが低減されている。
【0077】
さらに、比較例5として、図13に示す構造の8ターン・1層のインダクタ素子101に対して、電磁界解析によるシミュレーションを行った。シミュレーションは、インダクタンス、抵抗について実施した。シミュレーション結果から(1)式を用いてQ値を算出した。シミュレーションの諸条件は前述した通りである。
【0078】
図13は、インダクタ素子101の縦断面のうち、スパイラルインダクタ2の中心(z軸)から半径r方向の半分(右半分)を模式的に示す部分断面図である。インダクタ素子101は、磁性体で形成された一対の板状のコア104の間にスパイラルインダクタ2を配置したものである。コア104とスパイラルインダクタ2とは接触しないように間隔が開けられている。スパイラルインダクタ2の巻線21同士の間、スパイラルインダクタ2とコア104との間、及びコア104とコア104との間には、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材3が充填されている。このインダクタ素子101は、スパイラルインダクタ2の中央部側のスペースに上下のコア104を連結するコア(コア中央脚)が無く、スパイラルインダクタ2の外周側のスペースに上下のコア104を連結するコア(コア外脚)が無い点が、第1実施形態のインダクタ素子1(図1参照)と異なっている。
【0079】
図14に、比較例5のインダクタンスのシミュレーション結果を示す。同図には、比較しやすいように、実施例1及び比較例1のインダクタンスのシミュレーション結果も示している。1MHzのインダクタンスは、大きい順に実施例1(7.5μH)、比較例5(7.2μH)、比較例1(6.4μH)であった。実施例1と比較例5との比較から、実施例1のようにコア中央脚及びコア外脚のある構造の方が(スパイラルインダクタ2を収容部5の内部に収容した構造の方が)、コア中央脚及びコア外脚の無い構造よりもインダクタンスを大きくできる。
【0080】
図15に、比較例5の抵抗のシミュレーション結果を示す。同図には、比較しやすいように、実施例1及び比較例1の抵抗のシミュレーション結果も示している。1MHzの抵抗値は、小さい順に実施例1(247mΩ)、比較例5(250mΩ)、比較例1(515mΩ)であった。実施例1と比較例5との比較から、実施例1のようにコア中央脚及びコア外脚のある構造の方が(スパイラルインダクタ2を収容部5の内部に収容した構造の方が)、コア中央脚及びコア外脚の無い構造よりも抵抗を小さくできる。
【0081】
周波数1MHzにおけるインダクタンス、抵抗の値からQ値を算出した。Q値は、高い順に、実施例1(192)、比較例5(182)、比較例1(78)であった。実施例1のようにコア中央脚及びコア外脚のある構造の方が(スパイラルインダクタ2を収容部5の内部に収容した構造の方が)、コア中央脚及びコア外脚の無い構造よりもQ値を高くできる。
【0082】
[スパイラルインダクタの作製と評価]
実施例5として、シミュレーションを行った実施例1(図1)に相当するインダクタ素子を作製した。図16は、作製した実施例5のインダクタ素子の外観写真である。図16(a)はインダクタ素子の平面写真であり、平面形状は正方形(一辺45mm)である。断面A-A'は図1と同じである。図16(b)はインダクタ素子の側面写真である。インダクタ素子の高さは3.4mmであり、非常に低背である。
【0083】
図17は、実施例5のインダクタ素子の製造方法を示す模式図である。同図(a)に示す磁性紛であるアモルファス球状粉末(D50=2.6μm)と、同図(b)に示すマトリックス材(バインダー)であるシリコーン樹脂を磁性紛の体積充填率が60vol%となるように混合後、攪拌脱泡ミキサーを用いて、同図(c)に示すようにスラリー状の磁性複合材(磁性複合材スラリー)とした。インダクタ素子は、鉄系アモルファス球形粉末(D50=3.0μmおよびD50=10μm)と粉体樹脂を混合、造粒後、熱プレス機により圧粉成形した同図(d)に示す粉末磁性体コアと、同図(e)に示すスパイラルインダクタ(銅板製の巻線)を組み立てる際に、磁性複合材スラリーを注入して製造した。また、比較例6として、磁性複合材を使用しないインダクタ素子を、磁性複合材スラリーの代わりにシリコーン樹脂を注入して製造した。粉末磁心コアおよび磁性複合材の比透磁率は、インピーダンスアナライザ(Agilent、4294A)を用いて測定した。粉末磁心コアおよび磁性複合材の複素比透磁率の実部μ’はそれぞれ 28および7.5、複素比透磁率の虚部μ”はそれぞれ0.1、0.01であった。
【0084】
[インダクタ素子のインピーダンス特性]
図18図21にインダクタ素子のインピーダンス特性を示す。図18図20に示す測定にはインピーダンスアナライザ(Keysight Technologies, E4990A)を、図21に示す測定にはLCRメーター(Keysight Technologies, E4980A)を用いた。
【0085】
図18に、実施例5及び比較例6のインダクタンス(実測値)を示す。同図には、前述した実施例1及び比較例1のシミュレーション結果のインダクタンス(計算値)も示している。インダクタンスの値(1MHz時)は、実施例5が7.2μH、比較例6が6.0μHであった。磁性複合材を使用することで、インダクタンスは20%増加した。先に説明したように、磁性複合材の使用によりインダクタンスが増加したのは、導体外周に磁路長の短い磁気回路が構成されたためである。巻線構造の多少の違いや引き出し線による遮蔽などのシミュレーションモデルとの違いにより、シミュレーション結果と比較するとインダクタンスは減少した。
【0086】
図19に、実施例5及び比較例6の抵抗(実測値)を示す。同図には、前述した実施例1及び比較例1のシミュレーション結果の抵抗(計算値)も示している。抵抗値(1MHz時)は、実施例5が317mΩ、比較例6が515mΩであった。磁性複合材を使用することで、抵抗は40%減少した。シミュレーションと同様、磁性複合材の使用により近接効果が抑制され、抵抗が顕著に減少した。しかし、実施例5の抵抗値(実測値)は、周波数が高くなるにつれて、実施例1の抵抗値(計算値)よりも大きくなっている。これは、磁性複合材の封入が不十分で、近接効果の原因となる漏れ磁束の誘導が不十分であったためであると考えられる。
【0087】
図20に、実施例5及び比較例6のQ値(実測値)を示す。同図には、前述した実施例1及び比較例1のシミュレーション結果のQ値(計算値)も示している。Q値(1MHz時)は、実施例5が141、比較例6が71であった。本発明を適用することで、Q値は99%増加した。
【0088】
図21に、実施例5及び比較例6の直流重畳インダクタンス特性(実測値)を示す。磁性複合材の有無にかかわらず、直流重畳電流の増加に伴うインダクタンスの減少が小さく、磁気飽和が生じないことがわかる。また、実施例5のインダクタンスは、全測定範囲において比較例6のインダクタンスよりも大きく、この測定範囲では磁気複合材料が磁気飽和を起こさないことが確認された。さらに、実施例5の自己共振周波数は14.6MHz、比較例6の自己共振周波数は24.0MHzと、駆動周波数よりも十分に大きな周波数であった。
【0089】
[インダクタ素子の発熱特性]
実施例6として、実施例5のインダクタ素子を用いて駆動周波数1MHzの100V/320V 800W昇圧DC-DCコンバータ試作機を作製した。図22にDC-DCコンバータ試作機の回路図と回路外観写真を示す。電界効果トランジスタ(FET)(GaN Systems,Inc.、GS66516T)は2個並列に接続されている。ダイオードはSCS320AHGC9(ローム・セミコンダクター社製)、ゲートドライバーはADUM4121ARIZ(アナログ・デバイセズ社製)である。インダクタ電流iLの測定には同軸シャント(T&M Research Products社製、SDN-414-01)を使用した。また、比較例7として、比較例6のインダクタ素子を用いて同様のDC-DCコンバータ試作機を作製した。
【0090】
図23に実施例6のDC-DCコンバータの電圧・電流波形を示し、図24に比較例7のDC-DCコンバータの電圧・電流波形を示す。実施例6の回路のリップル電流は11.3A、比較例6の回路のリップル電流は13.4Aであった。本発明を適用することでインダクタンスが増加し、リップル電流が減少していることがわかる。
【0091】
図25に実施例6及び比較例7のインダクタ素子の温度上昇特性を示す。温度は温度センサー(Teledyne FLIR LLC, A400)で測定した。実施例6の回路のインダクタ素子の飽和温度上昇ΔTは55℃、比較例7の回路のインダクタ素子の飽和温度上昇ΔTは115℃であった。本発明を適用することで、ΔTは60℃減少した。
【0092】
図26は、実施例6及び比較例7のDC-DCコンバータの熱画像である(出力電力Po=800W,時間t=40分)。熱画像は温度カメラ(Testo K.K., testo 885)で測定した。熱画像から、実施例6の方が比較例7よりも、インダクタ素子の発熱を顕著に抑制できることがわかる。これは、近接効果による交流抵抗やインダクタのリップル電流が抑制され、その結果、コンバータ駆動時の実施例6のインダクタ素子の発熱が抑制された。
【0093】
本発明を適用するインダクタ素子1,1a,1b,1cは、電源回路、特にDC-DCコンバータに好ましく使用することができるが、種々の電気回路に使用でき、用途は限定されない。
【符号の説明】
【0094】
1・1a・1b・1cはインダクタ素子、2・2a(2a・2a)・2b(2b~2b)はスパイラルインダクタ、2c(2c~2c)は1ターンインダクタ、3は磁性複合材、4・4a・4b・4cはコア、5・5a・5b・5cは収容室、6a・6b・6cは積層インダクタ、21は巻線、31aは一側の平面部、31bは他側の平面部、31cは内周部、31dは外周部、32aは一側の平面部、32bは他側の平面部、32cは内周部、32dは外周部、33aは一側の平面部、33bは他側の平面部、33cは内周部、33dは外周部、34aは一側の平面部、34bは他側の平面部、34cは内周部、34dは外周部、101はインダクタ素子、104はコア、A1・A2は収容室におけるスパイラルインダクタの半径方向の長さ、B1・B2は収容室における積層インダクタの積層方向(z軸方向)の長さ、aはスパイラルインダクタの一側の平面部とコアとの間隔、bはスパイラルインダクタの他側の平面部とコアとの間隔、cはスパイラルインダクタの内周部とコアとの間隔、dはスパイラルインダクタの外周部とコアとの間隔、kはスパイラルインダクタの巻線同士の間隔、rはスパイラルインダクタの半径方向、zは軸である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【手続補正書】
【提出日】2024-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体で形成されたコアの内部の収容室に、平面型のスパイラルインダクタが収容されている100kHz以上で使用するインダクタ素子であって、
前記スパイラルインダクタは、巻線同士が間隔を開けて巻回されており、
前記収容室は、前記スパイラルインダクタの一側の平面部、他側の平面部、内周部及び外周部を前記コアで囲む形状に形成されており、
前記収容室内に、前記スパイラルインダクタが前記コアから間隔を開けるように配置されていて、
前記スパイラルインダクタの全ての前記巻線同士の間、及び前記スパイラルインダクタと前記コアとの間に、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材が充填されていることで、全ての前記巻線の周囲に前記磁性複合材が配置されていることを特徴とするインダクタ素子。
【請求項2】
磁性体で形成されたコアの内部の収容室に、平面型のスパイラルインダクタを複数層に積層した構造の積層インダクタが収容されている100kHz以上で使用するインダクタ素子であって、
前記スパイラルインダクタは、巻線同士が間隔を開けて巻回されており、
前記積層インダクタは、前記スパイラルインダクタ同士が間隔を開けて積層されていて、
前記収容室は、前記積層インダクタの一側の平面部、他側の平面部、内周部及び外周部を前記コアで囲む形状に形成されており、
前記収容室内に、前記積層インダクタが前記コアから間隔を開けるように配置されていて、
前記スパイラルインダクタの全ての前記巻線同士の間、積層された前記スパイラルインダクタ同士の間、及び前記スパイラルインダクタと前記コアとの間に、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材が充填されていることで、全ての前記巻線の周囲に前記磁性複合材が配置されていることを特徴とするインダクタ素子。
【請求項3】
前記収容室における前記スパイラルインダクタの半径方向の長さが、前記収容室における前記積層インダクタの積層方向の長さの少なくとも2倍の長さで形成されていることを特徴とする請求項2に記載のインダクタ素子。
【請求項4】
前記スパイラルインダクタの巻き数が、前記積層インダクタの積層数よりも大きな数で構成されていることを特徴とする請求項2に記載のインダクタ素子。
【請求項5】
磁性体で形成されたコアの内部の収容室に、平面型の巻き数1ターンの1ターンインダクタを複数層に積層した構造の積層インダクタが収容されている100kHz以上で使用するインダクタ素子であって、
前記積層インダクタは、前記1ターンインダクタ同士が間隔を開けて積層されていて、
前記収容室は、前記積層インダクタの一側の平面部、他側の平面部、内周部及び外周部を前記コアで囲む形状に形成されており、
前記収容室内に、前記積層インダクタが前記コアから間隔を開けるように配置されていて、
全ての前記1ターンインダクタ同士の間、及び前記1ターンインダクタと前記コアとの間に、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材が充填されていることで、全ての前記1ターンインダクタの巻線の周囲に前記磁性複合材が配置されていることを特徴とするインダクタ素子。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項1に記載のインダクタ素子は、磁性体で形成されたコアの内部の収容室に、平面型のスパイラルインダクタが収容されている100kHz以上で使用するインダクタ素子であって、前記スパイラルインダクタは、巻線同士が間隔を開けて巻回されており、前記収容室は、前記スパイラルインダクタの一側の平面部、他側の平面部、内周部及び外周部を前記コアで囲む形状に形成されており、前記収容室内に、前記スパイラルインダクタが前記コアから間隔を開けるように配置されていて、前記スパイラルインダクタの全ての前記巻線同士の間、及び前記スパイラルインダクタと前記コアとの間に、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材が充填されていることで、全ての前記巻線の周囲に前記磁性複合材が配置されていることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項2に記載のインダクタ素子は、磁性体で形成されたコアの内部の収容室に、平面型のスパイラルインダクタを複数層に積層した構造の積層インダクタが収容されている100kHz以上で使用するインダクタ素子であって、前記スパイラルインダクタは、巻線同士が間隔を開けて巻回されており、前記積層インダクタは、前記スパイラルインダクタ同士が間隔を開けて積層されていて、前記収容室は、前記積層インダクタの一側の平面部、他側の平面部、内周部及び外周部を前記コアで囲む形状に形成されており、前記収容室内に、前記積層インダクタが前記コアから間隔を開けるように配置されていて、前記スパイラルインダクタの全ての前記巻線同士の間、積層された前記スパイラルインダクタ同士の間、及び前記スパイラルインダクタと前記コアとの間に、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材が充填されていることで、全ての前記巻線の周囲に前記磁性複合材が配置されていることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
請求項5に記載のインダクタ素子は、磁性体で形成されたコアの内部の収容室に、平面型の巻き数1ターンの1ターンインダクタを複数層に積層した構造の積層インダクタが収容されている100kHz以上で使用するインダクタ素子であって、前記積層インダクタは、前記1ターンインダクタ同士が間隔を開けて積層されていて、前記収容室は、前記積層インダクタの一側の平面部、他側の平面部、内周部及び外周部を前記コアで囲む形状に形成されており、前記収容室内に、前記積層インダクタが前記コアから間隔を開けるように配置されていて、全ての前記1ターンインダクタ同士の間、及び前記1ターンインダクタと前記コアとの間に、磁性紛及びマトリックス材を含む磁性複合材が充填されていることで、全ての前記1ターンインダクタの巻線の周囲に前記磁性複合材が配置されていることを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
[電磁界解析によるシミュレーション]
実施例1として図1に示した8ターン・1層のインダクタ素子1、実施例2として図2に示した4ターン・2層のインダクタ素子1a、実施例3として図3に示した2ターン・層のインダクタ素子1b、実施例4として図4に示した1ターン・層のインダクタ素子1cに対して、電磁界解析によるシミュレーションを行った。シミュレーションは、インダクタンス、抵抗について実施した。シミュレーション結果から(1)式を用いてQ値を算出した。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0064
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0064】
また、比較例1として磁性複合材の無い図1に示した8ターン・1層のインダクタ素子1、比較例2として磁性複合材の無い図2に示した4ターン・2層のインダクタ素子1a、比較例3として磁性複合材の無い図3に示した2ターン・層のインダクタ素子1b、比較例4として磁性複合材の無い図4に示した1ターン・層のインダクタ素子1cに対して、同様のシミュレーションを行った。比較例1~4では実施例1~4の磁性複合材を空気に代えた。